N Engl J Med 2014. Oct 1 ICU ジャーナルクラブ 2014.11.25 レジデント 2 年田中厚子
Introduc9on&Background
近年の大きな流れ 2001 年 NEJM IIT (van den Berghe) 2003 年 Canadian Prac9ce Guidelines (CPG) 2006 年 ESPEN EN guidelines 2009 年 ASPEN/SCCM guidelines 2009 年 ESPEN PN guidelines 2010 年 NEJM NICE- SUGAR 2011 年 NEJM EPaNIC study 2012 年 Lancet SPN 2013 年 JAMA Early PN study (2013 年 4 月 2 日勉強会を一部改変 3 )
ガイドラインでは ガイドライン 米国 (SCCM/ASPEN) Grade A- E ヨーロッパ (ESPEN) Grade A- C カナダ (CCPG) 投与経路 EN か PN か PN より EN が優先される (grade B) EN の開始にあたって腸音や排便などの確認は必須ではない (grade B) 消化管が使用できる患者は EN を行うべき (grade C) 3 日以内に十分な経口摂取量を期待できない患者に EN を行うべき (grade C) EN を 強く推奨 PN との併用は否定 EN 開始時期 EN: ICU 入室後 24-48 時間以内に開始 (grade C) その後 48-72 時間かけて目標投与量へ移行する (grade E) 1 週間以内に目標量の 50-65% 以上を達成することは臨床的に有益 (grade C) 24 時間以内に開始 (grade C) 投与量が目標に達しない場合に EN に加えて supplemental PN を検討 (grade C) ICU 入室後 24-48 時間以内の開始を 推奨 できる限り EN で PN 開始時期 EN が不十分な場合に 7 日以降に開始, 目標エネルギー量の 80% を目標とする (grade C) EN が不可能な場合に 2 日以内に開始 (grade C) PN 自体推奨されていない 経腸栄養を優先することがコンセンサスとして得られてきた (2013 年 4 月 2 日勉強会を一部改変 ) 4
ガイドラインでは ガイドライン 米国 (SCCM/ASPEN) Grade A- E ヨーロッパ (ESPEN) Grade A- C カナダ (CCPG) 投与経路 EN か PN か PN より EN が優先される (grade B) EN の開始にあたって腸音や排便などの確認は必須ではない (grade B) 消化管が使用できる患者は EN を行うべき (grade C) 3 日以内に十分な経口摂取量を期待できない患者に EN を行うべき (grade C) EN を 強く推奨 PN との併用は否定 EN 開始時期 EN: ICU 入室後 24-48 時間以内に開始 (grade C) その後 48-72 時間かけて目標投与量へ移行する (grade E) 1 週間以内に目標量の 50-65% 以上を達成することは臨床的に有益 (grade C) 24 時間以内に開始 (grade C) 投与量が目標に達しない場合に EN に加えて supplemental PN を検討 (grade C) ICU 入室後 24-48 時間以内の開始を 推奨 できる限り EN で PN 開始時期 EN が不十分な場合に 7 日以降に開始, 目標エネルギー量の 80% を目標とする (grade C) EN が不可能な場合に 2 日以内に開始 (grade C) PN 自体推奨されていない (2013 年 4 月 2 日勉強会を一部改編 5 )
ASPEN vs. ESPEN 論争 (2013 年 4 月 2 日勉強会より引用 ) 6
EPaNIC study N Engl J Med. 2011;365:506. Design:mul9center, pararell- group RCT 2007 年 8 月 ~2010 年 11 月 Se7ng: ベルギーの ICU 7 施設 Pa8ents:EN のみでは目標熱量に到達できない患者 4640 人 NRS が 3 以上で BMI17 以上の症例 Interven8on/Control: ICU 入室後 48 時間以内に PN 併用開始 (Early PN 群 ) 対 ICU 入室後 8 日目に PN 併用開始 (Late PN 群 ) で比較血糖値は持続インスリン投与で 80~110 mg /dl にコントロール 7
短期 長期ともに死亡に差はない Primary Outcome 平均 ICU 滞在日数は Late PN 群で有意に少なかった Secondary Outcome 感染症発生率 人工呼吸期間は Late PN 群で有意に少なかった
Secondary Outcome RRT 日数 入院期間 医療コストにおいても Late PN 群で有意に少なかった 最初の 1 週間は PN の併用を手控える戦略が有用と考えられた
Design: 多施設 RCT Setting: オーストラリア ニュージーランドの ICU 31 施設 Patients: 相対的 EN 禁忌の患者 1372 人 Intervention/Control: 相対的 EN 禁忌の患者に早期 PN を行う群 (EPN 群 ) 対通常管理群 Outcome:60 日死亡率,QOL, 感染症発生率 手術室からの入室が最も多く 中でも消化管関連の患者が多い JAMA 2013;309:2130-8 Early PN study
60 日死亡率 ICU 滞在期間 入院期間では有意差なし 60 日目の QOL 人工呼吸期間では Early PN 群が有意に優れていた
Lancet 2013;381:385 93 Design:2 施設間 RCT Setting: スイスの ICU 2 施設 Patients:ICU 滞在 3 日以内に EN が目標の 60% 以下にしか達しなかった患者 305 人 Intervention/Control: 1 日目から両群とも EN を開始 4 日目より PN を併用した群 (SPN 群 ) 対そのまま EN を増加した群 Outcome: 院内感染症発生率 (ICU 入室後 9-- 28 日 ) SPN study SPN 群 EN 群 SPN 群で院内感染の発生率が有意に低下した
ü いくつかのメタ解析で EN で有意に感染性合併症の減少が確認 Heyland DK, Dhaliwal R, Drover JW, et al:canadian Critical Care Clinical PracticeGuidelines Committee:Canadian clinical practice guidelines for nutrition support in mechanically ventilated, critically ill adult patients. JPEN J Parenter Enteral Nutr.2003;27:355-373. 生理的経路 コストなども考慮し ICU における栄養の現状は 可能な限り EN というのがスタンダード ü 最近は EN に加えて早期から PN を併用するべきか否かというのが議論されている (SPN study) 流れ ü しかし EN は下痢や嘔吐などの胃腸不耐性により栄養不足を引き起こすこともある Engel JM, Muhling J, Junger A, et al:enteral nutrition practice in a surgical intensive care unit :What propotion of energy expenditure is deliverd enterally?. Clin Nutr.2003;22:187-92. ü そもそも PN を強く否定する根拠は乏しく 最も適切な栄養投与経路についてはまだ結論は出ていない 先行研究の問題点 (ex. 血糖管理 患者バイアス ) を踏まえて あらためて EN vs. PN の研究を!
