抗力 揚力の計測 Ⅰ 18 年度用 はじめに 機械応用実験であることから, 意図的に親切なテキストとはしていない. 説明を良く聞き, 自分で考え, 実験を進めること. また, レポートには 1. 目的,. 実験方法,3. 結果,4. 考察,5. 検討 等を記すこと. このため, 実験を進めながらメモを残してゆき, このメモを基にしてまとめることが必要となる. なお, この実験の HP(http://www.cce.kanagawa-it.ac.jp/~t514/experiment/index.html) 上に全ての資料をアップしてあるので, それも参考にすること. ただし, この HP は学内でしか閲覧できません. 抗力 揚力の概説 自動車や航空機のように流体中を移動する物体, あるいは橋梁の桁のように流れの中に置かれた物体には, 流体による力が作用している. そして, この流体による力のうち, 流れの方向 ( 移動物体では移動方向と逆向き ) に作用する力を抗力, この方向と垂直な向きに作用する力を揚力と呼んでいる. 従って航空機においては, 抗力に逆らって進み, 揚力により上昇する. 抗力 揚力の計測 Ⅰ では, 以下の実験を通して, 主に抗力の発生するメカニズムとその特性, さらには, その大きさをどのように見積もるかを学ぶ. 実験実施上の注意点 1 計測可能範囲と計測装置の精度を考慮してパラメータを変更すること 計測結果の転記ミスが散見される. 複数名で実験するのであるから, 確認しながら進めること 3 既計測値から類推して, 明らかに変な計測値がある場合には, 直ちにやり直すこと. 1. 実験の概要 1 週目の実験に関して 1 レイノルズ数を変化させて球に作用する抗力を計測し, 抗力に対するレイノルズ数の影響等を考える. 下図 1 のような実験装置により球の抗力を計測する. これにより, 次式で表される球の抗力係数 D とレイノルズ数 Re は, 図 のように変化する. なお,Re と D の次元は, 何を意味しているのだろう? ノズル Exp. Schiller & Nauman ニュートン領域 気流密度 :ρ 速度 :U 圧力 :Pa D 1 球.1 はかり 図 1 実験装置の概略.1.1 1 Re 図 球の抗力係数の変化 Ud Re Ud 流体の密度 代表速度 代表長さ代表速度 代表長さ 流体の粘度流体の動粘度 慣性力粘性力 F.5U D D A 流体の動圧 抗力 前面投影面積
また, この実験では, ノズル吹き出し口の圧力をピトー管により計測し ( 下図 3 参照 ), ベルヌーイの式を利用することで吹き出し速度を算出する. どのようにして速度を算出すれば良いのだろう? P P p.5u a Flow θ 気流速度 :U 気流圧力 ( 大気圧 ):Pa r ノズル (b) (c) 気流密度 :ρ 速度 :U 圧力 :Pa ピトー管図 3 ノズル出口での流速計測の模式図 (a) 円柱の表面圧力を計測して, 圧力分布と円柱に作用する抗力の関係を考える. 図 1 や図 3 のようなノズルにおいて, ノズル吹き出し口中央に円柱を置き, 円柱表面圧力 P を計測すると, 圧力係数 P は円柱角度 θ に伴い, 図 4 のように変化する. 図 4 円柱表面上の圧力係数分布. 実験項目と結果のグラフ (1) 真球 ( 種類 ) と楕円球において, 風速を 4 通りに変えて抗力を計測し,Re-D の関係を算出しなさい () 円柱において, 角度 θ を 15 度おきに ~18 度まで変えて圧力を計測し,θ-P の関係を算出しなさい上記より,1 週目の実験から得られる最終的なグラフは, 抗力係数の計測結果 (Re-D) と圧力係数の計測結果 (θ-p) から作成される 枚である. ただし, 以下の指示に従うこと. < 抗力係数のグラフに関して > 1 枚のグラフ ( 通常の 1mm グラフ用紙 を使用してリニアな目盛りとすること. 対数目盛りはダメ!) に, 全ての計測結果 (3 種類の物体において, 可能な限り均等に各 4 点ずつ計測 ) をプロットすること. また, レポートを作成する際には, 以下の既報告の実験結果から, 今回の計測範囲に近いデータを取り出し, このデータもそのグラフ上にプロット ( ライン ) すること. Re D Re D Re D Re D.5875 49 64.9.7194 648.4571 85.47.1585 169.8 51.9.563 3467.4775 3.1778.4786 58.88.4786 5888.473 3388.47 3..86 186.4365.464 398.977 7.15 5.63 316.474 17.4395 519.1 15.49 3.388 4764.389 317.446 1778.1778 57.54 1.479 8375.3981 648.3733 9.186 144.5.94 1556.4395 7.3467 51.186 < 圧力係数のグラフに関して > ポテンシャル解析結果 p 1 4sin (1 sin ) 1 cos 1 もラインで記すこと.
