3 留意点系統図の作成からみえてくる小中連携 つまずき からみえる 9 年間のつながりつまずきが起こるのは, 学力が不充分なためだけではありません 学習が順調に進んでいても, つまずきを起こして, やる気を失ったり不安に駆られたりして, 学習が手につかないこともあります 指導者は, 子どものつまずきを意識し, いろいろなつまずきを予測し, 克服するための手立てを具体的に用意しておくことが大切です 過去の学習内容の定着が不充分な場合は, 復習したり学習活動を反復したりすることで, 学習内容を思い出し, 理解が深まり, つまずきを克服できることが多いと思います いまの学習内容は過去の学習内容とどうつながっているのでしょうか このことが明らかになれば, つまずきの克服のための手だてが打ちやすくなります ここで紹介する 留意点系統図 は, その単元での子どものつまずきの原因と内容が過去のどの学習内容とつながっているのかを示すとともに, これからの学習においてつながりが強いと考えられる学習内容も示しています そのため, この 留意点系統図 は, 子どもたちの学びを つまずき という具体的な姿から把握することも可能になります ここでは, 京都市の小 中学校で使っている啓林館の教科書をもとにして, 小学校第 6 学年 体積 と中学校第 1 学年 平面図形 の単元での留意点系統図を作成しました 子どもによってつまずきは違いますが, 小中 9 年間を通した子どもの学びについて全体を見通したり, 既習事項を見直したりすることができると思います 同じ領域でも, また 数と計算 など他の領域でも, このような留意点系統図をつくってみてはいかがでしょうか 子どもが どこでつまずいているのか どのような内容でつまずいているのか を整理することができます また, それに対する手だてのあり方もはっきりしてくるのではないでしょうか 留意点系統図の見方ここで作成した 留意点系統図 の見方について簡単に紹介します 縦方向にある大きな柱は単元の流れです そして, 横方向には学年を配置しました いままで
と これから の学習内容がどのように関連しているのかがわかります 単元名 かさを調べよう 学習内容 就学前 での関わり のある経験 つまずきの 姿(手だて) これから の学習内容 いままで の 学習を生かし た手だて 小学校第 6 学年での 体積 の単元と 他学年の関連する単元とのつながりぐあいを示しています 第 6 学年で学習する内容について 9 年間の学びのつながりを意識して他学年の学習内容との関連を調べて ひとつの表にしてみると 子どもがいままでどのような学習をしてきたか そしてこれからどのような学 習をしていくのか そのつながりぐあいを見渡すことができます 平面図形 単元名 学習内容 就学前 での関わり のある経験 つまずきの 姿(手だて) これから の学習内容 いままで の 学習を生かし た手だて 中 学校 第1学 年 での 平 面図 形 の 単元 から Ⅰ直線 と 角 Ⅲ 基本 の作 図 の 学 習 内容 につ い て作 成し た もの です いまま で これ か ら との つ なが りを 見 渡す ことができるので 必要な手だてがわかります 13
小学 6 年 7 かさを調べよう ( 体積 ) 小 1 小 2 小 3 小 6 体積 中 2 小 2 かけ算 九九の復習 小 2 100cm をこえる長さ 1m=100cm 面積は 1 cm2を基準に数えたことを確認 cm2は, 面積 ( 広さ ) の単位であることを確認 面積では,1 cm2の正方形が何枚かをかけ算で求めたことを参考に 小 6 立体 柱体の上下の面を底面ということを確認 Ⅰ. 直方体と立方体のかさを比べる 1. 比べる方法を考える 1 図形の名称や特徴を理解していないので, かさを比べられない 2 何を基準にすればよいかわからないので, かさを比べられない ( 立体モデルや 1 cm3ブロックの操作 ) Ⅱ. 直方体と立方体の体積 1. どれだけ大きいのか 2. 