予定 ( 川口担当分 ) (1)4 月 13 日 量子力学 固体の性質の復習 (2)4 月 20 日 自由電子モデル (3)4 月 27 日 結晶中の電子 (4)5 月 11 日 半導体 (5)5 月 18 日 輸送現象 金属絶縁体転移 (6)5 月 25 日 磁性の基礎 (7)6 月 1 日 物性におけるトポロジー
今日 (5/11) の内容 ブロッホ電子の運動 電磁場中の運動 ランダウ量子化 半導体 半導体中の不純物準位 キャリアー密度 代表的な半導体のバンド構造 半導体へテロ構造 超格子 半導体の応用
レポート問題 4 2 次元三角格子を持つ 3 価金属のフェルミ面を 以下の手順に従って描きなさい 1. 逆格子ベクトルを求め 第一 第二 第三ブリルアンゾーンを図示しなさい 2. 一電子あたり第一ブリルアンゾーンの半分の面積を占有することから 3 価の金属に対するフェルミ円の半径を求めなさい ( 準自由電子模型 ) 3. 1,2 の結果から フェルミ面を求め どこに電子 正孔がいるかを示しなさい
ブロッホ電子の運動
静電場中のブロッホ電子 逆格子ベクトルだけ任意性をもつ 1D 強束縛模型 家泰弘 物性物理 ( 産業図書 ) ブロッホ振動 通常は振動周期よりも短時間で散乱が起こる 直流電流 (Drude の式 )
静磁場中のブロッホ電子 等エネルギー面の磁場に垂直な接線方向 等エネルギー面の法線方向 家泰弘 物性物理 ( 産業図書 ) 電子は常に等エネルギー面にとどまる 周回運動
静磁場中のブロッホ電子 周回運動の周期 実空間での軌道 家泰弘 物性物理 ( 産業図書 ) 磁場に垂直成分は 波数空間での軌道を磁場の周りに 90 度回転した方向に動く
静磁場中のブロッホ電子 波数空間 閉じた軌道 実空間 開いた軌道 波数空間 実空間 家泰弘 物性物理 ( 産業図書 )
ランダウ量子化 磁場により電子状態そのものが変化 磁場中の電子のハミルトニアン 2 次元自由電子 一様磁場 シュレディンガー方程式 ランダウゲージ : サイクロトロン周波数 量子化縮重度 : ( 単位面積当たり )
レポート問題 5 面直磁場下の 2 次元自由電子のシュレディンガー方 程式を解き エネルギー固有値と各固有値に対する 縮重度を求めなさい
ランダウ量子化 スピン自由度はないとする 軌道の量子化 熱力学量 輸送係数が磁場の関数として振動 ex) de Haas-van Alphen 効果 : 磁化の振動 Shubnikov-de Haas 効果 : 磁気抵抗の振動
de Haas-van Alphen 効果 電子密度 に対し であれば電子はすべて基底状態にはいる このとき 電子のエネルギーは 一般に のとき N 番目の励起状態までが完全に N+1 番目が部分的に占有される
de Haas-van Alphen 効果 磁化 1/B に対して周期的 周期 : 2D フェルミ円の囲む面積 フェルミ面の形状の測定に用いられる 家泰弘 物性物理 ( 産業図書 )
半導体
半導体 電子が完全に詰まったバンド ( 価電子帯 ) とその上の完全に空いたバンド ( 伝導帯 ) との間にエネギーギャップがある物質は絶縁体となる 絶縁体でもエネルギーギャップが比較的小さい物質 (<2eV) を半導体という 代表的な半導体 ダイアモンド構造 Si,Ge 閃亜鉛構造 GaAs
半導体中の不純物 不純物 : 電子を供給 / 奪う 電子を供給する不純物ドナー 電子を奪う ( 正孔を供給する ) 不純物アクセプター 例 1) Si (IV 族 ) に P (V 族 ) を不純物として添加 5 個の価電子のうち 4 個が共有結合 残りの 1 個は不純物原子の周りにゆるく束縛 例 2) Si (IV 族 ) に B (III 族 ) を不純物として添加 電子がひとつ不足 = 正孔がひとつ供給 意図的に不純物を添加することをドーピングという n 型半導体 : ドナー不純物をドープしたもの p 型半導体 : アクセプター不純物をドープしたもの真性半導体 : 不純物がないもの
不純物イオンによる束縛エネルギー 水素原子と類似状態 伝導電子の有効質量 半導体の誘電率 ~100K : 熱励起
