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1 CONTENTS Part Ⅱ 汎用解析 1. 概要 Ⅱ 静的線形解析 Ⅱ 固有値解析 3.1 固有ベクトル解析 Ⅱ Ritz ベクトル解析 Ⅱ 減衰 4.1 概要 Ⅱ 比例減衰 Ⅱ レーリー減衰 概要 Ⅱ 応答スペクトル法 モード法におけるレーリー減衰 Ⅱ 直接積分法におけるレーリー減衰 Ⅱ 歪エネルギーに基づいたモード減衰 概要 Ⅱ 減衰の設定と計算方法 Ⅱ モード減衰 Ⅱ 要素別のレーリー減衰 ( 要素別の質量 & 剛性比例減衰 ) Ⅱ 減衰マトリックスの構成 Ⅱ 汎用リンク要素と線形減衰の考慮 Ⅱ 応答スペクトル解析 Ⅱ 時刻歴応答解析 6.1 概要 Ⅱ モード重合法 Ⅱ 直接積分法 Ⅱ-6-4 i

2 CONTENTS 6.4 多重支点の地震荷重入力に対する解析 Ⅱ 座屈解析 7.1 概要 Ⅱ 静的非線形解析 8.1 概要 Ⅱ 静的非線形解析 Ⅱ Newton-Raphson 反復法 Ⅱ 弧長反復法 Ⅱ P-デルタ解析 概要 Ⅱ 境界非線形解析 非線形要素を使用した解析 Ⅱ 非線形要素の剛性 Ⅱ 境界非線形時刻歴解析 解析モデル構成 Ⅱ 境界非線形時刻歴解析の概要 Ⅱ モード重ね合わせ法による境界非線形時刻歴解析 Ⅱ 直接積分法による境界非線形時刻歴解析 Ⅱ 有効剛性 Ⅱ 力タイプの汎用リンク要素の動的特性 Ⅱ 粘弾性ダンパー (Visco-elastic Damper) Ⅱ ギャップ Ⅱ フック Ⅱ 弾塑性ダンパー (Hysteretic System) Ⅱ 鉛プラグ入り積層ゴム型免震装置 Ⅱ 摩擦振り子型免震装置 Ⅱ Runge-Kutta 法 Ⅱ Cash-Karp( 自動増分間隔制御 ) Ⅱ Fehlberg(Stepsize Sub-Division for Non-convergence Control) Ⅱ-8-47 ii

3 CONTENTS 8.6 材料非線形解析 塑性理論 Ⅱ 構成マトリックス Ⅱ 応力度積分 Ⅱ 塑性材料モデル Ⅱ 硬化法則 Ⅱ 材料非線形モデル使用時の主要考慮事項 Ⅱ 静的増分解析 概要 Ⅱ 静的増分解析による耐震設計の原理 Ⅱ 静的増分解析方法 Ⅱ-8-73 (1) 静的増分解析の概要 Ⅱ-8-73 (2) 非線形増分解析の過程 Ⅱ-8-74 (3) 不平衡力と収束計算 Ⅱ-8-76 (4) サブステップによる増分量の自動分割 Ⅱ-8-78 (5) 初期荷重の考慮 Ⅱ-8-79 (6) P-デルタ効果 Ⅱ-8-81 (7) 解析終了条件 Ⅱ 荷重増分法による荷重制御方法 Ⅱ-8-84 (1) 自動増分制御 Ⅱ-8-85 (2) 当分割 Ⅱ-8-88 (3) 増分制御関数 Ⅱ-8-88 (4) 限界剛性率による荷重増分解析の自動終了 Ⅱ 目標変位による変位制御方法 Ⅱ 作用荷重 Ⅱ-8-93 (1) 静的荷重の形状による荷重分布 ( 静的荷重ケース ) Ⅱ-8-93 (2) 質量に比例する荷重分布 ( 等価化速度 ) Ⅱ-8-93 (3) モード形状による荷重分布 ( モード形状 ) Ⅱ-8-94 (4) 一般化モード形状と質量の積による荷重分布 Ⅱ 静的増分解析の非線形要素 Ⅱ-8-96 (1) 静的増分解析の非線形要素の概要 Ⅱ-8-97 iii

4 CONTENTS (2) 2D 梁要素及び 3D 梁 - 柱要素 Ⅱ-8-98 (3) 3D 壁要素 Ⅱ (4) トラス要素 Ⅱ (5) 非線形汎用リンク要素 Ⅱ 非線形ヒンジの特徴 Ⅱ (1) スケルトン曲線の概要 Ⅱ (2) マルチリニアヒンジタイプ : バイリニア トリリニア Ⅱ (3) FEMA ヒンジタイプ Ⅱ (4) 多軸 -ヒンジモデル : P-M-M タイプ Ⅱ (5) RC 部材の 2 次勾配の剛性低減率 Ⅱ (6) 組積造の静的増分解析 Ⅱ 性能点を用いた耐震性能評価 Ⅱ (1) キャパシティ スペクトルと要求スペクトル Ⅱ (2) 性能点の評価 Ⅱ 性能点を算定する方法 Ⅱ (1) Procedure-A Ⅱ (2) Procedure-B Ⅱ 性能評価 Ⅱ 静的増分解析過程 Ⅱ 非線形時刻歴解析 9.1 概要 非線形運動方程式 Ⅱ 非線形静的解析 Ⅱ 非線形時刻歴解析での初期断面力の考慮 Ⅱ 非線形時時刻歴解析での初期剛性 Ⅱ Newton-Raphson 法 Ⅱ 非線形要素 非線形梁要素 Ⅱ 非線形汎用リンク要素 Ⅱ 非線形トラス要素 Ⅱ-9-19 iv

5 CONTENTS 9.3 非線形履歴モデルの概要 弾塑性ヒンジ属性 Ⅱ 非線形梁要素の降伏強度 Ⅱ 一軸 -ヒンジ履歴モデル Ⅱ ノーマルバイリニア型 Ⅱ ノーマルトリリニア型 ( 移動硬化 ) Ⅱ 原点指向型 Ⅱ 最大点指向型 Ⅱ CLOUGH 型 Ⅱ 深田型 Ⅱ オリジナル武田型 ( トリリニア ) Ⅱ オリジナル武田型 ( テトラリニア ) Ⅱ 修正武田型 ( トリリニア ) Ⅱ 修正武田型 ( テトラリニア ) Ⅱ 非線形弾性型 ( バイリニア ) Ⅱ 非線形弾性型 ( トリリニア ) Ⅱ 非線形弾性型 ( テトラリニア ) Ⅱ スリップ型 ( バイリニア ) Ⅱ スリップ型 ( トリリニア ) Ⅱ 多軸ヒンジの履歴モデル Ⅱ 移動硬化型 Ⅱ P-M および P-M-M 相関作用 Ⅱ 降伏面の近似化 Ⅱ ファイバーモデル ファイバーモデルの定義と定式化 Ⅱ 鋼材モデル Ⅱ コンクリートモデル Ⅱ 施工段階解析 10.1 概要 Ⅱ 時間依存性材料 v

6 CONTENTS クリープ及び乾燥収縮 Ⅱ クリープの計算方法 Ⅱ 乾燥収縮の概念 Ⅱ 時間による弾性係数の変化 Ⅱ 強度発現関数 Ⅱ 時間依存性材料データの入力手順 Ⅱ 施工段階の定義及び構成 Ⅱ 水和熱解析 11.1 熱伝逹解析 伝導 Ⅱ 対流 Ⅱ 発熱 Ⅱ パイプクーリング Ⅱ 初期温度 Ⅱ 外気温度 Ⅱ 固定温度 Ⅱ 熱応力解析 温度と時間による等価材齢 積算温度 Ⅱ 等価材齢と積算温度を用いたコンクリートの圧縮強度計算方法 Ⅱ 温度の変化量による変形 Ⅱ 乾燥収縮による変形 Ⅱ クリープによる変形 Ⅱ 水和熱解析手順 Ⅱ PC 解析 12.1 プレストレスコンクリート解析 Ⅱ プレストレスの損失 Ⅱ 即時損失 Ⅱ 時間依存的損失 Ⅱ プレストレス荷重 Ⅱ-12-9 vi

7 CONTENTS 13. 構造物の支点沈下を自動考慮した解析 Ⅱ 鋼合成断面の合成前後の断面性質を考慮した解析 Ⅱ 最適化手法を用いた未知荷重の解 Ⅱ-15-1 vii

8 1. 概要 1. 概要 荷重条件下における構造物の実際の挙動は 厳密的には材料非線形性を有するようになりますが 部材応力が設計基準で定める許容応力度の範囲内の場合は 線形的な挙動をするため 通常の設計 目的の構造解析では 部材の材料非線形性を考慮しません プログラムは線形解析をベースにしていますが 引張または圧縮専用要素の使用 P- デルタ解析 大変形解析などの幾何学的な非線形性を考慮することができます プログラムの構造解析機能の具体的な内容は 以下のようになります 静的解析 線形静的解析 熱応力解析 材料非線形解析 幾何非線形解析 大変形解析 P-デルタ解析 座靴解析静的増分解析水和熱解析施工段階解析動的解析 自由振動解析 Rizs ベクトル解析 応答スペクトル解析 時刻歴応答解析 境界非線形の時刻歴解析 非弾性の時刻歴解析 構造物の支点沈下を自動考慮した解析 合成断面の合成前後の断面性質を考慮した解析 Ⅱ-1-1

9 Part Ⅱ 最適設計法を用いた未知荷重解析機能 上記の各種荷重条件に対する解析は同時に遂行できるようになっていますが 応答スペクトル解析と 時刻歴解析は同時に解析することができません Ⅱ-1-2

10 2. 静的線形解析 2. 静的線形解析 静的線形解析で使用する基本方程式は以下のようになります [ K ]{ U} = { P} (2.1.1) ここで [K] : 構造物の全体剛性マトリックス {U} : 変位ベクトル {P} : 荷重ベクトル Ⅱ-2-1

11 Part Ⅱ Ⅱ-2-2

12 3. 固有値解析 3. 自由振動解析 3.1 固有ベクトル解析 構造物の動的特性を現わす指標である固有振動数とモード形状を計算する方法としてプログラムでは固有ベクトル解析と Ritz ベクトル解析の二つの方法を採用しています この二つの方法はすべて構造物の固有値問題の特性方程式を構成してその解を求める方法ですが 後者の解析結果を利用するほうが応答スペクトル解析や時刻歴応答解析でより高い効率性を持つことと知られています 次は固有ベクトル解析に関する説明で Ritz ベクトル解析については次の節で説明します 非減衰自由振動条件のモード形状及び固有周期を求めるために使用した特性方程式は 次のよう になります On-line Manual の " 解析 > 固有値解析制御 " を参照 ここで 2 [ K]{ } ω [ M]{ } Φ = Φ (3.1.1) n n n [ K ] : 構造物の剛性マトリックス [ M ] : 構造物の質量マトリックス 2 ω n : n 番目モードの固有値 { Φ n } : n 番目モードの固有ベクトル 固有値解析は構造物固有の動的特性を分析する際に使用し 自由振動解析ともいいます 固有値解析によって求まる構造物の主要な動的特性とは 固有モード ( またはモード形状 ) 固有周 期 ( または固有振動数 ) および刺激係数 (Modal Participation Factor) などであり これらは構造物の質 量と剛性により決まります 固有モードは構造物が自由振動 ( または変形 ) する時の固有形状で 特定の形状に振動するために必要となるエネルギー ( または力 ) が 最も小さいものから順に 1 次モード形状 ( または基本振動形状 ) 2 次モード形状 n 次モード形状と呼びます 図 は 片持梁の振動モードを低次から ( 少ないエネルギーで変形させることができる形状から ) 順に表したものです Ⅱ-3-1

13 Part Ⅱ 固有周期は 固有モードと 1 対 1 で対応できる固有な値で 構造物が自由振動状態で 1 回振動す る時に掛かる時間を意味します 参照で 単一自由度系の固有周期を求める方法を示します 単一自由度系の運動方程式において 荷重と減衰項を 0 と仮定し自由振動方程式を構成すると 式 (3.1.3) のような 2 次微分方程式になります mu&& + cu& + ku = p() t (3.1.2) mu&& + ku& = 0 (3.1.3) ここで u は振動による変位で これを u = Acosωt ( ここで A は振幅 ) と仮定すると 上式は式 (3.1.4) のようになります 2 ( mω k) Acosωt 0 + = (3.1.4) 上式を常に満足させるために 左辺の括弧内の値が 0 にならなければならないので 固有値は式 (3.1.5) のようになります 2 k ω =, m k ω =, m f ω =, 2π 1 T = (3.1.5) f ここで ω 2 : 固有値 ω : 回転固有振動数 f : 固有振動数 T: 固有周期 Ⅱ-3-2

14 3. 固有値解析 1 次モード 2 次モード 3 次モード (a) 固有モード形状 振幅振幅振幅 λ = λ = λ = T = sec T = sec T = sec π ml Ti = 2 λ EI i 1/2 : 細長い片持梁の固有周期 ここで L =100, E = , I =0.1, m=0.001 (b) 固有周期 図 均一断面の片持梁の固有モード形状と固有周期 Ⅱ-3-3

15 Part Ⅱ モードの刺激係数は 該当モードの影響を全モードに対する割合であらわしたもので 次式のように 示すことができます τ m = M ϕ M i im 2 iϕim (3.1.6) ここで τ m : モード刺激係数 m : 任意モード次数 M i : 任意 i 位置の質量 ϕ im : 任意 i 位置の m 次モードベクトル 一般的に解析に含まれるモード別有効質量の合計が全体質量の 90% 以上を確保するようにしてい ます これは解析に影響を与える部分を主要モードに含まれるようにするためです M m = ϕimm i ϕ M 2 im i 2 (3.1.7) ここで M m : モード別の有効質量 任意の質点の自由度が拘束されている場合 その質点の質量は総質量には反映されるが 自由度のモードベクトルが抑えられているため 質量成分が有効質量に含まれません したがって モード別の有効質量を計算して全質量に対する比率を評価する場合は 質量が入力された成分の自由度を拘束しないようにする必要があります 一方 建築構造物の地下部分の水平変位が拘束される場合は 該当の層の水平方向の質量成分を 入力しなくても良いです 構造物の動的挙動を正しく分析するためには 固有値を決定する質量と剛性を正確に入力することが最も重要です 剛性は構造部材を有限要素でモデリングすると比較的に実状に近く考慮できるが 質量は構造部材の質量が全体質量に比べて少ないため 床スラブなどモデル化しない部材の質量は正確に計算して入力することが重要となります Ⅱ-3-4

16 3. 固有値解析 質量成分は節点当たりに 6 つの自由度成分 すなわち 3 つの並進成分と 3 つの回転成分で入力されます ここで 回転質量成分は 回転慣性モーメントとも呼ばれるもので 地震応答解析では地震力が並進方向の地動加速度として入力されるので直接応答値に影響を与えないですが 構造物が不整形の場合 ( 重心と剛心が一致しない場合 ) はモード形状を一部変形させるので動的応答に間接的に影響を与えます 質量成分は 次のように計算されます ( 表 参照 ) 並進質量成分 dm (3.1.7) 回転慣性モーメント ここで 2 rdm (3.1.8) r : 全体重心から各質点までの距離 質量の入力単位系は 重量を重力加速度で分けた単位 ([W*(T 2 /L)]) で 回転慣性モーメントの単位系は 質量に長さ単位の 2 乗をかけた単位 ([W*(T 2 /L)*L 2 ]) です 例えば MKS 単位系 または 英国単位系の場合は 重量を重力加速度で分けた値を質量として入力しなければならないし SI 単位系をの場合は MKS 単位系による重量をそのまま質量として入力します 弾性係数と荷重は MKS 単位系に使用する値に重力加速度をかけて入力します プログラムでは 解析作業の効率性を考慮して集中質量を使っています 質量データは メインメニ ューのモデル > 質量 > 節点質量 剛床質量 または荷重を質量に変換から入力します プログラムで使用している固有値解析の手法は Subspace Iteration 法と 大規模モデルの解析に適 した Lanczos 法です Ⅱ-3-5

17 Part Ⅱ 表 質量データの計算方法 ρ : 単位面積当たり質量 : 質量中心 長方形 区分集中質量回転慣性モーメント M = ρbd 3 3 bd db Im = ρ M = b ( d 2) 三角形 M = ρ 三角形の面積 Im = ρ ( Ix + Iy) 円形 I m 2 π d = ρ 4 I m 4 π d = ρ 32 一般形 M = ρ da Im = ρ ( Ix + Iy) 線形 ρ L = 単位長さ当たり質量 M = ρ L L 3 L Im ρ L = 12 偏心質量 偏心質量 : m M m = 偏心質量の重量中心に対する回転慣性モーメント : I O 2 Im = IO + mr Ⅱ-3-6

18 3. 固有値解析 3.2 Ritz ベクトル解析 Ritz ベクトル解析は構造物の動的特性を表す固有振動数とモード形状を求める方法で 固有ベクト ル解析より効率的な方法であると知られています この方法は 多自由度構造物のモード形状を仮定し て単自由度構造物に置換して固有振動数を求める Rayleigh-Ritz 方法を拡張したものです まず n 自由度の構造物の運動方程式で変位ベクトルが次のように p 個の Ritz ベクトルの組合せで 表現されると仮定します この際 P は n より等しいか小さい ここで Mu&& ( t ) +Cu& ( t ) +Ku( t ) = p( t) (3.2.1) p i i (3.2.2) i= 1 () = () = () ut ψ z t Ψz t M : 構造物の質量マトリックス C K : 構造物の減衰マトリックス : 構造物の剛性マトリックス U(t) : n 自由度構造物の変位ベクトル Z(t) : 一般化座標 (generalized coordinate) P(t) : 動的荷重ベクトル ψ i : i 番目 Ritz ベクトル z i (t) : i 番目一般化座標 T Ψ= ψ1lψil ψp : Ritz ベクトル行列 上記の仮定により n 自由度の運動方程式は次のように p 自由度の運動方程式に縮小されます Mz %&&() t +Czt %&() +Kzt % () =pt %() (3.2.3) ここで T M % = Ψ MΨ : 縮小された運動方程式の質量マトリックス T C% = Ψ CΨ : 縮小された運動方程式の減衰マトリックス T K % = Ψ KΨ : 縮小された運動方程式の質量マトリックス T pt %() = Ψ pt () : 縮小された運動方程式の動的荷重ベクトル Ⅱ-3-7

19 Part Ⅱ 縮小された運動方程式に対して次のような固有値式を構成して解析を遂行します Kφ %% = % ω Mφ % % (3.2.4) 2 i i i ここで φ% i : 縮小された運動方程式のモード形状 ω% i : 縮小された運動方程式の固有振動数 上記の固有値式を用いると 古典的減衰行列を仮定する際に縮小された運動方程式を次のように各モードの単自由度運動方程式に分離することができます T 2 Ψ p% i () t q&& i() t + 2 ξω% i iq& i() t + % ωi q() t = (3.2.5) Ψ T MΨ ここで p i i i= 1 zt () = φ % q () t (3.2.6) qi () t : i 番目モード座標 ξ i : i 番目モード減衰比 縮小された運動方程式の固有値解析の解 ω% は元の運動方程式の固有振動数に対する近似解を i 意味します ω = % i ωi (3.2.7) ここで ω i : i 番目モード減衰比 構造物のモード形状は 運動方程式の変位ベクトルとモード座標の間のマッピング関係を定義するベクトルです したがって Ritz ベクトル解析による近似的モード形状は元の運動方程式の変位ベクト ル ut () とモード座標 q () t の間の以下のような関係式によって定義される i p ut () Ψz() t Ψφ q () t = = [ % ] (3.2.8) i= 1 i i Ⅱ-3-8

20 3. 固有値解析 したがって i 番目モード形状の近似解は次のように定義されます φ = Ψφ% (3.2.9) i i ここで φ i : i 番目モード形状の近似解 Ritz ベクトル解析による近似的モード形状ベクトルは固有値解析によるものと同じく 元の質量及び 剛性行列に対して直交性を持っています Ritz ベクトル解析による固有振動数とモード形状の近似解は一般固有値解析の解と同じく モード刺 激係数とモードごとの有効質量の計算に使われます Ritz ベクトル解析結果を用いてモード重ね合わせ法による時刻歴解析を遂行する場合は式 (3.2.5) の 運動方程式を使います 構造物の変形形状を仮定する Ritz ベクトルは一般的に構造物に加わる荷重に対する変位を反復的 に計算して生成することになります まず ユーザーが初期荷重ベクトルを選定します ここで 動的荷重は時間によっては変化しますが 各自由度別の分布はユーザーが指定したベクトルに従います 次は選定された初期荷重ベクトルに対 して一次的に静的解析を遂行して 1 回目の Ritz ベクトルを求めます (1) (1) Kψ =r, ψ =K r (1) 1 (1) (3.2.10) ここで K : 構造物の剛性マトリックス (1) ψ : 1 回目の Ritz ベクトル (1) r : ユーザーが指定した初期荷重ベクトル このようにして求められた1 回目の Ritz ベクトルを構造物の変位で仮定します しかし 上記の静的荷重は構造物の動的応答によって発生する慣性力を無視しています したがって 追加的な反復計算を通じて変位を計算するようになります とりあえず 構造物の加速度分布は既に計算された変位ベクトル つまり 1 回目の Ritz ベクトルに従うと仮定します したがって 加速度によって発生する慣性力は Ⅱ-3-9

21 Part Ⅱ 質量ベクトルをかけることで計算でき この慣性力が構造物に追加的な変位を発生させる荷重として作 用すると仮定して再び静的解析を遂行します (2) (1) Kψ =Mψ, (2) 1 (1) ψ =K Mψ (3.2.11) ここで M : 構造物の質量マトリックス (2) ψ : 2 回目の Ritz ベクトル このように求められた 2 回目の Ritz ベクトルもまた 静的釣り合いだけを表現する上式で考慮してい ない加速度分布を表すと仮定して 上記の仮定を繰り返しながらユーザーが指定した個数ぐらい Ritz ベクトルを計算します ユーザーは複数の初期荷重ベクトルを指定することができ それぞれに対して生成する Ritz ベクトル数を個別に指定することができます ただし 生成する Ritz ベクトルの全体個数は運動方程式に存在する実際モード個数を超えることはできません また 反復過程で既に生成された Ritz ベクトルに対して線形従属 (linearly dependent) 的な Ritz ベクトルが計算されれば これを削除するようになります 線形独立 (linearly independent) 的な Ritz ベクトルが計算できなくなった場合は 反復過程を終了することになります これは ユーザーが指定した初期荷重ベクトルのみで 指定した数のモードを求められないことを意味します プログラムでユーザーが選定できた初期荷重ベクトルは 全体座標系 X Y 及び Z 方向地盤加速度 により慣性力 ユーザーが入力した全ての静的荷重条件と非線形連結要素の部材力ベクトルになりま す 全体座標系 X,Y および Z 方向の地盤加速度による慣性力は主に該当方向の地盤加速度によって 発生する変位に関する Ritz ベクトルを求めるために使われます ユーザー入力静的荷重条件は特定な分布を持つ動的荷重に対する Ritz ベクトルを求める際に使用 します 通常の静的荷重条件 ( 固定荷重 積載荷重 風荷重など ) を使用するか Ritz ベクトル生成のた めに静的荷重条件を作って使用することもできます Ⅱ-3-10

22 3. 固有値解析 非線形連結要素の部材力ベクトルは 各非線形連結要素で発生する部材力の構造物に対する影響を反映する Ritz ベクトルを生成するためのものです 要素が持つ6 個の変位自由度でユーザーがチェックした項目に対して個別的に単位力を持つ初期荷重ベクトルを構成して Ritz ベクトル生成に利用します ( しかし 非線形連結要素を含む構造物の解析では 必ずこれを利用しなければならないことではなくて ユーザーの判断によって与えられた解析条件での構造物変形形状を十分反映できる初期荷重ベクトルを選定します ) 固有値解析と比較する際の Ritz ベクトル解析の長所は以下のようになります Ritz ベクトルは少ない数のモードを計算しても 実際荷重に対する静的解析の解に基づくので その過程に高次モードの影響が自動的に反映されます 例えば Ritz ベクトル解析によって求められた1 次モードのモード形状と固有値解析から求めた1 次モードのモード形状の違いは 前者に反映された高次モードの成分を意味すると言えます 又 構造物に適用する荷重によって加振されるモード形状だけが計算されるので必要ないモードの計算は除かれます 以上のような原理で Ritz ベクトル解析は正確な解析結果を得るために必要なモード個数を減らせま す 特定なモードごとの有効質量の合計を確保するために必要とするモード数は一般的に Ritz ベクト ル解析の場合が固有値解析の場合より少ないです Ⅱ-3-11

23 Part Ⅱ Ⅱ-3-12

24 4. 減衰の考慮 4. 減衰 4.1 概要 動的解析で構造物の減衰は大きく次のように分類することができます 比例減衰 質量比例型 剛性比例型 レーリー型 Caughey 型 非比例減衰 エネルギー比例型 要素別減衰 粘性減衰 (Voigt 型 Maxwell 型 ) 履歴型減衰 摩擦減衰内部摩擦減衰 ( 材料減衰 ) 外部摩擦減衰すべり摩擦減衰 逸散減衰 動的解析で構造物の減衰は運動方程式を構成する減衰マトリックスを剛性と質量の比率で表現でき るかによって 大きく比例減衰と非比例減衰で区分することができます 非比例減衰は 部分別に異なる減衰特性を持つ材料を使うとか 追加で減衰装置が設置された場合にそれぞれの減衰を別途評価して各部分の減衰モデルから全体の減衰マトリックスを構成する方法です しかし 実際の構造における減衰は非常に複雑な問題で 正確な減衰メカニズムは把握しにくい場合が多いです したがって 振動解析では固有振動解析から得られた主要モード成分の減衰特性を適切に表現して 得られた比例減衰で 減衰マトリックスを仮定する場合が一般的です 比例減衰は 古典的減衰 Ⅱ-4-1

25 Part Ⅱ (Classical Damping) とも呼ばれ 固有モード行列を減衰行列の左右に掛ければ 対角成分だけを持つ 行列を求めることができるので モード別に減衰定数を分離することができます 一方 非比例減衰を考慮する場合は モード別に減衰定数を分離することができないので 構造物 の固有値解析を通じて得たモード形状に基づいて ひずみエネルギー概念を導入してモードごとの減 衰定数を求めることができます プログラムでは 応答スペクトル解析では荷重 > 応答スペクトル解析データ > 応答スペクトル荷重ケ ースから設定し 時刻歴解析では荷重 > 時刻歴応答解析データ > 時刻歴荷重ケースから設定します 時刻歴解析の解析手法によって 設定可能な減衰手法は次のようになります 1. 応答スペクトル解析およびモード重ね合わせ法による時刻歴解析の減衰設定 モード減衰 質量 & 剛性比例減衰 ( レーリー減衰 ) ひずみエネルギー比例減衰 2. 直接積分法による時刻暦解析の減衰設定 モード減衰 質量 & 剛性比例減衰 ( レーリー減衰 ) ひずみエネルギー比例減衰 要素別の質量 & 剛性比例減衰 また 汎用リング要素に線形粘性減衰であるダンパーを設定し 構造物で設置される線形減衰機 (Kelvin Model) をモデリングすることもできます ただし 汎用リンク要素の線形減衰は応答スペクトル解析およびモード重ね合わせ法による解析の場合 減衰方法をひずみエネルギー比例減衰を選択した場合だけモードごとの減衰定数に反映されて間接的に適用されます 直接積分法による時刻歴解析の場合 減衰方法を質量 & 剛性比例減衰または要素別の質量 & 剛性比例減衰で設定した場合要素減衰マトリックスを通じて解析に直接反映されてひずみエネルギー比例減衰の場合はモードごとの減衰定数に反映されて間接的に考慮できます Ⅱ-4-2

26 4. 減衰の考慮 以下にモード重ね合わせ法と直接積分法における減衰の考慮方法について説明します 構造物の運動方程式は次のようになります Mu&& () t + Cut &() + Kut () = pt () (4.1.1) ここで M : 質量マトリックス C : 減衰マトリックス K : 剛性マトリックス ut (), ut &(), ut &&() : 節点の変位 速度 加速度 p() t : 動的荷重 応答スペクトル解析及びモード重ね合わせ法による時刻歴解析の概念は 式 (4.1.1) をモードの直交 性を利用してモード分解して 式 (4.1.2) のようにモード分解された各モードの運動方程式の解を重ね合 わせて解析します したがって 先に固有値解析を行う必要があります ここで T 2 φ p() t i q&& () t + 2 ξωq& () t + ω q() t = (4.1.2) i i i i i T φ Mφ φ i : i- 番目モードのモードベクトル ξ : i 番目モードの減衰定数 i ω : i 番目モードの固有振動数 i q () t, q& () t, q&& () t : i 番目モードの一般化変位 速度 加速度 i i i i i したがって 応答スペクトル解析及びモード重ね合わせ法いよる振動解析では 減衰手法に関わら ずにモードの減衰定数 ξ によって減衰を考慮することができます i 直接積分法による時刻歴解析は数値積分法によって 2 系の運動方程式 (4.1.1) の解を直接求めま す したがって 運動方程式の構成時に減衰マトリックスを構成する必要があります Ⅱ-4-3

27 Part Ⅱ 4.2 比例減衰 質量比例型減衰は空気抵抗などによる外部の粘性減衰を表現したもので 減衰マトリックスが質量に比例すると仮定しています 一方 剛性比例型減衰は逸散減衰効果 ( 振動エネルギーの地盤への放出効果 ) を直接表現しにくいので その効果を剛性に比例すると仮定しているので 高次モードの減衰を過大評価する恐れがあります 比例減衰マトリックス C の一般形は Caughey によって次式のように定義されます N 1 1 j = j ( ) (4.2.1) C M a M K j= 0 ここで j, N : 節点の自由度 ( モード次数 ) 式 (4.2.1) で M 1 K は次のように非減衰系の自由振動式から求めることができます { } { } { y} { u} e iax M y && + K y = 0 (4.2.2) = (4.2.3) で仮定して これを式 (4.2.2) に代入すると ( ω 2 M + K){ u} = { 0} (4.2.4) 1 2 となり 式 (4.2.4) から M K = ω になります ここで ω 2 はモード数だけ存在し モード次数を考慮して ω と表記する 2 s 式 (4.2.2)~(4.2.4) から求めた M 1 K を式 (1) に代入し 左側に { u } T を掛けて 右側に { u } s s を 掛けると 式 (1) は次のようになります N 1 N 1 T 2j T 2j { us} C{ us} = Cs = aj ωs { us} M{ us} = aj ωs Ms (4.2.5) j= 0 j= 0 また s 次モード減衰定数 ξ は 次のように表現することができます s C = 2ξ ω M (4.2.6) s s s s Ⅱ-4-4

28 4. 減衰の考慮 式 (4.2.5), (4.2.6) で N 個の固有モードに対する減衰定数 ξ は次のようになります s C 1 ξ = = a ω s 2j s j s 2ωs Ms 2ωs 1 a a ω a ω a ω, s 1 N 0 3 2N 3 = + 1 s + 2 s + + N 1 s = 2 ωs (4.2.7) 質量比例型 剛性比例型の減衰定数および減衰マトリックスは次のように表現することができます a ξ =, C = a M = 2 ξ ω M : 質量比例型 (4.2.8) 0 s 0 s s 2ω s a ω 2ξ ξ =, C = a K = K : 剛性比例型 (4.2.9) 1 s s s 1 2 ωs 質量比例型 または 剛性比例型減衰はプログラムの応答スペクトル荷重ケース または 時刻歴荷 重ケースから減衰手法を 質量 & 剛性比例減衰 を選択し 質量比例型と剛性比例型をそれぞれ選択 して設定します ξ s ξ s C = a0m a0 ξs = 2ω s C = a1k a ωs ξ = s 1 2 ω1 ω 2 ω3 ω4 ω s ω1 ω 2 ω3 ω4 ω s (a) 質量比例型 (b) 剛性比例型 図 モード別の減衰率 Ⅱ-4-5

29 Part Ⅱ 4.3 レーリー減衰 ( 質量 & 剛性比例減衰 ) 概要 レーリー型減衰は 剛性比例型減衰での高次モードの減衰定数を修正したもので 図 4.3.1(b) のように減衰マトリックスを構造物の質量マトリックスと剛性マトリックスの線形和で構成します i 次モードの減 衰定数 ξi と固有振動数 ω i 及び j 次モードの減衰定数 ξ と固有振動数 ω が与えられた場合 レーリ ー型減衰の減衰マトリックスは次のようになります ここで i j 次モードは構造物の主な 2 つのモードです j j C = a0m + a1k (4.3.1) 1 a 0 ξs = + a1 ωs 2 ωs ここで ( ) ( ω j ωi ) 2 ω i ω j ξi ω j ξ j ω i a = a = ( ξ j ω j ξi ω i) ( ω j ωi ) (4.3.2) (4.3.3) (4.3.4) ξ s C = a M ξ 0 a0 s = C = a1k 2ω s a1 ωs ξs = 2 ξ s ξ C = a0m + a1k a0 a1 ωs ξs = + 2ω 2 s ω1 ω 2 ω3 ω4 ωs ωi ω j ωs (a) 質量比例型と剛性比例型減衰 (b) レーリー減衰 図 モード別の減衰定数と固有振動数との関係 Ⅱ-4-6

30 4. 減衰の考慮 a0 と a1 は 応答スペクトル荷重ケース または 時刻歴荷重ケースから 次のように設定することができます 1. 直接入力 ユーザーが a 0, a 1 値を直接入力します 2. モード減衰定数から自動計算 固有値解析から得られた振動数 または 固有周期 そして i j 次モードの減衰定数をユーザーが入力すると 式 (4.3.3),(4.3.4) を利用して a 0, a 1 値を自動計算します たとえば i, j 次の振動数とモードの減衰定数がそれぞれ f = 1.0Hz, f = 1.25Hz ξ = 0.05, ξ = 0.05 の場合 a i 0, a 1 値を求めると 次のようになります j i j 固有振動数 2π 2π ω1 = = 6.28, ω2 = = 式 (4.3.3), (4.3.4) を利用して a 0, a1 を手計算 a 0 a 1 ( ) = = ( ) = 2 2 = プログラムでの a 0, a1 の自動計算 Ⅱ-4-7

31 Part Ⅱ レーリー型減衰は応答スペクトル解析 モード重ね合わせ法 直接積分法による時刻歴解析ができ ますし 応答スペクトル荷重ケース または時刻歴荷重ケースから 減衰手法を質量 & 剛性比例減衰を 選択した後 質量比例型と剛性比例型の両方を選択して設定します Ⅱ-4-8

32 4. 減衰の考慮 応答スペクトル法 モード法におけるレーリー減衰 応答スペクトル解析およびモード重ね合わせ法による振動解析は 構造物の運動方程式を固有値 解析時に設定したモード数で分解して 各モードの運動方程式を重ね合わせて解析します したがって レーリー型減衰の場合は 振動時に主な 2 つのモードで決まる a 0, a 1 値を式 (4.3.2) に代入して使用するモード数ぐらい減衰定数を求める必要があります 主なモードで決定された a 0, a 1 値を用いてモードごとの減衰定数を求める方法は以下のようになりま す 例えば a 0 = 0.35, a 1 = で 3 次モードまでを考慮する場合のモードごとの減衰定数 ξs を求めると次のようになります ただし 固有振動数は ω 1 = ω 2 = ω 3 = と 仮定します 次モードの減衰定数の計算 1 a 0 ξs = + a1 ωs 2 ωs 1 1 ξ1 = = ξ2 = = ξ3 = = プログラムでの出力結果 (Output File) RAYLEIGH DAMPING COEFFICIENT, TIME LOADCASE = MASS COEFFICIENT. : STIFFNESS COEFFICIENT. : MODE FREQUENCY DAMPING RATIO NO. [RAD/SEC] E E E E E E-02 ただし 上記のように求めたモードごとの減衰定数が ξs >1 の場合は ξ s = ξs <0 場合はξ s = 0.0 と処理されます の Ⅱ-4-9

33 Part Ⅱ 直接積分法におけるレーリー減衰 直接積分法でのレーリー型減衰は主な 2 つのモードで決まる a 0, a 1 値を利用して C = a0m + a1k のように減衰マトリックスを作成して運動方程式を構成して数値積分法で解を求めます 直接積分法を用いた非線形時刻歴解析では構造物が弾性領域を超えて塑性領域に入った場合 減衰マトリックス C = a0m + a1k の剛性 K を初期状態 ( 弾性状態 ) のままにすると 減衰力が過 大評価される恐れがあります プログラムでは部材が降伏して剛性が更新されれば 更新された剛性を減衰マトリックスを 構成する際に反映する機能を提供しています 減衰マトリックス構成する際の剛性更新は質量 & 剛性比例減衰と要素別の質量 & 剛性比例減衰だけ適用されます 設定方法は 時刻歴荷重ケースで減衰手法を質量 & 剛性比例減衰または要素別の質量 & 剛性比 例減衰にして 減衰行列の更新を Yes にすることで設定できます No を選択すると 部材の降伏状態 と関係ずに 初期剛性で減衰マトリックスを構成します Ⅱ-4-10

34 4. 減衰の考慮 4.4 歪エネルギーに基づいたモード減衰 概要 実際の構造物は材料によって異なる減衰特性を持ち 特定位置に減衰装置を設置する場合もある プログラムでは要素別レーリー減衰を利用し 要素別に異なる減衰特性を指定することができる しかし この場合は減衰マトリックスが非古典的な減衰となり モード分離ができない したがって 応答スペクトル解析及びモード重ね合わせ法の場合は 要素別に異なる減衰特性を考慮するためにひずみエネルギーの概念に基づいたモード別の減衰定数を適用する ひずみエネルギーに基づいたモード減衰は応答スペクトル解析及びモード重ね合わせ法 直接積分法による時刻歴解析で使用することができます ひずみエネルギーに基づいたモード減衰は応答スペクトル荷重ケース または 時刻歴荷重ケースの減衰手法をエネルギー比例減衰を選択して設定します ただし 直接積分法の時刻歴解析でひずみエネルギー比例減衰を考慮する場合は 減衰マトリックスがフルマトリックスになるので モード重ね合わせ法と比べて計算時間が長くなる可能性があります 粘性減衰を持つ単自由度振動系の減衰定数は 以下のように調和運動 (harmonic motion) における 消散エネルギー (dissipated energy) と構造物に保存されるひずみエネルギー (strain energy) の間の比 率で定義することができます ED ξ = (4.4.1) 4π E ここで E D : 消散エネルギー E S : ひずみエネルギー S Ⅱ-4-11

35 Part Ⅱ F = F + F D S F = K u S S ED = 2π h KA 2 A u ES FD 1 = KA 2 = Cu& 2 図 消散エネルギーとひずみエネルギー 多自由度系において 特定モードの動的挙動は該当する固有振動数を持つ単自由度系の動的挙動から把握することができます この時 特定要素の消散エネルギーとひずみエネルギーを計算する際に以下の 2 つの仮定を適用します まず 構造物の変形はモード形状に比例すると仮定します i- 番目のモードだけが該当固有振動数で調和振動する構造物の要素節点変位と速度ベクトルは次のようになります u u& ( t ) ( t ) = φ sin ω + θ in, in, i i = ω φ cos ω + θ in, i in, i i (4.4.2) ここで u : i- 番目モードの振動による n- 番目要素節点変位 in, u& : i - 番目モードの振動による n- 番目要素節点速度 in, φ in, : n- 番目要素の自由度に該当される i- 番目モードの形状 ω i : i- 番目モードの固有振動数 θ i : i- 番目モードの位相角 (phase angle) 2 つ目は 要素の減衰は要素剛性に比例する粘性減衰と仮定します ここで C n 2h n = Kn (4.4.3) ω i Ⅱ-4-12

36 4. 減衰の考慮 C n : n- 番目要素の減衰マトリックス K n : n- 番目要素の剛性マトリックス h n : n- 番目要素の減衰定数 上記の式の仮定によって 要素の消散エネルギーとひずみエネルギーは次のように示すこと ができます ( ) E i, n = πu C u& = 2πhφ K φ T T D in, n in, n in, n in, 1 1 E ( i, n) = u K u = φ K φ 2 2 T T S in, n in, in, n in, (4.4.4) ここで E D (i, n) : i- 番目モードの振動による n- 番目要素の消散エネルギー E S (i, n) : i- 弁目モードの振動による n- 番目要素のひずみエネルギー 全体構造物の i- 番目モード減衰定数はすべての要素の i- 番目モードに該当するエネルギーの和で 計算することができます ξ N N T ED ( i, n) hnφi, nknφi, n n= 1 n= 1 i = = N N T 4 π ES( i, n) φi, nknφi, n n= 1 n= 1 (4.4.5) Ⅱ-4-13

37 Part Ⅱ 減衰の設定と計算方法 ひずみエネルギーに基づいたモード減衰の設定は まず グループから違う減衰特性を指定する要素と境界をグループ定義します グループ減衰の 指定した要素と境界条件 から要素グループと境界条件グループごとに減衰定数を指定します 要素グループと境界グループに含まれてない部分は 定義してない要素と境界条件 から減衰定数を指定します 固有値解析を遂行すると 定義した要素グループと境界グループ別の減衰定数を利用してひずみエネルギーに基づいたモード別の減衰定数を計算することができます α とβの自動計算 を選択すると 時刻歴解析で減衰方法をひずみエネルギー比例減衰で指定した場合のみモードごとの減衰を計算するので注意する必要があります 応答スペクトル解析及びモード重ね合わせ法による解析では 構造物の運動方程式をモード別に分 解して 各モードの運動方程式にひずみエネルギーに基づいて求めたモードごとの減衰定数 ξ を適 用して解を求めます s 直接積分法による時刻歴解析では ひずみエネルギーから求めたモードごとの減衰定数 ξ と固有 振動数 ω モードマトリックスなどを利用して全体構造物の減衰マトリックスを作成して運動方程式を構 成します i s Ⅱ-4-14

38 4. 減衰の考慮 4.5 モード減衰 モードごとの減衰はモードごとにユーザーが直接減衰定数を定義して 定義されたモードごとの減衰定数によってモードごとの応答を計算します モードごとの減衰は 応答スペクトル解析及びモード重ね合わせ法 直接積分法の時刻歴解析で使用可能です ただし 直接積分法によるモードごとの減衰を考慮する場合は 減衰マトリックスが非対称マトリックスになるのでモード重ね合わせ法に比べて計算時間が長くなる恐れがあります モード別の減衰の設定は応答スペクトル荷重ケース または時刻歴荷重ケースから 減衰手法 をモード減衰にして モード別の減衰定数入力 テーブルからモード別の減衰定数を入力します ここ で指定しないモードの減衰定数は 全モードに対する減衰定数 で入力した値が適用されます 応答スペクトル解析とモード重ね合わせ法による解析では 構造物の運動方程式をモードご とに分解して 各モードの運動方程式にユーザーが直接入力したモードごとの減衰定数 ξ を適 用して解を求めます s 直接積分法による時刻歴解析では入力されたモードごとの減衰定数 ξ と固有振動数 ω そ してモードマトリックスなどを利用して全体構造物の減衰マトリックスを作成し運動方程式を構成します s s Ⅱ-4-15

39 Part Ⅱ 4.6 要素別のレーリー減衰 ( 要素別の質量 & 剛性比例減衰 ) 要素別レーリー減衰は 構造物を構成する特定の部材 または 境界部分に要素別に異なる減衰を適用する機能で 構造物に減衰が異なる材料が混在する場合や 制震および免震装置が設置されている場合に使用します 要素別に減衰特性を考慮する場合 減衰マトリックスはほぼ非比例減衰となってモード分離ができません したがって 要素別のれーリー減衰は減衰まトリックを直接作成する直接積分法による時刻歴解析にだけ適用できます 応答スペクトル解析及びモード重ね合わせ法を用いた解析で 要素ごとに異なる減衰特性を反映するためにはグループ減衰で要素グループと境界条件グループ別に異なる減衰定数を設定して 固有値解析を通じてひずみエネルギーの概念に基づいたモードごとの減衰定数を算定して解析を行う必要があります プログラムで 要素ごとのれーリー減衰の設定は まず 異なる減衰特性を指定する要素と境界をグループで指定します グループ減衰の 指定された要素と境界条件の減衰定数 の質量比例 & 剛性比例に要素グループと境界グループ別に質量比例係数 (α) と剛性比例係数 (β) を入力します 要素グループと境界グループに入らない部分の減衰定数は 指定されていない要素と境界条件の減衰定数 の質量比例 & 剛性比例から入力します 要素別のレーリー減衰は要素別に入力された α, β を利用して C = αm + β K のような要素の減衰マトリックスを作成して運動方程式を構成します 要素別レーリー減衰はレーリー減衰に基づくので 部材 n の α n, β n はレーリー減衰と同様に計算します ただし 現在のプログラムでは質量比例係数 (α) は使用できないので 要素別の剛性比例型減 衰だけが使用できます Ⅱ-4-16

40 4. 減衰の考慮 4.7 減衰マトリックスの構成 直接積分法による時刻歴解析で減衰手法をモード減衰 または ひずみエネルギー比例減衰にした 場合 減衰マトリックスはフルマトリックスタイプになり 入力されたモードごとの減衰定数 ξ と固有振動 数 ω そしてモードマトリックスなどを利用し全体構造物の減衰マトリックスを作成する必要があります i s 全体構造物の減衰マトリックスは次のようになります O T C= MΦ 2ξω i i Φ M O (4.7.1) ここで C : 全体構造物の減衰マトリックス M : 全体構造物の質量マトリックス ξ i : 全体構造物の i- 番目モード減衰定数 Φ : モード形状 { i... nf} Φ= Φ Φ Φ Φ nf : 使用するモード数 Ⅱ-4-17

41 Part Ⅱ 4.8 汎用リンク要素と線形減衰の考慮 汎用リンク要素は制震装置 免震装置 圧縮または引張専用要素 塑性ヒンジ 地盤バネなどをモデ リングするときに使用する要素で 2 つの節点間を結ぶ 6 つのバネで構成されます 汎用リンク要素は 線形粘性減衰を設定し構造物に付加的に設置する減衰装置をモデリングすることができます 汎用リンク要素の線形粘性減衰は要素タイプの場合 線形ダッシュポットとバネと線形ダッシュポット を選択して 線形プロパティの減衰係数から設定します 力タイプの場合は 線形プロパティの有効減 衰係数から設定します 汎用リンク要素の線形粘性減衰に関する詳細は汎用リンク要素で説明します ここでは ひずみエネ ルギーに基づいたモード減衰を考慮する場合 汎用リンク要素の線形粘性減衰を考慮してモードごと の減衰定数を求める方法について説明します 汎用リンク要素の線形粘性減衰である減衰係数 または 有効減衰係数は次のように入力されると仮 定します C eff 2ξ eff = Keff (4.8.1) ω eff ここで C eff : 減衰係数 または有効減衰定数 K eff : 汎用リンク要素の剛性 ξ eff : 汎用リンク要素の減衰定数 ω eff : 汎用リンク要素の固有振動数 上記の仮定から 汎用リンク要素のひずみエネルギーの計算時に線形粘性減衰を反映すると i- 番 目モードの減衰定数は次のようになります ξ N ( ) N T T ( φ, φ, + ωφ, φ, ) E i, n h K 0.5 C D n ni n ni i ni eff ni n= 1 n= 1 i = = N N T 4 π ES( i, n) φn, iknφn, i n= 1 n= 1 (4.8.2) 上記の式から計算されたモード別減衰定数は 応答スペクトル解析およびモード重ね合わせ 法による時刻暦解析と同様に適用されます Ⅱ-4-18

42 5. 応答スペクトル解析 5. 応答スペクトル解析 プログラムの応答スペクトル解析で地震力が発生している構造物の動的つり合い方程式は 次のよう になります ここで... [ ] [ ] [ ] [ ] M ut () + Cut () + Kut () = M w() t (5.1.1) [ M ] : 質量マトリックス [ C ] : 減衰マトリックス [ K ] : 剛性マトリックス w g : 地動加速度 u(t), ut &(), ut &&() : 相対変位 速度 加速度 g 応答スペクトル解析は 多自由度系を単一自由度系の構造体と仮定して あらかじめ数値積分によって任意の固有周期 ( または 振動数 ) に対する最大応答値に対するスペクトル ( 加速度 速度 変位等 ) を用いて 組み合わせ解析をする方法で 設計用スペクトルを用いた耐震設計に活用します 応答スペクトル解析では 任意モードでの最大応答値を各モードごとに求めた後 適切な組み合わせ法に用いて組み合わせすることで最大応答値を計算します 例えば 耐震解析時に任意モードの任意自由度に対する変位と慣性力は 次のように計算されます d = Γ ϕ S, Fxm = Γ mϕ xmsamwx (5.1.2) xm m xm dm ここで Γ m : m 次モードの刺激係数 ϕ xm : 任意 x 位置での m 次固有ベクトル S dm : m 次振動の正規化変位応答スペクトル S am : m 次振動の正規化加速度応答スペクトル W x : 任意 x 位置での質量 構造解析プログラムで 任意周期に対する応答スペクトル関数のデータを入力すれば 解析された固有周期から応答スペクトル値を求めるために 一般的に線形補間法を使用するので 応答スペクトル曲線の変化が急な部分に対しては できるでけ細分化されたデータを使用することが望まれます ( 図 参照 ) 応答スペクトル関数の周期の範囲は 必ず固有値解析で算出された最大最小の固有周 Ⅱ-5-1

