4章ICTによるインクルージョン促進52 企業においても労働者の不足が顕在化し始めている 帝国データバンクの調査 *3 によると 27 年時点で 企業の43.9% が正社員不足を感じており 過去 年で最も高い水準を示した 日銀短観でも 近年は雇用 D.I. *4 が負の方向に動いており 雇用人員が不

Similar documents
図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

第第第ライフスタイルに対する国民の意識と求められるすがた50 また 働いていないが 今後働きたい と回答した人の割合は 男性では 7.4% であるのに対し て 女性は19.1% である さらに 女性の中では 30 代の割合が高く ( 図表 2-1-2) その中でも 特に三大都市圏で高い割合となってい

3.HWIS におけるサービスの拡充 HWISにおいては 平成 15 年度のサービス開始以降 主にハローワーク求人情報の提供を行っている 全国のハローワークで受理した求人情報のうち 求人者からインターネット公開希望があったものを HWIS に公開しているが 公開求人割合は年々増加しており 平成 27

テレワーク制度等 とは〇 度テレワーク人口実態調査 において 勤務先にテレワーク制度等があると雇用者が回答した選択枝 1 社員全員を対象に 社内規定などにテレワーク等が規定されている 2 一部の社員を対象に 社内規定などにテレワーク等が規定されている 3 制度はないが会社や上司などがテレワーク等をす

高齢社会は危機かチャンスか

第 2 章高齢者を取り巻く現状 1 人口の推移 ( 文章は更新予定 ) 本市の総人口は 今後 ほぼ横ばいで推移する見込みです 高齢者数は 増加基調で推移し 2025 年には 41,621 人 高齢化率は 22.0% となる見込みです 特に 平成 27 年以降は 後期高齢者数が大幅に増加する見通しです

IT 人材需給に関する調査 ( 概要 ) 平成 31 年 4 月経済産業省情報技術利用促進課 1. 調査の目的 実施体制 未来投資戦略 2017 ( 平成 29 年 6 月 9 日閣議決定 ) に基づき 第四次産業革命下で求められる人材の必要性やミスマッチの状況を明確化するため 経済産業省 厚生労働

長野県の少子化の現状と課題

Microsoft PowerPoint

中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアル

<4D F736F F D DE97C78CA78F418BC B28DB895F18D908F DC58F49817A2E646F63>

資料2(コラム)

CW6_A3657D13.indd

第3回 情報化社会と経済学 その3

(2) 高齢者の福祉 ア 要支援 要介護認定者数の推移 介護保険制度が始まった平成 12 年度と平成 24 年度と比較すると 65 歳以上の第 1 号被保険者のうち 要介護者又は要支援者と認定された人は 平成 12 年度末では約 247 万 1 千人であったのが 平成 24 年度末には約 545 万

女性活躍による中小企業の生産性向上の余地

中央労働災害防止協会発表

Microsoft Word - H29 結果概要

2. 女性の労働力率の上昇要因 М 字カーブがほぼ解消しつつあるものの 3 歳代の女性の労働力率が上昇した主な要因は非正規雇用の増加である 217 年の女性の年齢階級別の労働力率の内訳をみると の労働力率 ( 年齢階級別の人口に占めるの割合 ) は25~29 歳をピークに低下しており 4 歳代以降は

労働力調査(詳細集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の概要

「学び直し」のための教育訓練給付制度の活用状況|第一生命経済研究所|的場康子

人口 世帯に関する項目 (1) 人口増加率 0.07% 指標の説明 人口増加率 とは ある期間の始めの時点の人口総数に対する 期間中の人口増加数 ( 自然増減 + 社会増減 ) の割合で 人口の変化量を総合的に表す指標として用いられる 指標の算出根拠 基礎データの資料 人口増加率 = 期間中の人口増

第3節 重点的な取り組み

親と同居の壮年未婚者 2014 年

少子高齢化班後期総括

調査の概要 少子高齢化が進む中 わが国経済の持続的発展のために今 国をあげて女性の活躍推進の取組が行なわれています このまま女性正社員の継続就業が進むと 今後 男性同様 女性も長年勤めた会社で定年を迎える人が増えることが見込まれます 現状では 60 代前半の離職者のうち 定年 を理由として離職する男

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

参考 1 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに

2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢

Microsoft Word - Notes1104(的場).doc

結果概要 Ⅰ 人手不足への対応について 1. 人員の過不足状況について 社 % 不足している 1, 過不足はない 1, 過剰である 合計 2, 全体では 半数以上の企業が 不足している と回答 n =2,

