第28回血液部門卒後研修会 症例7

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10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

九州支部卒後研修会症例

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当院の血液検査室の概要 血液検査 system 自動血球分析装置塗抹標本作製装置 La-vietal LS (Sysmex 社 ) XN-3000 (Sysmex 社 ) XN 台 ( RET WPC PLT-F の各チャンネル ) XN 台 SP-10 (Sysmex

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日臨技九州支部血液卒後セミナー 解説 3

入院時検査所見検査所見 WBC /µl RBC /µl Hb 13.4 g/dl Ht 38.4 % MCV 85.7 Fl MCH 29.2 pg MCHC 34.9 % PLT /µl PT-% 63.8 % PT-INR 1.23 APTT

95

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静岡県臨床検査技師会精度管理調査

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1 8 ぜ 表2 入院時検査成績 2 諺齢 APTT ALP 1471U I Fib 274 LDH 2971U 1 AT3 FDP alb 4 2 BUN 16 Cr K4 O Cl g dl O DLST 許 皇磯 二 図1 入院時胸骨骨髄像 低形成で 異常細胞は認め

症例 1

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精度管理調査の目的

第 34 回京阪血液研究会松下記念病院 確定診断が得られなかった MF から移行した血液疾患症例 高知医療センター SRL 検査室 根来利次 筒井敬太 筒井義和 福留由香里 山崎喜美高知医療センター 血液内科上村由樹 今井利 町田拓哉 駒越翔山根春那 橋本幸星

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第 15 回学術部一泊合同研修会 症例検討 臨床化学 事例 1 28 歳 男性 項目 TP ALB CRE UN AST ALT ALP LDH CK 初検 ( 再測定前 ) 測定値 項目 測定値 7.6 CKMB TC Na K Cl 1

CD1 data

精度管理調査の目的

母子感染

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml RNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 氷 MINテイリョウ. 採取容器について 0

59 20 : 50 : : : : : 2 / :20 / 25 GTP /28 5/3 5/4 5/8 6/1 1 7kg 6/9 :178.7cm :68.55kg BMI:21.47 :37.3 :78 / :156/78mmHg 1

(1) ) ) (2) (3) (4) (5) (1) (2) b (3)..

医学教育用基準範囲 JCCLS 共用基準範囲に基づく 医学部学生用基準範囲設定についてのパブリックコメント公募 JCCLS 基準範囲共用化委員会 JCCLS 共用基準範囲は一般的な臨床検査 40 項目の基準範囲であり 日本臨床検査医学会 日本臨床化学会 日本臨床衛生検査技師会 日本検査血液学会の共同

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

063 特発性血小板減少性紫斑病

24 末梢血塗抹標本における低分葉好中球の分類および報告方法について 井本清美 1) 中川浩美 2) 山﨑法子 1) 山﨑哲 1) 聖マリアンナ医科大学病院 1) 広島大学病院 2) Web アンケートを用いた調査研究第 1 回調査報告 目的 先天性または後天性に出現する低分葉成熟好中球の形態学的特

白血病とは 異常な血液細胞がふえ 正常な血液細胞の産生を妨げる病気です 血液のがん 白血病は 血液細胞のもとになる細胞が異常をきたして白血病細胞となり 無秩 序にふえてしまう病気で 血液のがん ともいわれています 白血病細胞が血液をつくる場所である骨髄の中でふえて 正常な血液細胞の産 生を抑えてしま

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Sample2 g/dl Target1 : 6.01 g/dl TP Target2 : 8.39 g/dl

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血液部門精度管理調査 責任者済生会高岡病院 高田哲郎

125 2 P 1st washout 2 PB P mg/dL nd washout 2 P 5.5mg/dL< mg/dL <2.5mg/dL P P 2 D D 3 Ca 10

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血球数算定 ( 血算 ) NTT 東日本関東病院臨床検査部 栗原正博

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/12/28 UP 3+, TP 4.2g/dl, Alb 1.9g/dl PSL 50mg/day 1/17 PSL 45mg/day PSL 2006/4/4 PSL 30mg/day mpsl mpsl1000mg 3 2 5/ :90 / :114/64 mmhg


