工業数学 Ⅰ 第 7 章多変数関数の微分 1. R n における曲線 千葉大学工学部機械工学科担当者武居昌宏 教科書 工科系の数学 (4) [ 単行本 ] マイベルク ファヘンアウア著 及川正行訳 出版社 : サイエンス社 (1996/12) ISBN-10: 4781907814
定義域がスカラー値 (n=1) の場合 集合 Dではなくて I ( アイ ) で表記 n >1, m>1の場合 P82 4 節で述べる 第 7 章多変数関数の微分 1 R n における曲線 1.1 パラメータ表示 関数の記述 要素 ( 列ベクトル x) と集合 ( 定義域 D) を区別関数 f は集合 D を集合 R m に写像 x はベクトル ( 太字 ) -> 多変数関数 f もベクトル ( 太字 ) -> ベクトル値関数
スカラー関数とベクトル値関数 n: 原空間の次元 m: 像空間の次元関数の表記関数の名称 n=1 スカラー m=1 スカラー f(x) スカラー関数 n=2 以上ベクトル m=1 スカラー f(x) 多変数スカラー関数 n=1 スカラー m=2 ベクトル f(x) ベクトル値関数 n=2 以上ベクトル m=2 ベクトル f(x) 多変数ベクトル値関数 n=3, m=1 の 2 変数のスカラー関数の例 x=[x 1,x 2,x 3 ] T R 3 から一つの実数 z R への写像 注意 z と f はスカラーなので細字 x はベクトルなので太字 像空間のスカラー量 : 温度 質量 圧力 ph など http://www.rccm.co.jp/development/fluid/fluent.html 図スカラー関数の例定常流の管内圧力分布
n=1, m=2 の例場所を固定すれば 風速度 uは時間 t( スカラー値 ) に関するベクトル u = f t = f 1(t) f 2 (t) 注意時間はスカラーなので細字 風速度 uはベクトルなので太字図ベクトル値関数の例 n=1, m=2 n=3, m=2 の例翼周りの2 次元空間 xにおける2 次元速度ベクトルfの時間変化 注意 f も x もベクトルなので太字 参照 P82 4 節ベクトル値関数 図ベクトル値関数の例 n=3, m=2 像空間のベクトル量 : 加速度 速度 変位 力 重力 運動量など
パラメータ表示 多変数の極限各要素の極限多変数の極限や微分は 各要素で考える がある x t と x (s) の違いに注意
ベクトル値関数における導関数の公式
部分曲線と正則 始点 図 158 曲線 終点 x t =0 正則ではない -> 運動が止まる
弧長 s(t) とその時間微分 (3) : [a,t] にわたる部分曲線時間 tの位置 x(t) の速度 (4) : 曲線 x(t) の時間微分の大きさでもある 弧長要素 ds と弧長要素ベクトルdx (5) x ds s(t) x (t) x(t) 時間 t=aの位置 x(a) の速度 x (a) O http://tiski.exblog.jp/m2012-11-01/ x(a) x(t) がわかればスキーヤー自身が速度や距離を測れる!! GPS 速度計 : アンドロイドのスピードメーター https://play.google.com/store/apps/details?id =de.meditgbr.android.tacho&hl=ja
1.2 動標構 曲率 ねじれ率 O ) x( B(t): 従法線ベクトル Binormal N(t): 主法線ベクトル Normal T(t): 接線ベクトル Tangential 単位接線ベクトル 図 159 動標構 (6) T ( t 0 ) λ は任意の実数 x( t 0 )
単位主法線ベクトル単位従法線ベクトル (7) 曲線 x(t) を微分 接線ベクトルT(t) 単位接線ベクトルT(t) を微分 主法線ベクトルN(t) T(t) とN(t) との外積 従法線ベクトルB(t) 定理 1.1( 後述 ) で B(t) を曲線 x(t) で表す 動標構 (T(t), N(t), B(t)) 右手系 (T(s), N(s), B(s)) 弧長 sをパラメータとして表すこともある 接触平面 r (λ, μ) λ,μ R λ と μ は任意の実数 T(t) x(t) O r(, ) N (t)
曲率 κ(t) : 弧長 s(t) の時間微分または曲線の x(t) の時間微分の大きさに対する接線ベクトル T(t) の時間微分の大きさ 曲率 κ(t) T t s(t) O A s(t 1 ) 極限がポイント 単位長さ OA=OB にするため!! T(t) T(t 1 ) T(t 1 ) B C s(t 1 ) T(t 0 ) 接線ベクトルの向きの変化大 κ(t) 大接線ベクトルの向きの変化小 κ(t) 小 単位長さ {Δs(t) の微分 }=OA=OB( 単位時間 OCではない!! もし青の速度が速いと ) つまり 弧長の変化率 s(t) が基準 ここは OA と OC になっている!! (8)
速度 加速度と動標構 ( 接線ベクトルT(t) 主法線ベクトルN(t)) との関係 式 (6) 単位接線ベクトルの定義 式 (7) 単位主法線ベクトルの定義 x t = x t T(t) T t = T t N(t) 式 (4) の弧長の定義を代入 x t = s(t)t(t) 式 (8) の曲率 さらにtで微分 x t = s(t)t(t) + s(t) T(t) T t の定義 = κ t s(t) x の t に関する二回微分は x t = (9) s(t)t(t) + s(t) 2 κ t N(t) x (t) 速度ベクトル T(t) x (t) 加速度ベクトル T (t) とN (t) の面内 x(t) κ(t) に関係 http://tiski.exblog.jp/m2012-11-01/ O の方向 T(t) N (t) x (t) T t = κ t s(t) N(t)
運動学的な意味 B T 右手系 N 速度ベクトル 加速度ベクトル図 160 運動学
曲率 κ(t) と従法線ベクトル B(t) を x(t) で表す (9) 外積は 0 外積は B(t) 従法線ベクトル B(t) の定義 速度 x t と加速度 x t との外積は? 式 (10) と式 (11) を導出できること!!