43 Part Ⅱ 期の範囲が含まれるように 入力する必要があり プログラムでは スペクトルを地盤種別 地域係数 重要度係数等を入力することで容易に作成できます プログラムは 全体座標系 X-Y 平面の任意方向と Z 方向に対する応答スペクトル解析が可能で モ ードごとの解析結果の重ね合わせ法は ユーザーによって CQC 法 (Complete Quadratic Combination) と SRSS 法 (Square Root of the Sum of the Squares) などを選択することができます 各モードごとの応答値の重ね合わせ法は 次のようになります SRSS (Square Root of the Sum of the Squares) 1/ Rmax = R1 R2 R + + L + n (5.1.3) ここで ABS (Absolute Sum) R = R + R + L + R (5.1.4) max 1 2 CQC (Complete Quadratic Combination) 1/2 n N N Rmax = Ri ρijrj (5.1.5) i= 1 j= 1 ρ = ij 8ξ 1 ( + ) r r 2 3/2 2 2 ( 1 r ) + 4ξ r( 1+ r) 2 2, ω j r = ω i R max : 最大応答値 R i : 任意 i 次モードでの最大応答値 r : i 次モードに対する j 次モードの固有振動数の比率 ξ : 減衰定数 上式 (5.1.5) で i = j であれば 減衰定数に関係なく ρ ij = 1 になり 減衰定数 (ξ ) がゼロの場合 CQC 法と SRSS 法の結果値は同じになります 上記の方法の中では ABS 法が最も大きな組み合わせ値を算出します SRSS 法は 固有振動数が 接近した値になる場合 組み合わせ結果が過大または過小評価される傾向がありますので 従来は Ⅱ-5-2

44 5. 応答スペクトル解析 SRSS 法がよく使われましたが 最近は 各モード間の確率的な相関性が考慮できる CQC 法の使用が増えています 例えば 減衰定数が 0.05 で 3 個の自由度を持つ構造物の固有振動数と各モードごとの変位が次のように計算された場合 SRSS 法と CQC 法の計算結果を比較すると次のようになります 固有振動数 ω 1 = 0.46 ω 2 = 0.52 ω 3 = 1.42 モード別の最大変位 : D ij (j 次振動における i 自由度の変位成分 ) D ij = 各自由度に対する応答値を SRSS 法で求めると 1/2 { } Rmax = R1 R2 R = 0.042,0.043,0.052 CQC 法で求めると ρ12 = ρ21 = ρ13 = ρ31 = ρ23 = ρ32 = Rmax = R1 R2 R3 2ρ12RR 1 2 2ρ13RR 1 3 2ρ23RR = { 0.046,0.041,0.053} 1/2 上記の2つの結果を比較すると SRSS 法の場合が CQC 法に比べて 1 番目の自由度成分に対しては過小評価されて 2 番目の自由度成分に対しては過大評価されました したがって 固有振動数が相対的に接近した値の場合は SRSS 法が過小または過大評価された結果を算出していることがわかります Ⅱ-5-3

45 Part Ⅱ Spectral Data S7 S6 Sx = ( Tx T6) + S6 T7 T6 固有値解析によって算出された固有周期 周期 [ sec ] 図 応答スペクトル曲線及び任意周期に対する応答スペクトル値の参照方法 Ⅱ-5-4

46 6. 時刻歴応答解析 6. 時刻歴応答解析 6.1 概要 時刻歴応答解析で使用する動的つり合い方程式は 次のようになります On-line Manual の " 荷重 > 時刻歴応答解析データ " を参照 ここで... [ ] [ ] [ ] M ut () + Cut () + K ut () = pt () (6.1.1) [ M ] : 質量マトリックス [ C ] : 減衰マトリックス [ K ] : 剛性マトリックス pt (): 動的荷重 u(t), ut &(), ut &&(): 変位 速度 加速度 時刻歴応答解析は 構造物に動的荷重が作用する場合の動的つり合い方程式の解を求めることで 構造物の動的特性と加わる荷重を用いて任意の時間に対する構造物の挙動 ( 変位 断面力等 ) を計算 すします 時刻歴応答解析では モード重合法と直接積分法を使用しています 次は モード重ね合わせ法と直接積分法に対する概略的な概念とデータ入力時に注意しなければ 事項を述べます Ⅱ-6-1

47 Part Ⅱ 6.2 モード重ね合わせ法 構造物の変位をお互いに直交性を持つ変位形状の線形組み合わせ形態で求める方法で 次のよう に表現できます この方法では減衰マトリックスが質量マトリックスと剛性マトリックスの線形組み合わせ で成り立つと仮定します [ C] α[ M] β[ K] = + (6.2.1) T T T T Φ M Φ qt &&() +Φ CΦ qt &() +Φ KΦ qt () =Φ Ft () (6.2.2) mq&& () t + cq& () t + kq() t = P() t ( i = 2,3,4, L, m) (6.2.3) i i i i i i i ここで m ut () = Φiqi() t (6.2.4) i= 1 (0) i it i iqi qi() t e ξω ξω & = qi(0)cosωdit + sinωdit ωdi 1 + mω i t ξω i i( t τ) P( ) sin ( ) 0 i τ e ωdi t τ dτ (6.2.5) Di ω = ω 1 ξ 2 Di i i (6.2.6) ここで a 0, a 1 : レーリー係数 ξ i : i 次モードの減衰定数 ω i : i 次モードの固有円振動数 Φ i : i 次モードの固有ベクトル q i (t) : i 次モードによる1 自由度系の振動方程式の解 時刻歴応答解析で構造物の変位は 式 (6.2.4) のようにモード形状と単自由度系方程式の解との積で 決定されて 変位の正確性は使用するモード数に影響を受けます この方法は構造解析プログラムで 一般的に使用する方法で 大型構造物の時刻歴解析を行う時に効果的な方法です しかし 非線形動 Ⅱ-6-2

48 6. 時刻歴応答解析 的解析や特別な減衰装置が含まれて減衰を剛性と質量の線形組み合わせで仮定できない場合は使 用できない短所があります モード重合法を利用する場合必要になるデータと入力時の注意事項は次のようになります 全体解析時間 ( または 解析回数 ) : 解析しようとする時間や解析回数 解析時間間隔 : 解析に使われる時間間隔で 解析の精度に大きな影響を及ぼし 時間間隔の大きさは構造物の高次モードの周期や荷重の周期密接な関係があります 解析時間の間隔は 式 (6.2.5) の積分項に直接影響を及ぼすので 不適切な値が入力された場合は 不正確な結果になります 一般的に 考慮する最高次モードの固有周期に対して その約 1/10 程度の時間間隔が良いです また 解析時間の間隔は入力された荷重の時間間隔より小さくする必要があります T p Δ T = (6.2.5) 10 ここで Tp は考慮する最高次モードの固有周期 モードごとの減衰定数 ( または レーリー係数 ) : 構造物の減衰を決定するために必要な 値で 全体構造物の減衰定数や各モードごとの減衰定数 動的荷重 : 構造物の節点や基礎部に直接加振される動的荷重で 時間の関数で表示さ れて 全体荷重変化を十分示す必要があります 入力されてない時間での荷重は線形補 間して適用します Ⅱ-6-3

49 Part Ⅱ 6.3 直接積分法 直接積分法は動的釣り合い方程式を微少時間ごとに積分して解を求める方法です 釣り合い方程式の形態変化なして時間段階ごとに積分を使用して解を求めることになり 使用方法によって多様な積分方法が使われることもできます プログラムでは収束性の良い Newmark 法を使用して直接積分法を行っています 基本的な仮定と積分方法は以下のようになります u& = u& + [( 1 δ ) u&& +δ u&& ] Δt (6.3.1) t+δ t t t t+ Δt 式 (6.3.2) から t 1 u = u + u& Δ t + [( α ) u&& +α u&& ]Δt (6.3.2) 2 t+δ t t t t t+ Δt 2 +Δ t u&& を求めて この値を式 (6.3.1) に代入して t t u 前段階の変位 速度 加速度と現在の変位で表現することができます ( ) ( ) u&& = f u, u, u, & u&& t+δ t t+δt t t t u& = f u, u, u, & u&& t+ Δt t+δt t t t +Δ & を計算すると式 (6.3.3) のように以 (6.3.3) 式 (6.3.3) を式 (6.3.4) のような動的釣り合い方程式に代入すると以前段階の変位 速度 加速度と現在の変位に関する式で示すことができ 式 (6.3.6) のような式で現段階の変位を計算することができます 現段階の変位を求めるとこの値と前段階の値を用いて 式 (6.3.8) のような現段階の加速度と速度を計算することができます 減衰は式 (6.3.9) のように剛性と質量を用いて比例式で計算します t+δ t t+δ t t+δ t t+δt [ M ] u&& + [ C] u& + [ K] u = p (6.3.4) [[ ] [ ] [ ]] t+δt K a M a C u = p+ [ M]( a u + a u& + a u&& ) + [ C]( a u + a u& + a u&& ) t+δt t t t t t t (6.3.5) [ ˆ ] t +Δ t t +Δ K u t ˆp = (6.3.6) [ ˆK ] = [ K] + a [ M] + a [ C] (6.3.7) 0 1 Ⅱ-6-4

50 6. 時刻歴応答解析 ˆp = p+ [ M]( a u+ a u& + a u&& ) + [ C]( a u+ a u& + a u&& ) t+δ t t+δt t t t t t t u&& = a ( u u) a u& a u&&, t +Δ t u t u a t u a t +Δ & = & + && + t u&& (6.3.8) t+δ t t+δt t t t ここで a 1 = a = a = a αδt δ a 4 1 α δ αδt Δt δ = a5 ( 2) 1 αδt = 1 1 2α = a = Δt1 ( δ) a = δδt α α, δ : Newmark 積分変数 (α= 0.5 δ= 0.25 の場合には常に安定 ) Δt : 積分時間間隔 [ C ] = ak [ ] bm [ ] + (6.3.9) ここで a, b : 減衰計算のための質量と剛性の比例定数 剛性や減衰の非線形性を考慮した解析のためには直接積分法を使用します 直接積分法の場合は 全ての時間ステップに対して解析を遂行するため時間ステップ数に比例して解析時間がかかります 直 接積分法を使用する場合に要求されるデータと入力時の注意事項は次のようになります 全体解析時間 ( または 解析回数 ): 解析しようとする時間や解析回数 解析時間間隔 : 解析に使用される時間間隔で 解析の精度に影響を与える可能性があり 時間間隔の大きさは構造物の高次モードの周期や荷重の周期と密接な関係を持っています 解析時間の間隔は式 (6.3.5) の積分項に直接影響を与えるので不適切な値が入力されると不正確な結果が得られます 一般的に考慮しようとする最高次モード周期の 1/10 程度の時間間隔が良いです また 解析時間間隔は入力された荷重の時間間隔よりも小さくする必要があります T p Δ t = 10 ここで T p は考慮しようとする最高次モードの周期 Ⅱ-6-5

51 Part Ⅱ 解析時間間隔数と解析にかかる時間は比例し m すので必要以上細かくしないようにしま す 剛性と質量を使用した減衰定義 : 剛性と質量の比例式で減衰を定義します 時間積分方法 : Newmark 方法の適用時に 必要な積分変数を入力します Constant Acceleration の場合は 全ての条件を満足しながら発散せずに安定的に収束しますが Linear Acceleration の場合は条件によっては収束しない場合もあります できれば Constant Acceleration に該当する積分変数を使用したほうがよいです 動的荷重 : 構造物の節点や基礎部に直接作用する動的荷重で時間の関数で表現され て 全体荷重の変化を十分に表現できる必要があります 入力されない時間での荷重値 は線形補間して使用します 次は ユーザーの理解のために 構造物の時刻歴解析に必要な基本的な事項を説明したものです 図 の単自由度構造物の運動を理想化したモデルです 単自由度系に作用する力のつり合い方程式は次のようになります ( ) ( ) ( ) ( ) f t + f t + f t = f t (6.3.10) I D E fi () t ( 慣性力 ) は 構造物の運動速度の変化に対して抵抗しようとする慣性効果を力で表現することで 大きさは m u(t & ) になり加速度の反対方向です fe () t ( 弾性復元力 ) は 構造物に変形が発生すると構造系がこれに抵抗してもとの位置へ戻そうとする性質による弾性復元力で その大きさは ku(t) で 変位と反対方向です fd( t )( 減衰力 ) は 構造物に追加の外力を加えない場合 ( 自由振動 ) 内部摩擦などによる運動エネルギーの消滅で運動振幅が小さくなる現象を考慮するための構造系内部の仮想の力で その大きさ は c u(t & ) で 速度の反対方向です Ⅱ-6-6

52 6. 時刻歴応答解析 ( 弾性復元力 ) ( 減衰力 ) ( 慣性力 ) ( 外力 ) (a) モデル (b) つり合い状態 図 自由度系の理想化モデル それぞれの力を整理すると次のようになります fi fd fe = mu&& () t = cu& () t (6.3.11) = ku() t ここで m は質量 c は粘性減衰係数 k は弾性係数です 図 の力のつり合い関係から変位に 対する単自由度構造物の運動方程式は次のようになります mu&& () t + cu& () t + ku() t = f () t (6.3.12) 上式で f() t = 0とした場合は 自由振動に対する方程式となり さらに c = 0 の場合は 非減衰自由 振動に対する振動方程式になります f() t を任意時間における加振力 ( または 加振変位 速度 加 速度 ) とすれば 強制振動の問題になり モード重合法又は直接積分法を用いて解を求めることができ ます Ⅱ-6-7

53 Part Ⅱ 6.4 多重支点の地震荷重入力に対する解析 長大橋梁のように支持点が空間的に離れている場合は構造物に入力する地震荷重に時間遅延効果が発生します このような場合は各支持点ごとに該当の支持点に適する地震荷重を入力して解析したほうがもっといい解を求めることができます 多重支点の地震荷重を受ける構造物の運動方程式は式 (6.4.1) のようになります 多重支点の地震荷重入力を考慮した解析時にはすべての変位 速度 加速度値が絶対値に対して計算されます 多重支点の地震荷重を考慮した解析結果は複数の支点に地震荷重が入力されるので基準点を決めることができないので絶対値に対して結果を出力します 絶対値で結果を出力すると 変位 速度 加速度結果値に地盤挙動を含むことになります 部材力や反力の場合は節点間の相対変位を使って計算するので絶対値や相対値出力に影響を受けません t t t M M () () () 0 ss sg u&& t s C C ss sg u& t s K K ss sg u t s t t t M M + () C C + = () K K () P () t gs gg u&& t g gs gg u& t g gs gg u t g g (6.4.1) ここで s, g : 上部構造物 支点部 t : 絶対変位 t t t 支持点の運動 u&& (), t u& (), t u () t は支持点ごとに入力しなければなりません 絶対変位を地盤変 g g g 位による変位 u s () t とこれを除いた動的変位 u () t で区分すると式 (6.4.2) のようになります s s t s u () t u () t s s u () t s t = + u () t u () t g g 0 (6.4.2) s u () t g は 支持点変位で u () t を静的に構造物に作用した場合に発生する上部構造物の変位で類 s s 似静的変位 (quasi-static displacement) といい 式 (6.4.3) のような関係を持っています P () t g は支持点の変位 () t を構造物に加えるため必要な支点荷重です ug s K K () 0 ss sg u t s s K K = () P () t gs gg u t g g (6.4.3) 式 (6.4.1) を展開して式 (6.4.2) を適用して整理すると式 (6.4.4) のようになります Ⅱ-6-8

54 6. 時刻歴応答解析 s s ( ) ( ) s ( () ()) () 0 M u&& () t + u&& () t + M u&& () t + C u& () t + u& () t + C u& () t ss s s sg g ss s s sg g + K u t + u t + K u t = ss s s sg g (6.4.4) M u&& () t + C u& () t + K u () t = P () t ss s ss s ss s eff s s s P () t = M u&& () t M u&& () t C u& () t C u& () t K u () t K u () t eff ss s sg g ss s sg g ss s sg g (6.4.5) 式 (6.4.3) の一番目項を整理すると式 (6.4.6) のようになります s K u () t + K u () t = 0 ss s sg g s u () t = I u () t s f g 1 I = K K f ss sg (6.4.6) ここで I は逆行列で支持点の変位による構造物の変位です f 式 (6.4.6) を式 (6.4.5) に代入して整理すると次のようになります ( ) ( ) P () t = M I + M u&& () t C I + C u& () t (6.4.7) eff ss f sg g ss f sg g 減衰マトリックスが剛性比例減衰マトリックスだと仮定すると式 (6.4.8) のように示すことができます ( ) β ( ) C I + C u& () t = K I + K u& () t = 0 (6.4.8) ss f sg g ss f sg g ( ) P () t = M I + M u&& () t (6.4.9) eff ss f sg g 質量が集中質量だと仮定すると式 (6.4.5) での運動方程式と有効地震荷重は式 (6.4.10) のようになります M u&& () t + C u& () t + K u () t = P () t ss s ss s ss s eff P () t = M I u&& () t eff ss f g (6.4.10) 参照として 均等地震荷重が入力される場合の運動方程式は次のようになります Mu&& () t + Cut &() + Kut () = P () t {} P () t = M 1 u&& () t eff g eff (6.4.11) 最終的な絶対値基準の変位 速度 加速度は式 (6.4.12) のように計算されます Ⅱ-6-9

55 Part Ⅱ t s u () t u () t u () t s s s t s u& () t u () t u () t s = & + s & s t s u () t u () t u () t && s && s && s (6.4.12) 多重支点の地震荷重入力に対する時刻歴解析は線形時刻歴解析のみ反映されています Ⅱ-6-10

56 7. 座屈解析 7. 座屈解析 7.1 概要 線形座屈解析機能はトラス 梁要素 板要素またはソリッド要素で構成されている構造物の限界荷重係数 (Critical Load Factor) と それに該当される座屈モード形状を求める際に使います 線形座屈解析におけるつり合い方程式は応力による幾何剛性を考慮して次のようになります [ K]{ U} + [ K ]{ U} = { P} (7.1.1) G ここで [ K ] : 構造物の弾性剛氏マトリックス [ K G ] : 構造物の幾何剛性マトリックス { U } : 構造物の全体変位 { P } : 構造物に作用する荷重 構造物の幾何剛性マトリックスは各要素の幾何剛性マトリックスを足して計算して 各要素ごとの幾何剛性マトリックスは次のように求めます ここで 幾何剛性マトリックスは構造物が変形された状態で剛性が変化された状態を示して作用する荷重と直接的な関係を持ちます 例えば 任意の部材に圧縮力が作用すると剛性が減少する傾向があり 引張力が作用すると剛性が増加する傾向を持っています [ K ] = [ k ] (7.1.2) G G [ k ] = F[ k ] (7.1.3) G G ここで [ k G ]: 各部材ごとの標準幾何剛性マトリックス F : 部材力 ( 軸力 -トラス 梁要素の場合) Ⅱ-7-1

57 Part Ⅱ トラス部材の標準幾何剛性マトリックス symm. L k G = L L L L L 梁部材の標準幾何剛性マトリックス L symm. 5L L L L 10 5L L 10 5L L 1 2L L 1 2L k G1 = 板要素及びソリッド要素の幾何剛性マトリックス s 0 0 T [ k ] = [ G] 0 s 0 [ G] dv G v 0 0 s Ⅱ-7-2

58 7. 座屈解析 ここで [ G ]: ひずみと変位関係マトリックス σxx σxy σzx [ S] = σ xy σ yy τ yz : 要素の応力マトリックス σzx σ yz σ zz 幾何剛性マトリックスを果樹係数と入力された荷重を受ける構造物の幾何剛性マトリックスの積で示すと式 (7.1.4) のようになります [ K ] = α[ K ] (7.1.4) G G ここで α : 限界荷重係数 [ K G ] : 座屈解析のため入力された荷重を受けている構造物の幾何剛性マトリックス [ K + λk ]{ u} = { p} G [ K ] = [ K + λk ] eq G (7.1.5) 上式のような 1 釣り合い方程式で構造物が不安定な状態になるためには特異解をもつ必要がありま す つまり 等価剛性マトリックスのマトリックス部分が 0 になる場合座屈が発生します [ K ] < 0 ( λ > λ ) : 不安定釣り合い状態 eq cr [ K ] = 0 ( λ = λ ) : 不安定状態 eq cr [ K ] > 0 ( λ < λ ) : 安定状態 eq cr ですので 式 (7.1.5) の座屈解析のための問題は式 (7.1.6) のような固有値問題になります K + λ [ K ] = 0 (7.1.6), I G ここで λ は固有値限界荷重係数です I この問題は固有値解析と同じ方法で解くことができます Ⅱ-7-3

59 Part Ⅱ 固有値解析を通じて得た値は固有値と固有モードがありますが 固有値は限界荷重係数になり 固有モードは限界荷重に該当する座屈形状になります 限界荷重は初期荷重で与えられた値と限界荷重係数をかけた値で求めることができます 限界荷重と座屈形状は入力された構造物に限界荷重が作用する場合 座屈モードと同じ形状で構造物の座屈が発生することを意味します 例えば 初期荷重が 10 ぐらい作用する構造物に座屈解析を遂行して限界荷重係数 5 を得たら この構造物は 50 の荷重が作用する場合座屈が発生します しかし 構造物の座屈は幾何学的や材料的に大変形や非線形状態で発生するので実際問題への適用は制限的です プログラムでの線形座屈解析はトラス 梁要素 板要素 ソリッド要素で制限されます 解析過程は次のような 2 段階の解析が必要で 解析手順は図 のようになります 1. 使用者が入力する荷重条件を用いて線形静的解析を遂行する過程で 解析された構造部材の 部材力又は応力を適用して該当部材の幾何剛性マトリックスを構成します 2. 上記で計算した幾何剛性マトリックスと弾性剛性マトリックスを使用して固有値問題を計算します この過程で得た固有値は限界荷重係数になり 固有モードは座屈形状になります 構造物解析モデルの入力 全体剛性マトリックス及び座屈解析のための荷重マトリックス構成 静的解析遂行及び要素ごとの幾何剛性マトリクス構成 全体幾何剛性マトリックス構成 全体剛性と幾何剛性を用いた固有値解析 図 座屈解析の概念図 Ⅱ-7-4

60 8. 非線形静的解析 8. 非線形静的解析 8.1 概要 構造物を線形 - 弾性挙動を解析する場合は変位と荷重が比例関係であると仮定します このような仮 定は載荷される荷重に対して材料の応力 - ひずみ関係が線形で 荷重が構造物の剛性に比べて比較 的に小さくで発生する変位も微小で幾何学的変形が変わらない場合に適用可能です 通常の設計条件では多くの構造物を線形 - 弾性挙動をすると仮定して解析を遂行しますが 大変形 が発生する場合や応力が許容値を超える場合は必ず非線形解析を遂行する必要があります 非線形解析は次のように大きく 3 つで区分できます 1. 構造物に比較的に大きい荷重が載荷されて応力が大きくなると 応力 -ひずみ関係が非線形に変わり非線形挙動をしますが これを材料非線形といいます 下の図 のような応力 -ひずみ関係で示すことができ 荷重載荷方法と材料によって様々な形態の応力 -ひずみ関係が発生します 図 材料非線形解析に使われる応力 - ひずみ関係 2. 構造物に比較的大きい変形が発生して 幾何学的形態が変わってひずみ- 変位関係が非線形になる場合 微小変形解析で無視したひずみ- 変位関係の高次項を含めて解析を遂行しますが これを幾何学的非線形といいます 幾何非線形性は材料の線形状態で発生可能で変形が大きくなる構造物の場合は 設計のための解析にも適用します 幾何非線形は材料と関係なく構造物の形状によって発生しますが 変 Ⅱ-8-1

61 Part Ⅱ 位が大きく発生して構造物の座標が変わったりモーメントのような付加荷重が発生する場合は必 ず考慮しなければなりません 3. 荷重による構造物の変形によって境界条件が変化する構造物で発生する荷重 - 変位の非線形関 係を境界非線形といいます 地盤と接する構造物の圧縮専用の境界条件などが境界非線形問 題に該当します 構造物の大変形による剛性の変化 変形による付加荷重の発生 図 幾何非線形解析が必要な構造系 Ⅱ-8-2

62 8. 非線形静的解析 8.2 静的非線形解析 線形解析で使用する微少変形 ε は回転が小さいと仮定して次のように定義することができま す ij 1 ε ij = ( ui, j + uj. i ) (8.2.1) 2 ここで u : 変位 u, u : 最初座標に対する微分 i, j j. i 図 8.2.1のように大変形が発生する場合は微少変位で構造物の変形を表現することはできません 大変形は次の式のように回転成分と回転ではない成分で分離することができます 実際構造物に発生する変形はU によって決定されます F = RU, ε = f ( U ) (8.2.2) ここで F : 変位テンソル R : 回転変位テンソル U : 変形テンソル 図 大変形による幾何非線形性 Ⅱ-8-3

63 Part Ⅱ 上式の全体変形から回転成分を除くと正確なひずみの計算ができるので回転量が大きい場合 は最初から正確なひずみ - 変位関係はわかりません つまり 線形解析で計算した変位に従って ひずみが変わるので幾何学的非線形が導入されます プログラムの幾何非線形解析は co-rotational 方法を使用しますが この方法は変形される要素に付 着されて要素の回転によって動くco-rotational 座標系にひずみを使用して幾何学的非非線形性を考慮する方法です co-rotational 座標系でのひずみ- 変位の関係は式 ˆ ε = Bu ˆ ˆ のように示すことができ 線形解析と同じひずみ- 変位関係のマトリックスを使用することができます つまり 線形解析で使用された要素の安定性及び収束性が幾何学非線形が導入されても保持され ることを意味するので 優秀な線形要素の特長が保持される長所も持っています Co-rotational 座標系での変位 û は式 u = f (, e e1, e2, e3, e1, e2, e3) によって計算されて 微少変位 δû は線形化して δû = Tδu で示すことができます Co-rotational 座標系での線形弾性問題の場合 同時回転座標系での要素耐力は次の式から求めることができます int ˆp ˆ = ˆ (8.2.3) int T p B σ dv0 dv ここで ˆ σ は同時回転座標系で表現された応力で 上の式を変分すると次の式を求めることができます δ ˆ = + ˆ ˆ (8.2.4) int p (K K ) δu σ ここで ˆK σ は幾何剛性マトリックス又は初期応力マトリックスで 内力と外力の釣り合い関 ext int 係 p p = 0 を使用すると次の式のような非線形釣り合い方程式を構成することができます ext ( K + K ) u = p (8.2.5) σ 非線形釣り合い方程式の解を求める方法では Newton-Raphson 方法と弧長法を使用します 一般的な解析の場合は荷重制御方法である Newton-Raphson 方法を使用して snap-throughや snap-b ackのような問題に対しては変位制御方法である弧長法を使用すれば適切な解析をすることができます プログラムの幾何非線形解析で使用できる要素は トラス 梁 板要素があり 他の要素と一緒に使用する場合は剛性のみ考慮されて幾何非線形性は考慮できません Ⅱ-8-4

64 8. 非線形静的解析 Newton-Raphson 反復法 外力が作用する構造物の幾何非線形解析では幾何剛性が変位の関数形態で表現されて 変位はまた幾何剛性の影響を受けるので反復解析が必要です Newton-Raphson 方法は一般的によく使用する方法で図 8.2.2のように与えられた外力と釣り合いを成す変位を計算します 荷重 - 変位の釣り合い方程式で与えられた荷重に対して釣り合いが満足できるように反復計算をする度に剛性マトリックスを再構成して これを用いて近似解を反復的に修正して許容誤差の範囲内の近似解を求めます ( K + Kσ ) u = p Ku T = p KT = K + K σ K = σ f ( u) (8.2.6) K ( u )( u + Δu ) = R T m 1 m 1 m m 図 Newton-Raphson 方法 テイラー展開式 ( yx ( + h) = yx ( ) + y ( x) h) を用いて上記の式の左項を展開すると 次のよ うになります dr du m 1 n n n dr K ( u )( u + Δu ) = K ( u ) u + Δu (8.2.7) T m 1 m 1 m T m 1 m 1 m dum 1 R = K ( u ) R F = R の関係を上式に代入して整理すると 次のようになります T m 1 m m 1 R R K ( u ) Δu = R + R = R ( R : residual force) (8.2.8) T m 1 m m m 1 Ⅱ-8-5

65 Part Ⅱ 解析過程は図 8.2.2に示したように Δu m が計算されれば変位を u m= um 1 + Δu の式を用いて m 補正します また 反復過程を適用するために新しい接線剛性 KT( um) と R m + 1 R を計算 m して これによる補正された変位 u m + を求めます 1 上記の反復過程で一つのステップでの変位 エネルギー又は荷重の増分量が収束限界中に入るま で反復して解を計算します Ⅱ-8-6

66 8. 非線形静的解析 弧長反復法 一般の反復過程では荷重 - 変位曲線がほぼ水平の場合 変位増分の計算が非常に大きくなります つまり 荷重増分を固定すると結果変位は非常に大きい値になります 弧長法を使用するとこの問題を解決することができ 変位制御法を使用する場合と同様にsnap-through 挙動 ( 図 8.2.3(a) を参照 ) を解析することができます また 弧長法は変位制御法で解析できないsnap-back 挙動も解析することができます ( 図 8.2.3(b) を参照 ) 弧長法は増分変位の normをすでに定義されている値で拘束します この増分の大きさは反復過程内では固定的に適用されますが 増分を始まる際には固定されていません 増分の大きさを次の過程で決定します ( 図 8.2.3(c) を参照 ) (a) Snap-through (b) Snap-back (c) 弧長法の概念図 図 弧長法 Ⅱ-8-7

67 Part Ⅱ 増分を始まる際の外力ベクトルを R で 外力ベクトルの増分を Δλ で定義します 荷重係 数 Δλ は単位荷重 f をかけて毎反復段階ごとに変わります i m i f R T( i 1) δ i = Δ i K u u R δu = K ( u ) ( f ( u ) f ( u )) 1 i T i 1 int m 1 int i (8.2.9) 上式は次のように二つ部分で分けることができ 増分変位は次のように求めることができま す I 1 i = T i 1 int m 1 int i δu K ( u ) ( f ( u ) f ( u )) δ II 1 ui = KT( ui 1) f δu = δu +Δλδu I II i i i i (8.2.10) プログラムでは荷重係数 Δλ を球面探索法を使用して求めます この方法の拘束条件式は次の ようになります i Δu Δu Δl T i 2 i = (8.2.11) ここで Δl は拘束しようとする変位の長さです Δui = Δui 1 + δuiの式を上式に代入すると荷重係数 Δλi は次のように計算されます aδλ + a Δλ + a = a + a 4aa Δλi = 2a (8.2.12) ここで a = ( δu ) δu 1 II T II i i a = 2( δu ) δu + 2( Δu ) δu I T II T II 2 i i i 1 i a = 2( Δu ) δu + ( δu ) δu + ( Δu ) Δu Δl T I I T I T 3 i 1 i i i i 1 i 1 2 一般的に上式の解は 2 つですが 複素数解の場合は球面探索法の線形同等解を使用します 二つの実数解の中でどの解を使用するかを決定するために 以前反復過程と現在反復過程の間 のへに増分ベクトル間の角度 θ を次の式で計算して判断します Ⅱ-8-8

68 8. 非線形静的解析 T ( Δui 1) δui cosθ = ( Δu δu i 1 i 一つの解が負で他の解が正の場合は正の解を選択し 二つの解がすべて銳角の場合は線形解 Δλ i = a3 a2 に近い解を使用します Ⅱ-8-9

69 Part Ⅱ 8.3 P- デルタ解析 概要 プログラムの P-デルタ解析は 梁要素が水平荷重と鉛直荷重を同時に受ける時の 2 次的な構造的挙動を考慮するためのことで 何学的非線形性をの一種です 建築構造物で高層建物の場合は 低層に比べて重力による軸力と水平荷重による横変位が大きくなるので P-デルタ効果が構造物の挙動に及ぼす影響が大きくなります ACI318 Code と AISC-LRFD Code では 実際断面力を設計に反映するため P-デルタ効果を考慮した構造解析を要求しています On-line Manual の " 解析 >P- デルタ解析制御 " を参照 プログラムの P- デルタ解析機能は 座屈問題を数値解析的な方法で解を求める際に使用する概念 を応用したもので 先に与えられた荷重条件に対して静的解析を遂行した後 各要素に発生しる応力 を用いて幾何剛性マトリックスを作って 修正された剛性マトリックスを使って与えられた条件を満足する まで解析を反復して遂行するようになります 図 のように動的解析に P-デルタ効果を考慮する場合も幾何剛性マトリックスの構成のため静的荷重条件の入力が必要です 解析モデルの入力 剛性マトリックスの構成 初期静的解析の実行 幾何剛性マトリックスの構成 剛性マトリックスの再構成 静的解析の実行 収束判定 静的解析 動的解析 解析結果出力 固有値解析 図 P- デルタ解析の計算プロセス Ⅱ-8-10

70 8. 非線形静的解析 プログラムで使用された P- デルタ解析の概念は図 のようになります 外力によって横方向にモーメントとせん断力を受ける柱部材が軸力によって引張または圧縮を追加で受ける場合 引張力は柱部材がモーメントとせん断力に対して抵抗するようにする一方 圧縮力はモーメントとせん断力に対して弱くなります つまり 引張力は横方向挙動に対する柱部材の剛性を増加して 圧縮力はその剛性を減少させる効果を持っています もし 圧縮力による応力が非常に大きくなって横方向挙動に対する剛性減少値が該当の部材の横方向剛性と同じになると その部材に座屈が発生しますが その時の圧縮荷重を限界座屈荷重といいます この効果を軸力と横力を受ける柱部材に対して説明すると次のようになります P- デルタ効果を考慮しない場合 曲げモーメント図 P- デルタ効果を考慮した場合 変形前 変形後 (a) 柱部材に引張力と水平荷重が同時に作用する場合 変形前 変形後 曲げモーメント図 P- デルタ効果を考慮した場合 P- デルタ効果を考慮しない場合 (b) 柱部材に圧縮力と水平荷重が同時に作用する場合 図 P- デルタの効果を考慮した柱部材の挙動 Ⅱ-8-11

71 Part Ⅱ 図 8.3.2(a) で柱部材が引張力と横力を同時に受ける場合 P-デルタ効果を考慮しない場合 ( 横変位と垂直荷重による 2 次変形効果を考慮しない場合 ) モーメントは柱部材端の M=0 から下端の M=VL まで一定割合で増加します しかし 実際は横力のため Δ の横変位がは発生して この横変位 Δ と引張力 P により P Δ 分の曲げモーメントが低減されます したがって 柱部材の水平剛性が増加したことと同じ効果が発生します 反対に 圧縮力と水平力を同時に受ける時は P Δ 分の曲げモーメントが増加されて その結果 柱 部材の水平剛性が減少することと同じ効果が発生します したがって 実際の横変位は 水平力と軸力の変位になります これを数式で表現すると次のように なります Δ = V / K, K = K + K O G (8.3.1) ここで K O : 柱部材固有の水平剛性 K G : 軸力による剛性増減効果 トラス 梁 板要素の幾何剛性マトリックス構成は 座屈解析 を参照してください P- デルタ解析をステップごとに整理すると 次のようになります 解析ステップ 1 Δ1 = V K 解析ステップ 2 0 Δ2 = f( P, Δ1), Δ = Δ1+ Δ2 解析ステップ 3 Δ3 = f( P, Δ2), Δ= Δ1 + Δ2 + Δ3 解析ステップ 4 Δ4 = f(p,δ 3), Δ= Δ1+ Δ2 + Δ3 + Δ4 解析ステップ n Δn = f( P, Δn-1), Δ= Δ1+ Δ2 + Δ3 + + Δn Ⅱ-8-12

72 8. 非線形静的解析 す プログラムの内部で遂行される P- デルタ解析過程を 各ステップごとに説明すると 次のようになりま 解析ステップ 1 を通して 水平力による Δ 1 を計算した後 軸力による幾何剛性マトリックスを求めて 初期の弾性剛性マトリックスに幾何剛性マトリックスを組合わせて新しい剛性マトリックスを構成します 新しく構成された剛性マトリックスを用いて P-デルタ効果を考慮した水平変位 Δ 2 を計算して 収束条件を満足可否を検討します 収束条件は P-デルタ解析制御 で与えられた最大繰り返し回数と収束判定値に対する検討を意味します 収束条件を満足する場合は 反復解析の実行を終了し 満足しない場合は同じ手順を繰り返して収束条件を満足するまで遂行するようになります P- デルタ解析で適用された静的つり合い方程式を整理すると次のようになります [ K]{} u + [ K ]{} u = { P} (8.3.2) G ここで [ K ]: 変形前モデルの剛性マトリックス [ K G] : 反復解析で得られた断面力と応力度によって新しく構成された幾何剛性マトリックス { P }: 静的荷重ベクトル {} u : 変位ベクトル P- デルタ解析機能は 以下の仮定を基に遂行されます P- デルタ効果を考慮するための幾何剛性マトリックスは トラス要素 梁要素 壁要素に対して 旺盛可能です 梁要素の横変位 ( 曲げ及びせん断変形 ) は 軸力による "Large-Stress Effect" に対してだけ考 慮されます P- デルタ解析は 弾性領域のみ有効です 一般的に P- デルタ効果を考慮した解析は時間が非常かかるので 構造設計の完了段階で適用適 用することを推奨します Ⅱ-8-13

73 Part Ⅱ 8.4 境界非線形解析 非線形要素を使用した解析 非線形要素 ( 引張 / 圧縮専用要素 ) を使用した境界非線形解析では構造系全体を線形で仮定して一 部非線形要素に対してのみ非線形挙動特性を考慮する方法を使用しています 非線形要素の使用した静的解析で使用できる非線形要素には引張専用トラス要素 フック要素 ケ ーブル要素 ギャップ要素 弾性連結の引張又は圧縮専用条件があります 非線形要素を使用した構造系の静的釣り合い方程式を整理すると次のようになります [ K + K ]{ U} = { P} (8.4.1) N ここで K : 線形構造物の剛性 K N : 非線形要素の剛性 式 (8.4.1) のような非線形剛性を含む釣り合い方程式の解は変位や断面力の条件によって非線形要 素の剛性を再構成して反復解析を通じて釣り合い方程式が収束できるような方法を使用しています Ⅱ-8-14

74 8. 非線形静的解析 非線形要素の剛性 プログラムで使用される非線形要素の剛性計算は解析結果から求められす変位と断面力から決定されます トラス フック ギャップ形態の非線形剛性は量端部の変位とフックやギャップの間隔によって部材の非線形剛性が決定されて ケーブル形態の要素は解析結果で発生する断面力を通じて非線形剛性が決定されます トラス フック ギャップの引張及び圧縮専用要素の非線形剛性は式 (8.4.2) のように決定されて ケー ブルの非線形剛性は部材に作用する引張力の変化による剛性の変化を考慮するため式 (8.4.3) のよう に算定した有効剛性を通じて非線形剛性が決定されます K = f( D d) (8.4.2) N ここで D : 初期状態の間隔 ( フックやギャップの間隔 ) d : 解析結果発生する部材の長さ変化量 K eff 1 EA = = 2 2 1/ K + 1/ K ω L EA sag elastic L(1 + ) 3 12T (8.4.3) K sag 3 12T EA =, K = 2 3 elastic ω L L ここで ω : ケーブルの単位長さあたりの重量密度 L : 重力方向に対する水平長さ T : ケーブルの引張力 非線形要素の境界条件による非線形性を考慮する解析では構造物の材質の非線形性などを考慮 しないので次のような制限があります 1. 構造物の材料非線形性は考慮しません 2. 非線形要素だけで構成された構造形態は荷重によって不安定性が発生するので非線形要 素のみで構成される節点の使用は制限されます Ⅱ-8-15

75 Part Ⅱ 3. 荷重によって発生した変位と断面力によって要素の剛性が変わるので荷重条件結果の線形組み合わせは使用できません 4. 非線形要素を使用した構造物の動的解析時には線形状態の剛性を使用して解析を遂行します 非線形構造物を使用した解析過程は次のようになります 1. 構造物の線形剛性と非線形要素の線形剛性状態の剛性を使用して構造物の全体剛性マ トリックスと荷重ベクトルを構成します 2. 全体剛性と荷重ベクトルを使用して静的解析を遂行して変位と断面力を求めます 3. 構造物の全体剛性を再構成します 4. 剛性を変化して解析を遂行する場合は求めた変位と断面力を使用して非線形要素の剛性 を計算し 全体構造物の剛性を再構成します 5. 2 と 3 過程を繰り返して解析結果が収束条件を満足するまで遂行します Ⅱ-8-16

76 8. 非線形静的解析 8.5 境界非線形時刻歴解析 解析モデル構成 解析対象構造物は非線形連結要素を含む構造物で非線形連結要素を除いたほかの部材はすべて 線形弾性と仮定します 非線形連結要素は構造物の二つの節点の間を連結したり構造物と支持点を 連結することができます 一つの非線形連結要素はすべて 6 個のバネ (1 個の部材軸方向バネ 2 個のせん断バネ 1 個のね じり変形バネ 2 個の曲げ変形バネ ) で構成されて この中で一部のバネだけ選択して利用することもで きます それぞれのバネは基本的に線形属性を持って使用者の選択によって非線形属性を持つこともできます 線形属性のみ持つバネは実際物理的に線形弾性であるバネです ( 以下 線形バネで表記 ) 非線形属性を持つバネは実際物理的に非線形性を持つバネで表現し このバネが持つ線形属性は解析アルゴリズム上の必要によって要求される属性です ( 以下 非線形バネで表記 ) 線形属性は要素を構成する各バネの有效剛性として非線形連結要素の要素剛性マトリックスと全体 構造物の剛性マトリックスを構成する際に使用します 非線形連結要素を含む構造物の線形および非 線形静的解析と線形動的解析ではこの有效剛性だけで解析を遂行します 非線形属性は非線形バネの動的特性を現わすパラメータとしてプログラムでは 6 種タイプ ( 粘弾性ダ ンパー ギャップ フック 弾塑性ダンパー 鉛プラグ入り積層ゴム型免震装置 滑り振り子型免震装置 ) の非線形属性を提供しています Ⅱ-8-17

77 Part Ⅱ 境界非線形時刻歴解析の概要 境界非線形の時刻歴解析は構造物の一部だけ非線形性が考慮された場合に使用する非線形時刻歴解析方法で 免震および制振装置が設置された構造物の動的特性を把握するための解析機能です 免震および制振装置は設計荷重に対する構造物の塑性変形を防ぐので構造部材は弾性挙動して構造物の非線形挙動は主に免震および制振装置で発生すると見ることができます プログラムの境界非線形解析では 免震および制振装置を境界非線形要素として非線形連結要素でモデリングして ほかの部分は線形弾性構造物で仮定します ( 以下 前者は非線形系 後者は線形系という ) 境界非線形解析は非線形系で発生する断面力を線形系への外部動的荷重として置換する方法で解析を遂行します : 非線形バネの部材力 : 有効剛性と部材力 図 境界非線形解析の解析手法 プログラムの境界非線形解析は 非線形モード重ね合せ法と非線形直接積分法によって遂行されます 境界非線形解析に使われる免震および制振装置は各要素特性が常微分方程式で表現でき 常微分方程式の解法である Runge-Kutta 法によって計算されます 求めた結果は有効荷重で反映して未知数を求める方法で計算を遂行します 非線形モード重ね合せ法は 免震および制振装置を除いたすべての構造部材が弾性領域にあるという仮定を基に遂行されて 固有値解析を必ず先行しなければなりません また 線形時刻歴解析のよに重ね合せの原理で解析するので ずべての時間増分ごとに全体構造物の釣り合い方程式を解く直接積分法より解析速度が速い長所があります Ⅱ-8-18

78 8. 非線形静的解析 構造部材の弾塑性挙動まで解析する場合は構造部材も弾塑性要素と見て構造物全体を非線形解 析をする必要があります 非線形直接積分法は非線形境界要素だけではなくて構造部材に非線形挙 動まで考慮することができます また 構造部材の弾塑性挙動は非線形履歴モデルで算定されます Ⅱ-8-19

79 Part Ⅱ モード重ね合わせ法による境界非線形時刻歴解析 (1) モード重ね合わせ法による境界非線形時刻歴解析の概要 力タイプの汎用リンク要素が含まれた構造物の運動方程式は以下のようになります ( ) ( ) Mu&& () t + Cut &() + K + K ut () = Bpt () + B f()- t f () t (8.5.1) S N P N L N ここで M : 質量マトリックス C : 減衰マトリックス K : 力タイプの汎用リンク要素を除いた残りの弾性剛性 S K N B P, : 力タイプの汎用リンク要素の有効剛性 B N : 変換マトリックス ut (), ut &(), ut &&() : 節点の変位 速度 加速度 p() t : 動的荷重 f () L t : 力タイプの汎用リンク要素に含まれた非線形成分の有効剛性による部材力 f () N t : 力タイプの汎用リンク要素に含まれた非線形成分の実際部材力 右辺の f () t L は左辺の K N によって発生する節点力の中で力タイプの汎用リンク要素の非線形成分に該当するものと相殺されて f () t N だけが動的挙動に影響を与えます 有効剛性マトリックス K N を使用する理由は 力タイプの汎用リンク要素の連結位置によって本来の構造物の剛性マトリックス K S だけで不安定構造となる場合があるためです 質量マトリックスと剛性マトリックスに対するモード形状と固有振動数は 固有値解析 または Ritz ベ クトル解析を用いて計算することができます 減衰はモード減衰定数を通じて考慮できます モードの直交性を用いて上の運動方程式は次のようなモード座標系の運動方程式に変換されます ここで T T T 2 φ B pt () φ B f() t φ B f () t i P i N L i N N q&& () t + 2 ξωq& () t + ω q() t = + + (8.5.2) i i i i i T T T φ Mφ φ Mφ φ Mφ φ i : i 番目モードの固有ベクトル ξ i : i 番目モードの減衰定数 i i i i i i Ⅱ-8-20

80 8. 非線形静的解析 ω i : i 番目モードの固有振動数 q (), t q& (), t q&& () t : i 番目モードの一般化変位 速度 加速度 i i i 右辺の f () t L と f () t L は該当力タイプの汎用リンク要素の要素座標系での実際変形及び変形の変化率によって決定されます しかし 要素の実際変形は特定モードだけではなくて 全体モードの成分を すべて含めています したがって 上記のモード座標系の運動方程式はモード毎に独立的とは言えません モード解析の長所を利用するためには各解析時間段階での f () t N と f () t L を仮定すると独立的なモード座標系の運動方程式になります まず 前段階の解析結果から現在段階におけるモード一般化変位 速度を仮定して これを基に現在段階の f () t N と f () t L を計算します その後 現在段階でのモード一般化変位と速度を組み合わせて力タイプの汎用リンク要素の変形及びひずみ変化率を計算します f () t N と f () t L の計算と それによるモード一般化変位と速度の計算過程を次の収束誤差が許容範囲内になるまで繰り返して遂行しま す ( j+ 1) ( j) q ( nδt) q ( nδt) i i ε = max q ( j + 1) i q ( nδt) i ここで ( j+ 1) ( j) q& ( nδt) q& ( nδt) i i ε max q& = ( j + 1) i q& ( nδt) i ( j+ 1) ( j) f ( nδt) f ( nδt) M, i M, i ε = max f M ( j + 1) i f ( nδt) M, i (8.5.3) f ( j) M, i T φ B f i ( nδ t) = ( j) N N T φ M i i ( nδ t) φ Δ t : 時間増分 n : 時間ステップ j : 反復計算のステップ i : モード次数 以上の過程を各解析時間段階毎に繰り返して最大反復回数及び収束許容誤差は時刻歴荷重ケー スで使用者が直接入力します もし 収束しない場合は 自動的に解析時間増分 Δt を細分してもう一 度解析します Ⅱ-8-21

81 Part Ⅱ 力タイプの汎用リンク要素の非線形特性は微分方程式で表現されて 各反復過程で非線形成分に該当する内力を算定するためにこの微分方程式の数値解析の解が必要となります プログラムでは数値解析方法として Runge-Kutta Fehlberg method を使っており この方法は微分方程式の数値解析で良く使用している方法で早い解析速度と精度を持っています (2) 固有値解析時の注意事項 非線形モード重ね合わせ法による境界非線形時刻歴解析はモード解析をベースとするので構造物 の応答を表現するためには十分な数のモードを使用する必要があります 特に 力タイプの汎用リンク 要素の変形を表現するために十分なモードが必要です 代表的な例として 摩擦振り子型免震装置の応答解析があります 摩擦型免震装置は要素の軸方向成分の部材力がせん断成分の挙動を決定する重要な部分です したがって 一般的な応答解析とは異なり 鉛直方向モードが重要となり 鉛直方向のモード質量合計が全体質量に等しくなるほどの十分なモード数を確保する必要があります 固有値解析方法を使用する場合 このような目標を達成するため非常に多い数のモードが必要となるので解析時間が長くなります Ritz ベクトル解析を使用すると各自由度に対する動的荷重の分布を考慮したモード形状と固有振動数を求めて 少ないモードでも高次モードの影響まで考慮することができます 例えば 摩擦振り子型免震装置の場合 Ritz ベクトル解析のための入力ダイアログで構造物の Z 方向 ( 重力方向 ) 加速度や構造物の自重に関わる静的荷重の単位荷重条件を選択すると 主に構造物の鉛直方向の挙動に関わる固有振動数とモード形状を求めることができます 固有値解析の場合 Ritz ベクトル解析の方が少ないモードでより正確な解析結果を得ることができると知られています Ⅱ-8-22