72 20 Ope / class Alb g/ cm 47.9kg : /min 112/60m

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第 6 回瀬戸内血液研修会のご案内 新年あけましておめでとうございます 皆様お忙しくお過ごしのこととご拝察いたします さて 瀬戸内血液研修会の第 6 回を下記の日程 要綱で行いますのでご案内致します 第 5 回において次回のご案内をしたとおり 骨髄増殖性腫瘍 多発性骨髄腫のテーマで行います 2016

芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍における高頻度の 8q24 再構成 : 細胞形態,MYC 発現, 薬剤感受性との関連 Recurrent 8q24 rearrangement in blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm: association wit

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

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血液内科的データ解釈

日本呼吸器学会雑誌第48巻第6号

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モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の特性と


ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

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2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

1 2 2 ANCA pouci immune IgG C3 ANCA 68 '01 '02 7 UN 14mg/dl, Cr 0.7 mg/dl, -, - ' UN 45mg/dl, Cr 2.4 mg/dl, Ht 29.5%, 4+, cm 61

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イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

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48 表1 主な術前末梢 ll検査値 GPT 311U AFP ALP l8 l IU CA n9 nil 2n9 ml 2U m1 LDII 3361U CA125 Ou lni GOT 211U CEA RBC ALB 3 7g dl Ilb l2 09dl A G 1 42 Ht

がん登録実務について

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基準値一覧 ( 平成 24 年 6 月 1 日 ) 独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床検査科

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遡及調査にて77日前の献血時のHBVウイルス血症が確認できた急性B型肝炎の一例

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2 章 +αの 情 報 に 着 目 する! 1 血 球 算 定 検 査 結 果 2 生 化 学 検 査 結 果 手 がかりに 乏 しいのも+α 1 症 例 をみてみよう! 1 60 吉 見 祐 輔 percutaneous coronary intervention PCI

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白血病治療の最前線

適応疾患

人間ドック結果報告書 1/5 ページ 所属 : 株式会社 ケンコウタロウ健康太郎 様 性別 / 年齢 男性 / 49 歳 生年月日 昭和 40 年 3 月 17 日 受診日 平成 26 年 5 月 2 日 受診コース 人間ドック ( 胃カメラ ) 問診項目 今回前回前々回平成 26 年 5 月 2

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2010 年 6 月 25 表 身体所見 134 cm 31 kg /60 mmhg 83/ ,

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測定方法 測定方法 ( ラット マウス共通 一部の系統でのみ測定されている項目も含む ) 血液学的検査 測定条件 絶食 : 約 16 時間 麻酔 : ネンブタール腹腔内投与 採血部位 : 後大静脈 抗凝固剤 : EDTA-2Na(WBC RBC HGB HCT MCV MCH MCHC PLT) E

骨髄線維症 1. 概要造血幹細胞の異常により骨髄に広汎に線維化をきたす疾患 骨髄の線維化に伴い 造血不全や髄外造血 脾腫を呈する 骨髄増殖性腫瘍のひとつである 2. 疫学本邦での全国調査では 患者数は全国で約 700 人と推定されている 発症年齢の中央値は 66 歳である 男女比は 2:1 と男性に

EBM血液疾患の治療

大項目 2. 骨髄生検にて 大型で過剰に分葉した成熟巨核球を伴った おもに巨核球系細胞の増殖を認める 顆粒球系や赤芽球系細胞の明らかな増殖や 好中球の左方移動は認めない 細網線維の軽度の増加 ( グレード 1) は極めてまれである ET 大項目 2 大項目 3. BCR-ABL 陽性 CML PV

減量・コース投与期間短縮の基準

最初に事後指導項目規定をお示し致します これらは 陰性スメアに対して行っております まず 取り扱い項目は要医療 要治療の 2 項目あります 要医療扱いの細胞所見は 一つ目に 炎症を伴う強度細胞異型の見られるもの 二つ目として 萎縮像に炎症を伴った強度細胞異型の認められるもの 三つ目として 核異型の伴

