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重量平均による標高の最確値 < 試験合格へのポイント > 標高の最確値を重量平均によって求める問題である 士補試験では 定番 問題であり 水準測量の計算問題としては この形式か 往復観測の較差と許容範囲 の どちらか または両方がほぼ毎年出題されている 定番の計算問題であるがその難易度は低く 基本的な解き方をマスターしてしまえば 容易に解くことができる ( : 最重要事項 : 重要事項 : 知っておくと良い ) 重量平均による標高の最確値の計算について レベルを用いて行われる水準測量は 標尺の値を読む事によって 点間の高低差を求める直接水準測量である このため 観測時に器械や標尺より発生する器械誤差や 観測者のミス等による個人誤差を極力小さくすると 観測値に対して主に生じる誤差は 偶然誤差 のみと考えられる この偶然誤差は観測回数に比例して増加する つまり レベルを用いた水準測量の場合 その水準路線が長いほど観測回数が増え誤差が累積すると言える 重量 ( 信用度 ) とは 測定値の信用の度合 であり 重量が大きいほど 観測結果に信用があると言える このため レベルを用いた直接水準測量の場合 路線長が長くなると 測定値の信用度が低くなる ことから 重量 (P) は路線長 (S) に反比例 P=/S の関係が成り立つ この重量 (P) を考え 観測値の最確値を求める方法を 重量平均 ( 加重平均 ) と呼び 次のような方法で計算を行うものである < 例題 > 既知点, から未知点に向かって水準測量を行い 結果 h h を得た しかし 路線長が異なるため観測結果に対する信用度が異なり 単純平均 ( 算術平均 ) ではその最確値を求める事はできない そこで 次のように 重量平均 を行い最確値を求める必要がある h h S S (P h)+(p P+P h ) =( 最確値 ) : 既知点 : 未知点 S: 水準路線長 h: 観測値 ここで P=/S の値は 整数にしておくと計算しやすい ~ ~

重量 ( 信用度 ) 重量 ( 信用度 ) とは 測定値の信用の度合 であり 重量が大きいほど 観測結果に信用があると言える 以下に 観測回数による重量 路線長による重量 標準偏差による重量 について解説する 水準測量では 路線長による重量が必要となるが 基準点測量の分野 ( 旧三角測量 多角測量 ) では 観測回数による重量に関する問題も出題される 観測回数による重量 ( 角度や距離 ) 角の観測や距離の観測など 同じ目標 ( 範囲 ) に対して観測回数を変えて観測した場合 回より 回 回より 3 回 と 観測回数を増やしその平均値を求めれば 観測精度が良くなると言える このため 観測回数を増やした時に得られる観測値は 重量が大きい = 精度が良い と考えることができる これより重量と観測回数の関係は 重量 (P) は観測回数 (n) に比例する ことになり 次の式で表される P :P = n :n 重量の大きい測定値 角度の観測は観測回数が多いほど重量が大きい 信用度の高いデータと言える TS フ リス ム 重量の大きい測定値 距離の観測は観測回数が多いほど重量が大きい 信用度の高いデータと言える ~ ~

路線長による重量 ( 水準測量 ) 水準測量のように いくつかの異なる路線から高低差を求め標高の最確値を計算する場合には その路線長が長くなればなるほど誤差の累積が多くなり 観測データ中に誤差が多く含まれると考えられる このため短い路線長の観測データには大きな重量 長いものには小さい重量を与える必要がある つまり重量と路線長の関係は 重量 (P) は 路線長 (S) に反比例する となり 以下の式で表される P :P = : S S 路線長の長い観測 路線長の短い観測 重量の大きい測定値 水準測量は観測回数が少ない ( 路線長が短い ) ほど 重量が大きい 信用度の高いデータと言える 3 標準偏差による重量 標準偏差は ある範囲を繰返し測定した場合の測定精度を表すものである 標準偏差は 残差の二乗和を測定回数で除した ( 割った ) ものの平方根で求められる 標準偏差の詳細な解説は避けるが このため測定回数が多いほど標準偏差は小さく 精度は高くなる 標準偏差と重量の関係は 重量 (P) は 標準偏差 (m) の 乗に反比例する となり 以下の式で表される P :P = : m m ~ 3 ~

