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目次. 音響振動と音場音場. 音圧. 速度ポテンシャル. 音響インピーダンス 5. 超音波の反射と透過 6. 液浸法 ( パルス超音波透過 ). 超音波吸収 8. 減衰定数 8. 音速測定 9. 測定例 9. 横波反射法を用いたずりいたずりインピーダンスインピーダンス測定. 弾性 0. 粘性 0. 粘弾性. 音波の緩和現象 5 付録 A 弾性論 7 参考文献

. 音響振動と音場音場. 音圧 δvδ δ δ : 微小体積 δ δ δ :,, : 微小体積の質量,, 方向の変位 δ 方向の音圧 によって受ける力は図 のよう に δ δ F δ δ F δf δ δ δ δ F δδ δ となる 図 音場におかれた微小六面体の変位 微小体積は音圧の逆方向に反作用するので δf & δδ δ δδ δ, && ここでは密度である 体積変化 δv は &&, && ( ) VδV V V δv V δv となるので 体積弾性率体積弾性率 を K とすると δk の V 関係 ( 図 ) から δ K ( ) が求められる 付録 A の弾性論では応力 と歪 εを使って K( ε ε ε ) と表せる δv<0 図 体積弾性率

. 速度ポテンシャル 電磁気学の電位 ( 電気ポテンシャル ) と電場の関係と同様に 変位速度は 速度速度ポテンシャルポテンシャル を用いて表現で きる 点電荷 qがあるときの電位 V と電場 E の関係は q V V V V E V θ πε 0 θ nθ φ φ となる 同様に 速度ポテンシャルをφとすると & と考える 速度ポテンシャル φ の定義は φ &, φ &, ( ) 式と ( ) 式を時間で偏微分した & φ に従うように速度ポテンシャルから速度場ができる φ & ( ) φ φ & となり で積分すると より φ & C (C は積分定数 ) ( ) C を大気圧とすると 超音波による圧力変化はδ φ & となる & φ ( ) 式を時間で微分して ( ) 式を位置で偏微分した を代入すると ( δ) & & & φ φ φ δ& K K K φ ( 5) ( ) 式と ( 5) 式より を消去すると & φ K φ となり φ φ & K φ 0 ( 6) * φ0 とすると ( 6) 式は ( ) φ* 0 φ* ( 7) K d 方向に伝播する平面は φ* 0 となるので この方程式の一般解は d ( ) φ * ( 8), - は 正方向 負方向に伝播する波の振幅を表す は波数ベクトル

. 音響インピーダンス音波の伝播速度 は 正方向 ( 方向 ) に伝播する波を考えると K ( 9) ( ) 式の φ & ( ) C から ( 0) φ ( ) 式の & から ( ) & ( ) 電磁気学のインピーダンス ( 抵抗 ) と同様に 音響音響インピーダンスインピーダンス を定義する & ( ) 電気回路 ( 交流 ) で 電流 電圧の波が伝わる場合に ( 電圧 / 電流 ) の比を特性インピーダンスと呼ぶので 平面音波の伝播に対しても同じように ( 音圧 / 変位速度 ) の比を 固有音響固有音響インピーダンスインピーダンス と呼ぶ 外場応答インピーダンス 電磁気学電圧電流 V / I 音響学音圧変位速度 / 平面音波が減衰すると変位 は ( / ) ( / / ) ( / * ) ( ) 0 0 0 0 減衰定数減衰定数 を [ db / m ] とすると 減衰のある音波の音速度は複素音速度 * で表される 超音波周波数による 音速の分散が見られる *, * ( ) 5

. 超音波の反射反射と透過 図 のように異なる媒体 と媒体 として 平 面波の入射 (Indn) 反射 (flon) 透過 (Tanmon) を考える 境界条件は 境界 ( 0) の両側で粒子速度が等 しい 境界の両側で音圧が等しい ということであ る φ ( ) 式より 粒子速度は & となるので & & & & & ( ) { } ( ) 0 のとき & & となるので ( 5) { } 媒体 媒体 入射波 透過波 反射波 0 ( ) 式より 音圧 φ & C となるので ( ) { } 図 異媒質境界面への垂直入射 ( ) 0 のとき となるので { } ( 6) ( 5) 式を ( 6) 式で割ると,, ( ) ( ) 反射率 は ( 7) ( 5) 式から となり ( 6) 式に代入すると /, / なので 透過率 T は T ( 8) 6

