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を作る 設計図 の量を測定します ですから PCR 値は CML 患者さんの体内に残っている白血病細胞の量と活動性の両方に関わるのです PCR は非常に微量の BCR-ABL 設計図 を検出することができるため 残存している病変を測定するものとよく言われます 4. PCR の検査は末梢血と骨髄のどちらで行いますか? PCR は末梢血と骨髄液のどちらの検体でも行えます 検査する試料が十分にあることが重要なため ほとんどの場合末梢血の方を使います ( 採取もずっと楽です )! 5. PCR は治療中に受けなければならない唯一の検査ですか? PCR は CML 治療にとって強力なツールですが 治療中に必要な検査はこれだけではありません 診断時には 骨髄の細胞増殖が 亢進した ( 過形成 ) 状態を見つける骨髄検査が勧められます 骨髄検査は 核型 を調べる唯一の方法でもあり 多数の細胞の染色体を検査して フィラデルフィア染色体 (9 番染色体が長くなり 22 番染色体が短くなって見える 9:22 相互転座 ) の数を数えるか 他の遺伝子損傷があるかどうか調べるものです 核型分析と FISH( 細胞を蛍光で標識してフィラデルフィア染色体の数を数える ) 法を 結果が陰性になる ( 細胞遺伝学的完全寛解 または CCyR と呼ばれる ) まで繰り返し行うことが勧められます この目標達成が確認された後 PCR 検査は CML の残存病変を調べる唯一の検査となり 主なモニターの方法となります 6. CML 治療を管理するときに なぜ PCR が重要なのですか? PCR が CML とって重要な理由は色々あります まず第一に 採血だけで済み 患者さんの体に優しい こと 第二に 未治療 ( 高レベル ) の BCR-ABL を測定可能限界レベルまで測定できる守備範囲が広い検査であることです 7. PCR 検査はどのくらいの頻度で行いますか? 治療の初期には他の検査 ( 核型分析と FISH) が PCR より優先することがあります しかし CML 患者さんの圧倒的多数で 治療開始から 12~18 ヶ月で染色体検査 ( 核型分析と FISH) が正常となるので PCR 検査が最も重要となり BCR-ABL レベルがさらに低下したら ( これは細胞遺伝学的寛解から分子遺伝学的大寛解への移行と呼ばれます ) 3 ヶ月ごとに受けることが勧められます 一旦 BCR-ABL レベルが分子遺伝学的大寛解レベルまたはそれ以下になったら BCR-ABL の 3~6 ヶ月ごとのモニターを続け 数値の安定性やさらに低下することを確認します

8. PCR 値はいつも全く同じでなければならないのですか? いいえ 許容できる変動の程度があると考えられますので PCR 値が変化してもパニックを起こさないでください ただし 主治医が慎重に結果を調べて 時間経過に沿った傾向に注目する必要があります 一般的に TKI( チロシンキナーゼ阻害剤 ) で治療を受けている CML 患者さんでは PCR 検査値が時間経過と共に低下するはずです 治療開始時には PCR 検査値が通常何ヶ月かかけてかなり下がると期待されます 寛解の目標が達成された後は 一般に低下の度合いはずっと小さくなりますが 特に深い寛解が得られた場合では 数値が安定するのは概ね良いこととされます PCR 値の上昇は 慎重に検討する必要があります PCR 値の上昇が起きた時点が重要な留意点の一つとなります 例えば 分子遺伝学的寛解が深い患者さんにおける PCR 値の上昇は 分子遺伝学的寛解を得ていない患者さんの PCR 値の上昇とは異なります 同様に 変化の程度が最小か大幅であるかも重要な留意点となります 分子遺伝学的大寛解の消失など 治療反応がなくなるような変化は詳細に検討する必要があり この時点で他の検査を行う必要が出てきます 9. 理想的な PCR 値とはどれくらいですか? PCR 値が理想的なレベルに達するにはどのくらいかかりますか? CML 治療では 目標達成ということがよく話題になります 重要な目標は細胞遺伝学的完全寛解 (CCyR) ですが これは非常に重要な患者さんを守ってくれる状態です この寛解は通常 白血病細胞が 2 log 低下または 100 分の 1 に低下することと同等です PCR 値に 3 Log(1000 分の 1) まで またはそれ以上の低下が起こると この状態は分子遺伝学的大寛解 (MMR) と呼ばれますが さらに高い保護効果が現れます MMR レベルの寛解はよく 安全圏 と呼ばれ それを下回ると治療反応性の消失のリスクが最小となります とは言っても 最新の TKI 療法では 4 log 4.5 log の低下 (MR4 MR4.5) というこれより深い寛解が達成される患者さんが多くなっています PCR 値が検出不可能あるいは定量が不可能であるため MR4.5 というレベルは 多くの検査施設において測定が難しいのです この閾値は一時期 CMR または分子遺伝学的完全寛解と呼ばれましたが この名称は多少誤解を招きかねないため ( 多くの人にとって残存白血病細胞が ゼロ を意味する完全寛解を思わせるため ) 単にそのレベルを表す呼び名 (MR4 MR4.5) を使おうという動きがあります 10. PCR 値に影響を与えるものは何ですか? PCR 値は一般に治療への継続した反応性を反映するもので 白血病細胞の量の減少に多少のばらつきがあり また検査そのものにも多少のばらつきがあります 非常に感度の高い検査であるため 2 か所の異なる検査施設で測定すると 同じ