参考 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに 家

Microsoft PowerPoint - 【セット版】140804保育キャンペーン資料

 第1節 国における子育て環境の現状と今後の課題         

平成29年版高齢社会白書(全体版)

日本の富裕層は 122 万世帯、純金融資産総額は272 兆円

平成 年 2 月 日総務省統計局 労働力調査 ( 詳細集計 ) 平成 24 年 10~12 月期平均 ( 速報 ) 結果の概要 1 Ⅰ 雇用者 ( 役員を除く ) 1 1 雇用形態 2 非正規の職員 従業員の内訳 Ⅱ 完全失業者 3 1 仕事につけない理由 2 失業期間 3 主な求職方法 4 前職の

取材時における留意事項 1 撮影は 参加者の個人が特定されることのないよう撮影願います ( 参加者の顔については撮影不可 声についても収録後消去もしくは編集すること ) 2 参加者のプライバシーに配慮願います 3 その他 (1) 撮影時のカメラ位置等については 職員の指示に従ってください (2) 参

第 1 章調査の実施概要 1. 調査の目的 子ども 子育て支援事業計画策定に向けて 仕事と家庭の両立支援 に関し 民間事業者に対する意識啓発を含め 具体的施策の検討に資することを目的に 市内の事業所を対象とするアンケート調査を実施しました 2. 調査の方法 千歳商工会議所の協力を得て 4 月 21

人口動態から見た2025年問題

2015年 「働き方や仕事と育児の両立」に関する意識(働き方と企業福祉に関する

平成25年度 高齢期に向けた「備え」に関する意識調査結果(概要版)2

推計結果 - 1 -

平成30年版高齢社会白書(概要版)(PDF版)

このような団塊の世代が高齢期を迎えようとする中 高齢者も他の世代とともに地域を支えていくという考え方を基本として 団塊の世代を含む高齢者の活躍が期待されているところです 地域活動に関するアンケート ( 平成 20 年 3 月大阪市 ) によると 地域活動に 既に参加 または 今後参加したい と考えて

平成28年版高齢社会白書(概要版)

日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

Microsoft Word - 04æŒ⁄å„Œè−¸è¡fi㇙呌ã‡−巻㆑癰墅ㆮ夛儌

第 1 子出産前後の女性の継続就業率 及び出産 育児と女性の就業状況について 平成 30 年 11 月 内閣府男女共同参画局

働き方の現状と今後の課題

プレゼンテーションタイトル

平成27年版高齢社会白書(全体版)

別添

スライド 1

2014人口学会発表資料2

第 1 章アンケートの概要 1-1 調査の目的 1-2 対象者 1-3 調査方法 1-4 実施期間 1-5 調査結果サンプル数 第 2 章アンケート調査結果 2-1 回答者自身について (1) 問 2: 年齢 (2) 問 5: 同居している家族 2-2 結婚について (1) 問

18歳人口の分布図(推計)

男女共同参画に関する意識調査

Microsoft Word - ₥+ èª¿æŁ»ï¼›ï¼“çŽºè¡¨å¾„èª¤åŁŠä¿®æŁ£.docx

第 2 章近江八幡市を取り巻く状況と今後の課題 1 データからみえる地域福祉の状況 1 人口の状況近江八幡市は 平成 22 年 3 月に旧近江八幡市と旧安土町が合併し 人口 8 万人を超える市となりました 旧市町の人口を合計した数値を見ると 平成 12 年から平成 22 年は横ばいで推移していますが

スライド 1

労働力調査(詳細集計)平成24年平均(速報)結果の要約

PowerPoint プレゼンテーション

(1) 政府の方針 (2) 近年の法改正の動向 (3) 国の高齢者雇用施策の概要 2 神奈川県の取組 (1) シニア ジョブ スタイル かながわ (2) 神奈川生涯現役促進協議会の取組 (3) 第 10 次神奈川県職業能力開発計画 (4) 経済団体への要請 (5) シルバーベンチャーの創出促進 (6

回答者のうち 68% がこの一年間にクラウドソーシングを利用したと回答しており クラウドソーシングがかなり普及していることがわかる ( 表 2) また 利用したと回答した人(34 人 ) のうち 59%(20 人 ) が前年に比べて発注件数を増やすとともに 利用したことのない人 (11 人 ) のう

