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Transcription:

-1- 吉田研究室コロキウム 2008/06/09 ハルデン相を特徴付けるストリング秩序の 有限サイズスケーリング 阪大基礎工上田宏

-2- アウトライン はじめに 少しだけ自己紹介 相転移に関する予備知識 相転移を身近に感じるために 秩序変数と自発的対称性の破れ モデル計算の流れ ( 一例 ) 量子相転移の相境界を新たな手法で捉える 数値解析手法の現状と新手法の提案 既知の相図 (S=1XXZ 鎖 + 単一イオン異方性 ) 基底状態現象論的繰り込み群 (GSPRG) 計算結果 まとめ 最近すこし気になること Fortran90 で組む擬似オブジェクト指向プログラム

-3- 自己紹介 上田宏 ( うえだひろし ) 出身 : 大阪府摂津市 経歴 2005 年 3 月大阪府立工業高等専門学校電子情報工学科卒業 2005 年 4 月大阪大学電子物理科学科物性物理科学コース偏入学 ( 後は皆さん知ってのとおりですので略 ) Dr 進学予定 研究内容 高専卒研 : 家庭用電子レンジを使って三元化合物半導体を まさに料理をつくるかのようにして 作製した後 低温発光ルミネセンスによる評価 学部卒研 : 密度行列繰り込み群 (DMRG) のオリジナルプログラムの作成と単一イオン異方性を持つS=1Heisenberg 鎖のHaldane 相の相転移の評価 修士 1 年 : 基底状態現象論的繰り込み群 (GSPRG) の提案と単一イオン異方性を持つS=1XXZ 鎖のHaldane 相の相転移の評価 修士 2 年 :S=1 梯子系 ( もしくは次近接相互作用のあるS=1Heisenberg 鎖 ) のあらたな量子相転移の探索 ( のために現在右往左往してるところ ) 最近考えてること 研究室内公開用のDMRGプログラムの作成 ( 速度よりも可読性を重視する方針 ) 1 次元鎖 次近接相互作用 ランダムスピン XXZ 異方性 単一イオン異方性 磁場 Fortran90で似非オブジェクト指向プログラミングを組むことに挑戦中

相転移に関する予備知識 -4- いきなりですが幾つかアンケート 相 (Phase) といわれてまず何を思い浮かべますか? 上田の場合 : 相転移 (Phase Transition) と聞いてまず頭に思い浮かぶものはなんですか? 上田の場合 : どちらが 2 次の相転移? 気相 液相 固相 強磁性相 超伝導相 etc. 水 ( 液相 ) ( 温度低下 ) 氷 ( 固相 ) (μ: 化学ポテンシャル C : 比熱 T : 温度 ) [ 長岡洋介著 : 岩波基礎物理シリーズ 統計力学より ] 1 次相転移 ( 潜熱が伴う )

相転移を身近に感じるために 実際の世の中はこんなに上手くいきませんが A: 利益 +8 ある飲食チェーン店の純利益 A 相と B 相の境 B: 利益 0 A B : 利益 +1/2 の支店 : 利益ー 1/2 の支店 気温純利益 :AとBとの相の違いを区別する気温 : チェーン店がA 相かB 相の -5- どちらにいるかを決定する外的要因

物理っぽくすると これはよくある話 A: 磁化 +8 B: 磁化 0 M : 磁化 T C : 臨界温度 A B : +1/2 の磁気モーメント : ー 1/2 の磁気モーメント T : 温度磁化 :AとBとの相の違いを区別する温度 : 系がA 相かB 相のどちらの -6- 状態になるかを決める外的要素

-7- 秩序変数と対称性の破れ 秩序変数 : ある相の秩序の度合いを表したもの 磁化 分極 電流 相転移時に秩序変数の対称性が破れる 高温 + と - を入れ替える モーメントの配置の入れ替えに対して秩序変数が不変 無秩序相 磁化 :0 磁化 :0 高温 + と - を入れ替える モーメントの配置の入れ替えに対して秩序変数が変化する 秩序相 磁化 :+8 磁化 : ー 8

-8- 秩序変数と自由エネルギー 2 次相転移の現象論 ( ランダウの理論 ) F(m )=F 0 +A 0 (T -T C )m 2 +Bm 4 (A 0,B >0) F : 自由エネルギー m: 秩序変数 T C : 臨界温度 F の関数形 実際にパラメータを調整しながら確認してみましょう! 磁場 (H ) を加える F(m )=F 0 +A 0 (T -T C )m 2 +Bm 4 +H m 磁場中の磁化 F/ m =0 2A 0 (T-T C )m +4B m 3 = H m = H/{2A 0 (T-T C )} ( 高温側ではm 3 は無視 ) Χ 1/(T-T C ) 臨界点上で発散 低温側でも一次の近似で同様の発散が見られる

