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進化型計算手法を適用した大規模機械設備の最適保全計画策定 情報理工学部 高見勲. まえがき昨今 ダムなどの公共施設から民間の工場に至るまでプラントの設備投資の考え方が変化してきている すなわち 新しくプラントを建設するのではなく 既存の設備を延命して活用する方向にウェートがシフトしてきている その際重要になるのがコストと信頼性である 大規模プラントはシステム 装置 機器 部品といった構成要素が階層的に結合している 各構成要素に対してはその健全性を維持するための保全が施され その結果としてプラントの機能が達成される この意味で保全は重要であるが 保全にも複数の種類がある また保全はコストを要し 過剰な保全は許容されない 即ち保全の適正化を図り プラントの信頼性 経済性を許容できるレベルに保つことが重要である 本研究のテーマは 大規模複雑プラントに関する保全の考え方を整理し プラントに要求される機能と信頼性 経済性を達成する保全計画立案手法を提案することである この分野の研究としては 近田ら [3] は橋梁の補修計画に遺伝的アルゴリズム (GA:Genec Algorhm) を適用している また織田ら [4] は 社会基盤設備の経済的 物理的劣化過程をマルコフ決定過程としてモデル化している 他にもアセットマネージメント政策に関する研究が盛んに行われている [5],[6] 本研究では 進化型最適化手法である ウィルス進化型遺伝的アルゴリズム及び粒子群最適化 (PSO:Parcle Swarm Opmzao の適用により 最適な保全計画を決定する問題の定式化と解法について述べる. 設備の寿命と保全プラントの寿命には 物理的 経済的 機能的 社会的寿命などがあげられる ここではプラント更新に直接結びつく 物理的寿命と経済的寿命を考慮することとする 保全には 事後保全 予防保全に分類される 後者には状態監視保全 信頼性中心保全 リスクベースド保全等保全などがあり 点検 オーバーホール 修理 更新等の保全方法が取られる また 故障パターン ( 初期故障 偶発故障 劣化故障 ) に対して保全の考え方が異なる 基本的に初期故障と偶発故障は事後保全とせざるを得ない ここでは劣化故障に対する保全を考える また保全の内容による故障率に関する影響を考慮する必要がある 最小修理 (mnmum repar) の考え方では 応急的な修理では 修理した直後でも故障率は変わらない [] すなわち リプレース以外の途中の修理は最小修理として 装置が

新品になるのではなく 故障率は変化しない 保全方式とコストの関係は重要である ライフサイクルコストが最小となるように保全方式を決定する必要がある そのなかで 診断部位の補修に掛かる費用 周辺部位の被害と復旧費用 機器の停止による操業損出 コスト最小化更新周期等のアイテムを考慮しなくてはならない 3. 最適保全方策の決定プラントを構成するシステム 機器 部品の保全とプラントの信頼性 経済性の定量的な関係を解析し 要求される機能 信頼性 経済性を達成するための保全方策の決定方法を明らかにする 3. プラントの構成プラントは システム 装置からなるハイアラーキな構成である 本研究で取り扱うプラントは 直列系とする すなわち システムを構成する装置の故障はシステム全体の故障となる 具体的な例を挙げると 堰のゲートであれば 以下のような構成となる ここで 堰ゲートがプラント 扉体がシステム ローラが装置である ここではリプレースの最小単位は装置とする 堰ゲート扉体扉体ローラ水密部シー部戸当り 支承部戸当り ガイドトラニオン水密部アンカーヒータ放流管開閉装置電動機制動機減速機 切換装置減速 動力伝達機構ワイヤロープスピンドル