平成 29 年度下期新潟市景況調査 ( 本報告 ) Ⅳ テーマ別調査結果 93

スライド 1

<4D F736F F D2095F18D908F91967B95D28A6D92E894C F38DFC94C52E646F63>

スライド 1

雇用の現状_季刊版2014年夏号

親と同居の未婚者の最近の状況(2016 年)

職場環境 回答者数 654 人員構成タイプ % タイプ % タイプ % タイプ % タイプ % % 質問 1_ 採用 回答 /654 中途採用 % 新卒採用 % タ

<4D F736F F D205B52528F4390B35D8F9790AB82CC93AD82AB95FB82C98AD682B782E992B28DB85F F834F C789C18DCF2E646F6378>

調査要領 1. 調査の目的 : 人口減少による労働力不足が懸念されるなかで 昨年 4 月には女性活躍推進法 ( 正式名称 : 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律 ) が施行されるなど 女性の社会進出がさらに進むことが期待されている そこで 女性の活躍に向けた取り組み状況について調査を実施す

平成30年版高齢社会白書(概要版)

平成29年度     地域経済動向調査      調査報告書

ダイバーシティ 年に向けた政策展開のポイント テレワークが当たり前になる社会 の実現に向け 多様な主体と連携した普及啓発や導入支援への取組を強化 地域での就労支援やマッチング強化により 女性や高齢者の就業を推進 働き方改革と併せて時差 Biz の定着に向けた取組を推進 強化した政策

調査結果詳細 1: 社会保険に関わる法改正の詳細を知っていた方は23% ( 図 1) 2016 年 10 に社会保険に関わる法律が改正されました 今回の法改正を知っているかについては 詳細を知っていた と回答した方は23% でした なんとなく知っていた (45%) 知らなかった (33%) が大半を

PowerPoint プレゼンテーション


従業員に占める女性の割合 7 割弱の企業が 40% 未満 と回答 一方 60% 以上 と回答した企業も 1 割以上 ある 66.8% 19.1% 14.1% 40% 未満 40~60% 未満 60% 以上 女性管理職比率 7 割の企業が 5% 未満 と回答 一方 30% 以上 と回答した企業も 1

Microsoft Word - notes①1210(的場).docx

スライド 1

モバイル端末市場動向調査レポート

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

Microsoft Word - notes①1301(小谷).docx

(Microsoft PowerPoint \201y\221\3461\216l\224\274\212\372_\225\361\215\220\217\221HP\224\305\201z.pptx)

夫婦間でスケジューラーを利用した男性は 家事 育児に取り組む意識 家事 育児を分担する意識 などに対し 利用前から変化が起こることがわかりました 夫婦間でスケジューラーを利用すると 夫婦間のコミュニケーション が改善され 幸福度も向上する 夫婦間でスケジューラーを利用している男女は 非利用と比較して

農業法人等における雇用に関する調査結果

平成30年版高齢社会白書(全体版)

女性の活躍推進の意義と課題 意 義 課題 少子高齢化で生産年齢人口が減少 労働力人口の増加 海外を含む企業間競争の中で 性別に関わらず優秀な人材の確保が必要 埋もれている優秀な人材の確保 少子化と生産年齢人口の減少が進む中で 女性の活躍の推進は喫緊の課題 女性の労働力率は 第 1 子出産を機に 6

<4D F736F F D20819A8E9197BF B8BE682CC8CBB8FF382C6906C8CFB90848C >


目次 問 1 労使合意による適用拡大とはどのようなものか 問 2 労使合意に必要となる働いている方々の 2 分の 1 以上の同意とは具体的にどのようなものか 問 3 事業主の合意は必要か 問 4 短時間労働者が 1 名でも社会保険の加入を希望した場合 合意に向けての労使の協議は必ず行う必要があるのか

Ⅰ 障害福祉計画の策定にあたって

PowerPoint プレゼンテーション

主な論点 資料 4 1. ワーク ライフ バランスの推進 生産性向上等の観点から 働き方とともに休み方を見直すことの必要性 重要性 (1) 有給休暇取得状況と長時間労働の国際比較 (2) 休暇取得と生産性との関係 (3) 仕事と仕事以外の生活の充実 2. 秋の連休の大型化等を実現する上での課題 (1

人口減少と将来の労働力不足について(資料編)

平成27年版自殺対策白書 本文(PDF形式)

