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都臨技血液研究班研修会 2016.05.19 知って得する血液研修会 末梢血液像の見方 考え方 社会福祉法人賛育会賛育会病院 臨床検査科 星恵輔 1

本日のポイント Ⅰ 血液像を観察するにあたって ⅰ 血液像とは ⅱ 血液 ( 血球の産生 ) ⅲ 血球の分化と成熟 Ⅱ 採血 ( 検体の保存 ) Ⅲ 血球測定 ( 血算 ) Ⅳ 血液塗抹標本作製 Ⅴ 普通染色 Ⅵ 血液像観察 ⅰ 白血球分類 ⅱ 赤血球形態観察 ⅲ 血小板形態観察 Ⅶ 特に注意したい形態学的異常所見 Ⅷ まとめ 2

血液塗抹標本作製 ~ 報告 検体採取 ( 採血 ) 検体受付 採血のエラー 採血後の混和不足 検体放置によるダメージ 検体凝固有無など 検体測定 ( 自動分析機 ) 塗抹標本の作製 機器精度管理 機器取り扱い 塗抹の角度と速度 塗抹後の乾燥 塗抹後の放置時間 染色 ( 普通染色特殊染色 ) 固定不足 染色時間 染色液 水洗 鏡検 ( 顕微鏡 ) 結果報告 整備不良 正しい使用方法 信頼性 コミュニケーション 3

Ⅰ 血液像を観察するにあたって ⅰ 血液像とは 血小板 赤血球 白血球 これら造血 3 系統の細胞における量的質的形態学的観察 4

ⅱ 血液 ( 血球 ) の産生 血液はどこで造られるのだろうか? 自己複製 赤血球 白血球 ( リンパ球 ) 造血幹細胞 血小板

ⅲ 血球の分化と成熟 白血球編 全能性幹細胞 好中球 - 単球系前駆細胞 GM-CSF IL-3 好中球系前駆細胞 GM-CSF G-CSF 骨髄芽球前骨髄球骨髄球後骨髄球桿状核球 分葉核球 骨髄系多能幹細胞 単球系前駆細胞 単芽球 前単球 単球 GM-CSF M-CSF 好酸球系前駆細胞 GM-CSF IL-3 IL-5 好酸球 好塩基球系前駆細胞 IL-3 IL-4 好塩基球 6

赤血球血小板編 赤血球系前駆細胞 前赤芽球 塩基性赤芽球 多染性赤芽球 正染性赤芽球 赤血球 骨髄系多能幹細胞 EPO 巨核球系前駆細胞 巨核芽球 前巨核球 巨核球 血小板 全能性幹細胞 Meg-CSF TPO SCF IL-3 T T リンパ球系幹細胞 前 T リンパ球 IL-2 T リンパ球 リンパ系多能幹細胞 B リンパ球系幹細胞 前 B リンパ球 B リンパ球 IL-7 IL-7 IL-4 5 6 形質細胞 7

スキャッタグラムサイトグラムのからの情報の重要性 正常 芽球出現? ウィルス感染? 大小不同? 血小板凝集? RBC 正常 PLT 正常 鉄欠乏回復期 8 破砕赤血球? 巨大血小板?

赤血球指数 MCV( 平均赤血球容積 ) 赤血球 1 個の平均容積 Ht(%) RBC(100 万 )/μl) 10 単位 :fl 基準値 81~99 fl MCH( 平均赤血球ヘモグロビン量 ) 赤血球 1 個に含まれる Hb 量 Hb(g/dl) RBC(100 万 /μl) 10 単位 :pg 29~35 pg MCHC( 平均赤血球ヘモグロビン濃度 ) 赤血球 1 個に含まれる Hb の割合 Hb(g/dl) Ht(%) 100 単位 :g/dl 32~36 g/dl 9

貧血の分類 (MCV Hb から ) 赤血球の大きさに基づく貧血の分類 小球性貧血鉄 ヘム グロビンの異常 正球性貧血 MCV 80 以下 MCHC 30 未満 MCV 81-99 MCHC 32-36 大球性貧血核酸合成異常 ストレス造血 膜脂質成分異常 MCV 100 以上 MCHC 32-36 代表的な疾患 鉄欠乏性貧血 ( 鉄異常 ) 鉄芽球性貧血 ( ヘム合成異常 ) 鉛中毒 サラセミア ( グロビン異常 ) 溶血性貧血 急性出血 慢性疾患 ( 感染 炎症 癌 ) 慢性腎疾患 骨髄疾患 ( 白血病 MF など ) 巨赤芽球性貧血 (VB 12 葉酸欠乏 ) MDS 慢性肝疾患 抗がん剤治療 再生不良性貧血 長期間の溶血性貧血 10