油圧シリンダ油圧回路油圧部品油圧配管休止装置操作制御設備付属設備また 排水ポンプ設備であれば以下のような構成となる 排水ポンプ設備主ポンプ主軸翼軸受ケーシング主原動機減速機吐出管除塵機操作制御設備 3. 装置の信頼性とシステムの信頼性 装置の故障確率分布はワイブル分布に従うものとする すなわち 信頼度関数は R( ) exp( m 0 ) で与えられる ここで は使用時間 m は形状パラメータ 0 は尺度パラメータである システム j の信頼度 h はシステムの構造関数を (X ) とするとき, h( p) E[ ( X)] で与えられる ここで p p, p, p ), X ( X, X, X ) であり p R ( ) exp( m 0 ) ( n n として与えられる (, は装置 に関する確率変数であり X, X 0, 装置 が正常である装置 が故障である 一般にはシステムは直列系であり システムの信頼度 R() は次のように与えられる

n R( ) R( ) またプラント全体の信頼度は下式で与えられる R ( ) E[ ( X )] P P ここで P (X ) はプラントの構造関数であり X { X j } はシステム の装置 j に関すする 確率変数 (, j, からなる X j 3.3 更新決定変数一定の周期的に更新するのではなく 絶えず制約条件を満足しながら更新する たとえば あるときは0 年で更新するが あるときは 8 年で更新する 各装置ごとに更新に関する変数 u (, l, m, M, n, N を定義する : システムlの装置 mを第 n年において更新する u( 同様にして 各 0 : システムlの装置 mを第 n年において更新しないサブシステム及びプラントに対して更新に関する変数 v(, l,, n, N,, n, N を次のように定義する v( 0 : システム lを第 n年において更新する : システム lを第 n年において更新しない 0 : プラントを第 n年において更新する : プラントを第 n年において更新しない 更新決定変数間の拘束条件として ならば v( 0かつu( 0 であり v( ならば u( 0 とする これは プラントのリプレースでは サブシステム 装置のリプレースは行わない またサブシステムのリプレース時には装置のリプレースを行わない 但し プラントの更新とサブシステムの更新を同時に行うことはプラントの更新のみを行う場合と比較して 信頼度は等しいにもかかわらず コストが大きくなり 非現実的な方策となる よってこの条件を設けなくても最適化に際してこの条件は自然に満足されることになる 3.4 リプレースに伴う信頼性 () 更新と信頼性の関係 更新の間に発生する故障は修理し正常に復帰させるが この修理は最小修理と考える 故障率はリセットされず 装置の信頼度は次のように与えられる 現時点 0 では装置は

全て健全であるものとする もし故障しているものがあれば即時最小修理を行うものとす る もし更新前に故障が発生すれば最小修理を行い正常に復帰させるものとする 但し最 小修理のため故障率はリセットされず更新からの経過時間の関数となる 直近の更新時刻を とすると 時刻 での故障率は次のように与えられる ) m () ( m 0 この時 時刻 での信頼度は以下のように与えられる R( ) exp{ ( ( ) d} exp{ 0 ) m 更新は年単位で行う 予算化を行う際 年度単位で行うことが多い このためコスト最 適化もしくはコスト制約条件を満足することの評価は年単位で行えばよい この時 信頼 度の評価も年単位で行うものとする 即ち 信頼度は 年間 つの値で代表させることと する 安全側の評価として 信頼度が小さい値となる 年経過した時の値を与える そこ で プラント サブシステム 装置の更新に対する決定は年単位で行うこととする こ の場合の信頼度計算における時間の取り扱いは以下のようになる 直近の更新時刻を とした時 であればに従って信頼度を評価する えて に従って信頼度を評価する } であれば に つ前の更新時刻を与 () 更新時期と更新変数の関係 装置の信頼度計算に必要な更新時期 とは直近の更新時期である これは次のように与え られる システム l の装置 m の直近の更新時期 は評価時刻を とすると下式で与えられる max[ max { n}, max{ n}, max{ n}] n u( n v( n 3.5 問題の定式化 問題は次のように定式化できる 問題 以下に示す制約条件のもとで 評価関数を最小にする更新決定変数 u, v, w を求める ) 制約条件 プラントの信頼度 R P () に関する制約条件は以下のように与えられる ここで R * P は定数 である * RP ( RP, n,, N ) 評価関数 評価関数は全更新コストであり 下式で与えられる