82 8. 非線形静的解析 (3) 静的荷重と動的荷重の組み合わせ 非線形重ね合わせ法による時刻歴解析は線形時刻歴解析とは異なって重ね合わせ原理を適用することができません つまり 静的荷重に対する解析結果と動的荷重に対する結果を単純に足して二つの荷重が同時に作用した結果として使用することができません したがって 静的荷重と動的荷重の影響を正確に考慮するためには 静的荷重を動的荷重の形態で入力して境界非線形時刻歴解析を遂行する必要があります プログラムでは静的荷重制御データ機能を用いて静的荷重を動的荷重の形態で入力できるように しています まず 時刻歴荷重で時刻歴荷重データのタイプが無次元の ramp 関数を入力します 次に静的荷重制御データから鉛直方向の静的荷重及び既に指定した関数名を入力します ramp 関数の形状は地盤加速度の遅延時間の前に静的荷重が載荷し終わるように定義して これによる振動が十分減衰できるように指定します これと関連して静的荷重の載荷による振動の減衰にかかる時間を減らすため時刻歴荷重ケースから解析初期に使用者が指定した時間で 99% の減衰率を適用するオプションを選択することもできます また 地盤加速度が作用する間にも静的荷重は続けて作用するようにします 図 静的荷重と動的荷重の組み合わせ Ⅱ-8-23

83 Part Ⅱ 直接積分法による境界非線形時刻歴解析 直接積分法による境界非線形解析の解析方法は非線形系で発生する非線形部材力を線形系に加える外部動的荷重で置換するモード重ね合わせ法による解析と同じです 直接積分法による境界非線形解析はモード重ね合わせ法と異なって 数値積分法で解析できます プログラムでは Newmark-β 法による直接積分法による解析を遂行します 直接積分法による境界非線形時刻歴解析で力タイプの汎用リンク要素が含まれた構造物の運動方程式は次のようになります ( ) Mu&& () t + Cut &() + K ut () = pt () + f()- t f () t (8.5.4) N L N ここで M : 質量マトリックス C : 減衰マトリックス K N : 力タイプの汎用リンク要素の有効剛性 ut (), ut &(), ut &&() : 節点の変位 速度 加速度 p() t : 動的荷重 f () t L : 力タイプの汎用リンク要素の有効剛性による部材力 f () t N : 力タイプの汎用リンク要素の実際部材力 Newmark-β 法による増分変位 δu に対するつり合い方程式は次のようになります K δu =Δ p (8.5.5) Eff Eff ここで K Eff : 有効剛性マトリックス 1 1 K = Eff M C K β + βδt + ( Δt ) 2 Δ p Eff : 反復計算ごとの有効荷重ベクトル Δ p = p() t { Mu&& () t + Cu& () t + ( ()- () L N )} Eff f t f t δ u : 反復計算ごとの変位増分ベクトル β : 数値積分パラメータ N Ⅱ-8-24

84 8. 非線形静的解析 有効剛性 境界非線形時刻歴解析は全体構造物を線形系と非線形系で分けて 非線形係で発生する部材力 を線形系に加える外部動的荷重として置換して解析します ここで 非線形系を構成する力タイプの汎 用リンク要素の位置によって線形系だけでは不安定構造になる可能性があるのでう有効剛性を使用し て安定構造物にした後で時刻歴解析を遂行します もし 力タイプの汎用リンク要素を除去する場合に構造物が不安定になる場合は 固有振動数とコー ド形状が実際の非線形挙動と似ている適切な有効剛性を入力する比露があります この場合 適切な 有効剛性は一般的に 0 より大きくて非線形特性上の初期剛性より同じか小さい値を使用します 初期剛性は後で説明する要素の種類毎の動的特性で粘弾性ダンパーの k b ギャップ フック および弾塑性ダンパーの k 積層ゴム型免震装置と摩擦振り子型免震装置の k, kb が該当されます y 非線形挙動以前の応答を計算するため線形静的解析または線形動的解析を遂行する場合は初期剛性に有効剛性を入力します 近似的な線形動的解析を遂行する場合は非線形連結要素が非線形解析時と似ている挙動をするように次の図のように予想される最大変形を基準で割線剛性 (secant stiffness) を有効剛性で入力します もし 解析結果が収束しない場合は有効剛性を調節すると収束できる場合があります 図 境界非線形要素の有効剛性 Ⅱ-8-25

85 Part Ⅱ 力タイプの汎用リンク要素の動的特性 プログラムの境界非線形時刻歴解析機能から提供しています力タイプの汎用リンク要素は 粘弾性ダンパー (Viscoelastic Damper) ギャップ フック 弾塑性ダンパー(Hysteretic System) 鉛プラグ入り積層ゴム型免震装置 (Lead Rubber Bearing Isolator) 摩擦振り子型免震装置(Friction Pendulum System Isolator) の 6 つのタイプで それぞれの動的特性は次のようになります Ⅱ-8-26

86 8. 非線形静的解析 粘弾性ダンパー (Visco-elastic Damper) 粘弾性ダンパーは 変形に比例して力が発生する弾性 変形の速度に比例して力が発生する粘性を同時に持っています 粘弾性ダンパーは構造物の減衰性能を増大させて 地震 風などによる動的応答を減少させて構造物の安全性と使用性を確保する目的で使用します 弾性体は図 8.5.4(a) に示したように力を加えると力に比例して変形が発生して 力を取り除くと元の形に戻る物体を言います ゴムやバネが該当されます 粘性体は力を加えると粘性が変わって力を取り除いても変形された形態を保持する性質をもっています 図 8.5.4(b) に粘性体モデル (Dashpot) モデルとその特性をを示します 粘土などがここに該当されます 粘弾性体は弾性と粘性の両方の性質を持つもので 図 9.2.4(c,d) のように力を加えると変形が増加されて 力をを取り除くと変形が減る特徴を持っています 粘弾性ダンパーは粘弾性体のこのような誠実を利用した減衰装置です プログラムの粘弾性ダンパー要素は粘弾性ダンパーの特長を持つ 6 この独立的なバネで構成されています 粘弾性ダンパーの代表的な数学的モデルには線形バネと粘性減衰が直列で連結されているマックスウェルモデルと 並列で連結されているフォークトモデルがあります プログラムの粘弾性ダンパーはマックスウェルモデル フォークトモデル そして フォークトモデルにバネが連結されているバネ付きフォークトモデルで区分されます 粘弾性ダンパーのバネ付きフォークトモデル力 - 変形関係の基本式は次のようになります ( ) s & & d d d d d b b (8.5.6) f = kd + csignd d = kd d = d + d d b ここで f : 粘弾性ダンパーの断面力 k d : 粘弾性ダンパーの剛性 k b : 連結部材の剛性 c d : 粘弾性ダンパーの減衰常数 s : 粘弾性ダンパーの非線形減衰特性を定義する指数 (exponent) d : 要素の二つの節点間の変形 d d : 粘弾性ダンパーの変形 d b : 連結部材の変形 Ⅱ-8-27

87 Part Ⅱ c d f f deformation Loading Unloading Time (a) 弾性体 (b) 粘性体 k d f f k d c d + = c d f f f f (c) 粘弾性体 ( マックスウェルモデル ) c d f f k d deformation Loading Unloading Time (d) 粘弾性体 (Kelvin モデル ) 図 弾性体と粘性体 Ⅱ-8-28

88 8. 非線形静的解析 上記の式のように粘性減衰は変形の変化率に比例する線形粘性減衰 ( s = 1.0 ) だけでなく変形変化率の指数乗に比例する非線形の粘性減衰 ( 0.0 < s < 1.0 ) でモデリングすることもできます 非線形減衰特性指数 s は 0.35~1.00 の範囲が一般的に使用されます プログラムでは s 値を 0.20~1.00 で制 限しています s d d dd 上記の式で csignd ( ) & & 項は減衰力を示すので 力の単位を持ちます しかし 非線形の減衰 f は N ( m sec) s 1 のような単位になる問題が発生し 特性指数が s < 1.0 の場合 次のように減衰力 ます N m /sec ( & ) csignd d& f s D d d d = d s s ( msec) N ( msec) 1 D d (8.5.7) したがって プログラムでは d & d が無次元量になるように参照速度 (Reference Velocity) v0 を適用します v 0 を適用すると 減衰力と粘弾性減衰モデルの力 - 変位関係は次のように示すことができます & f = kd + csignd& = kd (8.5.8) cexp dd d d d ( d) b b v0 ここで 減衰定数 cd の単位は N m sec と同じですが 速度項が v 0 で一般化されるので 力の単位である N tonf などの単位を持つようになります したがって 参照速度 v0 は一般的に 1.0 の値を使用します ただし プログラムが提供している単位系の変換時には変換された長さ単位によって v 0 値が自動で変換されるので注意する必要があります 上記の式を基づいて粘弾性ダンパーの非線形物性値の単位は次のようになります 表 粘弾性減衰モデルの非線形属性の単位 非線形属性 単位 粘弾性減衰モデルの要素断面力 f 粘弾性減衰モデルの変形の変化 参照速度 v 0 d & d N, tonf m/sec, cm/sec m/sec, cm/sec d & d v 無次元 0 粘弾性減衰モデルの減衰定数 c d N, tonf Ⅱ-8-29

89 Part Ⅱ プログラムで単位系変換時に粘弾性ダンパーの非線形物性値は次のように変換されます 1. 初期設定 ( 単位系を kn, m に設定 ) 粘弾性ダンパーの非線形属性を次のように設定します 2. 単位系を N, cm に変換 参照速度 v0 を考慮しない場合 kd = 10, 000 N cm Cd = = 10 N sec cm 100 s = 1 kb = 10,000 N cm 参照速度 v0 を考慮する場合 C = 1 kn = 1, 000N d v0 = 1 m sec = 100 cm sec Ⅱ-8-30

90 8. 非線形静的解析 (a) マックスウェルモデル d d c d f N1 k d N2 f (b) フォークトモデル d d c d d b k b f N1 k d N2 f (c) バネ付きフォークトモデル 図 粘弾性減衰モデル Ⅱ-8-31

91 Part Ⅱ (1) マックスウェルモデル マックスウェルモデルは図 8.5.5(a) に示すように 線形バネと粘性減衰が直列で連結されたモデルで 流体の粘弾性装置の解析で使われます マックスウェルモデルの力 - 変位関係は次のようになります s d& f = csignd& = kd (8.5.9) ( ) d d b b v0 上式は常微分方程式の初期値問題になるので Runge-Kutta 法を使用して未知数である粘弾性ダ ンパーの変位 d d を求めます (2) フォークト ( ケルビン ) モデル フォークトモデルは図 8.5.5(b) に示したように 線形バネと粘性減衰が並列で連結されているモデル で 固体の粘弾性装置の解析に使用されます フォークトモデルの力 - 変位関係は次のようになり 右項はすべて既知なので 式を直接解いて粘弾性ダンパーに作用する力を計算することができます ( ) f = kdd + cdsign d v 0 s d& & (8.5.10) (3) バネ付きフォークトモデル バネ付きフォークトモデルはフォークトモデルにバネが連結されているモデルで 図 8.5.5(c) のように制振ブレース解析に使用します バネ付きフォークトモデルの力 - 変位関係は次のようになります この式は常微分方程式の初期値問 題になるので Runge-Kutta 法を使用して未知数である粘弾性ダンパーの変位 d を求めます s d& f = kd + csignd& = kd (8.5.11) ( ) d d d d b b v0 d Ⅱ-8-32

92 8. 非線形静的解析 マックスウェルモデルとバネ付きフォークトモデルは 先に述べたように未知数の粘弾性ダンパーの変形 d d を求めるために 微分方程式の数値解法である Runge-Kutta 法を使用します プログラムでは 非線形の減衰特性指数 s が 1 の線形減衰 ( s = 1.0 ) の場合 解析の効率を高めるために Runge- Kutta 法の代わりに 次のような近似式を使って未知数の粘弾性ダンパーの変形 d を求めます d c 1 kdt ( +Δ t) + d ( t) d t t s d b d v0 Δt d ( +Δ ) = ; ( =1.0) cd 1 kd + kb + v0 Δt (8.5.12) ただし マックスウェルモデル : k d = 0.0 (4) 粘弾性ダンパーの非線形静的解析 静的非線形解析時はダンパー変形変化率を d & = 0.0 にして 粘弾性ダンパーの有効剛性 k を求 d めて計算します f = k d (8.5.13) ここで マックスウェルモデル : k = 0.0 フォークトモデル : k = k d バネ付きフォークトモデル : kb kd k = k + k b d Ⅱ-8-33

93 Part Ⅱ ギャップ ギャップは 他の境界非線形要素と同様に 6 つのバネ成分で構成されて 要素座標系で自由度毎に N1 節点に対する N2 節点の相対変位が初期間隔より大きい負になると 該当成分の剛性が発生すると仮定します 軸方向成分のみ使用する場合は圧縮専用要素となり 接触問題などをモデリングする場合使用します o d k f N1 N2 f 図 ギャップ 6 つの成分は独立的に挙動し 次のような力 - 変形関係式になります f kd ( + o) if d+ o 0 = (8.5.14) 0 otherwise ここで k : 剛性 o : 初期間隔 d : 変形 Ⅱ-8-34

94 8. 非線形静的解析 フック フックは他の境界要素と同様に 6 つの成分で構成されて 要素座標系で 6 個の自由度毎に N 1 節点に対する N 2 節点の相対変位が初期間隔より大きい正数になると 該当成分の剛性が発生すると仮定します 軸方向成分のみ使用すると引張専用要素となり Wind Brace や Hook Element などの場合に使用できます o d k f f N1 N2 図 フック 6 つの成分は独立的に挙動し 次のような力 - 変形関係式になります f kd ( o) if d o 0 = (8.5.15) 0 otherwise ここで k : 剛性 o : 初期間隔 d : 変形 Ⅱ-8-35

95 Part Ⅱ 弾塑性ダンパー (Hysteretic System) 弾塑性ダンパーは 1 軸塑性の特性を持つ 6 個の独立的な成分で構成されます 履歴挙動システムは履歴挙動によるエネルギー吸収装置をモデリングする際に使用し 代表的な例として金属降伏型減衰モデル (Metallic Yield Damper) があります 金属降伏型減衰モデルは構造体より相対的に大きい剛性を持ちながら降伏強度が低いので周りの部材より先に塑性変形を起こすので主構造を守るため使用 します d F y r k f k f N1 図 履歴挙動システム N2 履歴挙動システムの成分毎に力 - 変形関係は Park, Wen and Ang(1986) によって提案された次の式 によって表現されます f = r k d + (1 r) F z (8.5.16) y ここで k : 初期剛性 F y : 降伏強度 r : 降伏後の剛性低下率 d : バネの相対変位 z : 履歴挙動特性に関する内部パラメータ z は履歴挙動を示す内部パラメータで Wen(1976) によって提案された次の微分方程式によって定義されます { α ( & ) β} k s z& = 1 z sgn dz + d& (8.5.17) F y ここで α, β : 履歴曲線の形状を決定する定数 ただし α + β = 1.0 s : 降伏点の転移領域の大きさを決定する定数 Ⅱ-8-36

96 f f f f 8. 非線形静的解析 d & : 二つの節点間の変形変化率 α と β は 降伏後の挙動を決定する定数で α + β > 0 の場合は軟化システム α + β < 0 の場合は硬化システムをモデリングすることができます 履歴挙動によるエネルギー吸収量は履歴曲線による閉曲線の面積が大きくなるほど増加し 軟化システムの場合に ( β α) が小さい値を持つほど増加します α と β の変化による履歴挙動の変化を図 のようになります s は弾性変形と塑性変形間の転移区間 すなわち降伏発生区間の形状を決定する定数で大きい値を持つほど降伏点がはっきりと現われて理想的なバイリニアの弾塑性体になります s 値は 1.0~50.0 で制限しています s による転移区間の変化例は図 のようになります d d (a) α= 0.9 β= 0.1 (b) α= 0.1 β= d d (c) α= 0.5 β= -0.5 (d) α= 0.25 β= 図 履歴挙動特性 (r = 0, k = F y = s = 1.0) Ⅱ-8-37

97 f Part Ⅱ f s= F y k s=2 s=1 r k k d s = s = 2.0 s = 10.0 s = d 図 弾性変形と塑性変形間の転移区間 ( 降伏区間 ) Ⅱ-8-38

98 8. 非線形静的解析 鉛プラグ入り積層ゴム型免震装置 免震装置は地盤の振動から構造物を守るため振動の伝逹を遮断する装置で 橋梁の橋脚と桁の間 あるいは建築物の地上構造と基礎の間に設置します 鉛プラグ入り積層ゴム型免震装置は鉛の低い剛性によって構造物の固有振動数を地盤振動の主要振動数成分と隔離させて 履歴挙動により免震装置で振動エネルギーを吸収します 鉛プラグ入り積層ゴム型免震装置は 2 つのせん断成分に対しては相互連関された 2 軸塑性の特 性を持ち 残りの軸力 ねじりと 2 つの曲げ成分に対しては相互独立した線形弾性バネの特性を持ち ます f 3 f 2 d 2 d 3 F y K y K 0 d y 図 鉛プラグ入り積層ゴム型免震装置のバネ 鉛プラグ入り積層ゴム型免震装置におけるせん断成分の力 - 変形関係は 次のようになります f = rk d + (1 r) F z fz = rk z z dz + (1 rz) Fy, zzz y y y y y y, y y (8.5.18) Ⅱ-8-39

99 Part Ⅱ ここで k, k : 要素座標系 y z 方向せん断バネの初期剛性 y z F, F : 要素座標系 y z 方向せん断バネの降伏強度 y, y y, z r, r : 要素座標系 y z 方向せん断バネの降伏後の剛性低下率 y z d, d : 要素座標系 y z 方向せん断バネの 2 つ節点間の変形 y z z, z : 要素座標系 y z 方向せん断バネの履歴挙動の内部パラメータ y z z y と z z は履歴挙動を示す内部パラメータで 1 軸塑性に対する Wen(1976) のモデルを拡張した Park Wen and Ang(1986) の 2 軸塑性モデルを用いて次のような微分方程式で定義されます k y 2 1 sgn sgn d& z y y y dyzy y zyzz z dzz z + z + z & y Fy, y = z & zz dz + z dz + k { α ( & ) β } { α ( & ) β } 2 { α sgn( & ) β } 1 { α sgn( & ) β } z y z y y y y z z z z z z d& z F yz, (8.5.19) ここで α y, βy, αz, β z : 要素座標系 y z 方向せん断バネの履歴挙動曲線の形状定数 d&, d& : 要素座標系 y z 方向せん断バネの相対速度 y z 上記のモデルは 非線形せん断成分が 1 つの場合 履歴挙動システムで s=2 の場合と同じになっ て 各定数の役割も弾塑性ダンパーと同様ですので説明は省略します Ⅱ-8-40

100 8. 非線形静的解析 摩擦振り子型免震装置 摩擦振り子型免震装置は鉛プラグ入り積層ゴム型免震装置と同じ目的で使われる免震装置 固有振動数移動と履歴挙動によるエネルギー吸収によって構造物を地震動から守ります 摩擦振り子型免震装置は摩擦面の曲率半径によって復元力を発生させて この曲率半径を調整することで全体構造物の固有振動数を変更することができます また 履歴挙動によるエネルギー吸収作用は摩擦面のすべり現象を通じて行われます 摩擦振り子型免震装置は 2 個のせん断成分に対しては相互連結された 2 軸塑性の特性を持ちます 軸成分に対してはギャップと同じ非線形特性を持ち 残り 3 つの成分に対しては相互独立された線形 弾性バネの特性を持ちます P f R P P k f μ N1 P N2 図 摩擦振り子型免震装置のせん断バネ 摩擦振り子型免震装置の軸成分の力 - 変形関係は 次のように初期間隔が 0 であるギャップ (Gap) と 同様です kd x x if dx 0 fx = P = (8.5.20) 0 otherwise ここで P : 摩擦振り子型免震装置に作用する軸方向荷重 k : 線形剛性 x d : 変形 x Ⅱ-8-41

101 Part Ⅱ 摩擦振り子型免震装置の 2 つのせん断成分力 - 変形関係は 次のようになります P f = d + P μ z y y y y Ry P f = d + P μ z z z z z Rz (8.5.21) ここで P : 摩擦振り子型免震装置に作用する軸方向荷重 R, R : 要素座標系 y z 方向せん断バネの摩擦面の曲率半径 y z μ, μ : 要素座標系 y z 方向せん断バネの摩擦面の摩擦係数 y z d, d : 要素座標系 y z 方向せん断バネの 2 つ節点間の変形 y z z, z : 要素座標系 y z 方向せん断バネの履歴挙動の内部パラメータ y z 摩擦面の摩擦係数を示す μ と μ は 2 つのせん断変形の速度と関係があって Constantinou y Mokha and Reinhorn(1990) によって提案された次の式から決定されます z ( ) ( ) μ = μ μ μ y fast, y fast, y slow, y μ = μ μ μ z fast, z fast, z slow, z e e rv rv (8.5.22) ここで v= d& + d&, 2 2 v = d& y + d& z where rd& + rd& r = v 2 2 y z fast, y fast, z 2 2 y y z z 2 rd& + rd& r = v 2 2 y y z z 2 μ, μ : 要素座標系 y z 方向摩擦面の高速変形摩擦係数 μ, μ : 要素座標系 y z 方向摩擦面の低速変形摩擦係数 slow, y slow, z r, r : 要素座標系 y z 方向の摩擦係数変化率 y z d&, d& : 要素座標系 y z 方向のせん断成分の変形変化率 y z z y と z z は 履歴挙動を示す内部パラメータで 1 軸塑性に対する Wen(1976) のモデルを拡張した Park Wen and Ang(1986) の 2 軸塑性モデルを用いて次のような微分方程式で定義されます Ⅱ-8-42

102 8. 非線形静的解析 k y 2 1 sgn sgn d& y z zy y dyzy y zyzz z dzz + z + z & y P μ y = z & zz dz + z dz + k { α ( & ) β } { α ( & ) β } 2 { α sgn( & ) β } 1 { α sgn ( & ) β } z y z y y y y z z z z z z d& z P μ z (8.5.23) ここで k, k : すべり発生前の要素座標系 y, z 方向のせん断成分の初期剛性 ( 連結部材剛性 ) y z α, β, α, β : 要素座標系 y, z 方向せん断成分の履歴曲線の形状関連定数 y y z z d &, d & : 要素座標系 y, z 方向せん断成分の 2 つ節点間の変形変化率 y z 上記のモデルは降伏強度に該当する値が軸方向荷重の絶対値と摩擦係数の積で表されること以外 は 鉛プラグ入り積層ゴム型免震装置と同じタイプですので 各定数の作用に関する説明は省略します 非線形のせん断成分が 1 つの場合は s = 2 の 1 軸塑性特性と同様になります Ⅱ-8-43

103 Part Ⅱ Runge-Kutta 法 境界非線形解析では常微分方程式の数値解析手法として Runge-Kutta 法を使用します 常微分方程式を解くためには区間間隔を設定する必要があります 時刻歴解析である境界非線形解析での区間間隔は一定の時間増分間隔になります しかし 図 のように微分方程式の解が急に変わる場合は一定の区間間隔で解を求めると 正確な解が求められない可能性があります したがって プログラムでは非線形境界要素の数値解を求める際に Runge-Kutta 法の収束性を高めるため 区間間隔の時間増分 Δt を細かくする収束手法を使用します ここで 区間間隔の Δt を細かくすることは全体構造物の運動方程式を解くときに時間増分間隔を細かくすることではなくて 一定時間増分 Δt を用いて全体構造物の運動方程式を解いて変形を求めて Runge-Kutta 法を利用して境界非線形要素の部材力を求める際に区間間隔 Δt を細かくするという意味です dy( x) = f ( xyx, ( )) dx yx ( ) = y 0 0 Δt Δ t 図 微分方程式の初期値の問題 Ⅱ-8-44

104 8. 非線形静的解析 Cash-Karp( 自動増分間隔制御 ) 次数の異なる Runge-Kutta 法の予測値を利用して誤差を求めて 区間間隔を自動で調節する方法 です 自動増分間隔制御の基本概念は 図 のように誤差が小さい場合は区間間隔を大きくし 誤差が大きい場合は区間間隔を小さくすることです 図 Cash-Karp( 自動増分間隔制御 ) 区間間隔の設定には Press et al.(1992) によって提案された次の式を使用します h new = h present Δ Δ new present a (8.5.24) ここで h new : 新しい区間間隔 h present : 現在の区間間隔 Δ new : 要求される正確度 ( Δ new = εδ scal ) Ⅱ-8-45

105 Part Ⅱ Δ present : 計算された現在の正確度 a : 区間間隔による定数 Δ present Δ new : a =0.2 Δ present >Δ new : a =0.25 ε : 全体の許容誤差レベル 許容誤差レベル ε が小さいほど誤差は小さくなりますが 解析時間と収束性を考慮して経験値であ る 1.0e-8 程度の値を入力します Ⅱ-8-46

106 8. 非線形静的解析 Fehlberg(Stepsize Sub-Division for Non-convergence Control) この方法は初期の区間間隔を時間増分 Δt にして Runge Kutta 法の 4 次公式と 5 次公式による予測値を利用して誤差を求めて 求めた誤差が許容誤差レベル ε を満足するまで区間間隔を 1/2 ずつ分割して解を求める方法です 1 st 反復計算 : 2 nd 反復計算 : 3 rd 反復計算 : 4 th 反復計算 : 図 Fehlberg(Stepsize Sub-Division for Non-convergence Control) Ⅱ-8-47

107 Part Ⅱ 8.6 材料非線形解析 弾性と塑性材料挙動を比較すると 一般的に弾性挙動時には構造物に永久変形が発生しないです が 塑性挙動時には永久変形が発生する場合があります 塑性理論 静的塑性ひずみの成分は次の仮定で定義されます 構成則は変形の速度と関係がありません 弾性変形は塑性変形の影響を受けません 総ひずみは次のように定義します e p ε = ε + ε % % % (8.6.1) ここで ε % : 総ひずみ ε % e ε % p : 弾性ひずみ : 塑性ひずみ さらに 数式を構成するために次のような基本概念を使用します 塑性変形の開始を規定するための降伏条件 塑性変形を定義するための流れ則 塑性変形時の降伏面の変化を定義する硬化則 (1) 降伏条件 弾性応答の領域に対する境界を定義する降伏関数 ( あるいは載荷関数 ) F は次のようになります ( 図 参照 ) Ⅱ-8-48

108 8. 非線形静的解析 p p F( σε,, κ) = σe( σε, ) κε ( p) 0 % % % % (8.6.2) ここで σ % : 現在の応力度 σ e : 相当 (equivalent) 又は有効 (effective) 応力度 κ : ε p の数である硬化因子 ε p : 相当 (equivalent) 塑性ひずみ 塑性理論では降伏関数の値が正になる応力度状態は存在しません 降伏が発生すると 応力度状 態は降伏関数が 0 に減少されるまで塑性ひずみを蓄積するため修正する必要があります この修正過 程を塑性補正 (plastic corrector) 段階 あるいは回帰写像 (return mapping) 段階と言います Flat a Smooth dε % p dε % p c b σ % b σ % a Plastic potential g( σ ) = f( σ ) = const. % % σ % c p σ, dε % % σ % d d Corner 図 流れ則と特異点 dε % p (2) 流れ則 流れ側は塑性変形を定義する規則で 次のようになります ここで p g dε = dλ = d λb (8.6.3) % σ % % Ⅱ-8-49

109 Part Ⅱ g σ % : 塑性変形の方向 d λ : 塑性変形の大きさを定義する塑性係数 関数 g は 塑性ポテンシャル (plastic potential) 関数と言い 一般的には応力不変量 (stress invariant) の項で定義されます g = F であれば 結合流れ (associated flow) 則 g F であれば 非結合流れ (non-associated flow) 則 と言います プログラムのすべてのモデルは結合流れ則を使用します すなわち 塑性ひずみベクトルの方向は降伏面に垂直ですので 式 (8.6.3) は次のように示すことができます p F dε = dλ = d λa (8.6.4) % σ % % 図 の角や平面は塑性流れの方向を単一で決められない特異点 (singular point) となり この点 に対しては特別な考慮が必要です (3) 硬化則 硬化則は材料が降伏する際の塑性変形による降伏面の変化を定義する規則です 硬化則は有効塑性ひずみを定義する方法によって ひずみ硬化 と 加工硬化 で分けられます ひず み硬化は塑性非圧縮性の仮定で定義されるので 降伏が静水圧の影響を受けない材料モデルに適合 です したがって 塑性仕事の定義による加工硬化がより一般的な概念です 一方 硬化則は降伏面の変化によって 等方硬化 移動硬化 複合硬化 で大きく分類されます ( 図 8.6.2) Ⅱ-8-50

110 8. 非線形静的解析 σ 2 現在の降伏面 σ 2 初期降伏面 O 1 O σ 1 O σ 1 現在の降伏面 初期降伏面 (a) 等方硬化則 (b) 移動硬化則 σ 2 初期降伏面 2 F( σ ) = κ % 移動と膨張 ( 複合硬化 ) 2 2 F( α α) = κ1 > κ % % σ 1 移動のみ ( 移動硬化 ) % 2 F( σ α) κ (c) 混合硬化則 図 移動硬化と複合硬化 Ⅱ-8-51

111 Part Ⅱ 構成マトリックス 標準塑性構成マトリックスを構成する方法は次のようになります 応力度はひずみ変化率ベクトルの弾性部分によって決定されます すなわち ( ) ( ) e p e dσ = D dε dε = D dε d λa (8.6.5) % % % % % % % ここで D e は弾性構成マトリックスです 応力度は常に降伏面上にいなければならないので 次の適合性条件を満足しなければなりません ( ada ) 0 T F F F p T e T e df = dσ + dε + dκ = addε + h dλ = p σ % ε % κ % % % % % % % % (8.6.6) ここで h は塑性硬化係数です したがって 微小応力度の変化率は次のように求めることができます e T et e Daa D dσ = D % %% % dε % % ada T e + h % % % % (8.6.7) Newton-Raphson 反復過程が使用される場合は適合剛性マトリックスを使用すると Newton-Raphson 反復過程の 2 次収束の特性によってより早く収束に至ることができます T T Raa R dσ = R % %% % dε % % ara T + h % % % % (8.6.8) ここで 1 a 1 e e e e R = I+ dλd % = ( + λ ) σ D I d D A D % % % % % % % % % Ⅱ-8-52

112 8. 非線形静的解析 応力度積分 応力度積分のために次の二つの方法が使用できます 陽的なフォーワード オイラーアルゴリズム (Explicit forward Euler algorithm with sub-incrementation) ( 図 8.6.3~4) 陰的なバックワード オイラーアルゴリズム (Implicit backward Euler algorithm) ( 図 8.6.5) Δσ e B X A σ (a) 交差点 A の位置 X : 以前段階の最終応力状態 A : 応力の増分と降伏面の交差点 B : 弾性変形を仮定した応力状態 B X Δσ e A D ΔλC e C σ C : 補正後の応力状態 D : 人為的な回帰方法を適用した後の応力状態 (b) A から接線方向に C に移動した後 D 位置に補正 図 陽的なフォワード オイラーアルゴリズム Ⅱ-8-53

113 Part Ⅱ A B C D E σ A, B, C, D : 各負増分による応力度補正以後の応力状態 E : 人為的回帰方法を適用した後の応力状態 図 陽的なフォワード オイラーアルゴリズムでの負増分 B σ 1 σ x σ c X : 以前段階の最終応力状態 B : 弾性変形を仮定した応力状態 C : 未知の最終応力状態 図 陰的なバックワード オイラーアルゴリズム 陽的方法で硬化資料と塑性流れの方向は 交差点 すなわち 弾性応力度の増分が降伏面を通る 点 ( 図 8.6.3(a)) で計算されます 一方 陰的方法では最終応力度の位置 ( 図 8.6.6(b)) で計算される 陽的方法は相対的に単純で 応力度を直接積分します すなわち ガウスポイントでの収束計算過 程が必要ないですが この方法は次のような短所があります 条件によって安定的です 許容可能な正度を得るために応力度補正の中に負増分が必要です 降伏面から離れた程度を補正するために人為的な回帰方法が必要です Ⅱ-8-54

114 8. 非線形静的解析 また この方法では適合剛性マトリックスを構成することができません 陰的方法は負増分や人為的回帰方法を使わなくても精度の良い結果を導き出しますし 条件と関係なく安定的です ただし ガウスポイントでの収束計算が必要です この方法を使用すると 適合剛性マトリックスが構成できるので Newton-Raphson 収束計算を使用するとガウスポイントで繰り返し過程を遂行すれば計算がより効率的になります (1) 陽的なフォワード オイラーアルゴリズム 1 ひずみ増分を計算します dε = Bd u (8.6.9) % % % ここで B % dε % : ひずみ - 変位関係のマトリックス : ひずみの変化量 2 弾性変形を仮定した弾性応力度を算定します ( 図 8.6.3(a) の B 点 ) e dσ = D dε % % % σ B = σ X + dσ % % % (8.6.10) 上の式の添え字は図 を参照します 3 計算した応力度が降伏面の内側にあれば応力度補正は完了して 降伏面の外にあれば塑性変 形によって降伏面に戻す必要がある 4 次に交差応力度を計算します 弾性応力度の増分は許容可能な応力度増分と許容不可能な応 力度増分で分けられ 交差応力度は次の式を用いて計算されます ( σ X ( r) dσ) F + 1 = 0 % % FB r = F F B X (8.6.11) Ⅱ-8-55

115 Part Ⅱ 5 物理的に追加的な変形は応力度が降伏面上で移動するようにします これは許容できない応力度の増分 rdσ を m 個の小さな応力度の増分で分けて近似計算されます ( 図 8.6.4) 負増分の個数は % 誤差の大きさに直接関係があって次のように計算されます ( ( σeb σea ) σea ) m = INT (8.6.12) 最終応力度状態が降伏面上になければ 次の人為的回帰方法によって降伏面上に移動させる必要があります FC δλc = T e ada C C + h (8.6.13) % % % e σ D = σc δλcdac % % % % 注意 降伏面の形状は各負増分の終りで硬化則を用いて補正します 除荷は弾性だと仮定します (2) 陰的なバックワード オイラーアルゴリズム 陰的方法では次の式より最終応力度を計算します e σc = σb d λdac (8.6.14) % % % % ここで 添え字は図 を参照します 式 (8.6.14) で C 点は未知点ですので Newton 収束計算を利用して未知数を解く方法を使用します したがって 任意のベクトル r を現在の応力度とバックワード オイラー応力度間の差を示すために設定 % します e ( D a ) r = σc σ B d λ C (8.6.15) % % % % % これより収束計算は r を 0 と減少させるために導入されて 最終応力度は降伏基準を満たす必要が % あります 仮定された弾性応力度を使用して 次のように Taylor 展開を適用します Ⅱ-8-56

116 8. 非線形静的解析 r = r + σ + & e & n o λd a (8.6.16) % % % % % ここで σ& % : σ % の変化量 λ & : dλ の変化量 上式の値を 0 とおいて σ& に対して解くと次のようになります % σ = r & e & o λd a (8.6.17) % % % % また 降伏関数に対して Taylor 展開を適用すると 次のようになります T F F T F = + & σ + & ε = + a & σ & Cn FC o p FCo C h λ = 0 (8.6.18) σ % εp % % % ここで ε p : 有効塑性ひずみ したがって λ & は次のように求められて 最終的な応力度値も得ることができます T & Fo aro λ = T e% % ada+ h % % % (8.6.19) Ⅱ-8-57

117 Part Ⅱ 塑性材料モデル プログラムでは次の 4 つの塑性モデルが利用できます Tresca, von Mises 金属のような塑性非圧縮性をもつ軟性材料に適用 ( 図 8.6.6) Mohr-Coulomb, Drucker-Prager コンクリートや岩石 地盤のように体積塑性変形する材料に 適用 ( 図 8.6.7) von Mises 降伏面 σ 3 Hydrostatic axis Tresca 降伏面 σ 2 σ 1 図 Tresca と von Mises の降伏条件 σ 1 Drucker-Prager σ 1 ρ t ρ c σ 3 Mohr-Coulomb σ σ 3 2 σ 2 図 Mohr-Coulomb と Drucker-Prager 降伏条件 Ⅱ-8-58

118 8. 非線形静的解析 (1) Tresca 降伏条件 Tresca 降伏条件は金属のように体積塑性変形はなくて軟性材料に適しています この基準に従うと降伏は最大せん断応力度が規定された値に到逹した時に始まります したがって 主応力度が ( ) σ, σ, σ σ σ σ であれば, 降伏関数は式 (8.6.20) のようになります ( σ, κ) = σ1 σ3 κ( ε p ) F (8.6.20) % 応力度状態が降伏であれば相違特異点にある場合は数値的問題が発生する可能性があり Tresca 基準に対してある偏角 (lode angle) θ が ±30 に近接するときに発生する可能性があります したがって この場合は応力度積分方法が補正しなければなりません プログラムでは θ >29 の場合 von Mises 降伏基準が流れベクトルを形成するために使用されます (2) Von Mises 降伏条件 Von Mises 基準は金属材料に対して最も一般的に使用する降伏条件です この条件は変形エネルギーに基づいたもので 降伏関数は次のようになります ( σ, κ) = 3 2 κ( ε p ) F J (8.6.21) % ここで J 2 は偏差応力の 2 次不変量です (3) Mohr-Coulomb 降伏条件 Mohr-Coulomb 降伏条件はコンクリート 地盤 岩石のような体積塑性変形を伴う材料に適しています Mohr-Coulomb 降伏条件は Coulomb 摩擦法則の一般化として 次のように定義されます ( σ, κ) = τ ( σn tanφ) F c (8.6.22) % ここで τ : せん断応力度の大きさ σ n : 垂直応力度 Ⅱ-8-59

119 Part Ⅱ c : 粘性 φ : 内部摩擦角 粘性 c と内部摩擦角 φ はすべてひずみ硬化因子 κ に従います Tresca 条件と同様に 応力度が降伏面の特異点にある時に数値的な問題が発生します Mohr- Coulomb 条件では偏角 θ が ± 30 に近い場合や頂点で発生する可能性があります したがって この 2 つの場合には応力度の積分方法が補正される必要があります プログラムでは θ >29 の場合 Drucker-Prager 基準が流れベクトルを形成するために使用されます (4) Drucker-Prager 降伏条件 Drucker-Prager 基準は地盤 コンクリート 岩石などの体積塑性変形を伴う材料に適しています この条件は Mohr-Coulomb 条件と似ていますし von Mises 条件の拡張された形です 降伏関数は静水圧 (hydrostatic stress) の影響が考慮できるように定義しています 2sinφ 6ccosφ F( σκ, ) = I + J (8.6.23) % 3 3 sin 3 3 sin ここで I は応力の 1 次不変量です 1 2 ( φ ) ( φ ) Drucker-Prager 条件では 応力度が降伏面の頂点上にある場合は数値的問題が発生します Ⅱ-8-60

120 8. 非線形静的解析 硬化法則 (1) 有効塑性ひずみの定義方式による分類 1 ひずみ硬化ひずみ硬化について有効塑性ひずみは次のように定義されます 2 T p p 2 T dε p = ( dε ) dε = aad λ (8.6.24) 3 % % 3 % % この有効塑性ひずみは体積塑性変化がないという仮定して塑性ひずみノルム (norm) を単一軸状態のひずみに合わせて変換したものです したがって これは原則的には Tresca や von Mises にのみ適用するものですが 数値計算の便利さのため他の場合にもよく使用されます 2 加工硬化塑性仕事の増分は次のようになります T p T dwp = σ dε = d λa σ (8.6.25) % % % % 単一軸状態の場合 上の式の塑性仕事の増分は次のようになります dw = σ dε = σ d ε (8.6.26) p 1 1 e p したがって 加工硬化に対する有効塑性ひずみは次のように定義されます σ ε = a T d p % % d λ (8.6.27) σ e (2) 降伏面の変化による分類 1 完全塑性完全塑性材料に対して塑性変形が起きても降伏面は変化しないので 降伏関数は次のように定義できます (, ) e ( ) F σ κ = σ σ κ (8.6.28) % % ここで κ は定数です Ⅱ-8-61

121 Part Ⅱ 2 等方硬化等方硬化の場合は図 8.6.8(a) のように降伏面が均一に膨脹するので 降伏関数は次のように定義することができます ( σ, κ) = σe( σ) κ( ε p) F (8.6.29) % % 3 移動硬化移動硬化の場合は降伏面は図 8.6.8(b) のように大きさは変わらなくて中心位置だけが移動されるので 降伏関数は次のように定義されます ここで (,, ) e ( ) F σ ακ = σ σ α κ (8.6.30) % % % % α % : 降伏面の中心座標 κ : 定数 σ σ A B A B O C ε a O C a ε A B A B (a) 等方硬化 (b) 移動硬化 図 次元での硬化法則 移動硬化では現在の降伏面の中心座標 α % を決めるのが重要です 硬化因子 α % を決定する方法は 二つありますが 1 つは Prager 硬化法則で もう 1 つは Ziegler の硬化法則です Prager の硬化則は次のように定義されます Ⅱ-8-62

122 8. 非線形静的解析 p dα = Cpdε = Cpad λ (8.6.31) % % % ここで C p は Prager 硬化係数です この方法は応力度の負空間で使用する際にいくつかの問題が発生する可能性があります 例えば 応力度のある成分が 0 だとしても dα は 0 ではない可能性があるので 降伏面の移動だけにならない % 場合があります Ziegler の硬化則は中心の移動変化率 dα が減少された応力度ベクトルσ α % % % の方向で発生すると仮定するので 上記のような問題は発生しません この硬化則は次のように定義することができます ( ) z p( ) dα = dμ σ α = C d ε σ α (8.6.32) % % % % % ここで C z は Ziegler 硬化係数です 4 複合硬化複合硬化は等方硬化と移動硬化を組合せた形で次のように定義されます ( σ, ακ, ) = σe( σ α) κ( ε p) F (8.6.33) % % % % Ⅱ-8-63

123 Part Ⅱ 材料非線形モデル使用時の主要考慮事項 プログラムに搭載されている材料非線形モデルは弾塑性モデルで von Mises, Tresca, Mohr-Coulo mb, Drucker-Prager で構成されている 4 つのモデルがあります この中で von Mises, Tresca モデル は拘束圧力に独立的なモデルで 軟性材料である鋼材のモデリングに適合したモデルです Mohr-Coulombモデルと Drucker-Pragerモデルは拘束圧に従属的な特性を持ち コンクリートや岩盤または地盤のような脆性挙動をする材料に適合です 4つの各モデルはすべて等方性硬化モデルと移動硬化モデルを持っています しかし 実務的に移動硬化モデルは鋼材のような軟性材料で現われる挙動特性で von Mises, Trescaモデルに多く使われて Mohr-Coulomb, Drucker-Pragerのような脆性モデルは一般的に使用しません プログラムでは 硬化挙動をバイリニア挙動で規定しているし 反復荷重を受ける鋼材に等方性硬化と移動硬化モデルを混用する混合モデルを適用する場合 次の図のような応力経路を見せます 図 反復荷重を受ける鋼材の挙動 良く使われる一般構造用鋼材を解析する場合は次のように完全塑性挙動を仮定するのが一般 的ですが 降伏点を超える場合は剛性が 0 になるので構造物のモデリング時に特別な注意が必 要です Ⅱ-8-64

124 8. 非線形静的解析 図 完全塑性挙動 コンクリートのような脆性モデルは次の図のように引張挙動を圧縮挙動が違います 引張挙動の場合 ひび割れモデルを使用して挙動を予測することが一般的です プログラムでは ひび割れモデルとコンクリートも圧縮挙動時に観測される非線形硬化挙動に対するモデルは現在搭載されていません 図 コンクリートの引張及び圧縮挙動 Mohr-Coulomb や Drucker-Prager モデルの場合 3 次元主応力空間上で下記の 2 つの図のように六角 錐や円錐形状の破壊面を持ちます 弾塑性モデルの数値解析時に要求される応力回帰はこのような は海面の垂直方向を使用します Ⅱ-8-65

125 Part Ⅱ -σ 1 hydrostatic axis -σ 3 -σ 2 (a) Mohr-Coulomb 破壊面 σ 1 θ r r t0 r c0 σ 2 σ 3 (b) π 面 θ = 6 hydrostatic axis deviatoric axis r = t0 2 6c cosø 3 + sinø 3c cotø r = c0 2 6c cosø 3 - sinø θ = 6 (c) メリディアン面 図 Mohr-Coulomb 降伏面の π 面 & メリディアン面 Ⅱ-8-66

126 8. 非線形静的解析 -σ 1 hydrostatic axis -σ 3 -σ 2 (a) Drucker-Prager 破壊面 σ 1 θ r r 0 σ 2 σ 3 (b) π 面 θ = 6 6α 1 deviatoric axis r 0= 2k hydrostatic axis k 3α 6α 1 r = 2k 0 θ = 6 (c) メリディアン面 図 Drucker-Prager 降伏面の π 面 & メリディアン面 Ⅱ-8-67

127 Part Ⅱ Mohr-Coulomb や Drucker-Prager の場合 頂点で C -1 不連続性 ( 微分不可能 ) によって回帰方向 に単一解が求められなくて解が発散します つまり 次の図に示したように apex regime に応力状態が存 在する場合は解が発散します 現在 プログラムではこれを考慮していません 図 Apex regime Ⅱ-8-68

128 8. 非線形静的解析 8.7 静的増分解析 概要 構造物の耐震評価のための非線形解析法は非線形静的解析法と非線形動的解析法で区分されます 非線形動的解析法はもっとも正確な解析法ですが 一般エンジニアが使用するには多くの時間と努力を必要です 一方 静的解析法は地震荷重に対する構造物の固有な動的特性を反映しにくい短所がありますが 解析が簡単で結果も簡単に表現でき 理解しやすいのでもっとも多く使われている方法です 非線形静的解析法を一般的に静的増分解析と呼びます 静的増分解析は部材の材料非線形的な特性を考慮して 構造物が降伏後の構造物の挙動と限界状態を把握するもっとも効率的な解析方法です 静的増分解析は 地震工学と耐震設計分野で培われてきた研究と実績より確立されてきた 性能評価に基づいた耐震設計 (Performance-Based Seismic Design, PBSD) の代表的な解析法として適用されています 性能評価に基づいた耐震設計の目的は 使用者及び設計者が対象構造物の目標性能を明確に設定して その性能が具現できるようにすることです したがって 耐震設計を先に行った後で静的増分解析を通じて構造物の保有耐力を把握して考慮する地震荷重に対してすでに設定された目標性能が達成されるかを評価します 一般的な耐震設計手法で等価静的荷重を算定する場合 図 のような方法を使用します この方法は 応答修正係数 (R) を用いて設計荷重を低く設定して 構造物は設計荷重以上の強度を持つようにすることです ここで 応答修正係数を使う理由は 地震荷重に対して弾塑性領域で発生する構造物のエネルギー吸収能力を考慮するためです このような設計手法は荷重を対象とするので 荷重規定設計法 (force-based design method) ともします しかし 強度の単純比較だけでは構造物の実際の挙動を予測することは難しいです また 構成部材の強度評価だけで構造物全体強度及びひずみを算定することがもできません 結果的に 構造物の性能が明確把握できない状態で設計する可能性が高いです 性能に基づいた耐震設計では 使用者あるいは建築主 設計者が構造物の目標性能を予め設定します すなわち 予想される地震荷重に対して 与えられた条件で許容できる損傷程度 あるいはエネルギー吸収程度を予め設定して これを達成するように設計することです しかし エネルギー吸収程度によって構造物の挙動が変わるので 破壊に至るまでの構造物の変形性能を予測しなければなりま Ⅱ-8-69

129 Part Ⅱ せん このように 構造物の性能評価の対象を構造物の損傷と直接関連がある変位で評価するので こ の設計手法をを変位規定設計法 (displacement-based design method) と言います 図 荷重規定設計法による地震荷重の算定方法 構造物の変形性能を評価するための1つ方法として静的増分解析を遂行すると 図 のような荷重 - 変形に対する耐力スペクトルが得られます また 構造物のエネルギー吸収程度によって弾塑性要求スペクトルを算定することができます 耐力スペクトルと要求スペクトルが交差される点は対象構造物が解析時に考慮した地震荷重に対して発揮できる非線形最大耐力及び変位を意味します この交差点が目標性能の範囲内に存在すれば目標が達成されたと評価することができます 図 変位規定設計法による構造物の耐震性能評価 Ⅱ-8-70

130 8. 非線形静的解析 静的増分解析による耐震設計の原理 構造物に対する目標性能は 最低限の法律及び耐震設計規準の満足する状態で使用者と設計者 によって決定されます そして 構造物の構造性能を把握するためには構造解析を遂行しますが 性 能に基づいた耐震設計では大きく次の 4 つの方法を選択しています 線形静的解析法 (Linear Static Procedure, LSP) 線形動的解析法 (Linear Dynamic Procedure, LDP) 非線形静的解析法 (Nonlinear Static Procedure, NSP) 非線形動的解析法 (Nonlinear Dynamic Procedure, NDP) プログラムでは 線形静的解析と線形動的解析 そして非線形静的解析の中でもっとも代表的な方法である静的増分解析を提供しています 塑性ヒンジ解析法と呼ばれる静的増分解析は 降伏後の限界耐力と安定状態を効果的に把握することができます この解析方法は 高次モードと動的特性の影響を受けない構造物に主に適用することができます 静的増分解析では 材料非線形挙動を把握することができますし P-デルタ効果を考慮することができます 静的増分解析では 予め設定した静的荷重を構造物から予想できる最大応答点まで加力して 抵抗力と変位との関係である耐力曲線 (capacity curve) を算定します 多自由度構造物での抵抗力と変位の関係は 単自由度システムの応答加速度と応答変位との関係で表現される耐力スペクトル (capacity spectrum) に変換されます そして 地震荷重に対する応答スペクトルは ADRS 形式 (Acceleration- Displacement Response Spectrum) で表現される要求スペクトル (demand spectrum) に変換されます この 2 つのスペクトルを比較して構造物の非線形状態での最大要求耐力と変形能力を評価して 目標性能と比べて構造物の性能レベル (performance level) を決定します プログラムでは 基本的に ATC-40(1996) と FEMA-273(1997) で提案している耐力スペクトル法 (Capacity Spectrum Method, CSM) の原理と適用係数を利用して構造物及び部材の耐震性能を評価しています ( すなわち これら報告書で提示している理論及び適用係数などを適用して構造物及び部材の性能を評価します ) Ⅱ-8-71