最も一般的であるウェッジ法での作製方法 血液約 5μl を滴下 引きガラスをのせ 血液を均等に広げる 0.5 秒 角度約 30 度 0.5 秒で引き終わるように塗抹する 冷風による強制乾燥 ( 約 10 秒 ) 11

ウェッジ法における塗抹例 良 短すぎ 末端部なし 不均一 不均一 塗抹面の曲がり 引きガラス止め 塗抹面に段 塗抹面に段 12

Ⅴ 普通染色 (Romanovsky 染色原理と染色態度 ) 染色液リン酸緩衝液中 PH6.4 塩基性色素 ( メチレン青 アズ - ル ) (+) に荷電 酸性色素 ( エオジン Y) (-) に荷電 塩基性色素を取り込む 塩基性顆粒 ( 異染性 ) 酸性色素を取り込む 核の DNA, 細胞質の RNA (-) に荷電している 赤血球 ( ヘモグロビン ) 好酸性顆粒 普通染色 単染色法ライト (WRIGHT) 染色ギムザ (GIEMSA) 染色 (+) に荷電しているニ重染色法ライト ギムザ染色メイ グリュンワルド (MAY-GRUNWALD) 染色 塩基性色素酸性色素特徴 メイメチレン青エオシン酸 ライト 多染性メチレン青 エオシン Y 顆粒 核 ギムザアズール Ⅱ アズール Ⅱ エオシン 顆粒 核 13

染色後の肉眼的観察 塗抹面の色調 中毒性顆粒の選択的染色 その他の要因 PH が酸性に傾いた 染色が不十分 水洗時間が長い マラリアの検索 その他の要因 PH がアルカリに傾いた 標本が古い 水洗時間が短い 白血球が多い 高タンパク検体 14

Ⅵ 血液像の観察 低倍率で観察するポイント ( 量的観察 : 100~200) 塗抹標本の染色性 標本全体の細胞数 ( 増減 ) 標本全体の細胞分布 ( 偏り ) 血算データとの比較 血小板凝集 フィブリン析出 大型細胞 異型 ( 異常 ) 細胞の有無 アーティファクト 高倍率で観察するポイント ( 質的観察 カウント : 400~1000) 赤血球系 白血球系 血小板系 染色性 形 大きさ 封入対の観察 染色性 形 大きさ 封入対の観察幼若細胞 異常細胞の有無 分類のバランス核 細胞質 顆粒の様子 凝集の有無 大きさ 形態 15

最適鏡検部位と視野の移動方法 ( スクリーニング方法 ) カウントに入る前のスクリーニング 超 重要! 100 倍 100 倍 400~1000 倍 200 倍 絶対やってはいけないこと いきなりカウント弱拡大でカウント 16

ⅰ 白血球分類 白血球を観察するうえでの着眼点 細胞質の色調, 辺縁の形状 顆粒の有無大きさ染色性 空胞の有無 核形 : 核構造 ( クロマチン ) 核小体 : 大きさ数 核小体 封入体の有無 細胞質 :N/C 比細胞の大きさ形状 17

血球の成熟に伴う一般的原則 例えば 顆粒球系細胞の場合 細胞の大きさは 成熟するにつれて小さくなる ( 巨核球系は除く ) 細胞質は 塩基好性から固有の色調へ クロマチン構造 ( 核網 ) は 繊細から粗荒へ 核小体は 明瞭から不明瞭 そして消失へ 核形は 類円形から固有の形へ 顆粒は 非特異性 ( 一次顆粒 ) のものから特殊 ( 二次顆粒 ) なものへ 18

白血球系正常 5 分類の形態学的特徴 血球種類 好中球 リンパ球 単球 好酸球 好塩基球 形態学的特徴 12~15μm 核は分節ないし桿状 クロマチンは粗大粗剛 細胞質は淡いピンク 細菌などの異物が体内に侵入した際にその部位に集まり貪食 殺菌 増加よりも減少に注意 ( 好中球が低いと易感染性 ) 小リンパ球 6~9μm 大リンパ球 9~15μm 核は多くは円形 クロマチンは結節状 濃紫色細胞質は通常透明感のある水色 ( 淡青色 ) だが 種々の条件で変化 鏡検時は年齢に注意 ( 幼児ではリンパ球比率が高い ) 15~20μm 核は通常馬蹄形や腎形 核クロマチンは淡いレース編み状 細胞質は灰青色 ( スリガラス状 ) を示し 微細なアズール顆粒や空胞が認められる事がある 殺菌 異物処理 サイトカインの分泌 TF を発現し凝固を促進 13~20μm 細胞質に好酸性の顆粒あり ( 核を覆うことはない ) 核は通常 2 分葉を呈する 貪食能 殺菌能 ( 好中球よりは弱い ) 10~13μm 細胞質に大型の好塩基性顆粒を多数含む ( この顆粒は核を覆って分布する傾向あり ) アレルギーなどで上昇 正常であれば 1% もない細胞なので 上昇している場合は注意深く観察 (CML の可能性 ) 19

