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50% であり (iii) 明らかな心臓弁膜症や収縮性心膜炎を認めない (ESC 2012 ガイドライン ) とする HFrEF は (i)framingham 診断基準を満たす心不全症状や検査所見があり (ii) は EF<50% とした 対象は亀田総合病院に 年までに初回発症

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1治療 かっていたか, 予想される基礎値よりも 1.5 倍以上の増加があった場合,3 尿量が 6 時間にわたって 0.5 ml/kg 体重 / 時未満に減少した場合のいずれかを満たすと,AKI と診断される. KDIGO 分類の重症度分類は,と類似し 3 ステージに分けられている ( 1). ステー

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演 題 26 腎機能障害を伴う後期高齢心不全患者に対するトルバプタンの長期 使用における安全性 有用性の検討 発 表 者 脇田 富雄 熊本県 上天草市立上天草総合病院 上天草市立上天草総合病院 循環器科 脇田富雄 トルバプタンは 腎集合管のバソプレシンV2受容体に 選択的に作用し 他の利尿薬とは異なる機序として水利 尿作用を有し レニン アンジオテンシン系やバソプレ シン系を賦活せず 血圧変動が少なく 腎血流を減らさ ないとされている 人口の高齢化に伴い 高齢者心不全患者が増加してきて いる中で 特に高齢心不全患者は腎機能障害を伴ってい ることが多いことから 腎保護効果が期待できるトルバ プタンによる体液調節に期待が高まっている トルバプタンは 腎集合管のバソプレシンV 2受 容体に選択的に作用し 他の利尿薬とは異なる機序 として水利尿作用を有し レニン アンジオテンシ 心不全患者は 心原性肺水腫と体液貯留のいずれかの病 態で入退院を繰り返すことが多く 特に高齢心不全患者 は腎機能障害を伴っている上に くり返す心不全のため 利尿薬の増量を余儀なくされ Na利尿に伴う腎血流量 減少によりWorsening Renal Function WRF を来 しやすい ン系やバソプレシン系を賦活せず 血圧を変動が少 なく 腎血流を減らさないとされている 人口の高齢化に伴い 高齢者心不全患者が増加し てきている中で 特に高齢心不全患者は腎機能障害 を伴っていることが多いことから 腎保護効果が期 待できるトルバプタンによる体液調節に期待が高 まっている 背景 心不全患者は 心原性肺水腫と体液貯留のいずれ かの病態で入退院を繰り返すことが多く 特に高齢 心不全患者は腎機能障害を伴っている上に くり返 腎機能障害を伴う後期高齢心不全患者にお いて トルバプタン継続使用による腎機能 血清電解質 心機能 体重 血圧 脈拍 に及ぼす影響を後ろ向きに検討し す心不全のため利尿薬の増量を余儀なくされ Na 利尿に伴う腎血流量減少によりWorsening Renal Function WRF を来しやすい 目的 腎機能障害を伴う後期高齢心不全患者において トルバプタン継続使用による腎機能 心機能 体 重 血圧 脈拍に及ぼす影響を後ろ向きに検討し 353