ねじれベクトル B t / s t とねじれ率 τ(t) ねじれベクトル : 孤長 s(t) の時間変化率に対するB(t) の時間変化率 (12) 定義より T t = T t N t なので 0になる B B = 1 より d B B = B B + B B dt = 2 B B =0 τ(t): ねじれ率マイナスがつく B τ T B+ db ds κ N τ 平行 B κ 紫 はあとで説明注 )s で微分 N+ dn ds T+ dt ds
ねじれ率 (13) フレネ セレの公式から証明スカラー三重積は行列式 det で表される x(t) が平面曲線であるための必要十分条件 τ(t)=0 平面上にある曲線は ねじれていない T B N B N T B B B N T 曲がっているけどねじれていない線 T,N は場所により変化 B は変化なし 曲がっていてねじれている線 B は場所によって変わる 曲面がねじれているのであって曲線がねじれているのではない
定義式 (6) より 式 (11) より 式 (10) より x(t) だけで表したいので N(t) の定義式 (7) と違うので注意 式 (13) より 詳細は後ほど 17
つる巻きばねを用いた例題 動標項の動画青 T 茶 N 黒 B ( B の向きが微妙に変わることに注意 ) 図 161 螺線 18
定理 1.1 参照 N t = B t T t 曲率 ねじれ率
= a 11 a 22 a 23 a 32 a 33 a 21 a 12 a 13 a 32 a 33 + a 31 a 12 a 13 a 22 a 23 つる巻きばねを用いた例題計算のヒント 3つの要素の外積の求め方 x = (x 1, x 2, x 3 ), y = (y 1, y 2, y 3 ) x y = (x 2 y 3 - x 3 y 2, x 3 y 1 - x 1 y 3,x 1 y 2 - x 2 y 1 ) たすき掛けで演算 detの求め方余因子展開を使う行列 Aのs 行,t 列の余因子 : (s,t) 余因子 Δ st n 次正方行列 Aから s 行 (a s1 a sn ) と t 列 (a 1t a nt ) T を取り除いた (n-1) 次正方行列の行列式に (-1) s+t を乗じた行列 余因子は行列式!! (-1) s+t をかける点に注意!! 3 次正方行列の行列式の1 列目の要素で余因子展開 a 11 a 12 a 13 x = a ここはマイナス 21 y = a 22 z = a 23 になる!! a 31 a 32 a 33 det (x, y, z) = A = a 11 a 12 a 13 (2,1) 余因子 a 21 a 31 a 22 a 32 a 23 a 33 = a 11 Δ 11 +a 21 Δ 21 +a 31 Δ 31 (1,1) 余因子 (3,1) 余因子
3 次元ベクトル m を T,N, B 方向に分割 T,N,B の大きさは 1 なので成立 r と F は定数 x(t) が F より前 - がつく理由右下動画 x(t) = rcost rsint ht 0 e 3 = 0 1 T,N,B の各成分は 2 ページ前参照 -z が F の作用線 mb(0) 曲げ成分 B(0) O N(0) T(0) x(t) mt(0) ねじれ成分 モーメント x + 方向定義 mx(0) x O F https://ja.wikipedia.org/ ばねの場合の x は逆なので - 必要
1.3 自然パラメータとフレネー セレの公式 パラメータを時間 t ではなく孤長 s で表す 分母は s を時間 t(s) で微分したという意味 () は掛け算ではない 曲線 T (s=0) =κ(0)n y(s=0) s 1 A s=0 T(s=0) O y(s 1 ) B T(s 1 ) パラメータがsのときはその表記をしていない T=T(s) の意味曲線 y(s) のsに関する微分は長さが1となる 式 (9) と比較 孤長パラメータsのときのT とκの関係式 (7)Nの定義 dt t s /dt T t N = = = κn (A) ds(t)/dt T t /κ 式 (8)κの定義曲率 κのもう一つの定義 :Tのsに対する変化率の大きさ y = T, y = κ N
孤長パラメータ s のときの B と τ の関係 式 (12) より B s = db ds db t s = /dt ds(t)/dt N = B T を s で微分の詳細 = τn (B) ねじれ率 τ 孤長パラメータ s のときの N と κ τ の関係 N s = dn d(b T) = = db dt T + B ds ds ds ds = τn T + B κn = κt + τb B τ T B+ db ds κ N τ κ (C) N+ dn ds T+ dt ds 式 (1)c) を使った