7 超音波強度の I は ( 0) 式 ( ) 式を考慮すると,, &, &, & が求められる ( 7) 式を用いて, & & 従って 音響エネルギー (Inny) の反射率 I (>0) は I & & ( 9) 同様に ( 8) を用いて T T & & 従って 音響エネルギーの透過率 T I は I T & & ( 0) 電気回路でのインピーダンスと音響インピーダンスの対応で ( 電圧 音圧 ), ( 電流 変位速度 ) となるので電気エネルギー P IV から 単位時間に単位面積を通過する エネルギーエネルギーエネルギーエネルギー音響密度音響密度音響密度音響密度 は & となる

. 液浸法 ( パルス超音波透過 ). 超音波吸収強度損失を表すデシベル [db] は 入射強度と透過強度の比の常用対数を 0 倍したものである 損失 0 [db] は I 0 0 log0 0 log0 I ( ) 0 には 界面での反射による損失 も含まれている 試料の吸収が大きく 試料中の多重反射の影響が無視できるときは ( 9) 式より 0 log 0 { } I 0 log 0 ( ) 液体の密度 0, 液体の音速, 試料の密度, 試料の音速 として ( ) を用いると 0 log0 ( ) 0 図. のように 液浸法では 回反射が起きるので 0 0 log 0 0 log 0 ( ) ( ) 試料の厚さを d [m] として m あたりの減衰 [db/m] は ( ) d となる Saml 図. 超音波の反射. 減衰定数 ( ) 式から 減衰定数減衰定数 [db/m] が導出されたが 実験では ( ) 式の超音波吸収のデータを用いて計 算することができる d [m] 進んだときのエネルギー損失 は 0 log 0 0 となるので ( ) 式を用いて 0 d log 8.686 d d 8. 686 ( 5) 減衰定数 [ n / m ] が実験的に求められる 8

. 音速測定音速は 図 のように試料があるときと試料がないときの測定により求められる 試料がないときの時間 : 試料があるときの時間 : Δ - d ( ) d d d d d d d d d ( 5) d 図 液浸法による音速測定. 測定例 9

. 横波反射法を用いたずりいたずりインピーダンスインピーダンス測定. 弾性固体の場合 図 の応力 ()-ひずみ(ε) 曲線に見られるように 降伏点降伏点 を超えないとき 除荷するとひずみが 0 に戻る これを 弾性変形弾性変形 という これに対して 降伏点を越えて除荷し ひずみが残る変形を 塑性変形塑性変形 と呼ぶ 弾性理論から ( 付録 A を参照 ) 等方弾性体では体積弾性体積弾性率 K は ラーメラーメ定数 (λ, μ) を用いて K λ µ ( ) とあらわせる また μは ずりずり弾性率弾性率 G (ha modl) 剛性率 G (gdy) とも呼ばれ μ G となる 縦波 (longdnal) の音速 l と横波 (an) の音速 は 体積弾性率 K と剛性率 G を用いて 付録 A の (0.6) 式より 図 応力 ()-ひずみ(ε) 曲線 降伏点 ε G l K ( ) G ( ). 粘性 τ 液体に ずりずり応力 ( せん断応力 ) (ha )τ( ) を作用すると図. のよう ビンガム流体 に速度勾配が生じる 流速 (,, ) とする τ τ ( ) 擬塑性流体ニュートン流体ダイラタント流体 図 せん断応 d/d 力と応力 - 速度勾配曲線 これに対し 固体では せん断応力 τ は歪 ε を用いて次の式になる ( 付録 A) τ µε µ 0

