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章密度汎関数理論 Dnsity Functional Thoy (DFT) 波動関数と簡約密度行列と電子密度 N 電子系分子の電子波動関数 規格化 ( x, x, x,, x ) (.) 3 N ( x, x, x3,, xn) ( x, x, x3,, xn) x x x N (.) 電子の交換に対して反対称 : フェルミ粒子性 ( x x ) ( x x ) (.3) 簡約密度行列 密度行列 : ( ) の積 N 電子系ならばN 個の電子座標を持つ ( x', x', x',, x', x, x, x,, x ) ( x', x', x',, x' ) ( x, x, x,, x ) 3 N 3 N 3 N 3 N 次の簡約密度行列 : 個の電子座標 :(N-) 個の電子座標は積分する ( x', x) N ( x ', x, x3,, xn) ( x, x, x3,, xn) xx3xn (.4) 次の簡約密度行列 :4 個の電子座標 :(N-) 個の電子座標は積分する N( N ) ( x', x', x, x) ( ', ', 3,, N) (,, 3,, N) 3 N x x x x x x x x x x (.5) スピンなしの密度行列 : スピン座標を積分して位置座標だけにする x (, ) ( ', ) ( x', x ) ' (.6) ( ', ',, ) ( x', x', x, x ) ' ' (.7) 電子密度 : 簡約密度行列の対角項 : 個の位置座標の関数 : 電子の存在確率密度の分布 ( ) (, ) N ( x, x, x,, x ) ( x, x, x,, x ) x x x (.8) 3 N 3 N 3 N

簡約密度行列を使ったエネルギー表示 波動関数 で全エネルギーを表現できるように 次と 次の簡約密度行列 と があれば全エネルギーを表現できる 全エネルギー E は 運動エネルギー T 核- 電子間クーロン引力ポテンシ ャル n V 電子- 電子間クーロン反発ポテンシャルV からなる E T V V n T x x x m (.) ( ', ) ( ', ) m x' x ' V v() (, x x) x v() (,) (.) n V x x x x x x ( 4,,, ) (.3) atom Z v() 4 は原子核 の座標 Z は原子番号 (.) 式中の は位置座標 の関数のみを微分し もう一方の ' の関数には作用しない また V n 式中の v() は電子の位置座標 のみで決まる核 - 電子引力ポテンシャル項である 上式から E は つの関数 と の関数であり そのことを次式のように表示する E E, (.4) 関数の関数を汎関数 (functional) と云う 上式は密度行列のエネルギー汎関数である 三体相互作用は存在しないので エネルギーだけでなく あらゆる電子物性は と から計算できる N 個の電子座標をもつ ( x, x, x3,, x N ) の複雑さから開放されるために ( x, x, x 3,, x N ) を忘れて ( x', x ) と ( x', x', x, x ) だけを直接に決めたいと思うのは当然であろう その戦略は簡単である と がとるべき条件の範囲内で (.4) が最小となる と を見つければよい では と がとるべき条件とはどのようなものであろうか 波動関数 の性質から容易に導ける と の性質を示す 電子数は N: ( x, x ) x (, ) ( ) N (.5) を積分したら になる : ( x', x) ( x', x, x, x) x N (.6) 対角項はプラス値になる ( 正定値性 ): ( x, x) ( x, x, x, x) エルミート性 : (.7)

