画像解析論(2) 講義内容

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なので A が恒等的に成り立たねばならない また境界条件 より ep c が要求され であるので c となる これより > を踏まえて ただし を得る よって 境界条件を満たす解は ep i t で与えられる 次に 初期条件を満たす解を求める G であることから i であるので として d d i

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s とは何か 2011 年 2 月 5 日目次へ戻る 1 正弦波の微分 y=v m sin ωt を時間 t で微分します V m は正弦波の最大値です 合成関数の微分法を用い y=v m sin u u=ωt と置きますと dy dt dy du du dt d du V m sin u d dt

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画像解析論 画像解析論 東京工業大学長橋宏 主な講義内容 信号処理と画像処理 二次元システムとその表現 二次元システムの特性解析 各種の画像フィルタ

信号処理と画像処理 画像解析論 処理の応答 記憶域 入出力の流れ 信号処理系 実時間性が求められる メモリ容量に対する制限が厳しい オンラインでの対応が厳しく求められる 画像処理系 ある程度の処理時間が許容される 大容量のメモリ使用が容認され易い オフラインでの対応が容認され易い 系の持つ特徴線形性 因果性非線形性 非因果性

信号処理システム t T t T t 入力出力 線形システム :T 線形システムとは を満たす. t T a t a T t a t a T 時不変 空間不変 システムとは を満たす. がに対する出力入力であるとき に対する出力が入力 d d t t t T t t t t t t t 3 画像解析論

画像解析論 次元線形システム /3 f g Of 次元システム O { } 次元線形システムでは O { a f a f } ao{ f } ao{ f } を満たす. ここで 入力 : 出力 : f f dd g O{ f } とおく. : デルタ関数 インパルス関数

画像解析論 次元線形システム /3 5 入力を代入して変形すると g O{ f dd} f O{ f ; dd 次元インパルス応答を表す. } dd ここで ; O は ディラックのデルタ関数 f dd dd f ξ η : 入力座標系 : 出力座標系 入力信号とインパルス応答の 積分を 右式のように表す. g f 畳込み積分

画像解析論 次元線形システム 3/3 6 ; と のみに依存するとき O : インパルス応答によって 空間不変 spac varat システムと呼ぶ. システムの応答 周波数 位相 特性を解析する ことが可能. 離散処理システムでは : j; を離散インパルス応答として g j f j f j; 空間不変な離散システムでは j; j

次元系列とその表現 画像解析論 7..5 3.3 3.5..3..5.3 次元系列 の例 次元系列の図式表現例 ユニットサンプル列 :δ 離散的 それ以外.5.3 次元系列の関数表現例

入力系列次元線形システム 出力系列..5.5.5 3 f 次元線形システムの入出力関係 入力系列 出力系列 次元インパルス応答 j j j j j j 次元システムの例 8 画像解析論

畳込み演算の計算例.5..5..3..8..3..8..3.5.3.5 インパルス応答.5...3..8... 入力系列 :...6..6.6.3....5 と表される 入力 3に対応する出力を 3 と表される.5..3 3.3 3とすると 3.8.. 3.3. 3 画像解析論.8.3.5 9

画像解析論 次元線形システムの連結 / システムの縦続接続 システムの並列接続

画像解析論 次元線形システムの連結 / と の縦続接続例 3 3 3 3 6 6 9 6 3 6 3 演算の回数は?

次元系列の Z 変換 は複素変数 X Z 変換は フーリエ変換と密接な関係 次元系列 の Z 変換 画像解析論 X X Z X Y 変換フーリエ変換畳込み演算とする. 変換 フーリエ変換をのただし 次元系列 X X Z

次元システムの特性解析の振幅特性と位相特性はこれより は のフーリエ変換従って すると と変換をの 次元インパルス応答 A Z と表される. それぞれ A 3 画像解析論

次元システムの例 /3 これより : 力がに対するシステムの出入出力関係入力 と表される. このシステムのインパルス応答は 画像解析論

直線位相位相特性 : 従って 振幅特性 : のフーリエ変換は A 位相特性振幅特性 5 画像解析論

6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 各インパルス応答の Z 変換は 零位相各インパルス応答のフーリエ変換は 振幅特性 次元システムの例 /3 6 画像解析論

7 画像解析論 6 6 6 6 Z 変換すると Z 変換例 前述ののシステム のインパルス応答は

8 画像解析論 のフーリエ変換は 6 6 6 6

Z 変換は 各インパルス応答の s s 各インパルス応答のフーリエ変換は 次元システムの例 3/3 9 画像解析論

分離型システムと表されるとき が 変換のあるシステムのインパルス応答 Z l l l k k k b a l b k a l l k k を縦続接続して構成可能各軸上次元列の 次元システム 画像解析論 このシステムを分離型システムと呼ぶ. ここで とおくと となり それぞれ 軸上 軸上の系列となる.

