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標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

(別紙様式1)

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

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心房細動1章[ ].indd

TDM研究 Vol.26 No.2

study のデータベースを使用した このデータベースには 2010 年 1 月から 2011 年 12 月に PCI を施行された 1918 人が登録された 研究の目的から考えて PCI 中にショックとなった症例は除外した 複数回 PCI を施行された場合は初回の PCI のみをデータとして用いた

糖尿病予備群は症状がないから からだはなんともないの 糖尿病予備群と言われた事のある方のなかには まだ糖尿病になったわけじゃないから 今は食生活を改善したり 運動をしたりする必要はない と思っている人がいるかもしれません 糖尿病予備群の段階ではなんの症状もないので そう考えるのも無理はないです しか

第43号(2013.5)

ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

宗像市国保医療課 御中

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福岡大学薬学部薬学疾患管理学教授

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

(検8)05資料4 門脇構成員 随時血糖値の判定基準について

-3- Ⅰ 市町村国保の状況 1 特定健康診査受診者の状況 平成 23 年度は 市町村国保 (41 保険者 )98,439 人の特定健康診査データの集計を行った 市町村国保の診者数は男性 女性ともに 歳の割合が多く 次いで 歳 歳の順となっている 男性 女性 総数

血糖変動を読み解く vol.1

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

,995,972 6,992,875 1,158 4,383,372 4,380,511 2,612,600 2,612, ,433,188 3,330, ,880,573 2,779, , ,

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特定健康診査及び特定保健指導に係る自己負担額の医療費控除の取扱いの一部変更について(厚生労働省健康局長、保険局長:H )

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3 スライディングスケール法とアルゴリズム法 ( 皮下注射 ) 3-1. はじめに 入院患者の血糖コントロール手順 ( 図 3 1) 入院患者の血糖コントロール手順 DST ラウンドへの依頼 : 各病棟にある AsamaDST ラウンドマニュアルを参照 入院時に高血糖を示す患者に対して 従来はスライ

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

1治療 かっていたか, 予想される基礎値よりも 1.5 倍以上の増加があった場合,3 尿量が 6 時間にわたって 0.5 ml/kg 体重 / 時未満に減少した場合のいずれかを満たすと,AKI と診断される. KDIGO 分類の重症度分類は,と類似し 3 ステージに分けられている ( 1). ステー

「長寿のためのコレステロール ガイドライン2010 年版」に対する声明

HbA1c GLP-1 11 HbA1c 2 GLP-1 1 DPP-4 GLP-1 SGLT2 1 2 HbA1c 7% 130mg/dL 2 180mg/dL , 2014

尿試験紙を用いたアルブミン・クレアチニン検査の有用性

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1. 背景ながはまコホート事業は 京都大学と滋賀県長浜市が共同して行っている 市民の健康づくりと最先端の医学研究を目的として実施されている事業です 5 年ごとに一般の特定健診項目に加えて 遺伝子解析を含む血液検査や睡眠検査などの様々な検査が行われています 私たちはこのコホート事業において 睡眠呼吸障

高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

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カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

Surgical AKI non-cardiac surgery

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満 ) 測定系はすでに自動化されている これまで GA を用いた研究は 日本 中華人民共和国 (PRC) および米国で実施され GA 値が糖尿病の診断に有用という結果が日本とアメリカで報告された 本研究ではその普遍性を追求するため 台湾人での検討を行った 同時に台湾における GA の基準範囲を新規に

スライド 1

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02-16_(0130修正済)第2編第2章_01_別添「健診結果とその他必要な情報の提供(フィードバック)文例集」

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BSA(m 2 )= 体重 (kg) 身長 (cm) =1.27m 2 となり 173.6mL/min/1.73m 2 を 1.27m 2 である患者個人の腎機能に換算 ( で補正を外すと ) すると 127.4mL/min になりますが これでも実測 CCr

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

(6/5 19:00修正)資料3 標準的な健診・保健指導プログラム改定のポイント (2) (2)

2 CKD 1. 不適当な食事 2. 感染症 : 尿路感染, 肺炎, 敗血症など 3. 急激な循環状態の変動 : 高血圧, 低血圧 4. 水 電解質異常 : 脱水, 溢水, アシドーシス 5. 尿路疾患 : 尿路結石 狭窄 感染 6. 腎毒性薬剤 : 造影剤, 抗生物質,NSAIDs 7. 手術およ

デベルザ錠20mg 適正使用のお願い

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268 LSG 図 Lee ABCD 表 1 4 Age BMI C Duration Still DiaRem 表 1 4 HbA1c Ⅱ 対象と方法 1 17 LSG 6 3 Excess Weight Loss EWL BMI 25 kg/m 2 Hb

