電子データ申請に向けた品質管理サイクルの最適化 ~ プログラミング業務における deja vu からの脱却 ~ 小林千鶴, 平野勝也, 坂井絵理, 北西由武 ( 塩野義製薬株式会社解析センター ) Optimization of quality control cycle toward electronic study data submissions ~ Want to be free from 'deja vu' of programming activity? ~ Chiduru Kobayashi, Katsunari Hirano, Eri Sakai, Yoshitake Kitanishi Biostatistics Department, SHIONOGI&CO.,LTD.
要旨 : Pinnacle21 Community を用いた Define.xml とそれに関連する申請データの作成プロセスを述べる. そこでは SAS マクロを開発し, 業務効率化を図っており, その工夫点と効果も報告する. キーワード : Pinnacle21 Community,Define.xml ver2.0, 品質管理, 業務効率化,SAS マクロ,ADaM データ変換仕様書 2
ついに始まった! 申請時の電子データ提出!! 電子データ提出に対する各当局の動き PMDA: 2016 年 10 月より医薬品申請時に CDISC 標準に準拠した電子データおよびそれに付随する成果物の提出が開始 (2020 年 4 月からは完全移行 ) FDA: 2016 年 12 月 18 日以降に開始される試験では,CDISC 標準に準拠したデータおよびそれに付随する成果物の提出が求められる バリーデーションルールが公開 データセット (SDTM, ADaM), 定義ファイル (define.xml) は各当局のバリーデーションルールに基づいたチェックを行う必要がある PMDA: Reject,Error,Warning の 3 レベル FDA: Error,Warning の 2 レベル 同じルールに対するバリデーションレベルが, 規制当局間で一部異なる 3
* Study Data Reviewer s Guide ** Analysis Data Reviewer's Guide 電子データ提出への申請者側の対応 SDTM,ADaM それぞれに対して, 当局への申請電子データ提出に適合する, データ, データガイド (SDRG*, ADRG**), define.xml を作成 でも 今後, 標準化されたデータを社内でも蓄積 管理することで, そのデータをより発展的な研究へ利活用することが可能 4
*i) Providing Regulatory Submissions in Electronic Format Submissions Under Section 745A(a) of the Federal Food, Drug, and Cosmetic Act ii) Providing Regulatory Submissions in Electronic Format Standardized Study Data iii) STUDY DATA TECHNICAL CONFORMANCE GUIDE シオノギでの CDISC 標準への対応 2013 年 9 月 PMDA_ 次世代審査 相談体制発表 2014 年 FDA_ 電子データ提出と標準化のガイダンス * 発表 2016 年 10 月 PMDA 申請電子データ受け入れ開始 2015 年 4 月 PMDA 実務的通知 / 技術的ガイド発表 第一次標準化対応 CDISC 標準を取り入れた社内標準確立 i. 統合臨床データベースのシステム構築 ii. SDTM 標準化対応 iii. ADaM 標準化対応 2014 年 6 月 PMDA 基本的通知発表 グローバル開発品の増加第二次標準化対応 CDISC 標準へのさらなる準拠を目指した手順再構築 i. 当局への申請電子データ提出に適合する成果物の作成 ii. Global 手順の再構築 5
CDISC 標準への更なる準拠へ!! シオノギの第二次標準化対応 当局への申請電子データ提出に適合した成果物を作成する Global 手順 1. define.xml Ver2.0 の作成を見据えた申請データ作成プロセスの見直し 2. 社内で標準的に使用できる Reviewer s Guide テンプレートの作成 3. QC の観点からの業務プロセスの担保手段 4. フォルダ構造の見直し define.xml 作成手段の検討 ツールの利用 Pinnacle21 Community or Enterprise tsclinical Metadata SAS Clinical Standards Toolkit プログラムの利用 自前で変換プログラムを作成 define.xml 作成プログラムを外注 6
Pinnacle21 Community の機能 (2017 年 7 月現在 ) Validator: SDTM, ADaM, SEND, Define.xml の各当局のバリデーションルールとの比較 Define.xml Generator: SDTM, ADaM, SEND の Define.xml ver2.0 の作成 Data Converter: SAS データセット (XPORT 形式 ) を Excel, CSV, Dataset-XML に変換 ClinicalTrials.gov Miner: ClinicalTrials.gov に登録されている試験の情報を取得する Sheet Study, Datasets, Variables, ValueLevel, WhereClauses, Codelists, Dictionaries, Methods, Comments, Documents Metadata for Pinnacle21 define.xml generator Define.xml 7