3. 考察 (1) 計測した真球において, その周りの流れが層流であるのか乱流であるのかを, 理由とともに記しなさい. () 実験時の計測範囲内において, レイノルズ数 Re に対して真球の抗力係数 D が, 大雑把, 大局的にどのように変化するのか?(Re に対して D がどのような関数となっているのか?) を, 作成した Re-D のグラフと既報告結果より考え, そうなる理由とともに記しなさい. (3) 楕円球 ( 縦横比を計測しておくこと ) が真球に比べ,D の小さくなる理由を記しなさい. (4) 今回の実験において, 風洞のブロッケージ効果 が, 計測結果にどのように影響するのかを検討しなさい. なお, ブロッケージ効果は閉塞効果とも言い, 例えば," 風洞の wiki" に 閉塞による影響 として記されていますので, それらを読んで考えること. また, 前記したこの実験の HP 上にも, ブロッケージ効果に関して記しています. (5) 既報告の実験結果 ( 真球 ) を真値として考え場合, 誤差はどのような条件下において大きくなっているのか, あるいは変わらないのかを, その理由とともに記しなさい. なお, 上記 (4) が, この誤差に関係する. (6) 円管の圧力係数 P の分布において, ポテンシャル流れの解析結果が計測結果と異なる理由を説明しなさい. また, 円管後部において, 圧力 ( 係数 ) がほぼ一定であることの理由を記しなさい. (7) 円管のはく離点を推定しなさい. なお, 上記 (6) が, この問いのヒントになっている. (8) その他, 今回の実験中に気が付いたこと, 結果のグラフより分かることを記しなさい. 4. 検討 (1) 円柱の抗力においては, 圧力抗力が支配的であり, 摩擦抗力は無視できる. このため圧力係数 P の分布を積分することで抗力係数 D を求めることができる. そこで, 計測した圧力係数 P より, 実際に D を算出しなさい. また, 求めた D を過去に計測された円柱の D と比較して検討しなさい. なお, 授業中の説明で使用した積分方法のスライドは, 前記したこの実験の HP の 1 週目のスライド 中に有るので, 参考にすると良い. 考え方のヒント : 円柱の圧力係数より抗力係数を求める 円柱に作用する各方向の力は 以下の通りに 圧力の各方向への分力を積分することで求められる なお 円柱の厚みは単位幅とする U P ( 基準圧力 ) y -P sinθ x P cosθ x 方向の力 : P cosθ を円周に沿って積分する y 方向の力 : -P sinθ を円周に沿って積分する つまり x 方向の力は以下となる Fx D.5 Fx U P cos ad a P cos d a θ a a P a Pcos d cos d cos d P A.5 U A A.5U A a P cos d 従って 摩擦抗力に比べて圧力抗力が支配的な場合 抗力 D と圧力係数 P の関係は以下となる r () 次図左のようなピザデリバリー用の車がある. 次図右を参考にし, この車のトータルの抗力係数を見積もりなさい. なお, サインボードは縦 5cm, 横 1.5m であり, 車単独の場合, 抗力係数 :.4, 前面投影面積 : 3m である.
<1 週目のレポートの提出に関して > 次回実験を実施する週の月曜午後 16 時 3 分までに, 号館 1 階集合ポストの所定の箱に提出のこと. なお, 文章はワープロでも良いがグラフは手書きのこと.(e メール提出の場合は要相談 ) < 付表 > 大気圧下での空気の密度, 粘性係数, 動粘性係数 温度 T 3 4 密度 ρ kg/m 3 1.93 1.47 1.5 1.165 1.18 粘性係数 μ -5 Pa s 1.74 1.77 1.8 1.869 1.915 動粘性係数 ν -5 m /s 1.333 1.41 1.51 1.64 1.698 週目の実験に関して 1. 実験の概要 1 前回のレポートに対する解説 ( 修正して再提出のため ). 球を液中落下させ, 落下挙動を観察するとともに, 球に作用する揚力 抗力を推察する. 併せて, 落下球の終端速度とレイノルズ数を計測することで観察結果との整合性を検討する. 球が液中落下する場合, 右図 5 の通りに力が作用している. この場合に, 終端速度に達すると, 以下の関係式が導かれる. どのように誘導したのだろう? 3 p f g D 4 d 3 1 f u d 4 加速運動 Basset 力 F BA 中のみ仮想質量力 F V 加速度 a 浮力 FB 抗力 FD 下向き正 重力 mg 図 5 液中落下球に作用する力
. 実験項目と結果のグラフ (1) 3 種類の球をグリセリン液中で落下させ, その時の落下挙動を観察 スケッチするとともに終端速度を計測し Re-D の関係を算出しなさい () 直径最大の球を水中で落下させ, その時の落下挙動を観察 スケッチしなさい上記より, 週目の実験から得られる最終的なグラフは,Re-D の関係を表す 1 枚だけである. ただし, この場合も, 通常の 1mm グラフ用紙 を使用してリニアな目盛りとすること. 3. 考察 (1) 球がグリセリン液中を落下する場合には真っ直ぐに落下する理由を記しなさい. () 球が水中を落下する場合に, 揺れながら落下する理由を記しなさい. (3) グリセリン液中落下の Re-D のグラフにおいて,D が一定とならない理由を検討しなさい. (4) その他, 今回の実験中に気が付いたこと, グラフより分かることを記しなさい. 4. 検討 斜めボール浮かし実験 において, 球に作用している抗力と揚力 ( 係数でなく 力 ) を計測したい. どのように計測すれば良いかを検討しなさい. また, この場合の揚力の発生メカニズムを説明しなさい. < 週目のレポートの提出に関して > 修正した前回のレポートとともに, 次回の実験日の午前 9 時 3 分までに, 号館 1 階集合ポストの所定の箱に提出すること. < 付表 > 大気圧下での純水の密度, 粘性係数, 動粘性係数 温度 T 5 15 5 3 4 5 6 7 8 9 密度 ρ 3 kg/m 3.9998 1..9997.9991.998.997.9957.99.988.983.9778.9718.9653 粘性係数 μ -3 Pa s 1.79 1.5 1.37 1.138 1..89.797.653.548.467.44.355.315 動粘性係数 ν -6 m /s 1.79 1.5 1.37 1.139 1.4.893.8.658.555.475.413.365.36 (1989 年版理科年表 ( 国立天文台編, 丸善 ) より ) 大気圧下でのグリセリンの密度, 粘性係数グリセリンの粘性係数 μ [ -3 Pa s] 1( ),395( ), 1499( ),945(5 ) なお本実験の条件下においては, グリセリンの比重は 1.6 として良い.