白血球系細胞における形態学的特徴 大きさ (μm) 顆粒細胞質核形核小体 骨髄芽球 10~15 (-) 青色 ( 狭い ) 単核 ( 類円形 ) (+) 前骨髄球 20~25 (+) アズール顆粒 ( 一次顆粒 ) 青色 ( 広い ) 単核 偏在 ( 類円形 ) (+) 骨髄球 16~23 (+) 特殊顆粒 ( 二次顆粒 ) 淡橙色 単核 ( 類円形 ) 核網やや粗荒 (-) 後骨髄球 12~18 (+) 淡橙色 へこみくびれ (-) 桿状核好中球 分葉核好中球 12~15 (+) 淡橙色 12~15 (+) 淡橙色 桿状 ( ソーセージ様 ) (-) 分葉 (2~4 分葉 ) (-) 好酸球 13~18 (+) 好酸性淡橙色桿状 ~ 分葉 (-) 好塩基球 10~13 (+) 塩基好性淡褐色不整形 (-) 単球 15~20 (-~+) 微細顆粒 青灰色 腎形 馬蹄形 (-) リンパ球 7.5~16.8 (-~+) 比較的大型 淡青色円形 類円形 (-~+) 20

好中球 :neutrophil 桿状核球 :band fome 直径 12~15μm. 核は桿状ないし分葉クロマチンは粗剛で集塊を形成細胞質は淡いピンク 桿状核好中球 U 字型の濃染する核を持つ 分葉核球 :segmented form 分葉核好中球核は 2~5 個の分葉を呈する 重なりあうこともあるが分葉の大きさと形は種々で, 細いクロマチン糸で相互につながっている 好中球増多 感染症 炎症 心筋梗塞 悪性腫瘍 運動 ストレス 喫煙 など 好中球減少には注意が必要! 好中球減少 ウイルス感染症 薬剤( 抗がん剤 ) 再生不良性貧血 巨赤芽球性貧血 MDS AML など 21

成熟好中球における桿状核 分葉核の分類基準 日臨技勧告法での分類 核 a b 分葉核の条件 核の最少幅部分が最大部分の 1/3 以下であること 核の最少幅部分は 約 2 μm 以下であること 核が重なり かつ団子状を呈するもの 後骨髄球桿状核球分葉核球 a>4 μm 核形考慮 2 μm a 4 μm 核形考慮 a 2 μm 核形考慮 日本検査血液学会標準化委員会 桿状核球 直径 12~15μm 長径と短径の比率が 3:1 以上の長い曲がった核をもつ 核クロマチンは粗剛である 分葉核球 直径 12~15μm 核は 2~5 個に分葉し 分葉した核の間はクロマチン構造が見えないクロマチン糸でつながる 核クロマチンは粗剛である 核が重なり合ってクロマチン糸が確認できないものは杆状核球と分類する 22

桿状核好中球 分葉核好中球 a b 直径 12~15μm 直径 12~15μm 核の長径と短径の比率が 3:1 以上 核の最小幅部分 (a) が最大幅部分 (b) の 1/3 以上 長い曲がった核をもつ 直径 12~15μm 核は2~5 個に分葉する 核の最小幅部分が十分に狭小した場合は分葉核と判定 核の最小幅部分が最大幅部分の1/3 未満 あるいは赤血球直径の1/4( 約 2μm) 未満であれば核糸形成とみなす 核が重なり 分葉核か桿状核か明確でないときは分葉核球と判定する 23

どちらでしょう? a>2μm a>1/3b 核糸 重なり a<2μm a<1/3b a<2μm a<1/3b a>2μm a>1/3b a<2μm a<1/3b a<1/3b 重なり 重なり 24

