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ふじよしさわい
5 years ago
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1 Journal club 重症患者での副腎機能不全ガイドライン 2017 東京ベイ浦安市川医療センター聖マリアンナ医科大学救急医学飯尾純一郎

3 重症患者での副腎不全定義メカニズム原因診断症状治療

4 重症患者での副腎不全 CIRCI Critical Illness Related Corticostroid 具合が悪くてステロイドが足りない Insufficiency

5 有事にはコルチゾールが増える急性疾患外傷熱傷術後でストレスにより局所の遊離コルチゾール濃度が上昇する N Engl J Med 2003;348: コルチゾールは APACHEⅡ スコアに一致して増加する Endocrinol Metab Clin North Am 2006;35:

6 J Clin Endocrinol Metab 1995; 80:1238. 重症例ではコルチゾール値が上昇する重症敗血症や多発外傷により 40-50μg/dL に達する通常の患者群では 10-20μg/dL

7 NAD コルチゾール刺激ストレス! 損傷! Crit Care Med Sep 21

8 無理やり増やすからコルチゾールの過剰分泌コルチゾールの枯渇受容体のダウンレギュレーション CRH ACTH コルチゾールの分泌抑制作用低下 Crit Care Med 2008;36:

9 ストレス化では受容体の効果が減弱受容体がないと作用発現しない通常の合成経路 Crit Care Med Sep 21

10 CIRCI の原因副腎での合成の低下 CHR ACTH 合成の低下コルチゾールの代謝の変化コルチゾールの感受性の低下副腎の虚血出血凝固障害 AKI 循環不全チロシンキナーゼ阻害高サイトカイン血症薬剤鎮静ステロイド下垂体卒中凝固障害循環不全合成する神経の壊死コルチゾールの negative feedback 薬剤抗炎症薬ステロイド中断抗精神病薬肝臓での cortisol binding protein の合成低下コルチゾール分解能低下コルチゾール受容体活性の低下 Crit Care Med Sep 21

11 CIRCI の教科書的な診断 ACTH 250μg の負荷でコルチゾールの変化量 < 9μg/dl 感度 45%(95CI 26-63) 特異度 96%(87-100) Am J Respir Crit Care Med 2006;174: ランダムコルチゾール値 < 15μg/dl 34μg/dl 以上で副腎機能は保たれているとする 15-34μg/dlではACTH 負荷試験を行う後の研究でランダムコルチゾールとACTH 負荷の反応性で相関性がないことが判明 Shock 2003;19:13 5. 一次性の副腎不全では早朝コルチゾール <3μg/dl で疑わしいと考える

12 CIRCI の症状全身神経循環消化器呼吸器検査画像発熱脱力混乱せん妄昏睡低血圧カテコラミン感受性低下高心拍出嘔気嘔吐低栄養低酸素低血糖低 Na 高 K 代謝性アシドーシス好酸球増加副腎出血虚血下垂体視床下部出血虚血 Crit Care Med Sep 21.

13 CIRCI の治療初回 :hpsl 100mg iv 維持 :50mg/q6hか100mg/q8-12hで投与を行う血圧が安定しカテコラミンが終了できたら減量 Intensive Care Med 2007;33:730 3

14 これまでのまとめストレス暴露下の患者 ACTH 負荷試験などで低反応副腎不全っぽい多彩な症状 CIRCI としてステロイド投与

16 個人的なモヤモヤ結局診断はどうやってつけるの? どんな人に治療をすればいいの? ほいほいステロイド入れて害はないの?

17 今回の JC

18 ガイドライン作成の背景 2008 SCCM(Society of Critical Care Medicine) ESICM(European Society of Intensive Care Medicine) により提唱 2017 診断治療について update 対象患者を明確化 Sepsis ARDS 外傷の 3 点に絞った 2008 年は病態と recomendation が一編のガイドラインに記載 2017 年は病態に関する記述が独立した narrative review

19 2017 年のガイドラインの内容診断方法について sepsis の場合について ARDS の場合について外傷について

20 ガイドライン作成のプロセスガイドラインの範囲の制定パネルメンバーの選定古いPICOのreviewを新規のPICOの作成文献検索 Systematic review エビデンスの分析 Recommendation Gradingの作成投票 (80% の同意が必要 ) 再構築と再投票

21 GRADE システムの記載 Strength Strong Weak Quality Ungraded strong recommendation A B C D Ungraded strong recommendation High Moderate Low Very low Best Practice Statement

22 GRADE を決める要素研究の限界 (Limitation) 結果の非一貫性 (Inconsistency) 結果に異質性があるかエビデンスの非直接性 (Indirectness) 外的妥当性はどうかデータの不正確さ (Imprecision) データのばらつき信頼区間出版バイアス (Publication)

