肝疾患のみかた

Similar documents
肝疾患のみかた

BA_kanen_QA_zenpan_kani_univers.indd

ダクルインザ・スンベブラの使用経験とこれからの病診連携

B型平成28年ガイドライン[5].ppt

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

Real-time Tissue Elastographyを 用いた非アルコール性脂肪肝炎に おける肝硬度測定の確立

スライド 1

要旨 平成 30 年 2 月 21 日新潟県福祉保健部 インターフェロンフリー治療に係る診断書を作成する際の注意事項 インターフェロンフリー治療の助成対象は HCV-RNA 陽性の C 型慢性肝炎又は Child-Pugh 分類 A の C 型代償性肝硬変で 肝がんの合併のない患者です 助成対象とな

診療ガイドラインに沿った 潰瘍性大腸炎の治療

スライド 1

C型肝炎の新規治療薬

Microsoft Word - 5 資料3 C型慢性肝炎に対するダクラタスビル及びアスナプレビル併用療法の有効性、安全性等について(案) docx

遡及調査にて77日前の献血時のHBVウイルス血症が確認できた急性B型肝炎の一例

Microsoft Word - ③中牟田誠先生.docx

C 型慢性肝炎に対するテラプレビルを含む 3 剤併用療法 の有効性 安全性等について 肝炎治療戦略会議報告書平成 23 年 11 月 28 日

スライド 1

平成 24 年 ₇ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 555 号付録 ) 免疫血清部門 尿一般部門 病理部門 細胞診部門 血液一般部門 生化学部門 先天性代謝異常部門 細菌部門 B 型肝炎に関する最近の話題 ~ 免疫抑制によるB 型肝炎ウイルスの再活性化 を中心に~ 検査 1 科血清係 1

診療情報を利用した臨床研究について 虎の門病院肝臓内科では 以下の臨床研究を実施しております この研究は 通常の診療で得られた記録をまとめるものです この案内をお読みになり ご自身がこの研究の対象者にあたると思われる方の中で ご質問がある場合 またはこの研究に 自分の診療情報を使ってほしくない とお

DDWシェリング講演スライド(2009年10月)

1. ウイルス性肝炎とは ウイルス性肝炎とは 肝炎ウイルスに感染して 肝臓の細胞が壊れていく病気です ウイルスの中で特に肝臓に感染して肝臓の病気を起こすウイルスを肝炎ウイルスとよび 主な肝炎ウイルスには A 型 B 型 C 型 D 型 E 型の 5 種類があります これらのウイルスに感染すると肝細胞

AASLD La protein

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

日本内科学会雑誌第105巻第3号

PowerPoint プレゼンテーション

C型肝炎の薬について

PowerPoint Presentation

B型慢性肝炎における発癌リスク因子の データマイニング解析と 慢性肝炎治療ガイドラインの検証

2017 年 10 月改訂版 リツキシマブ投与後の B 型肝炎ウイルス再活性化について 監修 名古屋市立大学大学院医学研究科血液 腫瘍内科学講師楠本茂名古屋市立大学大学院医学研究科病態医科学ウイルス学教授肝疾患センター副センター長中央臨床検査部部長田中靖人 リツキサン注 10mg/mL( 一般名 :

血液疾患治療における B 型肝炎ウイルス再活性化 = がん治療 = Hepatitis B virus : HBV HBV 再活性化とは HBVを有する患者に化学療法薬や免疫抑制薬での治療を施行すると これらが誘引となってHBVの増殖が生じること

, , & 18

厚生労働省班会議

Microsoft PowerPoint - 4. 資料2.泉先生スライド.ppt [互換モード]

<4D F736F F D ED97AA89EF8B638DC58F4982C682E882DC82C682DF C8E CEA8F A2E646F63>

感染 発症 ALT 血清 IgG 抗体 糞便中 HAV 血液中 HAV 糞便中 IgA 抗体 血清 IgM 抗体 月 A 型肝炎ウイルス感染時の各指標の変動 B 型急性肝炎の経過 HBc 抗体陽性 14 7 HBV-DNA 陽性 HBs 抗原陽性 HBc 抗体