好酸球 :eosinophil 成熟好酸球の直径 13~18μm 核は通常 2 分葉を呈しする 細胞質の好酸性顆粒は原則として核を被うことはない Eosi 増加疾患 アレルギー性疾患 寄生虫感染 気管支喘息など Eosi 低下疾患 クッシング症候群 ストレス 副腎皮質ステロイド投与など 25

好塩基球 :basophil 成熟好塩基球の直径は 10~13μm 好塩基球の顆粒 細胞質は大型の好塩基性顆粒( 水溶性顆粒 ) メチレンブルー( 青色 ) に染まるが 実際には暗紫色に見える * 異染性 ( メタクロマジーを呈する ) この顆粒は核を被って分布する傾向がある 好酸球の顆粒とは異なり細胞質には充満することはない 核形は輪郭不明瞭なことが多い 好塩基球増加 アレルギー疾患 甲状腺機能低下 ( 粘液水腫 ) で軽度増加 注意! 末梢血白血球数 幼若顆粒球系細胞とともに好塩基球が増加している場合には注意が必要 CML の可能性も 26

単球 :monocyte 直径 15~20μm 細胞質 : 色調は 灰青色を呈する細胞質 : 微細なアズ-ル顆粒と空胞を認めることがある核形 : 通常馬蹄形, 腎形であるが 2~3 分葉を示す場合もある核クロマチン : 繊細 TFを発現し 凝固を促進単球は 血中に存在し組織中では マクロファージとして働く 単球増加 軽中度増加 :1,000/μl 以下感染症 膠原病など高度増加 :1,000/μl 以上が持続 注意! 慢性骨髄単球性白血病 (cmmol) の可能性 高度増加 :5,000/μl 以上 急性骨髄単球性白血病 (M5a, M5b) の可能性 27

リンパ球 :lymphocyte 小リンパ球 大リンパ球 小リンパ球 6~9μm 大リンパ球 9~15μm 核は多くは円形 クロマチンは結節状 濃紫色細胞質は通常透明感のある水色 ( 淡青色 ) だが 種々の条件で変化 鏡検時は年齢に注意 ( 幼児ではリンパ球比率が高い ) 顆粒リンパ球 28

年齢と白血球比率の関係 好塩基球 好酸球 好中球 リンパ 球 単球 1~3 日 0.2 2.3 70.8 21.2 6.8 4~14 日 0.2 3.9 39.6 52.6 5.0 1~12 月 0.23 2.9 23.9 70.0 5.0 1~3 年 0.09 4.4 36.7 56.1 4.4 4~6 年 0.06 4.7 46.7 43.9 4.5 7~10 年 0.2 2.5 48.0 45.0 3.0 成人 (16~60) 老人 (60~) 0.5 3.5 55.3 36.6 5.0 0.8 3.1 54.6 36.5 6.8 新生児期では白血球数が多く ( 好中球優位 ) 1 万 /μl~ 数万 /μl に達することもある 逆に数千 /μl のものもあり 激しい変動幅を示す 生後 3~4 日で白血球数は急激に減少し 以後動揺をしつつ漸増する 生後一週間ほどでリンパ球と好中球の比率は逆転し これが 4 年 ( 歳 ) ころまで続く 乳幼児期と成人でのリンパ球換算では これら年齢的な変動の考慮が必要 例えば 生後 3 カ月 : 白血球数 10,000/μl( 相対数約 60%) 幼児ならば許容範囲しかし これが成人ならば絶対的増加 ( 異常所見 ) と解釈できる 絶対数 :6,000/μl 29

補足 : 絶対数換算の重要性相対数と絶対数の考え方 白血球分類の評価 百分率は 相対的表現である! ので 解釈には絶対数で考えることが望ましい診断には 絶対的減少 増加での評価が重要となる 例えば 症例リンパ球 (%) 白血球数 /μl リンパ球 /μl 1 90 2,000 1,800 2 30 6,000 1,800 3 10 18,000 1,800 4 10 5 50 6 90 80,000 12,000 1,100 8,000 6,000 990 絶対的増加 絶対的減少 リンパ球基準値 ( 絶対数 ):1,000~4,500/μl 30

白血球 5 分画における健常成人の量的基準値 約 3% 約 4,000/μl (1,500~7,500) 桿状核球 リンパ球 年齢考慮! 約 35% 約 2,500/μl (1,000~4,500) 約 55% 分葉核球 好塩基球 0~1% 約 50/μl (0~100) 約 4% 約 300/μl (200~800) 単球 好酸球 約 3% 約 200/μl (0~500) 31