日本の今を知る: 身体活動・運動に関わる現状と課 ―授業・現場で活かせる身体活動・運動の最新情報―

5 患者数(万人52 15 Vol. 53 No. 2 わが国における高齢者認知症の患者数の推計要介護 ( 認知症高齢者の日常生活自立度 Ⅱ 度以上 ) 認定者 4 3 認知症有病率の全国調査 受診者数 :5,386 人受診率 :68% 有病率 :15% 患者数 :462 万人 2 )22 年 21

地域医療連携における 医師会の役割

< 糖尿病療養指導体制の整備状況 > 療養指導士のいる医療機関の割合は増加しつつある 図 1 療養指導士のいる医療機関の割合の変化 平成 20 年度 8.9% 平成 28 年度 11.1% 本糖尿病療養指導士を配置しているところは 33 医療機関 (11.1%) で 平成 20 年に実施した同調査

目次 1. 目的 2 2. 人工透析患者の年齢等の分析 3 性別 被保険者 被扶養者 3. 人工透析患者の傷病等の分析 8 腎臓病 併存傷病 平成 23 年度新規導入患者 4. 人工透析 健診結果 医療費の地域分析 13 二次医療圏別 1

第1 総 括 的 事 項

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー

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(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

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九州支部卒後研修会症例

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日本内科学会雑誌第99巻第9号

データを正しく 活用していただくために 今回は 平成 23 年度に市町村国保で実施した特定健診結果のみ集計しています 今後 協会けんぽ沖縄支部の結果とあわせて 改めてデータ集を発行する予定です 1. 集計対象者 今回の集計対象者は 平成 23 年度に特定健康診査を受診した者 ( 市町村国保分のみ )

学位論文審査結果報告書

3 病床数 施設 ~19 床 床 床以上 284 (3 施設で未回答 ) 4 放射線専門医数 ( 診断 治療を含む ) 施設 ~5 人 226 6~10 人 人

超高齢社会における共生を考える健康長寿の要因の探求 40 神出 楽木 健康長寿の要因の探求 41 未来共生学第 4 号 論文 高齢者疫学研究からの知見 Reich et al i, ii 神出計 ii 楽木宏実 大阪大学大学院医学系研究科 i 保健学専攻総合ヘルスプロモーション科学講座

Transcription:

慢性腎臓病 (CKD) における危険因子としての食後高血糖の検討 独立行政法人国立病院機構千葉東病院臨床研究部 糖尿病研究室長関直人 はじめに 1. 研究の背景慢性腎臓病 (CKD) は 動脈硬化 腎機能低下 末期腎不全 心血管イベントなどの危険因子であることが報告されている (1) 一方で食後高血糖もまた 動脈硬化 心血管イベントの危険因子であることが報告されている (2) 食後高血糖の検出には持続血糖モニタリング (CGM) や1,5-アンヒドログルシトール (1,5- AG) の有用性が報告されており (3) 一般住民においては1,5-AGと心血管イベントの関連が報告されている (4) 但し 腎機能低下症例では 1,5-AGの測定に影響があると考えられ 1,5- AGが食後高血糖を反映するかどうかは明らかではない 本研究では 食後高血糖を検出するための検査として golden standardではあるがやや煩雑なcgmと 一方で 簡便な検査である 1,5-AGを比較し 腎機能低下症例でも 1,5-AGが食後高血糖を反映するかどうかを検討した 2. 研究の方法 1 対象当科通院中のCKD stage3-4( 推算糸球体濾過率 (egfr)30-59 ml/min/1.73m2 ) の糖尿病症例 性別 年齢は不問 但し HbA1c 8.0% 以上の症例は著明な高血糖では1,5-AG 値が食後高血糖を反映しないため また SGLT-2 阻害薬を内服している症例は 1,5-AGの測定に影響があるため それぞれ除外した 2 方法 CGMを装着し その翌日の 24 時間の血糖プロフィールを解析し 食後高血糖 ( 血糖値 180mg/dL 以上 ) の面積 ( 図 1) を計算し 1,5AGとの相関を検討した 食後高血糖の定義はアメリカ糖尿病学会の定義に拠った 結果は平均 ± 標準偏差で示した 137

結果 1. 対象症例背景対象症例背景を表 1に示す 対象症例は20 例 年齢は平均 57 歳 性別では男性が多かった egfrの平均は 39.3(mL/min/1.73 m2 ) だったが 貧血は認めなかった HbA1c 及び 1,5AGを指標とした血糖コントロールは良好であった 表 1 対象症例背景 年齢 ( 歳 ) 56.4 ± 15.6 性別 ( 人 ) 男 14: 女 6 BMI 25.3 ± 4.9 egfr (ml/min/1.73 m2 ) 36.9 ± 17.2 CKD stage 3 及び 4 ( 人 ) 12:8 収縮期血圧 (mmhg) 129 ± 19 拡張期血圧 (mmhg) 73 ± 10 Hb (g/dl) 13.4 ± 2.4 HbA1c (%) 6.6 ± 0.9 1,5AG (μg/ml) 12.5 ± 6.3. 2. 食後高血糖の検出対象症例 20 例中 14 例において CGMで食後高血糖を認めた は 6645.3 ± 10294.0mg/dL minであった 全症例の解析では はHbA1c 1,5-AGのいずれとも有意な相関を認めた 但し HbA1cと1,5-AGは有意な相関を認めなかった ( 表 2) 表 2 全症例 (CKD stage 3-4) における HbA1c 1,5-AG との相関係数 (r) HbA1c (%) - -0.405 0.525 * 1,5AG (μg/ml) -0.405 - -0.460 * * p<0.05 0.525 * -0.460 * - 138