Slide 1

, , & 18

C型慢性肝炎のガイドラインと 問題点について

スライド 1

群馬県 C 型慢性肝炎 インターフェロン治療 地域連携シート 監修 : 群馬大学附属病院 肝疾患診療連携拠点病院 - 1 -

針刺し切創発生時の対応

1.HBV 持続感染者の自然経過 HBV 持続感染者の病態は 宿主の免疫応答と HBV DNA の増殖の状態により 主に下記の 4 期に分類される HBV 持続感染者の治療に当たってはこのような自然経過をよく理解しておくことが必要である 1 免疫寛容期 immune tolerance phase

厚生労働省班会議

B型肝炎

Microsoft Word - C型肝炎病診連携パス施設用冊子( _.doc

B型肝炎ウイルスのキャリアで免疫抑制・化学療法を受ける患者さんへ

愛媛県肝炎治療特別促進事業実施要綱(改正案全文)

九州支部卒後研修会症例

生化学検査 臨床検査基準値一覧 近畿大学病院 (1) 検査項目 基準値 単位 検査項目 基準値 単位 CRP mg/dl WBC /μl Na mmol/l M RBC K mmol/l F 3.86-

Transfusion-Transmitted Hepatitis Verified from Haemovigilance and Look-back Study

<4D F736F F D2095BD90AC E93788C51946E8CA7438C5E969D90AB8ACC898A926E88E698418C B83672E646F6378>

スライド 1

情報提供の例

日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会 ( 五十音順 ) 朝比奈靖浩 東京医科歯科大学消化器内科 大学院肝臓病態制御学 泉 並木 武蔵野赤十字病院消化器科 桶谷 眞 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科消化器疾患 生活習慣病学 熊田博光 虎の門病院肝臓センター 黒崎雅之 武蔵野赤十字病院消化器科 *

PowerPoint プレゼンテーション

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

スライド 1

症例検討

貧血ケーススタディ2007

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - 市民講座_前後半.pptx

Microsoft PowerPoint - B型肝炎の最新事情2013.pptx

<4D F736F F F696E74202D2082AA82F CE8DF48CA48F4389EF ACC898A91CE8DF AD8D47205B8CDD8AB B83685D>

B型肝炎治療における      バラクルード錠R0.5mgの製品情報         【簡易版】


第 4 章感染患者への対策マニュアル ウイルス性肝炎の定義と届け出基準 1) 定義ウイルス感染が原因と考えられる急性肝炎 (B 型肝炎,C 型肝炎, その他のウイルス性肝炎 ) である. 慢性肝疾患, 無症候性キャリア及びこれらの急性増悪例は含まない. したがって, 透析室では HBs

PowerPoint Presentation

10„”“ƒ-fiÁ‘W-„õ‰g’æ’¶.ec9


佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

PowerPoint プレゼンテーション

平成20 年9月平成 20 年 ₉ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 509 号付録 ) その結果がまとめられたことから 同月 17 日付けで 輸血療法の実施に関する指針 の一 部改正を行い通知しています 輸血前後の感染症マーカー検査の必要性 ( 指針改正箇所を抜粋 ) 本症は早ければ輸血

日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会 ( 五十音順 ) 朝比奈靖浩 東京医科歯科大学消化器内科 大学院肝臓病態制御学 安藤亮一 武蔵野赤十字病院腎臓内科 ( 日本透析医学会より推薦 ) 池上徹 九州大学消化器 総合外科 泉並木 武蔵野赤十字病院消化器科 菊地 勘 下落合クリニック腎臓内科 (

はじめに 我が国の肝がん死亡者数は,2005 年頃を最多とし, その後はゆっくりと減少しつつあります しかし, いまだに年間死亡者数は 3 万人を超えており, 依然として対策が極めて重要な病気です 原因としては,C 型肝炎,B 型肝炎, 非アルコール性脂肪肝炎 (NASH: ナッシュ ) やアルコー