( x', x) ( x, x' ) ( x', x', x, x) ( x, x, x', x' ) (.8) 波動関数の反対称性の痕跡 ; ( x', x', x, x) ( x', x', x, x) ( x', x', x, x) ( x', x', x, x ) (.9) 上述の条件は と が ( x, x, x3,, x N ) に対応するための必要条件である 十分条件ではない (.5)-(.9) などを拘束条件として科して (.)-(.4) 式に変分法を適用して と を求める研究が現在も試みられているが (.5)-(.9) などの条件が完全でないために成功には至っていない 特に の反対称性に対応する条件を N- 表示可能性と呼ばれる 平易に云うと次のようになる は (.5) 式のように (N-) 個の電子座標を積分して消している 消してしまった電子座標が持っていたハズの反対称性をどのように に反映させるのか という問題である 実際に (.5)-(.9) の拘 束条件だけで と を変化させて最小のエネルギーを計算すると 正しいエネルギー値を下回る つまり (.5)- (.9) では拘束条件が足りないのである Hat-Fock 理論を簡約密度行列を使って再構築する Hat-Fock 理論 ( 分子軌道理論 ) は簡約密度行列で書き換えることができる 規格直交化されたスピン分子軌道のセットを { i ( x )} とすると Hat-Fock 波動関数 ( 個のスレーター行列 ) から作った 次の簡約密度行列 (Fock-Diac 密度行列 ) は次式となる N ( x', x) i( x' ) i( x ) (.) i Hat-Fock 法の場合 次の密度行列は 次の密度行列を使って明示的に表現できる ( ', ',, ) ( ', ) ( ', ) ( ', ) ( ', ) x x x x x x x x x x x x (.) Hat-Fock 理論の全エネルギー E は 運動エネルギー T 核 - 電子間クーロン引力ポテンシャル V n 電子- 電子間クーロン反発ポテンシャルV からなる E T V V n T m x x x (.) 再掲 ( ', ) ( ', ) m x' x ' V v() (, x x) x v() (,) (.) 再掲 n V 4 4 ( x, x, x, x ) x x ( x', x ) ( x', x ) ( x', x ) ( x', x ) (.) 上式から E は の関数であることがわかる : つまり以下のように表記できる E E (.3) (.) で与えられる関数の範囲でエネルギーが最小となる を決めれば { ( x )} が決定される i

当然であるが上述の理論は { i ( x )} を決めているのであるゆえ Hat-Fock 理論の範疇である これは 3から説明する密度汎関数法とは異なる 簡約 Schöing 方程式 = Nakatsuji 方程式上節 のように変分法で と を決めるのではなくて と を直接に決定する方程式を作れないだろうか そういう試みも存在する このような方程式は実際に存在し Nakatsuji 方程式と呼ばれている しかしSchöing を解く際に波動関数 の反対称性を別途に考慮しなければならないのと同様に Nakatsuji 方程式を解く際には と の N- 表示可能性の条件を考慮しなければならない それゆえ この研究の進展も阻まれている 次の章では 密度汎関数法 (DFT) と呼ばれる方法を説明する DFT に於いても N- 表示可能性の問題はなんら解決されていない 3 Hohnbg-Kohn の定理 Hohnbg と Kohn が提出したつの定理を紹介する 先ず 原子核の配置などによって電子に対する外部ポテンシャル v() が決まる 次に 電子数 N を与えるとシュレーディンガー方程式が決まり 原理的には波動関数が求まり その波動関数から (.8) 式の電子密度 () が与えられる 即ち v() N () は自明である この逆向きの矢印を保障したのが Hohnbg-Kohn の第一定理である つまり () v() N () が決まれば v() が一意に決まる と表現できる N は (.5) 式から決まる これによって分子を特徴付ける v() と電子密度 () は 対 に対応する (HohnbgKohn の第一定理 ) この定理は (.4)(.7) で定義する簡約密度行列 は不要であり (.8) の電子密度 だけで電子状態理論が構築できるハズであることを示唆している 次に HohnbgKohn の第二定理は以下の通りである 試行密度関数 '( ) が '( ) かつ '( ) N ならば E[ '] E ここで E は真のエネルギー これによって () を使った変分法の存在が示唆される 簡約電子密度 と を使った まで議論との本質的な違いに気付くであろう 解決すべき問題は 電子密度 () を使ってエネルギー E[ ] をどのように表現するかである これが密度汎関数理論 (Dnsity Functional Thoy: DFT) である DFT に対応させて 従来の理論を波動関数理論 (Wav- Function Thoy: WFT) と呼んでいる

