糖尿病のお薬について H26.6.26 糖尿病教室 柏原病院薬剤部
糖尿病とは インスリンが十分に作用しない 血液中にブドウ糖がたまってしまう 血糖の濃度 ( 血糖値 ) が高い状態が続く
糖尿病の治療目的 血糖 体重 血圧などをコントロール 合併症の発症 進展の阻止 健康な人と同じ QOL の維持 寿命の確保
糖尿病の治療 食事療法 運動療法 薬物療法
薬物療法 経口薬療法 注射薬療法
糖毒性後高血糖改善系高血糖の改善食高血糖病態に合わせた経口血糖降下薬の選択 2 型糖尿病の病態経口血糖降下薬 インスリン抵抗性増大 + インスリン分泌能低下 インスリン作用不足 種類主な作用インスビグアナイド薬肝臓での糖新生の抑制リン骨格筋 肝臓でのインスリン系チアゾリジン薬感受性の改善 抵抗性改善インスリン分泌促進系DPP-4 阻害薬 スルホニル尿素薬 血糖依存性のインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制 インスリン分泌の促進 食後高血糖 空腹時高血糖 速効型インスリン分泌促進薬 α-グルコシダーゼ阻害薬 より速やかなインスリン分泌の促進 食後高血糖の改善 炭水化物の吸収遅延 食後 糖尿病治療ガイド 2012-2013
経口血糖降下薬インスリン分泌抵抗性改善系インスリン促進系分泌能低下糖毒性排泄調節系高血糖吸収 病態にあわせた経口血糖降下薬の選択 2 型糖尿病の病態 インスリン抵抗性増大 種類 ビグアナイド薬 チアゾリジン薬 主な作用 肝臓での糖新生の抑制 骨格筋 肝臓でのインスリン感受性の改善 インスリン インスリン作用不足 食後高血糖 空腹時高血糖 スルホニル尿素薬 速効型インスリン分泌促進薬 DPP-4 阻害薬 α- グルコシダーゼ阻害薬 (α-gi) SGLT2 阻害薬 インスリン分泌の促進 より速やかなインスリン分泌の促進 食後高血糖の改善 血糖依存性のインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制糖炭水化物の吸収遅延 食後高血糖の改善 腎での再吸収阻害による尿中ブドウ糖排泄促進 糖尿病治療ガイド 2014-2015
経口血糖降下薬 インスリン抵抗改善系 インスリン分泌促進系 糖吸収 排泄調節系
経口血糖降下薬 インスリン抵抗改善系 インスリン分泌促進系 糖吸収 排泄調節系
インスリンの働きを良くする薬 (1) ~ ビグアナイド薬 ~ 主に肝臓や筋肉に作用し インスリンの働きを良くします
こんなことに気をつけましょう! ~ ビグアナイド薬 ~ 食欲不振や吐き気 下痢等を起こすことがあります 発熱や下痢など脱水症状出現のおそれがあるときは飲まないでください 造影剤が必要となる CT 造影検査をされる場合には お薬を休止する必要があります 強い倦怠感 吐き気 下痢 筋肉痛などの症状が起きたら主治医に知らせてください 飲み忘れたら 気づいた時点で服用してください 次の服用が近いときには服用しないでください
インスリンの働きを良くする薬 (2) ~ チアゾリン誘導体 ~ インスリンの働きを良くし 血糖値を下げます
こんなことに気をつけましょう! ~ チアゾリン誘導体 ~ 浮腫など体に水が貯まる可能性があります むくみが現れた時は主治医に申し出てください 飲み忘れたら 朝食時の服用を忘れたら 昼食時に服用してください それ以降は 1 回分とばしてください
アクトスについてのトピックス 膀胱がん発生のリスク上昇の恐れによりフランスで回収決定 FDAの見解 :1 年以上の服用と 膀胱がんのリスク増加との関連性がある可能性がある 武田薬品 : 添付文書改訂 ( 膀胱がん患者には使用を避ける 使用患者には患者への説明を十分に行う 血尿 排尿痛の症状では受診の説明 )
経口血糖降下薬 インスリン抵抗改善系 インスリン分泌促進系 糖吸収 排泄調節系
インスリン分泌を促す薬 (1) ~ スルホニル尿素薬 (SU 薬 )~ 膵臓に直接働いて インスリンを分泌させる薬です
こんなことに気をつけましょう! ~ スルホニル尿素薬 (SU 薬 )~ 低血糖を起こすことがあります ブドウ糖 ( または砂糖 ) を携帯しましょう 食事療法を正しく守らなければ 体重が増えるおそれがあります 飲み忘れたら 食後 30 分以内であれば すぐ服用してください 食後 30 分以降は 1 回分とばしてください
インスリン分泌を促す薬 (2) ~ グリニド系薬 ( 速効型インスリン分泌促進薬 )~ 膵臓に直接働いて インスリンを分泌させる薬です
こんなことに気をつけましょう! ~ グリニド系薬 ~ 食直前に必ず服用してください SU 薬に比べて効き目が早く現れます スターシス ファスティック : 食前 10 分以内グルファスト : 食前 5 分以内 低血糖を起こすことがありますブドウ糖 ( または砂糖 ) を携帯しましょう 飲み忘れたら 1 回分とばしてください
DPP-4 阻害薬 インクレチン ( インスリン分泌を促す ) の血中濃度 を高めて血糖を下げるお薬です
こんなことに気をつけましょう! ~DPP-4 阻害薬 ~ 血糖に合わせてインスリン分泌を促進し グルカゴン分泌を抑制するため 単独では低血糖の可能性は低いです SU 薬等との併用で重篤な低血糖が報告されています 飲み忘れたら 朝の飲み忘れに気付いたら その時点で服用してください
