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Transcription:

7 複数の質点の振動 Gol- 座標変換 7- やさしい具体例 k m k m k という系を考えましょう 各質点の位置のずれを, とすれば 右向きを正の 方向とすると 運動方程式は m k k( ) m k( ) k となります 一瞬 符号に悩みます そんな場合 ラグランジアンが役に立ち ます ( 極端な話 中身がわからなくとも!!) 何も考えずに 運動エネルギーから 三つのばねのポテンシャルエネルギーを引けばいいのです m m k k k ( ) 44 4 444 4444 knetc enegy potentl ラグランジアンの 本当 の威力を知るのはかなり難しいですが 使うだけな ら すぐ出来るのです ここで X, Y と座標変換すると m X Y k X Y Y m X Y k X Y となって 二つの調和振動子と見なせることがわかりました

但し 新しい変数は X 二つの質点の位置の平均 ( 重心 ) 位置の運動 ( 正確には X ) Y 位置の差の運動 ( 伸縮運動 ) です このように 座標変換は絶大な威力を発揮します 7- 一般的な場合 今の例は偶然 解けたわけですが 一般的 個の質点にはどうしましょうか 問題を簡単にするために 質点がリング状に並んだ場合を考えます こうすると 番目の質点は 番目と同じ と見なせます これを 周期境界条件 と呼びます n の極限では両端が繋がっていようと切れていよう と大差ない という考えです 7--(A) 端 が無いのですべての質点が同等になります も簡単で m k ( ) ( 但し とする ) です 運動方程式は もはや機械的に微分するだけで k ( ) k( ) m (...,, ) ( ) 7--(B) 固定端では

端のバネのポンテンシャルは一個の質点で決まるので ( ) k k k m となります 7--() 自由端では 端のバネがありませんから ( ) k m (* 和の範囲に注意 ) 7- 行列先ほどの運動方程式 ( ) (...,, ) をまとめて書くためには行列の力を借りると非常に美しくできます ( ) と見て M M O M となります 7-4 バネと質点が自由に繋がった一般的なグラフ図形法則は ちょっと考えればイ ) 他の質点とつながっているところに を入れるロ ) 各質点のバネ接続数をマイナスにして対角成分に書く ( バネ定数が異なる場合は 接続数でなくバネ定数の和 )

4 ニ ) 質点の質量が異なる場合は 左辺の を m にする 7-5 固有ベクトル行列で書いただけでは まだ解き方はわからないという人は線型代数を思い出してください 行列が出てきたら いつでもまず最初に これを対角化する基本ベクトルは何だろう と思うのが基本です A において A を対角化するとどうなるでしょうか 線型代数で習った通り とおいて代入するのですが ここで は 実は座標変換であることを思い出して下さい A A A が対角化されるように を選ぶと M M O M β β β β β β β β M ですから 各式は { } β となり 一変数の微分方程式に分解されました ここで 対角成分を β と書いたのは必ず負になるのでそう書いたまでです 上式は単振動ですから簡単に解くことができて ( ) t D φ β sn となります

D 及びφ は積分定数です 7-6 固有値が全て負であること に代入すればよくて 結果は ( β t φ ) D sn( β t φ ) D ( β t φ ) sn sn D と いくつかの振動数の重ね合わせになることがわかります なお 固有値 β は必ず実数で負です これは 摩擦を考えていませんから振 動が減衰しないことに対応しています まず β が実数になることは上の対角 化前の行列がエルミート行列ですからすぐにわかります ( エルミート行列の固有 値は必ず実数 ) が 必ず負になるということは どうでしょうか ラグランジアンは T U m, k ( ) ですが そもそもこのポ テンシャルの項は U ( ) のつりあい位置でのテイラー展開の 次の項です から 必ず U U U, 釣合位置 U と書けます ( 一次の項は よりゼロ ) よって オイラーラグランジュ方程式 ( 運動方程式 ) は U m となります ( ~ ) ベクトル形式で書けば 5

U m となり 結局 ポテンシャルの二階微分テンソル ( 行列 ) の対角化という問題に帰 U 着しました の固有値は明らかにすべて正です なぜなら ポテンシャ ルの極小値の周りの展開ですから どの方向へずれてもポテンシャルは増える すなわち 極率が正だからです このような行列を正定値行列といいます ( 全て負の行列は負定値行列と呼ぶ ) 7-7 基準座標と基準振動数 ここで β o は 基準振動数 基本ベクトル は 基準座標 と呼ばれま す 具体的には とか云う風になっているわけで これは線形の座標 変換です 基準座標を用いてラグランジアンを書けば m m となり 独 立した調和振動子の集まりという形になっています ( β です ) この結論は非常に重要で 相互作用している複数の質点をちょっとゆすってや ると どういう振動をするかという問題は そのままでは難しいのですが 旨 く基準座標を選んでやると 独立な調和振動の重ね合わせとして表すことがで きます これから習う量子力学の問題は この基準座標を如何に見つけるか 6