131 Part Ⅱ 耐力スペクトル法 (CSM) の原理は図 のようになります Δ roof 耐力曲線 耐力スペクトル S a 静的増分解析 変換 Δ roof S d (a) 構造物の耐力曲線と耐力スペクトル算定 S a 変換 S a Tn,1 2 Tn Sd = S 2 4π a S a Tn,2 A max 応答推定点 要求スペクトル 耐力スペクトル 応答スペク Tn 要求スペクトル S d D max S d (b) 要求スペクトルの算定 (c) 応答推定点 ) 評価 図 耐力スペクトル法の原理 静的増分解析は構造物が保有している耐震性能を評価するのが主な目的ですので 必ず解析及び 1 次設計を完了した構造物のみ適用可能です 静的増分解析を通じて得る長所は次のようになります 構造物の降伏後の挙動及び保有耐力の評価構造物のエネルギー吸収耐力及び変位要求量の把握構造物を構成する各構造要素の塑性化過程を順次的に把握補修及び補強で構造性能を高めようとする場合の必要部材の経済的な選定 Ⅱ-8-72

132 8. 非線形静的解析 静的増分解析方法 (1) 静的増分解析の概要 プログラムの静的増分解析の目的は 設定した荷重に対して荷重 あるいは変位を段階的に構造物 に作用させて 構造物の耐力と変位の関係を求めて構造物の保有耐力 変形能力 保有性能を評価 するためです 構造物の耐力と変位の関係は図 のように示すことができます 構造物に作用した外力に対して変形は 小さい範囲では構造物がほぼ弾性挙動して耐力と変位は線形関係となります しかし 外力が増加して要素の耐力が降伏耐力を超えると塑性ヒンジが発生します 塑性ヒンジは部材のひび割れ 降伏などによるもので これによって部材の剛性と耐力が変化して非線形挙動をすることになります 図 の点 Aを超えると耐力と変位は非線形関係になりますので 点 Aを弾性限界と呼びます 点 A から外力を増やしていくと 塑性ヒンジが構造全体に拡がり 微少な外力でも変形が大きく増加します ( 点 B の状態 ) さらに 点 B から外力を増やしていくと これ以上外力に抵抗できない点 C に到逹します この時 点 C での耐力を最大保有耐力と言います 図 耐力と変位の関係 Ⅱ-8-73

133 Part Ⅱ 水平保有耐力は 構造物が水平力に抵抗する能力で 構造物が潜在的に保有している耐力を意味します 点 C は荷重を分割して少しづつ荷重を増加する荷重増分解析で安定解を得られる限界点です 従って 限界点以降の挙動を把握するためには 変位を少しづつ増加して解析する変位増分解析を遂行する必要があります プログラムの静的増分解析では 荷重を分割して解析する荷重増分法と目標変位を分割して解析す る変位増分法を提供します (2) 非線形増分解析の過程 静的増分解析では要素の塑性化による剛性変化と これによる各要素の耐力変化によって不平衡 力が発生します このような不平衡力を解消するためには反復解析 ( 収束解析 ) が必要です プログラム では 反復解析の手法として Full Newton-Raphson 法を使用しています Full Newton-Raphson 方法による非線形静的増分解析過程は次のようになります P 0 λ n P 0 (2) K n (2) R (1) R P 0 Δλ n (1) K n λn 1 P0 (0) K n Δ U (1) n Δ U (2) n δ U (2) n δ U (3) n R () i () i F n (1) F n U n 1 (1) U n (2) U n (3) U n (4) Un U 図 Newton-Raphson 方法 Ⅱ-8-74

134 8. 非線形静的解析 1 現在 増分 (n) の外力ベクトル λn P0 を構造物に作用すると 図 の点 A が得られます この時の平衡方程式は次のようになります K Δ U + F = λ P (8.7.1) n n n 1 n 0 ここで K n : 現の増分ステップ (n) での構造物の接線剛性マトリックス ΔU n : 現の増分ステップ (n) での増分変位ベクトル F n 1 : 前の増分ステップ (n-1) までの耐力ベクトル λ n : 現の増分ステップ (n) での荷重パラメータ P 0 : 設定した荷重ベクトル λ P : 現の増分ステップ (n) での外力ベクトル n 0 式 (8.7.1) は次のような増分の形で表現することができます K Δ U = λ P F n n n 0 n 1 K Δ U = Δλ P n n n 0 (8.7.2) ここで Δλ n P : 現の増分ステップ (n) での増分外力ベクトル 0 式 (8.7.2) を計算して未知数の増分変位ベクトル ΔU を求めます n 2 増分変位ベクトル ΔU n を利用して各非線形要素の接線剛性と耐力を求めます 求められた各要素の接線剛性を組み合わせて全体構造物の接線剛性マトリックス K () i n を構成します また 各要素の耐力を節点力に組み合わせて耐力ベクトル F () i を求めます この時 構造物の耐力とひず み関係は点 B となります n 3 荷重が Δλ n P 0 増加する間 非線形要素が降伏すれば要素剛性が変化して不平衡力 R 生します 不平衡力は収束計算を通じて解消します ここで K δu = λ P F () i () i () i n n n 0 n K δu = R () i () i () i n n n K : 現の増分ステップ (n) の i 番目収束計算での接線剛性マトリックス () i n () i n が発 (8.5.3) Ⅱ-8-75

135 Part Ⅱ () i δu n : 現の増分ステップ (n) の i 番目収束計算での変位ベクトル () F i : 現の増分ステップ (n) の i 番目収束計算での耐力ベクトル R n () i n : 現の増分ステップ (n) の i 番目収束計算での不平衡力 式 (8.7.3) を計算して未知数の変位ベクトル δu () i を求める 各要素の耐力と接線剛性を求めて 不平衡力 R () i n を求めて 収束条件が満足するまで 1~3 の過程を繰り返す n 4 収束条件は満足すれば ( 点 C) 1 に戻って次の増分解析を行う (3) 不平衡力と収束計算 1 不平衡力と収束計算 不平衡力は各増分での要素剛性の変化とこれによる要素耐力の変化によって 外力と要素内で発 生する内力との差を意味します 不平衡力は上で述べたように Newton-Raphson 方法の反復解析 ( 収 束計算 ) から解消されて 反復解析の条件によって次のように処理されます 収束計算を行う場合 ( 最大反復回数を 2 以上で設定した場合 ) Newton- Raphson 法によって不平衡力が解消されて 収束判断条件を満足するまで反復解析を遂行します ただし 以下の a, b の不平衡力は次の増分の外力として処理します a. 最大反復回数に至っても収束判断条件を満足できず残った不平衡力 b. 収束判断条件を満足するが 残存する不平衡力 収束判断条件を満足しても不平衡力が完全に 0 になることではありません ただし 無視できるぐらいですので 残っている不平衡力は解析結果にほぼ影響を与えません 収束計算を行わない場合 ( 最大反復回数を 1と設定した場合 ) 不平衡力は次の増分ステップの外力として処理します したがって 最大反復回数に至っても収束判断条件が満足できなくて残る不平衡力は次の増分で外 力として加えるため 直前の増分で収束されなくても現在の増分ステップで収束できれば 全体の解析 結果には影響が大きくないです Ⅱ-8-76

136 8. 非線形静的解析 2 収束判断条件 反復解析を通じて不平衡力を解消しても 不平衡力が完全に 0 になるまで収束させることは数値解析的に不可能です したがって 不平衡力が基準値以下になれば 収束されたと判断して次の増分ステップにいくための収束判断条件を設定するようにします 反復解析で収束を判定するノルムには変位 荷重 エネルギーの 3 つの方法を提供し この中で1 つ あるいは複数のノルムを選択して収束判断に使用することができます 各ノルムの定義は次のようになります 変位ノルム ε δu δu () it () i n n D = Δ () it () i Un Δ Un (8.7.4a) 荷重ノルム ε δf δf () it () i n n F = Δ () it () i Fn Δ Fn (8.7.4b) エネルギーノルム ε δf δu () it () i n n E = Δ () it () i Fn Δ Un (8.7.4c) ここで ε D : 変位ノルム ε F : 荷重ノルム ε E : エネルギーノルム () i ΔU n : 現の増分ステップ (n) の i 番目反復計算まで累積された増分変位ベクトル () i δu n : 現の増分ステップ (n) の i 番目収束計算での変位ベクトル () i ΔF n : 現の増分ステップ (n) の i 番目反復計算まで累積された増分耐力ベクトル () i δ F n : 現の増分ステップ (n) の i 番目収束計算での耐力ベクトル 3 収束判断条件の設定 収束判断条件は変位ノルムだけ選択することが一般的です 複数のノルムを設定すると 1 つの条件 を選択した場合と比べて 収束反復回数が増える場合があります Ⅱ-8-77

137 Part Ⅱ (4) サブステップによる増分量の自動分割 構造物の非線形性が非常に強い場合 収束解析の最大反復回数まで収束できない場合があり ます プログラムでは 非線形解析でこのように収束できない場合は現在の増分量を自動分割 して収束性能を向上するサブステップ機能を適用しています サブステップ機能は現在ステップで収束できない場合 収束された直前ステップに戻って現在増分量を0.5 倍づつ分割して解析する非線形解析手法で このように分割されたステップをサブステップと言います 例えば 以前増分段階まで累積された全体増分 ( 増分荷重パラメータ あるいは 増分変位量の合計 ) が0.5で 現在ステップの増分量が0.1の場合 収束条件を満足しない場合は内部的に増分量を分割して0.05で調節して解析を遂行します この場合も 収束できない場合は0.025で増分量を調節して解析を遂行する方法です サブステップによる増分量の自動分割過程は次のようになります 1) 最大反復数まで収束できない場合は 現在状態 B* で直前ステップで収束されたAで移動しま す 2) 現在ステップの像分量を2 分割して増分解析を遂行します 3) 増分量を2 分割した場合も収束できない場合 再度増分量を2 分割します 図 サブステップによる増分量の自動分割 Ⅱ-8-78

138 8. 非線形静的解析 このように増分量をサブステップで分割する回数は静的増分解析全体制御 > 非線形解析オプションの最大サブステップ数から指定します 最大サブステップ数のデフォルトは10で サブステップは収束性能向上のための臨時ステップで サブステップに対する結果は出力されません 最大サブステップ数を 1 で定義すると 収束できない場合は増分量を分割しません (5) 初期荷重の考慮 水平力あるいは水平力に対する構造物の保有耐力を求めるために静的増分解析を遂行する場合 重力方向荷重 ( 固定荷重 積載荷重 ) に対する解析を先に行う必要があります 特に 曲げと軸力が同時に作用する柱部材の場合 軸力の変動を考慮して降伏モーメントを算定するので必ず初期荷重を考慮して解析を遂行しなければなりません 静的増分解析で初期荷重は静的増分解析 > 静的増分解析全体制御の初期荷重で設定します 解析時に初期荷重を考慮する場合は 静的増分荷重ケースの初期荷重の使用を選択します 静的増分解析で初期荷重の設定方法は 次の 2 つ方法を提供します 非線形解析の初期荷重 静的解析 施工段階解析結果の読み込み 非線形解析の初期荷重 は設定された初期荷重に対して非線形解析を遂行する方法です 静的増分解析は非線形増分解析ですので 線形弾性解析のように各要素の荷重組み合わせで各要素の耐力を求めることができません したがって 初期荷重を考慮する場合は初期荷重に対しても非線形解析を遂行しなければなりません ただし 増分数は 1 ステップで固定して解析します 静的解析 施工段階解析結果の読み込み は 初期荷重と政敵増分解析の境界条件が違う場合 あるいは施工段階解析の最終段階を初期荷重で考慮する場合に適用する方法です 静的解析結果あるいは施工段階解析結果を初期荷重で設定する場合 線形解析で入力された初期断面力を単純に線形組み合わせで処理可能です しかし 非線形時刻歴解析で入力される初期断面力を非線形要素の状態判定で考慮しないと連続的に遂行される荷重条件の間の整合性が確保できません また 部材に Ⅱ-8-79

139 Part Ⅱ 発生する断面力は外力によって発生するので 入力された初期断面力を部材耐力で釣り合い方程式 にそのまま反映すると釣り合い条件は成立しません 静的増分解析では 入力された初期断面力に対して仮想の変形を求めて非線形部材の状態判定 時に考慮する方法で非線形時刻歴解析を遂行します ただし 釣り合い方程式を構成する場合は初期 断面力は無視されます 解析方法は次のようになります 1. 静的増分解析の初期増分に入る前に 初期剛性 K0 を利用して入力された初期断面力に対して弾塑性ヒンジの仮想変形 Dini を求めます a. 求めた D ini が降伏変形以内であれば ( 弾性範囲 ) 入力された初期断面力をそのまま解析に反映します b. 求めた D ini が降伏変形を超える場合 履歴ルーチンで変形 Dini に対する耐力 Pini を求めて解析に反映します ただし D ini と Pini は初期増分で1 回だけ求めます 2. 釣り合い方程式を解いて 増分変位 δ ut + Δ t を求めます ただし 初期断面力は耐力で入力されるので 釣り合い方程式を構成する際には無視されます 3. 増分変位 δ ut +Δ t を用いて 非線形ヒンジの変形 D と耐力 P を求めます 4. 非線形部材の状態判定のために履歴ルーチンに入ります ただし 履歴ルーチンに入る前 に弾塑性ヒンジの変形と部財力は初期断面力を考慮して次のように修正されます * D = D+ D ini * P = P+ P ini * * 5. 履歴ルーチンで変形 D による剛性と耐力 P を計算します 6. 弾塑性ヒンジの解析結果を出力します Ⅱ-8-80

140 8. 非線形静的解析 7. 釣り合い方程式を構成するために 変形と復元力を次のように修正します * D = D D ini * P = P P ini 釣り合い方程式を構成して 2 に戻って最後の増分まで次のような解析を繰り返します 0 P ini (=P ini ) D ini 図 初期断面力の処理 初期荷重を考慮する場合は初期荷重によって発生する各要素の耐力は静的増分解析に引き継 がれます ただし 初期荷重によって発生した各節点の変位および反力 / 層せん断力を静的増分 解析結果に含めて出力するかの可否は静的増分荷重ケースから選択可能です (6) P- デルタ効果 P- デルタ解析は要素が水平力と軸力を同時に受ける場合 2 次的な構造挙動を考慮するための幾 何学非線形解析の一種類です P- デルタ効果を考慮すると 要素の剛性は要素固有の水平方向の剛 Ⅱ-8-81

141 Part Ⅱ 性 k に軸力による剛性増減効果を表す幾何剛性 k 線形静的方程式は次のようになります ここで ( + G) Δ n + n 1 = λn 0 n G が加えます P- デルタ効果を考慮する場合の非 K K U F P (8.7.5) K : 構造物固有の剛性マトリックス K G : 幾何剛性マトリックス 静的増分解析で P-デルタ効果は次の式のように剛性マトリックスのマトリックス値が正の値を持つ領域のみ反映されます 剛性マトリックスのマトリックス値が 0 あるいは負の場合は 要素剛性の構成時に 幾何剛性 k G を無視します K + K > 0 (8.7.6) G 剛性マトリックスのマトリックス値が 0 あるいは負を示す場合は以下のようになります FEMA タイプで変形が大きくなって 負の勾配状態になる場合 マルチリニアタイプで塑性ヒンジの発生で更新された剛性に幾何剛性を加えた後 要素剛 性の対角成分に 0 あるいは負が出る場合 (7) 解析終了条件 最大増分回数に到達した場合 層間変形角の極限に到達した場合 構造物の各層で発生する層間変形角の最大値が設定した限界層間変形角を超える場合自動終了します 各層で発生する層間変形角の算定方法は次のようになります a. 各層で設定された垂直部材の層間変形各の最大値 b. 層中心での層間変形角 c. 層の節点位置の平均で層間変形角算定 せん断成分ヒンジが最初で降伏する場合 a. 構造物で設定されたせん断成分ヒンジの中で最初に降伏が発生する場合に自動終了します b. せん断成分ヒンジ降伏時に自動終了条件は 静的増分解析全体制御 > 解析中止 から設定します Ⅱ-8-82

142 8. 非線形静的解析 c. せん断成分ヒンジの自動終了のためには要素にせん断成分ヒンジを設定する必要があ ります 軸力成分ヒンジの圧壊 / 座屈が発生する場合 1) 構造物に設定された軸力成分ヒンジの中で最初に圧壊 / 座屈が発生する場合に自動終了します 2) 軸力ヒンジの圧壊 / 座屈時の自動終了は静的増分ヒンジプロパティ> 材料タイプによって次のように処理されます a. RC / SRC(encased) : 軸力ヒンジの圧縮側圧壊 ( 降伏 ) 時に自動終了します b. Steel / SRC(filled) - 入力方法 > 自動計算 i) 要素が降伏する前に座屈する場合 : 座屈時に自動終了 ( 軸力降伏耐力より座屈耐力が小さい場合 ) ii) 要素が座屈しない場合 : 圧縮側に降伏が発生しても自動終了せずに解析遂行 - 入力方向 >ユーザー入力 : 座屈有無と関係ずに圧縮側降伏時に自動終了 3) 軸力成分ヒンジの圧壊 / 座屈時の自動終了は 静的増分解析全体制御 > 解析中止 > 軸成分崩壊 / 座屈 から設定します 4) 要素に軸力成分ヒンジを設定する必要があります 5) 軸力成分の引張側降伏時には終了せずに続けて解析を進行します 限界剛性率 構造物の初期剛性と現在の剛性との比が指定した値に到達した場合 ( 荷重増分解析 だけ使用できます ) 初期荷重による解析時に PMM タイプの柱に設定された軸力が降伏軸力を超えた場合 ( 重力方向に対して柱部材の軸成分が降伏したという意味で 初期荷重を大きく設定さ れたり 降伏曲面の設定に問題があると判断されます 従って この場合はメッセージ出力 した後にプログラムを強制終了します ) Ⅱ-8-83

143 Part Ⅱ 荷重増分法による荷重制御方法 プログラムで荷重制御方法は使用者が構造物に作用する最大荷重をあらかじめ設定して最大荷重 に到達するまで荷重を適切に分割して少しずつ増加する解析方法です つまり 荷重増分法では増分する対象が最大荷重 P になります 0 各増分での荷重増分量 Δλ n P は P 0 0 に増分パラメータ Δλ をかけて算定します λ P = λ P +Δλ P (8.7.7a) n 0 n 1 0 n 0 λ = λ +Δ λ (8.7.7b) n n 1 n Δ λ = λ λ n n n (8.7.7c) 1 ここで Δλ n P 0 : n ステップでの荷重増分量 P : 最大荷重ベクトル 0 λ : n ステップでの荷重パラメータ n λ : n-1 ステップでの荷重パラメータ n 1 λ n Δ : n ステップでの増分パラメータ 荷重増分解析による増分解析では構造物に最大耐力 ( 構造物が外力に抵抗する最大耐力 Lim it Point) 以上の外力が作用すると 荷重増分解析ではこれ以上安定解を得られない解析不能状態になって発散します プログラムの静的増分解析ではこのような極限点では解析を自動終了する機能を提供します プログラムでの荷重制御方法は Full Newton-Raphson 方法に従ってします Full Newton-Raphson 方法は微分の原理を利用して関数値を探す方法で 解に接近する速度が速い長所があります 荷重は基本的に一定な分布を持つ横荷重または水平荷重です 荷重の分布は荷重条件で使用者が設定した地震荷重 (Q ud ) 以外にも使用者が荷重条件で設定した任意の荷重分布も可能です また 特定設定での節点荷重を含めて荷重条件で設定した静的増分解析時の荷重で使用することができます Ⅱ-8-84

144 8. 非線形静的解析 P 0 λn P 0 λn 1 P0 Δλ n P 0 λ n P 0 P 0 λ2 P0 λ1 P 0 λn 1 P0 K n U Δλ n 図 荷重増分方法 プログラムでは次の 3 つ荷重増分方法を提供します 自動増分制御 等分割 増分制御関数 (1) 自動増分制御 λ n P 0 n= nstep 1< n< nstep λ1 P0 n = 1 n =1 図 自動増分制御による荷重増分解析 Ⅱ-8-85

145 Part Ⅱ 自動増分制御方法は非線形性が小さい区間では増分間隔を大きくし 非線形性が大きい区間では 増分間隔を小さく制御する方法です 自動増分制御による荷重増分解析方法は次のようになります 1 1 段階 : 弾性限界計算 ( n = 1) 使用者が設定した水平荷重を載荷して 水平それに対する各要素の割り当てされた非線形ヒンジの 耐力とヒンジの降伏耐力の比率を求めます この比率は最初に非線形ヒンジが降伏する荷重を意味し 弾性限界となります P ratio = P yild crnt P ini P ini (8.7.8) ここで ratio : 非線形ヒンジの降伏耐力と水平荷重に対する内力の比率 P yild : 非線形ヒンジの降伏耐力 P crnt : 水平荷重によって発生した非線形ヒンジの内力 P ini : 初期荷重によって発生する非線形ヒンジの内力 弾性限界の 90% を 1 番目の荷重ステップの荷重パラメータにして解析します K Δ U + F = λ P + P (8.7.9) 1 1 ini 1 0 ここで K 1 : 1 番目の荷重ステップの構造物の接線剛性マトリックス ΔU 1 : 1 番目の荷重増分ステップの増分変位ベクトル F ini : 初期荷重に対する内力ベクトル λ 1 : 1 番目の荷重増分ステップの荷重パラメータ ( λ 1 = 0.9 * ratio ) P 0 : 設定された静的増分荷重ベクトル P ini : 初期荷重ベクトル λ1 P 0 : 1 番目の荷重増分ステップの外力ベクトル ini 2 2 段階 : 等差級数による増分解析 (1<n<nstep) 弾性限界で設定された全体荷重までの荷重パラメータは次のような等差級数によって割当されます {( nstep + 1) n } 1 ( 1 nstep ) λ n = λ + n 1 λ 1 i i= 1 (8.7.10) Ⅱ-8-86

146 8. 非線形静的解析 ここで λ n : 現ステップ (n) の荷重パラメータ λn 1 : 直前ステップ (n-1) の荷重パラメータ λ 1 : 1 番目の増分ステップの荷重パラメータ nstep : 全ステップ数 i : 等差増分のステップ数 現ステップでの外力ベクトルは次のように設定されます P = λ P (8.7.11) n n 段階 : 最終ステップの増分荷重 (n=nstep) 最終の荷重増分ステップ ( nstep ) の外力ベクトルは次のようになります P = λ P ; λ = 1.0 (8.7.12) nstep nstep 0 nstep 自動増分制御による荷重増分時の解析例 ( 荷重パラメータ ) Ⅱ-8-87

147 Part Ⅱ (2) 当分割 設定した荷重を全体増分数で分割して増分解析を遂行します したがって 各増分ステップでの荷 重パラメータの増分量は同じで 各増分荷重も同じ値が適用されます (3) 増分制御関数 使用者が定義した関数を基に各増分の荷重パラメータを求めて解析を遂行します 設定方法と解析 時の考慮方法は次のようになります 1. 静的増分荷重ケースで全増分数の nstep を設定します 2. 増分制御オプション > 静的増分制御関数を選択して増分関数を入力する No. : 入力される荷重パラメータ関数の X 軸を定義します 全体増分数とは関係ない値で 全体増分数を変更しても関数を変更する必要はありません 関数 : 解析に使用する荷重パラメータです 3. 適用例 Case 1 : 各増分の荷重パラメータを増分関数で直接入力 nstep =10 に設定 静的増分制御関数を次のように設定 Ⅱ-8-88

148 8. 非線形静的解析 No. 関数 上記のように増分関数を入力すると 設定された関数を荷重パラメータとしてそのまま適用しま す ただし 全体増分数を 10 に設定した場合です Case 2 : 荷重パラメータを全増分数と無関係な増分関数で入力 nstep =10 に設定 静的増分制御関数を次のように設定 No. 関数 No. 関数 あるいは 上記のように増分関数を入力した場合に No. 項の最終値で各 No. 項を割ると 2 つの関数の No. 値は同じであり 上記の 2 つ関数は同じ条件となる 上記のように増分関数を設定した場合 解析時の各増分での荷重パラメータは次のように反映される ただし 全体増分数を 10 に設定した場合である Step. No 荷重パラメータ Ⅱ-8-89

149 Part Ⅱ (4) 限界剛性率による荷重増分解析の自動終了 荷重増分解析による静的増分解析では構造物に最大耐力 ( 構造物が外力に抵抗する最大耐力 図 の点 C) 以上の外力が作用すると 荷重増分解析ではこれ以上安定解を得ることができない解析不能状態になりまして発散するようになります プログラムではこのような極限点で解析を自動終了する機能を提供します 限界剛性率では初期状態 ( 弾性状態 ) での構造物の剛性マトリックスと現在ステップの剛性マトリック スを比率に示して 構造物の状態を判断する係数です 限界剛性率は 構造物の塑性状態によって次のように表現されます 弾性状態 : Cs = 100.0% 最大耐力点前の状態 : 0.0% < Cs < 100.0% 最大耐力点の状態 : Cs = 0.0% 最大耐力点以降の状態 : Cs < 0.0% 現在の増分で Cs が 0 より小さい場合はと安定解を求めることができないので 直前の荷重ステップ に戻って解析を自動終了します Cs = Cs = Cs = Cs = Cs = Cs =. Linear State : Cs = 100%. Stable Range : 0% < Cs 100% Cs = 図 限界剛性率 Ⅱ-8-90

150 8. 非線形静的解析 目標変位による変位制御方法 プログラムで変位制御は使用者が構造物で発生する目標変位を予め設定して構造物の目標変位が 達成されるまで荷重を増加する方法です 各増分での変位増分量は目標変位 U に増分パラメータ Δλ をかけて算定します 変位制御は最大保有耐力以降の挙動を把握することができます U = U +Δλ U (8.7.13a) n n 1 n Δλ U = U U (8.7.13b) n n n 1 ここで U n : n ステップまで累積された変位ベクトル Un 1 : n-1 ステップまで累積された変位ベクトル Δ λ n : n ステップでの増分パラメータ P 0 ; Reference Load Δλ n U Δλ n U n-1 step U n 1 U + Δ λ U = U K n n 1 n n U n n step U; Displacement U1 U n 1 U n 図 変位増分方法 目標変位は 全体制御と代表節点制御で設定することができます 全体制御は 構造物で発生する最大変位が使用者が入力した目標変位を満足するまで荷重を増加させる方法です これは荷重の方向性と関係はありません 代表節点制御は 使用者が特定の節点を指定して その節点に使用者が指定した方向に対する目標変位を満足するように荷重を増加させる方法です 性能評価に基づいた耐震設計では最大変位が発生する可能性がある節点と方向を考慮して目標変位を設定します Ⅱ-8-91

151 Part Ⅱ 目標変位は構造物全体高さの 1% 2% 4% 程度で仮定します この値は構造物のシステムレベルでの最大層間変位に該当するもので 構造物の損傷状態と関係があります すなわち ATC-40 や FEMA-273 などでは最大層間変位 1% を Immediate Occupant Level 2% を Life Safety Level 4% を Collapse Prevention Level に定義します この値は部材レベルでは別途適用される場合もあります Ⅱ-8-92

152 8. 非線形静的解析 作用荷重 静的増分解析で作用荷重は各層での慣性力を反映することができる水平力にしなければなりません したがって 適用荷重は基本的に一定分布を持つ水平荷重を設定することが一般的です 静的増分解析時には 2 つ以上の水平力分布を作用するようにしています プログラムでは 次の 4 つの水平荷重を提供しています 静的荷重の形状による荷重分布 ( 静的荷重ケース ) 質量に比例する荷重分布 ( 等価化速度 ) モード形状による荷重分布 ( モード形状 ) 一般化モード形状と質量の積による荷重分布 ( 一般化モード形状 質量 ) 各荷重分布によって実際解析に作用する荷重は次のように算定されます (1) 静的荷重の形状による荷重分布 ( 静的荷重ケース ) 静的荷重の分布は線形弾性で正義された静的荷重を適用します 荷重条件の中で使用者が設定した地震荷重以外にも使用者が荷重条件で設定した任意の荷重分布も設定できます また 特定説点での節点荷重を含めて荷重条件で設定した荷重を静的増分解析時の荷重で使うこともできます (2) 質量に比例する荷重分布 ( 等価化速度 ) 力と質量の関係は次のように示すことができます m a= P (8.7.14) ここで N m : 質量 2 m/sec a 2 : 加速度 ( m /sec ) P : 力 ( N ) 質量を静的荷重分布で使用するために加速度を次のように仮定します Ⅱ-8-93

153 Part Ⅱ a m/sec (8.7.15) 式 (8.7.15) を式 (8.7.14) に代入すると 質量を荷重で表現することができます つまり 質量に比例する荷重分布は各自由度の質量がそのまま適用されます m 1.0 =P (8.7.16) i i ここで m i : i 番自由度の質量 P i : i 番自由度の外力 (3) モード形状による荷重分布 ( モード形状 ) 固有モードは構造物が自由振動 ( または 変形 ) できる固有形状を意味して 構造物の動的特性を現わす重要な指標の中の一つです 特に 構造物の1 次モードは構造物が震動する時に最も少ないエネルギー ( 又は力 ) で変形される形象を意味するので 静的増分解析でモード計上を荷重分布で設定する場合は加力方向の1 次モード形状を設定することが一般的です 静的増分解析でモード形状を荷重分布で設定する場合 加力方向のモード形状を荷重分布で設定することができますし 各モードの組組み合わせも可能です モード形状を荷重分布で設定する場合 実際解析に作用する荷重は次のように算定されます モード形状は物理的に構造物の変形 すなわち 各節点の変位を意味するので変位分布を荷荷重分布で変換する必要があります 式 (8.7.16) に示したように質量は荷重で表現できますので 式 (8.7.16) の関係を応用してモード形状を荷重で表現することができます ϕ n j= 1 i n j= 1 mj =Pi ϕ j (8.7.17) ここで ϕ i : i 番自由度のモード形状 ( 変位 ) P i : i 番自由度の外力 Ⅱ-8-94

154 8. 非線形静的解析 n j = 1 n j = 1 m j j : 全自由度に対する質量の合計 ϕ : 全自由度に対するモード形状 ( 変位 ) の合計 (4) 一般化モード形状と質量の積による荷重分布 ( 一般化モード形状 質量 ) 静的増分解析の荷重載荷時に下のような変位を仮定して 質量をかけて荷重を決定する方法です P=mΦ i i i (8.7.18) ここで Φ i : 最大値で一般化された i 番自由度のモード形状 ( 変位 ) P i : i 番自由度の外力 m i : i 番自由度の質量 ( 又は 層質量 ) 一般化されたモード形状 Φ は固有値解析を通じて得た固有モード ϕ を最大値で一般化して次のよ うに求めます ϕ 3 Φ 3 ϕ 2 Φ 2 ϕ 1 Φ 1 ( ) ϕ = max ϕ, ϕ, ϕ..., ϕ MAX i ϕi (8.7.19) Φ = ϕ i MAX ここで ϕ i : i 番自由度のモード形状 ( 変位 ) したがって Φ の最大値は 1 になります Ⅱ-8-95

155 Part Ⅱ 静的増分解析の非線形要素 プログラムの静的増分解析で提供する非線形要素には 2 次元の梁要素 3 次元の梁 - 柱要素 3 次 元の壁要素 トラス要素 そして 非線形汎用リンク要素があります 各要素は次のような特徴をもっています Ⅱ-8-96

156 8. 非線形静的解析 (1) 静的増分解析の非線形要素の概要 1 モーメント - 回転角関係の非線形要素 壁要素 要素剛性 : 柔軟度法による定式化モーメント成分のヒンジ特性 : モーメント- 回転角関係で定義非線形ヒンジ : 一軸及び多軸 -ヒンジ(P-M-M) モデル非線形ヒンジの位置 RC 鉄骨タイプ : 要素両端 ( 軸せん断 モーメント ) Masonry タイプ : 要素両端 ( モーメント ) 要素中央 ( 軸 せん断 ねじり ) スケルトン曲線 : バイリニア トリリニア FEMA タイプ 非線形ヒンジの初期剛性 : 要素の初期剛性マトリックス ( 弾性状態 ) の構成時には直接考 慮されない 弾塑性バネ発生後にだけ影響を与える モーメント成分ヒンジの初期剛性 :6EI/L 3EI/L 2EI/L で仮定 非線形壁要素 : 面外方向の非線形性が考慮可能 ( ただし 板タイプのみ ) 2 モーメント - 曲率関係の非線形梁要素 壁要素 要素剛性 : 柔軟度法による定式化 ( 数値積分 ) モーメント成分ヒンジ特性 : モーメント- 曲率関係で定義非線形ヒンジ : 一軸および多軸 -ヒンジ(P-M-M) モデルスケルトン曲線 : バイリニア トリリニアタイプ集中型タイプ要素 要素両端の塑性化だけを考慮 非線形ヒンジの初期剛性: 要素の初期剛性マトリックス ( 弾性状態 ) の構成時に直接考慮できない 弾塑性バネ降伏後のみ解析に影響を与える 非線形ヒンジの位置: 要素両端 ( 軸 せん断 ねじり モーメント ) 分布型タイプ要素 要素全体の塑性化を考慮 非線形ヒンジの初期剛性: 要素の初期剛性 ( 弾性状態 ) 構成時に直接反映される 非線形ヒンジの位置: 要素内の積分点 3 トラスおよび汎用リンク要素 非線形ヒンジ : 一軸モデル非線形ヒンジの位置 : 要素中央スケルトン曲線 : バイリニア トリリニア FEMA スリップタイプ非線形ヒンジの初期剛性 : 要素の初期剛性マトリックス ( 弾性状態 ) の構成時に考慮 Ⅱ-8-97

157 Part Ⅱ (2) 2D 梁要素及び 3D 梁 - 柱要素梁要素および梁 - 柱要素は同じ方法で正式化することができますので 図 のように節点力と節点変位を対象に数式化して 柔軟度法 (flexibility method) によって正式化されます 柔軟度法は要素断面力の分布に基づいて正式化されるので 剛性度法と比べて正確な解析ができます また 変位法 ( 剛性度法 ) に比べて 少ない要素でモデリングした場合にも剛性度法とほぼ同様の結果を得ることができる長所があります 梁要素および梁 - 柱要素では次のような 3 次元空間での荷重と変位を使用します 梁要素は軸力が作用しない場合に使用できます T f = { F, F, F, M, M, M, F, F, F, M, M, M } (8.7.20a) xi yi zi xi yi zi xj yj zj xj yj zj T u = { u, v, w, θ, θ, θ, u, v, w, θ, θ, θ } (8.7.20b) i i i xi yi zi j j j xj yj zj y z Moment z (+) Shear z (-) Moment y (+) Axial Shear y (-) (-) Moment x (+) x i j L y z Moment z (-) Shear z (+) Moment y Axial (-) Shear y (+) (+) Moment x (-) x 図 D 梁要素および 3D 梁 - 柱要素の節点力および節点変位非線形梁要素はモーメント成分の非線形ヒンジの定義方法によって モーメント- 回転角関係とモーメント- 曲率関係で区分できます また この要素は非線形ヒンジの位置と解析方法によって集中型ヒンジモデルと分布型ヒンジモデルで区分できます 1) 非線形梁要素の解析過程 非線形梁要素の解析過程は次のようになります 次の解析過程には収束計算過程はふくまれていま せん 実際の解析時では収束計算過程が追加的に遂行されるので注意する必要があります 1 節点変位の計算式 (8.7.21) の非線形の静的増分方程式を用いて全体構造物の節点変位ベクトル ΔU を求めます 全体座標系での増分ベクトル ΔU を要素座標系に変換して要素の両節点の増分変位 Δu を求めます ここで 要素の左端を i 右端を j とします Ⅱ-8-98

158 8. 非線形静的解析 T Δ u = { Δu, Δv, Δw, Δθ, Δθ, Δθ, i i i xi yi zi Δu, Δv, Δw, Δθ, Δθ, Δθ } j j j xj yj zj (8.7.21) 2 増分節点変異を変形で変換 ( 絶対変位 相対変位 ) 要素増分変位 Δu は増分荷重によって発生する両節点の絶対変位で剛体移動モードが含まれた変位です 要素が剛体移動すると 変位が発生しても変形は 0 になるので剛体移動による内力も 0 になります したがって 非線形ヒンジの内力を計算する時には要素の増分節点変位 Δu での剛体移動モードによる変位を除いた変位 すなわち 相対変位を利用して計算する必要があります 非線形梁要素の要素増分変位 Δu での剛体移動モードを除くと 1 つの軸成分と 1 つのねじり成分 そして両節点でそれぞれ 2 つの変形角が得られます 成分ごとの相対変位 u は次のように定義することができます 軸成分両節点の軸方向変位の差が要素の軸方向変形です u = uj ui (8.7.22) ねじり成分 両節点のねじり回転角の差から求めます θx = θxj θxi (8.7.23) 回転成分 1 つの節点における要素の回転角は図 に示すようにモーメントとせん断による変形 角と剛体移動による回転角から構成されます θ = θ θ s (8.7.24) ここで θ : 節点での総回転角 θ : モーメントとせん断による変形角 θ s : 剛体移動による回転角ただし Ⅱ-8-99

159 Part Ⅱ θ w w j i sy =, L θ sz = v v j i L 曲げ成分の非線形ヒンジの内力 - 変形関係はモーメントと剛体移動を除いた回転角で定義しなけれ ばならないため 各節点での変形角は次のように定義します θ = θs + θ (8.7.25) w j w L y i L wj wi w i θ yi θ yi w j w L y i w j wj wi θ yi = + θ yi L y θ yj wj wi = + θ yj L y θ yj θ yj 図 要素の絶対変位と相対変位との関係 式 (8.7.22)~(8.7.25) の関係を利用して 成分ごとの相対変位の増分ベクトル Δu を次のように得ることができます T Δ u = { Δu Δθ Δθ Δθ Δθ Δθ } (8.7.26) yi zi yj zj x ここで Δwj Δwi Δvj Δvi Δ u = Δuj Δui, Δ θyi = +Δθyi, Δ θzi = +Δθzi, Ly Lz Δwj Δwi Δvj Δvi Δ θ yj = +Δθyj, Δ θzj = +Δθzj, Δ θx =Δθxj Δθxi Ly Lz Ⅱ-8-100

160 8. 非線形静的解析 3 増分変形 Δu を利用した増分内力 Δq の計算非線形ヒンジの増分内力 Δq は要素の増分変形 Δu に剛体移動モードを除いた接線剛性マトリック ス k をかけて求めます 増分内力 Δq は軸成分 ねじり成分 せん断成分の場合は要素中央 そして AB モーメント成分の場合は両端での内力です Δq = k Δu (8.7.27) AB AB ここで T AB yi zi yj zj x Δ q = { Δn Δm Δm Δm Δm Δm } : 軸力 モーメントと成分の増分内力ベクトル Δ u : 非線形ヒンジの増分変形ベクトル k AB : 剛体移動モードを除いた接線剛性マトリックス せん断成分の増分内力 Δ qs { q q } T S y z は増分モーメントを用いて次のように計算される Δ q = Δ Δ (8.7.28) Δ mzi +Δmzj ここで Δqy =, Lz Δqz = Δ myi +Δmyj Ly 4 増分内力 Δq とヒンジの柔軟度を利用して非線形ヒンジの増分変形を計算増分内力 Δq を非線形ヒンジの増分内力 Δq で変換する方法は非線形要素の種類 ( モーメント- 回転角要素とモーメント- 曲率関係要素 ) によって異なります これに対しては該当要素に説明されています 各成分の非線形ヒンジの増分内力 Δq が求められれば 非線形ヒンジの現在状態の柔軟度を利用して非線形ヒンジの増分変形量 Δd を求めます Δd = f Δ q (8.7.29) n ここで f : 非線形ヒンジの柔軟度 ( f = 1/ k ) n n n 5 成分別の非線形ヒンジの総内力と総変形の累積成分別の非線形ヒンジの総内力と総変形量は直前ステップまでの内力と変形に現在ステップの増分内力と増分変形を加えて次のように求めます d = d + Δ d (8.7.30a) n n n 1 q = q + Δ q (8.7.30b) n 1 Ⅱ-8-101

161 Part Ⅱ ここで d : 非線形ヒンジの直前ステップまでの総変形 n 1 q : 非線形ヒンジの直前ステップまでの総内力 n 1 6 非線形ヒンジの柔軟度と内力の算定 非線形ヒンジの柔軟度と内力は図 に示すように既に設定されたスケルトン曲線を利用して次 の過程から算定します a. 直前ステップ (n-1) から現在ステップ (n) に移動する間に非線形ヒンジの変形 d n が降伏変形 d を超えたのかを判定します 現ステップで降伏変形 d を超えたことは非線形ヒンジの y 内力が降伏耐力を超えたことで要素が降伏したことを意味します b. 非線形ヒンジの変形 d n が降伏変形 d y を超えた場合 剛性 kn は既に設定した剛性低減 * * * 率によって新しい剛性 kn に更新される 更新された剛性 kn を利用して柔軟度 fn を求めます * * c. 新しい剛性 kn を利用して非線形ヒンジの内力 qn を求めます * d. 不平衡力 r を計算します ただし r = q q n n y q n q y qn 1 Δq k n * k n r * q n f * n f n 1 = k 1 = k * n n Δd dn 1 d y d n 図 非線形ヒンジの内力と変形の関係 ( スケルトン曲線 ) 7 非線形梁要素の要素剛性と内力計算 スケルトン曲線を通じて得た非線形ヒンジの柔軟度と内力を利用して 要素の柔軟度マトリックスと要 素内力を求めます 要素の剛性マトリックスは柔軟度マトリックスの逆行列から計算されます K = F (8.7.31) n 1 n Ⅱ-8-102

162 8. 非線形静的解析 ここで F n : 非線形梁要素の柔軟度マトリックス K n : 非線形梁要素の剛性マトリックス 2) モーメント- 回転角関係の非線形梁要素水平力を受ける骨組構造の静的増分解析では 梁要素に逆対称モーメントが作用するので要素両端にモーメントが集中されて塑性ヒンジが発生します このような骨組構造の解析では弾性梁要素の両端にモーメント- 回転角関係で定義される回転弾塑性バネを設定して 要素端で発生する塑性ヒンジを効果的にモデリングしたモーメント- 回転角関係の非線形梁要素が主に使用されます モーメント- 回転各関係要素はモーメント成分の非線形ヒンジが要素両端に設定されるので 集中型ヒンジモデルと呼ばれます 1 モーメント- 回転角関係の非線形梁要素の成分別の非線形ヒンジ特性モーメント- 回転角関係の非線形梁要素は塑性領域の長さを 0 と仮定し 並進または回転の弾塑性バネを弾性梁部材に設置して それを除いた部分は弾性梁要素でモデリングします モーメント- 回転角関係の非線形梁要素の非線形ヒンジの設定位置は図 に示したように各成分によって異なります モーメント成分は要素両端に方向別に 2 つずつ設定されて 軸力 ねじりし成分の場合は要素中央に 1 つずつ設定されます また せん断成分は要素中央に方向別に 1 つずつ設定されます 図 でバネで表現される部分は 実際のバネ要素の存在を示すことではなくて 解析手法を説明するためのもので 弾塑性バネの位置に塑性変形が集中されて発生することを意味します モーメント- 回転角関係の非線形梁要素の別成分の非線形ヒンジ特性は表 のようになります M zj Fzj M yj Fyj M xj F xj M zi F M yi zi Fyi M xi F xi 図 モーメント - 回転角関係要素の非線形ヒンジの位置 Ⅱ-8-103

163 Part Ⅱ 表 モーメント - 回転角関係要素の成分別の非線形ヒンジ特性 成分非線形ヒンジ特性初期剛性ヒンジの設定位置 軸力 (Fx) 軸力 - 変形 ( 相対変位 ) EA/L せん断力 (Fy,Fz) せん断力 - せん断ひずみ GAs ねじり (Mx) モーメント - 回転角 GJ/L 要素両端 モーメント (My,Mz) モーメント - 回転角 6EI/L, 3EI/L, 2EI/L 2 モーメント- 回転角関係の非線形梁要素の柔軟度マトリックスモーメント- 回転角関係の非線形梁要素の要素柔軟度マトリックスは弾塑性バネの柔軟度マトリックスと弾性梁の柔軟マトリックスを足して構成されます この際に弾塑性バネの柔軟度は使用者が定義した集中型ヒンジの接線柔軟度と初期柔軟度の差から定義されて 要素が降伏する前は 0 です 非線形ヒンジの接線柔軟度マトリックスは一軸 あるいは多軸 -ヒンジ(P-M-M) モデルに基づいた状態判定から決定されます モーメント- 回転角関係の非線形梁要素の解析過程は次のようになります a. 非線形梁要素の解析過程の 1~6 の過程を通じて 非線形ヒンジの柔軟度と内力を計算します ただし モーメント - 回転角関係の非線形梁要素は増分内力 Δq を求めた所に非線形ヒンジが位置され るので Δq を非線形ヒンジの増分内力 Δq でそのまま使用します b. 図 (a) のスケルトン曲線を通じて得られた成分別の非線形ヒンジの柔軟度は初期状態の柔軟度と弾塑性バネの柔軟度に区分して示すことができます fn = f0 + f spr ; = + (8.7.32a) k k k n 0 spr ここで dn = del + dspr (8.7.32b) f n : スケルトン曲線を通じて得た非線形ヒンジの柔軟度 f 0 : 初期柔軟度 f spr : 弾塑性バネの柔軟度 d n : 弾塑性ヒンジの変形 d el : 弾性変形 Ⅱ-8-104

164 8. 非線形静的解析 d spr : 弾塑性バネの塑性変形 del d n dspr del d spr k n = 1 f n k 0 = 1 f 0 1 f spr (a) (b) (c) 図 非線形ヒンジの柔軟度 c. 弾塑性バネの柔軟度は次のように示すことができます f = f f (8.7.33) spr n 0 d. 全体の非線形梁要素の柔軟度マトリックスは弾性梁の柔軟度マトリックスに弾塑性バネの柔軟度 マトリックスを足して求めます F n = F 0 + f (8.7.34) spr ここで F n F 0 : 非線形梁要素の柔軟度マトリックス : 弾性梁の柔軟度マトリックス f spr : 弾塑性バネの柔軟度マトリックス ( ただし 弾性状態では 0) 弾塑性バネは非線形ヒンジが降伏耐力に到達した時点で発生するので 弾性範囲での柔軟度は 0 となり 非線形ヒンジが降伏する前は梁要素の柔軟度マトリックスは弾性梁の柔軟度と同じです したがって 使用者 が設定した非線形ヒンジの初期剛性はヒンジが降伏する前は解析結果に影響を与えないことに注意する必要 があります e. モーメント - 回転角関係の非線形梁要素の剛性マトリックスは非線形梁要素の柔軟度マトリックスの 逆行列を利用して求めます Ⅱ-8-105

165 Part Ⅱ 3 モーメント- 回転角関係の非線形梁要素のモーメント成分の非線形ヒンジの初期剛性曲げ変形ヒンジのモーメント - 回転角関係は端部の曲げモーメントだけでなくて 部材中間の曲げモーメント分布によっても影響を受けます したがって 曲げ変形ヒンジのモーメント- 回転角関係を決定するためには曲げモーメントの分布を仮定する必要があります 一般的に図 ~19 のようにモーメントが作用する単純梁を基準にしてモーメント分布の仮定によって初期柔軟度を定義して初期剛性を設定します a. 直線分布に仮定した曲げモーメントで 両端の値が同じで方向が反対の場合 M a θ a θ b M b M a M b (a) 変形状態 (b) モーメント分布 図 逆対称モーメントを受ける単純梁の変形状態 2 次元弾性梁要素の力 - 曲げの関係は次のように表現されます V a L L v a 2 2 M a EI 6L 4L 6L 2L θ a = V 3 b L 12 6L 12 6L v b M 2 2 b 6L 2L 6L 4L θ b 図 の場合 va = vb = 0 θ a = θ b になるので 上の式は次のように表現されます 2 2 M a EI 4L 2L θ a = M b L 2L 4L θ b したがって 1 1 θ a L 3 6 Ma = θb EI 1 1 Mb 6 3 ここで (8.7.35) (8.7.36a) (8.5.36b) θ θ a = b M a = M b ですので L θ a = M a θ b = 6EI 6EI L M b で示すことができます したがって 逆対称モーメントを受ける梁要素のモーメント成分の初期柔軟度と剛性は次のように定義 することができます Ⅱ-8-106

166 8. 非線形静的解析 L 6EI f0 =, k0 = (8.5.36c) 6EI L b. 1 つの端部にだけモーメントが作用する場合 M a θ a M a (a) 変形状態 (b) モーメント分布 図 つの端部にだけモーメントを受ける単純梁の変形状態 ( M b = 0 ) 図 の場合 va = vb = 0 と M b = 0 になるので 式 (8.7.35) は次のように表現することができます 2 2 Ma EI 4L 2L θa = 0 3 L 2 2 2L 4L θ b (8.7.37a) したがって 1 1 θ a L 3 6 M a = θb EI (8.7.37b) L θ a = M a で示すことができます 3EI 従って 1 つの端部だけモーメントを受ける梁要素にモーメント成分の初期柔軟度と剛性は次のように定義することができます L 3EI f0 =, k0 = (8.7.37c) 3EI L Ⅱ-8-107