23 Recommendation の強さ患者にとって臨床医にとって医療政策決定者にとって Strong ほとんどの人は推奨されたコースを選択する一部は異なるほとんどの患者が推奨された治療を受けるべきほとんどの状況で推奨をそのまま政策に適応でき標準の尺度になる Weak 多数派は推奨されたコースを希望するだろうが異なる人も多い異なる患者には異なる選択が適切になる可能性が高い治療はここの患者の環境に合わせて調整されるべき政策を作成するには関係者を含んでかなりの議論が必要

25 診断

26 副腎不全の診断 2008 ACTH 製剤 250μg を投与してコルチゾール < 9μg/dl Random total cortisol<10μg/dl 2B 2017 ACTH 製剤 250μg を投与してコルチゾール < 9μg/dl Random total cortisol<10μg/dl low evidence 単施設でのエビデンス盲検化もランダム試験も行われていないため推奨度は下がった

27 Sepsis における副腎不全の診断 ACTH によるテストでは従来 ACTH250μg による刺激が行われていた一時 Low-dose ACTH test が注目された時期がある利点 250μg より感度が高く正確性がよい (90.1% vs 83.9%) 250μg では 30 分 60 分値を測定するが 1μg では 20 分 30 分値を測定する循環血液量を変動させないしかしその後の研究結果により Sepsis での ACTH 刺激は積極的には推奨されなくなった Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes Jun;15(3):244-9.

28 そもそも ACTH 自体が微妙 Surviving sepsis campaign では septic shock 患者でステロイドを使用するであろう患者へのACTH 負荷試験は推奨していない一般的に ACTH 試験を行うのであれば high dose である 250μg を使用する J Clin Epidemiol (7): Intensive Care Med (3):

29 Shock Jan;19(1):13-5. ACTH 負荷に伴うコルチゾールの変化量 82 人の septic shock 患者ベースラインのコルチゾールの値と ACTH 負荷後のコルチゾールの変化値は相関しない重症患者では測定の必要性に乏しい!

30 副腎不全の診断 2008 遊離コルチゾールの測定は推奨されない 2B 2017 遊離コルチゾールの測定は推奨されない very low evidence 施設によって測定不能なところもあり半減期も短い少数の観察研究しかエビデンスがないため推奨度が下がった

31 遊離コルチゾールが活性がある! 遊離コルチゾールは生理的活性を持つ臨床的に具合が悪い状態であればコルチゾール結合タンパクの低下を認めるそのため総コルチゾールの値は遊離コルチゾールの値を反映していない Am J Respir Crit Care Med (2):

32 それでも測定意義に乏しい総コルチゾールと遊離コルチゾールの検査の比較試験は存在しないある程度の把握は総コルチゾールの測定でも十分ではないかとされている N Engl J Med Apr 15;350(16):

33 CIRCI 診断のまとめ ACTH 負荷試験コルチゾール値の測定は診断の一助とはなるがそれだけでは診断はできない ACTH 負荷試験は過去に 1μg がいいかもとあったが現在は使用するなら 250μg が推奨されている重症患者では測定の意義に乏しいため疑ったら治療を開始する

34 Sepsis

36 敗血症性ショックへのステロイド投与 2 つの RCT French trial Annane D, et al. JAMA. 2002;288(7):862. フランスでの多施設研究二重盲検化あり CORTICUS Sprung CL, et al. N Engl J Med 2008;358(2):111. 多施設研究二重盲検化あり

37 French trial P 昇圧剤に依存する敗血症ショックの患者 300 人 I hpsl 50mg/q6h+ フルドロコルチゾン50μg/day C プラセボ投与 O 相対的副腎不全患者の28 日以内の死亡死亡リスクはステロイド投与群で低下 (55% vs 61%) Non responder に限ると死亡率が低下 (53% vs 63%) ショックからの回復率の短縮 (57% vs 40%) 合併症は増加しなかった JAMA. 2002;288(7):862

38 CORTICUS P 敗血症性ショック ( 昇圧剤への依存性問わず )499 名 I hpsl 投与 C プラセボ投与 O 相対的副腎不全患者の28 日以内の死亡 hpsl 群全体で死亡率は低下せず ( 35% vs 32% ) 250μg ACTH 負荷試験の結果で分類したが結果変わらず hpsl 投与群ではショックからの回復が早い ( 3.3 日 vs 5.8 日 ) 合併症として感染症が増加 N Engl J Med. 2008;358(2):111.