4 電子密度を使ったエネルギー表示 全エネルギー E[ ] の中で 原子核の配置などから発生するポテンシャル v() に由来するエネルギーは明示的に示せる 即ち HK (4.) E[ ] v( ) ( ) F [ ] となる 例えば原子 ( 原子番号 ZN) を考えれば v() は電子 - 核の電気的クーロンポテンシャルであり 原子核を原点に置けば 次式のような当たり前の式になる Z N v() 4 一方 F HK [ ] は v() 以外のエネルギー 即ち 電子密度そのものから発生するエネルギーである 即ち F HK [ ] は周りの環境 ( 原子核の位置 = 分子の形 電子の数 電場磁場 ) とは関係なくいつでも同じ関数形 ( の普遍な汎関数 ) となる F [ ] は運動エネルギー HK T と電子間の相互作用に由来する項 V を含む F [ ] [ ] [ ] HK T V (4.) ここで V [ ] [ ] [ ] J X (4.3) と分けることができ J は古典的に表現できる電子間の静電的クーロン反発エネルギー J[ ] ( ) ( ) 4 (4.4) X は非古典的な項である 後に X [ ] は交換汎関数と相関汎関数に分けられる 結局 明示的な の関数形を与えることができないのは T[ ] と X [ ] である の N- 表示可能性は X [ ] をどのように決めるか という問題に置き換えられ 研究は現在も続いている () を用いて T[ ] と X [ ] の表現式を与えることは非常に困難である しかし 将来 誰かが解 決するかもしれない 問題 () 運動エネルギー演算子 m と () を使った下式が運動エネルギーにならないことを / 示せ () m () 電子系を考える 式 (.) 式で示すがT[ ] が次式と同じであることを 本文中の定義を使って式で示せ

T[ ] ( x, x ) ( x, x ) x x m m () 電子系を考える 規格直交化されたスピン分子軌道 {, } を使うと Hat-Fock 波動関数は次式となる ( x, x ) ( ) ( ) ( ) ( ) x x x x このとき 式 (.) と式 (.) が成立することを示せ (3) Hohnbg-Kohn の第一定理を証明してみよう 電子密度 () に対してつの異なるポテンシャル関数 v() と v '( ) が存在すれば矛盾が起こることを示せばよい 3~4 行目の短い文章で記述できる程度の簡単な証明である 但し v() の基準は任意である : つまり v() と v() c( c は定数 ) は等価とする 5 Thomas-Fmi-Diac モデル 前節で導入した T[ ] と X[ ] の基本的な近似表現を紹介する 5の内容は現在では局所密度近似 (Local Dnsity ppoximation: LD) と呼ばれている 運動エネルギー T[ ] の表現を与える試みは 9 年代から始まっている 先ずは Thomas と Fmi が均一な電子分布に対する T[ ] の表現を与えた ここで T 5/3 TF [ ] F () m 3 3 /3.87 F 式の導出は後に示す () 彼らはこの式を原子のエネルギー汎関数に適用し一定の成果を得た Thomas と Fmi が (5.) 式を原子に適用した式を紹介する (5.) ETF[ ] TTF[ ] v( ) ( ) J[ ] 5/3 Z () ( ) ( ) (5.) F () m 4 (4 ) ここで Z は原子核の電荷である 前節の X[ ] は完全に無視されている 制約条件を () N () ( ) / として (5.) 式が最小となる () を決めた 3つ目の制約条件は大抵成立する (5.) 式は右辺の第 項を変更すれば分子にも使える式であるが 分子に適用した場合 残念ながら化学結合を再現するには至らない

