暫定版修正 加筆の可能性あり ( 付録 ) 電子スピン共鳴 :Electron pin Reonance (ER) 1. 歳差運動 (preceion). スピン角運動量 : 電子 3. ゼーマン効果 : スピン 4. 平行 反平行状態 5. ラーモア歳差運動 6. 電子スピン共鳴 7. 緩和過程 注意 1. 本付録 : 電子スピン共鳴 について 原理 概略を説明. 但し 電子スピン共鳴装置 の特徴や使用法の説明はしません 3. 核スピン共鳴 :Nuclear Magnetic Reonance も 原理的 には同じです 4. 用語使い : 一様磁場 直流磁場 は同一 5. 以下の用語使いは厳密ではありません ラーモア歳差運動 : Larmor preceion ラーモア角周波数 : Larmor angular frequency ラビ振動 :Rabi ocillation ラビ角周波数 :Rabi flopping frequency ブロッホ方程式 :Bloch equation など 50-1
おことわり 電場でお馴染みの E と D 本付録では 電場 E 電束密度 D と記す 電場 E:electric field 電界 E 電束密度 D:electric flu denity 電気変位 D:electric diplacement field C: クーロン 単位 V m Cm 磁場でお馴染みの H と B 注意 : 英語では H も B も magnetic field と呼ばれる 混同しやすい 本付録では 磁場 H 磁場 B と記す 磁場 H:magnetic H field 磁場の強さ :magnetic field intenity 磁場 B:magnetic B field 磁束密度 :magnetic flu denity T: テスラ Wb: ウェーバー T 単位 Am = Wb m 50-
歳差運動 (preceion): 磁場 電子の磁気双極子モーメント :408-11 v 電子の速度電流は逆向き 1 e m= 1 ( 1) dv1 r J r r v J r v r r ( ) = e δ ( ) 1 1 原点 r 速度 : 大きさ一定 電子の軌道角運動量 m0: 電子の質量無視 : スピン角運動量 黒線 : 一様な磁場の磁力線 e L= r m0v m= L= γ L m トルク : 回転軸回りの力のモーメント 0 γ: 磁気回転比 gyromagnetic ratio 歳差運動 ( ) N= m B = ω L, B = 0,0, B 運動方程式 : 歳差運動 (preceion) 成分のみ L N = = ω L ω = t ( γ ) 0, 0, B ω L 赤矢印 : 角運動量 角速度ベクトル : 大きさ ( 歳差運動の回転角周波数 ) 向き ( 歳差運動の回転軸 ) 注意 : トルクの回転軸は N ベクトルの向き 歳差運動の回転軸と垂直 (409-10) 50-3
簡単のため : 電子 1 個 スピン角運動量 : 電子 スピン磁気双極子モーメント :m pin magnetic dipole moment e µ g B m = = γ = m0 スピン角運動量 : pin angular momentum 磁気回転比 :γ 角運動量に対する磁気双極子モーメントの割合 e µ Bg γ = =, g m 0 g 因子 : 電子スピン g α = 1+ + π 説明省略 :Dirac による相対論的量子力学から導出参考文献 : 沼居 大学生のためのエッセンス量子力学 p.1 共立出版 微細構造係数 α: 自然定数電子と電磁場の相互作用の大きさ参考文献 : 砂川 量子力学の考え方 p.5 岩波書店 e 1 α = = 4πε c 137.036 0 磁気双極子モーメント m µ g = µ gm B = m B ( ) 成分 :-component スピン角運動量 : 成分 :-component 1 3 = = + = 4 pin quantum number m, ( 1) m:econdary pin quantum number 50-4
ゼーマン効果 : スピン (1) 簡単のため : スピン角運動量のみ ( 孤立電子 :iolated electron) µ Bg m = γ = g m 一様磁場と電子スピンの相互作用エネルギー 磁場 B:+ 軸 pin up pin down H = m B H = γ B = γ B int int ( ) 1 =± = 0,0,, m = ( ) B = 0,0, B, = > 0 m B 赤矢印 : スピン角運動量黒線 : 一様な磁場 B の磁束線 一様磁場と電子スピンの相互作用エネルギー pin up pin down 歳差運動の回転角周波数 H = γ B int H γ B H = γ B int = int ω = γ B 50-5