n 型 /p 型半導体における電子 正孔の分布 n 型半導体 p 型半導体 ドナー準位 アクセプター準位 家泰弘 物性物理 ( 産業図書 )
キャリアー密度 伝導帯 (conduction band) に励起される電子の密度 フェルミ分布関数 伝導帯の状態密度 エネルギーにの有効状態密度が集中しているとみなせる
キャリアー密度 同様に価電子帯 (valence band) に励起される正孔の密度 n 型 p 型 真性を問わず成り立つ
真性半導体 より 一方 が成り立つので ギャップのほぼ真ん中
レポート問題 6 ドナー濃度 ドナー準位の n 型半導体を考える 1. 一つのドナー準位を電子が占める確率は 次式で与えられる これを説明しなさい 2. 伝導帯に励起されている電子の数はイオン化したドナーの数と正孔の数の和に等しい このことから 以下の 3 つの領域において電子とホールの密度をそれぞれ求めなさい 3. 上の結果を踏まえ 横軸を 縦軸を電子の密度として プロットしなさい
半導体のバンド構造 代表的な半導体 ダイアモンド構造 Si,Ge 閃亜鉛構造 GaAs ブリルアンゾーンは fcc 構造と同じ https://ja.wikipedia.org/wiki/ ダイヤモンド https://ja.wikipedia.org/wiki/ ブリュアンゾーン
半導体のバンド構造 家泰弘 物性物理 ( 産業図書 ) 伝導帯の底と価電子帯の頂上がブリルアンゾーンの同じ位置にある半導体を直接ギャップ半導体 そうでないものを間接ギャップ半導体と呼ぶ
半導体の伝導帯底付近における等エネルギー面 家泰弘 物性物理 ( 産業図書 )
GaAs, Si, Ge の物質パラメター 家泰弘 物性物理 ( 産業図書 )
半導体と半金属 周期律表の下段の元素からなる半導体ほどギャップが小さくなる傾向 ex.) InSb : 0.235 ev ( ナローギャップ半導体 ) IV 族では C: 5.5eV, Si:1.17eV, Ge:0.74eV, a-sn: 半金属 家泰弘 物性物理 ( 産業図書 )
半導体ヘテロ構造 超格子 異種の半導体を層状に積み重ねる ( ヘテロ構造 ) 天然には存在しない人工物質薄膜技術向上 ( 分子線エピタキシーなど ) により可能に ex) GaAs/Al x Ga 1-x As 家泰弘 物性物理 ( 産業図書 )
量子井戸 GaAs を Al x Ga 1-x As ではさんだ構造 GaAs の伝導体の電子は Al x Ga 1-x As との障壁によってできるポテンシャル井戸に閉じ込められ 2 次元電子ガスとなる 家泰弘 物性物理 ( 産業図書 )
半導体の応用 キャリア 密度が様々なパラメータに敏感 (= 制御可能 ) ダイオード トランジスタ等に応用
ダイオード 整流作用を持つ電子素子 順方向バイアス 電子 電流が流れる https://ja.wikipedia.org/wiki/ ダイオード 電子 正孔の結合により光を発する ダイオードレーザー 発光ダイオード
ダイオード 整流作用を持つ電子素子 逆方向バイアス 電子 電流が流れない https://ja.wikipedia.org/wiki/ ダイオード
トランジスタ トランジスタ : 電流増幅 スイッチング機能を持つ PNP NPN バイポーラトランジスタキャリアを 2 種類 ( 電子 正孔 ) 持つ E-B 間のわずかな電流変化が E-C 間電流に大きな変化となって現れる https://ja.wikipedia.org/wiki/ トランジスタ
電界効果トランジスタ (FET) 電圧により増幅 スイッチを制御 低消費電力 MOSFET (metal-oxide-semiconductor field-effect transistor) https://ja.wikipedia.org/wiki/mosfet
電界効果トランジスタ (FET) 無バイアスでは NPN 構造 電流は流れない ゲート電圧をかけると絶縁膜がコンデンサとして働く 絶縁膜と P 型半導体の間に電子がたまる (N 型のチャンネル ) 電流が流れる https://ja.wikipedia.org/wiki/mosfet