体積の単位 ( cm3 ) 1 cm2と区別できないので, 聞き間違い, 書き間違いをしてしまう Ⅲ.1 cm3の積み木 1. 積み木の個数を計算で求める 1 着目点がわからないので, 考え方がわからない 2. 縦 横 高さ = 底面積 高さ 1 底面積の意味がわからないので, 理解ができない Ⅳ.1000 cm3の立方体 1. 体積が 1000 cm3になる立方体をつくる 面積が, cm2になる長方形の, 縦と横の長さは? を求めたことを参考に 1 公式を使えるようになっていないので, 小 3 かけ算 2 桁 2 桁,3 桁 1 桁 大きな面積 1 m2 =1m 1m =100cm 100cm =10000 cm2と, 段階を経て計算したことを参考にする では, 複雑な面積を求めるために, 画用紙などを使って, 切ったりはったりしながら, 複雑な形を作る操作をした その活動を振り返って, 分割や削るといった工夫を定着させよう 小数の計算 筆算での小数点の位置と移動に注意 工夫して面積を求めたときには, 分割, 削る などをしたことを確認 一辺 一辺 一辺で,3 つの数のかけ算をするから, 九九をおぼえているか確認することが大切 cmと m の違いを定規や巻尺での測定で実感させることも大切 立方体の辺の長さを決定できない ( 立体モデルの観察, 公式の確認 ) 2 かけ算の九九を使えるようになっていないので, 立方体の辺の長さを決定できない Ⅴ. 立方メートル 1. m 単位の立方体の体積を求める 1 cmと m の単位変換ができないので, メートル単位の辺の立方体の体積が求められない 2. 体積の単位 ( m3 ) を知る 1 見間違いで, m2と混同してしまう Ⅵ.1 cm3と 1 m3 1. 1 m3は何cm3ですか? 1 cmと m の単位変換の理解が不充分なので, 間違える Ⅶ. 単位をそろえて体積を求める 1. 単位をそろえる 2. 小数の計算 1 cmと m の単位変換の理解が不充分なことや, 小数の筆算での計算ミスのため, 間違える Ⅷ. 体積の求め方の工夫 1. 体積を工夫して求める 1 立体モデル操作 観察不足なので, 工夫できない ( 立体モデルの操作, 観察 ) 柱体の体積 = 底面積 高さ ( 積み重ね ) 算数では, たて 横 高さ と教えるけど, 数学では, 底面を積み重ねる考え方で教えるから, 同じ面を積み重ねて立体ができていくことにも触れる -14-
中学 1 年 5 章 平面図形 小 1 小 2 小 3 小 6 平面図形 中 2 角とその大きさ 一つの頂点から出ている 2 つの辺が作る形を角といいます ( 定義 ) の確認 垂直平行と四角形 垂直の定義の確認と三角定規を使った作図 平行の定義の確認と三角定規を使った作図 コンパスを使った学習は, 以来 3 年間もやってなかった 作図方法を思い出すためにもコンパスを使って絵をかくことなどが, 使い方の練習になるから, 作図の導入でコンパスを使って絵をかかせよう 三角形 コンパスで三角形をかく方法を確認する 垂直平行と四角形 折り紙でのひし形の操作を確認 折り紙なら, 準備も簡単にできそうだし, 折り目が対称の軸になり, 折り目が重なった所は対称の中心になるので, 対称のイメージを持たせやすい Ⅰ. 直線と角 1. 比べる方法を考える 1 直線と線分が区別できないので, 違いを意識して考えられない ( 知識として覚える ) 2.2 点間の距離の意味 1 距離の意味がわからないので, 最短距離を測れない (( 紐などを使い, 最短 を実感する )) 3. 角の意味と表し方 1 角の意味がわからないので, 図形の中で意識して考えられない 4. 垂直な 2 直線の意味と表し方 1 垂直の意味や表し方がわからないので, 指定された作図ができない 5. 平行な 2 直線の意味と表し方 1 平行の意味や表し方がわからないので, 指定された作図ができない 6. 垂線 1 ~ は に対する垂線, は ~ に対する垂線 の表現がややこしいので, 理解できない ( 図を提示しながら, 主語 述語の確認 ) 7. 点と直線の距離の意味 8. 