ゼーマン効果 : スピン () エネルギー差 :pin up/ down 歳差運動の回転角周波数 ω 1 = γ E int int B = H H = γb E = ω =±, m =± g 因子 :g-factor ボーア磁子 :μb 単位 E = γ B = g µ B B 計算例 : 歳差運動の回転周波数 h: プランク定数 Am, [ J] [ Nm] [ T] [ N/Am] µ = B B = f g µ B h B B = 0.1T = 4 9.7 10 0.1 34 6.63 10.8 GH マイクロ波帯 何がいいたいのかな? 量子力学によれば 1. 電子スピン固有状態は pin up と down. 磁場 B(+ 軸 ) を印加するとエネルギー縮退が解ける ( ゼーマン効果 :Zeeman effect) 3. 状態遷移 : エネルギー差 (ΔE) はマイクロ波帯 pin up と down: どちらの電子エネルギーが高い?( 参照 :501-10) 1. 平行 : 磁気双極子モーメントと磁場 B の向きが 平行. 反平行 : 磁気双極子モーメントと磁場 B の向きが 反平行 3. 電子スピンの場合 : 磁気双極子モーメントとスピン角運動量ベクトルは逆方向 4. 核スピンの場合 : 磁気モーメントとスピン角運動量ベクトルは同方向 50-6
平行 反平行状態 一様磁場と磁気双極子の相互作用エネルギー 1 mb = B r B r = J r A r ( ) ( ) dv ( ) ( ) 1 1 µ 0 dv 相互作用による磁場のエネルギー ( 負符号 ) ポテンシャルエネルギー 電流の位置エネルギー 負符号を外すと 1 mb = B( r) B ( r) dv 相互作用による磁場のエネルギー 1 µ 0 相当乱暴ではあるが 電子スピンによる磁気双極子に対して 1. 磁場 B(+ 軸 ) を印加すると 磁場のエネルギーは平行 ( 磁気双極子 ) の方が大きい. 平行状態から反平行状態に遷移するとき 磁場はエネルギーを失う 電子はエネルギーを獲得する 3. 従って 電子のエネルギーは平行時より反平行時の方が大きい ( 磁気双極子に対して ) 電子エネルギー 磁場零縮退 B 磁場 B: 印加 磁気双極子反平行 pin up 平行 pin down m = 1 m = 1 ゼーマン分裂 Zeeman plitting E = ω = γ B 疑問 : 歳差角周波数に等しい角周波数を持つ交流磁場 ( マイクロ波 ) を印加するとどうなる? 電子スピン共鳴 :Electron pin Reonance(ER) 50-7
ラーモア歳差運動 :Larmor preceion 注意 : 直流磁場 一様磁場は同じ意味 ラーモア歳差運動直流磁場 pin up 電子エネルギー : 大 赤点線 : 直流磁場 交流磁場印加 : 平面上で回転軸 ( 赤点線 ) を揺らす! 軸 y 軸 直流磁場 B0 成分のみ B = ( ) 0,0, B 0 軸 pin down 電子エネルギー : 小 軸周りの歳差運動 : 歳差運動 () と略記 N= = m B= γ B t = B γ = ω, ω = 0,0, ( ω ) ω = γ B = γ B ラーモア角周波数 :ω 歳差運動 () の回転角周波数 0 交流磁場 : マイクロ波帯 1. 成分のみ : 振幅は小さい. 変調角周波数 :v 3. 共鳴状態 (on-reonance) ω = B, B= Β + B 直流磁場 : 成分 B γ 交流磁場 : 成分 ( 0,0, B ), B ( B co vt,0,0) = = 0 0 1 1 v= ω, B B 1 0 v = ω 0 1 50-8
電子スピン共鳴 : 大雑把な説明 (1) ラーモア角周波数 :Larmor angular frequency 歳差運動 ( 軸 ) の角周波数 直流磁場 1. 成分のみ ラーモア歳差運動 ( 軸 ). ラーモア角周波数 :ω 交流磁場 : マイクロ波帯 1. 成分のみ : 振幅は小さい. 共鳴状態 : ラーモア角周波数と変調角周波数が一致 B co = B1 vt v = ω 簡単のため : 矩形波近似半周期毎に回転軸 ( 赤点線 ) を揺らす ( 最初の一周期のみ図示 ) 交流磁場 成分 矩形波近似 共鳴状態 :on-reonance v = ω pin up なんとなく言えること 共鳴状態であれば 1. 交流磁場 ( 矩形波 ) 印加によりスピンが 初期状態 :pin up から変化. 時間経過 : down 状態へ 3. 更に時間経過 : down から up 状態に戻る 4. これを繰り返す 5. 交流磁場振幅が大きいほど updown 繰り返し速度が増す スピン角運動量ベクトル ( 青矢印 ) 歳差運動 : 赤点線を回転軸として半周注意 : 常に右回り ( 反時計 ) pin down 回転軸が変化 : 黒点線から赤点線へ歳差運動 : 赤点線を回転軸として半周注意 : 常に右回り ( 反時計 ) 注意 : 本付録ではラーモア角周波数 : 歳差運動 ( 軸 ) の角周波数 50-9