目次 1. 肝臓の病気 2. 肝炎ウイルスとは 3. ウイルス性肝炎とは 4. 急性肝炎 5. 慢性肝炎 6. 肝硬変 7.A 型肝炎 8.B 型肝炎 9.C 型肝炎 10.B 型肝炎の治療 11.C 型肝炎の治療 12. 予防方法 13. 肝炎の医療費助成制度 14. おわりに 1

スライド 1

2 参考 検体投入部遠心機開栓機感染症検査装置 感染症検査装置 (CL4800)

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx

肝臓第55巻第10号

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

2016 年 1 月 28 日 特別企画 C 型肝炎座談会 / 甲信越エリア 日時 :2015 年 11 月 10 日場所 : ホテルオークラ新潟 C 型肝炎治療の新時代 C 型肝炎治療における新規経口薬 (DAA 製剤 ) の将来展望と適正使用 C 型肝炎に対して経口の直接作用型抗ウイルス薬 (D

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

387 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )

PowerPoint プレゼンテーション

目次 1. 地域医療連携パスとは 肝疾患医療連携パスの運用方法について... 3 (1) 特長 (2) 目的 (3) 対象症例 (4) 紹介基準 (5) 肝疾患医療連携パスの種類 (6) 運用 3. 肝疾患医療連携パス... 7 (1) 肝疾患診断医療連携パス ( 医療者用 : 様式

PowerPoint プレゼンテーション

資料2_B型肝炎ガイド_検査技師向け_最終版

スライド タイトルなし

今さら聞けない C型肝炎の基礎知識

第2次JMARI報告書

スライド 1

B 型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制療法に関する提言本提言では B 型肝炎ウイルス (HBV) 感染リウマチ性疾患患者において免疫抑制療法を安全に施行するための方策を示す 日本リウマチ学会は平成 23 年 9 月 6 日に本提言を発表したが 平成 23 年 9 月 16 日および 2

デスフルラン

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

Microsoft PowerPoint - 4. 資料2 溝上先生ご発表資料 .pptx

高脂血症の検査

1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

Microsoft Word - (別添1)ソブリアードについて(確定)

<8C9F8DB85F3338E4508CB495612E786C73>

スライド 1

Transcription:

肝疾患の診断 肝臓 胆のう 膵臓内科 眞柴寿枝

症例 1 症例 50 歳代男性 主訴 なし ( 肝障害精査目的 ) 既往歴 特記事項なし 家族歴 父 : 糖尿病 現病歴 生来健康 感冒様症状が出現したため近医を受診した このとき施行された血液検査にて肝胆道系酵素の上昇があり 精査 加療目的に当科紹介となった

WBC RBC Hb Ht PLT Seg Eo Lymph At-ly 6950 385 万 13.5 41.2 28.2 万 61.0 0.2 26.3 0 /μl /μl g/dl /μl 血算 TP Alb T.Bil AST ALT LDH ALP γ-gtp ChE ZTT TTT g/dl g/dl mg/dl Units Units 7.3 4.2 1.2 101 18 590 256 22 420 4.0 3.0 生化学 PT- 98.0 凝固まず何を考えますか? 前医での検査データ

まずどんな検査をしますか? WBC RBC Hb Ht PLT Seg Eo Lymph At-ly 6950 385 万 13.5 41.2 28.2 万 61.0 0.2 26.3 0 /μl /μl g/dl /μl 血算 TP Alb T.Bil AST ALT LDH ALP γ-gtp ChE ZTT TTT K g/dl g/dl mg/dl Units Units meq/ml 7.3 4.2 1.2 101 18 590 256 22 420 4.0 3.0 6.8 生化学 PT- 98.0 凝固前医での検査データ

慢性肝炎 肝硬変の原因 1. 肝炎ウイルス 2. アルコール 3. 薬物 4. 代謝異常 5. 免疫異常 6. その他

B 型肝炎と C 型肝炎は? B 型肝炎約 140 万人 C 型肝炎約 180 万人 2014 年 1 月 : 日本総人口 1 億 2722 万人 320 万人 /1.3 億人 2.5 40 人に 1 人はウイルス肝炎