相対的貧困率の動向: 2006, 2009, 2012年

Transcription:

4章ICTによるインクルージョン促進 4 章 ICT によるインクルージョン促進 人口減少期に入った我が国において懸念される課題については 人 の観点からも様々なものがある 例えば 高齢者を中心とした単独世帯の増加による社会的孤立への懸念や 女性 高齢者 障害者のようにこれまで我が国の職場環境において活躍しにくかった人々の就業である これらの課題を解決する上で重要なのが 多様な人々を受け入れる インクルージョン ( 包摂 ) である インターネットが普及を始めてから2 年以上を経て その利用形態はパソコンから 個人が保有するスマートフォンなどのモバイル端末へと大きく変化した 現在 ソーシャルメディアなどのICTサービスが多くの人々に利用されている 本章では これらにより つながり が創出されることで 多様な社会活動 多様な働き方のために複数の組織に少しずつ所属する 複属 * が可能となることにより インクルージョンに貢献する可能性について考察する この節では 人口減少時代における社会 労働への参加促進の必要性と それらを促進する上でのICTの利活用可能性について述べる 人口減少時代のつながり 単独世帯の増加 未婚率の増加や 核家族化の影響を受けて 単独世帯 ( 世帯主が一人の世帯 ) が増加している 24 年には単独世帯の割合は約 4% に達すると予測されている ( 図表 4---) 特に 65 歳以上の単独世帯数の増加が顕著である 単独世帯の増加は 社会的孤立のリスクを高める 高齢者を対象とした内閣府の調査 *2 によると 我が国の単独世帯の高齢者のうち 他者との会話が ほとんどない と回答した人の割合は7.% であり これは二人以上の世帯の値 (2.2%) や諸外国の単独世帯 ( アメリカ :.6% ドイツ :3.7% スウェーデン:.7%) と比較すると高い水準である 単独世帯の増加は 頼りにできる存在が身近におらず 社会的に孤立してしまう人の増加にもつながると考えられる 2 労働参加の促進 図表 4--- 単独世帯率の推移と 65 歳以上の単独世帯数の推移 (22 年以降は予測 ) (%) ( 万世帯 ) 45, 4 9 35 8 3 7 6 25 5 2 4 5 3 2 5 2 25 2 25 22 225 23 235 24( 年 ) 単独世帯 ( 割合 )( 左軸 ) 65 歳以上の単独世帯数 ( 右軸 ) ( 出典 )25 年まで総務省統計局 国勢調査 22 年以降は国立社会保障 人口問題研究所 日本の世帯数の将来推計 ( 全国推計 )28( 平成 3) 年推計 (28) (http://www.ipss.go.jp/pp-ajsetai/j/hprj28/hprj28_gaiyo_287.pdf) 我が国の生産年齢人口は 995 年から減少に転じている 生産年齢人口の減少は労働人口の減少につながる * 庄司昌彦 分人 複属 と電子行政 行政 & 情報システム (25) *2 内閣府 平成 27 年度 8 回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果 (25)(http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h27/zentai/ index.html) 平成 3 年版情報通信白書 部 5

4章ICTによるインクルージョン促進52 企業においても労働者の不足が顕在化し始めている 帝国データバンクの調査 *3 によると 27 年時点で 企業の43.9% が正社員不足を感じており 過去 年で最も高い水準を示した 日銀短観でも 近年は雇用 D.I. *4 が負の方向に動いており 雇用人員が不足していることが伺える ( 3 章 2 節 3 項図表 3-2-3-5 参照 ) 人手不足に対応する方策には2つの方向性がある すなわち 労働生産性の向上により生産力を高めることと 現在働いていない人々の就労を促し 労働参加率を向上させることである この章では 後者の労働参加について ICT 利活用を通じた参加促進の考察をしていくため まずは 現状について整理する 女性 高齢者 障害者をはじめとする多様な人材の労働参加 労働参加率の向上について 特に期待されるのは女性 高齢者 障害者をはじめとする多様な人材の労働参加である ここでは 多様な人材の労働参加について検討する前提として 女性 高齢者 障害者の労働参加の現状を整理する ア女性我が国の女性の就業率は 年々増加傾向にある ( 図表 4--2-) 2 年には我が国の女性の就業率はおよそ 6% 程度であったが 26 年にはおよそ7% 弱の水準まで伸びている この値はドイツやイギリスの水準には及ばないものの その差は確実に縮小傾向にある (%) 75 7 65 6 55 5 図表 4--2-5~64 歳女性の就業率 ( 女性 国際比較 ) ドイツ日本イギリスアメリカ OECD 平均 2 2 22 23 24 25 26 27 28 29 2 2 22 23 24 25 26( 年 ) ( 出典 )OECD.stat しかし 我が国においては現在でも89 万人 *5 の女性が出産や育児のために就業を希望するものの求職活動を行っておらず 出産や育児による離職は女性の労働参加に大きな影響を与えていると考えられる 女性の理想のライフコースについてのアンケート結果では 出産するが 子供の成長に応じて働き方を変えていく と回答する女性の割合は半数を超える ( 図表 4--2-2) このことから さらなる女性の労働参加を可能とするためには 女性が子供の成長に合わせて柔軟に働き方を変えていけることが重要だと考えられる *3 帝国データバンク 人手不足に対する企業の動向調査 (27)(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p726.html) *4 D.I. ( ディー アイ ) とは Diffusion Index( ディフュージョン インデックス ) の略で 企業の業況感や設備 雇用人員の過不足などの各種判断を指数化したもの *5 総務省統計局 労働力調査 ( 詳細集計 ) 27 年平均 平成 3 年版 情報通信白書 部