39 2 つの試験の比較 French trial 死亡率の低下ショックからの回復短縮 CORTICUS 死亡率に差がないショックからの回復短縮 Rapid ACTH test への反応がない例では NNT 10 で死亡リスク減少患者の選別が厳しく重症例の多い母集団 ( 昇圧剤に依存する敗血症性ショック ) Rapid ACTH test の結果に関わらず死亡率は変わらないプラセボ群で死亡率が予想より低かった (50% 32%)

resuscitation 昇圧剤に反応しない場合は hpsl 投与を考慮する low evidence 対象となった大きな研究は

40 今回のガイドラインでの Sepsis に対する治療 2008 Septic shock で fluid resuscitation 昇圧剤に反応しない場合は hpsl 投与を考慮する 2B 2017 septic shock で fluid resuscitation 昇圧剤に反応しない場合は hpsl 投与を考慮する low evidence 対象となった大きな研究は sepsis に対して行われており shock の有無については評価していない Shock がない場合は効果がないとされたので shock の場合は使用を考慮してもよい

41 Shock がない場合 Septic shock でない場合はステロイドの投与は推奨されていない 2008 の時点で moderate evidence 炎症に伴うサイトカインはコルチゾールと ACTH の両者の作用を低下させる Lancet Jan 1-7;365(9453): Shockを伴わない場合にステロイドを投与された群と投与されなかった群で28 日死亡率を比較した研究では両者に差がなかった RR 1.11 (95%CI ) Cochrane Database Syst Rev Dec 3

42 重症敗血症に対するステロイド投与は敗血症性ショックへの進展を予防するか HYPRESS Clinical Trial P ショックに至っていないsevere sepsisの患者 I hpslを投与 C プラセボを投与 O 14 日以内の敗血症性ショックへの進展地域 : ドイツ 34 施設の ICU 登録期間 :2009 年 1 月 13 日 2013 年 8 月 27 日観察期間 :180 日無作為化 : 施設と性別で層別化 internet-based computerized randomization 盲検化 : 患者治療介入者アウトカム評価者解析者スポンサーはすべて盲検化 JAMA 2016 Nov 1;316(17):

43 I ITT でも PP でもショックへの移行死亡率ともに差は認められなかったハイドロコルチゾン群で減少せん妄は減るかもしれない

敗血症のガイドラインでも推奨 1 st ノルアドレナリン 35-90 μg/min ステロイド IV 考慮 2 nd バソプレシン 0.

44 敗血症のガイドラインでも推奨 1 st ノルアドレナリン μg/min ステロイド IV 考慮 2 nd バソプレシン 0.03 U/min ステロイド IV 導入 3 rd アドレナリン μg/min 4 th フェニレフリン μg/min 0.01% の希釈方法で 3.5ml/h~9ml/h 洞性徐脈 DOA を考慮 NAd Ad で頻脈性不整脈フェニレフリン考慮 (Expert opinion) Intensive Care Med Jan 18.

45 投与量 hpsl:400mg/day 以下を 3 日以上継続する Cochrane Database Syst Rev Dec 3 hpsl:50mg/q6h の投与としている研究が多い Ann Intensive Care Dec;5(1):34 ステロイドの種類については明らかなエビデンスはない Crit Care Mar 28;21(1):78.

46 投与期間 1 日だけ使用 50%/day で減量 7 日使用する N Engl J Med Feb 20;348(8):

47 デメリットは? 高血糖が最も多い副作用であるが, その他合併症を増やさなかった RR:1.02 (95%CI ) Cochrane Database Syst Rev Dec 3 hpsl:200mg を 24 時間持続投与した方が高血糖が少なくなったという報告がある ( 死亡率その他合併症は評価していない ) Intensive Care Med (2007) 33:

48 Sepsis による CIRCI のまとめ敗血症性ショックに限って予後をよくするというエビデンスがあるそれ以外のただの敗血症に対しては投与は推奨されていない投与量投与期間は報告によってまちまちであるが hpsl:50mg/q6h の漸減法が多い

49 ARDS

50 ARDS に対する治療 2008 severe ARDS(P/F<200) や 14 日以内の難治性 ARDS にはステロイドの投与は考慮 P/F>200 の場合の効果については明らかではない 2B 2017 moderate-severeなardsに対してmpsl:1mg/kg/dayの使用を考慮する moderate evidence ARDS に対するステロイド投与は効果がある研究が多く moderate となっている

51 ARDS へのステロイド使用肺炎 septic shock に伴う ARDS でステロイドを使用したところ炎症反応のマーカー気管挿管管理の日数入院死亡率が低下 ARDS から 72 時間以内と 7 日後にステロイドを投与した場合では早期投与の方が呼吸状態の改善 ICU 退出日の短縮を認めた Intensive Care Med May;42(5): N Engl J Med Apr 20;354(16):

