/ 平成 9 年 3 月 4 日午後 時 分第 3 章測地線 第 3 章測地線 Ⅰ. 変分法と運動方程式最小作用の原理に基づくラグランジュの方法により 重力場中の粒子の運動方程式が求められる これは 力が未知の時に有効な方法であり 今のような 一般相対性理論における力を求めるのに使う事ができる 最小作用の原理 : 粒子が時刻 から の間に移動したとき 位置 と速度 v = するのが ラグランジュ関数 L であり L は 時間のパラメーター : d ( 簡単のため 次元にしてある の予言に使用 通常の時間 は相対論では位置と同じ 4 次元座標として取り扱われるので 予言されるべき量にな る ここでは新たに時間のパラメーターとして を用いる すべての量は で記述できる 例えば = = 4 であれば = となり 通常の速度は 座標 : ( 速度 : v( d = である ( ( ( d = º の関数であり ( が実際の粒子の運動を表すとき 作用積分 (, ( (, (, S = L を最小にする ( 数学で最小値を求める問題 但し 時刻 と では位置と速度は観測されて値が分かっている :4(= :5(= 一直線上を加速したり減速したり戻ったりして動いていくが 最初と最後の位置と速度しか分からない グラフ めちゃくちゃ加速したり減速したり戻ったり :5(= どんな動き方だったのだろう? :4(= 定速で 地点 4 地点 と要請する事を最小作用の原理という 時刻 から では 観測されていないので運動の仕方が不明で無限の 動き方がある このような動きから 実際に起こった運動を上手に推測するのであるが 無限の動き方から
/ 平成 9 年 3 月 4 日午後 時 分第 3 章測地線 時刻 から で起こった実際の動きを つ取り出すのが最小作用の原理 になる つ取り出したときにその動き方を決めるのを ラグランジュの運動方程式といい ニュートンの運動方程式を特別な場合として含む 事になる ラグランジュの運動方程式 : (, L ( (, (, を最小するときの条件を求める数学問題を解く事になる ある関数 ( S = d 最小値は df ( d = で求められる解 件として付く これを = でのテーラー展開で見直すとき で与えられ f ( である ( 正確には d f ( d f の > が付帯条 f ( = f ( + ( - f ( + ( - f ( + (3. f ( が最小値であると なので 最小値の定義により f ( f ( > = 最小値 3 f ( - f ( = ( - f ( + ( - f ( + ( - f ( + > (3. 3 である ここで のとき f ( - f ( = ( - f ( + ( - f ( > (3.4 で充分である ちなみに - =.とすると 小数点以下 6 桁表示の計算では ( ( ( - =. 3 - =. 4 - =. より ( - 3 以降の項は になり (3.4 が成立する 従って 最小値では (3.3 (3.5 ( f ( f = & > (3.6 である 逆に (3.6 が成立すると自動的に f ( f ( f ( = で決定されるので > が成立する 特に 最小値を与える解は f ( = (3.7
3/ 平成 9 年 3 月 4 日午後 時 分第 3 章測地線 を調べればよい この章 (, ( (, (, S = L に応用するために 次のように整理すると良い : = - Þ = + ( = ( - ( Þ ( = ( + - ( d f f f d f f f (3.8 と表記して d f ( より + を計算し 3 d f ( + = f ( + f ( + f ( + (3.9 3 の係数を に置く の係数を正に置く f = k - a のときに ことで求める 例えば ( ( ( ( ( ( é( ( f = k - a Þ f + = k + - a = k - a + - a + ù ë û ( ( = k - a + k - a + k (3. 従って の係数 : k ( a - を に置くので = a を得る ちなみに の係数を正に置く : k は正な ので k > を得る :5(= ( ( 以上の方法を (, L ( (, (, S = に拡張する :4(= ( = ( - ( d 変数は,, 地点 4 地点 なので 実際に起こった動きを (, v( ( v = のとき 無数考えられる動きを (, v ( で表わすと ( = ( + d ( ( = ( + d ( ( = v v v v (3. で与えられる ここで, では (, ( ( = v v 観測されているので 同じ値であり ( ( ( ( d ( d ( =, = Þ = = ( ( ( ( d ( d ( v = v, v = v Þ v = v = (3. さて (3.8 に対応して ( ( ( ( = ( + d ( ( = ( + d ( ( = v v v v ( ( d S, = S, - S, = S + d, + d - S, (3.3 である (3.3 を計算して. d, d の係数を にする 運動方程式. ( ( d, d, d d の係数を正にする 運動の安定性を保証する