前ペーシ (A) 式 N = B T を s で微分式 (C) 前ペーシ (B) 式 T s N s B s = 0 κ 0 κ 0 τ 0 τ 0 T s N s B s フレネー セレの公式 tバージョン T t 0 κ(t) 0 N t = x t κ(t) 0 τ(t) B t 0 τ(t) 0 T t N t B t B τ T B+ db ds κ N τ κ N+ dn ds T+ dt ds
孤長パラメータ s のときの曲率 κ とねじれ率 τ の特徴 (8) t バージョンの κ と τ の特徴 (13) κ(t) τ(t) を κ(s) τ(s) で表すと s バージョンの κ と τ の特徴 κ s = T s がなぜ = かの τ s = N s B s = det T s, N s, N s 1 証明は省 = x s 2 det x s, x s, x s 略 = 1 y 2 det y, y, y x s = yと表す (D) (E) κ(s) が T s で τ(s) が y,y,y の det で書けることを次で証明
一方次の行列式を計算すると sバージョンの曲率 κの特徴 T s = κ s N s N s = T s κ s s バージョンのねじれ率 τ の特徴 N s = κ s T s + τ s B s (E) 式の証明フレネ - セレ式より 両辺に B(s) を内積して B s = 1, T s B s = 0 より τ s = N s B s B(s) 定義とスカラー 3 重積の性質より τ s = N s T s N s = det T s, N s, N s (F) det y, y, y y はy をもう一回 sで微分 = det T s, κ s N s, κ s N s + κ s N s 行列式の分配則 = det T s, κ s N s, κ s N s + det T s, κ s N s, κ s N s N が二つなので =0 (F) 式と (G) 式とを比較すると (D) 式の証明フレネ-セレ式より両辺にN s の内積 N s = 1なので κ s = T s N s κ s = T s = x s = y = κ s 2 det T s, N s, N s = y 2 det T s, N s, N s (G) τ s = det T s, N s, N s = 1 y 2 det y, y, y (D) 式より自明
スカラー三重積 b c の大きさ の方向 b と c の作る平行四辺形の面積 平行四辺形の法線方向 a b c = a b c cosθ a, b, c が作る平行六面体の体積 a cosθ b c a c a b c = a c b b c b
スカラー三重積の特徴 #1 [ ] グラスマン記号 1) スカラー三重積は積の玉突き入れ替えの順番によらない - a, b, c = a b c = b c a = c a b a 玉突き入れ替えは同じ b c = b c a = c a b = a b c + 内積は入れ替えても同じ a, c, b = a, b, c 順番を入れ替えるとマイナスがつく前ページの体積から考えると明らか 2) 同じベクトルがあると 0となる (b c) b =(b c) c =0 前ページの体積でθ=90 よりcosθ=0 3) スカラー三重積は行列式で表される ( 成分計算すれば自明 ) 外積は行列式でかけるので ( 次ページ参照 ) a 1 b 1 c 1 a 1 a 2 a 3 a = a 2 b 2 c 2 b 1 b 2 b 3 a 1 a 2 a 3 b = b 1 b 2 b 3 c = c 1 c 2 c 3 a, b, c = = a 3 b 3 c 3 c 1 c 2 c 3 3つのベクトルを転置しても行列式は同じ 4) 1) を応用するとスカラー四重積も定義できる (a b) (c d)=c {d (a b)} これを a と思う
スカラー三重積の特徴 #2 5) 外積は行列式で書ける a = = a 2 a 3 i + a 3 a 1 j + a 1 a 2 k b 2 b 3 b 3 b 1 b 2 b 1 a 1 a 2 a 3 b = a b = a 2 b 3 a 3 b 2 i + a 3 b 1 a 1 b 3 j + a 1 b 2 a 2 b 1 k = i a 2 a 3 b 2 b 3 j a 1 a 3 b 1 b 3 + k a 1 a 2 b 1 b 2 = 7)rotも行列式で書ける (H) 式から x rota = a = y z a 1 a 2 a 3 = i j k x y z a 1 a 2 a 3 b 1 b 2 b 3 余因子展開の逆を用いた i j k a 1 a 2 a 3 b 1 b 2 b 3 (H) 6) 前ページ 3) スカラー三重積は行列式で表される a, b, c の一例 (H) 式でi,j,kをcとすれば c a b = c 1 a 1 c 2 a 2 c 3 a 3 b 1 b 2 b 3