画像解析論 分離型 次元システムの例 3 3 6 6 9 6 3 6 3 3 3

画像解析論 次元システム 画像フィルタ 6 6 6 6 6 6 6 6 6 次元配列 6 6 6 6 6 6 6 6 6 w w w w M w N w MN 次元インパルス応答画像フィルタマスク配列 画像フィルタ出力 : j M N w [ M / ] j [ N / ] 画像フィルタのマスク配列 空間不変な線形システムの 次元インパルス応答

画像フィルタの特性 画像解析論 3 加重平均フィルタ 6 6 6 6 6 6 6 5 6 3 5 6 6 5 3 5 9 5 3 5 5 3 5 5 5 3 3

次差分フィルタ 画像解析論 微分演算の差分化 例 f f f f 差分処理のマスク表現 f f 線形フィルタ表現 勾配演算子 f = Sobl フィルタ

次差分フィルタ 画像解析論 5 ラプラシアン演算子 f f T f f f ラプラシアンの差分近似 3 3 マスク表現 - -8 近傍 次差分 8 近傍 次差分

差分フィルタの処理例 画像解析論 6 原画像 Sobl 差分画像ラプラシアン画像

ガウスフィルタ 画像解析論 7 次元ガウス関数 : g ; 有限インパルス応答による表現 p ガウス関数による画像のフィルタリング : 画像処理の中でも頻繁に利用される処理の つ f g ; L ; L ; g ; f ガウス関数線形画像フィルタとして構成 ガウスフィルタ ガウス関数は ± で に収束するが 実用上 ±3σ 程度までを考慮すればよい. 有限インパルス応答による表現が可能

ガウスフィルタのカスケード構成 ガウス関数の分離性 k ガウス関数 g インパルス応答 t t; p とおくと ガウスカーネル g ; k ; k ; と表される. ; は分離可能な関数の一種であり その画像 フィルタにおけるインパルス応答 k t; は k t; に対応する g ; 画像解析論 によって カスケード接続での構成が可能. 8 g ; k ; k ; ガウスフィルタ カーネルフィルタ カーネルフィルタ

画像解析論 ガウス核の離散化とマスク表現例 9 ガウスカーネルの線形フィルタマスク表現 8 6 6 8 k; 5 回転 8 6 k; 5 6 8 k ; 5 k ; k ; 5

ガボールフィルタ 複素ガボール関数 b } { } { P v u b a K b r r 正弦搬送波の位相正弦搬送波の空間周波数ガウス関数のピーク位置ガウス関数の回転角度ガウス関数の振幅 各軸のスケールここで : : : : : s s P v u b a K r r 3 画像解析論

p ; r r r b s s r r ここで パラメータの制約による利用形式 ; u v b / / / : A b a K / ta / / : B u v b a K p p v u 3 画像解析論

at t a t p p ; * * A を定義. 形式表現に対して 以下のように ; * ; * ; ; v u v u b v u b はこのとき 次元システムの縦続接続として構成可能. と分離可能な関数となる. ただし は複素数関数. ; * a t ; * u ; * v 3 画像解析論

B 形式表現 ガボールフィルタの例 画像解析論 33 5 5/ 3 5 を変化させた場合 の関数値の変化例

画像解析論 3 ガボールフィルタの利用例 GF- 原画像 put ag GF- GF- D-Gabor Fltr Bak output ags Fatur tracto フィルタ出力画像

画像解析論 35 参考文献 長橋宏 信号画像処理 昭晃堂 998 Javr R. Movlla Tutoral o Gabor Fltrs 996 Op sourc docut GNU Fr Docutato 谷荻高嗣 : ディジタル信号処理の理論 ~3 コロナ社 987 W. K. Pratt : Dgtal Iag Procssg Trd Edto Jo Wl&Sos Ic.