但し は ずりずり粘性係数粘性係数 (ha oy offn) あるいは流体の 第 粘性 と呼ぶ が速度勾配に無 関係のとき ニュートンニュートン流体流体 (Nwonan fld) という これに対して が速度勾配に依存する流体を 非ニュー トン流体流体 (Non-nwonan fld) という せん断応力 j ( j) を考えたが 液体は外圧による体積変化に対しても粘性抵抗を示す 体積変化がある時間で 平衡状態になる場合である また 法線応力 は等方弾性体ではスカラーとなる 体積ひずみ速度を d() とする 膨張する方向を正とすると ' ' ( ) ( ) ( ) ' ( 5) となる ( は 第 粘性 でラーメ定数の λに相当し はμに相当す る ) 固体の場合は ラーメ定数と歪を使って ( λ μ )ε λε λε となる ( 付録 A) を考慮して これらの 式を足すと 図 法線応力 ( ) ( 6) ' ( 7) となる 但し は 体積粘性率体積粘性率 (olm oy, bl oy) と呼ばれる. 粘弾性 粘弾性とは 短い観測時間 の時には弾性弾性的に振る舞い 長い観測 時間 のときに粘性粘性として振舞う性質である まず 方向に進む縦 波について考える 変位 は A 0 0 となる 等方弾性体として - 平面で考えると付録 A の 図 縦波の変位 (0 ) 式の運動方程式 ( 縦波 ) は K となる

G K µ λ ε µ λ 最初に 弾性弾性弾性弾性 の寄与を考える また (0 ) 式の を で偏微分して (0 6) 式を考慮すると 0 0 ( λ μ )ε λε λε με 0 0 ( 8) となる 次に 粘性粘性粘性粘性 の寄与を考慮する ( 5) 式を で偏微分すると 0, 0 なので ' ' 0 0 ' (.) 式より 0 となる 結局 ( 9) が求まり 弾性項 ( 8) 式と粘性項 ( 9) 式の和 つまり 縦波の運動方程式は ( 0) となる G K

G K µ µ µε { } 0 λε ε µ λ λε 次に 方向に進む横波について考える 0 A 0 等方弾性体として - 平面で考えると付録 A の (0 ) 式の運動方程式 ( 横波 ) は 図 5 横波の変位となる 縦波のときと同様に まず 弾性項を考える 0 運動方程式 ( 横波 ) の弾性項は μ G なので ( ) となる 一方 運動方程式 ( 横波 ) の粘性項は 0 0 ' ' ( ) 弾性項 ( ) 式と粘性項 ( ) 式の和 つまり 横波の運動方程式は ( ) となる 縦波 横波の弾性項と粘性項を表にまとめると 弾性率 M 粘性係数 縦波横波 G K G G

複素縦波弾性率 M * ( M M ) を導入して 複素体積弾性率 K * K K, 複素剛性率 G * G G は次のような関係がある * * * G K M ( ) ( 0) 式は となる 一般に波動方程式は A とすると が成り立つので M* M M M ( 5) * * から ( * ) M * となる ( 6) ( ) 式から * となり " ' * ', " ( 7) ' " ( 8) * * M ( 9) M' * M M' * * * M

. 音波の緩和現象 * ずり応力に関する緩和時間を求めるために 反射法を用いて音響インピーダンスを測定する 複素複素ずりずり速度速度 を とする * 横波では ( ) 式より G ( * ) G * と ( 9) 式から G' G" G' ( ) * ( G ) G ( ) ( ) ( 0) ( ) G" ( ) G" G' G" G' G" ( ) G' ( 7) 式から となる これを ( ) 式に代入すると ' G ' ( ' ) ( ) ' ( ) 式と ( ) 式から G' G" ( ') G' ( 5) G' G" ( ") G' ( 6) 5

( 7) 式より 反射率 を水晶 (qa) 振動子 液体 (lqd) 試料の音響インピーダンスを q, とすると * q q q / / / / ln ln ln ln log anh ln anh log 0 0 試料を入れたときと入れないときで エコー当たりの吸収の差を D (T) とすると ( T) 0log D 0 q anh D 0log ( T) 0 ( ') ( T) q D anh ( 7) 0log0 ここで ( 7) 式と比べて G に関する情報が得られる o 6) 波反射法により ずりインピーダンスの測定法を説明する 直径 m 長さ m の AC カットの水晶 棒に高周波パルスを印加すると AC 軸方向に横波が発生して多重反射によるエコーを観測する AC カット Z q 8.78 0 5 g/m BC カット Z q.7 0 6 g/m 6