次に交換相関ポテンシャルと呼ばれる X[ ] を考える X[ ] は交換汎関数 K[ ] と相関汎関数 X [ ] に次式のように分けられる X[ ] X [ ] K[ ] X[ ] の主要項は K[ ] であり X [ ] は比較的小さい K[ ] は Hat-Fock 法で云う所の 電子交換積分 K に対応する 次式は Diac の交換エネルギーと呼ばれており (5.) と同様に均一な電子 分布を仮定して導出した式である () ここで K 4/3 D[ ] x () 4 (5.3) x 33 4 /3.7386 この式は次式のように分子に適用された E [ ] T [ ] v() () J[ ] K [ ] TFD TF D 5/3 Z F () () m 4 ( ) ( ) (4 ) 4 4/3 x () (5.4) ここで Z と は原子核 の原子番号と座標である (5.) よりも改良されている しかし この節の T[ ] と K[ ] は均一な電子分布を仮定して求めたので原子 分子の計算において十分な精度を与えない たとえそれらを正確に与えても その計算精度は Hat-Fock 理論のレベルである Hat-Fock 理論を超えるためには T[ ] を更に改良し 更に X [ ] を考慮する必要がある 以下の と は式の導出である 読み飛ばしても構わない. 運動エネルギー T[ ]: Thomas-Fmi モデル 以下は箱型ポテンシャルの問題から出発した導出であり困難なく理解できるであろう 空間を立 方体 V に分割する 形式的な分割であり後に此れは消失する 立方体の 辺の長さを L とする 従 3 って 立方体の体積は V L である この立方体に閉じ込められた電子は独立なフェルミ粒子として運動するものとする 立方体中の 個の電子のエネルギー は 3つの正整数 ( nx, ny, nz) を量子数として h h ( nx, ny, nz) ( n ) x ny nz 8mL 8mL. である ( nx, ny, nz) を3 次元空間の格子点だと考えよう : 個の格子点が 個の状態に対応する : 状態の数 ( ) は格子点 ( n, n, n ) の数である ある よりも小さいエネルギーを与える格子点 x y z

( nx, ny, nz) は原点から半径 の球内部にあることを上式は示している 値が十分に大きい場合には 状態の数 ( ) は半径 の /8 球の体積で近似できる ( nx, ny, nz であるため /8 とする ) 従って 次式が成立する 4 8mL ( ) 8 3 6 h 3/. ~ の範囲にあるエネルギー状態の数は上式を で微分して 3/ 8mL g( ) 4 h.3 となる ここで g( ) は状態数の分布密度である 立方体 V 中の電子の全エネルギーを求めるには どこまでの が電子で占有されているのかを決めねばならない このエネルギーを F とする フェルミエネルギーの意味で F を付けた ( 電子移動における化学ポテンシャルと云った方がなじみやすいかもしれない ) 立方体 V 中のエネルギーは ~ F までの範囲で ( エネルギー ) ( 状態密度 ) を積分して 倍すれば得られる 倍は電子のαとβ スピンの存在を考慮している 3/ F m 3 F 3/ E g( ) 4 L h 3/ 8 m V 5 h 5/ また 単に g( ) を積分すると立方体 V 中の電子数を得るはずである F.4 3/ m V F 8 N g( ) 3/ F.5 3 h E と N から F を消去すると次式となる 3 3h 3 N F 5 m 8 /3 5/3 N E V V.6 V において N / V ( ) である () は電子密度関数である これで任意に設定した立方体 V は消えた 全空間の寄与をとると 均一電子分布における運動エネルギーの表現を得る /3 5/3 /3 5/3 T 3 3 3 TF[ ] E h () V 3 () m 8 m (5.) 再掲 これが Thomas-Fmi の運動エネルギー汎関数 但し 均一な電子密度分布の下でしか成立しない 単位の確認 : 上式は () の 5/3 乗を含んだ積分である 見慣れない結果なので 取りあえず単位を確認しよう