白血病

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第 28 回血液部門卒後研修会長崎 症例 7 熊本赤十字病院エスアールエル検査室 津田勉 平成 29 年 2 月 18 日 ( 土 )

年齢 性別 78 歳 男性 主訴 特になし 現病歴 HCC( 肝細胞癌 ) 加療後 フォロー中の Pt 近医にて予定されていた CT と採血で受診時 白血球 血小板 LDH 増加を認める 又 画像上脾腫を認めた為 当院血液腫瘍内科にて精査目的で紹介となる 既往歴 HCC( 肝細胞癌 ) 臨床症状 自覚症状なし

LD/ALT=24.2>15 血液腫瘍の可能性大 生化学 その他検査 TP 7.8g/dl Na 137mEq/l ALB 4.0g/dl K 4.6mEq/l T-Bil 0.5mg/dl Cl 102mEq/l AST 25IU/L Ca 8.8mg/dl ALT 14IU/L CRP 定量 0.83mg/dl LD 339IU/L IgG 2487mg/dl ALP 147IU/L IgA 158mg/dl CHE 198IU/L IgM 188mg/dl CK 64U/L Glu 107mg/dl BUN 31.8mg/dl フェリチン 145.9ng/ml CRE AMY Fe UIBC 1.82mg/dl 137IU/L 35μg/dl 188μg/dl BUN/CRE=17.5>10 消化管出血 脱水?

血液検査 WBC 12.42 10 3 /μl Stab 12.0% RBC 4.11 10 6 /μl Seg 43.5% Hb 10.8g/dl Eo 1.0% Ht 32.2% Baso 1.5% MCV 78.3fl Lympho 6.0% MCH 26.3pg Mono 24.5% MCHC 33.5% Meta 8.5% PLT 770 10 3 /μl Myelo 2.5% Ret 2.25% Blast 様 0.5% RPI 1.07 RBC 所見 大小 破砕 偽ヘ ルケ ル核異常

末梢血液像 MG 染色 (200 倍 )

末梢血液像 MG 染色 (1000 倍 ) 1 2 3 1 芽球様細胞 0.5% 2 単球 24.5% 好塩基球 1.5% 3 好中球形態異常 4 血小板増加

データから推測される疾患と追加検査 検査所見 血液検査 WBC PLTの増加 貧血 生化学 LDH BUN CRE AMY IgG CRP 高値 CHE Fe 低値 凝固未検査 血液像所見 白血球系幼若細胞出現 ( 芽球 0.5%) Mono Baso 高値 偽ヘ ルケ ル核異常 赤血球系大小不同 破砕赤血球 血小板系所見なし 予測される診断 骨髄増殖性腫瘍 骨髄異形成症候群 癌の再発 転移 必要な検査 骨髄検査 骨髄像 (MG 染色 特殊染色 ) 病理検査 細胞表面マーカー 染色体検査等

骨髄検査 s i s G r a n u l o p o i e s i s E r y t h r o p o i e Proerythroblast 0.0 Promono 1.0 M.baso 0.0 Mono 14.4 M.poly 0.4 Lympho 2.0 M.ortho 0.0 Plasma 0.2 N.baso 1.4 Histiocyte 0.2 N.poly 9.8 Phagocytes 0.0 N.ortho 1.0 M/E 比 5.52 E Total 12.6 有核細胞数 280,500/μl Myeloblast 2.0 巨核球数 343/μl Promyelo 1.6 Myelo 10.2 所見 Meta 13.0 赤芽球系 顆粒球系 Stab 20.6 所見なし 偽ヘ ルケ ル核異常 Seg 19.8 低顆粒好中球 Immature Eo 0.4 巨核球系 環状核好中球 Eo 0.6 微小巨核球 小型巨核球 Immature Baso 0.2 過分葉巨核球 分離多核巨核球 Baso 1.2 M Total 69.6

骨髄像 MG 染色 (100 倍 )

