構造方程式モデリング Structural Equation Modeling (SEM)

Similar documents
Microsoft PowerPoint - e-stat(OLS).pptx

ビジネス統計 統計基礎とエクセル分析 正誤表

Microsoft Word - reg2.doc

Microsoft PowerPoint - 資料04 重回帰分析.ppt

13章 回帰分析

多変量解析 ~ 重回帰分析 ~ 2006 年 4 月 21 日 ( 金 ) 南慶典

Microsoft PowerPoint - データ解析発表2用パワポ

様々なミクロ計量モデル†

14 化学実験法 II( 吉村 ( 洋 mmol/l の半分だったから さんの測定値は くんの測定値の 4 倍の重みがあり 推定値 としては 0.68 mmol/l その標準偏差は mmol/l 程度ということになる 測定値を 特徴づけるパラメータ t を推定するこの手

<4D F736F F F696E74202D2091E63989F1837D815B F A B836093C1985F D816A2E >

スライド 1

Microsoft Word - 補論3.2

memo

Probit , Mixed logit

スライド 1

1.民営化

0 部分的最小二乗回帰 Partial Least Squares Regression PLS 明治大学理 学部応用化学科 データ化学 学研究室 弘昌

日本言語科学会(JSLS)チュートリアル講演会 平成13年12月16日(日)午前10時30分から午後4時30分 慶應義塾大学三田キャンパス東館6階G-SEC Lab   言語研究のための統計解析 「論理」学としての思考法,「美」学としての提示法

回帰分析の用途・実験計画法の意義・グラフィカルモデリングの活用 | 永田 靖教授(早稲田大学)

Kumamoto University Center for Multimedia and Information Technologies Lab. 熊本大学アプリケーション実験 ~ 実環境における無線 LAN 受信電波強度を用いた位置推定手法の検討 ~ InKIAI 宮崎県美郷

Microsoft Word - reg.doc

Microsoft Word - å“Ÿåłžå¸°173.docx

景気指標の新しい動向

PowerPoint プレゼンテーション

カイ二乗フィット検定、パラメータの誤差

基礎統計

ベイズ統計入門

スライド 1

Taro-13semiamos.jtd

Microsoft PowerPoint - H17-5時限(パターン認識).ppt

統計的データ解析

Microsoft PowerPoint - 三次元座標測定 ppt

切片 ( 定数項 ) ダミー 以下の単回帰モデルを考えよう これは賃金と就業年数の関係を分析している : ( 賃金関数 ) ここで Y i = α + β X i + u i, i =1,, n, u i ~ i.i.d. N(0, σ 2 ) Y i : 賃金の対数値, X i : 就業年数. (

Microsoft Word - 訋é⁄‘組渋å�¦H29æœ�末試é¨fi解ç�fl仟㆓.docx

モジュール1のまとめ

重回帰式 y= x x 2 重症度 5 TC TC 重症度

Microsoft PowerPoint - Econometrics pptx

横浜市環境科学研究所

情報工学概論

ファイナンスのための数学基礎 第1回 オリエンテーション、ベクトル

基礎統計

Microsoft Word - Time Series Basic - Modeling.doc

製造ータの因果分析 | 野中 英和氏(TDK株式会社)

Microsoft PowerPoint - 10.pptx

Microsoft Word - mstattext02.docx

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - econome4.docx

Microsoft PowerPoint - A1.ppt [互換モード]

経済統計分析1 イントロダクション

統計学 - 社会統計の基礎 - 正規分布 標準正規分布累積分布関数の逆関数 t 分布正規分布に従うサンプルの平均の信頼区間 担当 : 岸 康人 資料ページ :

Microsoft PowerPoint - 統計科学研究所_R_重回帰分析_変数選択_2.ppt

Microsoft Word - econome5.docx

発表の流れ 1. 回帰分析とは? 2. 単回帰分析単回帰分析とは? / 単回帰式の算出 / 単回帰式の予測精度 <R による演習 1> 3. 重回帰分析重回帰分析とは? / 重回帰式の算出 / 重回帰式の予測精度 質的変数を含む場合の回帰分析 / 多重共線性の問題 変数選択の基準と方法 <R による

Excelを用いた行列演算

Microsoft Word - lec_student-chp3_1-representative

. 分析内容及びデータ () 分析内容中長期の代表的金利である円金利スワップを題材に 年 -5 年物のイールドスプレッドの変動を自己回帰誤差モデル * により時系列分析を行った * ) 自己回帰誤差モデル一般に自己回帰モデルは線形回帰モデルと同様な考え方で 外生変数の無いT 期間だけ遅れのある従属変

