大阪府医師会館 平成 26 年 3 月 29 日 平成 25 年度 ( 第 41 回 ) 大阪府医師会臨床検査精度管理検討会 外部精度管理調査と内部精度管理 血液学検査 ( 血液像 ) 近畿大学医学部附属病院中央臨床検査部 岡田和敏
設問症例 血液像の症例一覧 1~4 5~8 9 原発性骨髄線維症 EB ウイルス感染症 節外性 NK/T 細胞リンパ腫 - 鼻型からアグレッシブ NK 細胞性白血病 / リンパ腫 (ANKL) への進行期例 10 濾胞性リンパ腫 (FL) の再発例 11 形質細胞白血病 (PCL) 12 t(15;17)(q22;q12);pml-rara を伴う急性前骨髄性白血病 (APL) (FAB 分類 M3 variant) 13 骨髄異形成関連変化を伴う急性骨髄性白血病 (AML/MRC) 14 急性単芽球性白血病 (FAB 分類 M5a) 15~16 前リンパ球増多を伴う慢性リンパ性白血病 (CLL/PL)
血液像の正解と正解率 ( 参加 163 施設 ) 設問正解許容正解正解数正解率 (%) 配点 1 涙滴赤血球 162 99.4 1.0 2 骨髄芽球 Agranular blast 152 93.3 1.0 3 多染性赤芽球 141 86.5 1.0 4 骨髄球 121 74.2 1.0 5 リンパ球 155 95.1 0.5 6 異型リンパ球 128 78.5 0.5 7 異型リンパ球 151 92.6 0.5 8 異型リンパ球 156 95.7 0.5 9 リンパ腫細胞 ( 大型 ) リンパ腫細胞 ( その他 ) 10 濾胞性リンパ腫細胞 11 異型形質細胞 Myeloma cell リンパ球系その他の異常 146 89.6 0.5 リンパ腫細胞 ( 大型 ) リンパ腫細胞 ( その他 ) リンパ球系その他の異常 157 96.3 0.5 154 94.5 0.5 12 APL 細胞 146 89.6 0.5 13 Agranular blast 骨髄芽球 144 88.3 0.5 14 Agranular blast 単芽球 137 84.0 0.5 15 CLL 細胞リンパ球 145 89.0 0.5 16 前リンパ球 CLL 細胞 PLL 細胞 133 81.6 0.5 合計 10.0
設問 1 矢印の細胞について 最も考えられるものを血液像細胞分類コード表から番号を選んでください 写真 1 から写真 4 は同一症例です 正解 涙滴赤血球 回答 162 施設 ( 正解率 99.4 %)
設問 2 矢印の細胞について 最も考えられるものを血液像細胞分類コード表から番号を選んでください 写真 1 から写真 4 は同一症例です 正解骨髄芽球回答 148 施設 許容正解 Agranular blast 回答 4 施設 回答 152 施設 ( 正解率 93.3 %)
設問 3 矢印の細胞について 最も考えられるものを血液像細胞分類コード表から番号を選んでください 写真 1 から写真 4 は同一症例です 正解多染性赤芽球回答 141 施設 ( 正解率 86.5 %) 不正解正染性赤芽球回答 16 施設
設問 4 矢印の細胞について 最も考えられるものを血液像細胞分類コード表から番号を選んでください 写真 1 から写真 4 は同一症例です 正解骨髄球回答 121 施設 ( 正解率 74.2%) 不正解前骨髄球回答 32 施設 症例 : 原発性骨髄線維症
設問 5~6 矢印の細胞について 最も考えられるものを血液像細胞分類コード表から番号を選んでください 写真 5 から写真 8 は EB ウイルス感染症の一症例です 設問 5 設問 6 Downey Ⅰ 型 ( 単球類似 ) 正解 リンパ球 正解 異型リンパ球 回答 155 施設 ( 正解率 95.1%) 回答 128 施設 ( 正解率 78.5%) 不正解単球 回答 30 施設
設問 7~8 矢印の細胞について 最も考えられるものを血液像細胞分類コード表から番号を選んでください 写真 5 から写真 8 は EB ウイルス感染症の一症例です 設問 7 設問 8 Downey Ⅱ 型 ( 形質細胞類似 ) Downey Ⅲ 型 ( 幼若なリンパ球類似 ) 正解 異型リンパ球 正解 異型リンパ球 回答 151 施設 ( 正解率 92.6%) 回答 156 施設 ( 正解率 95.7%) 不正解形質細胞 回答 8 施設 不正解単球 回答 4 施設 症例 : EB ウイルス感染症