4/ 平成 9 年 3 月 4 日午後 時 分第 3 章測地線 ことで得られる条件式のうち が運動方程式になる (3.3 はラグランジュ関数 L で表わす事ができて (, º L ( (, (, = ( +, + - (, d S d S d d S ì S ( + d, + d = ( + d, + d, ï L Ü í ï S (, = (,, î L (,, L (,, = L + d + d - (3.4 である そこで L ( + d, + d, を計算する事になる (,, L (,, L L ( + d, + d, = L (,, + d + d L (,, ( ( ( L,, L,, + d + d d + ( d + を得る 従って d, d の係数を にすると (,, L (,, L = Ü d の係数, = Ü d の係数 を得るが これは間違いである 実は d = なので ことに注意する必要がある つまり d とd は独立ではない (3.5 (3.6 ( + d d d d d = + d º + d Þ d = d (3.7 に注意して (3.5 のd を置き換えて L (,, L (,, (,, L (,, L dd + d + d = + d + + (3.8 更に d d をd に変更するには A B L (,, d d db ìï d ( AB da db db d ( AB da = A Ü í = B + A A = - B ïî A A æ ( (,, ö B (,, B d AB da d ç L d L = - B = ç d - d ç (3.9 を用いて L (,, L (,, (,, d æ (,, ö d (,, L L L + d + d = + d + ç d - d +
5/ 平成 9 年 3 月 4 日午後 時 分第 3 章測地線 (,, d (,, d (,, é L L ù æ L ö = L (,, + ê - ú d + ç d + ë û (3. を得る (3.4 に戻すと ( +, + = L ( +, +, S d d d d é (,, (,, L (,, L dd ù û = ê L + d + ú + ë (,, d (,, d (,, ìï é L L ù æ L öüï = S (, + íê - úd + ç d ý + ïî ë û ïþ (,, d (,, ü d (,, ìï é L L ù ï æ L ö = S (, + íê - úd ý + ç d + ïî ë û ïþ であるが 第 3 項 : A æ ö d ç L (,, da ç d d Ü d = da = A ç ( (,, ù L ( ( ú ( [ ] ( ( ( ( é L,, L,, = ê d = d ( - d ë û ( (3. (3. ここで (3. より d ( d ( = = なので A æ ö d (,, = = ç L L ( (, (, L ( (, (, ç d d = ( ( d ( d - ( d = ç を得る 以上から (, (, (,, d L (,, ïì é L ù ïü + d + d = + - d + îï ë û þï S S íê ú ýd (3.3 (3.4 より d の係数を にすると (,, d L (,, L - = を得る 即ち (,, L (,, d L = (3.5 (3.6 をラグランジュの運動方程式という Ⅱ. 一般相対性理論と質点の動き 質点の動く軌跡 を与えるのは重力( あるいは加速度 の無い空間では 等速直線運動をする つまり 直線 である この直線の性質は 点を結ぶ最短距離を与える線
6/ 平成 9 年 3 月 4 日午後 時 分第 3 章測地線である 一方 重力がある空間では 等速直線運動ではない そこで 重力のもとで 質点の動く軌跡 を 点を結ぶ最短距離を与える曲線と考える事ができる つまり 直線自身が空間が歪む結果として曲線になる のである 曲線 になるには 重力 が働いている 従って 空間が曲がる事により重力が発生することになる そこで 重力が与えられた時に 物体は 点を結ぶ最短距離を与える曲線上を移動すると考える事ができる ここで 重力自身はアインシュタインの運動方程式 ( 第 4 章重力方程式 参照 で決定できる事に注意する この曲線を決めるため 最短距離の原理 と考え 最小作用の原理 を応用することにする 点間の距離を として この最小値を求めればよい そこで 点間の微小距離を d とすると 次元では 直交座標 (, y と 極座標 ( r, q で d = d + dy = dr + r dq で与えられる ここで 座標の取り方に依存しない表記として d = å. = ( d d を導入することができ d d = Þ í である 4 次元では ( ( ( ( ì ïd = d + dy = =, =, = y ïî d = dr + r dq =, = r, = r, = q = c と,, 3 とすれば 3 d = å d d = d d. = ( ( ( 和の記号を省略 (3.7 (3.8 (3.9 (3.3 であり 特に ( d = c = c のとき 3 = c å ( d d 3. = æ d d ö = ç å (. = d d = d である 第 章はじめに の (.83 で使用している 4 次元の場合でも (3.9 と同じ形式になり d d d = d = ( d d = ( (3.3 ( である 求める 点間 (, ( の長さ は æ d ö æ d ö æ d ö ææ d ö d d ö = d = ç Þ L ç, = ç ç = ( (3.3 ç