付録 A 弾性論 通常 図 A のように 位置 によって変位は異なるので 変形勾配を (0 ) 式とすると ひずみ ε (an) と回転 (oaon) は, j ε j j j, j j, j (0 ) (0 ) j j, j j, j (0 ) となる また j を j 方向に垂直な面に作用する 方向の応力 ( 図 A ) と図 A すると 対称性から j j (0 ) ε j ε j (0 5) となる フックの法則 F 弾性定数 (la onan) C jl を考慮すると j l C jl ε l C jl ε l (0 6) となる (0 ) 式と (0 5) 式の対称性から C jl C jl, C jl C jl, の対称性を図 A 持っている また 添え字を次のように置き換えると は次のようになる,,, 5, 6 C ε C ε C ε C ε C 5 ε 5 C 6 ε 6 さらに f( 面心立方 ) や b( 対心立方 ) などの立方晶系は 個の独立な弾性定数 (C, C, C ) で表される (0 6) 式は 5 6 C C C C C C C C C ε ε ε ε ε ε 5 6 (0 7) となる ( 詳しくはキッテルの 固体物理入門 に書いてあります ) 単位体積当たりの弾性エネルギー Uは U ε (0 8) という関係があるので U C ε ε ( ε ) C ( ε ε ε ε ε ε ) ( ε ε ε ) C 7 5 6 (0 9)

C C C のときに弾性等方体になるので ラーメ定数 (am onan) λ C, μ C とすると C μ λ となる (0 9) 式は ラーメラーメ定数定数 で表すと λ U ( ε ε ε ) µε ( ε ε ε ε ε ) 5 6 (0 0) (0 ) 弾性等方体では (0 7) 式は 5 6 λ µ λ λ λ λ µ λ λ λ λ µ µ µ ε ε ε ε ε µ ε 5 6 (0 ) となる 弾性等方体では, ε ε ε K ε ε ε ε ( ) K となるので ( ) 式と (0 ) 式は ( λ µ ) ε λε λε ( λ µ ) ε と変形でき この 式から 消去すると λ µ K ( ) となり ( ) 式が証明された 次に 変位 に対する運動方程式を考える 図 A のように 方向に 働く応力変化は ( δ ) ( ) δ δ δ となるので 両辺に δ δ をかけて 同様に δ δ δ δ δ δ δ δ δδ δ δδ δδ δ δδ 図 A 8

9 方向の力 F はこれらの和になるので結局 運動方程式は (0 ) 弾性等方体なので - 平面で考える (0 ) 式からとなり それぞれ で偏微分すると が求まる これらを (0 ) 式に代入すると (0 ) (0 5) が導かれる 方向に伝播する縦波は なので A ( -) と表せて (0 ) 式に代入すると (λ μ) 縦波の音速を l とし ( ) 式を代入すると ( ) 式が証明される l λ μ (0.6) 方向に伝播する横波は なので A ( -) と表せて (0 5) 式に代入すると μ F δ δ δ δ δ δ λε λε ε µ λ µ λ µε µ µ µ µ λ K µ µ µ λ

横波の音速を とすると μ (0 7) 参考文献 弾性論 ) 第 8 版 固体物理学入門 キッテル丸善 ) 転位論入門 鈴木秀次アグネ ) 弾性理論 ランダウ リフシッツ東京図書 粘弾性 ) 高分子物理学 斉藤信彦裳華房 超音波 5) 液体および溶液の音波物性 野村浩康 川泉文男 香田忍名古屋大学出版 6). M, C. J. Maoff,. Samanda,. Co and T. A. o: J. Al. Phy. (960) 85. 7) A. E. Cla and T. A. o: J. Ao. So. Am. (960). 0