設問 9 矢印の細胞について 最も考えられるものを血液像細胞分類コード表から番号を 選んでください 参考データ 40 代女性 現病歴 : 右鼻閉にて近医を受診 紹介にて診断治療中であった 末梢血 : 細胞表面マーカー : WBC 10000 /μ L CD2 (+) RBC 2.71 X10 6 /μ L CD3 (-) Hb 8.9 g/dl CD4 (-) Ht 24.4 % CD5 (-) Plt 4.0 X10 4 /μ L CD7 (+) 矢印の細胞 28.0 % CD8 (+) CRP 0.407 mg/dl CD13 (-) LDH 9570 IU/L CD16 (-) sil-2r 12018 U/mL CD19 (-) T 細胞レセプター β 鎖 Jβ 1 遺伝子 : CD20 (-) 再構成を認めず CD30 (+) 病理組織所見 ( 鼻腔 副鼻腔 ): CD33 (-) ( 抜粋 ) 大型異型細胞 CD30(+), CD34 (-) ALK(-), EBER(+) CD56 (+) 正解 リンパ腫細胞 ( 大型 ) 回答 79 施設 リンパ腫細胞 ( その他 ) 回答 64 施設 許容正解リンパ球系その他の異常回答 3 施設合計 146 施設 ( 正解率 89.6%) 症例 : 節外性 NK / T 細胞リンパ腫 - 鼻型 Extranodal NK / T cell lymphoma, nasal type からアグレッシブ NK 細胞性白血病 / リンパ腫 Aggressive NK-cell leukemia/lymphoma ( ANKL ) への進行期例
設問 10 矢印の細胞について 最も考えられるものを血液像細胞分類コード表から番号を選んでください 参考データ 50 代女性 遺伝子検査 : 免疫グロブリン H 鎖 JH 遺伝子再構成を認める PET-CT 検査所見 : 脾腫がみれ FDG 集積が亢進 骨髄ではびまん性に FDG 集積が見られる 正解濾胞性リンパ腫細胞回答 130 施設 現病症 : 近医にて腹腔内リンパ節腫脹を指摘され 紹介にて診断治療中であった 末梢血 : 許容正解 リンパ腫細胞 ( その他 ) 回答 15 施設 リンパ腫細胞 ( 大型 ) 回答 8 施設 リンパ球系その他の異常 回答 4 施設 合計 157 施設 ( 正解率 96.3%) 症例 : 濾胞性リンパ腫 Follicular lymphoma (FL) の再発例 骨髄液細胞表面マーカー : WBC 8500 /μ L CD2 (-) RBC 4.40 X10 6 /μ L CD10 (+) Hb 13.4 g/dl CD19 (+) Ht 37.5 % CD20 (+) Plt 6.6 X10 4 /μ L CD34 (-) 矢印の細胞 4.5 % CD38 (+) CRP 1.564 mg/dl BCL2 (+) LDH 4135 IU/L sil-2r 426 U/mL 骨髄検査 : 有核細胞数 12.3 X 10 4 /μ L 矢印の細胞 60.1 %
設問 11 矢印の細胞について 最も考えられるものを血液像細胞分類コード表から番号を選んでください 参考データ 60 代男性 主訴 : 全身倦怠感 労作時呼吸苦および腰痛 末梢血 : 骨髄検査 : WBC 13800 /μ L 有核細胞数 3.7 X 10 4 /μ L RBC 2.19 X10 6 /μ L 矢印の細胞 70.0 % Hb 6.9 g/dl Ht 20.4 % Plt 18.2 X10 4 /μ L CD19 (-) 矢印の細胞 47.1 % CD20 (-) cy κ -chain (+) CRP 0.704 mg/dl cy λ -chain (-) TP 8.3 g/dl CD33 (+) Alb 2.5 g/dl CD45 (+) ALP 487 IU/L CD49e (-) LDH 734 IU/L CD54 (-) IgG 3911 mg/dl CD56 (+) IgA 15 mg/dl CD138 (+) IgM 12 mg/dl MPC-1 (+) 正解異型形質細胞回答 34 施設 Myeloma cell 回答 120 施設合計 154 施設 ( 正解率 94.5%) 症例 : 形質細胞白血病 Plasma cell leukemia (PCL) 骨髄液細胞表面マーカー (CD38 gating):