7/ 平成 9 年 3 月 4 日午後 時 分第 3 章測地線である この長さの最小値を求めるのは Ⅰ. 変分法と運動方程式 と同じ方法を用いれる そ ( ( d L,, L,, こで (3.6: = より を 4 次元ベクトル に拡張して (,, L (,, d L æ d ö æ d ö ææ d ö d d ö = Ü L, ( ç = ç ç = (3.33 ç になる この方程式から ニュートン力学で用いられる言葉を用いると (,, L F = (4 元 力 (3.34 (,, E p = L æ ö =, ç p (4 元 運動量 ( エネルギー : E 運動量: p c (3.35 dp F 法則 (3.36 になる 未知の理論の一般相対性理論でも この言葉を理解の助けとすることができる とくに エネルギー E が重要になる Ⅲ. 一般力とエネルギー計算の都合上 = として (3.36 の右辺は F 左辺は p r ( ( - -,, d é d ù d é d ù r ( L æ ö æ ö æ ö æ ö = = ç = êç ú ç = êç ú êë úû êë úû ( ( - - d éæ d ö ù éæ ö ù = êç ú = êç ú ëê ûú ëê úû ( L,, æ d ö æ d ö éæ d ö ù = = ( ç = d ç = êç ú é ù d ë û æ ö êë úû ç Ü = d, = d - - éæ d ö ù é æ d ö ù = êç ú ( ( d + d = êç ú ( + ( êë úû êë úû - ( (3.37 なので - - éæ d ö ù éæ d ö ù = êç ú ( + = êç ú ( (3.38 êë úû êë úû - dp d L (,, d æ é d ö æ ö ù = = ç ( êç ú ç êë úû -3 - ( éæ d ö ù d æ d ö éæ d ö ù d é ë ù = - û êç ú ç + êç ú êë úû êë úû (
8/ 平成 9 年 3 月 4 日午後 時 分第 3 章測地線 ここで ( -3 - r ( r ( ( éæ d ö ù d æ d ö éæ d ö ù = - êç ú ç + êç ú + (3.39 êë úû êë úû ( ( d ( d ( = = = = ( (3.4 より (3.39 の ( «( = ( = ( + ( = ( ( + ( = ( ( + ( 従って ( - -3 dp d L,, é æ d ö ù d æ d ö = = - êç ú ç êë úû を得る 以上から 添え字を整えて ( éæ d ö ù é ù + êç ú ( ( + ( + ( ê ë û ú êë úû r r (3.4 (3.4 dp = F ( 運動方程式 - ì æ L (,, ö é d ù ï æ ö æ E ö p ç = (, = êç ú = ç p ï ëê ûú c ï -3 - ïdp éæ d ö ù d æ d ö é æ d ö ù é r ù í = - êç ú ç ( + êç ú ( r ( + r ( + ( ë ê û ú ï êë úû êë úû ï - ï æ L (,, ö éæ d ö ù r ïf ç = r ( = êç ú ëê ïî ûú Ⅳ. 測地線方程式ラグランジュ方程式 つまり dp F = を更に整理すると 測地線方程式と呼ばれる 一般相対性理論で実際の質点の動きを決める運動方程式が得られる (3.43 を代入して整理すると (3.43 (3.44 - -3 r éæ d ö ù é ù éæ d ö ù d æ d ö êç ú ( ( ( ( ( r ( ê + - + = êç ú ç ë û ú êë úû êë úû r を得る ここで 第 章一般座標変換 (.89 の G = G = ( r + r - r (3.45 を用いると
9/ 平成 9 年 3 月 4 日午後 時 分第 3 章測地線 + - = G r r r r これを (3.45 に適用するために添字を整え ( ( ( ( ( ( + - = + - = + - = G = G r r r r= r r = (3.46 (3.47 なので (3.45 は - -3 r ( G + ( = r ( éæ d ö ù é ù éæ d ö ù d æ d ö êç ú ê ú êç ú ç (3.48 êë úû ë û êë úû 更に 左辺の添え字を整理して ( ( ( ( G + = G + = G + (3.49 より - -3 r r éæ d ö ù éæ d ö ù d æ d ö êç ú ( G + = êç ú ç ( (3.5 êë úû êë úû を得る 特に 時間のパラメーター が d = c を満たす時には (3.5 において æ d ö d æ d ö ç = c Þ ç = (3.5 なので G + = (3.5 添え字を整えて 変数を復活して ( ( ( d d d r + G ( = Ü G = G = r + r - r ( を得る これは 第 章一般座標変換 の (.96 と一致する事が分かる これは ( ( ( d d d = -G ( と表わすとき ニュートン力学で加速度 ( ことになる d = (3.53 d F と力 ( F = -ÑU ( の関係式 ( = -ÑU ( (3.54 に対応 d d æ d ö d æ d ö = c 以外の 一般のパラメーターの時は ç = ではなく ç ¹ になる (3.5 の右辺は