プログラミング業務手順検討での悩み ADaM ADaM 1 ADaM Spec. Metadata for Pinnacle21 SAS datasets 2 define.xml generator XPT files for ADaM Define.xml define.xml validator Validation Result 8
Metadata を ADaM データ変換仕様書としてそのまま利用した場合, Specifier*,Programmer,QC 担当者の負担増!! 例えば プログラミング業務手順検討時の悩み 1 Variables sheet * 仕様書作成者 1 変数の情報が多岐のシートに存在 Methods sheet 説明はProgrammerのため Reviewerのため 9
プログラミング業務手順検討時の悩み 2(1/2) define.xml の作成 チェックのプロセスを繰り返した場合, Specifier の負担増!! 無事にMetadataが完成できても 無事にdefine.xmlが作成できても Metadata に問題があると,Pinnacle での define.xml 作成はお手上げ状態 Reject 又は修正すべき Error/Warning が出ることも多々あり 10
プログラミング業務手順検討時の悩み 2(2/2) 品質管理サイクルの最適化 Metadata for Pinnacle21 の作成 Define.xml の作成 Pinnacle 21 によるバリデーション ポイント 2 品質管理サイクルはコンパクトに ポイント1 出口管理は極力避ける 問題あり 品質管理サイクルが大きいと時間と労力がかかる 11
悩みの解決策 : 品質管理サイクルの最適化 SAS マクロを利用したプログラミング業務手順 情報マッピングを自動化 ADaM SAS datasets ADaM XPT files ADaM Spec. 1 Metadata for Pinnacle21 define.xml generator for ADaM Define.xml 2 define.xml validator 早めにチェックを実施 Validation Result 12
SAS マクロの開発 1 ADaM データ変換仕様書から Metadata for Pinnacle21 への情報マッピング 13
ADaM データ変換仕様書と Metadata for Pinnacle21 の各シート ADaM データ変換仕様書 1. Study 2. Datasets + Datasetsts + Comments 3. Variables + Methods + Comments 4. ValueLevel + WhereClauses + Methods + Comments 5. Codelists 6. A_Codelists 7. Dictionaries 8. Documents Metadata for Pinnacle21 1. Study 2. Datasets 3. Variables 4. ValueLevel 5. WhereClauses 6. Codelists 7. Dictionaries 8. Methods 9. Comments 10. Documents 1Specifier が手作業で作成 make_metadata.sas 2SAS マクロによる情報の自動マッピングおよび追加情報付与 14
シオノギ ADaM データ変換仕様書での工夫 例 :Variables シート Datasetsts シートの情報 1 つのシートで複数の情報を管理し, 情報の分散を避ける! Method シートの情報 Comment シートの情報 Method シート + Comment シートの情報 15
make_metadata.sas での Method シート作成プログラム ADaM データ変換仕様書 (Variables シート ) Metadata for Pinnacle21(Variables シート ) Metadata for Pinnacle21(Method シート ) 16
make_metadata.sas での Method シート作成プログラム ADaM データ変換仕様書 (Variables シート ) data _Methods1 ; attrib.. ; set Variables (where= (Method ^= '')) ; ID = upcase( catx( '.', 'M', Dataset, Variable)) ; Name = catx( ' ', 'Algorithm to derive', upcase(variable)) ; Metadata for Pinnacle21(Variables シート ) Type = Method_Type ; Description = Method ; : run; make_metadata.sas Metadata for Pinnacle21(Method シート ) 17