J N n0 C( 但し C( は n 年目の更新コストであり C( c P L l { c v( l M l m c lm u( } ここで c はプラントの更新コスト ( l, L) はシステムl の更新コスト c lm P ( l, m, M l c l ) はシステムl の装置 m の更新コストである 問題の基本的な定式化は以上であるが 昨今コストの平滑化が要求されるケースが出て きている 単年度で突出したコスト計上は困難であるため 複数年度にコストを分配する 考え方である この場合 制約条件に次式を追加する コスト平滑化制約条件 C max C(, C mn C(, を許容誤差としたとき C m a x C m n max n mn n また 別の考え方として コスト制約の中で プラントの信頼度を最大にすることが挙げられる さらに 評価関数は更新コストと損失コストの和として与える方法もある N K L M k kj kj n n0 k l m リプレースコスト J { { c { c v( c u( )}}} 損出コスト J cl ( k) K N ( Rk ( ) k n0 評価関数 J J J を最小にする u, v, w を求める 解を求める計算手順は以下のとおりである (Sep) 更新決定変数を与える (Sep) 信頼度の計算 (Sep3) コストの計算 (Sep4) 制約条件を満足しているか Yes なら Sep5 へ No ならば Sep へ (Sep5) 評価関数の計算 評価関数が最小か Yes なら解を記憶し Sep へ No ならば Sep へ (Sep6) すべて調べたならば終了 4. 進化型アルゴリズムを適用した最適化 進化型アルゴリズムは 従来の準ニュートン法による最適化手法とは異なり 発見的な 方法で解を求めるものである この手法の特徴は高次元解空間の探索に優れ NP 困難な問

題にも適用できるところにある 本論文では 保全計画の最適化に適した手法である 遺伝的アルゴリズム (GA) と粒子群最適化 (PSO) を採用し その適用方法について述べる 4. 遺伝的アルゴリズムとウィルス感染本論文で定式化した 0- 整数計画問題を解く手法としては 進化型計算法の一つである遺伝的アルゴリズム (GA:Genec Algorhm) がある GA は生物の遺伝子や進化のメカニズムを模擬したものである GA では複数の解候補を個体集合として扱い 世代とともにこれを更新し 世代を十分経た後に 個体集合に最適解が含まれていることを期待している 遺伝的アルゴリズム適用にあたり 予め設定する必要のあるパラメータは次の 4 種である 世代数 個体数 3 交叉率 4 突然変異率 現在の個体集合に含まれる遺伝子から交叉と突然変異を行い新しい遺伝子を生成する これを 世代と言い この演算を世代数繰り返す ここで 交叉とは 個体集合の中からランダムに 個ずつ遺伝子を取り出し これに対して交叉点をランダムに選択し 予め決められた交叉率で交叉点の左側の遺伝子を入れ替えることを言う また 突然変異とは すべての個体に対して 予め決められた突然変異率でランダムに選ばれたビットを反転 (0をに を0に ) させることを言う 個体数とは 残すべき個体 ( 遺伝子 ) の数である 一般に適応度の大きい遺伝子とランダムに選んだ遺伝子を残す 前者の選択をエリート戦略 後者をルーレット選択と呼ぶ GA の手順は以下のとおりである Sep 初期個体集合の設定 世代数を =,,T と表す Sep 評価関数 J を計算する Sep3 選択 交叉 突然変異により 遺伝子を変化させ 次の世代の個体集合を生成する Sep4 世代数が <T であれば を + として sep に戻る =T で終了 GA の欠点の一つに 大域的最適解でなく局所最適解に収束することが挙げられる その原因は 適応度に応じて次世代の個体を選択するプロセスを繰り返すうちに ほぼ同一の遺伝子のみが残ってしまうことである これを回避するために 筆者らはウィルス感染型 GA を提案した この方法はウィルスをランダムに発生させ 局所解に陥った個体集合に対してウィルスを感染させ 遺伝子の多様性の回復を図り 大域的探索を行わせるものである ウィルス感染の手順は次のとおりである Sep ウィルス個体を生成する ウィルス個体のサイズは感染させる遺伝子の個体のサイズ N と等しくする Sep このウィルス個体の遺伝子座を q,,qn とし その中からランダムに 点 qqn を選ぶ Sep3 選択した qqn が m n のときは qm と qn の間の遺伝子をウィルス子個体から取り出す m>n のときは q から qn の間と qm から qn の間の 箇所の遺伝子をウィルス個体から取り出す