211年9月から214年12月までの間 に心不全のため入院し トルバプタンを 開始後 継続している腎機能障害を伴う 後期高齢心不全患者25例を対象とし 年齢 歳 性別 M/F 86.2±5.1 9例/16例 血清BNP pg/ml 392.2±344.4 血清BUN mg/dl 37.6±21.6 血清Cr mg/dl 1.6±.6 egfr 29.9±1.4 Ⅴ期 2例 Ⅳ期 12例 Ⅲb期 9例 Ⅲa期 2例 ml/min/1.73m2 血清Na meq/l 136.9±6.1 血清K meq/l 4.±.8 患者背景 対象 CKD分類 平 均 年 齢 86.2歳 男 性 9 例 女 性16例 平 均 211年9月から214年12月までの間に心不全のた め入院し トルバプタンを開始後 継続している腎 BNP値 392.2 BUN/Cr/eGFR 37.6/1.6/29.9 機能障害を伴う後期高齢心不全患者25例を対象とし Na/K;136.9/4.であっCKDのステージは V期 /IV期/IIIb期/IIIa期 2例/12例/ 9例/ 2例であっ 結果 ループ利尿薬を含む投与薬にトルバプタンを追加し 効果に応じて適宜増減しトルバプタンの投与 量は7.5 15mg/day 継続期間は13.6±6.8ヶ月 6 3ヶ月 全例が初回投与例であっ トルバプタン投与と投与後 後 後 1ヶ月後 6ヶ月後 の腎機能 血清電解質 BNP 体重 収縮期血圧 脈拍等を比較検討し 解析方法は Paired t検定を用い ( vs ) 7 6 5 4 3 42.9±23.2 37.6±21.6 37.1±23.2 41.6±15.6 35.5±11.5 2 1 方法 ループ利尿薬を含む投与薬にトルバプタンを追加 し 効果に応じて適宜増減しトルバプタンの投 与量は7.5 15mg/day 継続期間は13.6±6.8 ヶ月 BUNは経過中有意な変動はなかっ 6 3 ヶ月 全例が初回投与例であっ トルバプタン投与と投与後 後 1週間 後 1ヶ月後 6ヶ月後 の腎機能 血清電解質 BNP 収縮期血圧 脈拍 体重等を比較し 有効 性 安全性について検討し ( vs ) 3. 2.5 2. 解析方法は Paired t検定を用い 1.5 1.64±.64 1.68±.76 1.85±.96 1.65±.52 1.68±.7 1..5. Crも同様であっ 354

8 7 5 6 4 5 3 2 ( vs ) (pg/ml) ( vs ) 6 29.9±1.4 29.8±1.6 27.2±9.6 28.±7.7 4 3.7±14.3 3 392.2±344.4 411.7±266.7 296.9±215.4 2 1 1 egfrも同様であっ BNPも1ヶ月 6ヶ月とも値と比較して有意 差はなかっ ( vs ) 15 血圧 mmhg 脈拍 bpm 145 14 135 136.9±6.1 138.±6.4 138.2±6.8 ( vs 投与) 139.±3.6 19.2±18.9 18.4±26. 137.7±5.8 13 71.2±11.2 7.6±12.9 125 12 血清Naも有意な変動はなかっ 収縮期血圧 脈拍数とも投与と投与後で変化は なかっ ( vs ) 5.5 5. 4.5 4. 4.±.8 4.±.6 4.3±.6 (kg) P.5 vs 投与 4.3±.5 4.1±.6 51.2±8.7 3.5 3. 5.2±8.8 2.5 49.1±9.4 血清Kも同様であっ 体重は 投与後有意に減少し 355