52 ステロイドの使用方法 mpsl:1mg/kg/dayを使用する mpslは肺への移行性がいい 6-14 日かけて漸減すべき 2-4 日前後でオフにはしないデキサメサゾンは推奨されない Am Rev Respir Dis Sep;144: Intensive Care Med Mar;41(3): Crit Care Med Jun;36(6):

53 デメリットは? 高血糖は増えるが神経筋の萎縮消化管出血感染症のリスクを増やさない高血糖は死亡率には影響しない Intensive Care Med May;42(5):829-40

54 ARDS による CIRCI のまとめ P/F<200 となるような ARDS であればステロイドの投与は予後をよくする mpsl:1mg/kg/day の使用として漸減していく

55 外傷

56 外傷について 2008 記載なし 2017 外傷に対するステロイドの使用は推奨されていない low evidence 死亡率を変えないため使用は推奨されない

57 外傷へのステロイド外傷は SIRS の原因となり全身の炎症を惹起させ相対的副腎不全が起こりうる Anesthesiology Oct;97(4): 外傷患者でステロイドを使用の有無は死亡率 RR=1.00 (95%CI ) で差がない JAMA Mar 23;305(12):1201-9

58 最近の研究

59 Crit Care Resusc Jun;19(2): 敗血症性ショックに対する hpsl ANZICS 主導で行なわれている大規模多施設 RCT 敗血症性ショックの患者を対象ハイドロコルチゾン 200mg 7 日間 vs プラセボ N=3800 を予定 Primary outcome は 90 日死亡率

60 ビタミンがいいのではないか? Chest Jun;151(6):

61 デザイン P severe sepsis / septic shock 患者 (PCT>2 ng/dl) I 24 時間以内の hpsl+ ビタミン C+ ビタミン B1 投与した群 C hpsl 投与のみ O 入院死亡率 T retrospective before-after clinical study 一応 propensity score matching 単施設研究広域抗菌薬肺保護換気昇圧剤使用 DVT 予防血糖の適正化 24 時間以内に栄養開始 hpsl 50mg/q6h チアミン 200mg/q12h ビタミン C( 量記載なし ) は 5%glu か生食 100ml に溶いて分で投与

62 ベースライン年齢はcontrolの方が 4 歳ほど高い糖尿病高血圧は controlの方が多い挿管している人は controlの方が多い PCT Lacは controlの方が低い qsofa APATCHEスコアはややcontrolが高い

63 result 死亡率 8.5% vs 40.4 NNT:3!

64 批判的吟味栄養が具体的にいつ開始になったか書いていない ( 血行動態が安定したらとの記載のみ ) 量もわからずどの栄養を使用していたか記載なしベースの重症度がやや control 群の方が高そうサンプルサイズ計算なしサンプルサイズ少ない後ろ向き研究治療効果を見る RCT ではない! それでも治療効果がすごそう! 今後の臨床試験に期待!

65 Prospective study の計画 65

66 まとめ

67 2017 ガイドラインまとめ単一の検査で副腎不全を診断することはできない難治性の敗血症性ショックで hpsl<400mg/day の投与を 3 日以上行うことが推奨されている ARDS では mpsl 1mg/kg/day を使用することが推奨されている外傷ではステロイドの使用は推奨されない

68 個人的な考察 CRICI という概念があるが検査では detect できず臨床判断となってくることがある ARDS septic shock に限ってはひとまず困ったら入れても良さそう合併症も多くないし ARDS はステロイド反応性の病態かどうかを考慮すべし Septic shock は投与量は SSCG に従い 200mg/day それ以外は現時点では入れない方がいい流れになってきている

69 追加資料 :Part Ⅱ

70 CAP に対するステロイド 70

71 インフルエンザに対するステロイド 71

72 髄膜炎に対するステロイド 72

73 人工心肺を用いた心臓手術に対するステロイド 73

74 心停止に対するステロイド 74

重症敗血症に対するステロイド投与はショックを予防するか

重症敗血症に対するステロイド投与はショックを予防するか重症敗血症に対するステロイド投与は敗血症性ショックを予防するか 2016-10-25 Journal club 東京ベイ浦安市川医療センター / 諏訪中央病院小澤廣記 1 本日の論文 : HYPRESS trial PMID: 27695824 4 2 敗血症性ショックにステロイドは有効か Background 3 ストレスとステロイド HPA axis が反応しコルチゾールが放出される臓器