肝硬変の成因別割合 PBC 2.3 AIH 1.9 NASH 関連 2.2 他 4.4 B 13.1 (1998-2007 年 ) B+C 1.0 アルコール 14.8 C 60.2 ( n = 20,719 ) 第 44 回日本肝臓学会総会 (2008)

都道府県別の肝癌死亡率 ( 人口 10 万人対 ) 21.5 未満 21.5 以上 24.2 未満 24.2 以上 29.1 未満 29.1 以上 33.4 未満 33.4 以上 ( 人口 10 万対 ) 厚生労働省. 人口動態調査 ( 平成 19 年 ) 都道府県別にみた死因簡単分類別死亡率 ( 人口 10 万対 ) より作成

症例 2 症例 70 歳代女性 主訴 倦怠感 ( 肝障害精査目的 ) 既往歴 肝疾患なし 現病歴 近医よりイレウスで紹介された 腸管壊死が疑われたため緊急手術となった 術後 1 日目の血液検査で高度の肝胆道系酵素異常があり当科紹介となった

WBC RBC Hb Ht PLT Seg Eo Lymph 18950 385 万 10.5 31.2 18.2 万 61.0 0.2 26.3 /μl /μl g/dl /μl 血算 TP Alb T.Bil AST ALT LDH ALP γ-gtp ChE ZTT TTT g/dl g/dl mg/dl Units Units 6.2 2.2 2.2 1400 890 1590 456 62 420 4.0 3.0 生化学 PT- 58.0 凝固まず何を考えますか? 検査データ

WBC RBC Hb Ht PLT Seg Eo Lymph 18950 385 万 10.5 31.2 18.2 万 61.0 0.2 26.3 /μl /μl g/dl /μl 血算 TP Alb T.Bil AST ALT LDH ALP γ-gtp ChE ZTT TTT g/dl g/dl mg/dl Units Units 6.2 2.2 2.2 1400 890 1590 456 62 420 4.0 3.0 生化学 PT- 98.0 凝固まず何を考えますか? 検査データ

B 型肝炎

B 型慢性肝炎の治療は難しい 治療してもウイルスが完全に排除 できない (C 型肝炎は排除可能 ) 自然経過で治療が不要になる人も 多い (C 型肝炎はずっと必要 ) ウイルスの検査項目が多い (C 型肝炎は少ない )

B 型肝炎の検査 HBs 抗原 HBs 抗体 HBV-DNA HBcrAg HBe 抗原 遺伝子型 HBc 抗体 HBe 抗体 HBcrAg: HB コア関連抗原

B 型肝炎の検査 HBe 抗原 HBe 抗体 HBe 抗原 / 抗体はウイルスの活動性 HBe 抗原 (+) HBe 抗体 (-) 活動性あり HBe 抗原 (-) HBe 抗体 (+) 活動性低い (10 は活動性あり )

B 型肝炎の検査 HBV-DNA ウイルスの量 感染初期 :10 9 個以上 /ml 肝炎期 : 10 4-5 個以上 /ml 少ない方が肝がん発生を抑制

B 型肝炎の検査 HBs 抗原 HBcrAg HBs 抗原と HBV コア関連抗原は 血液内だけでなく 肝臓内のウイルス量を反映 治療効果予測

B 型慢性肝炎の治療対象は? 慢性肝炎 ALT(GPT) が30 以上 ウイルスの量が多めの人 (HBV-DNAが4.0より多い人) 肝硬変 HBV-DNA が陽性の人 ( 日本肝臓学会 B 型肝炎診療ガイドライン第 2 版 )

B 型慢性肝炎の治療薬は? ペグインターフェロン -α 核酸アナログ

インターフェロンと核酸アナログ インターフェロン核酸アナログ 投与方法 注射 経口 治療期間 24-48 週間 長期 耐性 なし まれ~ 多い 副作用 多い 少ない 催奇形性 なし 否定できない