異型リンパ球 :atypical lymphocyte 直径 16μm( 赤血球直径のおおよそ 2 倍程度 ) 以上で細胞質は比較的広い リボゾ - ム RNA 合成 : 塩基性が強い 核小体を認めるものもある 核は類円形 時に変形を呈する 核網は濃縮しているが リンパ球に近いものからパラクロマチンが認められるものまである アズ - ル顆粒, 空胞を認める場合がある 正常なものから典型的なものまでバラエティ - に富んでいる 反応性 ( 活性型 ) のリンパ球 日本検査血液学会 HP http://www.jslh.com/ 32

異常リンパ球 :abnormal lymphocyte ATL 腫瘍性のリンパ球 ( 病的 ) セザリー 大型化 核形不整 明瞭な核小体 細胞質突起 空胞化など単一形式をとることが多い 33

好中球系細胞の成熟段階 骨髄芽球 :myeloblast 細胞の大きさ :10~15μm NC 比大 核クロマチンは繊細緻密 1.5μm ほどの核小体を 1~4 個有する 細胞質は灰青色 細胞周辺部ほど色調は濃く 顆粒はない 前骨髄球 :pro-myelocyte 細胞の大きさ :13~25μm 細胞質に粗大なアズール顆粒 ( 一次顆粒 ) を有する ( 骨髄芽球と異なる点 ) 数個の核小体を有する 細胞は大きく細胞質は青色調 核は類円形で偏在し ゴルジ野がぬけて明るくみえる 34

好中球系細胞の成熟段階 骨髄球 :myelocyte 細胞の大きさ :16~23μm 細胞質の色調が淡青色から淡赤色へ 粗大なアズール顆粒がほとんど消失して 微細な好中性特殊顆粒 ( 二次顆粒 ) が主体となる 核は類円形 小型で核クロマチンは粗くなる 核小体は消失 後骨髄球 :meta-myelocyte 細胞の大きさ :12~18μm 更に成熟が進んで核が腎臓形になる 核クロマチンは更に粗大 結節状 35

日本検査血液学会標準化委員会 日本検査血液学会 HP http://www.jslh.com/ 36

悩みやすいポイント ( 昔 自分が悩んだこと ) 単球とリンパ球の鑑別に迷う 核円形 楕円形まれに不整形粗荒 ( ぺったりした感じ ) クロマチン集塊を形成しやすい細胞質青淡色 青色調 ( 辺縁 ) アス ール顆粒大粒で数えられる 核馬蹄形 腎形 分葉形もあり繊細 ( もこもこした感じ ) 核内に切れ込みあり細胞質灰青色空胞アス ール顆粒微細 37

単球とリンパ球と異型リンパ球の着眼点 大きさ (μm) 細胞質 核形核構造 単球リンパ球異型リンパ球 13~21 色調 :( 淡 ) 青灰色スリガラス様 曇り空と形容顆粒 : 核の周囲に微細アズール顆粒が見られることがある 核形 : 不規則な円形で腎形 馬蹄形など ( 複雑なくびれ ) 核構造 : リンパ球に比較してクロマチンに乏しく淡染 やや繊細でレース状を呈する 小 : 8~10 中 :10~14 大 :14~16 色調 : 塩基好性で透明感がある青色 澄んだ青空と形容顆粒 : アズール顆粒を認めることがある ( ペルオキシダーゼ陰性 ) 核形 : 円形または類円形 核構造 : クロマチンは豊富で濃染し集塊状 16 μm 以上 色調 : 塩基好性が強く濃い青色を呈する 顆粒 : アズール顆粒を認めることがある ( ペルオキシダーゼ陰性 ) 核形 : 不整円形 1 単球様 2 形質細胞様 3 リンパ芽球様 基準値 3~8% 絶対数 :200~800/μl 25~45% 絶対数 :1000~4500/μl 小児 :10.0% 以下成人 : 1.0% 以下? その他 非特異的エステラーゼ染色が強陽性 ( 褐色 ) 組織中では マクロファージ T リンパ球 (Th/i Ts/c) B リンパ球 NK 細胞など形態学的分類は困難 ウイルス感染が主で反応性 ( 活性型 ) かつ可逆性腫瘍性のものと鑑別必要 38