-9- 臨界現象 ( お話だけですが ) 二次の相転移の転移点で見られる物理量の異常な振る舞い 磁化率の発散 磁化の揺らぎの発散 ( 臨界揺らぎ ) 不均一な秩序パラメータ 今までの議論空間的に平均化された秩序パラメータ 実際は 空間的に変化している ギンツブルグーランダウ展開 (GL 展開 ) F[m(r )]=a m(r ) 2 dv + b m(r ) 4 dv +c m(r ) 2 dv 不均一な揺らぎを扱う

モデル計算の手順 ( 一例 ) -10- あるモデルの ( ある特定の ) 物性を知るために 厳密解があるかどうか ここまでは計算機の力に頼らなくてもできる 解析的に解ける範囲の摂動論や平均場近似でその性質がわかるかどうか 小さなシステムサイズの計算でよい 厳密対角化法 系にフラストレーションがない ( 負符号問題が発生しない ) モンテカルロ法 一次元系でギャップフル密度行列繰り込み群 他には 摂動論 分子動力学法など

-11- 量子相転移の相境界の捉え方 これまでの数値解析手法 エネルギー励起スペクトル 有限サイズスケーリング (FSS) と現象論的繰り込み群 (PRG) レベルスペクトロスコピー 基底状態の秩序変数 FSS+PRG の特徴 秩序変数のみ利用 2 次転移を想定したFSS の解析手順の確立 のメリットを生かす 秩序変数のサイズ変動応答による転移点決定 転移によらない解析手順

-12- S =1 XXZ 鎖 + D 項の Haldane 相 ハミルトニアン W. Chen, K. Hida, and B.C. Sanctuary, Phys. Rev. B 67, 104401, (2003). 解析手法 厳密対角化手法 (ED) レベルスペクトロスコピー FSS&PRG 相転移 ( ハルデン相周辺 ) ガウシアン転移 イジング転移 BKT 転移 今回の解析 DMRG (OBC)+GSPRG ターゲット

-13-2 次転移の有限サイズスケーリング 境界開放での有限サイズストリング秩序変数 (α=x,z) 臨界指数 有限サイズスケーリング仮説式 秩序変数の対数プロットのサイズ依存性 秩序相 臨界点上 無秩序相

基底状態 (GS)PRG -14- 各サイズでの対数プロットの傾き 転移点上でユニバーサル関数の傾きが一定 GSPRG for ν

-15- Haldane-Large-D 転移 (1/2) 赤 :stably finite, 緑 :rapidly increasing, 青 :rapidly decreasing D c =1.16±0.01 ( 計算条件 :N max = 96,m max =150) ストリング秩序の方向によらない転移点

-16- Haldane-Large-D 転移 (2/2) J z =1.25 ストリング秩序方向によらないν ν(j z =1.25)~1.2 報告値との比較 : Eur. Phys. J. B 35, 465, (2003). Multi-target DMRG (PBC) : J. Phys. Soc. Jpn. 69, 237, (2000). 厳密対角化 (PBC)

Haldane-Neel 転移 (1/2) D=0.5 new data x 成分のみ有効 J zc =1.4905±0.0015-17- ED との整合性の検証 (N 22 by スケールドギャップ PRG) DMRG+GSPRG の評価値へ向かう新たな 3 点 ED+ ギャップのPRGと DMRG+GSPRGは合致

-18- Haldane-Neel 転移 (2/2) D=0.5 イジング転移厳密解 ν=1 ν(d =0.5)=1.006±0.018 cf. ν=1.023±0.009 Eur. Phys. J. B 41, 503, (2004). ベストデータ (N =150, m max =150) J zc (D=0)=1.1860±0.0003 ν= 0.996±0.008 cf. J zc =1.186 ν= 0.987±0.002

-19- Haldane-XY 転移 変曲点 J zi (N, D fix ) に着目 外挿式 :J zi (N, D fix )= J zc (D fix )+an b (a,b は定数 ) J zc (N, D fix =-0.5)=0.00±0.10,η x ~0.25, η z ~1.0

-20- まとめと相図 GSPRG の特徴 基底状態の秩序変数のみ利用 秩序変数のサイズ変動応答による転移点決定 具体的な手順を確立 S =1 XXZ 鎖 + D 項のHaldane 相 転移の種類によらず同一条件のストリング秩序 ストリング秩序の方向によらない転移点および臨界指数