ペグインターフェロンの治療効果 () 30 投与終了後 24 週間に 3 条件すべて満たす HBe セロコンバージョン HBV-DNA(5.0Logcopy/ml 未満 ) ALT 正常化 (40 以下 ) ( 国内第 3 相試験 ) 20 17.1 19.5 10 9.8 7 4.9 0 90μg 24 週間 180μg 24 週間 90μg 48 週間 180μg 48 週間 HLBI 24 週間

核酸アナログ製剤とは? B 型肝炎ウイルスが増えないようにする薬 ゼフィックス ( ラミブジン ) ヘプセラ ( アデホビル ) バラクルード ( エンテカビル ) テノゼット ( テノホビル )

核酸アナログは中止できるか? HBs 抗原 (IU/ml) スコア 1.9log(80) 未満 0 1.9log(80)IU/ml 以上 2.9log(800)IU/ml 未満 2.9log(800)IU/ml 以上 2 1 HBコア関連抗原量 (logu/ml) スコア 3.0 未満 0 3.0 以上 4.0 未満 1 4.0 以上 2 15:55

核酸アナログは中止できるか? 再燃リスク総スコア予測成功率 低リスク群 0 80-90 中リスク群 1-2 約 50 高リスク群 3-4 10-20 (35 歳未満 : 30-40) 核酸アナログ製剤からインターフェロンに切り替えてから中止する (sequential 療法 ) 方法もある

De novo Hepatitis B virus infection HBs 抗原陰性化に伴う HBs 抗体や HBc 抗体の出現 以前は臨床的に HBV 治癒とされていた 実際には微量の HBV が肝細胞内などに存在 HBs 抗原陰性,HBs 抗体又は HBc 抗体陽性例に化学療法, 免疫抑制などを行った場合に HBs 抗原陽性化及び肝炎の発症が見られることあり de novo HBV infection

免疫抑制 化学療法により発症する B 型肝炎対策ガイドライン スクリーニング ( 全例 ) HBs 抗原 HBc 抗体 HBs 抗体 HBs 抗原 (+) HBc 抗体 (+) or HBs 抗体 (+) HBc 抗体 (-) and HBs 抗体 (-) HBe 抗原 HBe 抗体 HBV-DNA 定量 HBV-DNA 定量 通常の対応 (+):2.1 LogC/ml 以上 (-): 2.1 LogC/ml 以上未満 モニタリング HBV-DNA 定量 1 回 /1~3 月 ( AST/ALT 1 回 /1~3 月 ) 治療内容を考慮して間隔 期間を検討 核酸アナログ投与 (+):2.1 LogC/ml 以上 (-): 2.1 LogC/ml 以上未満

B 型肝炎治療のまとめ HBs 抗原消失が最終目標 ペグインターフェロン治療(48 週間 ) 20 で肝炎安定 12/5 年でHBs 抗原消失 核酸アナログ製剤テノホビルとエンテカビルテノホビルでHBs 抗原減少効果条件次第で中止できる場合あり

症例 3 症例 30 歳 男性 主訴 皮膚黄染 既往歴 小児喘息 家族歴 叔父が胃癌 現病歴 職場の健診で皮膚 眼球結膜の黄染と血液検査にて高ビリルビン血症を指摘され当科を受診した

WBC RBC Hb Ht PLT Ret Seg Eo Lymph At-ly 3850 395 万 12.5 39.2 26.5 万 1.64 61.0 0.2 26.3 0 /μl /μl g/dl /μl 血算 TP Alb T.Bil D.Bil AST ALT LDH ALP γ-gtp ChE T.Chol g/dl g/dl mg/dl mg/dl I mg/dl 6.5 4.6 3.6 0.9 15 8 239 286 13 192 108 生化学 PT- 71.0 凝固検査データまず何を考えますか?