ザラザラ ツルツル ザラザラ ツルツル スリガラス様 ガラス様 曇り空 あお空 単球 リンパ球 こしあん つぶあん 39

白血球形態異常の判定基準と報告方法 異常の種類基準となるもの ( 程度 ) 記載報告 核の形態異常 ( 切込み 湾入など ) 0.5% 以上 + 顆粒の減少 消失 分布異常認めれば + 中毒性顆粒 30% 以上 + 空胞変性 5% 以上 + 封入体 ( デーレ小体 アウエル小体 ) 認めれば + 貪食像 ( 微生物など ) 認めれば + 左方推移桿状核球優位 幼若顆粒球の出現 + 右方推移過分葉 (5~6 分葉以上 ) を認めれば + 顆粒リンパ球 ( 原則 :3 個以上の顆粒を有する ) 2000/μl 以上 + 日臨技勧告法を (1996) 一部改編記載 40

中毒性顆粒 空胞変性 デーレ小体 中毒性顆粒 大型で不整形なアズール顆粒細胞質の成熟不完全 デーレ小体 1~2μm の卵円形封入体 RNA の残存 空胞変性 炎症性疾患重症感染症など 41

過分葉好中球 顆粒減少 偽ぺルゲル核異常 5 分葉以上の好中球増加 6 分葉以上は明らかな異常 POD 陰性好中球も 低分葉好中球 骨髄異形成症候群 (MDS) で見られた形態変化 42

アウエル小体 ファゴット 43

赤血球異常の捉え方 正常赤血球 MCV:81~99 fl MCH:29~35 pg MCHC:32~36 g/dl 直径 :7~8μm 490 万個 /μl 寿命 120 日組織への酸素運搬 大きさの変化染色性の変化形態変化 小赤血球 microcyto 大赤血球 macrocyto 低色素性 hypochromia 高色素性 hyperchromasia 多染性 polychromasia 正常の形状から逸脱した形状を示すもの 奇形赤血球 poikilocyto 44

ⅱ 赤血球形態観察 1 正常赤血球と大きさによる異常 異常の種類基準出現する主な病態こんな感じ 正常 直径 :7~8μm バラツキ :6~9μm 側面図 平面図 大小不同 大または 小赤血球混在率 30% 以上 画像 小球性 6 μm 以下 Hb 合成障害鉄欠乏性貧血 鉄芽球性貧血 サラセミア機械的 物理的作用遺伝性球状赤血球症 重症火傷 その他 画像 大球性巨赤血球 9 μm 以上 12 μm 以上 核の成熟障害巨赤芽球性貧血 抗がん剤投与後などエリスロポエチン増加による産生亢進溶血性貧血 急性出血 45

2 赤血球の染色性による異常 異常の種類基準出現する主な病態こんな感じ 正常 赤橙色 ( サーモンピンク ) 周辺部濃染 中央部が薄い (centralpallor) 多染性 正常に比し青強い RNA の存在が示唆される ( 網状赤血球に相当 ) 混在率 1% 以上 溶血性貧血 急性出血 貧血回復期 骨髄線維症 癌の骨髄転移など 画像 低色素性 淡紅色 厚径低下 低色素性赤血球混在率 30% 以上 鉄欠乏性貧血サラセミア など 画像 高色素性 厚径増加 (centralpallor が認められなくなる ) 高色素性赤血球混在率 30% 以上 遺伝性球状赤血球症 など 46

3 赤血球形態の異常の表 赤血球形態特徴と出現する病態赤血球形態特徴と出現する病態 正常 直径 7~8μm 厚さ約 2μm 中央にくぼみがあり円盤状 涙滴 赤血球の一部がのびて涙滴状 ( 骨髄線維症 悪性腫瘍の骨転移 ) 楕円標的韮薄破砕多染性 細長い楕円形 ( 遺伝性楕円赤血球症 ) ウニ状 表面積 / 体積比の増加により標的のようになる ( 閉塞性肝障害 サラセミア ) 有口 Hb の低下による薄い赤血球 ( 鉄欠乏性貧血 サラセミア ) 有棘 障害された血管内皮やフィブリンに衝突する事による赤血球破壊 (DIC 細小血管障害性溶血性貧血 ) 残存する RNA により青みがかった幼若な赤血球 ( 溶血性貧血など網赤血球が増加する病態 ) 鎌状 球状 同じ長さの規則的な突起が赤血球の全周にわたってみられる ( 尿毒症 肝疾患 ) 中央部が口唇状に変形 ( 遺伝性有口赤血球症 アルコール中毒 ) 不規則で長さの異なる突起が赤血球表面にみられる ( 無 β リポ蛋白血症 肝障害 ) 異常 Hb(HbS) により鎌状化 ( 鎌状赤血球症 ) 中央に窪みがなく濃染する赤血球 ( 遺伝性球状赤血球症 自己免疫性溶血性貧血 ) 47