4章ICTによるインクルージョン促進 図表 4--2-2 女性の理想のライフコース 2 3 4 5 6 7 8 9 (%) 2.4 2.4 25 年 (48 人 ).4 2.7 55.3 8.9 6... 2 年 (79 人 ).7.6 6. 22. 3.2.3..3. 25 年 (64 人 ) 8. 58.8 27. 3.6.5.2 結婚も出産もせず 働き続ける出産するが 子供の成長に関係なく働き続ける出産を機に いったん退職するが 子供の手が離れたら働く出産の有無に関係なく 結婚後は働かないわからない 出産しないで働き続ける出産するが 子供の成長に応じて働き方を変えていく出産退職後は 育児に専念するその他 ( 出典 ) 内閣府 平成 27 年度少子化社会に関する国際意識調査報告書 (25) より作成 イ高齢者 日本の高齢者 (65 歳以上 ) の労働力率は 他国や OECD の平均と比較して高い水準にある *6 その一方で 現 在働いている高齢者の今後の就労意向を尋ねたところ 働けるうちはいつまででも働きたいと回答する高齢者の割合が最も高く 健康寿命が伸び元気な高齢者が増えている中で 年齢に関係なく元気である限り働きたいと考える高齢者への対応がより重要であると考えられる ( 図表 4--2-3) 図表 4--2-3 現在働いている高齢者が何歳まで働きたいかの希望 2 3 4 5 6 7 8 9 (%).4 2.2 3.5 2.9.4 4.4 42..82.5 65 歳くらいまで 7 歳くらいまで 75 歳くらいまで 8 歳くらいまで 働けるうちはいつまでも 仕事をしたいと思わない その他 わからない 無回答 調査対象は 全国 6 歳以上に男女 現在仕事をしている者のみの再集計 ( 出典 ) 内閣府 高齢者の日常生活に関する意識調査 (24) ウ障害者厚生労働省 平成 29 年障害者雇用状況の集計結果 *7 によると 27 年 6 月 日現在 雇用されている障害者は約 49.6 万人で 障害者雇用者数は 4 年連続で過去最高となっている ( 図表 4--2-4) その一方で 法定雇用率を達成した企業の割合は5.% と半数にとどまっているため より多くの企業が障害者を雇用できるようになることが期待される *6 OECD statによると 26 年の 65 歳以上の労働力率は OECD 平均は 4.5% である一方 我が国では 22.8% である *7 厚生労働省 平成 29 年障害者雇用状況の集計結果 (27) http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/8766.html 平成 3 年版情報通信白書 部 53