3. 腎機能ごとのHbA1c 1,5-AG との相関全症例 (CKD stage3-4) をCKD stage3(egfr 30-59mL/min/1.73m2 ) とCKD stage4(egfr 15-29mL/min/1.73 m2 ) に分けて それぞれのHbA1c 1,5-AG との相関を検討した CKD stage3 では 1,5-AGととの間に有意な相関を認めたが ( 表 3-1 図 2-1) CKD stage4では認めなかった ( 表 3-2 図 2-2) 表 3-1 CKD stage 3 (egfr 30-59 ml/min/1.73 m2 ) の症例 (n=12) における 1,5-AG との相関係数 (r) HbA1c (%) - -0.520 0.626 * 1,5AG (μg/ml) -0.520 - -0.600 * * p<0.05 0.626 * -0.600 * - 表 3-2 CKD stage 4 (egfr 15-29mL/min/1.73 m2 ) の症例 (n=8) における HbA1c 1,5-AG との相関係数 (r) HbA1c (%) - -0.074 0.148 1,5AG (μg/ml) -0.074 - -0.091 0.148-0.091-139

考察食後高血糖の検出には 1,5-AGの有用性が報告されているが (3) 我々の検討では CKD stage3では1,5-agとに有意な相関を認めたが より腎機能低下が進行したCKD stage4 では有意な相関は認められなかった その理由として 1,5-AGの測定原理より腎機能障害が影響したと考えられる CKD stage3 までの腎機能障害の症例においても 血糖コントロールの指標としての 1,5-AGの有効性は報告されているが (5) 食後高血糖の指標としての1,5-AGの有効性は未検討である 今回の研究により CKDにおける食後高血糖の検出には CKD stage3 までは 1,5-AGの有効性が示唆されたが より腎機能低下が進行したCKD stage4 では 1,5-AGでは食後高血糖の検出には限界があることが考えられた このため CKD stage4 以上の腎機能低下症例においては 食後高血糖の検出のための検査としてはCGMが必要かつ有効と考えられた 今後の発展 課題としては 第一に症例数の確保である 今回の検討では 特にCKD stage4の ( かつHbA1cが8% 未満という比較的コントロール良好な ) 症例数が少なかったことより 今後 症例数を蓄積してゆきたい 第二に食後高血糖が認められた症例での 動脈硬化 腎機能低下 末期腎不全 心血管イベントなどへの関与を縦断的 ( 数年間 ) に渡り検討することである 最後に 本研究の医学的意義や貢献としては 食後高血糖の検出にCKDのstageごとに最良なツールを提示し 食後高血糖の検出から介入 ( 生活指導や薬物療法など ) することによって 動脈硬化 心血管イベントの抑制に役立つことが期待される 要約 CKD stage4 以上の腎機能低下症例においては 食後高血糖の検出のための検査としては CGMが必要かつ有効であり 動脈硬化 心血管イベントなどの抑制に役立つと考えられる 文献 1. 日本腎臓学会編集エビデンスに基づくCKD 診療ガイドライン2013 東京医学社 2. Glucose tolerance and mortality: comparison of WHO and American Diabetes Association diagnostic criteria. The DECODE study group. European Diabetes Epidemiology Group. Diabetes Epidemiology: Collaborative analysis Of Diagnostic criteria in Europe. Lancet 1999; 354: 617-621 3. K i m M J, J u n g H S, H w a n g - B o Y, C h o S W, J a n g H C, K i m S Y, P a r k K S : E v a l u a t i o n o f 1,5-anhydroglucitol as a marker for glycemic variability in patients with type 2 diabetes mellitus. Acta Diabetol 2013; 50: 505-510 4. Watanabe M, Kokubo Y, Higashiyama A, Ono Y, Miyamoto Y, Okamura T: Serum 1,5-anhydro-Dglucitol levels predict first-ever cardiovascular disease: an 11-year population-based cohort study in 140

Japan, the Suita study. Atherosclerosis 2011; 216: 477-483 5. Kim WJ, Park CY, Lee KB, Park SE, Rhee EJ, Lee WY, Oh KW, Park SW: Serum 1,5-anhydroglucitol concentrations are a reliable index of glycemic control in type 2 diabetes with mild or moderate renal dysfunction. Diabetes Care 2012; 35: 281-286 141