CALORIES trial
Methods
Design:multicenter, parallel-group RCT 電話法によるランダム化 Setting: 英国の ICU 33 施設 Patients:ICU 入室 36 時間以内に 2 日以上の栄養投与が必要と医師に判断された 18 歳以上の患者 Exclusion criteria: どちらかの投与経路が不可能 過去 7 日間に栄養投与されている 胃 or 腸瘻造設された人 妊婦 今後半年英国に留まらない
Intervention: ICU 入室後 36 時間以内にランダム化された後すぐに栄養開始経口への変更 ICU 退室 死亡などがなければ 5 日間投与継続された PN 群 CV の専用ラインより投与 EN 群経胃 or 経腸チューブより投与 48-72 時間で目標熱量に達成するように投与目標熱量 25kcal/kg( 実際体重 )/ 日血糖値 <180 mg /dl
EN/PN 投与詳細 CALORIES では特定の製品や EN/PN 投与プロトコールの使用を指示せず 各々の ICU でのプロトコールが吟味 認可され以下の条件下で行われた PN 群 英国国民保険サービス (NHS) ガイドラインに従って CV カテーテルを挿入 各 ICU での栄養を以下の範囲で使用 : 1365-2540kcal/ 袋 N 7.2-16.0g/ 袋 48-72 時間以内に 25kcal/kg/day( 実際体重 ) を目標 EN での trophic feeding を 5 日間は禁止 EN 群 イギリス患者安全機構 (NPSA) ガイドラインに従って経胃 / 経腸チューブを挿入 各 ICU での栄養を以下の範囲で使用 : 1365-2540kcal/ 袋 N 7.2-16.0g/ 袋 48-72 時間以内に 25kcal/kg/day( 実際体重 ) を目標
Primary outcome: 30 日死亡率 Secondary outcome: 臓器支持期間 感染性 / 非感染性の合併症 ICU 滞在日数 入院日数 ICU 死亡 退院時死亡長期予後 :90 日 /1 年時での生存率 死亡率
Statistical methods Statistical method: EN 群の 30 日死亡率を 32% と仮定 PN 群は EN 群に比べ主要評価項目が 20% 減少すると仮定検出力 90% α エラー 0.05 と設定 Sample size:2383 ITT 解析を使用
Result
除外項目該当例に加え 同意を得られない例を除外 PN 群 EN 群 英国 33 施設 2011 年 6 月 ~2014 年 3 月
患者背景 予測死亡率 30% 強の患者群 人工呼吸管理 :80% 以上 入室時の重症度 事前の低栄養は 7% 程度 臓器障害度評価 患者背景の Baseline に差は認めなかった
SOFA Score 蛋白摂取量 摂取カロリー 目標カロリー到達度
30 日死亡率に有意差はなかった Primary outcome
Secondary outcome PN 群で有意に低血糖と嘔吐が少なかった
Discussion
Ø 本研究では 30 日死亡率や感染症発生率で 2 群間に明らかな差はなかった Ø EN 群では嘔吐がより多く認められる傾向にあったが PN 群で多いと推測されていた感染性合併症の増加は認めなかった ルート管理や VAP の予防などが進歩してきたためと推測される Ø 2 群とも目標カロリーに届いていない例が多い 投与量自体は先行研究と一致 理由としてどちらの投与経路でも多くの実践的 組織的障害があることがあげられカロリーの効果的な投与経路として違いはなかった
Ø EPaNIC 試験との比較 短期 長期ともに死亡率に差はなし 早期 PN 群で感染症や人工呼吸器使用が有意に高い Secondary Outcome 感染症発生率 人工呼吸期間は Late PN 群で有意に少なかった さらに Post hoc 解析では投与量依存性に感染症が増加 CALORIES trial では 早期の PN 併用による過剰栄養は経路の違いよりも有害性に関連があるという仮説を支持するものと考える
Editorial
ü どちらの経路でも禁忌がない患者において PN か EN が早期に開始され同等の栄養量が投与された場合 その転帰は似たようなものになる ü 早期 PN に関しては利点がなさそうである 過去の小規模試験において大げさに利点が主張されてきたことは疑問である ü 一方 成人重症患者の栄養投与経路についてのベッドサイドでの決定はおそらく個々の栄養必要量の評価 利用しやすさ コスト 流行により影響を受け続けるだろう
私見 PN 関連の感染症は決して増えていないことから 低血糖や Overfeeding を避ければどちらの投与経路を使用しても大差はないのかもしれない 何らかの理由で早期に EN が投与できない患者において PN をすぐ始めるべきかどうかについては今回の研究では結論づけられない 栄養組成 投与量 タイミングなどについても議論の残る点はまだまだ多く 最適な栄養療法については依然として不明である