尿検査 ( 定性 沈渣 ) ガイドラインと尿分析装置の関係 シスメックス株式会社学術部
全自動尿中有形成分分析装置 UF-1000i 非遠心尿を用いた尿中有形成分 ( 沈渣 ) の測定ができるので 遠心力の影響を受けない結果が期待できる 細菌の測定結果から 桿菌 球菌の推測ができる 尿中赤血球の変形有無が測定できる 1 検体 72 秒で測定できる 2
全自動尿統合分析装置 UX-2000 前述の UF-1000i に定性検査を組み込んだ複合装置 UF-1000i の機能はそのままで 定性検査の機能を追加 尿定性と尿沈渣の結果を比較して より信頼性の高い結果を導く 尿定性ではクレアチニン測定ができ 臨床的有用性の高い情報が得られる 3
内容 尿検査の各種ガイドラインの確認 血尿診断ガイドライン 膀胱癌の診療ガイドライン 腎癌の診療ガイドライン 4
血尿診断ガイドライン 2006 年 6 月 5
血尿診断ガイドライン 1 血尿の定義とスクリーニングのための検査法 1-1 血尿の定義 血尿とは尿に赤血球が混入した状態であり 腎 泌尿器系疾患の診断 治療のための重要な症候である 血尿の診断は通常 尿色調の観察 尿定性 半定量検査である試験紙法による尿潜血反応 顕微鏡的検査である尿沈渣検査によって行われる 6 血尿診断ガイドライン検討委員会
血尿診断ガイドライン 1 血尿の定義とスクリーニングのための検査法 1-2 採尿法 原則的に中間尿採取中間尿採取を行い 早朝尿 随時尿など尿の種類を明記する 7 血尿診断ガイドライン検討委員会
血尿診断ガイドライン 1 血尿の定義とスクリーニングのための検査法 1-3 スクリーニングのための検査法 1) 尿試験紙法尿試験紙法による尿潜血反応は尿潜血反応は血尿のスクリーニング検査であり 血尿のスクリーニング検査であり (1+) ( ヘモグロビン 0.06mg/dl ) 以上を陽性とする 2) 尿沈渣検査法 1 尿潜血反応が陽性の場合には尿中赤血球算定のため確認試験が必要尿中赤血球算定のため確認試験が必要である 一般的に顕微鏡による尿沈渣検査尿沈渣検査によって行われ およそ 5 個 /HPF(400 倍強拡大 1 視野 ) 以上を血尿とする その他 無遠心尿でのフローサイトメトリー法 (FCM 法 ) などがあり この場合はおよそ 20 個 /μl 以上を血尿とする 2 血尿の尿沈渣検査は 尿中赤血球尿中赤血球形態形態の観察の観察と赤血球円柱や顆粒円柱などの円柱の有無を観察する また上皮細胞の異型性上皮細胞の異型性についても注意についても注意を払い 必要がある場合は尿細胞診検査を行い腫瘍細胞の有無を確認する 8 血尿診断ガイドライン検討委員会
顕微鏡的血尿 9
血尿の場合 10
顕微鏡的血尿における悪性腫瘍の発見について 1 50 歳以上 1340 人 2 週間の試験期間において 21% の人が 尿潜血 1+ が 1 回以上 192 人 (14% 14%) が泌尿器科的診断 尿潜血検査の膀胱癌発見の予測率膀胱癌 9 人 /192 人検査 =4.7% 16 人 (1.2% 1.2%) に悪性腫瘍 ( 膀胱癌 9 人 腎癌 1 人 前立腺癌 6 人 ) 11
顕微鏡的血尿における悪性腫瘍の発見について 2 60 歳以上 3152 人 10 週間の試験期間において 20% の人が 尿潜血 1+ が 1 回以上 319 人 (10%) が泌尿器科的診断 尿潜血検査の膀胱癌発見の予測率膀胱癌 17 人 /319 人検査 =5.3 5.3% 又 17 人中 13 人 (76% 76%) は喫煙歴あり 22 人 (0.7 0.7%) に悪性腫瘍 ( 膀胱癌 17 人 前立腺癌 5 人 ) 12
中高年以上では顕微鏡的血尿の 5%(20 人に 1 人 ) に膀胱癌が発見される 13
膀胱癌診療ガイドライン 泌尿器科学会 2009 14
膀胱癌の症状 膀胱癌が発見される契機となる主な臨床症状は, 血尿, 膀胱刺激症状 ( 頻尿, 排尿時痛, 残尿感等 ) である 特に無症候性肉眼的血尿は, 過去の報告では患者の 13~28% が膀胱癌と診断されている 一方で, 顕微鏡的血尿では 0.4~6.5% と報告されている ただし, 膀胱癌は高齢者に好発する悪性腫瘍であり,50 歳以上での顕微鏡的血尿症例における膀胱癌には注意が必要である ( 一部改変 以下略 ) 15
診療アルゴリズム * T staging の為の CT 骨盤部 MRI 検査は TURBT 前に施行骨シンチグラフィーの適応は確立されていない 16