167 Part Ⅱ c. 両端モーメントの大きさと符号が同じの場合 ( Mb = M a ) M a θ a θ b M b M a M b (a) 変形状態 (b) モーメント分布 図 両端モーメントの大きさと符号が同じの場合の単純梁の変形状態 図 の場合 va = vb = 0 M b = M a になりますので 式 (8.7.35) は次のように表現することができます 2 2 M a EI 4L 2L θ a = M b L 2L 4L θ b (8.7.38a) したがって 1 1 θ a L 3 6 M a = θb EI 1 1 Mb 6 3 (8.7.38b) 両端モーメントの大きさと符号が同じの場合 モーメント成分の初期柔軟度と剛性は次のように定義されます L 2EI f0 =, k0 = (8.7.38c) 2EI L Ⅱ-8-108

168 8. 非線形静的解析 3) モーメント- 曲率関係の非線形梁要素モーメント- 曲率関係の非線形梁要素は 要素内に複数の非線形ヒンジを設定します 設定した各ヒンジ位置での弾塑性判定によってヒンジの柔軟度を計算した後 数値積分を通じて要素の柔軟度マトリックスを求めます モーメント- 曲率関係の非線形梁要素の非線形ヒンジは 軸成分の場合 軸力 -ひずみ関係で定義して モーメント成分はモーメント- 曲率関係で定義します 梁 - 柱要素の弾塑性挙動は主に要素端部に集中される場合が多いです しかし 数値積分法で広く使っている Gauss-Legendre 積分法は要素端部に積分点を設定することができません したがって プログラムでは要素端部の断面に積分点が設定できる Gauss-Lobatto 数値積分法を使用します 1 モーメント - 曲率関係非の線形梁要素の成分別の非線形ヒンジ特性 プログラムの静的増分解析のモーメント - 曲率関係の非線形梁要素では要素全体の塑性化を考慮す る分布型モデルと 要素両端での塑性化だけを考慮する集中型モデルを提供します 分布型タイプ 非線形ヒンジ : 積分点での設定 (1~20 個まで設定可能 ) 要素全体の塑性化が考慮可能 成分毎に積分点個数を設定可能 集中型タイプ 非線形ヒンジの位置 : 要素両端 ( モーメント ) 要素中央( 軸 せん断 ねじり ) 要素両端の塑性化だけ考慮可能 モーメント成分の非線形ヒンジ : 要素に 3 つの積分点が設定可能 ( ただし 中央の積分点は弾性 ) 軸 せん断 ねじり : 要素中央で 1 つの積分点が設定可能 M M M Inelastic Hinge M Rigid Zone Integration Point (Inelastic Hinge) Rigid Zone Rigid Zone Integration Point Elastic Hinge Rigid Zone (a) 分布型タイプ (b) 集中型タイプ ( モーメント成分 ) 図 モーメント - 曲率関係の非線形梁要素の非線形ヒンジ Ⅱ-8-109

169 Part Ⅱ モーメント - 曲率関係の非線形梁要素の成分毎の非線形ヒンジ特長は表 のようになります 表 モーメント - 曲率関係要素の成分別の非線形ヒンジ特性 成分 非線形ヒンジ特性 初期剛性 ヒンジの設定位置 ( 集中型タイプ / 分布型タイプ ) 軸力 (Fx) 軸力 - 変形度 EA 要素中央 / 積分点位置 せん断力 (Fy,Fz) せん断力 -せん断ひずみ GAs 要素中央 / 積分点位置 ねじり (Mx) モーメント- 曲率 GJ 要素中央 / 積分点位置 モーメント (My,Mz) モーメント- 曲率 EI 要素両端 / 積分点位置 2 モーメント- 曲率関係の非線形梁要素の柔軟度マトリックスモーメント- 曲率関係の非線形梁要素の要素柔軟度マトリックスは各積分点で位置する非線形ヒンジの柔軟度を数値積分して求めます 非線形ヒンジの接線柔軟度マトリックスは一軸あるいは多軸 -ヒンジ (P-M-M) モデルに基づいた状態判定から決定されます モーメント- 曲率関係の非線形梁要素の解析過程は次のようになります a. 非線形梁要素の解析過程の1~3の過程を通じて要素の増分内力 Δq を求めます 各積分点に位置した非線形ヒンジの増分内力 Δq( x) は 増分内力 Δq を内挿関数 (force interpolation function) を 利用して次のように変換し求めます 軸力とモーメント成分の非線形ヒンジの増分内力 Δq ( x) = b( x) Δq (8.7.39) AB AB ここで { Δn Δm Δm Δm Δm } T AB yi zi yj zj Δ q = : 要素の増分内力 { Δ sec Δ,sec Δ,sec} Δq ( x) T = n m m : 非線形ヒンジの増分内力 AB y z x b ( x) = 0 ξ 1 0 ξ 0, ξ = : 内挿関数 L 0 0 ξ 1 0 ξ Ⅱ-8-110

170 8. 非線形静的解析 せん断成分の非線形ヒンジの増分内力 Δ mzi +Δm Δ qy,sec = L Δ myi +Δm Δ qz,sec = L Δ m x,sec = Δm x y z zj yj (8.7.40) ここで Δmyi, Δmzi, Δmyj, Δmzj : 要素両端の増分モーメント Δ q y,sec, Δ q z,sec : せん断成分の非線形ヒンジの増分内力 Δ m x,sec : ねじり成分の非線形ヒンジの増分内力 2 非線形梁要素の解析過程の4~6の過程を通じて 非線形ヒンジの柔軟度 f ( x) と内力を計算し ます す 3 各積分点から求めた成分別の柔軟度 f ( x) を数値成分して梁要素の柔軟度マトリックスを構成しま ここで L 0 F = T b ( x ) f ( x ) b ( x ) dx (8.7.41) f ( x ) : 位置 x での断面の柔軟度マトリックス bx ( ) : 位置 x での部材力の分布関数マトリックス ( 内挿関数 ) F : 要素柔軟度マトリックス L : 要素長さ x : 断面の位置 4 モーメント - 曲率関係の非線形梁要素の剛性マトリックスは非線形梁要素の柔軟度マトリックスの 逆行列から求めて計算します Ⅱ-8-111

171 Part Ⅱ (3) 3D 壁要素 非線形壁要素は図 のように壁の中央に位置された線要素とこれの上下端部に連結された剛体梁で構成されています 中央の線要素はモーメント- 回転角関係の非線形梁要素と同じ挙動をし 剛体梁は xz 平面で剛体挙動します したがって y 方向に対するモーメントは面内曲げ挙動を示し z 方向に対するモーメントは面外曲げ挙動を示します 非線形壁要素の非線形性は壁の中央に位置しているモーメント - 回転角関係の非線形梁要素によって 定義されるので 解析方法と定式化過程はモーメント - 回転角関係の非線形梁要素を参照してください 板タイプの非線形壁要素は面外方向の非線形性を考慮することができます 図 壁要素の節点力および節点変位 Ⅱ-8-112

172 8. 非線形静的解析 (4) トラス要素 トラス要素は図 のように部材軸方向 (x 方向 ) の圧縮力及び引張力を受ける非線形バネを使 用します 図 トラス要素の節点力 トラス要素の非線形ヒンジ特徴は表 のようになります 表 トラス要素の非線形ヒンジ特徴 成分非線形ヒンジ特徴初期剛性ヒンジの設定位置 軸力 (Fx) 軸力 - 変形 ( 相対変位 ) EA/L 要素中央 Ⅱ-8-113

173 Part Ⅱ (5) 非線形汎用リンク要素汎用リンク要素は 2 つの節点間を結ぶ要素で 3 方向の並進と回転を持つ 6 つのバネで構成されます 静的増分解析では 汎用リンク要素のプロパティ から バネ要素 に設定した後 静的増分ヒンジプロパティの定義から汎用リンク要素の非線形性を定義します 非線形汎用リンク要素の成分別の非線形ヒンジの特性は表 のようになります 表 非線形汎用リンク要素の成分別の非線形ヒンジ特性 成分 非線形ヒンジ特徴 初期剛性 ヒンジの設定位置 軸力 (Fx) 軸力 - 変形 ユーザー定義 (EA/L) 要素中央 せん断力 (Fy,Fz) せん断力 - 変形 ユーザー定義 (GAs/L) 要素中央 ねじり (Mx) モーメント- 回転角 ユーザー定義 (GJ/L) 要素中央 モーメント (My,Mz) モーメント- 回転角 ユーザー定義 (EI/L) 要素中央 Ⅱ-8-114

174 8. 非線形静的解析 非線形ヒンジの特徴 プログラムの静的増分解析は要素に非線形ヒンジを設定して ヒンジの変形とそれによる耐力から非線形ヒンジの降伏状態を判定します 非線形ヒンジの特徴は 各成分が独立的に挙動する一軸 -ヒンジモデルと軸力 -モーメント成分の相互作用を考慮する多軸ヒンジモデル (P-M-M Type) で区分することができます 非線形ヒンジはスケルトン曲線によって定義されます スケルトン曲線は解析用の最小モデル単位である要素断面の非線形挙動特性を構成材料の応力 -ひずみ関係 断面のモーメント- 曲率関係などの非線形挙動特性を理想化した曲線で表現したものです 非線形ヒンジの耐力と変形の関係 すなわち スケルトン曲線上の力と変形関係は 非線形要素の 成分毎の非線形ヒンジ特性を示した表 8.7.1~4 を参照してください (1) スケルトン曲線の概要 プログラムの静的増分解析で提供するスケルトン曲線は荷重増分法と変位増分法にすべて使用可 能で 接線剛性マトリックスを使用します 1 バイリニアタイプ 対応要素 : 梁要素 壁要素 トラス 汎用リンク要素 ヒンジ特性 : 一軸 - ヒンジ及び多軸 - ヒンジで定義可能 スケルトン曲線の初期剛性 k : (+) (-) 方向対称だけ設定可能 0 2 トリリニアタイプ 対応要素 : 梁要素 壁要素 トラス 汎用リンク要素 ヒンジ特性 : 一軸 - ヒンジ及び多軸 - ヒンジで定義可能 スケルトン曲線の初期剛性 k : (+) (-) 方向対称だけ設定可能 0 3 FEMA タイプ 対応要素 : モーメント - 回転角の梁要素 壁要素 トラス 汎用リンク要素 ヒンジ特性 : 一軸 - ヒンジ及び多軸ヒンジで定義可能 スケルトン曲線の初期剛性 k : (+) (-) 方向対称だけ設定可能 0 Ⅱ-8-115

175 Part Ⅱ 4 EUROCODE 8 : 2004 対応要素 : モーメント - 回転角の梁要素 壁要素 トラス ヒンジ特性 : 一軸 - ヒンジ及び多軸ヒンジで定義可能 スケルトン曲線の初期剛性 k : (+) (-) 方向非対称設定可能 0 4 スリップタイプ 対応要素 : トラス 汎用リンク要素 ヒンジ特性 : 一軸 - ヒンジ定義 初期ギャップが設定可能 (2) マルチリニアヒンジタイプ : バイリニア トリリニア マルチリニアのヒンジ特性は荷重制御と変位制御の両方で使用できます 荷重と変形関係はバイリニアとトリリニアの 2 つ形式で定義可能です 降伏後の剛性とひび割れ剛性は初期剛性に対する剛性比で表現します 要素の剛性減少は表現されますが 強度低下 ( 負勾配 ) は表現できません (a) バイリニアタイプ (b) トリリニアタイプ 図 マルチリニア ヒンジタイプを利用した塑性ヒンジの特性 Ⅱ-8-116

176 8. 非線形静的解析 (3) FEMA ヒンジタイプ FEMA ヒンジ特性は 鉄筋コンクリート部材と鉄骨部材に対して 繰り返し荷重による実験を通じて抵 抗能力を評価した後 実務に適用することができるように理想化したものです プログラムの FEMA ヒンジ特性は変位増分解析と荷重増分解析で適用可能です 荷重増分解析では一部の要素が破壊されて点 C 以降になっても 全体構造物の耐力が減少しなければ解析は続けて進行されます ただし 要素の破壊が進み 構造物の全体体力が減少する区間以後は安定解を得ることができないので プログラムでは自動終了条件によって計算を強制終了します Force Yield Strength Yield Point B Strain Hardening C Initial Failure : Ini. Stiff. D Residual Resistance E A Deformation 図 FEMA ヒンジタイプを利用した塑性ヒンジの特性 Point A: 荷重が載荷されてない状態 Slop A-B: 部材の初期剛性状態区間 材料特性 部材寸法 鉄筋量 境界条件 応力と変形レベルから決定 Point B: 公称降伏強度状態 Slop B-C: ひずみ硬化区間 部材の降伏で剛性が低減されて 一般的に B-C 区間の剛性は初期剛性の 5~10% を持つ 隣接部材との耐力再分配に重要な影響を及ぶ Point C: 公称強度 部材耐力で強度低下が発生する始点 Drop C-D: 部材の初期破壊状態 鉄筋コンクリート部材の場合 主筋が破断 あるいは コンクリートが破損する状態 鉄骨部材の場合 せん断耐力が急に減少 Zero D-E: 残留抵抗状態 公称強度の 20% レベルで抵抗 Point E: 最大変形能力 自重をこれ以上耐えない状態 Ⅱ-8-117

177 Part Ⅱ (4) 多軸 -ヒンジモデル : P-M-M タイプ多軸 -ヒンジモデルは軸力と 2 軸のモーメントを受ける柱部材のモデリングで主に使用されるモデルです 多軸 -ヒンジモデルの軸力-モーメントの関係は降伏曲面によって定義されて 軸力の変動によって降伏モーメントを算定します P( compression) P( compression) P max P max MU,max PC0( t) MC 0 MY 0 M MY,max M Ptension ( ) P( tension) (a) RC タイプ ( トリリニア ) (b) 鋼材タイプ ( バイリニア ) 図 P-M-M タイプヒンジの降伏曲面 2 方向のモーメントと軸力を受ける場合 与えられた軸力に対する各軸方向の降伏モーメントを求め た後 次のような関係式を使用します MY z ' MY z M z M y ' MY y MY y M α M ny + = 1.0 M nx Mnox noy α (8.7.42) Ⅱ-8-118

178 8. 非線形静的解析 α は 1.0~2.0 値を設定して 式 (8.7.42) はコンクリートと鉄骨部材にすべて使用します ただし H 形 鋼の場合は 今日軸の場合 α =2.0 弱軸の場合は α =1.0 値を採用します 式 (8.7.43) は y 軸が今日 軸の場合のモーメント相間関係を示します ' y y 2.0 ' 1.0 MYz MY + = 1.0 MY MY z (8.7.43) (5) RC 部材の 2 次勾配の剛性低減率 RC 部材をモーメント- 回転角関係要素で定義して モーメント成分にトリリニアタイプのスケルトン曲線 を定義した後 ひび割れが発生した後の剛性は降伏時の剛性低減率 α を利用して自動計算されま す 降伏時の剛性低減率 α y は 図 のように表現されて 2 次勾配の剛性低減率 α1 は式 (8.7.42) で求めることができます M y M y M c α1 k0 α2 k0 k 0 θc α y k 0 θ y θ 図 RC 部材のひび割れ後の剛性と a y との関係 a d αy = npt η0 D D ( 日本建築学会 [ 鉄筋コンクリート構造設計規準 同解説 ]) M y M c α1 = M y M c α y 2 (8.7.44) (8.7.45) Ⅱ-8-119

179 Part Ⅱ 多軸 -ヒンジ(PMM タイプ ) の場合 軸力変動を考慮して降伏モーメントを算定するため 剛性低減率 α y の計算時も軸力変動の影響を考慮する必要があります PMM タイプでは次のように剛性低減率 α y を計算します a. 降伏面上で現在ステップでの要素軸力 P とひび割れ面との交差点であるひび割れモーメ ントを算定します i b. 初期荷重 ( 長期荷重 ) に対する部材軸力 P とa 点を通る直線を降伏面まで延ばして点 bを求 めます c. 点 bのモーメントを予測降伏モーメントとし α y 算定用軸力 P α を求めます y 0 P( compression) P max P α y P i P 0 PC0( t) MC MY M Ptension ( ) 図 PMM TYPE の a y 計算時の軸力算定 Ⅱ-8-120

180 8. 非線形静的解析 (6) 組積造の静的増分解析 1) 組積造の静的増分解析の概要 プログラムでは組積造構造物の静的増分解析機能を提供します 組積造構造物はモーメント - 回転各関 係の非線形梁要素でモデリングされて 垂直部材と水平部材は 静的増分ヒンジプロパティ > Masonry の Pier Type と Spandrel Type で設定します 組積造要素は面内方向だけ非線形挙動して 面外方向は弾性挙動すると仮定します したがって 非線形ヒンジはモーメント成分は要素両端に面内方向 1 個ずつ設定されて 軸力は要素中央に1 個 せん断成分は要素中央に面内方向 1 個が設定されます また ねじり成分の非線形性は無視します 組積造要素の降伏耐力はGuido M. & Gian M.C.(1997) が提案した方法によって自動計算し 耐力計算のため次の項目を使用者が入力する必要があります Pier タイプ f m : 圧縮強度 τ 0 : せん断強度 κ : 垂直応力分布係数 ( デフォルト : κ =0.85) Spandrel タイプ f hd : 水平圧縮強度 f vk 0 : 垂直荷重がない場合のせん断荷重 H : 参照軸力 p Guido M. & Gian M.C. の提案式によると 組積造の垂直部材の降伏耐力は部材軸方向 ( 重力方向 ) に発 生する圧縮力に大きい影響を受けます 特に 軸力が引張あるいは 0 の場合 降伏耐力の軸力成分とモー メント成分が 0 になるので必ず重力方向荷重を初期荷重で考慮して解析しなければなりません Ⅱ-8-121

181 Part Ⅱ 2) 組積造要素の降伏耐力の算定 L i j x y z H t l y x h T (a) Pier (b) Spandrel Beam 図 組積造要素 1 Pier タイプ軸力成分の降伏耐力計算は次のようになります ( 圧縮力の場合 ) fx = f ( L T ) = f A (8.7.46) m m pier ( 引張力の場合 ) fx = 0 (8.7.47) ここで f m : 圧縮強度 ( ユーザー定義値 ) L : Pier 長さ T : Pier 厚さ せん断成分の降伏耐力計算は次のようになります ( 新築の場合 ) Vt ' L T τ 0 = (8.7.48) Ⅱ-8-122

182 8. 非線形静的解析 ここで 1 e 3 ; /6 ' = L e L L 2 L = L ; e < L/ 6 L : Pier 長さ L ' : 各荷重ステップでの計算した中立軸の長さ H : Pier 高さ T : Pier 厚さ τ 0 : せん断強度 ( ユーザー定義値 ) P : 軸力 M : モーメント e sup L '/ 3 H 0 L ' e inf M = Pe = VH 0 e= M / P 図 Rocking 強度を評価するための仮定 せん断成分の耐力算定時には下のように e が L /2より大きくなると L ' が負になるので 定 常的な耐力算定を遂行することができません e L/2 L/2 M = Pe = VH 0 P M L e 1 e = >, > P 2 L 2 ' 1 e L = 3 L < 0 2 L < 0 Ⅱ-8-123

183 Part Ⅱ このような場合は以下のようなメッセージを出力して解析を強制終了します ( 既存建物の場合 ) V t 1.5 τ p τ 0 = L T + (8.7.49) β 0 = 1.5 ; 1.5 H / L β = H / L ; 1.0 < H / L < 1.5 = 1.0 ; H / L 1.0 (8.7.50) ここで L : Pier 長さ H : Pier 高さ T : Pier 厚さ τ 0 : せん断強度 ( ユーザー定義値 ) P : 軸力 モーメント成分の降伏耐力計算は次のようになります ( 圧縮力の場合 ) M u 2 L T p p P L p = 1 = 1 2 κ f 2 κ f m m (8.7.51) ( 引張力の場合 ) M = 0 (8.7.52) u ここで f m : 圧縮強度 ( ユーザー定義値 ) κ : 垂直応力分布係数 ( デフォルト : κ =0.85) p : 鉛直応力 P : 軸力 Ⅱ-8-124

184 8. 非線形静的解析 2 Spandrel タイプ 軸力成分の降伏耐力計算は次のようになります ( 圧縮力の場合 ) ( 引張力の場合 ) fx = f ( h t) = f A (8.7.53) hd hd sbeam fx = 0 (8.7.54) ここで f hd : 水平圧縮強度 ( ユーザー定義値 ) せん断成分の降伏耐力計算は次のようになります ここで V = h t f (8.7.55) t vk0 f vk 0 : 垂直荷重がない場合のせん断荷重 ( ユーザー定義値 ) モーメント成分の降伏耐力計算は次のようになります M u H h p H p = f h t hd (8.7.56) ここで i) 0.4 f h t hd H ii) H : p User Defined Value (8.7.57) p minimum value Ⅱ-8-125

185 Part Ⅱ 3) 組積造要素の非線形ヒンジ特性 す 組積造要素の非線形ヒンジは FEMA タイプで定義して 降伏後には完全弾塑性挙動すると仮定しま ( F, D ) ( F( C), D( C) ) ( B) ( B) ( F( D), D( D) ) ( F, D ) ( E) ( E) ( F, D ) ( A) ( A) 図 組積造の FEMA タイプ F ( A) ( B ) : 載荷されてない状態の耐力 初期状態 F : 式 (8.7.43)~(8.7.55) によって計算された降伏強度 ( V, M ) F ~ F ( E ) : 降伏強度 F との比率で定義 ( V / V, M / M ) ( B ) t u ( C ) ヒンジプロパティダイアログから設定 D : 載荷されてない状態の変形 初期状態 ( A) D : 降伏変形 D ( ) = F ( ) / K B B 0 で計算 ( B ) t u D ~ D ( C ) ( E ) i) 軸力成分 : 降伏変形 D との比率で定義 ( D/ D ) ( B ) Y ii) せん断 モーメント成分 : ひずみで定義 ( δ / H ) 1 つの節点で要素の回転角はモーメントとせん断による変形角と剛体移動による回転角で構成されま す ( 図 式 (8.7.24~25) 参照 ) Ⅱ-8-126

186 8. 非線形静的解析 δ θ i H θ j θ = ϕ+ γ 図 組積造要素の水平関係と回転角関係 変形角 θ は図 に示したようにモーメントによる変形角 ϕ とせん断による変形角 γ で区分できま す θ = ϕ + γ (8.7.58) ここで θ : 変形角 ϕ : モーメントによる変形角 γ : せん断による変形角 せん断 モーメント成分の場合 スケルトン曲線のC, D, E 点の変形 D( C) ~ D( E) は式 (8.7.59) のよう に実際変形量である変形角 θ( C) θ( E) で入力します ~ δ = θ H ; θ = δ / H ( C) ( C) ( C) ( C) δ = θ H ; θ = δ / H ( D) ( D) ( D) ( D) δ = θ H ; θ = δ / H ( E) ( E) ( E) ( E) (8.7.59) ここで δ は変形角 θ が発生する際の相対変位です Ⅱ-8-127

187 Part Ⅱ 1 モーメント成分モーメント成分の非線形ヒンジつく姓はモーメント- 回転角 ( M ϕ) 関係で定義されるので 静的増 分ヒンジプロパティ ダイアログで δ / H で入力された変形角 θ をモーメントとせん断による変形角で区分して モーメントによる変形角 ϕ( = θ γ) がスケルトン曲線での点 C, D, Eで反映されます したがって, ϕ と ϕ の位置は増分する際に毎回更新されます u E Moment M u B C A ϕ y D ϕu E ϕe ϕ = θ γ 図 組積造要素のモーメント成分のヒンジ特性 2 せん断成分 せん断成分の非線形ヒンジ特性は線弾力 -せん断変形関係で定義されるので 静的増分ヒンジプロパティダイアログで入力した変形角 θ に対するせん断変形角 γ ( = θ ϕ) がスケルトン曲線での点 C, D, Eで反映されます γ u と γ E の位置はモーメント成分と同様に増分する際に毎回更新されます Shear Force V t B C A γ y D γ u E γ E γ = θ ϕ 図 組積造要素のせん断成分のヒンジ特性 Ⅱ-8-128

188 8. 非線形静的解析 4) 組積造静的増分解析時の注意事項 1 初期荷重の考慮 積造増の垂直部材の降伏う耐力は部材軸方向 ( 重力方向 ) に発生する圧縮力に大きい影響を受けます 特に 軸利欲成分とモーメント成分は軸力が引っ張り又は0の場合は0になるので 必ず重力方向荷重を考慮して解析を遂行しなければならないし 初期荷重を設定しなくて解析を遂行する場合は強制終了されます 2 せん断 モーメント成分のスケルトン曲線定義時の注意事項 一般的に FEMA タイプのスケルトン曲線の点 C, D, E は降伏耐力と降伏変形 ( 点 B) に対する比率で 定義されます 一方 組積造要素のせん断 m モーメント成分の場合 点 C, D, E の変形軸は変形量で直接入力して 設定します したがって 降伏耐力によって計算された降伏変更 ( 点 B) が入力された点 C, D, Eの変形 D( C) ~ D( E) より大きい場合が発生する場合がありあmす この場合は 定常的な解析が不可能です したがって D ( B) を D ( C ) で変更して解析を遂行し 解析終了時にメッセイー時を出力します D ( B) > D( C) ( B) ( C ) D = D D D D ( C ) ( E) ( B ) D( D ) D D ( C ) ( E ) D( D ) 図 せん断 モーメント成分のスケルトン修正 Ⅱ-8-129

189 Part Ⅱ 性能点を用いた耐震性能評価 プログラムでは基本的に能力スペクトル法 (CSM) の原理を利用して構造物の保有耐力と耐震性能を評価します 構造物の保有耐力は静的増分解析を利用して能力曲線と能力スペクトル算定して評価することができます そして 地震荷重に対する要求スペクトルは有効減衰原理が適用された弾性設計スペクトルを利用して評価することができます この二つのスペクトルを 1 つの座標系で表現すると交差点が発生し この交差点が構造物の非線形最大要求耐力を意味する性能点で決定されます 性能点での変形程度と保有耐力を利用して構造物が保有している耐震性能と性能レベルを評価することができます (1) キャパシティ スペクトルと要求スペクトル 構造物の耐震性能と性能レベルを評価するためには能力スペクトルと要求スペクトルを使用します 静的増分解析から荷重 - 変位関係 ( V U) が生成されて 応答スペクトルの場合は加速度 - 周期 ( A T) の関係を得ることができます したがって 2 つを比較するために加速度 - 変位スペクトルの関係 (ADRS format) でもう一度表現します 図 荷重 - 変位関係の加速度 - 変位スペクトルへの変換 図 加速度 - 周期スペクトルの加速度 - 変位スペクトルへの変換 Ⅱ-8-130

190 8. 非線形静的解析 荷重 - 変位関係は図 のように加速度 - 変位関係で変換されて これは式 (8.7.60~61) のような方 式で変換されます ここで A D V M = (8.7.60) k U Γ φ = (8.7.61) k k k Γ : 該当方向の k 次モードに対する刺激係数 k M : 該当方向の k 次モードに対する等価質量 計算式は次のようになります 刺激係数 : Γ 等価質量 : M k k = = N j = 1 N j = 1 m φ j j jk 2 m φ N j = 1 N j = 1 jk m φ j j jk 2 m φ jk 2 (8.7.62) (8.7.63) 式 (8.7.60~61) は 動力学理論から多自由度 (MDOF) システムと単自由度 (SDOF) システムの関係を 意味します すなわち A と D は単自由度システムシステムの応答を意味するスペクトル上での応答加 速度と応答変位であり V と U は多自由度システムでのせん断力と変位を意味します そして 弾性応答スペクトルは単自由度システムでの変位と加速度関係である次の式を用いて図 のような方法で変換されます 2 T n D = A (8.7.64) 2 4π Ⅱ-8-131

191 Part Ⅱ (2) 性能点の評価 性能スペクトルと要求スペクトルがあう点を性能点と定義します プログラムから提供する性能点の評価方法は ATC-40 の能力スペクトル法 (CSM) で提示された Procedure-A と Procedure-B 方法をすべて適用することができます 2 つ方法の根本的な原理は同じです 性能点を探す過程で有効減衰算定による直接反復法を適用することが Procedure-A で 軟性比仮定と有効周期原理を用いて計算する方法が Procedure-B です 1 等価減衰の算定能力スペクトル法 (CSM) では 静的増分解析によるの応力スペクトルを算定した後で下の図のように等価面積を持つバイリニア曲線で表現します CSM では 5% 減衰を持つ弾性応答スペクトルと能力スペクトルを用いて構造物の等価減衰を算定します 構造物の減衰による消散されるエネルギーの量は等価バイリニア曲線の履歴挙動による面積を示し 式 (8.7.65) のように算定することができる 図 履歴挙動による等価減衰の算定 β = β eq 0 1 E 63.7 D β = = 0 4π E ( ad y pi da y pi) a d SO pi pi (8.7.65) ここで E D : 構造物の減衰のよって消散されるエネルギー E SO : 構造物の最大変形エネルギー Ⅱ-8-132

192 8. 非線形静的解析 式 (8.7.65) をパーセンテージで表現すると 次の式のように示すことができます 63.7( ad y pi da y pi) βeq = β0 + 5= + 5 (8.7.66) a d eq pi pi ここで β は減衰比 (%) です ATC-40 では 25% を超過する場合は慎重な判断が要求されて 最大 50% を超過することはできないと説明されています 2 有効減衰の算定地震荷重を受ける鉄筋コンクリート構造物の履歴特性は強度低下 スリップ及びピンチングなどによって理想化された履歴モデルの特性を反映することはできません それで ATC-40 では鉄筋コンクリート構造物のこのような履歴挙動特性を反映するために減衰調整係数を使って等価減衰を調節します 調節した等価減衰係数を有効減衰係数と言い 下の式のように算定することができます 63.7 κ ( ad y pi da y pi) βeq = κβ0 + 5= + 5 (8.7.67) a d pi pi 上記の式で 左辺の減衰比 5% は弾性システムに対する地震要求ですので 鉄筋コンクリート材料の履歴特性を反映する減衰調整係数は等価減衰に適用されます そして このような履歴特性によって構造物のエネルギー消散能力の低下現象を反映するために減衰調整係数を以下の 3 つで区分して適用します 表 構造物の履歴挙動による減衰調整係数 構造挙動形式 Type A ( 完全な履歴特性 ) 等価減衰 β (%) 減衰調整係数 ( κ ) > ( ad y pi da y pi) 1.13 a d pi pi Type B ( 普通の履歴特性 ) > ( ad y pi da y pi ) a d pi pi Type C ( 劣悪な履歴特性 ) すべての値 0.33 Ⅱ-8-133

193 Part Ⅱ 3 弾塑性要求スペクトルの算定先に算定した有効減衰係数を適用して弾塑性応答スペクトルを考慮します すなわち 有効減衰係数を利用して応答スペクトルの調整係数である応答減少係数 (SR) を算定して 応答減少係数は加速度区間および速度区間で区分して図 のようにそれぞれ適用します 応答減少係数は Newmark と Hall(1982) の地盤運動増幅係数を利用したもので 加速度区間の応答減少係数 (SR A ) と速度区間の応答減少係数 (SR V ) は下の式のように計算します ATC-40 では構造物の履歴挙動によって応答減少係数の下限値を表 のように提示しています S a SR A SR V S d 図 応答減少係数による弾塑性応答スペクトルの算定 ( ad y pi da y pi) 63.7κ ln apidpi SRA = ( ad y pi da y pi) ( for Type A) ( for Type B) ( for Type C) 63.7κ ln apidpi SRV = 0.56 (8.7.68) ( for Type A) ( for Type B) ( for Type C) 表 構造物の履歴挙動による応答減少係数の下限値 区分 κ SRA SRV Type A ( 完全な履歴特性 ) Type B ( 普通の履歴特性 ) Type C ( 劣悪な履歴特性 ) Ⅱ-8-134

194 8. 非線形静的解析 以上のような手順を通じて設計地震荷重あるいは線形弾性応答スペクトルによる弾塑性要求は算定 することができます このように算定された弾塑性地震要求スペクトルと静的増分解析を通じて算定した 構造物の能力スペクトルと比べることで構造物の性能点を算定することができます 4 性能点の算定静的増分解析から算定した構造物の能力スペクトルと弾塑性設計応答スペクトルの交差点を利用して再現周期ごとの地震荷重に対する構造物の弾塑性最大変位と耐力を意味する性能点を算定することができますし 構造物の性能レベルも評価することができます Ⅱ-8-135

195 Part Ⅱ 性能点を算定する方法 プログラムでは能力スペクトル法 (CSM) による性能点算定を大きく 2 つ方法で評価することができます こ の方法は ATC-40 で提示している方法で 基本的な原理は有効減衰係数を用いて非弾塑性要求スペクト ルを評価して能力スペクトルとの交差点を通じて性能点を算定する方式です (1) Procedure-A ATC-40 で提示する基本的な方法で能力スペクトルの初期剛性に対する傾きと 5% 弾性設計応答スペクトルとの交差点を初期性能点だと仮定します 初期性能点に対する等価減衰を算定して 有効減衰係数が適用された弾塑性設計応答スペクトルを求めた後で また交差点での性能点を算定します このような方法で有効減衰係数を適用した弾塑性設計応答スペクトルと能力スペクトルとの交差点の応答変位と応答加速度との変化が誤差範囲内に入るまで繰り返して最終的な性能点を算定します Procedure-A 方法を利用した性能点算定原理は図 と同様である 図 Procedure-A 方法を利用した性能点算定 (ATC-40) Ⅱ-8-136

196 8. 非線形静的解析 (2) Procedure-B ATC-40 で性能点を算定する 2 番目方法は まず 変位の軟性比を仮定した後でこれに対する構造物の有効周期を算定して有効周期直線と 5% 弾性設計応答スペクトルとの交差点を初期性能点で仮定します 仮定した変位軟性比に対する有効周期と弾塑性設計スペクトルとの交差点は軌跡を形成することになり この軌跡線と構造物の能力スペクトルとの交差点が最終的な性能点で設定されます Procedure-B 方法を利用した性能点算定の原理は図 と同様である 図 Procedure-B 方法を用いた性能点算定 (ATC-40) この方法の場合は 変位軟性比を仮定して順番的に有効減衰係数を算定するので交差点で発生する応答誤差に対して発散される確率は低いです 先に説明した Procedure-A の場合は性能点を探す過程で収束性が落ちる短所がありますが Procedure-B は収束性がよくて弾性応答スペクトルを減衰比の変化によって何回も作成しなくても変化された減衰比と振動周期による応答スペクトル値の軌跡のみ計算すればいいので より簡単な方法です Ⅱ-8-137

197 Part Ⅱ プログラムから提供する 2 つの方法による性能点算定過程は図 ~42 のようになります 図 Procedure-A 方法による性能点評価 図 Procedure-B 方法による性能点評価 Ⅱ-8-138

198 8. 非線形静的解析 性能評価 構造物の変位が目標性能の範囲内に含まれることが確認できれば 続けて各部材の性能を評価しま す この時 プログラムでは FEMA-273 や ATC-40 から推薦する方法と似ている方法で部材の性能が 評価できるようにしました この報告書では性能状態を図 のような 3 つの段階で区分しています IO = 使用限界状態 (Immediate Occupancy) LS = 安全限界状態 (Life Safety) CP = 崩壊防止限界状態 (Collapse Prevention) 図 部材の性能評価 Ⅱ-8-139

199 Part Ⅱ 静的増分解析過程 1. 静的解析および部材設計完了地震荷重に対する構造物の保有性能を検討するために静的増分解析を遂行する場合 まず解析モデルに対する静的解析と部材設計を完了します 2. 静的増分解析制御データ入力 設計 > 静的増分解析全体制御 ダイアログから初期荷重 各ステップの最大繰り返し回数と収束判定条件を指定します 3. 静的増分荷重ケースの入力 設計 > 静的増分解析 > 静的増分荷重ケース ダイアログから 静的増分解析の最大計算回数 増分方法 初期荷重の使用可否と荷重条件を入力します まず 荷重制御と変位制御を選択します 初期状態荷重を考慮するため自重を入力して 増分解析条件として静的荷重ケース 一定加速度やモード形状などを適用することができ 各荷重の形の組み合わせも可能です 4. ヒンジデータ定義 設計 > 静的増分解析 > 静的増分ヒンジプロパティの定義 ダイアログから 非線形要素の種類 非線形性を考慮する成分と成分毎のスケルトン曲線を定義します 5. 部材にヒンジデータを指定 設計 > 静的増分解析 > 静的増分ヒンジプロパティの割当 ダイアログから 定義したヒンジデータを各部材に割り当てます 一般的に梁にはモーメントヒンジ 柱とせん断壁には軸力とモーメントヒンジ ブレースには軸力ヒンジを割り当てします 6. 静的増分解析を遂行 設計 > 静的増分解析 > 静的増分解析の実行 をクリックして静的増分解析を遂行します 7. 解析結果の確認解析が完了されたら 設計 > 静的増分解析 > 静的増分グラフ をクリックして様々な設計スペクトルに対する構造物の性能を検討します また 結果 > 変形 > 変形図 ダイアログから 静的増分荷重条件を選択して段階毎の変形とヒンジ発生状況を確認します この際に アニメーション機能を利用すれば ヒンジ発生過程をアニメーションで確認することができます Ⅱ-8-140

200 9. 非線形時刻歴解析 9. 非線形時刻歴解析 9.1 概要 構造物に地震動が作用すると 変形が小さい範囲内では弾性挙動します しかし 外力の増加とともに変形も大きくなると 部材応力は弾性限界を超えてひび割れや降伏などの現象が発生します この際に 復元力特性は弾塑性復元力特性と言います 構造物に大震災が発生して骨組みが降伏して塑性領域に入ることは避けることができないので 大震災に対する構造物の安全性を確保するために構造物の塑性変形能力と履歴エネルギー吸収能力は非常に重要な部分になります 非線形時刻歴解析は構造部材の非線形復元力特性を単純化した履歴モデルを通じて構造物の非線形挙動を把握する時刻歴解析方法です 対象構造物は解析の効率のため考慮してください主な部分は非線形要素を使って 残りの部分は弾性と仮定します 非線形運動方程式 非線形要素が含まれた構造物の運動方程式は次のように構成されて 要素の非線形性は接線剛性 法によって定式化されます ただし 非線形連結要素は汎用リンク要素のバネに弾塑性ヒンジプロパテ ィを与えた要素です Mu&& + Cu& + K u+ f + f = p (9.1.1) S I N ここで M : 質量マトリックス C : 減衰マトリックス K S : 非線形部材及び非線形連結要素を除いた弾性部材の剛性マトリックス u, u&, u&& : 節点の変位 速度 加速度 p : 節点への動的荷重 f I : 非線形梁要素の全体座標系での節点内力 f N : 汎用リンク要素の全体座標系での節点内力 Ⅱ-9-1

201 Part Ⅱ 非線形時刻歴解析は線形時刻歴解析と異なって重ね合わせを適用することができません したがって 数値積分法によって解析しなければならないし 非線形動的運動方程式の時刻歴数値積分法は直接積分法によって遂行されます 直接積分法によ応答解析は任意の外力による強制振動運動方程式を直接数値積分して 2 系の連立微分方程式の解を求めて 未知数である変位 速度及び加速度の応答を求める方法です プログラムでは Newmark-β 法による直接積分法で解析を遂行しています Newmark-β 法は各時間増分での変位の増分を求めて累積する方法で処理されます 各時間増分で発生する不平衡力の収束は Newton-Raphson 法を使用します Newmark-β の基本仮定により 時刻 t での加速度と変位を用いて t+ Δt での速度と変位を以下のように示すことができます ( 1 γ) u& = u& + Δ tu&& + γδtu&& (9.1.2) t+δ t t t t+δt ut t ut tu +Δ = +Δ & t + β Δ tu&& t + βδtu&& t+δt (9.1.3) 2 上の式を変位で整理すると 次のように示すことができます u & γ γ γ u 1- u 1- tu t +Δ = Δ t β t t +Δ + t + Δ β t Δ & 2 β && t (9.1.4) u&& = u - tu -β t u t+δ t 2 Δ Δ & + Δ β t t+δt t && 2 t (9.1.5) Δ 変位 速度 加速度の増分は次のように表現されます Δ u = u - u (9.1.6) t+δ t t+δt t γ γ γ Δ u u u 1 tu t +Δ = Δ t β t t +Δ + t β t Δ Δ 2 β t (9.1.7) Δ u&& t t = Δu 2 t t u& t u&& t βδt βδt 2β (9.1.8) Newton-Raphson 法による反復計算時の増分応答は次のようになります γ δu =Δu Δ u = δu β Δ t () i () i ( i 1) () i & & & (9.1.9) () () (-1) 1 () δu&& i =Δu&& i - Δ u&& i = δu i (9.1.10) 2 β ( Δt) Ⅱ-9-2

202 9. 非線形時刻歴解析 従って 時刻 t+ Δt での (i) 番目の反復計算時の変位 速度 加速度は次のようになります u = u + δu (9.1.11) () i ( i 1) () i t+δ t t+δt () i ( i 1) () i ( i 1) γ () i u& t+δ t = u& t+δ t + δu& = u& t+δt + δu β Δ t (9.1.12) () i ( i 1) () i ( i 1) γ () i u& t+δ t = u& t+δ t + δu& = u& t+δt + δu β Δ t (9.1.13) 時刻 t+δt での (i) 番目の反復計算時の非線形運動方程式は次のようになります Mu&& + Cu& + f( u) = p (9.1.14) () () () t+δ t t+δ t t+δ t t+δt 式 (9.1.14) に式 (9.1.12) (9.1.13) を代入すると 増分変位 δ になります () i u に対する釣り合い方程式は以下のよう K δu =Δ p (9.1.15) () i () i () i Eff Eff ここで K Eff : 有効剛性マトリックス 1 1 i K = M + C+ K β βδt () Eff 2 t +Δt ( Δt) Δ p Eff : 各反復計算段階での有効荷重ベクトル ( ( i 1) ( i 1) ( i 1) && & ) Δ p = p Mu + Cu + f Eff t+δ t t+δ t t+δ t t+δt () K i t +Δ t : 弾塑性要素を含む接線剛性マトリックス () δ u i : 各反復計算段階での変位増分ベクトル β : Newmark-β 法の数値解析パラメータ Ⅱ-9-3

203 Part Ⅱ 非線形静的解析 非線形時刻歴解析で質量と減衰の効果を除くことで非線形静的解析を遂行することができます プログラムでは 時刻歴荷重ケース> 非線形 > 静的解析 になります 非線形静的解析は重力荷重による初期条件を生成するとか静的増分解析を遂行する際に使うことができます 重力荷重による初期条件生成において非線形静的解析を遂行すればこの過程で発生する非線形挙動を非線形時刻歴解析で反映することができます 従って 非線形要素の状態を判定する際に連続的に遂行される荷重条件の間の整合性を確保することができます 静的増分解析は降伏後の極限耐力と限界状態を非常に効果的に把握できる簡単な解析方法です 特に 最近地震工学と耐震設計分野で多くの研究と実務に適用されている性能に基づいた耐震設計の代表的な解析方法として適用されています この解析は高次モードと動的特性の影響を受けない構造物に主に使うことができます 非線形静的解析で使われる解析方法は Newton-Raphson 法を基本にして 荷重制御及び変位制御法をすべて提供しています 荷重制御は 使用者が入力した静的荷重を載荷ステップ数で分けて載荷する方法です 変位制御は 使用者が構造物から発生できる目標変位を予め設定して目標変位が達成されるまで荷重を増加する方法です 目標変位は大きく 全体制御 と 代表節点制御 で設定することができます 全体制御は 構造物で発生する最大変位が使用者が入力した目標変位を満足するまで荷重を増加する方法です この方法は荷重の方向性とは関係ありません 代表節点制御は 使用者が特定節点を指定して その節点の変位が使用者が指定した方向に対する目標変位を満足するまで荷重を増加する方法です 性能に基づいた耐震設計では最大変位が発生する可能性がある節点と方向を考慮して目標変位を設定します 非線形静的解析では お互いに違う制御方法を持つ荷重条件の連続解析もできます ただし 1) 荷重制御による荷重条件を連続で解析する場合と 2) 変位制御による荷重条件の後で 荷重制御による解析を遂行する場合は 正しい結果にならない場合がありますので注意する必要があります 連続解析に対する荷重条件を整理すると以下のようになります 荷重制御 変位制御 ( ) 荷重制御 荷重制御 ( ) 変位制御 変位制御 ( ) 変位制御 荷重制御 ( ) Ⅱ-9-4

204 9. 非線形時刻歴解析 荷重は 静的荷重制御データ から載荷されて この際の荷重関数は 時刻歴荷重関数 の時間データを無次元で入力します 荷重制御の場合 荷重係数は 0 から 1 まで線形増加します 変位制御の場合は変位増分に対する荷重係数を自動計算します 非線形静的解析で荷重係数の時刻歴は保存および出力できます Ⅱ-9-5

205 Part Ⅱ 非線形時刻歴解析での初期断面力の考慮 プログラムの非線形直接積分法による時刻歴解析で重力荷重による静的解析を動的解析の初期条件で反映する方法は 1) 重力荷重に対して非線形静的解析を遂行して連続して時刻歴解析を遂行する方法と 2) 重力荷重に対する静的解析の結果を初期断面力として入力して時刻歴解析の結果に反映する方法があります 静的解析結果を初期断面力で入力する場合 線形解析で入力した初期断面力を単純に時刻歴解析結果と組み合わせることができます しかし 非線形時刻歴解析では入力した初期断面力を非線形要素の降伏状態判定に考慮しないと連続的に遂行される荷重条件の間の整合性を確保することができません また 部材に発生する断面力は外力によって発生するので 入力した初期断面力を部材力としてつり合い方程式にそのまま反映すると つり合い条件が成り立ちません プログラムでは 入力した初期断面力に対して仮想の変形を求めて 非線形部材の降伏状態判定時 に考慮する方法で非線形時刻歴解析を遂行します ただし 動的つり合い方程式を構成する際の初期 断面力は無視します 詳細計算方法を次のようになります 1. 時刻歴解析の初期増分に入る前に 初期剛性 K0 を利用して入力した初期断面力に対する弾塑性ヒンジの仮想変形 Dini を求めます (a) 求めた D ini が降伏変形内にあれば ( 弾性範囲 ) 入力した初期断面力をそのまま解析に反映します (b) 求めた D ini が降伏変形を超えた場合は 履歴ルーチンから変形 Dini に対する復元力 Pini を求めて解析に反映します ただし D ini と P ini は初期増分から 1 回だけ計算します 2. 動的つり合い方程式を解いて 増分変位 δ ut +Δ t を求めます ただし 初期断面力は内力に入力されるので 動的つり合い方程式を構成する際には無視されます 3. 増分変位 δ ut +Δ t を利用して 数値積分法で u&& t+δ t, u& t+δ t, ut+δt を計算します 変位を利用して非線形ヒンジの変形 D と復元力 P を求めます Ⅱ-9-6

206 9. 非線形時刻歴解析 4. 非線形部材の降伏状態判定のため履歴ルーチンに入ります ただし 履歴ルーチンに入る前に 弾塑性ヒンジの変形と部材力は初期断面力を考慮して次のように修正します * D = D + D ini * P = P + P ini * * 5. 履歴ルーチンで変形 D から剛性と復元力 P を計算します 6. 弾塑性ヒンジの解析結果を出力します 7. 動的つり合い方程式を構成するために変形と復元力を次のように修正します * D = D D ini * P = P P ini 8. 動的つり合い方程式を構成して 2 に戻って最後の時間増分まで解析を繰り返します Ⅱ-9-7

207 Part Ⅱ 0 P ini (=P ini ) D ini (a) 初期断面力が弾性範囲の場合 0 P ini P ini D ini (b) 初期断面力が弾性限界を超えた場合 図 入力された初期断面力の処理 Ⅱ-9-8

208 9. 非線形時刻歴解析 非線形時時刻歴解析での初期剛性 プログラムの非線形時刻歴解析で弾塑性部材の初期剛性は 非線形特性 > プロパティ > 初期剛性 から次のように設定できます 弾性剛性 : 弾性剛性を初期剛性で使用します ただし 集中型ヒンジの曲げ成分は 6EI/L 3EI/L 2EI/L の中から選択します ユーザー : 使用者が非線形部材の初期剛性を直接入力します スケルトン曲線から求める : 入力した降伏強度と降伏変形から初期剛性を計算します 弾性剛性 と ユーザー の場合 (+) と (-) 側で同じ初期剛性を持ちます スケルトン曲線から求める を選択した場合 (+) と (-) 側の降伏変形をそれぞれ入力することができます この場合 (+) と (-) 側の降伏強度と降伏変形との傾きから初期剛性を求めて解析には大きい値を適用します ただし 原点志向型 非線形弾性型 /Bilinear 非線形弾性型/Trilinear 非線形弾性型 /Tetralinear の履歴は非対称ですので入力した (+) と (-) 側の初期剛性をそのまま解析に反映します Ⅱ-9-9