設問 12 矢印の細胞について 最も考えられるものを血液像細胞分類コード表から番号を選んでください 参考データ 20 代女性主訴 : 下肢の皮下出血 末梢血 : 細胞表面マーカー : WBC 41100 /μ L CD11b (-) RBC 2.71 X 10 6 /μ L CD13 (+) Hb 7.9 g/dl CD14 (-) Ht 23.0 % CD15 (-) Plt 1.7 X 10 4 /μ L CD19 (-) 矢印の細胞 85.0 % CD33 (+) CD34 (+) CRP 0.498 mg/dl CD36 (+) LDH 1234 IU/L HLA-DR (+) 正解 APL 細胞回答 146 施設 ( 正解率 89.6%) PT 56.1 % INR 1.34 APTT 24.5 sec Fib FDP D-dimer 81 mg/dl 78.5 μ g/ml 35.75 μ g/ml 骨髄検査 : dry tapのため生検施行 穿刺針からのタッチ標本では矢印の細胞 90.6% 染色体検査 : 46,XX,t(15;17)(q22;q12) 症例 : t(15;17)(q22;q12);pml-rara を伴う急性前骨髄性白血病 (APL) Acute promyelocytic leukemia with t(15;17)(q22;q12);pml-rara (FAB 分類 : M3 variant)
設問 13 矢印の細胞について 最も考えられるものを血液像細胞分類コード表から番号を選んでください 参考データ 80 代男性 正解 Agranular blast 回答 96 施設 許容正解 骨髄芽球 回答 48 施設 合計 144 施設 ( 正解率 88.3 %) 不正解骨髄巨核芽球回答 9 施設 主訴 : 感冒様症状 末梢血 : 骨髄液細胞表面マーカー : WBC 32400 /μ L CD11b (-) RBC 2.68 X10 6 /μ L CD13 (+) Hb 9.3 g/dl CD14 (-) Ht 27.9 % CD19 (-) Plt 64.5 X10 4 /μ L CD33 (+) 矢印の細胞 97.7 % CD34 (-) CRP 6.691 mg/dl CD36 (-) TP 6.4 g/dl CD56 (-) Alb 3.2 g/dl CD117 (+) LDH 442 IU/L HLA-DR (+) 血清鉄 111 μ g/dl TIBC 198 μ g/dl 骨髄検査 : 有核細胞数 16.5 X 10 4 /μ L 巨核球数 85 /μ L 矢印の細胞 71.7 % 所見 ( 抜粋 ): Erythro 系と Megakary 系に異形成が認められる 症例 : 骨髄異形成関連変化を伴う急性骨髄性白血病 Acute myeloid leukemia with myelodysplasia-related changes (AML/MRC)
設問 14 矢印の細胞について 最も考えられるものを血液像細胞分類コード表から番号を選んでください 参考データ 70 代女性主訴 : 慢性咳嗽 軟口蓋の点状出血 末梢血 : 正解 Agranular blast 回答 38 施設 許容正解 単芽球 回答 99 施設 合計 137 施設 ( 正解率 84.0 %) 末梢血 骨髄液細胞表面マーカー : WBC 3400 /μ L CD11b (±) RBC 2.49 X10 6 /μ L CD13 (±) Hb 8.4 g/dl CD14 (±) Ht 25.0 % CD15 (-) Plt 5.2 X10 4 /μ L CD19 (-) 矢印の細胞 27.0 % CD33 (-) CRP 2.134 mg/dl CD34 (+) LDH 155 IU/L CD36 (+) 骨髄検査 : CD38 (+) 有核細胞数 9.5 X 10 4 /μ L CD41 (-) 巨核球数 8 /μ L CD61 (-) 矢印の細胞 71.1 % CD64 (-) CD117 (-) HLA-DR (+) 症例 : 急性単芽球性白血病 Acute monoblastic leukemia (FAB 分類 : M5a)
設問 15 矢印の細胞について 最も考えられるものを血液像細胞分類コード表から番号を選んでください 写真 15 から写真 16 は同一症例です 参考データ 60 代女性主訴 : 左上腹部痛 末梢血 : 骨髄液細胞表面マーカー : WBC 28800 /μ L CD2 (-) RBC 3.75 X10 6 /μ L CD4 (-) Hb 10.7 g/dl CD5 (-) Ht 31.9 % CD8 (-) Plt 22.1 X10 4 /μ L CD19 (+) * 矢印の細胞 79.3 % CD20 (+) CRP 1.192 mg/dl CD23 (+) LDH 552 IU/L CD33 (-) sil-2r 6862 U/mL CD34 (-) 骨髄検査 : CD38 (-) 有核細胞数 51.3 X 10 4 /μ L CD56 (-) 巨核球数 131 /μ L 矢印の細胞 * 69.7 % * ( 写真 15 と 16 の回答細胞合計 %) 正解 CLL 細胞 回答 125 施設 許容正解 リンパ球 回答 20 施設 合計 145 施設 ( 正解率 89.0 %) 不正解 PLL 細胞回答 4 施設