腎機能 血清電解質は投与後で変動は なく 心機能 血圧 脈拍に影響を与え ず 有意に体重が減少し 以上より 心不全治療における腎うっ血の解除は 重要な治療目的となり WRFを来さずに体液貯留 を改善できる利尿薬に対する期待が高まっている トルバプタンは 腎集合管のバソプレシンV2受容 体に選択的な拮抗作用を持つ利尿薬で レニン ア ンジオテンシン系やバソプレシン系を賦活せず 血 圧変動を来しにくく 腎血流を減らさないとされて いる 結果をまとめますと 腎機能 血清電解質は投与 以上より 心不全治療における腎うっ血の解除は 後で変動はなく 心機能 血圧 脈拍に影響を与 重要な治療目的となり WRFを来さずに体液貯留 えず 有意に体重が減少し を改善できる利尿薬に対する期待が高まっている トルバプタンは 腎集合管のバソプレシンV 2受 考察 容体に選択的に拮抗し レニン アンジオテンシン 系やバソプレシン系を賦活せず 血圧変動を来しに くく 腎血流を減らさないとされている 高齢心不全患者は腎機能障害を伴っていることが多 く くり返す心不全ため利尿薬が増量され Na利 尿に伴う腎血流量減少によりWRFを来すことがあ る 急性非代償性心不全に対する高用量のループ利尿薬 は 低~中等度用量よりも心不全の予後が悪化する との報告や WRFは心不全の予後を悪化するとの 報告がある反面 退院時のうっ血の残存は WRF 以上に心不全の予後に影響を与えているとの報告や 心不全における腎うっ血は 腎性機序としての 心拍出量低下よりもWRFの危険因子であるとの報 告もある 高齢心不全患者は腎機能障害を伴っていること が多く くり返す心不全のため利尿薬が増量され Na利尿に伴う腎血流量減少によりWRFを来すこと がある 今回の研究において 腎機能障害を有する後期高齢 心不全患者に対するトルバプタンの継続投与により これまでの利尿薬に認められるような電解質 (Na,K) 腎機能(BUN,Cr,eGFR)の悪化を来さず 血圧低下も認めなかった また心機能(BNP)につい ては 改善は得られなかったが 少なくとも悪化す ることはなかった 以上より 腎機能障害を有する後期高齢心不全患者 において トルバプタンは 腎性因子としての収 縮期血圧を低下させずに つまり腎血流量を保ちな がらうっ血の改善をすることが確認された 今回の研究において 腎機能障害を有する後期 高齢心不全患者に対するトルバプタンの継続投与 急性非代償性心不全に対する高用量のループ利尿 により これまでの利尿薬に認められるような電 薬は 低 中等度用量よりも心不全の予後が悪化す 解質 Na K 腎機能 BUN Cr egfr の悪 るとの報告1 や WRFは心不全の予後を悪化す 化を来さず 血圧低下も認めなかっまた心機 るとの報告2 3 がある反面 退院時のうっ血の 能 BNP については 改善は得られなかったが 残存は WRF以上に心不全の予後に影響を与えて 少なくとも悪化することはなかっ いるとの報告4 や 心不全における腎うっ血は 以上より 腎機能障害を有する後期高齢心不全患 腎性機序としての心拍出量低下よりもWRFの危 者において トルバプタンは 腎性因子としての 険因子であるとの報告5 もある 収縮期血圧を低下させずに つまり腎血流量を保ち ながらうっ血を改善することが確認され 356

portance of veous congestion for worsening of renal function in advanced decompeated heart failure. J Am Coll Cardiol 17(53): 589-596, 29. 腎機能障害を伴う高齢者心不全患者に対するト ルバプタン継続投与により 腎機能 血清電解 質 BNPは不変のまま体重を減少でき 腎機能 障害を伴う高齢者心不全患者に対するトルバプ タンは安全に使用できることが確認でき 人口の高齢化に伴い 高齢者心不全患者が増加 してきている中で 特に高齢心不全患者は腎機 能障害を伴っていることが多いことから 腎保 護効果が期待できるトルバプタンによる体液調 節は有用な手段と考えられる まとめ 腎機能障害を伴う高齢者心不全患者に対するトル バプタン継続投与により 腎機能 血清電解質 BNPは不変のまま体重を減少でき 腎機能障害を 伴う高齢者心不全患者に対するトルバプタンは安全 に使用できることが確認でき 人口の高齢化に伴い 高齢者心不全患者が増加し てきている中で 特に高齢心不全患者は腎機能障害 を伴っていることが多いことから 腎保護効果が期 待できるトルバプタンによる体液調節は有用な手段 と考えられる 文献 1 The ADHERE scientific advisory committee and investigators: Impact of intravenous loop diuretics on outcomes of patients hospitalized with acute decompeated heart failure: iights from the ADHERE registry. Cardiology, 113: 12-19, 29. 2 Smith GL, et al: Worsening renal function: what is a clinically meaningful change in creatinine during hospitalization with heart failure? J Card Fail 9(1): 13-25, 23. 3 de Silva R, et al: Incidence of renal dysfunction over 6 months in patients with chronic heart failure due to left ventricular systolic dysfunction: contributing factors and relatiohip to prognosis. Eur Heart J 27(5): 569-581, 26. 4 Metra M, Davison B, Bettari L, et al: Is worsening renal funaction an ominous prognostic sign in patients with acute heart failure?: the role of congestion and its interaction with renal function. Circ Heart Fail 5: 54-62, 212. 5 Mulle W, Abrahams Z, Francis GS, et al: Im 357