という点に尽きるといっても過言ではありません 注 ) 皆さんが最初に習う量子力学は つの電子の運動 なので 大変残念なが ら簡単過ぎて座標変換の話は出てきません 7-8 リング状の問題を具体的に解く方法 多次元の行列を対角化する具体的方法は ヤコビ法や ハウスホルダー法など いくつかのコンピュータプログラムが開発されていますが 手計算では 一般 的には困難です しかし今のリング状の場合 綺麗に繋がっているということから 解を tk ( t) Ree ( 但し は隣接質点間の間隔 k, は定数で波数と振動数 ) つまり 波 と仮定して運動方程式 Re ( ) Re に代入してみる と 行列の対角化を行わなくとも解けることがわかります ( 正確には 少なくと も そういう波の形の解が存在する ) すなわち e e tk k k ( ) e e tk (cos k ) (cosk ) 4 sn k Q cos θ sn k sn θ 7

という 条件 が出てきました これは と k が この条件を満たしていれば tk ( t) Ree が 与えられた微分方程式の解になっていることを示していま す 注 ) この条件の意味は大変重要です tk ( t) Ree がなんでもかんでも解に なっているのではなく ある条件を満たしたときのみ解になるのです 7-9 周期的境界条件 さらに リング状につながっている ということから のはずです ( このことを 周期的境界条件 と云うのでしたね ) すると ( ) tk tk e e k ですから e となります オイラーの公式から e π n を思い出すと π n π k ~ ( n K ) となり k もある範囲内に限定されます 範囲外の k は結局 同じ を与えます 例えば n だと k π ですから e π となり k と全く同じです 独立な解が 個ある ということは先ほどの行列が 次で 固有値が 個であ tk ることに対応しています 以上より ( ) k n n π n ( n K ) k n π n sn sn t Re e の表式に 8

を代入したものが解で 個あることがわかります つまり M [] [] ( t) Ree ( t) Ree [ ] ( t) Ree tk tk t k ( ~ ) という 個の解です なお 一番上 (n) の式は [ ] Re 定数ですから 一斉 に回転している バネののびにだけ着目すれば静止している という解です 7- 分散 長い列の場合 n が小さいところでは sn を展開すると k sn n n k となります π これは υ と言う定数を導入すれば π f υ k υ より λ 波の速さの式 λ f υ です しかし n が大きくなると 等号が成り立たなくなり だんだん振動数が小さめ になってきます そして n/ すなわち k π のところ ( ここではは一つ一つ 互い違いに振動しています これ以上 細かい 振動はあり得ません ) で と最大値となって また下がっていきます このように 大昔に習った波の速さの式 υ λ f 分散関係が直線 は い つでも成り立つわけではないことを覚えておいて下さい 9

最大波数の振動 もっと波数を増やそうとすると逆に k は小さくなる 7- 色々なケースへの対応 質量の違う質点の場合はどうなるか バネ定数が違う場合は? つながりが複雑 な場合は? と拡張にはいとまがありませんね そんな時でも ラグランジアン なら 一発で m k ( ) と簡単に表せます 運動方程式は k ( ) m です 行列表示はまったく同様に バネで繋がっているところの つの横並びの行列 要素に k が入り 対角成分に m が来るだけです ( 壁に繋がっている所は 一方 の がゼロとすれば良いのです ) 7- 棒を伝わる縦波 余談になりますが 質点の大きさをどんどん小さくして そして 数 を に したらどうなるでしょうか 運動方程式を大文字で書いて m X ( X X X ) k とします

X (ydy) dm dm dm dm ρ dy k E ydy y ydy ydy dy dy dy y 添字 は質点同士の間隔が小さいのですから 連続的な 座標 で書いてよいで しょう よって,,, を y, ydy, y dy と書くことにします 混乱しそう ですね y は座標で X は変位です y の方は変位が全くない つりあいの状態の 時の位置だと考えるとわかりやすいでしょう 質点の質量も微小ですから dm と書きましょう すると ( X ( y dy) X ( y) X ( y dy) ) dm X ( y) k となりますが 微分を使って書くと X X X dmx ( y) k ( y dy) ( y) dy k ( y) dy です y y y 単位長さあたりに含まれる質点の重さを ρ ( 線密度 ) とすれば X ら ρ X ( y) k ( y)dy を得ます y dm ρ ですか dy 7- ヤング率 まだ右辺に微分 dy が残っているのは 実は ばね定数 k が ばねの長さに依 存しているからです つまり 長さ のバネの伸びは F kδ ですが の バネについては F kδ となり バネ定数はバネの長さに比例することがわか