PowerPoint プレゼンテーション

Excelによるデータ分析

講義「○○○○」

自動車感性評価学 1. 二項検定 内容 2 3. 質的データの解析方法 1 ( 名義尺度 ) 2.χ 2 検定 タイプ 1. 二項検定 官能検査における分類データの解析法 識別できるかを調べる 嗜好に差があるかを調べる 2 点比較法 2 点識別法 2 点嗜好法 3 点比較法 3 点識別法 3 点嗜好

航空機の運動方程式

Microsoft PowerPoint - sc7.ppt [互換モード]

<4D F736F F D208EC08CB18C7689E68A E F AA957A82C682948C9F92E82E646F63>

確率分布 - 確率と計算 1 6 回に 1 回の割合で 1 の目が出るさいころがある. このさいころを 6 回投げたとき,1 度も 1 の目が出ない確率を求めよ. 5 6 /6 6 =15625/46656= (5/6) 6 = ある市の気象観測所での記録では, 毎年雨の降る

<4D F736F F D208EC08CB18C7689E68A E F1939D8C E82E646F63>

スライド 1

(3) 検定統計量の有意確率にもとづく仮説の採否データから有意確率 (significant probability, p 値 ) を求め 有意水準と照合する 有意確率とは データの分析によって得られた統計値が偶然おこる確率のこと あらかじめ設定した有意確率より低い場合は 帰無仮説を棄却して対立仮説

<4D F736F F F696E74202D B835E89F090CD94AD955C F837C2E F4390B394C55B315D>

データ解析

Medical3

Microsoft PowerPoint - ch03j

計量経済学の第一歩 田中隆一 ( 著 ) gretl で例題と実証分析問題を 再現する方法 発行所株式会社有斐閣 2015 年 12 月 20 日初版第 1 刷発行 ISBN , Ryuichi Tanaka, Printed in Japan

Microsoft Word - eviews6_

回帰分析 重回帰(1)

Microsoft PowerPoint - S11_1 2010Econometrics [互換モード]

Microsoft Word - thesis.doc

国土技術政策総合研究所 研究資料

今回用いる例データ lh( 小文字のエル ) ある女性の血液中の黄体ホルモンを 10 分間隔で測定した時系列データ UKgas 1960 年 ~1986 年のイギリスのガス消費量を四半期ごとに観測した時系列データ ldeaths 1974 年 ~1979 年のイギリスで喘息 気管支炎 肺気腫による死

Microsoft Word - Stattext13.doc

DVIOUT

FEM原理講座 (サンプルテキスト)

13章 回帰分析

スライド タイトルなし

Microsoft Word 野口博司.docx

1. 多変量解析の基本的な概念 1. 多変量解析の基本的な概念 1.1 多変量解析の目的 人間のデータは多変量データが多いので多変量解析が有用 特性概括評価特性概括評価 症 例 主 治 医 の 主 観 症 例 主 治 医 の 主 観 単変量解析 客観的規準のある要約多変量解析 要約値 客観的規準のな

SAP11_03

第7章

Microsoft PowerPoint - Econometrics

数値計算法

Excelにおける回帰分析(最小二乗法)の手順と出力

Microsoft Word - appendix_b

タイトルを修正 軸ラベルを挿入グラフツール デザイン グラフ要素を追加 軸ラベル 第 1 横 ( 縦 ) 軸 凡例は削除 横軸は, 軸の目盛範囲の最小値 最 大値を手動で設定して調整 図 2 散布図の仕上げ見本 相関係数の計算 散布図を見ると, 因果関係はともかく, 人口と輸送量の間には相関関係があ

1/30 平成 29 年 3 月 24 日 ( 金 ) 午前 11 時 25 分第三章フェルミ量子場 : スピノール場 ( 次元あり ) 第三章フェルミ量子場 : スピノール場 フェルミ型 ボーズ量子場のエネルギーは 第二章ボーズ量子場 : スカラー場 の (2.18) より ˆ dp 1 1 =

数学2 第3回 3次方程式:16世紀イタリア 2005/10/19


因子分析

2012メソ研論集 今野

Microsoft PowerPoint - 基礎・経済統計6.ppt

RSS Higher Certificate in Statistics, Specimen A Module 3: Basic Statistical Methods Solutions Question 1 (i) 帰無仮説 : 200C と 250C において鉄鋼の破壊応力の母平均には違いはな

Microsoft Word - SDA2012kadai07.doc

Transcription:

時間でだいたいわかる 構造方程式モデリング Structural Equaton Modlng (SEM)