WBC RBC Hb Ht PLT Ret Seg Eo Lymph At-ly 3850 395 万 12.5 39.2 26.5 万 1.64 61.0 0.2 26.3 0 /μl /μl g/dl /μl 血算 TP Alb T.Bil D.Bil AST ALT LDH ALP γ-gtp ChE T.Chol g/dl g/dl mg/dl mg/dl I mg/dl 6.5 4.6 3.6 0.9 15 8 239 286 13 192 108 生化学 PT- 71.0 凝固検査データまず何を考えますか?

C 型肝炎

C 型肝炎に対する治療法の変遷 1992 インターフェロン (IFN) 単独治療 1993 1994 1995 1996 リバビリン 1997 1998 1999 2000 2001 12 月 IFNα-2b+リバビリン (RBV) 2002 2 月 IFN 長期投与 2003 12 月 ペグIFNα-2a 単独 2004 12 月 ペグIFNα-2b+RBV 2005 4 月 IFN 自己注射 (HLBI) 2006 2007 3 月 ペグIFNα-2a+RBV 2008 2009 2010 2011 11 月テラプレビル + ペグ IFNα-2b+RBV 2012 2013 11 月シメプレビル + ペグ IFNα+RBV 週 1 回の IFN ウイルス直接阻害薬

日本における C 型肝炎ウイルスの型 インターフェロンが効きやすい 血清型 :2 (30) 遺伝子型 2b (10) 遺伝子型 2a (20) インターフェロンが効きにくい 遺伝子型 1a (0) 血清型 :1 (70) 遺伝子型 1b (70)

インターフェロン治療とウイルスの関係 1 型 2 型 高ウイルス量 5.0 LogIU/ml 300 fmol/l 1.0 Meq/ml 以上 最も効きにくい 効きにくい 低ウイルス量 5.0 LogIU/ml 300 fmol/l 1.0 Meq/ml 未満 効きやすい

インターフェロン治療に影響する因子 ウイルス側の因子 宿主 ( 人間側 ) の因子 遺伝子型 ( 血清型 ) ウイルス量 遺伝子変異コアアミノ酸変異 NS5A 変異 ISDR(interferon sensitivity determining region) IRRDR(interferon-ribavirin resistance determining region) 人種 年齢 性別 線維化の進展度 体重 肝脂肪化 鉄過剰沈着 高インスリン血症 IL-28B SNPs ITPA SNPs

インターフェロン治療に影響する宿主因子 人種 黒人 性別 女性 年齢 高齢 (60 歳以上 ) 体重 肥満 肝線維化 肝硬変に近づくと効きにくい 肝脂肪化 インスリン抵抗性 IL-28 遺伝子多型 ITPA 遺伝子多型

インターフェロン治療の効果 (2 型と低ウイルス量 ) ウイルス陰性化率 () 100 80 60 40 27 低ウイルス量は約 90 68 76 2 型高ウイルス量約 90 20 0 インターフェロン単独療法 24 週間 (1992 年 ) ペグインターフェロン単独投与 48 週間 (2003 年 12 月 ) インターフェロン + リバビリン併用療法 24 週間 (2001 年 12 月 ) ペグインターフェロン + リバビリン併用療法 24 週間 (2005 年 12 月 )

IFN の治療効果 (1 型高ウイルス量 ) ウイルス陰性化率 () 100 80 60 40 16 1 型高ウイルス量は治療効果が不足 30 50~60 20 5-6 0 インターフェロン単独療法 24 週間 (1992 年 ) ペグインターフェロン単独投与 48 週間 (2003 年 12 月 ) インターフェロン + リバビリン併用療法 24 週間 (2001 年 12 月 ) ペグインターフェロン + リバビリン併用療法 24-72 週間 (2004 年 12 月 )

新しい C 型肝炎治療薬 ウイルスを直接阻害薬 : DAA(Direct-acting antivirals) C E1 E2 P7 NS2 NS3 NS4A NS4B NS5A NS5B NS3/4 プロテアーゼ阻害薬 NS5A 阻害薬 NS5B ポリメラーゼ阻害薬