ります よって バネの長さに拠らない バネの強さを表す別の定数を使う必 要があります それがヤング率と呼ばれるもので バネの伸びの割合を現しま す バネ長を 変移をΔ とすると フックの法則より F kδ ( k) Δ Δ E Δ Δ として E k がヤング率です バネの長さが 倍になっても ですか ら 比は一定であることがわかります X y よって ρx y, t) E ( y, t) ( となります くどいようですが X は変位 ( バネ の伸び ) y は座標 ( 元の位置 ) です これは波動方程式ですね 電磁波も同じ方程式 で表されます 7-4 波動方程式の解 念のため 解は X kt φ Re Ae A cosk t φ という形のものが存 k 在します 左辺は ρx ρ X で 右辺は EX Ek X ですから ρ Ek であれば 確かに解になっていることがわかります 積分定数は 解は ( t) A, φ です f の形をしていますから 確かに進行波になっています 波の速さはυ E です k ρ 分散は kυ です

上で という形のものが とか 回りくどいことを言ったのは 実は 波動方程式は 二 変数の偏微分方程式ですから 一般解は 二つの任意関数を含みます ( 偏微分方程 式は 任意定数でなくて任意関数を含みます ) 実は f ( υ t) g( υt) が一般解 であることがわかっています ( f, g は任意関数 ) 7-5 基礎実験での定常波の実験 一年次に行われる基礎物理の学生実験で定常波というテーマがあります これを説明 してみましょう 定常波の実験の状況は先ほど説明した状況とはちょっとだけ異なります 弦の運動を 支配している復元力はヤング率 E( 弾性力 ) ではなく 両端の引っ張り F( 張力 ) で す 弦は材質によらずフニャフニャである と仮定しているのです よって ヤング率 E ではなく 張力 F が入ってきます 7-6 基準座標によるラグランジアンの表記 最初の二質点の問題は m m d dt d dt k k ( ) k でした これの運動方程式

を解くと基準座標は X, Y となります ( 係数が前回と違っていますが 変換行列 をきっちりユニタリーにするとこう なります 言い方を変えれば固有ベクトルをきちんと規格化すればということ です ) この基準座標で を書き直すと ( X Y ), ( X ) Y より m k ( ) ( ) ( ) k k X Y X Y X Y Y ( X Y ) m 4 4 m m k k Y Y X Y 4 となり 異なる振動数を持った 独立な 振動子の形になりました 基準座標 4 の意味が 独立な振動子の集まりとなるように座標変換することだ というこ とでしたから あたりまえのことです 運動方程式は X Y d dt d dt X Y と全く同じ形をしています ですから 複雑な問題が現れたときのレシピは うまい座標変換 ( 変数変換 ) を考えなさいということです その新しい変数で 同じオイラー ラグランジュの式が成り立つのです 何回も引き合いにだしてくどいようですが たとえば 極座標は snθ cosϕ, snθ snϕ, cosθ という変換ですが 運動方程式は 4

d d d 旧座標 :,, dt y dt y z dt z d d d 新座標 :,, dt θ dt θ ϕ dt ϕ と 変数名を変えただけで同じ形をしています ですから 何も心配しないで ともかく うまい座標変換さえ思いつけば あとはオイラーラグランジュが何 とかしてくれるというわけです 今回の複数質点の振動についても 話は全く同じです 変数変換が一次変換の 場合の話になっています 前の話の具体論というわけです 具体例 y y y y yy というわけのわからないラグラン ジアンがあったとします 運動方程式は についてだけでも d dt yy y ( y y yy ) で これ以上考える気がし てきません しかし y X, y Y という変数変換をしてやると X Y となり 自由な二質点の運動 ( あるいは一質点の平面内の運動 ) であ ることがわかります 座標変換の強力さがおわかりいただけたと思いますが どういう変換をすれば よいかということまではわかりません うまい変換をひとつ思いついただけで 物理学史に名前が残るといってもよいのは確かです ここまでで 5

6 ( ) ( ) n n n n X X X X M,, という変換が非常に強力であることがわかりました しかし ラグランジアンは 座標と速さの関数です 速さも含めて変数変換するなどというとんでもない話が次回以降に続きます ( 補遺 ) 念のため の例を行列を使って解いておく より A を対角化する ( ) λ λ λ Iλ A,, ± λ 固有ベクトルは A λ より λ のとき b b b b, b, b よって 規格化して λ のとき b b b b, b, b よって 規格化して よって から t t が基準座標なお である ( 固有ベクトル行列は直交行列 ) ので確かに

7 A 6 となる よって t λ を基準座標とすればよい ( 今週の出席 ) 三つのバネで繋がれた二つの質点のラグランジアンを書け 基準座標でラグランジアンを書け ( レポート ) 三つ以上の質点がバネにつながれている問題を解き 規準振動がどのような振動かを図示せよ ( 昨年の大学院入試問題 ) リング状 左端は壁で右端は自由端 両端とも壁 両端とも自由端