設問 16 矢印の細胞について 最も考えられるものを血液像細胞分類コード表から番号を選んでください 写真 15 から写真 16 は同一症例です 正解 前リンパ球 回答 97 施設 許容正解 CLL 細胞 回答 1 施設 PLL 細胞 回答 35 施設 合計 133 施設 ( 正解率 81.6%) 不正解リンパ芽球回答 13 施設 症例 : 前リンパ球 (prolymphocyte : PL) 増多を伴う慢性リンパ性白血病 (CLL) CLL with increased PL (CLL/PL) PL が 11%~55% 未満の境界症例は CLL として扱われるため 経過中の出現割合に注意
参加施設の成積評価割合 ( 参加 163 施設 ) 評価 参加施設数 参加施設割合 (%) A 130 79.8 B 15 9.2 C 8 4.9 D 10 6.1
誤回答の多い施設 (10 施設 ) と正解率の低い設問 施設 設問 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 a b 誤回答 c d e f g h i j 誤回答の施設数 8 8 9 8 7 9 設問正解許容正解配点 参加施設正解率 (%) 症例 2 骨髄芽球 Agranular blast 1.0 93.3 原発性骨髄線維症 3 多染性赤芽球 1.0 86.5 原発性骨髄線維症 4 骨髄球 1.0 74.2 原発性骨髄線維症 12 APL 細胞 0.5 89.6 APL (M3 variant) 13 Agranular blast 骨髄芽球 0.5 88.3 AML/MRC 16 前リンパ球 CLL 細胞 PLL 細胞 0.5 81.6 CLL/PL
血液学検査 ( 血液像 ) ー参考調査ー
染色方法と染色液使用メーカーの内訳 平成 25 年度 ( 回答 141 施設 ) 重染色 重染色と単染色 単染色 染色法 M-G, M-G, W-G, W-G M-G W-G G W W 合計 (%) メーカー 2 法 2 法 2 法 シグマアルドリッチジャパン 0 0.0 シスメックス 22 1 23 16.3 武藤化学 1 50 15 1 1 68 48.2 メルクジャパン 14 2 1 1 18 12.8 和光純薬 7 2 1 1 11 7.8 複数メーカーを使用 1 12 3 1 1 18 12.8 メーカー不明 3 3 2.1 合 計 2 108 23 4 1 3 *141 100.0 (%) 1.4 76.6 16.3 2.8 0.7 2.1 100.0 * 染色法不明 2 施設と M-G : メイ ギムザ染色 その他染色法 1 施設を除く W-G : ライト ギムザ染色 W : ライト染色 G : キ ムサ 染色 1. 重染色法の実施施設 138 施設 (97.9%) 2. 複数法を含めメイ ギムザ染色の実施施設 114 施設 (80.9%)
細胞分類カウント数 末梢血液像 ( 回答 144 施設 ) 骨髄像 ( 回答 85 施設 ) 施設数 % 施設数 % 100 カウント 105 72.9 500 カウント 58 68.2 200 カウント 38 26.4 1000 カウント 25 29.4 300 カウント 1 0.7 1001 カウント以上 2 2.4 301 カウント以上 0 0.0 その他 0 0.0
血液像まとめ 末梢血液像の分類カウント数は WHO 分類診断において目視白血球 200 個分類実施が推奨されるが 実施施設 26.4% で前年度 (25.7%) と比べ 明らかな増加はなかった 今年度の施設評価では D 判定 (6.1%) が昨年 (0.6%) と比べ増加した 誤回答の多い施設では 基本的細胞判定に誤回答が多い傾向であった そのため 誤回答症例を中心に日常検査で注意が必要と思われる 今年度の設問は 例年同様に基本的細胞観察や WHO 血液腫瘍分類さ れる症例であった A 評価と B 評価の施設合計が 89.0% であり 成績は良好であった