電子スピン共鳴 : 大雑把な説明 () 交流磁場 ( 正弦波 ) にすると pin up から down 状態へ pin down から up 状態へ B co = B1 vt 注意 : ラーモア角周波数と回転の向き ( 反時計回り : 左回り ) は不変 軸 pin up B = B 0 直流磁場 pin down これから検討したいこと 共鳴状態 : 交流磁場変調角周波数がラーモア角周波数に一致するとき v = ω 1. 交流磁場がなければ : スピンはラーモア歳差運動 () のみ ( 反時計回り : 左回り ). 初期状態が pin up or down 状態であれば歳差運動は無 3. 交流磁場 : 歳差運動 () をしながら up down up と変化 ( ラビ振動 :Rabi ocillation) 4. スピン状態に関する up down 繰り返し角周波数 ( ラビ角周波数 :Rabi flopping angular frequency) について検討 50-10
電子スピン共鳴 : 回転座標系 (1) 交流磁場 : マイクロ波帯 -y 面 : 右 左回り磁場の重ね合わせ BL: 左回り BR: 右回り ( B vt ) B1 = 1co,0,0 B1 = BL + BR y 軸 y 軸 B B 1 1 軸 軸 BLR, = co vt, ± in vt,0 回転座標系の導入 1. 左回り磁場 : 振幅は B1 の半分 回転角周波数 v. 右回り磁場の影響は無視 : 回転波近似 (Rotating-wave approimation) 3. 回転座標系の回転角周波数を v として 回転方向を左回りにすると 回転座標系上の住人にとって BL: 左回り磁場 は常に一方向を向く つまり 静止座標系上の BL: 左回り磁場 は回転座標系上で 直流磁場 として振舞う 4. 回転座標系上のベクトルをチルダ ~ で区別する 5. 例えば 常に一方向を向く磁場ベクトル の方向を 回転座標系上の 方向 とすれば v v 静止座標系 B 回転座標系 B B co, in,0 B1 B L =,0,0 1 1 L = vt vt 軸周りの回転 : 回転角周波数 v B L co vt in vt 0 = in vt co vt 0 B 0 0 1 L 50-11
電子スピン共鳴 : 回転座標系 () スピン角運動量ベクトル の動き 1. 静止座標系 : 軸周りのラーモア歳差運動 左回り ( 反時計回り ) ラーモア角周波数 ω. 共鳴状態 : ラーモア角周波数 変調角周波数 回転座標系の回転角周波数が一致 (ω=v) するから 回転座標系上の住人にとって 軸周りのラーモア歳差運動は 見かけ上 消える 3. ところが 回転座標系では BL: 左回り磁場 が 見かけ上 直流磁場 となるから この 直流磁場 による歳差運動 ( ラビ振動 :Rabi ocillation) について考慮しなければならない 4. 回転座標系上の観測者が観測するラビ振動は 直流磁場 : 回転座標系上の 成分 による歳差運動 ラビ角周波数 : 直流磁場 : 回転座標系上の 成分 による歳差運動の回転角周波数 ( ) γ B1 v = ω ω, ω,0,0, = = ω ω = t ところが 離調有の場合 (ω v) ラビ角周波数 1. ω>v の場合 : 回転座標系上の住人は 軸周りのラーモア歳差運動 左回り ( 反時計回り ) 回転角周波数 ω-v>0 を観測. ω<v 場合 : 逆回りのラーモア歳差運動を観測 3. つまり 回転座標系上の住人が観測する歳差運動は 直流磁場 : 回転座標系上の 成分 によるもの ( ラビ振動 ) と 軸周りのラーモア歳差運動 の合成運動となる 4. 回転座標系上の 軸周りの歳差運動 ( ラビ振動 ) は交流磁場振幅 軸周りのラーモア歳差運動 は交流磁場変調角周波数で調整できる γ ω 1, ω B = =,0, ω v t 50-1
電子スピン共鳴 : 静止座標系 交流磁場 ( 正弦波 ) にすると pin up から down 状態へ pin down から up 状態へ B co = B1 vt 注意 : 軸周りの回転角周波数 ( ラーモア角周波数 ) と向き ( 反時計回り : 左回り ) は不変 軸 pin up B = B 0 直流磁場 ラーモア角周波数 ω = γ B 0 pin down 1. 共鳴状態 :ω=v. 回転座標系上の住人が観測する歳差運動は 直流磁場 : 回転座標系上の 成分 によるラビ振動のみ 3. 静止座標系上の観測者が観測する歳差運動は ラビ振動 と 軸周りのラーモア歳差運動 4. pin up down 繰り返し角周波数 ( ラビ角周波数 :Rabi flopping angular frequency) は 離調有りの場合 ( 省略 ) 参考文献 :P.Meytre, M. argent III Element of Quantum Optic p.95 pringer ω = γ B 1 50-13