209 Part Ⅱ Newton-Raphson 法 非線形時刻歴解析の各次官増分では非線形要素の剛性変化と部材力変化によって不平衡力が発 生します 変位増分を求める過程で部財力と外力間の不平衡力は次のように処理されます 1. 収束計算を遂行する場合 Newton- Raphson 法を用いて不平衡力が解消されるまで反復解析を遂行します 2. 収束計算を遂行しない場合不平衡力を次の時間増分の外力で処理します 反復計算による不平衡力の解消方法は図 に示したように Full Newton-Rapshon 法を利用します 反復解析で収束を判定する基準 Norm は 変位 荷重及びエネルギーの 3 つがあり この中で 1 つ又は複数の Norm を選択して収束判定に反映することができます 各 Norm の定義は次のようになります p p p δu ε ε ε T T T δun δun eff, n eff, n eff n D =, F =, T T E = T Δun Δun peff,1 peff,1 peff,1 δu1 (9.1.16) ここで ε D : 変位 Norm ε F : 荷重 Norm ε E : エネルギー Norm T p eff : n 番目反復計算段階での有効荷重ベクトル δ u n : n 番目反復計算段階での変位増分ベクトル Δ u n : n 番目反復計算によって累積された変位増分ベクトル Newton-Raphson 法による収束計算時に非線形性が非常に強い場合 使用者が入力した反復回数に到達しても収束しない場合が発生します この場合は時間増分 Δt を再設定して解析しなければなりませんが プログラムでは反復奇跡時に最大反復回数でも収束できない場合 該当時間増分の初期状態に戻って自動で時間増分 Δt を細分化して再度解析を遂行します Ⅱ-9-10

210 9. 非線形時刻歴解析 eff R t+δt eff R Eff (2) Kt+Δ t t+ Δt (2) r t+δt (1) r t+δt Eff (1) Kt+Δ t Δ eff R t+δt eff Rt t Eff (0) Kt+Δ t u (0) (1) (2) (3) u t u t+δ t u t+δ t u t+δt u t+δt Δ eff R t+δt r t+δt 図 Newton-Raphson 法 Ⅱ-9-11

211 Part Ⅱ 9.2 非線形要素 非線形梁要素 プログラムで提供している非線形梁要素は弾塑性ヒンジが指定されている梁要素です 非線形梁要 素は軟性法で定式化されて 荷重が載荷される間 微小変形 平面保持の仮定を前提とする Euler Bernoulli 梁理論をに基づきます ねじり成分は 軸力 モーメント成分と連動しないと仮定します 非線形梁要素は幾何学的には線形で定式化されます ただし 初期断面力 ( 荷重 > 初期断面力 > 微小変形 > 初期断面力 ) から初期断面力を入力し 初期軸力制御データの初期軸力による幾何剛性を反映 を選択すると 入力した初期断面力による幾何剛性を要素剛性に追加する方法で考慮できます ただし 解析中に幾何剛性は更新されません 構造部材の非線形挙動の把握で変位軟性能力を評価するためには 部材の降伏変形を超える変形領域に対する解析が必須です しかし 既存の剛性度法は要素を形状関数から定式化するため 非線形解析時に実際の変形と定式化で仮定された形状関数の間で違いが生じる場合があります 軟性法ではモデルを断面形状だけでなく 断面力にも形状関数を適用して定式化するので 軟性法での部材の断面力分布は実際と一致し より正確な解析が可能です 軟性法が断面力に対して線形の形状関数を適用することは 放物線のタイプの剛性度の変化を仮定するためです これは剛性度法で 3 次の形状関数を使うことが線形の曲率分布を仮定することと同じで より少ない断面でも剛性度法のような精度の結果を出すことができます 一般的に軟性法を使うと 少ない要素でも正確な結果を得ることができ 解析速度も速くなる長所があると知られています プログラムの非線形梁要素は部材の弾塑性領域の分布可否 および解析方法によって 集中型ヒンジモデルと分布型ヒンジモデルに区分します Inelastic Hinge M M M M Rigid Zone Elastic Beam Rigid Zone Rigid Zone Integration Point Rigid Zone (a) 集中型 (b) 分散型 図 弾塑性ヒンジ Ⅱ-9-12

212 9. 非線形時刻歴解析 集中型ヒンジモデルは地震荷重が作用する場合 梁要素の逆対称モーメントによって部材端部に発生する塑性ヒンジを効果的にモデリングした方法です したがって 弾塑性ヒンジは 曲げ せん断成分は要素の両端に 軸成分のヒンジは要素中央に位置することになり 集中型ヒンジモデルの曲げ成分の履歴は曲げモーメント- 回転角の関係で表されます 分布型ヒンジモデルは部材に複数の弾塑性ヒンジを割り当て 各ヒンジの位置で弾塑性判定を行い ヒンジの剛性を更新した後で 数値積分で要素剛性を構成します 分布型ヒンジモデルの曲げ成分の履歴は曲げモーメント- 曲率の関係で表される 集中型ヒンジは分布型ヒンジに比べて計算量が少ない長所がありますが 図 に示すように断面力の分布を仮定するので この仮定と大きく異なる場合は正確な結果が得られない場合があります また 集中型ヒンジは 弾塑性ヒンジが部材両端にあるので 塑性変形領域は無視されます 一方 分布型ヒンジは弾塑性ヒンジ数に比例して計算時間が長くなる短所がありますが 断面力分布をより正確に反映することができます そして 任意の断面で発生する非線形挙動が把握できますので 集中型ヒンジに比べてより正確な解析ができます プログラムでは 1 つの梁要素に属するヒンジは同じ属性を持つように制限しています したがって 橋梁の上部構造のようにテーパー断面を持つ部材は 両端の剛性を平均して等断面梁要素として処理しています したがって 断面の変化が大きいテーパー断面の場合は 等断面に置換しても結果に大きい影響がないように要素を分割してモデリングしたほうが良いです 集中型ヒンジモデル集中型ヒンジは塑性変形が可能な長さがない並進または回転非線形バネでモデリングされて 非線形特性 > 材端バネ付きビーム要素 で定義します 梁要素で集中型ヒンジを除いた部分は弾性梁要素でモデリングします 非線形バネは軸成分に対して部材中央 曲げとせん断成分に対しては部材の両端部に位置します ヒンジを定義する非線形バネは軸変形の場合は力 - 変位関係で 曲げ変形の場合はモーメント- 回転角関係で定義します 集中型ヒンジが与えられた梁要素の剛性マトリックスは軟性マトリックスの逆行列で計算されて 全体梁要素の軟性マトリックスは非線形バネの軟性マトリックスと弾性梁の軟性マトリックスを足して構成します 非線形バネの軟性マトリックスは使用者が定義した集中型ヒンジの接線軟性マトリックスと初期軟性マトリックスとの差で定義されて 降伏の前は 0 で 降伏し始めると軟性が発生します 非線形バネの接線軟性マトリックスは次に説明する一軸 または多軸ヒンジ履歴モデルによって定義されます Ⅱ-9-13

213 Part Ⅱ 図 集中型ヒンジモデル FS = FH FH0 F = F +Σ F (9.2.1) B K = F 1 S ここで F H : 弾塑性ヒンジの軟性マトリックス F H0 : 非線形バネの初期軟性マトリックス F S : 非線形バネの軟性マトリックス F B : 弾性梁の軟性マトリックス F : 非線形梁の要素軟性マトリックス K : 非線形梁の要素剛性マトリックス M M M θ e θ p θ e θ p F S -1 F S0-1 F H -1 Flexibility & Inelsastic Deformation of Inelastic Spring based on Hysteresis Model θ θ Initial Flexibility & Elastic Deformation of Inelastic Spring Flexibility & Deformation of Inelastic Hinge θ 図 集中型弾塑性ヒンジの軟性 Ⅱ-9-14

214 9. 非線形時刻歴解析 曲げ変形によるヒンジのモーメント- 回転角関係は端部の曲げモーメントだけではなくて 部材の中央部の曲げモーメント分布にも影響を受けます したがって 曲げ変形ヒンジのモーメント- 回転角関係を決めるためには曲げモーメントの分布を仮定する必要があります 仮定したモーメント分布とそれに対応する初期剛性は以下のようになります Deflection Shape Moment Distribution Initial Stiffness M θ M M 6EI L M θ M 3EI L M θ M M 2EI L 図 曲げ変形に対する弾塑性ヒンジの初期剛性 ( 全体長さ =L 断面曲げ剛性 =EI) 分布型ヒンジモデル分布型ヒンジは部材の要素の軟性マトリックス計算時に必要な材軸方向の積分点における断面の軟性度から定義されます 分布型ヒンジが与えられた梁の軟性マトリックスは次のように定義されて Gauss-Lobbatto 積分から計算されます 要素剛性マトリックスは軟性マトリックスの逆行列で計算します 部材軸方向の積分点での部材断面の軟性度は一軸または多軸ヒンジの履歴モデルの状態判定から決定されます 分布型ヒンジモデルの各ヒンジはファイバーモデルでモデリング可能です プログラムでは 非線形特性 >ビーム要素 で設定します 非線形ヒンジは 軸成分の場合は力 - 変位関係で 曲げ成分の場合はモーメント- 曲率関係で定義します L F = T b ( x ) f ( x ) b ( x ) dx 0 K = 1 F (9.2.2) ここで f(x) : x 位置での断面の軟性マトリックス b(x) : x 位置での断面力の分布関数マトリックス F : 要素軟性マトリックス Ⅱ-9-15

215 Part Ⅱ K : 要素剛性マトリックス L : 部材長さ x : 断面の位置 φ 図 分布型ヒンジモデル 梁 - 柱部材の非線形挙動は主に部材端部に集中される場合が多いです したがって 既存の Gauss- Legendre 積分法では部材端を積分点で取ることができないので プログラムでは要素端部を積分点で 使用できる Gauss-Lobatto 積分法を使って分布型ヒンジ要素の部材軟性マトリックスを求めます 積分点数は要素内部の弾塑性ヒンジ数を意味し 1 個から最大 20 個まで設定可能です 積分点の位置は図 に示したように積分点の数によって決まり 両端部になるほど積分点の間隔が狭くなります ただし Gauss-Lobatto 法は要素端部も積分点で使用できるため 積分点が 2 つの場合は処理できないので 積分点が 2 つの場合は Classical Gauss Integration を使用して軟性マトリックスを構成します また 積分点数と結果の精度は必ず比例することではないし 積分点数が多くなるとヒンジ状態判定に必要な計算量が増える短所があります 積分点数が 5 つ以上の場合は結果の差はほぼないと知られています したがって 要素長さと要素分割数による影響はありますが 積分点数は 5 個以下が適切です Ⅱ-9-16

216 9. 非線形時刻歴解析 (a) 積分点 =1 (b) 積分点 = (c) 積分点 =3 (d) 積分点 = (e) 積分点 =5 (f) 積分点 =6 図 Gauss-Lobatto Integration での積分点位置 Ⅱ-9-17

217 Part Ⅱ 非線形汎用リンク要素 汎用リンク要素は 要素座標系の x, y, z の 3 方向の変位と回転を表現する 6 このバネで 2 節点を連結する要素です プログラムの汎用リンク要素の中で要素タイプのバネだけ弾塑性ヒンジを適用することができます 汎用リンク要素は単純に各成分毎に弾性剛性だけ持っていて それに非線形特性を与えることで非線形要素になり 履歴モデルによる非線形解析を遂行します 非線形汎用リンク要素は構造物の特定部分 あるいは地盤の塑性変形が1つのバネに集中される場合に使用して 非線形特性 >バネ で定義します 汎用リンク要素は一般構造部材と異なって部材の材料や断面特性を定義することができないので 要素剛性を自動算定することができません したがって 使用者が成分毎に剛性を定義しなければならないし 入力した剛性は非線形解析時の初期剛性で使用します k θ x k θ y k θ z 図 汎用リンク要素のバネ剛性 Ⅱ-9-18

218 9. 非線形時刻歴解析 非線形トラス要素 非線形トラス要素は軸方向剛性だけを持つ要素で 非線形特性 > トラス で定義します 非線形トラ ス要素の非線形性は軸方向の成分だけ定義することができます トラスタイプの弾塑性ヒンジは一軸ヒ ンジ履歴モデルで状態判定して剛性を更新し 要素剛性を再構成します 非線形トラス要素は幾何学的に線形に定式化されます ただし 非線形梁要素と同様に 初期断面力 ( 荷重 > 初期断面力 > 微小変形 > 初期断面力 ) から初期断面力を入力して 初期軸力制御データ > 初期軸力による幾何剛性を反映 を選択すると 入力した初期断面力による幾何剛性を要素剛性に追加することができます ただし 解析中に幾何剛性は更新されません i n, i u i i k x j n j, n, u uj j L 図 非線形トラス要素と軸方向剛性 Ⅱ-9-19

219 Part Ⅱ 9.3 非線形履歴モデルの概要 構造物が地震荷重のような不規則な反復荷重を受けて ひび割れ 降伏などが発生したら 現在までの変位履歴が後の復元力 - 変位関係に影響を与えるので静的荷重を受ける時と異なって非常に複雑な挙動を現わします 部材の一軸方向の荷重に対する力と変位関係をスケルトン曲線と言います 履歴モデルはこのスケルトン曲線に基づき 正 (+) 負(-) の反復荷重が作用する際に 除荷と再載荷の場合の力と変形関係の規則化したもので 非線形解析時は部材の復元力特性を履歴モデルで定義することが一般的です 履歴モデルは解析用最小モデル単位である部材断面の挙動特長を構成材料の応力 - 変形関係 断面の曲げモーメント- 曲率関係 部材端部の曲げモーメント- 回転角関係などの簡単な力と変形の関係で理想化したもので 全体荷重履歴に対して荷重と変形関係で表現できなければならないし 実験時に観測される共通の特性も反映できるようにしなければなりません 非線形解析時に使用する履歴モデルと非線形解析条件の設定によって解析結果が大きく変わるの で 解析結果を適切に得るためにはモデリング時に十分な検討を通じて使用材料と部材の復元力特性 を充実に反映できる履歴モデルを選択する必要があります 表 でプログラムから提供している履歴モデルを用途毎に分類しました ここで 軸 - 曲げの相互 作用に対する P-M P-M-M タイプについては P-M 及び P-M-M 相関作用で説明します 弾塑性ヒンジ属性 弾塑性ヒンジ属性は 集中型 分布型 バネ型 トラス型で区分します 集中型と分布型は梁要素 バネ型は汎用リンク要素 トラス型はトラス要素に適用できます 弾塑性ヒンジの属性は 各成分毎に定義される非線形挙動特性の集合で 梁要素はねじりを除いた 5 成分 汎用リンク要素は 6 成分 トラス要素は軸成分のみ定義できます ここで 弾塑性ヒンジの非線形特性は履歴モデルで定義して 各成分の特性は一軸ヒンジの履歴モデルや軸 - 曲げの相互作用を考慮した多軸ヒンジの履歴モデルで定義することができます Ⅱ-9-20

220 9. 非線形時刻歴解析 表 履歴モデル分類 分類 履歴モデル 適用要素 軸 - 曲げ相互作用 主な用途 一般型 ノーマルトリリニア型 B, T, S P-M, P-M-M 鋼材 原点志向型 / Trilinear B, T, S P-M 橋梁上部構造 最大点志向型 / Trilinear B, T, S P-M 橋梁上部構造 ノーマルバイリニア型 B, T, S P-M 鋼材 簡略モデル 剛性 Clough 型 / Bilinear B, T, S P-M 鉄筋コンクリート部材 低減型 深田型 / Trilinear B, T, S P-M 鉄筋コンクリート部材 オリジナル武田型 / Triliear B, T, S P-M 鉄筋コンクリート部材 オリジナル武田型 / Tetralinear B, T, S P-M 鉄筋コンクリート部材 修正武田型 / Triliear B, T, S P-M 鉄筋コンクリート部材 修正武田型 / Tetralinear B, T, S P-M 鉄筋コンクリート部材 非線形 非線形弾性型 / Bilinear B, T, S P-M 橋梁上部構造 弾性型 非線形弾性型 / Trilinear B, T, S P-M 橋梁上部構造 非線形弾性型 / Tetralinear B, T, S P-M 橋梁上部構造 スリップ スリップ Bilinear B, T, S P-M 鋼材 ゴム支持 型 スリップ Bilinear / 引張のみ B, T, S P-M 鋼材 ゴム支持 スリップ Bilinear / 圧縮のみ B, T, S P-M 鋼材 ゴム支持 スリップ Trilinear B, T, S P-M 鋼材 ゴム支持 t スリップ Trilinear / 引張のみ B, T, S P-M 鋼材 ゴム支持 スリップ Trilinear / 圧縮のみ B, T, S P-M 鋼材 ゴム支持 *B : 梁 T : トラス S : バネ Ⅱ-9-21

221 Part Ⅱ 非線形梁要素の降伏強度 弾塑性ヒンジで設定する履歴モデルは降伏強度と降伏後の剛性低減率で定義します 要素の降伏強度はユーザーが直接入力するか プログラムの降伏強度自動計算機能を通じて設定可能です プログラムの自動計算機能による 曲げによる梁要素の降伏は図 のように定義されます 鉄骨断面の場合 1 次降伏は部材端部の曲げ応力が降伏応力に達したときと判断し 2 次降伏は全断面の曲げ応力が降伏応力に達したときと判断します RC 部材の場合 1 次降伏は部材端部の曲げ応力がコンクリートのひび割れ応力に達したときと判断し 2 次降伏はコンクリートの圧縮縁のひずみが最大ひずみに達したときと判断します その際に 鉄筋の応力は降伏応力より小さいか同じと仮定します SRC 部材でコンクリート充填鋼管の場合は鉄骨断面 コンクリート被服型の場合は RC 断面の計算基準を適用します 軸力と曲げモーメントの相関作用を考慮する P-M P-M-M タイプの場合は 軸力による中立軸の移 動を考慮して軸力 - モーメントの相関曲線 ( 降伏曲面 ) を作成する必要があり この場合も自動計算がで きます Ⅱ-9-22

222 9. 非線形時刻歴解析 P (+) M z (+) 1st Yielding Strain εsc Fy / Es Stress Fsc = Fy + + y M y (+) Compression Tension D c D t - - N.A. ε st F y / E s Fst = Fy z 2nd Yielding Strain Stress ε sc F y / E s F sc = F y Compression Tension Dc D t N.A. ε st F y / E s F st = F y Dc : Center of Steel Compressive Force D t : Center of Steel Tensi Force le (a) 鉄骨 P (+) M z (+) 1st Yielding (Cracking) z y M y (+) Z M = k f Z N A cr ck Mcr : Cracking Moment k : Coefficient for Cracking Moment (ACI=7.5 in lb-in unit, AIJ=1.8 in kgf-cm unit) f ck : Specified Compressive Strength of Concrete Z : Elastic Section Modulus 2nd Yielding Strain Stress ε cu f ck α1 fck Compression Tension D s2 Ds3 D c D s1 Ds4 εs4 ε s3 ε s1 c s2 ε f s3 fs4 fs1 f s2 β1 c fs3 f s4 fs1 f s2 N.A. fsi f y fsi f y Dc : Center of Concrete Compressive Force (b) RC 図 梁要素の降伏強度の算定基準 Ⅱ-9-23

223 Part Ⅱ 9.4 一軸 - ヒンジ履歴モデル 一軸ヒンジモデルは 3 つの並進と 3 つの回転成分が互い独立的に挙動するヒンジです プログラムで一軸ヒンジを対象で提供される履歴モデルはスケルトン曲線に基づき 表 のすべての履歴モデルが一軸ヒンジで定義できます このモデルは 非対称断面あるいは材料特性に対応できるように 1 次 2 次の降伏強度と 正 (+) 負(-) 非対称で指定することができます ただし 移動硬化型の場合は剛性低減率は非対称性の定義ができません 以下の履歴モデルの説明において 応答点は履歴モデルの経路上に位置した荷重 - 変位の座標を意味します 載荷は荷重の絶対値が増加することを 除荷は荷重の絶対値が減少することを 再載荷は載荷途中に荷重の符号が変わって絶対値が増加することを意味します 除荷点は載荷から除荷に変わる応答点を意味します 鉄筋コンクリート部材の場合 コンクリートのひび割れ 鉄筋の降伏によって剛性低減が発生します また 反復荷重が作用する場合 降伏後の除荷時も剛性が低下されて 荷重の方向が変わると過去の最大変位点を志向する特性があります 鉄筋コンクリート部材の復元力特性をモデル化した履歴モデルは多く提案されていますが どのモデルも剛性低下と最大点志向は必須で考慮しています 鉄筋コンクリートの代表的な履歴モデルとしては武田モデルがあり Clough 型 深田型 /Trilinear なども良く使用されます 鋼材はある荷重方向で塑性変形が発生した後で逆方向の荷重が作用すると 塑性変形が発生してない鋼材で同じ方向の荷重を作用した場合より小さい応力で塑性化すると知られています これを Bauschinger 効果と言います また ひずみが大きくなると応力が増加する性質 ひずみ硬化が発生します このような誠実を持つ鋼材の復元力特性は移動硬化型のノーマルバイリニア履歴モデルで表現することが一般的で ノーマルトリリニア履歴モデルを適用する場合もあります コンクリートで充填された鋼材橋脚の非線形特性は 武田型 あるいは降伏点で剛性が変化する移動硬化型のノーマルバイリニアを使用します ノーマルバイリニア型は鉄筋コンクリート部材と異なって剛性低下が発生しない履歴曲線を描くように定義されます コンクリートで充填されない鋼材橋脚はノーマルバイリニア型を使用するのが一般的です 一方 橋脚は重力荷重による圧縮力により圧縮側で降伏した後に引張側で降伏が生じるので 圧縮側と引張側の降伏に達する荷重が異なることを考慮してノーマルトリリニアを使用する場合もあります Ⅱ-9-24

224 9. 非線形時刻歴解析 ノーマルバイリニア型 (1) 履歴の概要初期載荷時の応答点はバイリニアのスケルトン曲線上で移動します 除荷剛性は弾性剛性と同じで 降伏後の剛性低減率は正 (+) と負 (-) の非対称定義が可能です 使用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素となります 図 ノーマルバイリニアの履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義される P 1 ( + ), ( ) P1 : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 K 0 : 初期剛性 ( ) K 2 + : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( + ) ( + ) ただし K 2 = α1 K0, ( ) 1 ( ) 1 (-) (-) K 2 = α1 K0 α +, α : (+) (-) 側第 1 降伏後の剛性低下率 Ⅱ-9-25

225 Part Ⅱ (3) ノーマルバイリニア型の履歴規則 Dmax < D1 の場合は線形弾性で 原点を通る弾性勾配 K0 の直線上で移動します 変形 D がはじめて D 1 ( ± ) を超える場合 また これまでの最大変形点を超えた場合は 第 2 次勾 ( ) 配 K 2 + (-), K 2 の直線上を移動します D1( + ) < D, D < D1( ) の状態で除荷される場合は Masing の法則に従って弾性勾配 K0 で除荷されて K 2 (-) ( ), K 2 + の直線上で移動します 以降 ~ の規則で移動します Ⅱ-9-26

226 9. 非線形時刻歴解析 ノーマルトリリニア型 ( 移動硬化 ) (1) 履歴の概要初期載荷時の応答点はトリリニアのスケルトン曲線上で移動します 除荷剛性は弾性剛性と同じで 荷重が増加しながら強度も増加する傾向がありますが これは金属材料のバウシンガー効果をモデリングする際に使用するものです 従って コンクリートの場合はエネルギー消散量が課題評価されるので注意する必要があります 降伏後の剛性低減率は (+) (-) 対称のみ定義できます 使用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素となります 図 ノーマルトリリニア型 ( 移動硬化 ) の履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義されます P 1 ( + ), P1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 P 2 ( + ), P2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏強度 D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 D 2 ( + ), D2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏変形 K 0 : 初期剛性 Ⅱ-9-27

227 Part Ⅱ ( ) 2 (-) 2 K +, K : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( ) 3 (-) 3 ( + ) ( + ) 但し K 2 = α1 K0, K +, K : (+) (-) 側の第 3 剛性 ( ) 1 ( ) 1 ( + ) ( + ) 但し K3 = α 2 K0, K (-) (-) 2 = α1 K K (-) ( ) 3 = α 2 α +, α : (+) (-) 側の第 1 降伏後の剛性低下率 ( ) 2 ( ) 2 α +, α : (+) (-) 側の第 2 降伏後の剛性低下率 0 K 0 (3) ノーマルトリリニア型の履歴ルール Dmax < D2 の場合 通常のバイリニアとして挙動します Dmax > D2 の場合は トリリニアとして移動します 載荷時は Masing の法則によって弾性剛性の直線上で移動します Ⅱ-9-28

228 9. 非線形時刻歴解析 原点指向型 (1) 履歴の概要初期載荷時の応答点はトリリニアのスケルトン曲線上で移動します 第 1 次降伏又は第 2 次降伏後に除荷される場合 原点を目指す直線上を移動します 除荷過程で再載荷される場合は 除荷時の同じ勾配の直線上を移動し スケルトン曲線と接したらスケルトン曲線上で移動します 入力によって対称及び非対称が定義できます 使用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素となります また 原点指向型は (+) (-) 側の初期剛性を非対称で考慮することができます 図 原点指向型の履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義されます P 1 ( + ), P1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 P 2 ( + ), P2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏強度 D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 D 2 ( + ), D2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏変形 Ⅱ-9-29

229 Part Ⅱ K 0 : 初期剛性 ( ) 2 (-) 2 K +, K : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( ) 3 (-) 3 ( + ) ( + ) 但し K 2 = α1 K0, K +, K : (+) (-) 側の第 3 剛性 ( ) 1 ( + ) ( + ) 但し K3 = α 2 K0, K (-) (-) 2 = α1 K K (-) ( ) 3 = α 2 α +, α : (+) (-) 側の第 1 降伏後の剛性低下率 ( ) 2 ( ) 1 ( ) 2 α +, α : (+) (-) 側の第 2 降伏後の剛性低下率 0 K 0 Ⅱ-9-30

230 9. 非線形時刻歴解析 最大点指向型 (1) 履歴の概要初期載荷時の応答点はトリリニアのスケルトン曲線上で移動します 第 1 次降伏又は第 2 次降伏後に除荷される場合 反対側の最大点を目指す直線上を移動します 反対側が 1 次降伏していない場合は 1 次降伏点が最大変形点になります 除荷過程で再載荷された場合は除荷と同じ勾配の直線上で移動し スケルトン曲線と接するとスケルトン曲線上を移動します 入力によって対称及びは非対称が定義できます 使用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素となります 非線形特性 >ユーザー入力 を選択して 成分のプロパティ> 降伏強度 - 降伏変位 を選択して 初期剛性を正 (+) 負(-) 側の非対称で入力して考慮できます P P2 (+) K2 (+) K3 (+) P1 (+) K 0 D2 (-) D1 (-) D1 (+) D2 (+) D P1 (-) K3 (-) K2 (-) P2 (-) 図 最大点指向型の履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義されます P 1 ( + ), P1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 P 2 ( + ), P2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏強度 Ⅱ-9-31

231 Part Ⅱ D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 D 2 ( + ), D2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏変形 K 0 ( ) 2 (-) 2 : 初期剛性 K +, K : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( ) 3 (-) 3 ( + ) ( + ) 但し K 2 = α1 K0, K +, K : (+) (-) 側の第 3 剛性 ( ) 1 ( + ) ( + ) 但し K3 = α 2 K0, K (-) (-) 2 = α1 K K (-) ( ) 3 = α 2 α +, α : (+) (-) 側の第 1 降伏後の剛性低下率 ( ) 2 ( ) 1 ( ) 2 α +, α : (+) (-) 側の第 2 降伏後の剛性低下率 0 K 0 Ⅱ-9-32

232 9. 非線形時刻歴解析 CLOUGH 型 (1) 履歴の概要初期載荷時の応答点はバイリニアのスケルトン曲線上で移動します 降伏後の変形の進展により除荷剛性が少しずつ減少する剛性低減バイリニア型である コンクリートは乾燥収縮などのよってひび割れが発生しやすいので ひび割れ前の状態は無視して全体断面にひび割れが発生したとして 引張鉄筋の曲げ降伏による剛性変化のみを考慮するようにモデリングされた履歴です 入力によって 対称および非対称の定義ができます 使用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素となります ( Dmax, Pmax ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( Dmax, Pmax ) 図 CLOUGH 型の履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義されます P 1 ( + ), P1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 K 0 : 初期剛性 ( ) K 2 + (-), K 2 : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( + ) ( + ) (-) (-) 但し K 2 = α1 K0, K 2 = α1 K0 ( ) 1 ( ) 1 α +, α : (+) (-) 側の第 1 降伏後の剛性低下率 ( ) (-) Kr +, Kr : (+) (-) 側の除荷時の剛性 Ⅱ-9-33

233 Part Ⅱ β ( + ) ( + ) D1 Kr = K K, 0 ( + ) 0 Dmax β (-) ( ) D1 Kr = K K 0 (-) 0 Dmax ここで D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の降伏変形 ( ) D + max, (-) D max : (+) (-) 側の最大変形 ( 降伏が発生しない領域では降伏変位で適用 ) β : 除荷剛性算定用定数 (3) CLOUGH 型の履歴規則 Dmax < D1 の場合は線形弾性で 原点を通る弾性勾配 K の直線上で移動します 0 D がはじめて D 1 ( ± ) を超えた場合 又は 現在までの最大変形点を超えた場合は 第 2 勾配 ( ) K 2 + (-), K 2 の直線上を移動します D1( + ) < D, ( ) D < D1( ) の状態で除荷される場合は 除荷剛性 Kr + (-), Kr の勾配で移動します 除荷過程で荷重の符号が変わったら反対側の最大変形点を目指して移動し 反対側が降伏し ない場合は降伏点が最大変形点になります Ⅱ-9-34

234 9. 非線形時刻歴解析 深田型 (1) 履歴の概要スケルトン曲線はトリリニアで 1 次降伏した後 2 次降伏する前はバイリニアで挙動し 2 次降伏後は変形の進展により除荷剛性が少しずつ減少する剛性低減トリリニア型で挙動します 入力によって対称又は非対称で定義できます 使用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素となります 図 深田型の履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義されます 1 P 1 ( + ), P ( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 P 2 ( + ), P2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏強度 D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 D 2 ( + ), D2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏変形 K 0 : 初期剛性 ( ) K 2 +, (-) K 2 : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( + ) ( + ) 但し K 2 = α1 K0, (-) (-) K 2 = α1 K0 Ⅱ-9-35

235 Part Ⅱ ( ) K 3 +, ( ) 1 (-) K 3 : (+) (-) 側の第 3 剛性 ( ) 1 ( + ) ( + ) 但し K3 = α 2 K0, (-) ( ) K3 = α 2 α +, α : (+) (-) 側の第 1 降伏後の剛性低下率 ( ) 2 ( ) 2 α +, α : (+) (-) 側の第 2 降伏後の剛性低下率 K0 (3) 深田型の履歴規則 Dmax < D1 の場合は線形弾性で 原点を通る弾性勾配 K0 の直線上で移動します D がはじめて D 1 ( ± ) を超える場合 又は 現在までの最大変形点を越える場合 第 2 勾配 ( ) K 2 +, D1( ) (-) 2 の直線上を移動します D < D1 の状態で除荷される場合は弾性勾配で除荷されて 2 次降伏後にはバイ K + < D ( ) リニアで挙動します 2 次降伏後の除荷剛性は次の式で計算されます ( + ) (-) Pmax Pmax 1 Kr1 = K ( ) (-) 0 = α K + 0, D K1 max D max P2( + ) P2(-) K1 = D2( + ) D2(-) Ⅱ-9-36

236 9. 非線形時刻歴解析 オリジナル武田型 ( トリリニア ) (1) 履歴の概要オリジナル武田型は鉄筋コンクリート部材の実験から得た復元力特性を詳細にモデリングしたもので剛性低減トリリニアです 除荷剛性は除荷点のスケルトン曲線での位置及び反対側の領域での 1 次降伏可否によって決定されます 入力によって対称及び非対称が定義できます 使用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素となります 図 オリジナル武田型 / トリリニアの履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義されます P 1 ( + ), P1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 P 2 ( + ), P2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏強度 D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 D 2 ( + ), D2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏変形 K 0 ( ) K 2 +, ( ) K 3 +, : 初期剛性 (-) K 2 : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( + ) ( + ) 但し K 2 = α1 K0, (-) K 3 : (+) (-) 側の第 3 剛性 ( + ) ( + ) 但し K3 = α 2 K0, (-) (-) K 2 = α1 K0 (-) ( ) K3 = α 2 K0 Ⅱ-9-37

237 Part Ⅱ β α : 除荷剛性パラメータ : 内部ループ反復時の剛性低減率 (3) オリジナル武田型の履歴規則 Dmax < D1 の場合は線形弾性で 原点を通る弾性勾配 K0 の直線上で移動します (Rule: 0) ( ) i) D がはじめて D 1 ( ± ) を超えた場合 第 2 勾配 K 2 + (-), K 2 直線上を移動します (Rule: 1) 最初降伏時 反対側の第 1 降伏点が反対側の最大変形点になります ii) この直線上で 除荷される場合は 反対側の最大変形点を目指して移動します (Rule: 2) iii) 反対側の最大変形点に至る前に再載荷された場合は同じ除荷直線上で動き (Rule: 3) スケ ( ) ルトン曲線に至ると K 2 + (-), K 2 勾配でスケルトン曲線上を移動します (Rule: 4) 図 武田型履歴 : 1 次降伏後の除荷規則 ( ) i) D がはじめて D 2 ( ± ) を超えた場合 第 3 勾配 K 3 + (-), K 3 直線上を進行します (Rule: 13) ( ) ii) この直線上で 除荷を受けた場合は 除荷点から勾配 Kr + ( ), Kr で移動します (Rule: ( ) 15) 反対側が第 1 降伏をする前の場合 勾配 Kr + の範囲は P1 を超えると第 2 降伏点を向けて移動します (Rule: 17) Kr ( + ) ( + ) ( + ) Dmax Kb * ( + ) -β =, D2 Kr ( ) ( ) ( ) Dmax = Kb * ( ) D2 -β ここで Ⅱ-9-38

238 9. 非線形時刻歴解析 ( + ) P2( + ) P1(-) Kb = D2( + ) D1(-), ( ) P2(-) P1( + ) Kb = D2(-) D1( + ) β : 除荷剛性パラメータ ( β = 0.4 デフォルト) 図 武田型履歴 : 2 次降伏後の除荷規則 復元力 0 点を超えると 反対側の最大変形点を向けて移動して (Rule: 18) 反対側の最大変形 点を向ける直線上で除荷される場合 内部ループに入ります (Rule: 20) 内部ループでは復元 力 0 点までは K ( ) un, を移動します (Rule: 21) ( ) K + un の勾配で除荷されて 復元力 0 点を超えると反対側の直線除荷点 ( + ) K un ( ) K un 図 武田型履歴 : 内部ループ規則 Ⅱ-9-39

239 Part Ⅱ オリジナル武田型 ( テトラリニア ) (1) 履歴の概要オリジナル武田型 / テトラリニアは剛性低減テトラリニアで 入力によって対称及び非対称で定義できます 使用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素となります P P3 (+) P2 (+) K4 (+) P1 (+) D3 (-) D1 (-) D1 (+) D2 (-) D2 (+) D3 (+) D P1 (-) K4 (-) P2 (-) P3 (-) 図 オリジナル武田型 / テトラリニアの履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義されます P 1 ( + ), P1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 P 2 ( + ), P2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏強度 P 3 ( + ), P3( ) : (+) (-) 側の第 3 降伏強度 D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 D 2 ( + ), D2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏変形 D 3 ( + ), D3( ) : (+) (-) 側の第 3 降伏変形 K 0 ( ) K 2 +, : 初期剛性 (-) K 2 : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( + ) ( + ) 但し K 2 = α1 K0, (-) (-) K 2 = α1 K0 Ⅱ-9-40

240 9. 非線形時刻歴解析 ( ) K 3 +, ( ) K 4 +, β α (-) K 3 : (+) (-) 側の第 3 剛性 ( + ) ( + ) 但し K3 = α 2 K0, (-) K 4 : (+) (-) 側の第 4 剛性 ( + ) ( + ) 但し K 4 = α3 K0, (+) (-) ( K 4 < 0.0, K 4 < 0.0 ) : 除荷剛性パラメータ : 内部ループ反復時の剛性低減率 (-) ( ) K3 = α 2 K0 (-) ( ) K 4 = α3 K0 (3) オリジナル武田型 / テトラリニアの履歴規則 初期載荷時はテトラリニアスケルトン曲線上で移動します 変形 D が D 3 ( ± ) を超える前の履歴規則は オリジナル武田型トリリニアと同じです ( ) D がはじめて D 3 ( ± ) を超えた後 第 4 勾配 K 4 + (-), K 4 直線上を移動します ( ) 第 4 勾配 K 4 + (-), K 4 で載荷される場合も武田型と同じ載荷勾配で移動します Ⅱ-9-41

241 Part Ⅱ 修正武田型 ( トリリニア ) (1) 履歴の概要修正武田型履歴は剛性低減トリリニアで 入力によって対称又は非対称が定義できます 使用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素となります P P2 (+) P1 (+) D1 (-) D1 (+) D2 (-) D2 (+) D P1 (-) P2 (-) 図 修正武田型 / トリリニアの履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義されます P 1 ( + ), P1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 P 2 ( + ), P2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏強度 D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 D 2 ( + ), D2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏変形 K 0 ( ) K 2 +, ( ) K 3 +, β α : 初期剛性 (-) K 2 : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( + ) ( + ) 但し K 2 = α1 K0, (-) K 3 : (+) (-) 側の第 3 剛性 ( + ) ( + ) 但し K3 = α 2 K0, : 除荷剛性パラメータ : 内部ループ反復時の剛性低減率 (-) (-) K 2 = α1 K0 (-) ( ) K3 = α 2 K0 Ⅱ-9-42

242 9. 非線形時刻歴解析 (3) 修正武田型の履歴規則 Dmax < D1 の場合は線形弾性で 原点を通る弾性勾配 K0 の直線上で移動します (Rule: 0) ( ) i) D がはじめて D 1 ( ± ) を超えた場合 第 2 勾配 K 2 + (-), K 2 直線上を移動します (Rule: 1) はじめて降伏した場合は 反対側の第 1 降伏点が反対側の最大変形点になります ii) この直線上で除荷される場合は反対側の最大変形点を向けて移動します (Rule: 2) iii) 反対側の最大変形点に達する前に除荷される場合は除荷直線上を移動することになり ( ) (Rule: 3) スケルトン曲線に到達すると K 2 + (-), K 2 勾配でスケルトン曲線上を移動します (Rule: 4) ( Dmax, Pmax ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( Dmax, Pmax ) 図 修正武田型 / トリリニア履歴 :1 次降伏後の除荷規則 ( ) i) D がはじめて D 2 ( ± ) を超えた場合 第 3 勾配 K 3 +, ( ) ii) この直線上で 除荷されると除荷勾配 Kr + ( ), (-) K 3 直線上を移動します (Rule:10) Kr で移動します (Rule:11) 反対側が第 2 降伏してない場合は反対側の第 2 降伏点が反対側の最大変形点になります -β ( ± ) ( ± ) Dmax Kr = max K0 *, K ( ± ) b D1 ここで ( + ) ( ) Pmax Pmax Kb = ( + ) ( ) Dmax Dmax β : 除荷剛性パラメータ ( β = 0.4 デフォルト) Ⅱ-9-43

243 Part Ⅱ 復元力 0 点を超えると 反対側の最大変形点を向けて移動して (Rule:14) 反対側の最大変形点を向ける直線上で除荷される場合 内部ループに入ります (Rule:15) 内部ループでは 復元力 0 点までは Kr ( ) ( ), Kr + の勾配で除荷されて 復元力 0 点を超えると反対側の最大点を向けて移動します (Rule:16) P P2 (+) P1 (+) Rule: 10 K3 (+) ( D, Pmax ) ( ) ( ) max Rule: 13 Rule: 12 Rule: 15 Kr (-) Rule: 16 Rule: 14 Kr (+) Rule: 17 Rule: 18 Rule: 11 Kr (+) D Rule: 19 Rule: 20 ( ) ( ) ( Dmax, Pmax ) P2 (-) 図 修正武田型 / トリリニア履歴 :2 次降伏後の除荷規則 Ⅱ-9-44

244 9. 非線形時刻歴解析 修正武田型 ( テトラリニア ) (1) 履歴の概要 修正武田型テトラリニア履歴は剛性低減テトラタイプで 入力によって対称及び非対称が定義できま す 使用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素となります 図 修正武田型 / テトラリニアの履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義されます P 1 ( + ), P1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 P 2 ( + ), P2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏強度 P 3 ( + ), P3( ) : (+) (-) 側の第 3 降伏強度 D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 D 2 ( + ), D2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏変形 D 3 ( + ), D3( ) : (+) (-) 側の第 3 降伏変形 K 0 ( ) 2 (-) 2 : 初期剛性 K +, K : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( + ) ( + ) 但し K 2 = α1 K0, (-) (-) K 2 = α1 K 0 Ⅱ-9-45

245 Part Ⅱ ( ) 3 (-) 3 K +, K : (+) (-) 側の第 3 剛性 ( ) 4 (-) 4 ( + ) ( + ) 但し K3 = α 2 K0, K +, K : (+) (-) 側の第 4 剛性 β α ( + ) ( + ) 但し K 4 = α3 K0, (+) (-) ( K 4 < 0.0, K 4 < 0.0) : 除荷剛性パラメータ : 内部ループ反復時の剛性低減率 (-) ( ) K3 = α 2 K (-) ( ) K 4 = α3 K 0 0 Ⅱ-9-46

246 9. 非線形時刻歴解析 非線形弾性型 ( バイリニア ) (1) 履歴の概要非線形弾性でスケルトン曲線はバイリニアです 載荷と除荷に関係なくループを描かない履歴で バイリニアスケルトン曲線を移動します したがって 履歴による地震エネルギー吸収はできません 入力によって対称あるいは非対称の定義が可能です 使用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素になります 非線形ヒンジプロパティのユーザー入力を選択して からプロパティの入力タイプを 降伏強度 - 降伏変位 を選択して 正 (+) 負(-) 側の 1 次降伏変位を利用して初期剛性を (+),(-) 側の非対称で入力して考慮することができます P K2 (+) P1 (+) K 0 D1 (-) D1 (+) D K 0 P1 (-) K2 (-) 図 非線形弾性 / バイリニア型の履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義されます P 1 ( + ), P1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 K 0 ( ) 2 (-) 2 : 初期剛性 K +, K : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( ) 1 ( ) 1 ( + ) ( + ) 但し K 2 = α1 K0, (-) (-) K 2 = α1 K α +, α : (+) (-) 側の第 1 降伏後の剛性低下率 0 Ⅱ-9-47

247 Part Ⅱ 非線形弾性型 ( トリリニア ) (1) 履歴の概要非線形弾性でスケルトン曲線はトリリニアです 載荷と除荷に関係なくループを描かない履歴で トリリニアスケルトン曲線を移動します したがって 履歴による地震エネルギー吸収はできません 入力によって対称あるいは非対称の定義が可能です 使用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素になります 非線形ヒンジプロパティのユーザー入力を選択して からプロパティの入力タイプを 降伏強度 - 降伏変位 を選択して 正 (+) 負(-) 側の 1 次降伏変位を利用して初期剛性を (+),(-) 側の非対称で入力して考慮することができます 図 非線形弾性型 / トリリニア型の履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義されます P 1 ( + ), P1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 P 2 ( + ), P2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏強度 D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 D 2 ( + ), D2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏変形 K 0 : 初期剛性 Ⅱ-9-48

248 9. 非線形時刻歴解析 ( ) 2 (-) 2 K +, K : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( ) 3 (-) 3 ( + ) ( + ) 但し K 2 = α1 K0, K +, K : (+) (-) 側の第 3 剛性 ( ) 1 ( ) 1 ( + ) ( + ) 但し K3 = α 2 K0, (-) (-) K 2 = α1 K (-) ( ) 0 K3 = α 2 K α +, α : (+) (-) 側の第 1 降伏後の剛性低下率 ( ) 2 ( ) 2 α +, α : (+) (-) 側の第 2 降伏後の剛性低下率 0 Ⅱ-9-49

249 Part Ⅱ 非線形弾性型 ( テトラリニア ) (1) 履歴の概要非線形弾性でスケルトン曲線はテトラリニアです 載荷と除荷に関係なくループを描かない履歴で テトラリニアスケルトン曲線を移動します したがって 履歴による地震エネルギー吸収はできません 入力によって対称あるいは非対称の定義が可能です 使用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素になります 非線形ヒンジプロパティのユーザー入力を選択して からプロパティの入力タイプを 降伏強度 - 降伏変位 を選択して 正 (+) 負(-) 側の 1 次降伏変位を利用して初期剛性を (+),(-) 側の非対称で入力して考慮することができます 図 非線形弾性 / テトラリニア型の履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義されます P 1 ( + ), P1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 P 2 ( + ), P2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏強度 P 3 ( + ), P3( ) : (+) (-) 側の第 3 降伏強度 D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 Ⅱ-9-50

250 9. 非線形時刻歴解析 D 2 ( + ), D2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏変形 D 3 ( + ), D3( ) : (+) (-) 側の第 3 降伏変形 K 0 ( ) 2 (-) 2 : 初期剛性 K +, K : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( ) 3 (-) 3 ( + ) ( + ) 但し K 2 = α1 K0, K +, K : (+) (-) 側の第 3 剛性 ( ) 4 (-) 4 ( + ) ( + ) 但し K3 = α 2 K0, K +, K : (+) (-) 側の第 4 剛性 ( ) 1 ( ) 1 ( + ) ( + ) 但し K 4 = α3 K0, (+) (-) ( K 4 < 0.0, K 4 < 0.0) (-) (-) K 2 = α1 K (-) ( ) 0 K3 = α 2 K (-) ( ) K 4 = α3 K α +, α : (+) (-) 側の第 1 降伏後の剛性低下率 ( ) 2 ( ) 2 α +, α : (+) (-) 側の第 2 降伏後の剛性低下率 ( ) 3 ( ) 3 α +, α : (+) (-) 側の第 3 降伏後の剛性低下率 0 0 (3) 非線形弾性 ( テトラリニア ) 型の履歴規則 載荷と除荷に関係なくループを描かずに テトラリニアスケルトン曲線上を移動します 負勾配に入って復元力が 0 になる点を超えると 変形軸上で移動します また 載荷される場合は以下の図のように移動し 通常の履歴規則に従います 図 非線形弾性 / トリリニア型の履歴規則 Ⅱ-9-51

251 Part Ⅱ スリップ型 ( バイリニア ) (1) 履歴の概要 スケルトン曲線はバイリニアで 降伏後の剛性低減率は正 (+) 負 (-) 非対称定義ができます 使 用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素になります P P1(+) K2 (+) ( ) δ ( ) gapδ + gap K0 D1(-) K0 K0 D1(+) K0 D K2 (-) P1(-) (a) 標準型 P P P1(+) K2 (+) ( ) δ gap D1(-) D K0 K0 ( ) δ + gap K0 K0 D D1(+) K2 (-) P1(-) (b) 引張のみ (c) 圧縮のみ 図 スリップ型 ( バイリニア ) の履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義されます Ⅱ-9-52

252 9. 非線形時刻歴解析 P 1 ( + ), P1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 K 0 ( ) 2 (-) 2 : 初期剛性 K +, K : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( ) 1 ( + ) ( + ) 但し K 2 = α1 K0, (-) (-) K 2 = α1 K α +, α : (+) (-) 側の第 1 降伏後の剛性低下率 ( ) δ + gap, ( ) 1 ( ) δ gap : (+) (-) 側の初期キャップ 0 Ⅱ-9-53

253 Part Ⅱ スリップ型 ( トリリニア ) (1) 履歴の概要スケルトン曲線はトリリニアで 降伏後の剛性低減率は正 (+) 負(-) 非対称定義ができます 使用できる要素は 材端バネ付きビーム要素 ビーム要素 バネ要素 トラス要素になります P P2 (+) K3 (+) P1 (+) K2 (+) ( ) δ gap ( ) gap D2 (-) D1 (-) K 0 K 0 δ + K 0 D1 (+) D2 (+) K 0 D K2 (-) P1 (-) K3 (-) P1 (-) P (a) 標準型 P K3 (+) P2(+) P1(+) K2 (+) ( ) δ + gap ( ) δ gap K0 K0 D D2(-) D1(-) D D1(+) D2(+) K0 K0 K2 (-) P1(-) K3 (-) P1(-) (b) 引張のみ (c) 圧縮のみ 図 スリップ型 ( トリリニア ) の履歴曲線 (2) スケルトン曲線の定義 履歴モデルの非線形特性は以下の値で定義されます Ⅱ-9-54

254 9. 非線形時刻歴解析 P 1 ( + ), P1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏強度 P 2 ( + ), P2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏強度 D 1 ( + ), D1( ) : (+) (-) 側の第 1 降伏変形 D 2 ( + ), D2( ) : (+) (-) 側の第 2 降伏変形 K 0 ( ) 2 (-) 2 : 初期剛性 K +, K : (+) (-) 側の第 2 剛性 ( ) 3 (-) 3 ( + ) ( + ) 但し K 2 = α1 K0, K +, K : (+) (-) 側の第 3 剛性 ( ) 1 ( ) 1 ( + ) ( + ) 但し K3 = α 2 K0, (-) (-) K 2 = α1 K (-) ( ) 0 K3 = α 2 K α +, α : (+) (-) 側の第 1 降伏後の剛性低下率 ( ) 2 α +, α : (+) (-) 側の第 2 降伏後の剛性低下率 ( ) δ + gap, ( ) 2 ( ) δ gap : (+) (-) 側の初期キャップ 0 Ⅱ-9-55