ひ薄赤血球 :leptocyte 形態学的特徴 ヘモグロビン量が少ないために中心部の淡く染まる部分の面積が広く見える 主な出現疾患 鉄欠乏性貧血サラセミアなど 楕円赤血球 :elliptocyte 形態学的特徴 楕円形を呈する赤血球 主な出現疾患 遺伝性楕円赤血球症鉄欠乏性貧血巨赤芽球性貧血 アーチファクト 48

有棘赤血球 :acanthocyte 形態学的特徴 赤血球辺縁から突起が見られる 突起の出方や長さは不規則で 先端はやや丸みをおびる 主な出現疾患 先天性無 β- リポ蛋白血症脂質代謝異常アルコール性肝硬変症摘脾後など ウニ状赤血球 :echinocyte 形態学的特徴 有棘赤血球に似るが 突起数が多いものが多く 突起の出方や長さが規則的な点で異なる 大部分は採血後 人工的に生ずる 主な出現疾患 尿毒症ピルビン酸キナーゼ異常症低ナトリウム赤血球 49

標的赤血球 :target cell 形態学的特徴 中心部と辺縁部が濃く その中間部が淡く染まり標的状に見える低色素性赤血球 主な出現疾患 鉄欠乏性貧血サラセミア閉塞性肝障害 LCAT 欠乏症異常ヘモグロビン症など 有口赤血球 :stomatocyte 形態学的特徴 赤血球の淡く染まる部分が細長くなり 口唇状に見える赤血球 主な出現疾患 遺伝性溶血性貧血など 50

涙的赤血球 :dacrocyte 形態学的特徴 一方が突起して 涙的状を示す赤血球 主な出現疾患 骨髄線維症赤血球全体の1.0% 出現で報告癌の骨髄転移サラセミアなど 51

球状赤血球 :spherocyte 赤血球全体の 0.6% 出現で報告 参考になります 網状赤血球数 MCHC LD ハプトグロビン 直接クームス試験など 形態学的特徴 正常赤血球よりも直径が小さく 中央の薄く染まる部分がないために濃く染まって見える 典型的なものは 辺縁部よりも中央が濃く染まって見える 主な出現疾患 遺伝性球状赤血球症 (HS) 自己免疫性溶血性貧血 (AIHA) など 52

破砕赤血球 :schizocyte 赤血球全体の 0.6% 出現で報告 主な出現疾患 細小血管障害性溶血性貧血 血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP) 溶血性尿毒症症候群 (HUS) 播種性血管内凝固症候群 (DIC) 心臓の弁膜異常など 形態学的特徴 物理的な力によって壊れて生じた断片状の赤血球 ヘルメット型 三角型 著しく小型のものなどがある 53

4 赤血球封入体 Jolly 小体 :Jolly body on 血小板 形態学的特徴 直径 1~2 μm の小体で 脱核の際に核 ( 染色体 ) の一部が残存したものとされる 主な出現疾患 骨髄異形成症候群 (MDS) 巨赤芽球性貧血サラセミア摘脾後など パッペンハイマー小体 :pappenheimer body Fe 染色 形態学的特徴 非ヘム鉄 ( フェリチン ヘモジデリン ) 顆粒が普通染色で染まったもので 濃青色の小顆粒が 1~ 数個もられる 主な出現疾患 鉄芽球性貧血骨髄異形成症候群 (MDS) 摘脾後など 54

カボット環 :cabot ring 形態学的特徴 赤紫色の細い線が染まるもので 紡錘糸の一部が残存したものと言われている 主な出現疾患 巨赤芽球性貧血骨髄異形成症候群 (MDS) 各種重症貧血摘脾後など 塩基性斑点 :basophilic stippling 形態学的特徴 好塩基性 ( 青灰色 ) に染色される微細な斑点 主な出現疾患 鉛中毒巨赤芽球性貧血サラセミア不安定ヘモグロビン症骨髄異形成症候群 (MDS) など 55

マラリア ギムザ染色によりマラリア原虫は赤血球内に認められるので それを顕微鏡下で確認する その際 バッファーの ph はアルカリに (7.2) スライド作成時には虫体を発見しやすいよう厚く作る ( 厚層塗抹標本 ) マラリアの多発地域 ( 分布図 ) 56