4章ICTによるインクルージョン促進54 図表 4--2-4 *8 *9 民間企業における障害者の雇用状況 ( 万人 ) 49.6 5 47.5 45.4 5. 身体障害者知的障害者精神障害者実雇用率 43. 45 4.2.97 4.9 3.5 38.3 2.8.92 4 36.6 2.2 9.8.2 34.3.3.7 32.6 33.3 35 9. 8.3.5.6.8 3.3 7.5.82.88 28.4.4 6.9 3 26.9 5.4 5.7 6..2 25.3 25.8 24.6 24.7 4.8.76 25 4.4 3. 3.2 3.6 4. 3.3 26.8.69.68 2 26.6.65.63 29. 3.4 3.3 32. 32.8 33.3 5 22.2 2.4 2.4 22.2 22.9 23.8 25..59 27.2 28.4.55.52 5.49.49.47.48.46 2 22 23 24 25 26 27 28 29 2 2 22 23 24 25 26 27 (%) 2.5.95.85.75.65.55.45 ( 出典 ) 厚生労働省 平成 29 年障害者雇用状況の集計結果 (27) 以上のように 近年 我が国では女性 高齢者 障害者の労働参加率は上昇しているものの さらなる労働参加 率の向上や労働の質の向上について改善の余地はあり得る 3 ICT によるインクルージョン促進の方向性 ICT が創るつながりによる課題解決 人口減少時代において 多様な人々を社会 あるいは職場などに受け入れるインクルージョンを社会全体で促進 することは 持続的成長を実現することにもつながる * 多様な人々の社会や職場への参加には 従来のように個人が単一のコミュニティや職場のみに深くつながるので はなく 複数の組織に少しずつ所属する 複属 を進めていく必要があろう ICTは そのような動きを促進するために使うことができる インターネットの普及により ソーシャルメディア * などのICTサービスを通じた個人による情報発信や他人との交流が容易になった ソーシャルメディアを通じて出会った人々との新しいつながりを得られるようになったことは 従来型のコミュニティだけでなく 多様な人々とのつながりから生じるバーチャルなコミュニティへの参加も可能にしている また 家族や友人などとのソーシャルメディアの利用や 地域における共助を促進するためのICT 利活用の取組も広がっている このような社会参加を促進するICT 活用については 3 節で述べる 労働人口の減少に関する対策のうち 多様な人材の労働参加については 在宅 サテライトオフィス勤務や 特定の企業に所属しない働き方などが解決策のひとつとなり得る 多様な人材の労働参加を支えるICTとして 職場内でのコミュニケーションに利用できるビジネスICTツール 場所と時間を有効に活用できる働き方であるテレワーク 企業などが発注した業務をプラットフォーム上で個人が受注するクラウドソーシングを 4 節で取り上 *8 雇用義務のある企業についての集計 *9 障害者の数 とは 次に掲げる者の合計数である 26 年度まで : 身体障害者 ( 重度身体障害者はダブルカウント ) 知的障害者 ( 重度知的障害者はダブルカウント ) 重度身体障害者である短時間労働者 重度知的障害者である短時間労働者 27 年度以降 : 身体障害者 ( 重度身体障害者はダブルカウント ) 知的障害者 ( 重度知的障害者はダブルカウント ) 重度身体障害者である短時間労働者 重度知的障害者である短時間労働者 精神障害者 精神障害者である短時間労働者 ( 精神障害者である短時間労働者は.5 人でカウント ) 2 年度以降 : 身体障害者 ( 重度身体障害者はダブルカウント ) 知的障害者 ( 重度知的障害者はダブルカウント ) 重度身体障害者である短時間労働者 重度知的障害者である短時間労働者 精神障害者 身体障害者である短時間労働者 ( 身体障害者である短時間労働者は.5 人でカウント ) 知的障害者である短時間労働者 ( 知的障害者である短時間労働者は.5 人でカウント ) 精神障害者である短時間労働者 ( 精神障害者である短時間労働者は.5 人でカウント ) * ニッポン一億総活躍プラン ( 平成 28 年 6 月 2 日閣議決定 ) では 全ての人が包摂される社会が実現できれば 安心感が醸成され 将来の見通しが確かになり 消費の底上げ 投資の拡大にもつながる また 多様な個人の能力の発揮による労働参加率向上やイノベーションの創出が図られることを通じて 経済成長が加速することが期待される としている https://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/#plan * 庄司 (25) では ソーシャルメディアが 数多くのグループや組織を次々と生み出す土壌となり その多様性が私たちの 複属化 を後押ししている としている 平成 3 年版 情報通信白書 部

4章ICTによるインクルージョン促進 げる また 労働生産性向上に関するICT 利活用としてAI IoT ロボットの職場への導入がある これらが今後進展した場合 人間の仕事内容に変化が生じると考えられる その変化に対応するための教育とそれへのICTの活用については 労働参加の観点からも重要であるため 5 節にて述べる 平成 3 年版情報通信白書 部 55