平行な 2 直線の距離の意味 1 最短距離が理解不足なので, 距離が測れない (2 点間の最短距離の確認 ) 9. 三角形をかくこと ( 多角形, 正多角形 ) 1 何からかいたらよいかわからないので, かけない Ⅱ. 対称な図形 1. 対称の意味 1 折ったら重なるイメージが持てないので, 対称の意味理解が進まない ( 折り紙の操作 ) 2. 線対称な図形の性質 1 性質の理解不足で, 図形がかけない ( 折り紙の操作などによる理解の促進 ) 3. 中点の意味 4. 垂直二等分線の意味 1 意味の理解不足で, 特徴や性質がわからない ( 図による説明 ) 5. 点対称の意味 1 回転の意味がわからないので, くるくると回してしまう ( モデルなどによる確認 ) 6. 点対称な図形の性質 1 性質の理解不足で, 点対称な図形を見つけられない ( 図による説明, モデルなどによる確認 ) 2 平面の位置関係 中 2 図形の性質と証明 二等辺三角形の性質 2 点間の距離 直角三角形 頂点から下ろした垂線の長さを求める三角形の頂点から対辺までの距離 では, 点と直線の距離と三平方の定理から, 錐体の高さを求めるので, 点と直線の意味をしっかりと学習させよう Ⅲ. 基本の作図へ -15-
中学 1 年 5 章 平面図形 小 1 小 2 小 3 小 6 中 2 円と球 コンパスで円や模様をかく方法を確認する では, 模型などでおうぎ形のイメージを示していたから, 模型などの具体物でおうぎ形の特徴をつかませることが大切 角とその大きさ おうぎ形の模型などで特徴を確認する 円周と円の面積 円周率の意味を確認する 円周 = 直径 円周率 円と球 直径は半径の 2 倍であることを確認する 円周と円の面積 円の面積 = 半径 半径 円周率 割合 比べる量 = もとにする量 割合 Ⅲ. 基本の作図 1. 作図の意味 1 意味の理解不足で, 作図がすすまない ( 作図の意味, 方法の確認 ) 2. 垂直二等分線の作図 3. 角の二等分線の作図 4. 垂線の作図 1 方法の理解不足で, 作図がすすまない ( 方法の確認, 道具の使い方の確認 ) Ⅳ. 円とおうぎ形の性質 1. 円の弧と弦の意味と表し方 1 円と円周の区別ができないので, 正確に表せない ( 定義の確認 ) 2. 円や弧に対する中心角の意味 1 ~ に対する弧 の表現がややこしいので, 理解できない ( 図を提示しながら, 主語 述語の確認 ) 3. 等しい中心角に対する弧の長さの関係 1 弧と中心角の関係が理解できていないので, つながりがわからない 4. 直線が円に接すること 1 交点と共有点の意味がわからないので, 違いを理解できない ( 用語の確認 ) 5. 接線, 接点の意味 1 接点と接線の意味がわからないので, 図のイメージができない ( 用語の確認と作図 ) 6. おうぎ形とおうぎ形の中心角の意味 1 中心角とのつながりがわからないので, 正確に表せない 7. 合同の意味 1 合同の意味がわからないので, ぴったり重なるイメージができない ( 折り紙などの操作で確認 ) Ⅴ. 円とおうぎ形の計量 1.π の意味 1π の意味がわからないので, 理解が進まない 2.π を使っての円周の長さの求め方 1 公式を忘れていたり, 直径の意味がわからないので, 長さが求められない 3.π を使っての円の面積の求め方 1 公式を忘れたので, 面積がわからない 4. おうぎ形の弧の長さの求め方 5. おうぎ形の面積の求め方 1 ( 中心角 /360 ) がわからないので, 長さや面積が求められない コンパスを使った学習は, 以来 3 年間もやってなかった 作図方法を思い出すためにもコンパスを使って絵をかくことなどが, 使い方の練習になるから, 作図の導入でコンパスを使って絵をかかせよう 中 2 図形の性質と証明 円柱, 円錐の底面積 合同, 合同条件 の証明問題の準備として, 合同と相似の違いをはっきりと理解するためにも, 合同 のイメージをしっかりと持たせることが大切 円錐の側面積, 表面積 -16-