5 その他の所見 有核赤血球 ( 赤芽球 ) 赤芽球出現に伴う白血球数の補正 末梢血に有核赤血球 ( 赤芽球 ) が出現するとこの細胞は 機器的に白血球として数えこまれる 従って 白血球の偽高値の原因になるため 真の白血球数を算出するために補正を行う必要がある 補正に必要な情報 1 機械法での白血球数 ( 赤芽球を含んだ白血球数 ) 2 白血球分画 100~200 カウント中に認めた赤芽球数 補正方法 例えば 白血球数 :8,000/μl 赤芽球数 : 白血球 100 分類中 20 個出現 100 8,000 120 = 6666.666 真の白血球数 :6700/μlとなる (100+20) * あくまで概数なので 100 位未満四捨五入 57

連銭形成 主な疾患 多発性骨髄腫 マクログロブリン血症感染症 膠原病 免疫疾患 妊婦さんなど 寒冷凝集 MCHC チェック 37 加温後 主な疾患 寒冷凝集素の高い症例マイコプラズマ肺炎悪性リンパ腫など 冷式抗体という自己抗体が関与して溶血性貧血を起こすため 寒冷暴露を避ける 室温状態では赤血球が低く測定される 37 度で温めてから測定 58

正常血小板 大きさ : 直径 2~4μm 中心部に多数の赤紫色顆粒 ( アズール顆粒 ) を有する ( 顆粒質 :granulomere) 周囲には明るい均一な構造からなる ( 硝子質 :hyalomere) 血小板形態異常の判定基準と報告方法 異常の種類基準となるもの ( 程度 ) 記載報告 大型血小板 巨大血小板 微小血小板 顆粒異常 血小板凝集 赤血球の 1/2~ 同等大 ( 約 4~8 μm 未満 ) 5% 以上の出現で記載 赤血球より大になる場合 (8 μm 以上 ) 塗抹標本観察中に認めれば記載 2 μm 以下老化血小板比率の増加が起因 消失 色調変化 分布異常 5% 以上の血小板に認められれば記載 + 5 個以上の血小板が凝集している場合に記載採血不備と EDTA 偽性凝集の区別が必要 + + + + 59

ⅲ 血小板形態観察 大型血小板 巨大血小板 形態学的特徴 赤血球の1/2~ 同等大 ( 約 4~8 μm 未満 ) 主な出現疾患 骨髄異形成症候群 (MDS) Bernard-Soulier 症候群メイヘグリン骨髄線維症原発性血小板血症など 形態学的特徴 赤血球より大になる場合 (8 μm 以上 ) 平均血小板容積 (MPV) の増加 主な出現疾患 大型血小板出現疾患に準ずる 微小血小板 形態学的特徴 微小な血小板 (2 μm 以下 ) 主な出現疾患 Wiskott-Aldrich 症候群原発性血小板血症 60

血小板凝集 EDTA 依存性血小板減少症とは 1 試験管内で血小板が凝集する減少 2 自動血球計数器では実際よりも血小板数が低く測定される. 3 時間に依存して血小板凝集が進行する. 採血後約 1 時間 採血後約 10 分 61

EDTA 塩による血小板の偽凝集 クエン酸加血 血小板数 PLT 22.1 血小板数 PLT 3.0 検体凝固による血小板凝集 フィブリンの析出がみられる EDTA 偽凝集との鑑別点 対処法の例 1カナマイシン コリマイシン等の抗生物質 2プレーン管 3 過剰のEDTA 塩 4 硫酸マグネシウム 5クエン酸 ACD 液 6GPⅡb/ⅢaやGPⅠbに対する抗体の添加 7ヘパリンリチウム 8 血糖管 ( フッ化ナトリウム ) 9ボルテックス攪拌 62

その他血小板数に影響を及ぼすもの 衛星現象 白血球周囲に血小板が付着してみえる 血小板偽低値の原因になる 巨大血小板 (8μm 以上 ) 血小板のサイズが大きく 赤血球にカウントされる可能性あり 血小板偽低値 赤血球偽高値の原因になる クリオグロブリン 粒子の大きさにより 血小板 赤血球 白血球にカウントされる 各血球の偽高値の原因になる 63

ご清聴ありがとうございました 参考文献 浅野茂隆, 他 : 三輪血液病学 第 3 版 2006 年 中竹俊彦 : 骨髄の解析と表現法 ( 第 1 巻 ) 1993 年 中竹俊彦 : 流れる臓機 血液の科学 2009 年 土屋達之, 他 : 病気がみえる vol.5 血液 2010 年 巽典之, 他 : 見逃してはいけない 骨髄スクリーニング所見と末梢血 2008 年 巽典之, 他 : 血液細胞ノート 2005 年 : 血液ダイナミックアプローチ 戸谷誠之, 他 : こどもの検査値ノート 1997 年 64