患者さんで異なる結果が出る場合もあります もう一つの大きな問題は 全部の検査施設で測定に同一の基準を使っているわけではないため 全く同じレベルの白血病でも異なる施設で結果が異なることがあります PCR の結果を規格化し 単一の ( 国際 ) 基準をもって全ての結果の報告を行うようにする大きな取り組みがなされています PCR 結果が前回と異なる場合に最初に調べることは その検査がどこで行われたか ( 同じ検査施設か別の所か ) また国際基準が使われたかどうかということです もちろん服薬遵守 (CML の薬を飲むこと ) が PCR 結果の安定や改善に必須であり PCR 値が変化した場合に医師と患者さんが真っ先に考えなければならないことは治療法についてであり どんな理由であれ服薬を忘れたか 止めたかということです 毎日の服薬を止めた患者さんは PCR 値が高くなる傾向があり 治療の初期にわずかな量でも服薬を抜かした患者さんでは 深い寛解が得られにくいのです 11. 前回の PCR 値が上昇していましたが 治療の効果がないということですか? 必ずしもそうとは言えませんが PCR の上昇は深刻にとらえる必要があります 変化があった場合に検討すべきチェックリストの項目として 上昇が検出された時点からの範囲 ( 細胞遺伝学的寛解かどうか 分子遺伝学的寛解かどうか ) 変化の程度 ( 軽度の変化 MMR の消失などのような全面的な治療反応性の消失 ) これまでの PCR 値の安定性の履歴があります PCR 値が上昇した場合は 4~6 週間後に PCR 検査を繰り返し その変化が持続しているか見たり その変化を確認することがよく行われます 12. PCR 検査は常に同じ検査施設で行うべきでしょうか? 今のところ 理想的にはそうです PCR 検査を同じ検査施設で行うことは 結果が同一の尺度で報告されて進行状況の把握が容易になります すべての検査施設で同一の尺度 ( 国際尺度 IS) を使うようになれば 同じ検査施設で PCR を行うことはそれほど重要でなくなり 結果の報告形式は世界中で同じになります そうなるための努力は既に何年にもわたって続けられており 近い将来実現するでしょう 13. MMR は何を意味しますか? MMR は 分子遺伝学的大寛解 (major molecular response) の略称です MMR とは PCR 値が標準化されたベースライン値から 3 log 以上減少 (1000 分の 1 減少 ) していることを意味します 上述したように 細胞遺伝学的完全寛解 (CCyR) の目標達成と PCR 値がさらに MMR レベルまで低下することが両方起こると 安全圏 と呼ばれ それを下回るとリスクが最大限まで最適化されます MMR は寛解の最終目標で 転帰の改善が実証されています この転帰の改善は 寛解が消失する

リスクの低減だけでなく 疾患が進行するリスクの低減にもつながります 現時点では MMR(MR4 と MR4.5) よりも深い寛解は 実証された効果ではなく理論的な効果 ( いつかは治療を終了できる可能性につながる?) であるため 患者さんを全員少なくとも安定した MMR に導くことが現在の目標です 14. CML の治療法について いつセカンドオピニオンをとるべきでしょうか? いつでも好きな時にとってください 現在の治療法に問題がある場合 ( 副作用 寛解が順調でない 寛解の消失 ) どの薬剤で開始するか どの薬剤に変更するかが不確実である場合 特有の副作用や異常な副作用がある場合 などは皆立派な理由になります CML は長期間の治療が必要な疾患であるため 質問がしやすく 正直でオープンな関係を持てるような 自分に ぴったり合う 医師を選ぶことが大切です 細かい所まで徹底して患者さんの回復を助けることに真摯に情熱を持ち 選択肢について患者さんと一緒に正しい決断を下し 患者さんが理解して治療に参加できるように説明してくれる CML 専門医は少なくありません そういう医師は 必ず患者さんに自分の PCR 値について理解してもらいたいと考えています!