DAA を含んだ治療法 従来の治療 Peg-IFN RBV プロテアーゼ阻害薬を含んだ治療 Peg-IFN RBV DAA プロテアーゼ阻害薬テラプレビルシメプレビルバニプレビル

プロテアーゼ阻害薬併用 IFN 治療 初めてインターフェロン治療を受ける ( 初回治療 ) 前のインターフェロン治療時に ウイルスが検出感度以下 ( 陰性 ) になっていたが 終了後に再度陽性になった ( 再燃 ) 約 90 の人でウイルス排除

プロテアーゼ阻害薬併用 IFN 治療 前のインターフェロン治療時に ウイルスが検出感度以下にならなかった ( 前治療無効 ) 約 50 の人でウイルス排除 新しい治療方法が必要

症例 4 症例 60 歳代女性 主訴 なし ( 術前検査で HCV 陽性 ) 現病歴 変形性膝関節の手術目的で入院 術前に施行された血液検査にて HCV 抗体陽性を指摘され 精査目的に当科紹介となった

HBsAg Anti-HCV (-) 1.03 U/ml s/co WBC RBC Hb Ht PLT Seg Eo Lymph 4950 285 万 9.5 32.2 15.2 万 61.0 0.2 26.3 /μl /μl g/dl /μl 血算 TP Alb T.Bil AST ALT LDH ALP γ-gtp ChE g/dl g/dl mg/dl 7.3 3.8 1.2 43 67 286 256 75 482 生化学検査データまずどんな検査をしますか?

HBsAg Anti-HCV (-) 1.03 U/ml s/co WBC RBC Hb Ht PLT Seg Eo Lymph 4950 285 万 9.5 32.2 15.2 万 61.0 0.2 26.3 /μl /μl g/dl /μl 血算 TP Alb T.Bil AST ALT LDH ALP γ-gtp ChE g/dl g/dl mg/dl 7.3 3.8 1.2 43 67 286 256 75 482 生化学検査データまずどんな検査をしますか?

DAA を含んだ治療法 従来の治療 Peg-IFN RBV プロテアーゼ阻害薬を含んだ治療 Peg-IFN RBV DAA NS3/4A 阻害薬 インターフェロンを含まない DAA 治療 DAA NS3/4A 阻害薬 DAA NS5A 阻害薬

インターフェロンを使わない治療 DAA NS5A 阻害薬 ダクルインザ ( ダクラタスビル ) DAA NS3/4A 阻害薬 スンベプラ ( アスナプレビル ) 24 週間 (6 ヶ月間 ) 内服

ダクラタスビル + アスナプレビル 治療効果は? ウイルスを排除できた人が 84.7( 治験時データ )

SVR 24 率 () ダクラタスビル + アスナプレビル (Kumada H, et al. Hepatology 59: 2083-91, 2014) 100 80 84.7 80.5 87.4 60 40 20 0 全体 (222 人 ) 前治療無効例 (87 人 ) インターフェロン不応 不耐例 (135 人 )

SVR 24 率 () ダクラタスビル + アスナプレビル (Kumada H, et al. Hepatology 59: 2083-91, 2014) 100 性別 年齢 開始時 HCV-RNA 代償性肝硬変 IL-28B (rs12979860) 80 60 83.1/85.5 81.2/89.9 93.9/83.1 84.0/90.9 84.9/84.5 40 20 0 77 145 133 89 31 189 200 22 110 112 男女 <65 65 <800 800 なしあり CC non-cc

C 型肝炎治療のまとめ NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬併用のインターフェロン治療初回 再燃 :90 前治療無効 :50 ダクラタスビル+アスナプレビル耐性変異なし :90 耐性変異あり :40 来年にはさらに強力な治療が登場予定

C 型肝炎治療の展望 100 C 型肝炎の撲滅 ウイルス陰性化率 () 80 60 40 20 0 IFN 単独 24 週 IFN 単独 48 週 IFN RBV ペグ IFN RBV ペグ IFN RBV DAA ペグ IFN RBV DAA DAA のみ