/ 平成 9 年 3 月 4 日午後 時 分第 3 章測地線 d æ d ö d ç = é ( ù = ( + ( + ( ë û = + = + r ( ( ( ( r r r ( ( ( ( r = + - r r «p r ( ( ( ( r ( ( ( ( r r r ( + r «= + - + 前と同様に 添え字を整えて r r r r r r = + - + ( ( ( ( ( ( + - = + - r r r r r r = + - = G = G r r r «r r «r r (3.55 (3.56 より (3.5 の左辺には d æ d ö r ç = ( G r + = ( Gr + r (3.57 一方 (3.5 の右辺には ( G + ( G + が表れている そこで (3.57 の G r + を に準じて表すと に合わせる r G + = r G + = G + r r r r ( = = なので になる 従って 測地線方程式が成立すると ( ( r G + = G r + r ( G + = ( G r である つまり (3.5 は = - ì é d ù ï æ ö êç ú ( G + = ê ú ï ë û í = ï -3 é d ù ï æ ö d æ d ö r êç ú ç r ( = ï î êë úû の結果 = で成立する 以上から d æ d ö + = Þ ç = r d æ d ö ç = (3.58 が導かれ この解は
/ 平成 9 年 3 月 4 日午後 時 分第 3 章測地線 æ d ö ç = 一定 より これを光速度の 乗 ( c におくのが一般的であり d = c つまり 測地線方程式が成り立つと d d = = ( ( c を得る 特に 一定値が の時 ( d = は特殊であり は d とは無関係 になる また (3.59 (3.6 (3.6 æ d ö 測地線のすべての点に於いてç = が満たされる 事もわかる 以上から 測地線方程式が成り立つとき d = c と置けることがわかる ここで L æ d ö æ d ö ç, = ç = c Ü 間違い (3.6 にならないので注意する必要がある それは æ, d ö L ç は実際の軌跡以外にも無限の軌跡を記述する からである Ⅴ. 非相対論極限 : 弱い重力場の測地線方程式一般相対性理論で得られた測地線方程式を弱い重力場の場合に適用する この時には ニュートンの運動方程 式が現れるはずである 弱い重力場では 重力場 ( は重力のない場合の ( を で表すと h h æ ö æ ö ç ç - - º ç, h º ç ç - ç - ç ç - - (» h + h (, (» h + h ( (3.63 で記述できるとする つまり h ( の 次の項までを考慮する 近似を取る また 時間に依らない重力を調べるために h ( は 時間 によらない : h ( = において,, 3 r とする このとき G = ( r + r - r = とすると i ( =,,3 で表し
/ 平成 9 年 3 月 4 日午後 時 分第 3 章測地線 = = ij ij r = j=,,3 æ ö»-d i ir ij ij G = ( r + r - r» hj + h j - jh = (-d (- jh = ih ç を用いて (3.54 は ( ( ( ( ( ( ( d d d d d d d i j j i i i = -G ( - G j ( - G j ( j k i d ( d ( - G jk ( j j k i d ( d ( i d ( d ( i d ( d ( = -G ( - G j ( - G jk ( (3.64 (3.65 ここで 速度 v が光速 c に比べて充分小さいとき 第 章一般座標変換 (.97: = - v なので» c より k k ( dc ( ( d d d k» = c,»» v c (3.66 を (3.65 に用いて i d (» -G i ( c (3.64 より i = i = i = 3 æ ö i i ç i i i G» ih = Ñ h i = Ñ, : Ñ ç = -Ñ = i + j + k y z ç (3.67 なので (3.67 は i d» -G ( c = - c Ñ h i i これを 質量 の質点のニュートン方程式 (3.68 i i d i æ 3 d z ö d i = -Ñ f z z c h ç 例 重力 = f = Þ k = - k Û» - Ñ (3.69 と比較して h f» c つまり (3.63 より f» h + h (» + c を得る この時 運動方程式は (3.67 より ( ( v d i i f» - c Ñ h << c Ü h», Ñ = i + j + k c y z である (3.7 (3.7 (3.7