Variables シート ADaM データ変換仕様書では, Variable/ ValueLevel ごとに情報を管理 ValueLevel シート 仕様書作成 / 確認 /QC 時に, シート間の移動を最小限に抑えられる 自動作成により, 新規作成時 修正対応時に担当者のタスク減 + ケアレスミス減に繋がる make_metadata.sas Method シート Comments シート Metadata for Pinnacle21 では, 情報の種類ごとにシートで管理 18
SAS マクロの開発 2 define.xml 作成に必要な情報の 不足 誤りを早期発見 19
Spec. template for ADaM Copy & Edit 適切な define.xml の作成が可能な 仕様書 ver1.0 作成までの流れ ADaM Spec. draft ver. Modify 仕様書の記載次第では, define.xml が作成できなかったケースも... ADaM Metadata for Pinnacle21 ADaM Spec. Ver.1.0 define.xml generator Validator 回数を重ねた場合 Pinnacle21 の操作はユーザーの負荷が多少かかる 設定する項目が多い 20
Spec. template for ADaM Copy & Edit SAS マクロを用いた修正箇所の早期発見 ADaM Spec. draft ver. check_spec.sas Modify check_spec.sas での確認内容 define.xml 作成に必要な情報 Pinnacle21 を用いたバリデーションで検知される一部の Reject/Error/Warning Pinnacle21 では検出できない項目 ADaM Metadata for Pinnacle21 ADaM Spec. Ver.1.0 define.xml generator Validator チェック結果 仕様書修正の判断材料に利用 Pinnacle21 でのバリデーション結果確認時の補助資料として活用 21
SAS マクロ check_spec.sas でチェック 例 : 変数 / データセットラベルでの禁則文字 STUDY DATA TECHNICAL CONFORMANCE GUIDE check_spec.sas if( Variable ^= compress( Variable, "'")) then do; put "[Variables] there is special chracters ('): " Variable=; end; 22
SAS マクロを利用したプログラミング業務手順 ADaM ADaM 1 SAS datasets XPT files ADaM Spec. Metadata for Pinnacle21 define.xml generator for ADaM Define.xml 2 define.xml validator 仕様書から define.xml までの作成プロセスを最適化 Validation Result 23
まとめ 各当局への電子データ申請の開始 申請者側は CDISC 標準に準拠したデータおよびそれに付随する成果物を提出 SAS マクロの開発 ADaM データ変換仕様書および ADaM データから Metadata for Pinnacle21 への情報マッピング define.xml 作成に必要な情報の不足 誤りを早期発見 2 種類の SAS マクロ有効利用による業務プロセス最適化 プログラミング業務における deja vu からの脱却 24
今後の展望 出口管理 < プロセス管理を意識した更なる手順最適化 電子データ申請に向けて CDISC 標準への更なる準拠 CDISC 標準 / 電子データ申請を意識した手順の部内への浸透 CDISC 標準 / 電子データ申請に関する部外への意識付けと啓蒙 Check Spec マクロのパワーアップ Pinnacle21 Enterprise 版との差異 ADaM データと Implementation Guide の整合性 ADaM データと ADaM データ変換仕様の整合性 SDTM からのトレーサビリティ 発展的研究へのデータの利括用 25
参考資料 CDISC. Define-XML-2-0-Specification Version 2.0. Available from: https://www.cdisc.org/standards/transport/define-xml CDISC. ADaM. Available from: https://www.cdisc.org/standards/foundational/adam Pinnacle21. Available from: https://www.pinnacle21.com/ PMDA. バリデーションルール一覧. Available from: https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/pdrugs/0028.html FDA. Study Data Standards Resources. Validator Rules. Available from: https://www.fda.gov/forindustry/datastandards/studydatastandards/ucm2 005545.htm 北西由武, 坂井絵理 (2017). CDISC 標準化のための解析プログラミング業務手順の再構築. PHARMSTAGE 2017 年 3 月号 26