上式はエネルギーの単位でなければならない (SI 単位系ではジュール :J) () は密度であるから次元は ( 長さ ) -3 の次元は ( 長さ ) 3 右辺を SI 単位系で表現すると 5/3 [Js] 3 5/3 3 [Js] [J] [J] ( ) [m ] [m] [J] - m [kg] [kg] [m ] [kg m s ] [J] 確かにエネルギーの単位になる 原子単位系に慣れた量子化学者が書いた解説書では上式の / m が省略されていることが多い. 交換ポテンシャル K[ ]:Diac モデルの代替品 (5.3) 式の導出では 数学的な技巧を避けて 代替となる簡便なモデルを導入する 以下の導出で得られた結果は (5.3) 式と係数の値において若干異なる 交換ポテンシャル K[ ] を考えることは () を使ってフェルミの排他律による電子の安定化を表現することと等価である 先ず 均一な電子密度 () を仮定し その領域から下図のように仮想的に 個のαスピン電子を系外へ取り去ってみる 均一に電子で埋め尽くされている領域の静電ポ 均一な電子密度の図 個の電子を仮想的に取り去る図 テンシャルは一定である それゆえ電子を系外へ移動する際のエネルギーは必要ないと考える 電子が取り去られた球内は 周囲がマイナスの電子に囲まれているのでの プラスのポテンシ ャル値になる この領域へ取り去った電子を戻 す マイナス電荷をプラスポテンシャルの領域 に置くのでエネルギーが低下する この安定化 は 電子が何の力も作用させずに他の電子を排除していたことに由来する これがパウリの排他律による安定化 K[ ] であると解釈する 個の電子を元の領域に戻す図 取り去った電子は半径 の球体に均一に分布しているとする すると 電子の中心を原点とした電子密度は下図のようになる

( ) 図. 電子 個を取り去った際の電子密度 もう少し図の説明をする α 電子が占有していた領域では 別のα 電子はパウリの排他律によって排除される ( クーロン反発で排除されるのではない ) 一方 β 電子は入り込むことができる 従って α 電子を取り去った領域にはβ 電子だけが残るので 球内の電子密度は周辺の半分になる さて このモデルに従って詳細に計算してみよう 半径 の球体を電子 個が占めていたので ( 体積 ) ( 密度 )= となり次式が成立する 4 3 ( ) (.) 3 次に球内のポテンシャル関数を考える 球内に ()/ のマイナス電荷が存在し その周囲に () のマイナス電荷が埋め尽くしている状態 ( 下図左 ) は 球内に ()/ のプラス電荷が存在し その周囲に何もない状態 ( 下図右 ) と等しい 但し どちらの図も無限遠方のポテンシャル値をゼロと置く ( ) ( ) 上図右は球内にプラスの電荷が分布している状態である 球内に均一に分布する電荷を球の外から見ると全電荷を球の中心に集めた点電荷と等価である 球の内部 ( 半径 の位置 ) では 半径 よりも内部の電荷のみから力を受けるので ( ガウスの法則です ) 球内のポテンシャルは ( ) 4 V() 3 ( ) 3 4 (.) となる 球内のポテンシャルの平均値は ( 球内でのポテンシャルの積算値 ) ( 体積 ) であるので

3 5 3 4 3 3 4 (4 ) 3 3 3 4 3 4 4 3 5 3 6 4 4 5 3 3 (.3) となる 取り去った電子の微小部分 を球内の元の位置に戻したときのエネルギー K は 6 ( ) 3 K () (.4) 4 5 4 5 である これを全空間で積分することにより次式を得る 3 K[ ] ( ) (.5) 4 5 (.) 式を使って上式の を消去すると次式を得る ここで /3 3 4/3 K[ ] ( ) 5 3 4 (.6) 3 5 3 /3.7676 (.7) であり 導出が大雑把であったにも拘わらず (5.3) 式のx.7386と遜色の無い結果を得る 最後に単位を確認しておこう 4/3 3 (.6) 右辺 Jm [m ] [J] 3 m 6 Kohn Sham 方程式 5までの式では T[ ] の誤差が大きい そこで Kohn と Sham は T[ ] を正確 簡便に表現するために N 個の 電子波動関数を使うことを提案した ( 波動関数理論に逆戻りしています ) N T[ ] TS[{ i}] i (, ) i(, ) i m (6.) N () i (, ) i(, ) i (6.) これにより T[ ] の大部分を正確に表現できるようになった T[ ] T S [ ] は僅かな残り部分であり後々に考慮する (6.) 式を含めて近似なしで書ける所まで書くと次式となる E[ ] T[ ] v() () V [ ] T[ ] v() () J[ ] K[ ] X [ ]