膀胱癌のスクリーニングに有用な尿中マーカーはあるか? Answer 膀胱癌の罹患率がそれほど高くないこと等から, 一般検診における膀胱癌スクリーニングの有効性については否定的見解が多い 喫煙歴のある高齢者や, 職業性発癌物質暴露既往歴を有する人など, いわゆる高リスク群に対象を限定した場合は, 検尿および尿細胞診の年一回程度の施行が最も効率がよいスクリーニング法と考えられる ( 推奨グレード C) C: 勧められるだけの根拠が明確ではない 17
解説 有効性が十分に検討されたマーカーは, 尿潜血試験紙法のみである 潜血反応検査を複数回施行することで高異型度癌を早期診断しうる可能性が示唆されている これは膀胱癌に伴う血尿が間欠性であることが理由であると考えられている 一般人口における反復検査では 参加者の約 20% に血尿が認められ, その 6~8% で膀胱癌が発見されたとしている 米国の研究では 9 年のフォローアップにて膀胱癌による死亡者を認めなかったことより, 本法における膀胱癌スクリーニングは有効であると結論づけている 尿細胞診検査は, その感度は 40~60%, 特異度は 90~ 100% と報告されているが, 高分化な筋層非浸潤癌の検出能の低さがその低感度の要因となっている このため職業性発癌物質暴露者など, 高異型度腫瘍を好発する高リスク集団における検診手段としての有用性が示唆されている 18
膀胱癌の一次予防は可能か? Answer これまでの疫学的研究からは, 禁煙が最も効果のある膀胱癌予防法と考えられる 乳酸桿菌の一つである Lactobacillus casei strain Shirota による再発予防効果が報告されている その他ビタミン A,C,E の摂取が予防に有効である可能性があるが, 相反する報告もあり今後の追加検証の結果を待つ必要がある ( 推奨グレード B) 19
腎癌診療ガイドライン 泌尿器科学会 2007 20
21 腎癌の症状 発見契機は? 腎癌の症状として 古典的な三徴 肉眼的血尿 腹部腫瘤 腎癌の症状として 古典的な三徴 肉眼的血尿 腹部腫瘤 腎癌の症状として 古典的な三徴 肉眼的血尿 腹部腫瘤 腎癌の症状として 古典的な三徴 肉眼的血尿 腹部腫瘤 腰背部痛が知られているが 腰背部痛が知られているが 腰背部痛が知られているが 腰背部痛が知られているが 最近は無症状で発見される例が最近は無症状で発見される例が最近は無症状で発見される例が最近は無症状で発見される例が 70% 以上以上以上以上であり であり であり であり 三徴すべてがそろった腎癌はほとんど見受三徴すべてがそろった腎癌はほとんど見受三徴すべてがそろった腎癌はほとんど見受三徴すべてがそろった腎癌はほとんど見受けられない けられない けられない けられない 最も多い発見契機は 最も多い発見契機は 最も多い発見契機は 最も多い発見契機は 検診または検診または検診または検診または糖尿病 高血圧 虚血性心糖尿病 高血圧 虚血性心糖尿病 高血圧 虚血性心糖尿病 高血圧 虚血性心疾患などの疾患などの疾患などの疾患などの他疾患精査中他疾患精査中他疾患精査中他疾患精査中に超音波検査等で腎形態の異常を超音波検査等で腎形態の異常を超音波検査等で腎形態の異常を超音波検査等で腎形態の異常を指摘されること指摘されること指摘されること指摘されることである 現時点で 赤沈 である 現時点で 赤沈 である 現時点で 赤沈 である 現時点で 赤沈 CRP などが予後を予などが予後を予などが予後を予などが予後を予測する因子であると報告されているが 測する因子であると報告されているが 測する因子であると報告されているが 測する因子であると報告されているが 腎癌診断に関し 有腎癌診断に関し 有腎癌診断に関し 有腎癌診断に関し 有用な腫瘍マーカーはない 用な腫瘍マーカーはない 用な腫瘍マーカーはない 用な腫瘍マーカーはない
腎癌の早期発見にはどのような検査が有用か? 推奨グレード B 腎癌の早期発見には腹部超音波検査が有用で 確定診断として CT 検査を施行する 推奨グレード C2 一方, 顕微鏡的血尿の有無や静脈性尿路造影は有用でない B : 勧められる C2: エビデンは十分といえないので日常診療では実践することを推奨しない 22
根拠 検尿は腎癌発見の役に立たないとする報告がほとんどである Emamian らは尿潜血試験紙によるマススクリーニングを受けた 1775 名中無作為に抽出した 686 名に腹部超音波検査を施行した 尿潜血陽性例は 30 名 (5%) で尿潜血陽性例での腎の形態異常の頻度は 10%, 一方尿潜血陰性例での形態異常の頻度は 8.4% であり有意差は認められなかった 腎癌は 1 例で発見されたが尿潜血は陰性であった Sugimura らも泌尿器癌 349 例と無症候性顕微鏡的血尿を有する 823 例を解析した結果, 検尿は尿路上皮癌においては有用なスクリーニングであるが腎癌では有用とは言えないと報告している 23