骨髄像 MG 染色 (1000 倍 )

骨髄像 MG 染色 (1000 倍 )

骨髄像 MG 染色 (1000 倍 )

骨髄像 MG 染色 (1000 倍 )

骨髄像 MG 染色 (1000 倍 ) 小型 多核 過分葉 有尾状等異型を伴い 又 血小板を多数産生している巨核球の増生が目立つ

骨髄像 MG 染色 (1000 倍 ) 単球増加 偽ヘ ルケ ル核異常低顆粒 環状好中球 低顆粒幼若顆粒球 過分葉巨核球 1 過形成, 巨核球増加 脂肪滴減少 2 M/E 比 5.52 顆粒球系過形成 3 単球系細胞増加 4 形態異常 顆粒球系 偽ヘ ルケ ル核異常 低顆粒好中球 低顆粒幼若顆粒球 環状核好中球 巨核球系 微小巨核球 小型巨核球 過分葉巨核球 分離多核巨核球 5 巨核球血小板産生像多数

骨髄像から推測される疾患と追加検査 1 顆粒球過形成 形態異常 芽球増加なし 単球増加 巨核球増加 Baso 軽度増加 CMML acml (CML) 2 骨髄球系に異形成を伴う無効造血を認めると同時に 異形成を有する有効造血を巨核球系に認める MDS/MPN,U 異常クロマチン凝集 1 特殊染色 (PO エステラーゼ ( フ チレート アセテート 二重 ) ALP) 形態診断の補助 2 血清 尿中リゾチーム 単球系白血病の証明 3 染色体検査 G-band 法 CML 否定とその他の異常の有無検索 4BCR-ABL1(FISH) CML 否定 ( 又は肯定 ) 5JAK2 CALR 遺伝子変異解析 遺伝子異常の有無検索

特殊染色を駆使して細胞を鑑別する!! 1.MPO 染色 1AMLとALLの鑑別に必須 2 染色態度の違いにより細胞系統を鑑別 2.EST 染色 1 単球系と顆粒球系細胞の鑑別 (EST-W) 2α-NAEでM6( ~++) M7(+) 3.PAS 染色 1 芽球の陽性染色態度の違いによる白血病細胞の鑑別 2 腫瘍性赤芽球が陽性に染まる事によるAML (M6) と巨赤芽球性貧血との鑑別 3MDSでの異形成の有無 4 腺癌等の腫瘍細胞の骨髄転移の確認 4.ACP 染色 1HCLで例外もあるが反応が強く 酒石酸抵抗性 2リンパ球のsubpopulation(T,B 細胞 ) における染色性の違い 5.Fe 染色 MDS(RARS) における環状鉄芽球の比率 6.ALP 染色 CML PNH t(8;21) MDS 等で低値を示す

少しでも疑問に思ったら必ず特殊染色!!! MG 染色 形態だけでは判断出来ない細胞 細胞化学的検査 ( 特殊染色 ) MG 染色 形態 + 細胞化学的検査 ( 特殊染色 ) 機能 細胞を形態と機能の両面から観察!!!

PO 染色陽性と偽陽性判定ポイント DAB 法 ( ベンチジン誘導体 ) FDA 法 ( フルオレン誘導体 ) 末梢血 PO 染色 陽性細胞に隣接し陰性細胞の細胞質の一部が陽性に見える 背景に顆粒が残り 陰性細胞が背景と同様の染色性を示す

PO 染色弱陽性を見極めるポイント後染色を変える 1 ベンチジン誘導体 末梢血 PO 染色 顆粒が見やすく弱陽性の判定がし易い ベンチジン誘導体の時は後染色をギムザで行うと核の形態観察に適する ベンチジン誘導体の時に後染色をヘマトキシリンで行うと顆粒の観察に適する

PO 染色弱陽性を見極めるポイント後染色を変える 2 フルオレン誘導体 末梢血 PO 染色 顆粒が見やすく弱陽性の判定がし易い フルオレン誘導体は顆粒が青緑色で核も青紫色を呈し同系色の為 見にくい時がある フルオレン誘導体の時に後染色をサフラニンで行うとコントラストがはっきりして陽性顆粒が観察し易い ( 核が赤系 顆粒が青系に染まる )