255 Part Ⅱ 9.5 多軸ヒンジの履歴モデル 地震のような複雑な荷重に対して軸力と 2 軸曲げを受ける柱は 3 つの成分間に複雑な相互作用が存在します このような相互作用をより詳細にモデリングするために 1 つの柱をソリッド要素で細分化し解析してもいいですが 相当な計算量になるので要素数を減らすため多軸ヒンジモデルを一般的に使用しています 多軸ヒンジモデルは要素内に複数の弾塑性ヒンジを割り当て ヒンジ状態によって部材の弾塑性挙動を解析するモデルで ファイバーモデルと多軸ヒンジ履歴モデルで区分することができます (1) ファイバーモデルファイバーモデルは部材内部の非線形挙動を確認するために複数の断面をファイバーで細分化して 単一梁要素でモデリングするモデルです 従って 複数の要素で分割しなくても詳細な非線形挙動を把握できる長所があります しかし 大規模モデルの非線形時刻歴解析時にはすべての構造部材をファイバーでモデリングする場合 計算時間及びメモリが多く必要になる問題が発生します (2) 多軸ヒンジ履歴モデル多軸ヒンジ履歴モデルは軸力と 2 軸曲げ成分を降伏面で定義して 塑性理論によって軸力と 2 軸曲げの相互作用を考慮するモデルです 軸力と曲げ成分は連動していますが それぞれは履歴モデルで定義されるので 断面を分割するファイバーモデルに比べてヒンジ状態の判定にかかる計算量が大幅に減少されて 大規模構造物の非線形時刻歴解析にも適用できます プログラムでは多軸ヒンジモデルとして ファイバーモデルと塑性理論を応用した移動硬化型の履歴 モデルを提供します ここでは多軸ヒンジモデルについて説明して ファイバーモデルについては別章 で説明します Ⅱ-9-56

256 9. 非線形時刻歴解析 移動硬化型 多軸ヒンジを対象とする移動硬化型履歴モデルは 2 つの降伏面を使用する移動硬化則を使用します これは基本的に一軸ヒンジを対象とする移動硬化型トリリニア履歴を軸成分と 2 軸曲げ成分で拡張したものです ヒンジ状態の判定およびそれによる軟性マトリックスの計算は決まっている降伏面に対する荷重点の相対的な位置関係から決定されます 除荷剛性は弾性剛性と同じで 2 つの降伏面は降伏によって位置だけが移動して 形態や大きさの変化はないと仮定します 降伏の判定は図 のように荷重点が 1 次降伏面の内部に位置する場合は弾性状態とみなして 載荷過程で荷重点が 1 次の降伏面と接すると 1 次降伏が発生したとみなして 荷重点が 2 次の降伏 面に到達すると 2 次降伏が発生したとみなします (a) 弾性状態 (b) ひび割れ後 (c) 降伏後 (d) 除荷状態 図 降伏面の移動と剛性変化 ヒンジの軟性マトリックスは 3 つの直列連結しているバネの軟性マトリックスの合で仮定します 直列連結されたバネはそれぞれ弾性バネと 2 つの非線形バネで構成されて 最初は弾性バネだけ軟性度を持って 残りは剛体だと仮定します 荷重点がそれぞれの降伏面に接する際に関連の非線形バネの軟性度が発生すると仮定します N 次の降伏後の軟性マトリックスの計算式は次のようになります ここで 降伏面と関連項目は現在の荷重点が接している降伏面だけ計算されます F a a N T 1 () i () i s Ks,(0) T i= 1 a() i Ks,() i a() i = + (9.5.1) ここで Ⅱ-9-57

257 Part Ⅱ K k1, ( ) 0 0 i = 0 k 0, 0 0 k 3,( i) s,( i) 2,( i) = ( n= 1,2,3; i = 1,2) k n,( i) rn,( i) r n,( i 1) kn,(0) i : 現在の荷重点が接している降伏面の次数 Fs : ヒンジの接線軟性マトリックス a(i) : i- 番目降伏面の荷重点位置での法線ベクトル kn,(i) : n- 番目成分の i- 番目の直列バネ剛性 (i=0 の場合には弾性剛性 ) rn,(i) : n- 番目成分の i- 番目降伏時の剛性低減率 (i=0 の場合は 1.0) 上記の軟性度マトリックス Fs は 弾性状態では対角マトリックスで 3 つの成分が完全に独立的で 降伏変形中は非対角成分によって 3 つの成分の間に相関作用が発生します 荷重点が到達降伏面の外側に移動すると 降伏面は荷重点と接している状態を保持するため一緒に移動します 移動方向は修正 Mroz の硬化法則を従います 荷重点が降伏面上から内側に移動される場合は除荷状態と判定し 除荷剛性は弾性剛性と同じです また 除荷過程で降伏面は移動しません S c : conjugate loading point S : translation of loading point C 1 : translation of the 1st yield surface center C 2 : translation of the 2nd yield surface center M z M z S S c C 1 C 1 C 2 M y S M y (a) 1 次降伏以降の硬化状態 (b) 2 次降伏以降の硬化状態 図 硬化則 Ⅱ-9-58

258 9. 非線形時刻歴解析 P-M および P-M-M 相関作用 曲げモーメントと軸力が同時に作用する梁要素は相関作用によって各成分が独立的に作用する時とは違う降伏強度を持ちます 特に 3 次元時刻歴応答解析において 2 方向による地震荷重を受ける柱部材は 内部で 2 軸曲げモーメントと軸力の間に複雑な相関作用が発生して これは構造物の動的応答に大きな影響を及ぼします プログラムでは 非線形時刻歴解析で P-M 相関作用 または P-M-M 相関作用を考慮した解析を遂行することができます (1) P-M 相関作用 P-M 相関作用は軸力の影響を考慮してヒンジの曲げ降伏強度を算定することで反映されます この際に 2 軸曲げモーメントの相関作用は無視します それぞれの時間増分に対するヒンジ状態判定においては軸力と 2 つの曲げモーメントのすべてお互いに独立しているとみなします 軸力を考慮した曲げモーメントの降伏強度を再度算定するためには 非線形静的解析を遂行して静的解析による軸力を計算して 時刻歴解析を遂行するようにそれぞれの荷重を別途の荷重条件で作成した後で 載荷順序及び荷重の連続性を設定して解析を遂行します 対象要素は P-M 相関作用が適用されるヒンジ属性が与えられた非線形の梁要素です この際に 初期断面力は静的荷重に含まれるすべての静的荷重に対する線形弾性解析結果の組み合わせで仮定して 使用する係数は時間変動静的荷重に入力する倍率によって定義されます MC : 1st Yield Moment MY : 2nd Yield Moment S : Loading Point P 2nd Yield Surface 1st Yield Surface P P S S S MC MY M MC MY M MC MY M (a) (b) (c) 図 P-M 相関作用による曲げ降伏強度算定 Ⅱ-9-59

259 Part Ⅱ 曲げに対する降伏強度の計算は上記のように計算された断面力の 2 次元相関曲線の相対的な位置によって決定されます ( 図 参照 ) 初期断面力が相関曲線の内側にあると この荷重点の軸力に該当する曲げ降伏強度を相関曲線から計算します 荷重点が相関曲線の外側にあれば 荷重点と原点を連結する直線が降伏面と交差する点で曲げ降伏強度を計算します (2) P-M-M 相関作用 P-M-M 相関作用は多軸ヒンジの履歴モデルを使用することで 非線形時刻歴解析に反映することができます 多軸ヒンジ履歴モデルは軸力と 2 軸曲げモーメントの間の相互作用を 塑性理論を応用して表現したもので 各時間増分毎に 3 つの成分の変動を統合的に考慮した状態判定を遂行します (a) P-M Type( 初期軸力 ) (b) P-M-M Type( 変動軸力 ) 図 P-M と P-M-M 相関関係での軸力関係 Ⅱ-9-60

260 9. 非線形時刻歴解析 降伏面の近似化 ヒンジの降伏強度算定 または状態判定において P-M または P-M-M 相関作用を考慮するためには P-M 相関曲線から 3 次元上の降伏面を定義する必要がある しかし 制限された P-M 相関曲線のデータから正確な 3 次元上の降伏面を定義することは難しいので これを単純な数式に近似化するおとができます プログラムでは P-M 相関曲線を次のように近似化します γ M P P M P P bal + = max max bal β 1.0 (9.5.2) ここで M : 荷重点の要素座標系 y- 軸 または z- 軸に対するモーメント成分 (M y または M z ) M max : 要素座標系 y- 軸 または z- 軸に対する最大曲げ降伏強度 (M y,max または M z,max ) P : 荷重点の軸力成分 P bal : y- 軸 または z- 軸に対する均衡破壊時の軸荷重 (P bal,y, P bal,z ) P max : 軸降伏強度として正 (+) 負(-) 非対称は可能 γ : 曲面次数 β: 要素座標系 y- 軸または z- 軸に対する曲面次数として正 (+) 負(-) 非対称は可能 (β y または β z ) プログラムで M-M 相関曲線は次のように近似化されます M M y y,max α M z + = 1.0 (9.5.3) M z,max α ここで M y,max : 要素座標系 y- 軸に対する最大曲げ降伏強度 M z,max : 要素座標系 z- 軸に対する最大曲げ降伏強度 α : 曲線次数 3 次元降伏面には上記の近似化された相関曲線を満足する以下の数式を使用します Ⅱ-9-61

261 Part Ⅱ α γ β γ y γ α bal, y M y P P f ( P, M y, Mz) = + { gy( M y, Mz) } M y,max Pmax P bal, y α γ β γ z γ M P P z α bal, z { gz( M y, Mz) } 1 M z,max Pmax P bal, z + + = (9.5.4) ここで (, ) g M M y y z (, ) g M M z y z M y M y,max = α M y M z + M y,max M z,max M z M z,max = α M y M z + M y,max M z,max α α α α 近似的な相関曲線の次数 β y, β z γ はユーザー入力または最適値に対する自動計算ができます 最適値は γ を 1.0 から 3.0 まで 0.1 ずつ増加させながら与えられた γ に対して βy βz を計算し この組合せの中から誤差が最小となる値を使用します Βy βz はそれぞれ P-My 平面及び P-Mz 平面が降伏面と交差して作られる近似的相関曲線と実際計算された相関曲線の面積が一致する値から算定します 誤差は相関曲線算定の基準軸力で近似的な相関曲線と実際の相関曲線のモーメント差の絶対合で定義されます 3 次元の降伏面にはトリリニアのスケルトン曲線に相当する 2 つの降伏面があって 内側を 1 次降伏面 外側を 2 次降伏面と言います RC 断面の場合 1 次降伏面は断面のひび割れ 2 次降伏面は断面降伏に対応されます この中で 1 次降伏面はひび割れ曲線を図 のように近似化して使用します まず 2 次降伏面を同じ面積になるように 2 つの直線で近似化します 次は 2 つの直線の中から斜線と元のひび割れ曲線が成す 3 角形に接しながら囲まれるように 1 次降伏面のパラメータを計算します Ⅱ-9-62

262 9. 非線形時刻歴解析 yc 2 yc 1 P Approximated Crack Surface Crack Surface Yield Surface Approximated Yield Surface x 1 = 0.8 x 2 yt 2 yt 1 yc 1 = 0.9 yc 2 M yt 1 = 0.9 yt 2 x 1 x 2 図 P-M と P-M-M 相関関係での軸力関係 Ⅱ-9-63

263 Part Ⅱ 9.6 ファイバーモデル ファイバーモデルの定義と定式化 弾塑性ヒンジの種類は 1 軸ヒンジの履歴モデル 塑性理論に基づいた多軸ヒンジ履歴モデルとファイバーモデルで分類することができます 1 軸ヒンジ履歴モデルは軸力 または 2 軸曲げなどの効果を反映せずに経験的に決まっている履歴特性を使用するヒンジモデルで 部材ヒンジの履歴特性が構造に及ぼす影響が大きくない場合や 簡単な方法で結果を得たい場合に使用する方法です 一方 多軸ヒンジ履歴モデルは 塑性理論の降伏面を用いて軸力と 2 軸曲げの効果を考慮するモデルですが 様々な履歴挙動の特性を表現するには限界があります ファイバーモデルも多軸ヒンジモデルのように軸力と 2 軸曲げの効果を考慮することができますが せん断力の影響が大きくない線材の構造特性を考慮する際に使用する方法です 曲げモーメントを受ける断面は変形後も平面を保持する特性を利用して定式化されます したがって 断面で発生するひずみは中立軸からの距離に比例するので 距離に曲率を掛けて計算します ファイバーモデルは分布型ヒンジモデルの各積分点の断面を図 のような格子 ( ファイバー ) または層 ( レイヤー ) セルで分割した後 各セルは同じ応力を持っていると仮定します この際に 各セルはコンクリート 鉄骨 鉄筋など 様々な材料を適用することができ 任意形状の断面を使用することもできます (a) 格子モデル (b) 層モデル 図 ファイバーモデルのセル分割方法 各セルはそれぞれ違う材料モデルを定義することができます 断面力 ( モーメント 軸力 ) は各セルの 応力を積分して 断面剛性は断面の軟性度の逆行列から求めます そして 要素または部材の剛性は 積分点 ( 集中型 または 分布型 ) の積分から得られます 従って ファイバーモデルは曲げ部材の力 Ⅱ-9-64

264 9. 非線形時刻歴解析 学的特性を正確に反映するので 解析結果の正確度も非常に高いです ただし 断面を複数のセルで 分割しなければならないので 解析時間は長くなります ファイバーモデルは次のような基本仮定から定式化されます 1. 断面は変形過程で平面を保持して部材軸と垂直を成すと仮定します したがって 鉄筋とコン クリートの付着すべりは考慮できません 2. 断面の図心軸は梁要素の長さ方向で直線であると仮定します ファイバーモデルの解析アルゴリズムは次のようになります 各要素の積分点位置にファイバーモデルが定義された断面が存在すると仮定します 積分点数は最大 20 個まで定義できます 積分方法は基本的に部材両端の結果が確認できる Gauss-Lobatto 法を使用し 積分点が 2 つの場合だけ一般 Gauss 積分法を使用します 前の時間増分から得た両端の部材力を変換過程を通じて剛体挙動を除いた 5 つの自由度に該当する軸力と両端の 2 つのモーメントで変換します このように得た軸力と両端の 2 つモーメントを内挿関数を使用して各断面での力を計算します 図 部材の任意断面における部材力と変形 Ⅱ-9-65

265 Part Ⅱ T 要素部材力ベクトル : Q = { Q,Q,Q,Q,Q} T 要素変位ベクトル : q = { q,q,q,q,q} 断面力ベクトル : D (x) = { M z(x) M y(x) N(x) } 断面変位ベクトル : d (x) = { χ z(x) χ y(x) ε(x) } T T i i Δ D (x) = b(x) ΔQ (9.6.1) ここで b(x) は内挿関数で 次のようになります x x L L x x b(x) = L L E D ここで L は部材長さです 断面の力と軟性度を演算して断面の変形を計算します このように得た断面の軸 曲げ変形からファ イバーのそれぞれの軸ひずみを計算することになり その関係式は次のようになります ECS z-axis ECS z-axis ECS y-axis y i i-th fiber ECS x-axis z i x ECS y-axis 図 ファイバーモデルの断面分割 χ y(x) εi = [ zi -yi 1] χ z(x) ε x (x) (9.6.2) Ⅱ-9-66

266 9. 非線形時刻歴解析 ここで x : 断面の位置 χ y (x) : 位置 xにおける断面の要素座標系 y- 軸に対する曲率 χ z (x) : 位置 xにおける断面の要素座標系 z- 軸に対する曲率 ε x (x) : 位置 xにおける断面の軸方向のひずみ y i : 断面上で i- 番目ファイバーの y- 軸位置 z i : 断面上で i- 番目ファイバーの z- 軸位置 ε i : i- 番目ファイバーのひずみ 各ファイバーのひずみ ε i に対応するファイバーの応力と接線剛性を材料毎に定義された構成関係式 から得られて ファイバーの状態を判別します 1 つの断面内の各ファイバーの応力を積分して断面の 軸力及び曲げモーメントを計算して 各ファイバーの接線剛性を積分して断面の軟性度を得ます 1 つ の部材内の断面の軟性を積分して 部材の軟性度を更新します このような過程の剛性マトリックスと軟 性マトリックスは以下のようになります j k n(x) n(x) n(x) j 2 j j E i Ai y i - E i Ai yi zi - E i Ai y i i=1 i=1 i=1 n(x) n(x) n(x) j j 2 j (x) = - E i Ai yi zi E i Ai z i E i Ai z i i=1 i=1 i=1 n(x) n(x) n(x) j j j - E i Ai yi E i Ai zi E i A i i=1 i=1 i=1 j (x) j f = k (x) 1 (9.6.3) ここで j k (x) : j-ステップ 距離 xに位置する断面の接線剛性 j f (x) : j-ステップ 距離 xに位置する断面の軟性度 n(x) : 距離 x に位置する断面内のすべてのファイバー個数 j E i (x) : j-ステップ 距離 x に位置する断面内の i ファイバーの接線剛性 A i : i ファイバーの断面積 yi, z i : i ファイバーの断面内の位置 Ⅱ-9-67

267 Part Ⅱ 一方 不平衡力の算定に必要な断面の内力は 次のように現在増分で各ファイバーの応力を積分し て得ます T n(x) n(x) n(x) j j j j D R (x) = - σ iay i i σ iaz i i σ iai (9.6.4) i=1 i=1 i=1 このような過程を各 Newton-Raphson 反復計算で使用者が定義した収束条件を満足するまで遂行します 一方 ファイバーモデルで断面の非線形特性は非線形ファイバーの応力 -ひずみ関係から定義できます 部材の非線形挙動はすべてファイバーの応力 -ひずみ関係から再現できるので プログラムでは様々な鋼およびコンクリートのファイバーの材料モデルを提供しています Ⅱ-9-68

268 9. 非線形時刻歴解析 鋼材モデル (1) 修正 Menegotto & Pinto モデル Menegotto & Pinto(1973) 1 が提案したモデルを Filippou(1983) 2 などが修正したモデルで 数値的に効率性が高くて実験結果と良く一致するモデルとして評価されています 構成モデルは基本的にバイリニア移動硬化型で設定された漸近線で接近する曲線形状を持っています それぞれ除荷経路とひずみ硬化区間に対応する 2 つの漸近線の間の転移区間は曲線形状となります この転移区間は 2 つの漸近線の交点と除荷される方向の最大変形点が互いに離れていると滑らかな曲線になり このような特性でバウジング効果を正確に表現することができます ˆ σ = b ˆ ε + (1 b) ε 1/ˆ R ( 1+ ˆ ε ) R (9.6.5) ここで a ˆ ε = ε ε, ˆ σ = σ σ, R = R ξ ε ε σ σ + ξ r r r 0 r a2 ε : 鋼ファイバーのひずみ σ : 鋼ファイバーの応力 (ε r, σ r ) : 除荷点として初期弾性状態では (0, 0) と仮定. (ε 0, σ 0 ) : 現在の載荷 または除荷経路を定義する 2 つ漸近線の交点 b : 剛性低減率 R 0, a 1, a 2 : 定数 ( 曲線の形を決定する値で 実験から得た最適値をデフォルトに使用 ) ξ : 荷重が載荷 または除荷される方向での最大ひずみとε0 の差 ( 絶対値 ) ただし 最大ひずみの初期値は ±(Fy/E) と同じであると設定 ( 図 参照 ) 1 2 Menegotto, M. and Pinto, P.E., Method of Analysis for Cyclically Loaded ReinForced Concrete Plane Frames Including Changes in Geometry and Non-Elastic Behavior of Elements under Combined Normal Force and Bending, Proceedings, IABSE Symposium on Resistance and Ultimate Deformability of Structures Acted on by Well Defined Repeated Loads, Lisbon, 1973, pp Filippou, F.C., Popov, E.P. and Bertero, V.V., Effects of Bond Deterioration on Hysteretic Behavior of ReinForced Concrete Joints, EERC Report 83-19, Earthquake Engineering Research Center, Berkeley, Ⅱ-9-69

269 Part Ⅱ σ ξ 2 (ε 0, σ 0 ) 2 F y b E (ε r, σ r ) 1 E ε (ε r, σ r ) 2 (ε 0, σ 0 ) 1 ξ 1 図 鋼材ファイバーの構成モデル (2) バイリニアモデル 一般的なバイリニアモデルで 降伏前と降伏後の剛性が変わります 降伏前の載荷と除荷は弾性剛 性を使用し 降伏後は減少された剛性で載荷が進みます 降伏後の除荷と再載荷は弾性剛性で進み ます (3) トリリニアモデル 一般的なトリリニアモデルで 弾性と 1 次降伏と 2 次降伏以降の剛性をそれぞれ定義することができます 圧縮側と引張側の 1 次 2 次降伏ひずみと勾配をそれぞれ入力して非対称の履歴を定義することができます 降伏前の載荷 除荷は弾性剛性を使用し 降伏後は減少された剛性で載荷が進みます 降伏後の除荷 再載荷は弾性剛性で進みます Ⅱ-9-70

270 9. 非線形時刻歴解析 (4) バイリニアモデル ( バウジンガー効果考慮 ) このモデルは鉄筋で発生できるほぼすべて現状が再現できるように作成されたモデルで すべての 剛性をそれぞれ定義することができる 引張側は降伏 破断が考慮でき 圧縮側は降伏 座屈後の破 壊が考慮できる 図 バイリニアモデル ( バウジンガー効果考慮 ) の履歴則 1 弾性状態 2 降伏以降の状態 (E2 や E4 の勾配で進行 ) 3 引張側の降伏以降に除荷が始まり 勾配 E3 の直線と接して 圧縮側の降伏が発生した状態 (E4 の勾配 ) 4 降伏以降に除荷が進んでいる状態 (E1 の勾配 ) 5 圧縮側が座屈ひずみ ε 1 を超えて進行している状態 (E5 の勾配 ) 6 圧縮側の座屈発生した後 再載荷が進んでいる状態 引張降伏の前は引張降伏点に向かい 引張降伏が既に発生した場合は以前の最大ひずみ点に向かって進む 7 圧縮座屈で耐力が無くなり これ以上抵抗できない状態 8 引張破断が発生して これ以上抵抗できない状態 1~6 段階中に除荷が発生した場合は E1 の勾配を適用 Ⅱ-9-71

271 Part Ⅱ (5) Park 鋼材モデル Kent & Park(1973) 3 により 反復荷重を受ける軟鋼実験を通じて提案したモデルです このモデル は 軟鋼の弾性区間 塑性区間とひずみ - 硬化区間の表現が可能で Ramberg-Osgood 式によってバウ ジンガー効果を精密に再現して実験結果とよく一致しているモデルです 1 載荷時の挙動 載荷時の挙動は次のように区分できます 載荷時のひずみ - 硬化区間での応力 - ひずみ関係は Thomps on & Park(1980) 4 が提案した式を適用します f u f y E s ε y ε sh ε su 図 Park 鋼材モデルの履歴モデル - 載荷時 ε ε 弾性区間 (O-A) : 0 y f = E ε 塑性区間 (A-B) : ε y < ε < ε sh f = f y ひずみ硬化区間 (B-C) : ε sh ε < ε su s y 3 4 Kent, D. C. and Park, R., Cyclic Load Behavior of Reinforcing Steel, Strain, July 1973, pp. 98~103 Thompson, K. J. and Park, R., Ductility of Prestressed and Partially Prestressed Concrete Beam Sections, PCI Journal, March- April 1980, pp. 46~70 Ⅱ-9-72

272 9. 非線形時刻歴解析 f ( sh ) ( ε ε ) ( )( m sh ) ( r ) 2 m ε ε + 2 ε ε 60 = fy sh m = ( )( ) 2 u y r = ε ε f f 30r r 1 u sh 15r 2 ここで ε : 鋼ファイバーのひずみ f : 鋼ファイバーの応力 E s : 鋼ファイバーの応力 ε : 鋼ファイバーの降伏ひずみ y ε : 鋼ファイバーのひずみ - 硬化が始まるときのひずみ sh ε : 鋼ファイバーの極限ひずみ ( 破断時 ) su f y : 鋼ファイバーの降伏応力 f u : 鋼ファイバーの極限応力 2 除荷及び再載荷時の挙動 除荷時及び再載荷時の挙動は Ramberg-Osgood 関係により定義されて Newton-Raphson 反復計算 で応力を求めます f y R = n 3.04 log (1 + n) e 1 + e E s ε y R = n log (1 + n) e 1 + e 図 Park 鋼材モデルの履歴モデル - 除荷及び再載荷時 Ⅱ-9-73

273 Part Ⅱ f ε εsi = 1+ E s f f ch R 1 : Ramberg-Osgood 関数 f ch = fy ε ip loge( ε ip) ( 1 e ) R = (n=1の場合) n log (1 + n) e 1 e R = n log (1 + n) e 1 e (n=2 の場合 ) ここで f ch ip : Ramberg-Osgood 関数の特性応力 ε : 以前載荷時の塑性ひずみ (0 < < ) R : Ramberg-Osgood パラメータ n : 載荷数 ( ただし 圧縮側の場合 1 引張側の場合 2 の固定値を使用 ) ε ip ε : 載荷時点で応力 0に対するひずみ si ただし 以前載荷時に発生した塑性ひずみ ε ip が0.7097を超えると数値エラーが発生するので強制終了します Steel Stress(N/mm 2 ) Park's Result Midas Result Steel Strain 図 Steel Stress(N/mm 2 ) Park's Result Midas Result Steel Strain Park 鋼材モデルの応力 - ひずみ曲線 Ⅱ-9-74

274 9. 非線形時刻歴解析 コンクリートモデル (1) 修正 Kent & Park モデル 単調増加の圧縮力を受けるコンクリートに対して Kent と Park(1971) 5 が提案したモデルを Scott(1982) 6 などが修正したモデルです 下のように包絡曲線式を使用して コンクリートの引張強度は無視しています このモデルは明瞭さと正確さを備えたモデルで 横拘束によるコンクリート圧縮強度の増加が考慮できます ここで σ = c 2 ε ε Kf 2 c ε ε 0 0 [ ( )] for ε ε Kf 1 Z ε ε 0.2Kf for ε ε ε c 0 c 0 u 0 (9.6.6) ε : コンクリートファイバーのひずみ σ : コンクリートファイバーの応力 ε 0 : 最大応力発生時のひずみ ε u : 極限ひずみ K : 横拘束による強度増加率 Z : ひずみ軟化時の勾配 f c : コンクリートシリンダー圧縮強度 (MPa) compressive stress K f c Z K f c 0.2K f c ε 0 ε p ε r ε u compressive strain 図 修正 Kent & Park モデル 5 6 Kent, D.C., and Park, R., Flexural Members with Confined Concrete, Journal of the Structural Division, ASCE, 97(ST7), Scott, B.D., Park, R. and Priestley, M.J.N., Stress-Strain Behavior of Concrete Confined by Overlapping Hoops at Low and High Strain Rates, ACI Journal, Vol.79, No.1, 1982, pp Ⅱ-9-75

275 Part Ⅱ 極限ひずみを超えたコンクリートは圧壊が発生したと仮定して これ以上荷重に抵抗できないと仮定 します 矩形断面の柱に対して 上記の包絡曲線を定義するパラメータを計算するために次の式を使 用します ε 0 = 0.002K ρs f yh K = 1+ f c 0.5 Z = f c h ρs 0.002K 145 f 1000 s c h (9.6.7) ここで f yh : せん断筋 (Stirrup) の降伏強度 (MPa) ρs : せん断鉄筋比 = せん断筋の体積 / コンクリートコアの体積 h : コンクリートコアの幅 ( 矩形の場合は短い方 ) ( コンクリートコアはせん断筋の外側で囲まれた領域で定義 ) s k : せん断筋の間隔 Scott など (1982) は 横拘束が存在する矩形の柱に対して 次の極限ひずみの式を提案しました ( f ) ε = ρ / 300 (9.6.8) u s yh 上記の包絡曲線で除荷が始まる場合の除荷経路は次の式で定義されるひずみ軸線上の点 (ε p, 0) に向かい この点に到達するとひずみ軸線上に従って引張領域に移動します 2 ε p ε r ε r ε r = for < 2 ε0 ε0 ε0 ε0 ε p ε r ε r = for 2 ε0 ε0 ε0 (9.6.9) ここで ε r : 除荷発生点のひずみ ε p : 除荷経路上の目標点のひずみもし 再び圧縮ひずみが増加すると今までの除荷経路をそのまま遡って包絡曲線に到逹することになります Ⅱ-9-76

276 9. 非線形時刻歴解析 (2) 日本コンクリート標準示方書モデル 日本コンクリート標準示方書で提示しているコンクリートモデルで 次のような特長があります 圧縮の最大応力点を越えた場合は軟化領域を持ち 殘留塑性ひずみを考慮しています 除荷 再載荷の場合 剛性低減の効果を考慮しているし 一般的な梁部材の場合は引張側の応力 -ひずみ関係は無視しています これより 圧縮強度が 50 N/mm 2 以下の場合は次のような応力 -ひずみ履歴関係になります σ ' c = EK 0 ( ε' c ε' p) 0, E 0 2 f ' ε ' = c peak ε' K = exp 0.73 max 1 exp 1.25 max (9.6.10) ε' ε' peak peak ε' ここで ε ' ' ' max p = max 2.86 ' peak 1 exp 0.35 ε ' peak ε ε ε ε ' peak : 圧縮強度に対応するひずみ ε ' max : 前に起きた最大圧縮ひずみ ε ' p : 残留塑性ひずみ K : 剛性残存率 σ f E 0 E 0 ε ε ε 図 日本コンクリート標準示方書モデル Ⅱ-9-77

277 Part Ⅱ (3) 日本道路橋示方書モデル 日本道路橋示方書 同解説 V 耐震設計編のコンクリートモデルで 次のような特長があります 圧縮の最大応力点を超えた場合は軟化領域を持ち さらに極限圧縮ひずみを超えた場合はそれ以上抵抗しないと仮定します 地震荷重の種類によって極限圧縮ひずみが変わり 拘束鉄筋の量を考慮して軟化領域の勾配 最大圧縮強度と極限圧縮ひずみを調整します 一方 残留塑性ひずみを考慮することができますし 除荷 再除荷の場合は初期剛性で挙動すると仮定します 引張側の応力 -ひずみ関係を持っていて 最大引張強度時のひずみを超えた場合 それ以上は抵抗しないと仮定します σ c n 1 1 ε E ε c c c ε ε ε c cc n cc 1 (0 ) = σcc Edes ( εc εcc ) ( εcc εc εcu) n = Ecεcc E ε σ c cc cc σ = σ + 3.8αρ σ cc ck s sy ε E cc des ρ s = + β σ σ 2 = ck 11.2 σ ρ σ s sy ck sy ε cu εcc = 0.2σ cc εcc + E des (TypeⅠ 地震荷重 ) (TypeⅡ 地震荷重 ) 4A ρ = h s sd ここで σ c : コンクリートの応力 σ cc : せん断筋で拘束されたコンクリートの強度 σ ck : コンクリートの設計基準強度 ε c : コンクリートのひずみ ε cc : 最大圧縮応力に対するひずみ Ⅱ-9-78

278 9. 非線形時刻歴解析 ε cu : せん断筋で拘束されるコンクリートの極限ひずみ E c : コンクリートの弾性係数 E des : 軟化区間の下向き勾配 ρ s : せん断筋の体積比 A h : せん断筋一本当たりの断面積 s : せん断筋の間隔 d : せん断拘束長さで 帯筋や中間帯鉄筋によって分割拘束されたコンクリート長さで一番長い値 σ sy : せん断筋の降伏点 α, β : 断面修正係数 ( 円形断面 = 1 1/ 四角 梯形 中空断面 = ) σ c σ c 0.8σ cc E de E c E c ε cc ε cu ε c σ bt 図 日本道路橋示方書モデル Ⅱ-9-79

279 Part Ⅱ (4) 日本名古屋公団モデル 日本名古屋公団 ( 名高社 ) のコンクリートモデルで 次のような特長はあります 鋼材橋脚に充填されたコンクリートの応力 -ひずみ関係を表現したもので 最大圧縮強度に対するひずみを超えた場合は最大圧縮強度をそのまま保持すると仮定します 極限ひずみを超えた場合は それ以上抵抗しなくて残留塑性ひずみを考慮しています 除荷 再載荷の場合は 初期剛性で挙動します 示方規定には引張強度を無視するようにしていますが 汎用性を持たせるため引張側の応力 -ひずみ関係を任意で定義できるようにしています 最大引張ひずみを超えた場合はそれ以上抵抗しないと仮定します ここで ( ) ( ) 2 2 / 0 / c = ck 0 c c (9.6.11) σ σ ε ε ε ε σ ck : コンクリートの設計基準強度 σ bt : コンクリートの引張強度 ε cu : コンクリートの極限ひずみ ε 0 : 最大圧縮応力に対するひずみ σ c σ ck σ bt ε 0 ε cu ε c 図 日本名古屋公団モデル (5) トリリニアコンクリートモデル 1 次 2 次の圧縮降伏まで表現できて 引張強度を持つ一般的なモデルで任意の定義ができるモデ ルです 残留塑性ひずみを考慮しているし 除荷 再載荷の場合は初期剛性で挙動すると仮定します Ⅱ-9-80

280 9. 非線形時刻歴解析 (6) 中国コンクリート示方書モデル (GB ) 中国コンクリート示方書 (GB ) の短軸コンクリート応力 - 変形度モデルです このモデルは 圧縮側と引張側にそれぞれ最大応力点を持ち 最大応力点を超える場合は軟化領域に入ります 中 国コンクリート示方書モデルの適用範囲は次のようになります コンクリート強度等級 : C20~C80 コンクリート質量密度 : 2200~2400kg/m 3 正常的な温度 湿度環境 定常的な載荷速度 構造解析方法と極限状態検討の必要性によって 短軸強度 ( 設計値あるいは平均値 (, cm tm * * f, f ) は各標準値 (, c t ck f f ) f f ) を使用することができます 強度の平均値は次のように計算します tk f cm fck = δ c f, tk f = tm δ t (9.6.12) ここで δ, c δ : コンクリート圧縮強度 ( 引張強度の急変係数で試験統計で決定 ) t 図 コンクリート圧縮側の応力 - ひずみ曲線 Ⅱ-9-81

281 Part Ⅱ コンクリート短軸圧縮の応力ひずみ曲線の方程式は次のように示すことができます ( ) ( ) ε ε ; y = α x + 3 2α x + α 2 x c a a a ε < ε ; y = c α d x ( x 1) 2 + x 2 3 (9.6.13) ここで ε x =, ε c y = σ f c * * f : コンクリートの短軸圧縮強度 (, or c ck c cm * ε : f に対応する最大点の圧縮ひずみ c c c ( fc ) ε = * 6 f f f ) α : 短軸圧縮の応力 -ひずみ曲線の上昇区間のパラメータ a d α = f a c * α : 短軸圧縮の応力 - ひずみ曲線の下降区間のパラメータ * α = f d c ε は応力 - ひずみ曲線の下降区間で応力が u ( 1 2α 1 4α d d ) 0.5 c * f 位置でのひずみを意味します ε 1 u = (9.6.14) ε 2α c d 表 コンクリート短軸圧縮応力 - ひずみ曲線パラメータ値 f (N/mm 2 ) * c ε (x10-6 ) c α a α d ε ε u c Ⅱ-9-82

282 9. 非線形時刻歴解析 コンクリート短軸引張の応力 - ひずみ曲線の方程式は次の式のように決定することができます 図 コンクリートの短軸引張応力 - 変形曲線 6 ε ε ; y = 1.2x 0.2 x t x ε < ε ; y = t 1.7 α ( x 1) + x t (9.6.15) ここで ε x =, ε t y = σ f t * f : コンクリートの短軸引張強度 ( f, f or f ) * t ε : t * t * tk t tm f に対応する最大点の一パリひずみ ε = f t t t α : 短軸引張の応力 - ひずみ曲線の下降区間のパラメータ値 α = f t * 2 t 表 コンクリート短軸引張の応力 - ひずみ曲線のパラメータ値 f (N/mm 2 ) * t ε (x10-6 ) t α t Ⅱ-9-83

283 Part Ⅱ (7) Mander コンクリートモデル 横方向に配筋された拘束鉄筋はコンクリートの極限強度と極限ひずみを大きく増加する公開を持っています Mander(1988) 7 はSheikh & Uzumeri 8 が提案した有效拘束断面積の概念だけではなくて 3 次元応力状態を考慮したコンクリートの破壊基準を適用した最大圧縮応力度の評価式を提案して 原形断面 正方形断面 長方形断面に対する実験を通じて提案モデルの適用性を検討しました Manderモデルはコンクリートの断面形状とかかわらず適用することができるし 縦方向鉄筋の間隔及び拘束鉄筋本数 拘束鉄筋の降雨 hく強度及び配筋形状などによるコンクリートの横拘束効果を考慮することができます f c Compressive Stress, ' f cc ' f co E c E sec ε t ε co ' f t 2ε co ε sp εcc ε cu ε c 図 拘束及び非拘束コンクリートの応力 - ひずみ曲線 縦方向コンクリート圧縮応力は次のように定義されます f c ' f xr cc = (9.6.16) r r 1 + x 7 8 Mander, J.B, Priestley, M.J.N and Park, R., Theoretical Stress-Strain Model For Confined Concrete, Journal of Structural Engineering, ASCE, Vol.114, No.8, pp. 1804~1826, 1988 Sheikh, S.A. and Uzumeri, S.M., Strength and Ductility of Tied Concrete Columns, J. Struct. Div., ASCE, Vol.106, No. ST 5, pp. 1079~1102, 1980 Ⅱ-9-84

284 9. 非線形時刻歴解析 ここで ' f : 拘束コンクリートの圧縮強度 cc ' f : 横拘束されてないコンクリートの圧縮強度 co ε c x = ε cc ε : 横拘束されたコンクリートの最大圧縮応力に対応するひずみ cc ε cc f ' cc = ε co f ' co ε : 拘束されてないコンクリート強度に相当するひずみ co ( ただし 一般的に ε = で推測可能 ) co r = E c E c E sec E : コンクリートの弾性係数, c E c = 5, 000 f ' co MPa E sec = f ε ' cc cc 拘束コンクリートの圧縮強度 f ' cc は次のように定義されます ' 7.94 f f l ' f f co co ' ' ' l = f cc co + + ' f (9.6.17) ここで ' f : コンクリートの側面拘束応力, l f = k ρ f 2 ' 1 l e s yh Ⅱ-9-85

285 10. 施工段階解析 10. 施工段階解析 10.1 概要 建築構造物は施工工程により 層別または複層単位で施工されて 同じ層でも施工順序と載荷条件が違うので 構造物に荷重を同時に載荷する一般的な構造解析方法と実際の構造物の挙動は相当な違いがあります また 段階的な施工によって隣接部材間の材齢が違うので部材の弾性係数や強度などの材料特性も変わってきます そして コンクリートのクリープ 乾燥収縮 強度増加などの材料の時間依存的な特性による影響で 施工中または施工が完了された後でもたわみが変わったり 応力が再分配されて構造物の挙動は非常に複雑になります したがって 構造物の各施工段階による解析結果を予測するためには施工段階を考慮した時間依 存解析が必要となります プログラムで施工段階解析を遂行する際に考慮する内容は次のようになります 材料の時間依存性 違う材齢を持つコンクリート部材のクリープ 違う材齢を持つコンクリート部材の乾燥収縮 時間の経過によるコンクリート部材の強度発現 施工段階の表現 任意の材齢を持つ部材の生成及び消去 任意の載荷時点を持つ荷重の載荷及び消去 境界条件の変化 施工段階を考慮した時間依存解析を遂行するための手順は次のようになります 1. 構造物をモデリングします この際に任意の施工段階で一緒に生成または消去する要素 荷重及び境界条件などをグループで指定します Ⅱ-10-1

286 Part Ⅱ 2. クリープや乾燥収縮のような時間依存性材料の特性を定義します この際に時間依存性 材料は ACI や CEB-FIP のような規準を選択して生成するか ユーザーが直接定義する On-line Manual の " モデル > 材料 & 断面 > 時間依存性材料 " を参照 On-line Manual の " モデル > 材料 & 断面 > 時間依存性材料で連結 " を参照 On-line Manual の " 荷重 > 施工段階解析データ > 施工ステージの設定で連結 " を参照 ことができます 3. 定義した時間依存性材料を一般材料に割り当てします これによって時間の変化によるコンクリート部材の材料変化を自動的に計算して考慮します 4. 施工時に考慮すべき施工順序を考えて施工段階及び日数を作成します 5. 予め作成した要素グループ 境界条件グループ 荷重グループを利用して施工段階を定義します On-line Manual の " 解析 > 施工段階解析制御 解析実行 " を参照 6. 解析条件を指定して 構造解析を遂行します 7. 施工段階解析の結果と完成系解析の結果を必要な方法で組み合わせます 施工段階解析の時 弾性変形のみを考慮するためには解析メニューで施工段階解析制御ダイアログボックスの解析オプションで時間依存性材料の特性と非線形解析オプションをすべて Off します (1) 弾性変形を考慮した施工段階解析一般的な建物構造の構造解析は完成された全体構造物に荷重は同時に作用するという仮定で遂行されています しかし このような仮定は建物が各層 または複数層ごとに施工されるとか 同じ層であっても工程によって施工順序と載荷条件が違う場合は 実際の構造物の挙動とは大きく違います 例えば 高層建築物の上層部の梁部材に大きいモーメントが発生したり 鉄骨と RC 壁を同時に使用した構造システムの RC 壁で垂直荷重の分配が実際よりも大きくなる現象などがあります このような誤差の原因 を分析してみると 次の 2 つで区分することができます 1. 構造物全体のモデルに荷重を同時に載荷する場合 載荷される荷重が実際施工条件と は異なってまだ施工されてない上部階に分配されることによる誤差 2. 施工段階時に載荷される施工荷重による垂直部材の不等変形による誤差 Ⅱ-10-2

287 10. 施工段階解析 1 番目の誤差の原因は次のようになります 実際の構造物において 任意の層の自重を含む施工段階荷重は まだ施工されていない上部階の断面力にはほぼ影響を与えません 鉄筋コンクリート構造物の場合 任意の層の垂直部材と床スラブが打設されて該当層の養生期間が経過すると施工段階荷重による変形がある程度進行された後で上部階が施工されるので上部階は下部階の施工段階荷重による影響を受けません しかし 一般解析では完成された構造物のモデル上で荷重が同時に載荷されるので任意の層の施工荷重が上部階の断面力と変形に影響を与えます 図 は 2 階の RC 構造物モデルで 一般解析結果と施工段階を考慮した解析結果とを比較して示したものです ここで 一般解析とは 完成された全体構造物に荷重を同時に載荷する解析を意味し 施工段階を考慮した解析は 構造物の施工工程によって別途のモデルを使用して施工段階に載荷される荷重を順次的に載荷して遂行した解析です 表 から 施工段階を考慮した解析結果の断面力が一般解析結果の 90~180% 程度になることがわかります 実際の施工する際には 施工段階の固定荷重が 1 階に載荷される時点では 2 階部分はまだ施工されていない状態ですので 1 階の断面力は 2 階部材による影響はありません しかし 一般解析の場合 図 (b) のように実際には存在しない 2 階の柱によって回転変位が制限されて 1 階の施工段階荷重による断面力を 1 階と 2 階の柱が負担するので このような誤差が発生します したがって 既存の一般解析方法を利用する場合は 設計結果に誤差が含まれることが確認できます 比率 (%) = 施工段階を考慮した解析結果 / 一般解析結果 100 表 区分 2 層 RC 構造物の平面骨組に対する一般解析結果と施工段階を考慮した解析結果の比較表 1 層柱 ( 上部 ) 曲げモーメント 1 層梁 ( 中央部 ) 2 層柱 ( 上部 ) 2 層梁 ( 上部 ) 変位 1 層梁 ( 中央部 ) 2 層梁 ( 中央部 ) 施工段階を考慮した解析 一般解析 比率 (%) Ⅱ-10-3

288 Part Ⅱ (a) 施工段階を考慮した解析結果 (b) 一般解析の解析結果 図 階 RC 構造物の一般解析及び施工段階を考慮した解析の結果比較 ( モーメント図 ) Ⅱ-10-4

289 10. 施工段階解析 鉄骨又は複合構造の場合は 図 のように骨組みを仮設した後 上部節の骨組み工事と該当節のデッキプレート設置工事を同時に遂行します そして 主要な施工荷重が載荷される床スラブのコンクリート打設工事は次の上部節の骨組み工事と前の段階で施工した骨組みのデッキプレート設置工事と同時に遂行されます 従って 毎階施工を完了しながら上部階に進行する鉄筋コンクリート構造物とは異なるので 前述した誤差要因の中で1による影響はほぼありません (a) プロセス 1 (b) プロセス 2 (c) プロセス 3 1 層から3 層までの鉄骨フレームの仮設 1 層から3 層までデッキプレートを敷設 4 層から6 層までの鉄骨フレームの仮設 1 層から3 層までのコンクリート打設 4 層から6 層までデッキプレートを敷設 7 層から9 層までの鉄骨フレームの仮設 図 鉄骨構造物の施工段階 (3 階を 1 節として施工する場合 ) 2 番目の誤差要因として 施工荷重による柱部材の不等変形の問題があります 高層鉄筋コンクリート構造物に不等沈下は 弾性変形と乾燥収縮 そして長期圧縮荷重によるクリープなどによって発生します また 長期圧縮荷重によるクリープによって発生されて 乾燥収縮とクリープによる影響は コンクリートの強度 施工期間 打設条件 気候条件などによって変わります 一般的に 乾燥収縮による影響はクリープの影響と比べて小さいです クリープの場合は 長期的に進行されるので設計段階で正確に予想することは難しいです 建物の場合は 柱の重力方向荷重に対する分担率が異なっても 設計便宜や使用性などを考慮して同じ大きさの柱を一般的に使用するので荷重分担率の差による柱の間で不等変形が発生します ま Ⅱ-10-5

290 Part Ⅱ た 柱と壁のような垂直軸剛性が大きく異なる部材が隣接に配置される場合も 不等変形が発生します さらに 鉄筋コンクリート構造物の場合は コンクリートの弾性係数が養生期間中に変わるので これも不等変形の 1 つの要因となります このような不等変形は 高層建物になると大きくなり 梁部材に曲げモーメントとせん断力を追加で発生させて 2 次的に該当梁部材と連結された ( 曲げモーメント接合 ) 柱又は他の部材も影響を与えます 実務では不等変形が施工段階で補正されると仮定して 水平部材の設計のため重力方向の解析時に垂直部材の剛性を任意で上向調整したり 該当の数値の垂直自由度を制限したりなど 垂直変位を制限する方法を使用する場合もあります しかし 施工段階で不等変形を精密に補正しても階高が同じになることだけでありまして 実際構造的な不等変形は存在するのでこれによる付加モーメントやせん断力は解消できません 従って 不等変形を無視して設計をする場合 このような断面力 ( 特に梁部材の断面力 ) を過小評価する可能性があります また 施工時に任意の階を均等になるように調整しても上部階が施工されれば その荷重によって 下部階の不等沈下はさらに累積されて発生します 施工段階の荷重による不等変形を防ぐためには 該当の垂直部材に付加される軸力分担率に比例して部材を設計すればいいですが その場合 軸力によって断面の大きさが変わるので 現実的ではありません したがって 実際の構造物の不等変形を可能なかぎり考慮して 設計に反映することが高層建築物では重要です このような変位分布の状態を図 で概念的に説明しました 例えば, 5 階建物の単位柱列で各層毎に垂直部材の上端に載荷される集中荷重と階高 垂直部材の弾性係数 そして 断面積がすべて 1.0 だと仮定すると任意の層の相対変位は 1.0 になります 図 (a) のように 5 階まで完成された単位柱列モデルに各層毎で単位垂直荷重を載荷してその結果を足し合わせると一般解析結果と同じになり 毎階の施工段階を考慮して積層の概念で垂直荷重を加えて足し合わせると図 (b) のようになります 図 (b) は 施工段階を考慮して部材力を算出する解析過程で計算された変位で 骨組みの後で設置される間仕切り壁や仕上げ材のような非構造材に対する垂直補正量を求めるためには別途の過程が必要です 参照で 鉄筋コンクリート建物の場合 任意の層の水平レベルは型枠設置時の各層の補正量 ( 床スラブまで : 下部階の荷重による鉛直変位 + 該当層の荷重による鉛直変位 ) になるので 必要な補正量は後の工程で設置される上部階の荷重による垂直変位量になります Ⅱ-10-6

291 10. 施工段階解析 5 層の変位 4 層の変位 3 層の変位 2 層の変位 すべての 鉛直変位 1 層の変位 1 層の載荷条件 2 層の載荷条件 3 層の載荷条件 4 層の載荷条件 5 層の載荷条件 : 単位荷重 (a) 一般解析結果 すべての 鉛直変位 1 層の載荷条件 2 層の載荷条件 3 層の載荷条件 4 層の載荷条件 5 層の載荷条件 (b) 層別施工段階を考慮した解析結果 5 層の変位 4 層の変位 下部階の荷重による鉛直変位 該当層の荷重による鉛直変位 Subsquent 施工プロセスを考慮した解析結果 下部階の荷重による鉛直変位 一般解析の結果 3 層の変位 2 層の変位 1 層の変位 上部階の荷重による鉛直変位 層 0 鉛直変位量 (c) 荷重の種類別に見た鉛直変位の比較表 図 一般解析と施工段階解析による柱の鉛直変位の比較 Ⅱ-10-7

292 Part Ⅱ そして 鉄骨建物の場合 一般的に制作工場で単位柱部材を設計図面どおり製作した後 現場で施工する際に柱節の連結部分に図 のようにフィルタープレートを挿入して不等沈下を補正します この際に補正量は下部階の荷重による変位と該当層の荷重による変位 そして 後で設置される上部階の荷重による垂直変位を足した値になります 鉄骨柱部材 スプライスプレート フィルタープレート 図 鉄骨建物の垂直不等変位に対する補正のための詳細 図 (c) の弾性変形による垂直変位を数式で表せば 次のようになります 一般解析結果 : L n N k Δ n = Pi k= 1 EA k k i= k 施工段階を考慮した解析結果 : L n N k Δ n = Pi k= 1 EA k k i= n 該当層と下部層の荷重による垂直変位 ( 床スラブまで ) : L N k i Δ n = Pk k= 1 i= 1 EA i i 上部階の荷重による任意層の垂直変位 ( 後続の工程 ) : L n N Δ = k n Pi k= 1EA k k i= n+ 1 Ⅱ-10-8