構造方程式モデリングとは何か 構造方程式モデリング (Structural Equaton Modlng, SEM) とは : 別名 共分散構造分析 (coaranc structural analyss) 構成概念やの性質を調べるために集めた多くのを同時に分析するための統計的方法 本来 構造方程式モデリングは主に以下の3つを含みます 共分散構造分析 (coaranc structural analyss) 潜在混合分布モデル (latnt mxtur modl) 潜在クラスモデル (latnt class modl) 潜在変数潜在変数のないモデル連続変数質的変数連続変数質的変数多変量解析との対応共分散構造分析 回帰分析 判別分析潜在混合モデル 数量化 I 類潜在クラスモデル 数量化 II 類 当面 潜在変数共に連続変数を用いる共分散構造分析だけを扱いそれを SEM と呼ぶことにします

SEM とは何か 以下の二つの方程式の合体と言えます 測定方程式 いわゆる因子分析 構造方程式 いわゆるパス回帰 因子の回帰分析だ! と覚えればわかりやすいと思います この部分が因子分析 ( 構造を示す ) 因子 因子 この部分が回帰分析 ( 因果関係を示す ) 3

因子分析ってなんでしたっけ つまり 観測された変数は 何らかの隠された要因 (Factor) が基になっているという考えで その要因の影響を 相関 ( つまり分散 共分散 ) で判別しようとうする考え 0.5 0. 0.35 Factor 頭文字を取って一般 に であらわす 実は がどのような値を取ろうと あまり意味はない Factor がどれだけ影響しているかが重要 この値を因子負荷量という 4

回帰分析ってなんでしたっけ もちろん簡単なことですが 説明変数 ( 基準変数 または独立変数 ) 被説明変数 ( 予測変数 または目的変数 ) 誤差 () 誤差って何? と思うかも つい忘れがちです 式で書けば Y a + a x + a x +... + 0 5

回帰分析の解き方教室 教科書によると 回帰分析の母数の推定方法は以下の 3 通りで そのいずれでも解は一致します 最小 乗法 最尤法 モーメント法 ここでは共分散構造分析の基礎となるモーメント法を紹介します 6

モーメント法による単回帰モデルの母数推定 以下の単回帰式の母数を推定する x x + β + E[] μ 0 E[ x ] 0 両辺の期待値を計算する E[ x ] E[ x + β + ] E[ x ] + E[ β ] + E[ ] μ μ + β β μ μ * この仮定はつまり 誤差の平均の期待値は 0 で 誤差と独立変数は無相関であるとしている これは回帰分析における基本的な仮定 単回帰式の両辺に確率変数をかけ 期待値を取る E[ x x ] E[ x x ] + βe[ x ] + E[ x ] σ σ σ m m σ m σ m + βμ β μ μ だから σ Σ Σ σ m σ /σ x m + μ( μ μ) σ m + μμ μμ ' ( 共分散行列は積率行列から平均の二乗の行列をひいたもの ) から μμ μ μ σ ( m μ μ ) 7

続 モーメント法による単回帰モデルの母数推定 前のページではごちゃごちゃやりましたが 要は 最終的に以下のようになりました σ ˆ s β x / σ / s ˆ x β μ μ ここで大事なのは 母数 ( パラメータ ) の を 変数の分散と共分散の統計量で推定することができたということです 8

さて 測定方程式 測定方程式は 前に言ったように 因子分析のことです 別の言い方をすれば 構成概念 を扱う方程式です 例えば以下のパス図は右の式で表します ( 変数の添え字は 矢印のささる方 指す方の順 そうすると行列で都合がいい ) 3 3 3 3 E E 3 [ ] E [ ] 0, V [ ] [ ] 0, V [ ] E [ ] 0 j j + + + 3 0( j) σ 9

測定方程式の共分散構造 共分散を母数の関数で表現することを 構造化 といい 共分散 ( 行列 ) を方程式モデルの母数で表現したものを 共分散構造 といいます 前ページの測定方程式の場合 以下のようになります σ Σ σ σ 3 σ σ 3 σ 3 + σ 3 + σ + σ これは 回帰分析のモーメント法と同じことになりました 測定方程式では が平均 0 分散 に仮定されているので途中の計算で消え 最後は母数だけになってしまうのです 3 3 3 0

測定方程式の行列表記 測定方程式を行列表記すると以下のようになります + E E E [ ] o [] o [ ] O そして共分散構造は以下のようになります Σ Σ + ' r Σ 潜在変数の相関がある場合にパラメータが含まれます 誤差間に相関がある場合にパラメータが含まれます

構造方程式 3 3 3 + + 3 3 3 3 0 0 0 0 0 0 0 は 構造変数ベクトル 残差ベクトル または 外生変数ベクトル を番目の要素として持つ内生変数であればを が外生変数であればは 構造方程式は回帰分析をつないでいくと思えばいい 矢印がささる変数を内生変数 ささらない変数を外生変数といいます 内生変数にはかならず誤差があります 実際のデータでは 無理に潜在変数を作らず 構造方程式を使ったほうがいい場合が多いようです