インクレチン (GLP1) とは 食事摂取時に腸管から血中に分泌されるホルモンの一種 1 膵 β 細胞内でcAMPを産生しインスリン分泌を促進 グルカゴン分泌抑制 2 胃内容排出の遅延 3 満腹感の促進 ( 血糖依存のホルモンのため低血糖を起こしにくい ) インクレチンはDPP-4により分解され活性を失う ( 半減期 3 分 )
経口血糖降下薬 インスリン抵抗改善系 インスリン分泌促進系 糖吸収 排泄調節系
食後の血糖上昇を抑える薬 ~α- グルコシダーゼ阻害薬 ~ 食後の急激な血糖上昇を抑えます
こんなことに気をつけましょう! ~α- グルコシダーゼ阻害薬 ~ 必ず食直前に服用してください お腹が張ったり おならが出やすくなったり 下痢をおこすことがあります 他の糖尿病薬と一緒に服用した場合 低血糖が現れることがあります 低血糖時は 必ずブドウ糖を服用してください 飲み忘れたら 食事中ならばすぐに服用してください 食後の場合は 1 回分とばしてください
SGLT2 阻害薬 ( 商品名 ) スーグラ フォシーガ ルセフィ アプルウェイ デベルザ
SGLT-2 の作用 近位尿細管におけるグルコースの再吸収 糸球体毛細血管 糸球体 グルコース グルコース再吸収 への寄与 近位尿細管 近位曲尿細管 近位直尿細管 SGLT2 SGLT1 S1 S2 S3 約 90% 約 10%
SGLT2阻害薬の作用 糖尿病患者 糖尿病患者 SGLT2阻害薬服用時 SGLT2阻害薬 Kanai Y. et al.: J Clin Invest. 93 1 : 397-404, 1994
SGLT2 阻害薬の特徴 インスリン作用を介さない新しい作用メカニズム 尿糖 (60~70g/ 日 ) 排泄促進作用により血糖を低げます 既存の血糖降下薬との併用療法が可能です 内臓脂肪燃焼による体重低下がみられます インスリン抵抗性 膵 β 細胞機能が改善されます 血圧 脂質 尿酸などの代謝異常を軽減させます 川崎医科大学特任教授加来浩平診療と新薬 50;607-614 2013
こんなことに気をつけましょう! ~SGLT2 阻害薬 ~ 多尿 頻尿 口渇 多飲に注意 ( 尿糖排泄促進に伴う浸透圧利尿が原因 ) してください 適切な水分摂取の必要があります ( 夏場 過剰な飲酒時 高齢者などは脱水症状を引き起こさない様に特に注意が必要 ) 性器感染 ( 特に女性に多い ) 尿路感染に注意 高齢者 やせ型の人 : 骨格筋量の減少に注意 川崎医科大学特任教授加来浩平診療と新薬 50;607-614 2013
薬物療法 経口薬療法 注射薬療法
注射薬療法 インスリン療法 インスリン以外の注射薬 (GLP-1 受容体作動薬 )
インスリン分泌の違い
インスリン療法を開始する時 1 型糖尿病 糖尿病昏睡 重症感染症 全身麻酔手術 糖尿病合併妊婦 著明な高血糖 尿ケトン体陽性 SU 剤二次無効例 重篤な肝 腎障害 糖毒性解除時 高カロリー輸液使用時 ステロイド糖尿病
インスリン作用時間 超速効型速効型混合型中間型持効型 主に追加分泌を補う 追加分泌と基礎分泌を補う 主に基礎分泌を補う
インスリン自己注射の注意点 注射の名前と使用単位を覚えましょう 注射手技を確実に行いましょう 注射時間 単位を守りましょう 注射部位により吸収速度が変わります 保管方法に注意しましょう
低血糖症とは 血液中の糖分が少なくなりすぎた状態です 危険な状態なので軽いうちに対応が必要です 予防には 指示どおりの薬の使用 規則正しい生活を守りましょう 低血糖症になったら すぐに糖分をとりましょう ベイスン グルコバイ等服用時にはブドウ糖を! 周囲の人にも低血糖症について知ってもらいましょう
低血糖症とは
注射薬療法 インスリン療法 インスリン以外の注射薬 (GLP-1 受容体作動薬 )
GLP-1 受容体作動薬とは 膵臓に働き 血糖値にあわせてインスリン分泌を促進し グルカゴン分泌を抑える 胃内容物排出促進作用がある 食欲を抑制し 体重を減らす作用がある DPP-4 による分解を受けにくい
GLP-1 受容体作動薬の種類 商品名血中半減期 ( 時間 ) 作用時間 ( 時間 ) ビクトーザ皮下注 13~15 >24 バイエッタ皮下注 5μg バイエッタ皮下注 10μg 1.4(5μg) 1.3(10μg) 8 ビデュリオン皮下注 - 注 1) - 注 1) リキスミア皮下注 注 1) 徐放製剤のため該当データなし 2.12(10μg) 2.45(20μg) 15 糖尿病治療ガイド 2014-2015 から一部改変
いざという時に 天災は忘れた頃にやってくる 災害の心構え 1 自分や家族の身を守る 2 正しい情報を確認する 3 家族や友人と連絡をとる 4 3 日間は自力で乗り切る 5 自分の治療方法が言える 6 災害生活のセルフケアを心がける 7 地域でのコミュニケーションを大切に
まずは備えから かかりつけの病院 薬局と連絡が取れない! いつも飲んでいる薬がない ( 分からない )! 対策 1 週間程度のお薬のストックを用意しましょうお薬手帳や糖尿病手帳などを非常時必要リストに加えましょう 携帯電話のカメラ機能の利用も Good
ご清聴ありがとうございました