293 10. 施工段階解析 ここで n = 任意層 N = 全層数 L i,k = i または k 層の層高さ E i,k = i または k 層の柱部材の弾性係数 A i,k = i または k 層の柱部材の断面積 P i,k = i または k 層の施工段階別の垂直荷重 プログラムの施工段階を考慮した解析は 上記で述べた問題を解析的に解決するために 建物の施工段階をそのままモデリングできるように開発されています 施工段階荷重は 各プロセス毎に生成されたモデルに自動載荷して解析し骨組みが完成した後で載荷される他の固定荷重と積載荷重 水平荷重などは 完成したモデルに載荷されて ユーザーが指定した荷重組合わせ条件に従って自動組合わされます プログラムでは 与えられた施工別にモデルを分離して生成した後 施工段階毎の荷重を自動載荷して解析を遂行し その結果を組合わせて最終的な施工段階を考慮した解析で使用します 施工段階荷重を除いた荷重に対する解析は 一般的な解析と同様に遂行されます 図 は この解析手順をフローチャートに表したものです 構造物の解析モデルの入力 i 番目の施工段階に対する解析モデルの構成 i 番目の解析モデルに対する剛性及び荷重マトリックスの構成 i 番目の解析モデルに対する静的解析及び結果の組合わせ 最終施工段階 一般解析 施工段階を考慮した解析結果の整理 図 施工段階を考慮した解析のフローチャート Ⅱ-10-9

294 Part Ⅱ 10.2 時間依存性材料 プログラムではコンクリートの時間依存性の中で クリープ 乾燥収縮 強度増加などを考慮すること ができます クリープ及び乾燥収縮 実際の構造物でのクリープは乾燥収縮とともに発生して その関係は図 のよういなります 従 って 乾燥収縮 弾性変形 クリープをそれぞれ分離して考えることができません しかし 実際の解析 及び設計では これらを分離して考慮します 図 の真の弾性変形とは時間とともに増加されるコンクリートの強度による弾性係数の増大によって減少される弾性変形を表したものです 一般的には見掛けの弾性変形を弾性変形といいますが プログラムでは解析時にコンクリートの強度発現を考慮することができますので 真の弾性変形をもって解析することができます クリープひずみは作用させた応力に比例し 同じ応力のもとでは高強度コンクリートの方が低強度コンクリートより小さいクリープひずみを示します クリープひずみは弾性ひずみの 1.5~3 倍程度に至って 載荷後の数ヶ月の間に最終値の 1/2 が進行されて 約 5 年後にはほぼすべてが発生します ひずみ クリープ 乾燥収縮 真の弾性変形 見掛けの弾性変形 時間 図 時間経過によるコンクリートのひずみ Ⅱ-10-10

295 10. 施工段階解析 コンクリートのクリープは次のような要因によって変化します 1. 水セメント比の増加はクリープの増大をもたらす 2. 応力を受ける時のコンクリート材齢が大きいほどクリープは減少する 3. コンクリートが置かれる周りの温度が高いほど また湿度が低いほどクリープ変形は大きくなる 4. その他 セメントの種類 骨材の品質 試験体の寸法なども影響を与える クリープ現象は多くの材料が持っている性質ですが 特にコンクリートは他の材料に比べてその値が大きくて プレストレスの時間的減少の原因の 1 つになるため 設計で無視することができません 普通のコンクリート構造物には主に 自重によってクリープ現象が発生しますが PC 構造物ではプレストレスによって追加的にクリープ現象が発生します 規準では一定の軸方向応力 σ =1 をコンクリート材齢 ひずみを J (, tt0) と仮定します t 日に載荷した時 材齢 t 日に発生する 1 軸 ε() t = ε ( t ) + ε (, t t ) = σ J(, t t ) (10.2.1) i 0 c ここで J (, tt0) は単位応力が作用するときの総ひずみを意味し クリープ関数と定義します 時間 時間 図 クリープ関数及び特性クリープの定義 図 から確認できるように クリープ関数 J (, tt0) を載荷時の初期弾性変形とクリープ変形の合 計で表すと次のようになります 1 J (, tt) = + Ctt (, ) 0 0 Et ( 0 ) (10.2.2) Ⅱ-10-11

296 Part Ⅱ ここで Et ( 0) は荷重載荷時の弾性係数を Ctt (, ) は材齢 t でのクリープ変形を表し これを特性ク 0 リープといいます J(, tt) またクリープ関数 φ( tt, 0 ) Jtt (, 0 ) = Et ( ) は弾性変形との比率で 次のようになります 0 (10.2.3) ここで φ(, tt0) はクリープ係数で弾性変形とクリープ変形との比率を表し 上記の 2 つの式より特性クリープとクリープ係数は次のような関係が成立します φ (, tt) = Et ( ) Ctt (, ) (10.2.4) Ctt (, ) 0 φ(, tt) 0 = (10.2.5) Et ( ) 0 プログラムではクリープ係数や乾燥収縮ひずみの計算式で CEB-FIP や ACI などで定めている式を用いることができ ユーザーが実験による値を直接入力することもできます ユーザー定義はクリープ係数 クリープ関数 特性クリープの 3 つの中で ユーザーの好きな形式で入力することができます 図 ユーザー定義のクリープ係数指定ダイアログボックス コンクリートのクリープ関数は載荷時間によって それぞれ違う形状を現わします すなわち 要素の 材齢が大きくなればコンクリートの強度増加効果によって弾性係数が増加するので コンクリートの即時 Ⅱ-10-12

297 10. 施工段階解析 変形は荷重の載荷時期が遅いほど小さくなります そして 荷重の載荷時間から任意の時間後の変形は荷重の載荷時期が遅い試験体の方がもっと小さくなります 図 は 上記のような関係を表しています このように載荷時間が遅くなるほど即時変形とクリープ変形が減少することは コンクリートの水和程度と強度発現のためです したがって ユーザー定義でクリープ関数を入力する時はコンクリートの強度発現特性がよく考慮できるように クリープ関数における載荷時間の範囲が時間依存解析で考慮する要素の材齢 ( 載荷時間 ) を含むようにする必要があり 異なる載荷時間のクリープ関数を多く入力するほど正確な解析結果が得られます 図 荷重載荷時間の差によるクリープ関数 表 普通コンクリートのクリープ係数 持続荷重を載荷する時のコンクリートの材齢 4~ クリープ係数 早強セメント 普通セメント 乾燥収縮は部材に発生する応力とは関係ない時間の関数で 一般的に時間 t から t までに発生し 0 た乾燥収縮によるひずみを次のように示します ε (, tt) = ε f(, tt) (10.2.6) s 0 so 0 ここで 生時点です εso は最終時の乾燥収縮係数 f tt0 (, ) は時間の関数 t は観測時点 t o は乾燥収縮の発 Ⅱ-10-13

298 Part Ⅱ クリープの計算方法 クリープは応力が発生した状態から 追加的な応力度の増加なしで変形が発生する現象で 応力の履歴と時間が重要な要因として作用します クリープの特性として荷重が載荷された時点で最も大きく発生して 時間が経つほど急激に減少する傾向があります クリープを正確に考慮するためには 応力の時間に対する履歴と時間によるクリープ係数を使用しなければならないですが ずべての部材の応力の履歴を保存して すべての応力履歴に対してクリープを計算することは データ保存量と計算量を大きく増加させるので プログラム内部ではクリープを適切に計算する方法を採用しています クリープは非力学的変形ですので 拘束条件によって 応力は発生せずに変形のみ発生する場合もあります 一般的にクリープを考慮する方法では 要素別にクリープ係数を各解析段階で直接入力して現在まで発生した要素の応力を直接用いる方法と クリープの特性関数を数式化して応力と時間に対する積分概念を用いて計算する方法があります 前者は各段階で要素別クリープ係数を算定して入力しなければならにし 後者はプログラム内部で規準によるクリープ係数を使用して応力履歴との積分式からクリープ量を計算して使用します プログラムでは上の 2 つの方法をすべて使用できるようにしているし 1つの要素で 2 つの方法が入力された場合は要素別にクリープ係数を入力した方法が優先されるようにしています 全体的に1つの方法を用いるのが妥当ですが 最後の段階での 20 ~30 年程度の時間を取り入れる場合や特定の要素に対してクリープ荷重を考慮しようとする場合は 2 つの方法を適切に併用して使うことができます 要素別のクリープ係数を算定して直接入力する方法は クリープ係数の算定方法によって結果が変わりますので 応力履歴と時間に関する十分なデータに基にクリープ係数を算定しないと近似的な値を求めることができません しかし 経験や実験などで各段階でのクリープ係数をすべて知っている場合は直接入力して使用するのが効率的な場合もあります 各施工段階で要素別クリープ係数を入力したクリープ荷重グループをアクティブすると 入力されたクリープ係数と現在までに発生した応力を用いてクリープ荷重を計算します この方法はユーザーがクリープ係数を直接入力することで 荷重の大きさがよく理解できて使用が簡単ですが クリープ係数を算定しなければならないという難しさがあります クリープ係数を用いてクリープ荷重を計算する方法は次のようになります ε (, tt) = φ(, tt) ε ( t) : クリープひずみ (10.2.7) c Ⅱ-10-14

299 10. 施工段階解析 P = E() t c (, t t0 ) da A ε : クリープ変形による荷重 (10.2.8) ここで ε ( t ) 0 φ (, tt) 0 : 時間 t 0 での応力度によるひずみ : 時間 t 0 から t までのクリープ係数 次は クリープ特性関数を数式化して応力と時間に対する積分を使用する方法です 任意の時間 t 0 での全体クリープ量を時間 t までの各段階で発生する応力によるクリープ量の重ね合わせ積分で示す と次のようになります ここで c ( ) () = (, ) σ t t C t t t dt t 0 ε (10.2.9) t0 ε () t : 時間 t でのクリープひずみ c Ct (, t t ) : 特性クリープ 0 0 t 0 : 荷重載荷時点 上式で応力は各段階で一定だと仮定すると 式 ( ) のように全ひずみを段階別に区分したひずみの合で表現することができます 1, = n cn Δ jctj tn j j= 1 ε σ (, ) ( ) Δε cn 上式を用いて時間 t n ~t n-1 の間に発生するクリープひずみの増分 (, になります n 1 n 2 cn, cn, cn, 1 j j n j j j n j j= 1 j= 1 ) を整理して表すと下のよう Δ ε = ε ε = Δσ Ct (, t ) Δσ Ct (, t ) ( ) 特性クリープを次のように Dirichlet 級数の degenerate kernel で表現すると応力の全体履歴を保存する必要はなくて クリープによる増分ひずみを計算することができます ここで m ( t t0 )/ Γi Ct ( 0, t t0) = a( 0) 1 i t e ( ) i= 1 a ( t ) : 荷重載荷時間 t 0 に係わる特性クリープ曲線の初期形状に係わる係数 i 0 Γ i : 時間の経過に伴う特性クリープ曲線の形状に関する値 Ⅱ-10-15

300 Part Ⅱ 上の特性クリープ数式を導入して 新規に増分ひずみを整理すると次の式のようになります 2 ( 0)/ Γ Δ ( 0)/, = m n Δ t t Γ ( ) i + 1 ( 1) 1 t t εcn σ jai tj e σ n ai tn e i i= 1 j= 1 ここで m ε cn, Ain, 1 ( t t0 )/ Γi e ( ) i= 1 Δ = n 2 ( t t0 )/ Γi in, = Δ σ j i j +Δσ n 1 i n 1 j= 1 A a ( t ) e a ( t ) A = A e +Δσ a ( t ) ( t t 1 )/ Γ n i in, in, 1 n 1 i n 1 A = Δσ a ( t ) i,1 0 i 0 上記のように 各段階の要素の増分ひずみは 前段階で発生する応力と前段階までに修正された応 力の累積値を用いて計算することができます この方法は 応力の変化を考慮した比較的に正確な解析ができて ユーザーは必要な物性値だけ入力すればクリープ係数を別度に計算しなくても内部で自動的に計算される長所を持っています しかし 規準で提案した式を使用しますので ユーザーが経験による値を要素に直接入力することができないし 特定の要素に特定のクリープ値を入力することができない問題があります そして この方法は解析の時間間隔に大きく影響を受けます 一般的な施工段階は所要時間が大きくないので解析に問題ないですが 1つの段階で大きい時間間隔を入力した場合は内部的に時間間隔を作ってクリープの効果を適切に計算するようにしなければなりません クリープ特性のために時間間隔はログスケールで分割するのが望ましいし プログラムでは間隔個数を入力すれば自動的にログスケールで分割する機能を持っています 妥当な時間間隔数は決まってないですが 細かくすればするほど正解に近づくので 大きい時間間隔が導入する段階は適当な間隔で分割したほうがいいです Ⅱ-10-16

301 10. 施工段階解析 乾燥収縮の概念 乾燥収縮はコンクリート部材が時間によって収縮する現象で 各種示方書で規定する乾燥収縮特性曲線を使って解析に反映しています フレーム部材の場合は長さ方向の乾燥収縮だけ考慮しますが面や立体の場合は 2 軸や 3 軸まで含めています プログラムでは 乾燥収縮解析は CEB-FIP 規準 ACI 規準 道路橋示方書で 実験データを使用したユーザー定義などを使用した乾燥収縮特性曲線を使用して施工段階の時間経過に対してひずみを計算して該当段階での乾燥収縮ひずみで使用します ε ( t, t ) = ε ( t, t ) ε ( t, t ) sh 2 1 sh 2 0 sh 1 0 ε ( t sh 2, t 1) : 施工段階 t1 から t 2 間での乾燥収縮ひずみ ε ( t, t ) : 部材の材齢 t0 から t 1 間での乾燥収縮ひずみ sh 1 0 ε ( t, t ) : 部材の材齢 t0 から t 2 間での乾燥収縮ひずみ sh 2 0 乾燥収縮による荷重は弾性係数 断面積 乾燥収縮ひずみの積で計算して 軸方向のみ生成します F primary = EAε ( ) sh 乾燥収縮変形は温度 クリープによる変形のような自発的な変形ですので 断面力計算時のひずみは荷重によるひずみから乾燥収縮によるひずみを引いて計算します Fsec ondary = EA( ε εsh) = F Fprimary ( ) ですので 軸方向拘束がない構造物での乾燥収縮による効果は断面力を生成せずに変位のみ発生さ せます 外部荷重がなくても拘束条件による乾燥収縮によって発生する断面力はクリープ変形を発生さ せることができます 乾燥収縮変形は拘束条件と時間の影響を受けます Ⅱ-10-17

302 Part Ⅱ 時間による弾性係数の変化 コンクリートの圧縮強度と弾性係数は時間によって変わるので時間が経過した後でコンクリート構造物の固有強度を発現することになります 実際 PC 構造物や橋梁の施工ではコンクリートの初期材齢を正確に予測して 計画された構造物の形状と強度を持つようにするためにはこのような強度増加効果を合理的に表現することは必ず必要です 韓国の道路橋示方書では コンクリートの圧縮強度と弾性係数を次のように提案しています t fck () t = f91 a + b t ( ) ( コンクリート圧縮強度 30Mpa 以下 単位質量 (W c ) が 1450~2500 kg/m 3 ) E t = W f t Mpa ( ) 1.5 ( ) ( ) ( ) c c ck ( コンクリート圧縮強度 30Mpa 以下 単位質量 (W c ) が 1450~2500 kg/m 3 ) E t = W f t + Mpa ( ) 1.5 c( ) c ck( ) 7700 ( ) ここで f 91 : 91 日平均圧縮強度 fck () t : 任意時間 t 日の圧縮強度 E () c t : 材齢 28 日の弾性係数 Ⅱ-10-18

303 10. 施工段階解析 強度発現関数 プログラムではコンクリート部材の材齢による弾性係数の変化を考慮することで 強度発現効果を含めて解析することができます 図 のように ACI CEB-FIP または コンクリート標準示方書によるコンクリートの強度発現関数を定義することができ ユーザーが直接入力することもできます プログラムではこのように定義した強度発現関数を参照して それぞれの施工段階で定義した時間の経過に伴うコンクリートの強度変化を自動で計算して解析を遂行します On-line Manual の " モデル > 材料 & 断面 > 時間依存性材料で連結 " を参照 図 で定義した時間依存性材料 ( クリープ 乾燥収縮 強度発現 ) は 一般材料との連結を通じ て解析に適用することができます 図 規準によるコンクリートの強度発現関数定義 Ⅱ-10-19

304 Part Ⅱ 時間依存性材料データの入力手順 プログラムでコンクリートの乾燥収縮と長期たわみを考慮した建築構造物の施工段階解析や水和熱 解析を遂行する場合 要素の材齢による時間依存性材料特性をモデルデータに入力しなければなりま せん 時間依存性材料データの入力方法は次のようになります 1. モデル > 材料 & 断面 > 時間依存性材料 ( クリープ / 乾燥収縮 ) から乾燥収縮と長期たわみ に対する材料データを定義する 材料の特性を定義するための規準選択 2. 規準選択ボックスでユーザー定義を選択して適用するには まずモデル > 材料 & 断面 > 時間依存性材料 ( クリープ / 乾燥収縮 ) 関数でユーザーが直接クリープと乾燥収縮関数 を定義しなければならない 3. モデル > 材料 & 断面 > 時間依存性材料 ( 圧縮強度 ) で時間によるコンクリートの弾性係数 変化を定義する コンクリートの弾性係数変化 Ⅱ-10-20

305 10. 施工段階解析 4. モデル > 材料 & 断面 > 時間依存性材料で連結で時間依存した材料特性を既に入力さ れた材料データに割り当てる 5. 時間依存性材料で連結ダイアログ Ⅱ-10-21

306 Part Ⅱ 10.3 施工段階の定義及び構成 プログラムではベースステージと施工ステージ そして最終施工ステージの 3 つのステージが存在し 各ステージの特性は次のようになります ベースステージ 施工段階が定義されてない状態では一般的な解析が遂行されて 施工段階が定義される と解析は遂行できなくて構造モデリング及び要素グループ 境界条件グループ 荷重グル ープの定義と構成が行われる段階ステージ 施工ステージ 施工段階荷重に対する解析が実際に行われるステージで 該当のステージでアクティブに なっている境界条件グループと荷重グループに該当する境界条件及び荷重条件を入力 することができるステージ 最終ステージ 施工ステージの最終ステージで 施工段階荷重の他に一般荷重及び応答スペクトル解析 などの特殊解析が遂行されるステージ 各施工段階は要素グループ 境界条件グループ 荷重グループのアクティブと非アクティブの定義 によって構成されます したがって 各グループは同じ施工段階でアクティブ化または非アクティブ化さ れる要素 境界条件 荷重条件などの集合にしなければなりません 各施工段階ごとに反映できる内容は次のようになります 1. 任意の材齢を持つ部材の生成及消去 2. 任意の載荷時点を持つ荷重の載荷及び消去 3. 境界条件の変化 プログラムで使われる施工段階構成の概念は図 のようになります 施工段階は各段階別期間だけで簡単に定義することができます 期間が 0 の施工段階も可能で 施工段階が定義されれば基本的に 1 番目ステップと最終ステップが生成されます 実質的な要素 境界条件及び荷重の生成と消去はそれぞれのステップで行われます Ⅱ-10-22

307 10. 施工段階解析 1 日 10 日 20 日 30 日 40 日 ステージ期間 ステージ期間 施工段階期間 1 番目ステップ 追加ステップ 最終ステップ 1 番目ステップ 最終ステップ 要素 荷重 境界条件の生成及び消去 遅延時間を持つ荷重の生成及び消去 要素 荷重 境界条件の生成及び消去 図 施工段階構成の概念 基本的に要素の生成及び消去 境界条件の変化 荷重の載荷及び消去などのすべての変更事項は各施工段階の 1 番目ステップで行われます したがって 実際施工中に様々な原因によって構造要素の変化が発生すれば それを考慮するための施工段階を生成させなければなりません すなわち 構造要素の変化が多いほど施工段階の数は多くなります 要素及び境界条件などの解析モデルの変化は各施工段階の 1 番目ステップでのみ行われます しかし 荷重の変化は解析の便宜のために施工段階の中で追加ステップを作ってそのステップに荷重を載荷及び消去することで考慮できるようにしています すなわち 任意の施工段階で遅延時間を持つ荷重が載荷する場合がありますが この機能を使えば解析モデルの変化なしで仮設材の設置や消去による荷重の変化を新しい施工段階を生成しなくても考慮することができます また 施工段階の中で追加ステップを多く定義すれば クリープと乾燥収縮を考慮した時間依存解析より 正確な解析結果を得ることができます しかし 追加ステップの定義が多すぎると 解析時間が増加して非効率的になる場合もありますので注意しなければなりません 特に施工段階解析条件 ( 解析 > 施工段階解析制御 ) で時間依存性材料 ( クリープ 乾燥収縮 弾性係数の変化 ) を考慮しないように設定して解析を行うと 追加ステップが多くなっても解析結果には何の影響も与えません Ⅱ-10-23

308 Part Ⅱ 任意の施工段階で指定した材齢を持つ要素が生成された後で 各施工段階に持続時間が経過するようになります 特定施工段階で 要素の材料特性は時間の経過によって変化するようになりますが プログラムではこのように変化する材料特性を各施工段階で入力しなくても要素の材齢さえ入力すればあらかじめ定義した時間依存性材料 ( モデル > 材料 & 断面 > 時間依存性材料 ) を参照して内部的に自動計算して考慮します 同じ施工段階で同じ材齢を持つ 2 つの要素を生成したら その 2 つの要素には常に同じ時間が経過するようになります しかし 一緒に生成された要素でも特定の要素だけ時間が経過するようにする必要があります この場合は時間荷重 ( 荷重 > 施工ステージ用の時間荷重 ) 機能を使えば 任意の施工段階で特定の要素だけ時間の経過が反映できるようにすることができます 任意の施工段階に要素を生成する場合は 生成する要素の材齢を指定しなければなりません 材齢が 0 の要素を生成することはコンクリートの打込みの瞬間から考慮するということです しかし 一般的に構造物をモデリングして解析する時 型枠などの仮設構造物はモデルに含まれないため 硬化されない状態のコンクリートを解析するということは 解析上意図しない結果をもたらす恐れがあります 特に材齢が 0 の要素を生成して時間の経過による強度発現を考慮して解析を行うとすれば コンクリート打込み後 24 時間までは強度を発現することができないので 意味のない変位が計算される恐れがあります したがって 施工段階をモデリングする時は一般的に型枠の中にある硬化される前のコンクリートは仮設構造物と一緒に荷重で考慮して 型枠を取り除いた後 実質的な要素が生成されると考えるのが正しい解析方法です 任意の施工段階で要素を生成した場合は以前の施工段階の荷重履歴によって構造物に発生した変 位や内部応力は影響を与えません すなわち 新しく生成される要素はその施工段階で構造物がどの ような荷重を受けているかに関わらず要素の内部応力が '0' の状態で生成されます 要素を消去する場合に指定する応力の再分配率が 100% の場合は 消去する要素の内部応力が残っている構造物にすべて再分配されて構造物を成している他の要素の応力が変わります しかし 応力の再分配率が 0% の場合は消去する要素の内部応力が残っている構造物に伝達しないので 他の要素の応力も変わりません この応力再分配率を適当に調節すれば要素を消去する際に残っている要素に伝達する応力の量を調節することができます この機能は施工段階解析で 各段階で要素が消去されても応力の再分配が完全に終わってない状態を反映する際に使います Ⅱ-10-24

309 10. 施工段階解析 境界条件をアクティブにする時のオプションで " 元の位置 " を選択すると 境界条件がアクティブになる節点の以前の施工段階での変位を反対方向にして強制変位荷重を付与して節点の位置を元の位置になるようにした後 境界条件を生成します 一方 アクティブにする時のオプションを " 変形後の位置 " で選択すると 境界条件がアクティブになる節点の初期位置ではない変形された位置に境界条件を生成してくれます 施工段階を考慮した時間依存解析では 前の段階で発生した構造系の変化及び荷重履歴が 後の施工段階の解析結果に影響を与えます したがって プログラムではそれぞれの施工段階解析モデルを独立モデルとして作って解析を遂行することではなくて 施工段階別に解析モデルまたは荷重の変更されたものだけ入力して解析をした後 前の段階の解析結果に累積して解析結果を出力する累積モデル概念を用いています したがって 任意の施工段階に荷重を載荷すれば 以後の施工段階で載荷された荷重を消去しない限り 続いて荷重が加えられた状態になります 要素の生成も 任意の施工段階で必要なすべての要素を生成させるのではなく その施工段階に必要な要素だけ生成します 要素は一度生成されるとまた生成することができないし 既に生成された要素を削除することはできます 施工段階解析に使われた荷重のタイプが " 施工ステージ荷重 " の場合は施工段階だけ使用できますが ほかの荷重は施工段階が終わった後で一般解析に適用されます 施工段階解析で使用する荷重条件がいくつあっても図 のように1つの解析結果で組み合わされます これは 施工段階解析では 時間依存性材料の非線形性によって荷重ケースの線形組み合わせができないためです 施工段階解析を遂行すると図 のように累積された施工段階解析結果と最大値結果 最小値結果が生成されます このように生成された施工段階解析結果は完成系モデルに対する一般解析結果と組み合わせすることはできます 施工段階解析を遂行してみると 最後の施工段階 ( 完成系 ) ではない任意の中間段階で構造的に重要な施工段階が発生する場合があります このような重要な中間施工段階には特別な荷重を考慮して様々な解析を遂行する必要があります プログラムで " 最終ステージ " 指定機能を利用して任意の中間施工段階を完成系で設定することがえきます " 最終ステージ " で指定された施工段階は プログラム内部では完成系として考慮するので 一般荷重を加えて解析を遂行することもできますし 時刻歴応答解析 応答スペクトル解析などプログラムの多様な解析機能を適用することができます Ⅱ-10-25

310 Part Ⅱ ベースステージ ( 荷重ケース1) ( 荷重ケース2) ( 荷重ケース3) ( 荷重ケース4) ( 施工段階 ) ( 施工段階 ) ( 固定荷重 ) ( 固定荷重 ) 荷重組合わせ (LC3+LC4+CSLC) 施工ステージ 1 施工段階解析 施工ステージ 2 施工段階解析 最終ステージ 施工ステージ 3 施工段階解析 一般解析 一般解析 解析結果 (Min) 解析結果 (Sum) 解析結果 (Max) 図 施工段階解析結果との荷重組合せ概念図 Ⅱ-10-26

311 10. 施工段階解析 (1) 施工段階解析手順 施工段階解析用の一般的なモデリングの手順は次のようになります 1. 境界条件と荷重条件を除いた構造物をモデリングする 2. モデル > グループ > 要素グループの定義で要素グループを定義し 同時に施工または除 去される要素を要素グループに割り当てる 3. モデル > グループ > 境界グループの定義で境界条件グループを定義する 4. モデル > グループ > 荷重グループの定義で荷重グループを定義する 5. 荷重 > 施工段階解析データ > 施工ステージの設定でボタンをクリックして 施工段階を構成する いくつかの施工段階を先に定義した後工段階を構成することもできる ボタンをクリックして持続期間 (duration) が一定の ボタンをクリックしてそれぞれの施 施工ステージの設定ダイアログボックス 6. 施工ステージの設定ダイアログボックスで施工段階の持続期間 (duration) を入力して 解 析結果の保存可否を選択する 解析モデルが変わらない状態で時間差を持つ荷重が載 荷される場合には荷重が載荷される時点にあたる追加ステージを定義する Ⅱ-10-27

312 Part Ⅱ 施工ステージの設定ダイアログボックス 7. 要素タブのグループリストで生成または消去する要素グループを選択してアクティブ化ま たは非アクティブ化させる 材齢は生成される部材の初期材齢を意味し 要素断面力再 分配率は消去する部材の断面力再分配率を意味する 8. 境界タブのグループリストで追加または消去される境界条件グループを選択してアクティ ブ化または非アクティブ化させる 9. 荷重タブのグループリストで追加または消去される荷重グループを選択してアクティブ化 または非アクティブ化させる アクティブ日数と非アクティブ日数は荷重が載荷または除 去される時点を意味する 10. 施工段階の構成を完了したら施工ステージツールバーで施工段階を選択しながら各施 工段階の境界条件グループと荷重グループにあたる境界条件と荷重を入力する Ⅱ-10-28

313 10. 施工段階解析 上のモデリング手順はユーザーが施工段階を段階別に直接指定する方法を記述したものであり 荷重 > 施工段階解析データ > 建物用の施工ステージウィザード機能を利用すれば施工段階解析 に必要な各種データを自動生成することができる 図 施工ステージウィザードダイアログボックス 図 施工ステージウィザード機能を利用して自動生成された施工段階 Ⅱ-10-29

314 Part Ⅱ リアルタイムディスプレイ ステージツリー 図 施工段階に対する解析モデルと荷重条件変化をステージツリーと連係してリアルタイム表現 Ⅱ-10-30

315 11. 水和熱解析 11. 水和熱解析 コンクリート構造物の大型化及び施工方法の発展による大量かつ急速な施工の増加で セメントの 水和熱による温度変化と温度応力の発生は構造物にひび割れを発生させて 構造物の耐久性だけで なく構造的な安定性まで影響を及ぼす要因となります このような問題を解決するために マスコンクリート打設時の温度と応力分布を計算してひび割れを 適切に制御仕様とする目的で水和熱解析を遂行します 水和熱解析の対象となるマスコンクリート構造物の寸法は構造形式 使用材料 施工条件によって 異なりますが およそスラブが 80~100cm 以上 下端が拘束されている壁は厚さ 50cm 以上が対象とな ります 水和熱が引き起こす温度ひび割れは 初期に表面と中心部の温度差で発生する表面ひび割れとコンクリート打設が終わった後でセメント水和熱による温度上昇が最高値に達した後で温度降下による収縮が外的に拘束されて発生する貫通ひび割れで区分することができます このような水和熱解析は大きくセメント水和熱過程で発生する発熱 対流 伝導などによる温度分布解析と 発生した温度 材齢による弾性係数の変化 クリープ及び乾燥収縮などによる応力解析で区分することができます 各解析で考慮する事項は次のようになります Ⅱ-11-1

316 Part Ⅱ 11.1 熱伝逹解析 セメントの水和過程で発生する発熱 伝導 対流などの時間による節点温度変化を計算します 熱伝 逹解析で使用する主要概念とプログラムで考慮している事項は次のようになります 伝導 流体の場合は分子の運動や直接的な衝突 固体の場合は電子の移動によって高温区域から低温 区域にエネルギー交換が起きる方式の熱伝逹です 伝導で伝逹される熱伝逹率は熱流束に垂直な面 積にその方向の温度勾配の積で比例します (fourier's law) ここで T Q = κa x x (11.1.1) Q : 熱伝達率 x A : 面積 κ : 熱伝導率 T : 温度勾配 x 一般的に飽和されたコンクリートの熱伝導率は 1.21 ~ 3.11 程度で 熱伝導率の単位は 2 kcal/ m h o C です コンクリートの熱伝導率は温度が増加すると減少する傾向がありますが 大気温度の範囲では大きい影響はありません Ⅱ-11-2

317 11. 水和熱解析 対流 流体が固体の表面または流路内を流れる時 流体と固体表面に温度差があると表面における流体 の相対運動の結果 流体と固体の表面間で熱が伝逹されます このような熱伝達方法を対流と言いま す 流体を表面上に強制的に流すように流体流動を人為的に起こす時の熱伝逹を強制対流による熱伝逹といい 流体の流動は流体内部の温度差で生ずる密度差による浮力効果のため発生する熱伝逹を自由対流による熱伝逹といいます このような熱伝逹では温度場が流体流動の影響を受けるため 実際に温度分布と対流熱伝逹を決定することは非常に複雑な作業です 一般的に温度 T の固体表面とその表面を流れる平均温度 T の流体との間の熱伝達計算は 熱伝 達係数 h を用いて次のように定義します c q= h (T T ) (11.1.2) c 熱伝逹係数 (h c ) は流れの種類 物体の幾何学的形状及び流れの接触面積 流体の物理的性質 対 流接触面の平均温度 位置などによって複雑に変化するため 定式化することは非常に難しいです 一般的にマスコンクリートの温度解析で適用する対流問題はコンクリート表面と大気との熱交換で行 われるので 大気の風速関数で次のような経験式を使用します hc = hn + hf = v (m/sec) (11.1.3) 2 ここで 熱伝逹係数 ( 対流係数 ) の単位は kcal/ m h o C です Ⅱ-11-3

318 Part Ⅱ 発熱 水和過程で発生する熱量をモデリングするためのもので マスコンクリートにおける単位時間当りの単 位体積の内部発熱量は断熱温度上昇式を微分して比熱と密度を掛けて次の式を求めることができます 単位時間当りの単位体積の内部発熱量 ( kcal/ m g h ) α t / 24 = ρ ckα e (11.1.4) 断熱温度上昇式 ( o C ) αt T K(1 e ) = (11.1.5) ここで T : 断熱温度 ( o C ) K : 断熱の最大上昇温度 ( o C ) α : 反応速度 t : 時間 (days) Ⅱ-11-4

319 11. 水和熱解析 パイプクーリング パイプクーリングはコンクリート構造物の中にパイプを埋設して パイプの中に低温の流体を流して熱 交換させて水和熱による温度上昇を減少する方法です 熱交換の形は流体とパイプ表面間の対流によるもので パイプ内の流体温度はパイプを通過しなが ら上昇するようになります 流体とパイプの間の対流による熱伝逹量は次のようになります ここで q conv = h p A (T T s s m ) = h 2 h : パイプの流水対流係数 ( kcal/ m h o C ) p A s : パイプの表面積 (m2 ) T s, T m : パイプ表面と冷却水の温度 ( o C ) P Ts,i + Ts,o Tm,i + T As 2 2 m,o (11.1.6) 初期温度 コンクリート打設時の温度で 水 セメント 骨材の平均温度であり 解析の初期条件になります 外気温度 コンクリート打設後の養生過程での外気温度を意味します 定温 Sin 関数 及び時間に対する温度 で入力します Ⅱ-11-5

320 Part Ⅱ 固定温度 熱伝逹解析の境界条件を構成して常に一定の温度を保持するようになります 対流条件や固定温度 を適用しない節点は熱伝逹が全くない断熱状態で解析をすることになります 一般的に対称モデルを 使用する場合は対称面で断熱境界条件を使用します 下の式は熱伝逹解析で使用する基本平衡方程式で 解析結果として各時間毎の節点温度を求めることができます T & + (K + H)T = FQ + Fh Fq (11.1.7) C + C = ρ cnin jdxdydz : Capacitance (Mass) (11.1.8) V N N N N N N K = k + k + k dxdydz i j i j i j xx yy zz :Conduction (11.1.9) V x x y y z z H = F Q hninjdsh :Convection ( ) S = N Qdxdydz : Heat Source/Sink ( ) V i F = ht NdS :Convection ( ) h i h S ここで F T : 節点温度 ρ : 密度 c : 比熱 k xx k yy h : 対流係数 Q : 発熱量 q : 熱流束 = qnds : Heat Flux ( ) q i q S k zz : 熱伝導率 Ⅱ-11-6

321 11. 水和熱解析 11.2 熱応力解析 熱伝逹解析から求めた節点温度分布と時間と温度による材料の変化 時間による乾燥収縮 時間と 応力によるクリープなどを考慮してマスコンクリートの各段階での応力を計算します 熱応力解析の主要 概念とプログラムで考慮する事項は次のようになります 温度と時間による等価材齢 積算温度 コンクリートの硬化過程で発生する材質特性の変化は温度と時間の関数で示すことができます この ような現象を反映するために等価材齢と積算温度という概念を使います 弾性係数計算時には日本コンクリート標準示方書 (JSCE, 2002) 及び日本道路橋示方書 (Japanese standard, 2002) に従う場合は絶対材齢を使って残り規準は等価材齢を使用しました そして クリープと乾燥収縮計算の時は日本コンクリート標準示方書及び日本道路橋示方書に従う場合は等価材齢を使って残り規準では絶対材齢を使用しました 等価材齢は基本的に CEB-FIP モデル規準を使って算定し 日本道路橋示方書に従う場合のみ該当規準で定義する方法を使用しました 積算温度は Ohzagi 式を使用しました (1) CEB-FIP モデル規準での等価材齢 ここで t eq t eq : 等価材齢 (days) n 4,000 = Δti exp i= T( Δti ) / T (11.2.1) 0 Δ t i : 各解析段階での時間間隔 (days) T( Δ t i ): 各解析段階での温度 ( C ) T 0 : 1 (2) 日本道路橋示方書 (Japanese standard, 2002) での等価材齢 ここで t eq t eq : 等価材齢 (days) T( Δti ) + 10 = Δti (11.2.2) 30 Ⅱ-11-7

322 Part Ⅱ Δ t i : 各解析段階での時間間隔 (days) T( Δ t i ): 各解析段階での温度 ( C ) (3) Ohzagi 式による積算温度 n i = 1 i ( ( ) 10) M = Δt β T Δt + i β = Δ + + Δ + + (11.2.3) ( T( ti) 10) 0.006( T( ti) 10) 0.55 ここで M : 積算温度 ( o C ) Δ t i : 各解析段階での時間間隔 (days) T( Δ t i ) : 各解析段階での温度 ( o C ) Ⅱ-11-8

323 11. 水和熱解析 等価材齢と積算温度を用いたコンクリートの圧縮強度計算方法 (1) コンクリート標準示方書 (1996) ここで a, b : セメント種別係数 t fcu () t = d() i fck a + bt (11.2.4) di () : 材齢 28 日に対する 91 日の圧縮増加率 (2) ACI 規準 ここで t σc() t = σc(28) (11.2.5) a + bt a, b : セメント種別係数 eq σ c(28) : 28 日の圧縮強度 (3) CEB-FIP モデル規準 28 σc() t = exp s 1 teq / t 1 1/2 σ c(28) (11.2.6) ここで s : セメント種別係数 σ c(28) : 28 日の圧縮強度 t 1 : 1 day (4) Ohzagi 式 σ () t = σ y (11.2.7) c c(28) ここで 2 y = ax + bx+ c x = 2.389ln( M / 3.5) 1.0 a, b, c : コンクリート種別係数 σ c(28) : 28 日圧縮強度 Ⅱ-11-9

324 Part Ⅱ 温度の変化量による変形 熱伝逹解析から求めた各段階の節点温度の変化を使用して温度による変形と応力を計算します 乾燥収縮による変形 コンクリートの初期養生が終わって型枠を外すようになると 乾燥収縮が始まり これに伴う変形と応 力が追加で発生します プログラムでは ACI 規準と CEB-FIP モデル規準を用いてセメントの種類 構 造物の形状 時間による乾燥収縮量などを計算して解析に考慮するようにしました クリープによる変形 コンクリートに応力が発生すると 時間の経過とともにクリープ変形も大きくなって構造物に追加的な変形と応力が発生します プログラムでは ACI 規準と CEB-FIP モデル規準を用いてクリープ効果を考慮するようにします この際に 温度によって発生する応力が時間によって線形で変化すると仮定してクリープ変形を計算します Ⅱ-11-10

325 11. 水和熱解析 11.3 水和熱解析手順 1. モデル > 材料 & 断面 > 時間依存性材料 ( クリープ / 乾燥収縮 ) と時間依存性材料 ( 圧縮強度 ) を選択して時間依存性材料を入力して モデル > 材料 & 断面 > 時間依存性材料で連結で一 般部材に時間依存性材料を割り当てる 2. 荷重 > 水和熱解析データの下位メニューで水和熱解析に必要なデータを入力する 3. 解析 > 水和熱解析制御で積分係数 初期温度 応力出力位置 クリープと乾燥収縮の考慮 可否を入力する 4. 解析 > 解析実行メニューまたは 解析実行をクリックして解析を実行する 5. 解析が完了した後 等高線図 グラフ 動画などで解析結果を確認する 図 水和熱解析モデル Ⅱ-11-11

326 Part Ⅱ 図 熱特性及び時間依存性材料ダイアログボックス 図 分割打設を考慮するための施工ステージダイアログボックス ( 各施工段階の要素 境界条件などを定義 ) Ⅱ-11-12

327 11. 水和熱解析 1st Stage 2nd Stage 3rd Stage 図 施工段階別の解析結果グラフ Ⅱ-11-13

328 12.PC 解析 12. PC 解析 12.1 プレストレスコンクリート解析 プレストレストコンクリート構造物の挙動は作用する有效プレストレスによって大きく変化されます したがって プレストレストコンクリート構造物を解析する際にそれぞれの施工段階毎に加えられる多様な荷重でテンドンの引張力変化を正確に計算するのが重要です テンドンの引張力はテンドンを緊張する方法による様々な原因によって損失されます プレテンション方式の場合 引張力の損失を段階毎にみると 引張力が導入される前はコンクリートの乾燥収縮及びテンドンのリラクゼーションによる損失が発生して 引張力を導入する時はコンクリートの弾性変形によって損失が発生し 引張力を導入した以降はコンクリートのクリープ 乾燥収縮及びテンドンのリラクゼーションと荷重及び温度変化による損失が発生します ポストテンション方式の場合は 引張力を導入する際にテンドンとシース管の摩擦による損失 定着具の活動による損失が発生し 引張力が導入された後はコンクリートのクリープ 乾燥収縮及びテンドンのリラクゼーションと荷重及び温度変化によって損失が発生します プログラムで プレストレスコンクリート解析を遂行する場合 考慮できる引張力の損失は次のようになります プレストレスを導入する際に発生する即時損失 (Instantaneous Loss) プレストレスを導入した後で発生する時間的損失 (Time Dependent Loss) プログラムではより正確な解析のためにテンドンを設置して緊張されて定着されるまでの断面積 曲げ剛性などの特性値を計算する際に全断面からダクトの面積を除いた純断面を使用し テンドンが定着された後はテンドンの断面積を考慮した換算断面を使用します テンドンを考慮した換算断面はテンドンの剛性がコンクリートより大きいので断面の図心が変わって 変わった図心を基準としたテンドンの偏心を計算してテンドンの引張力を計算することになります プログラムでは テンドンを解析モデルで考慮する際にトラスなどの要素でモデリングしなくてテンドンによるプレストレスを等価の荷重で計算して考慮します この際に 上記で説明したようにテンドンの剛性は断面計算時に含まれます 等価荷重を計算するためにテンドンの引張力は施工段階ごとにさまざまなプレストレス損失の原因を考慮して計算していますので 解析モデルで載荷される等価荷重にはプレストレスの損失がすべて反映されます Ⅱ-12-1

329 Part Ⅱ プログラムで プレストレスコンクリートの解析を遂行するための手順は次のようになります 1. 構造物をモデリングします オンラインヘルプの 解析 > 解析制御 > 施工段階解析制御 参照 オンラインヘルプの 荷重 > 静的荷重 > プレストレス >P C 鋼材の材料と断面 参照 オンラインヘルプの 荷重 > 静的荷重 > プレストレス > PC 鋼材の配置形状 参照 2. 時間依存材料及び背負う段階を定義した後で施工段階ごとに要素 境界条件 荷重の変化を定義して施工段階を生成します 3. テンドンの断面積 材料 限界強度 ダクトの直径 摩擦係数など 使用するテンドンの属性を定義します 4. 入力したい部材にテンドンを割り当てして テンドンの配置形状 ( プロファイル ) を定義します 5. テンドンに作用する引張力を定義して 緊張する施工段階から緊張力を入力します 6. 解析を遂行します オンラインヘルプの 荷重 > 静的荷重 > プレストレス > プレストレス梁荷重 参照 Ⅱ-12-2

330 12.PC 解析 12.2 プレストレスの損失 テンドンに加えられた引張応力は様々な原因によって減少します テンドンの引張応力が減少すると コンクリートに導入したプレストレスも減少するようになります このようなプレストレスの減少原因は次の ようになります プレストレスを導入する際に発生する即時損失の原因定着装置の活動 (anchorage slip) テンドンとシース管の摩擦コンクリートの弾性変形 プレストレスを導入した後で発生する時間的損失コンクリートのクリープコンクリートの乾燥収縮テンドンのリラクゼーション ポストテンション方式では上記の 6 つのプレテンション損失原因をすべて考慮しますが プレテンション方式でのテンドンとシース管の摩擦は考慮しません プレストレスの即時損失及び時間的損失をあわせたテンドン引張力の全損失量は緊張力の 15~20% の範囲です テンドンのコンクリート応力計算に最も重要なことは即時損失後の緊張力と時間的損失まで終わった後で最終的にテンドンに作用する緊張 力 P です P と P の関係は次のように示すことができます e i e P = RP (12.2.1) e i ここで R をプレストレスの有効率です この有效率は プレテンション方式の場合は R = 0 ポストテンション方式の場合は R = 0.85 です 次は プログラムで考慮しているプレストレス損失方法について説明します Ⅱ-12-3

331 Part Ⅱ 即時損失 (1) 定着装置の活動による損失テンドンの緊張が完了した後で引張端を定着する際に 定着装置により若干の定着部移動が発生します これによってテンドンの引張端付近で引張力の損失が発生しますが このを定着装置の活動による損失といいます このような損失はポストテンション方式だけではなくてプレテンション方式でも発生しますが どの場合で緊張作業時に超過緊張することで補正することができます 一般的に テンドンとシース管の摩擦があるので定着装置の活動による引張力の損失は定着装置の 付近 つまり引張端に近い部材に限定されて 引張端から遠くなるとその影響はありません 図 に示したように 定着部で定着装置の活動によって影響を受ける緊張材の長さ ( l set ) は摩擦損失の関数で 摩擦損失が大きければ短くなり 摩擦損失が小さければ長くなります 定着装置の活動量を Δl として ここで鋼材の断面積 A ) と弾性係数 ( E ) をかければ 図 の三角形部分の ( p 面積と同じようになるので 次の式が成立されます 三角形の面積 0.5ΔPlset = ApE pδl (12.2.2) p 緊張材の単位長さに対する摩擦損失を p としたら 引張力の損失 ΔP は図 から次のように示すことができます Δ P = pl (12.2.3) 2 set したがって 定着部で定着装置の活動の影響を受ける緊張材の長さ ( l set ) は式 (12.2.2) と (12.2.3) から次のように示すことができます A E Δl p p set = (12.2.4) l p 図 ではテンドンの引張力の分布が直線になっていますが 実際では曲線で分布されるので プログラムではこのような引張力の曲線分布を考慮して定着装置の活動によるプレストレスの損失を計 算しています Ⅱ-12-4

332 12.PC 解析 図 定着装置の活動が緊張力に及ぶ影響 (2) テンドンとシース管の摩擦による損失 ポストテンション方式では テンドンとシース管の摩擦によってテンドンの引張力が緊張材の端部から 遠くなると小さくなります このような摩擦損失は緊張材の角度変化による損失である局率損失と 緊張 材の長さの影響による損失であるウォブルによる摩擦損失で分けることができ それぞれ単位角度当た り摩擦系数 (/radian) と単位長さ当たり摩擦係数 k を使って示すことができます 緊張端で P 0 で緊張した場合 テンドンの曲線長さ l ぐらい離れているところの角度変化が α であれば その支点では引張力 P は次のように示すことができます x Px = (12.2.5) ( kl) Pe μα + 0 (3) コンクリートの弾性変形による損失コンクリートにプレストレスを導入するとコンクリートは圧縮されてそのぐらい部材長さが短くなり コンクリートに定着されたテンドンの長さも減りますのでテンドンの引張応力も減少されます このような弾性変形による損失はプレテンション方式やポストテンション方式ですべて発生しますが その形態は少し違います プレテンションの場合は 引張台の緊張力を部材に加える瞬間に弾性収縮が発生してテンドン長さ が短くなってプレテンションの損失が発生します つまり 図 のように引張材に加える緊張力 P は実際の部材に加える緊張力 P と違います j j Ⅱ-12-5

333 Part Ⅱ 図 弾性収縮による引張力の減少 ( プレテンション部材 ) しかし ポストテンション方式の場合は引張台ではなくて硬化したコンクリート部材を台としてテンドンを緊張します したがって コンクリート部材が短縮することはプレテンション方式と同じですが この際のテンドンの引張力はコンクリート部材が短縮した後で測定しますのでコンクリートの弾性変形による引張力の減少はありません プログラムでは 任意の施工段階で要素を生成した後で緊張力が加えるポストテンション方式とは異なって施工段階でモデリングが不可能なプレテンション方式の場合は コンクリート弾性変形によるプレストレスの損失は考慮しません 従って プレテンション方式で緊張を加える 場合は荷重を入力する際に引張台に加える緊張力 P ではなくて実際に加えられる P i を入力しなけれ ばなりません 多くのポストテンション部材は多くの緊張材が配置されて決まっている緊張手順で緊張して定着することが一般的ですので コンクリートの弾性収縮も順次的に発生します 従って 図 (b) の Tendon1 のように最も先に定着するテンドンはその時点で引張力の減少はないですが 2 番目テンドンを定着するとこの弾性収縮のため図 (c) のように 1 番目テンドンの引張力が減少されます プログラムでは 施工段階ごとにテンドンの緊張による弾性収縮のために発生するプレストレス損失だけではなくて外部荷重による弾性収縮で発生するプレストレスの損失をすべて考慮しています j 図 プレテンションに順次的な導入による引張力の減少 Ⅱ-12-6

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