Sep4 ウィルス個体から取り出した遺伝子を感染率 p で各ウィルス個体に対応した個体の遺伝子と入れ替える 感染させる場所は sep3 でウィルスを取り出した場所と同じとする また 個体集合の中で適応度の高い個体 M 個を感染させず それ以外の個体を感染させる Sep5 ウィルス感染の GA への適用は Z 世代ごとに行う 遺伝的アルゴリズムの最適保全計画への適用は次のとおりである 装置の更新決定変数 u(,( l, m, M, n, N), システムの 更新決定変数 v(,( l, n, N), 及びプラントの更新決定変数,( n, N) の各要素は,0-であるから GAの遺伝子との対応が容易である 次のように遺伝子 x の構造を決める 遺伝子 x の次数は N LN N x ( ), N), v(,), v( N), u(,,), u( M, N)) l L M l l となる 4. 粒子群最適化手法粒子群最適化手法は 鳥など生物生物の群れが餌を探す行動を模擬して 多次元空間内での最適解を探索するものである この手法の基本的な考え方は以下のとおりである 粒子の数をmとし 世代数を kとする 第 ( m) 粒子の位置ベクトルを x ( k), 速度ベクトルを v ( k) とし 次の更新式により世代ごとの位置 及び速度ベクトル を計算する x ( k ) x ( k) v ( k ) v ( k ) v ( k) ( pbes ここで pbes は個体 が獲得したこれまでの最も優れた位置 gbes は群全体として 獲得したこれまでの最も優れた位置 は減衰係数 と は乱数である 位置 x ( k) に対して評価関数 f ( x ( k)) が与えられる この位置ベクトルが最適化すべき 変数である x ( k)) ( gbes x ( k)) 粒子群最適化の計算手順は以下のとおりである Sep: 過去に獲得した位置よりも適合度が良かったらその位置を保存する (pbes) Sep: それらの位置のうち最も良いものを保存する (gbes) Sep3: 上で求めた位置と前回の速度から次の速度を決める Sep4: 前回の位置と上記速度から次の位置を決める上記の手順は 変数が連続である場合に適用できる 3 章で述べた保全計画最適化では 変数は 0- 型であるので 0- 整数計画問題としての PSO に変換する必要がある この場合 変数の各成分を [0,] に閉じ込めた後に四捨五入することで対応できる [7]

5. あとがき本論文では 設備の最適な保全計画を立案するための定式化と その解法として進化型最適化手法のうち ウィルス感染型遺伝的アルゴリズムと 粒子群最適化手法について述べた 今後具体的な適用対象に対して実用化を図りその有効性を検証する 謝辞 本研究は 005 年度南山大学パッヘ研究奨励金 Ⅰ-A- の助成を受けた 参考文献 []Shunj Osak:Sochasc Models n Relably and Manenance Sprnger,-Verlab,Berln,00 [] 安藤 高見 :GA を用いた極配置による PID 制御 高速信号処理応用技術学会誌 Vol.0,No.,74/80(008) [3] 近田 清水 廣瀬 : ウィルス進化型 GA を援用した橋梁補修計画支援に関する研究 構造工学論文集 Vol.47A,pp-8(00) [4] 織田 石原 小林 近藤 : 経済的寿命を考慮した最適修繕政策 土木学会論文誌 No.77/ Ⅳ-65,pp69-84(004) [5] 栗野 小林 渡辺 : 不確実性下における最適補修投資ルール 土木学会論文集 No.667/ Ⅳ-50,pp-4(00) [6]Durango,P. and Madana,S.:Opmal manenance and repar polces for nfrasrucure facles under unceran deeroraon raes:an adapve conrol approach,transporaon Scence,Par A,Vol.36,pp763-778(00) [7] 小熊 古澤 相吉 : 離散構造制約条件付き最適化問題に対する PSO を用いた進化計算 計測自動制御学会論文集,Vol.45,No.0,5/5(009)