血尿から見えてくるもの 肉眼的血尿は悪性腫瘍 ( 膀胱 ) の頻度が高い 顕微鏡的血尿は膀胱がんのリスクの有無で精査の必要性が異なる 尿中赤血球形態が糸球体性の場合には高血圧 糖尿病 腎機能 蛋白尿の有無を併せてチェックし 異常があれば腎臓内科医での精査が必要である 24
ECLM - European Urinalysis Guidelines 2000 About half of the Leukocytes and Erythrocytes are lost during cntirifugation ( when preparing urine sediments). 日本臨床検査標準協議会 25 JCCLS: : 尿沈渣検査法検討委員会
遠心後上清の UF-1000i による白血球および赤血球の残存率 (%) (%) a. 白血球 b. 赤血球 (%) 100 100 75 50 25 75 50 25 0 A B C D E 2.9 6148 65.2 16 32.3 :500g 5 min :1,400g 10 min :3,000g 10 min :10,000g 5 min ( 10 3 /µl) ( 非遠心尿を 100% とした ) 数値は非遠心尿中の血球数 26 0 A B C D E 3.9 68.6 44.0 39.3 11.7 ( 10 3 /µl) 第 58 回日本化学療法学会西日本支部総会一般演題尿路感染症診断としての尿沈渣作成時の遠心力の違いによる血球および細菌に対する影響小林とも子ほかより
遠心上清中の UF-1000i および培養法での細菌残存率 (%) (%) a. 細菌数 (UF-1000i) (%) b. 細菌数 ( 培養法 ) 100 75 100 75 * 50 50 25 0 A B C D E 25 0 A B C D E 6.9 1.2 1.7 1.9 1.2 4.7 1.2 3.8 4.1 0 10 7 10 7 10 5 10 5 10 4 10 6 10 8 10 3 10 4 * :500g 5 min :1,400g 10 min :3,000g 10 min :10,000g 5 min ( 非遠心尿を 100% とした ) 数値は非遠心尿中の細菌数 * は正確にカウントできなかったため概算値 第 58 回日本化学療法学会西日本支部総会一般演題尿路感染症診断としての尿沈渣作成時の遠心力の違いによる血球および細菌に対する影響小林とも子ほかより 27
遠心有無のイメージ 円柱上皮白血球赤血球細菌 500G5 分 非遠心 28
BACT スキャッタグラムによる菌種推定の考え方 グラム陽性球菌例 α-streptococci UF-1000iの細菌測定は フローサイトメトリー法により行われ そのパターン結果は 以下のようなスキャッタグラムに表示される このパターンからグラム陰性桿菌の推定が可能と考えられる 角度 30 未満でグラム陰性菌が分離された検体数 81/86 (94.2%) 角度 30 以上でグラム陽性菌が分離された検体数 33/44 (75.0%) 前方散乱光(大きさUF-1000i 細菌スキャッタグラム DEBRIS グラム陽性球菌? グラム陰性桿菌? グラム陰性桿菌例 E. coli )E. faecalis105 側方蛍光 ( 染色性 ) ペニシリンやセフェム系薬投与中の検体では グラム陰性桿菌がフィラメント化した像をしばしば見かけるが その場合 スキャッタグラムの角度は高くなる Enterococcus 属は 30 以下となるケースも存在し グラム陰性桿菌で 40 程度の角度を示した場合も経験しており その理由については不明である コアグラーゼ陰性ブドウ球菌 スキャッタグラムのドット数は一般的に菌量の濃度に依存する K. pneumoniae コリネバクテリウムなどのグラム陽性桿菌 フィラメント化したグラム陰性桿菌も同様のパターンを示す 菌陰性 <10 3 E. faecalis10 7 淋菌などのグラム陰性球菌も同様のパターンを示す 編著 : 株式会社キューリン検査部部長村谷哲郎 29
まとめ 尿検査に関する各種のガイドラインができ 尿検査の標準化が急速に進んでいる 治験 投薬のガイドラインにも尿検査の情報は活かされている 特に血尿に関する記述の多いことが目立つ 血尿中の赤血球は遠心分離の影響を受けやすい 全自動尿分析装置の選定に際しては 各種ガイドラインに準じているか否かがポイント 30
ご清聴を感謝いたします 31