緩和 :Relaation ocillation 緩和過程 : 緩和無 (1) 回転座標系 : スピン歳差運動 ( ラビ振動 ) B1: 交流磁場振幅 離調 ( γ B1 = ω, ω = ω, ωy, ω) =,0, ω v t チルダ ~ : 回転座標系 ラビ角周波数 v: 変調角周波数 ω: ラーモア歳差運動 ( 軸 ) ω = γ B 0 B0: 直流磁場振幅 共鳴状態 : 交流磁場変調角周波数がラーモア角周波数に一致するとき ω = v 展開 : スピン歳差運動 ( ラビ振動 ) 一般解 : 回転運動 (y 平面 ) = 0, = ω y, = ω y ( t) = 0 ( ) = ( ) ( ) = ( ) t 0 in ω t, y y t 0 co ω t 50-14
緩和過程 : 緩和無 () 運動方程式 : 質量 m m= 1 F = = 0, 求心力 ( 向心力 ):Centripetal force F = = ω, F = = ω y y y ポテンシャル ( 位置 ) エネルギー :φ F = φ φ = + φ F = = 0, F F (, y, ω ) ( y ) φ = = ω y y y φ = = ω, スピン歳差運動 ( ラビ振動 ) 1. ポテンシャル ( 位置 ) エネルギー :φ. 等高線上での粒子の円運動に対応 φ ( y ) = ω ( y + ), 定常解 : 零 y 50-15
緩和過程 : 緩和有 y ( ) 共鳴状態 =, = + ω, = ω y y T T T1 共鳴と緩和の現象論 (Bloch equation) 1. T1: 縦緩和 ( スピン- 格子緩和 ) T: 横緩和 ( スピン-スピン緩和 ). 孤立電子であれば緩和は無し 一般には 周囲の電子や原子核の影響 ( エネルギー散逸 ) を考慮しなければならない 3. この影響を現象論的 (phenomenologically) に扱うために T1: 縦緩和 T: 横緩和を導入 緩和有 : 時刻 t0 で交流磁場を witch off エネルギー散逸後の最終状態 pin down 状態 ( 電子エネルギー最低状態 ) とする 0 ( ) ω = t t =, =, = 0 y y T T T1 t T t y, ( ) = y, ( 0 ) y, ( ) = 0 t t e t t T1 T1 t ( t) = ( t0 ) e 1 e ( ) = 緩和無 : 時刻 t0 の状態を保持 ( ) = ( ), ( ) = ( ), ( ) = ( ) t t t 0 y y 0 0 最終状態 : pin down 状態 50-16
緩和過程 : ポテンシャルエネルギー 緩和有 : 交流磁場を witch on ( ) =, = + ω, = ω y y y T T T1 運動方程式導出 Damping = T y ω ω y = ω y T T1 T1 ω = ω + y T T 1 向心力 : 回転運動緩和が無いときの ポテンシャルエネルギー に対応 緩和によるポテンシャルエネルギー補正項目 緩和過程を力学的に考えると 1. Damping 効果(onlyではない). ポテンシャルエネルギー 補正 を 運動方程式 に含む ポテンシャルエネルギー :φ 赤部分 : 緩和によるポテンシャルエネルギー補正項目 φ φ ω ω φ ω = 0, = ω, = ω + T y y T1 T 1 y 50-17
緩和過程 : 定常状態 定常状態交流磁場 witch on 状態で 緩和無 : 回転運動 定常状態無し =0 は除外 ラビ振動が永遠に続く ラビ角周波数 ( t) = 0, ω = ( ) = ( ) ω ( ) = ( ) ( ) =, = + ω, = ω y y y T T T1 γ B 1 t 0 in t, t 0 co ω t y y 緩和有の場合 定常状態を 時間偏微分 = 零 の条件から求めると 緩和が大 : 定常状態は pin down 状態 ( 電子エネルギー最低状態 ) と一致する 緩和が小 : 定常状態は pin down 状態 ( 電子エネルギー最低状態 ) と異なる ωt 1 = 0 ( ) = 0, ( ) =, ( ) = t + TT + TT y 1 ω 1 1 ω 1 緩和有の場合 定常状態をポテンシャルエネルギーが最小 ( 極小 ) 条件から求めると φ ω ω = ω = 0 y y T1 T1 φ ω = ω + = 0 y T 定常状態 1. 緩和が無ければ定常状態 ( 0 ) は無. 緩和有の場合 定常状態有 3. 時間偏微分 = 零 4. ポテンシャルエネルギーが最小 ( 極小 ) 5. 定常状態 : 両者で同じ結果 6. 定常状態のパラメータ依存性 T1: 縦緩和 ( スピン - 格子緩和 ) T: 横緩和 ( スピン - スピン緩和 ) 交流磁場振幅 ( ラビ角周波数 ) 50-18