構造方程式の共分散構造 補足 : 残差とは他の構造変数から説明されなかった残りであるから 他から説明されなかった変数 ( 外生変数 ) は その変数自身が残差となる 補足 : の対角成分は常に0 補足 3: が外生変数であれば の 行は常にゼロベクトル 共分散構造の行列表記 I ( I ) T ( I ) T Σ + + ' TΣ T ' o 逆に言えば 外生変数でなければ共分散は仮定できません 外生変数間に共分散がある場合にパラメータが含まれます 3

4 構造方程式モデル 最後の山ですが ここまで行列がわからなければ その意味はよくわかりません 最初に言ったように 測定方程式と構造方程式を合体させたものなので 行列式も両者を合体させたものです dj j cj j bj j aj j x x x x への係数から : への係数から : ( 因子負荷行列 ) への係数から : への係数から : : に関する残差変数 : に関する残差変数ここで d c b a c b d a d d +

5 構造方程式モデル 測定方程式も 構造方程式もこの特殊なケースとなります 共分散構造 + + o o O O O O O O c b 構造方程式測定方程式 [ ] ( ) d d d u ' ' u Σ Σ Σ Σ Σ T G GTΣ Σ I T O I G

識別問題 連立方程式には不能 ( 解が存在しない ) と不定 ( 解が無数に存在する ) があります 不能の場合は解が存在しませんが 近似解の推定によって母数を求めます というか 無理やり連立方程式を作っているので ほとんどこの不能であることは確かです 不定の場合 この方程式は 識別 できません 十分条件 をクリアすれば方程式は識別できます 十分条件とは それが満たされればモデルは識別されるが 満たされないからといってもモデルが識別されるとは限らないという条件 です 一方 それが満たされればモデルは確実に識別されず それが満たされるからといってモデルが必ず識別されるとは限らない条件 を必要条件といいます 6

SEM のコツ mos を動かしていて悩まされるのがこの識別問題です 教科書によれば 以下の 3 つが識別を行うコツだそうです. 十分条件による識別. ソフトウエアによる識別 ( これは力技です ) 3. ノウハウによる識別 十分条件による識別を行えばモデルは必ず識別されます ( 広がりは少ないが ) d 構成概念をいくつか用意 一つの構成概念だけを測定するをおのおの 3 つ以上づつ用意 各々の構成概念に関して それを測定しているから任意につ選んでそのへの係数をに固定 構成概念が外生変数なら 分散をに固定 ( 逆に言えば 外生変数でなければ分散は設定する必要ない ) との間に単方向 両方向のパスを引く 後はもう少し面倒くさい識別条件があるが これで行えばだいたい大丈夫のようです 7

SEM のコツ その 教科書によれば こんなノウハウによるコツが紹介されています すべての残差変数 ( 外生変数,, 誤差変数, d ) には分散を設定 外生的な複数の構造変数の間には共分散を設定 ( と j と j と j ) 事前情報に反しない限り 外生的な構造変数には誤差変数が刺さらない 誤差変数間の共分散 誤差変数と外生的な構造変数との間には共分散を設定しない 事前情報に反しない限り 内生的なにはつつ誤差変数がささる 内生的な構成概念にはつつ誤差変数がささる 内生的な変数の分散は設定しない (mosではもともとできない?) 内生変数間 内生変数と外生変数間の共分散は設定しない モデル中の推定すべき母数の総数 ( 自由度パラメータ ) は の分散 ( +) / n x n x と共分散の和を超えない の各々に関し そこからでている単方向の矢を任意に一つ選んでその係数の値をに固定する 標準化解ならば問題ない 外生変数の時は分散を固定 d 8

適合度指標 一時間で終わるために最後ははしょります χ 検定 まああまり役に立たないと割り切ったほうがいいと思います GFI 簡単に言うと 母数によって表現された共分散と データによる共分散の差です が最もよく 0.9 以上必要とのことですが 自由度が大きくなると母数が少ない時には数字があがらないとのこと 無理に上げなくてもいいかも あるいは母数が多ければGFIもあがります これはRに似ていますね 教科書は の数を少なくしろといっています (30 以下 ) RMR 残差平方平均平方根 まあ 残差のことですね 0が最もよい GFI 自由度修正済みのGFI 修正済みRみたいなもの CFI 比較適合度指標 0からまでの範囲に収まり がもっともよい IC ご存知 ですが 複数モデルを比較するときに用いるとよい 他にもごちゃごちゃたくさんありますが省略 最初はを少なくしてGFIだけ使っていれば大丈夫だと思います また 母数の検定はできますのでこれはmos を参照してください 9