重量平均法について ( 参考 ) 数回に分けて観測された観測値の最確値を求める場合 全て同じ重量 で観測された場合は その最確値は単に算術平均 ( 単に 平均 と言う ) を行えばよい しかし 各観測値がそれぞれ異なる重量で観測された場合には その重量の大きい観測値を他の観測値より 信用がある と考えた平均方法 すなわち 重量平均法による最確値の計算 を行う必要がある 重量 ( ちょうりょう又はじゅうりょう )( 重み とも呼ぶ ) 測定値の信用度 重量は測量の場合 観測方法や路線長等により決定される 重量平均法による最確値の計算は以下のとおりである a P+a P+ +an P ( 最確値 )= P+P + +P n n ここで a a a n : n 回目 ( 路線 ) の観測値 P P P n : n 回目 ( 路線 ) の観測値の重量 ~ 4 ~

過去問題にチャレンジ! ( H8-3-D : 士補出題 ) 次図に示すように 水準点 E を新設するため 水準点 A, B,C,D を既知点として水準測量を行い 表の結果を得た 水準点 E の標高の最確値はいくらか 最も近いものを次の中から選べ ただし 既知点 A,B,C,D の標高はそれぞれ H A = 55.50m H B = 65.03m H C = 75.037m H D = 85.050m とする A B E 路線 距離 観測高低差 A E km +8.638 m E B 4 km +.48 m C E km -.64 m E D km +.56 m C 図 D. 63.878 m. 63.880 m 3. 63.88 m 4. 63.884 m 5. 63.886 m ~ 5 ~

< 解答 > 路線ごとの観測標高を求める 路線 観測標高 A E 55.50m + 8.638m = 63.888m E B 65.03m -.48m = 63.884m C E 75.037m -.64m = 63.873m E D 85.050m -.56m = 63.894m :E から B への観測となるため 観測高低差の符号が逆転する事に注意する : と同様に E から D への観測となるため 符号が逆転する 計算における符号に注意する 区間の矢印は観測方向を表し その順序に測ると言う事である 例えば 符号は E B で高低差 +ならば E 点より B 点の方が高いと言う事であり B E では高低差は-と言う事である 路線長 ( 距離 ) から重量を求める 区間 距離 重量 (P) 整数 A E km / E B 4 km /4 C E km / 4 E D km / 3 標高の最確値を求める ( 重量計算 ) 重量は各分母の数で割り切れる 4 をかけて整数にしておく 63.870 + 8 + 4 + 3 4 + 4 0.00 ++4+ = 63.870 + 0.0 63.88m 手計算による計算を簡易にするため 観測標高の共通部分である 63.870m を外に出して計算している また 小数点は計算上面倒なため 上記のように省略して計算すればよい よって 新設水準点 E の標高の最確値は 63.88m となる 解答 :3 ~ 6 ~

過去問題にチャレンジ! ( H-No : 士補出題 ) 図のように 既知点 A B C D から新点 E の標高を求めるために水準測量を実施し 表 に示す結果を得た 新点 E の標高の最確値はいくらか 最も近いものを次の中から選べ ただし 既知点の標高は表 のとおりとする 既知点 A 表 既知点 B 路線観測距離観測高低差 A E 3 km -3.06m 新点 E B E km -.83m E C km -0.34m E D 4 km +.303m 既知点 D 図 既知点 C 表 既知点標高 A 6.039m B 4.45m C.655m D 5.308m..978m..980m 3..985m 4..99m 5..99m ~ 7 ~

< 解答 > 観測方向に注意し路線ごとの観測標高を求め 観測距離を基に各路線の重量を計算する 路線 観測標高 観測距離 重量 A E 6.039-3.06=.978m 3 km (/3) =4 B E 4.45-.83=.96m km (/) = E C.655+0.34=.996m km (/) =6 E D 5.308-.303=3.005m 4 km (/4) =3 C D に関しては 観測方向が逆であるため 観測高低差の符号が逆になる 重量は 観測距離に反比例することに注意する また 計算しやすいように分母の最小公倍数をかけて整数にしている 重量は分数のまま計算しても良い 標高の最確値を求める ( 重量計算 ) (78 4 +6 + 96 6 +05 3).9 + 0.00 4++6+3 =.9 +0.0778.978m 手計算による計算を簡易にするため 観測標高の共通部分である.9m を外に出して計算している よって 最も近い選択肢は の.978m となる 解答 : ~ 8 ~