T [ ] v( ) ( ) J[ ] K[ ] X [ ] T[ ] T [ ] S S TS [ ] v( ) ( ) ( ) ( ) 4 K[ ] X [ ] T[ ] T [ ] いままでの近似式を導入して明示的に書く E[ ] (, ) (, ) v( ) ( ) i m i /3 33 4/3 ( ) ( ) ( ) 4 4 4 X [ ] T[ ] T [ ] S () が (6.) 式で表現できるなら (6.3) 式に変分法を適用して Hat-Fock 方程式に類似した軌道 の方程式を作ることができる S (6.3) m 4 4 /3 3 /3 v() ( ) () X [ ] [ ] [ ] T TS i(, ) i i(, ) (6.4) X [ ] T[ ] T [ ] は未だ明示的な表現が無いので無視すると { } を与える次式を得る S i /3 3 /3 v() ( ) () i(, ) i i(, ) m 4 4 (6.5) この式は Kohn-Sham 方程式と呼ばれる 変分法のプロセスで の次数が変化していることに注意 最終的に導出された (6.5) 式は Hat-Fock 方程式と似ている 実際 Slat は 密度汎関数理論と は別途に 種々の考察や経験から Hat-Fock-Slat 方程式と呼ばれる次式を提案した /3 3 3 /3 v() ( ) () i(, ) i i(, ) m 4 4 (6.6) 実用上はパラメーター を付してある場合が多い 計算対象ごと ( 研究者ごとに ) に異なる の値が使われていた時代があり (.75. ) この方法を X 法と呼ぶこともある.75 程度の値を採用する計算が主流であった (6.5)(6.6) 式を比較すれば / 3.666の場合に両式が一致す ることがわかる (6.)(6.)(6.3)(6.4) 式 及びその近似式である (6.5)(6.6) 式を Kohn-Sham 系方程式と呼ぶ { i } を介して を決めることが特徴である Kohn-Sham 系方程式は N 個の軌道 { i } を導入してはいるが 正確な汎関数が存在すれば Schoing 方程式を解くことと等価である また Kohn-Sham 系方程

式は 電子項が電子密度で記述されているので Hat- Fock 方程式よりも計算量は有意に少ない 7 交換汎関数と相関汎関数の改善 均一な電子分布を仮定した局所密度近似 (LD) を超えるためには電子の不均一性を考慮する必要がある その第 歩は電子密度の変化率 を考慮することである ( この近似は Gnaliz Gaint ppoximation:gg と呼ばれる ) 以下の式を覚える必要はなく 様々に 経験的に 工夫 された式が使われており その各々に呼称がついていることを知ってもらえれば十分である Bck は GG を使って交換汎関数を画期的に改善した B88 として広く使われている補正は次式である K[ ] K [ ] D B88 LD B88 D B88 / 3 x () 6 sinh x () x () 4/3 はパラメーターであり6 個の希ガス原子の計算において交換エネルギーを再現するように決められた (.4 ) 別の方法としては Pw と Wang が交換エネルギー項を次のように改善した ( ax bx cx ) PW86 LD 4 6 /5 abc,, はパラメーターである 相関汎関数は 種々の関数の提案があった後に L, Yang, Pa によって次式のように提案された ( 更に Mihlich らによって改善されたものを示す ) () X[ ] a /3 ( ) 8/3 5 7 ab() F () () () () 7 4 /3 xp( c( ) ) /3 () /3 ( ) /3 /3 () c() /3 ( ) a.498, b.3, c.533,.349 パラメーターは H 原子の相関エネルギーを再現するように決められた 化学分野の電子状態計算で多用される B3LYP は Diac の交換汎関数に Bck の補正を加えて L, Yang, Pa の相関汎関数を組み合わせた方法である おわりに DFT は厳密な理論的背景をもちつつ Kohn-Sham 近似という妥協を含めながら 現実的な計算をする段階に至ってはパラメーター調節法になっている 将来に皆さんの中の誰か の普遍な汎関数である はずの F HK [ ] を発見するかもしれません