骨髄像 PO 染色 (DAB 法 )200 倍

骨髄像 PO 染色 (DAB 法 )1000 倍

骨髄像 EST 染色 1000 倍 フ チレート法 アセテート法 組織球 NaF 阻害

骨髄像 EST W 染色 (400 倍 )

末梢血液像 ALP 染色 (200 倍 )

特殊染色所見 PO 染色 EST 染色 ALP 染色 (PB) 顆粒球系 : 陽性 αnb αna 染色 陽性率 (60.5~99.55) 単球系 : 陰性 ~ 弱陽性 単球系 : 陽性 (NaF 阻害 (+)) 陽性指数 (170~335) ASDCA 染色顆粒球系 : 陽性 この症例は PO 染色 : 陰性 20% 弱陽性 23% 中等度 24% 強陽性 33% αnb 染色 : 陽性 31%(NaF 阻害 (+)) 好中球含む ( 一部好中球も NaF 阻害有り ) αna 染色 : 陽性 22%(NaF 阻害 (+)) EST-W:ASDCA57% 陽性 αnb25% 陽性 ALP 染色 (PB): 陽性率 43.0%(60.5~99.5%) 陽性指数 91(170~335) PB 芽球 ( 前単球を含む )0.5%(<5%) BM 芽球 ( 前単球を含む )3.0%(<10%) より 形態診断 FAB 分類 MDS CMML

追加検査 ( 病理 表面マーカー 染色体検査等 ) 生化学的検査 血清リゾチーム166.5μg/mL(5.0~10.2μg/mL) CMML 病理検査 骨髄実質は80% でhypercellular marrow M:E 比 >5 Megakaryocyteは最大 10 個 /HPFと著明に増加し 大小不同と核異形を認める CD3 CD20でリンパ腫を示唆する所見はなく CD34 陽性芽球の優位な増加は認められない MPNが疑われます MPN 表面マーカー(LLACD45ゲーティング) CD13(55.6%),CD14(23.4%),CD33(72.4%),CD34(31.8%),CD56(29.8%),HLA-DR(82.3%) 骨髄 単球系のマーカー発現 (CMML) 染色体検査 (G-band) 46,XY,del(13)(q12q14)[20] MDS ET 等で見られる異常 染色体検査(BCR ABL(FISH)) 100 細胞中 融合シグナル0% CML 否定 JAK2V617F(GTC TTC) 遺伝子変異解析 判定 (-) JAK2V617F 変異なし (CALR 未検索 ) 確定診断 WHO 分類 MDS/MPN CMML-1 FAB 分類 MDS CMML

慢性骨髄単球性白血病 (CMML) の定義 ( 骨髄異形成症候群的から骨髄増殖性腫瘍的性質のものまで病像は多彩 ) JAK2V617F 変異は稀 骨髄増殖性腫瘍 (MPN) と骨髄異形成症候群 (MDS) の特徴を併せ持った 単クローン性の骨髄腫瘍である 1 持続する単球の増加 ( 末梢血において >1 10 9 /L) 2 フィラデルフィア染色体と BCR-ABL1 融合遺伝子がない 3PDGFRA PDGFRB 遺伝子の再構成がない (Eo 増加例では特に除外が必要 ) 4 末梢血 骨髄で芽球が 20% 未満 ( 前単球は芽球として扱う ) 51 系統以上の血球に異形成がある 異形成がない場合 1 骨髄細胞に後天性のクローン性染色体異常や遺伝子異常がある 23ヵ月以上の単球増加が続いており 単球増加の原因 ( 悪性腫瘍 感染 炎症など ) がないこと

慢性骨髄単球性白血病 (CMML) 疫学 病因 男女比 1.5~3:1 で男性に多く 診断は 65~75 歳に多いとされる 病因は明らかではない 一部の症例では環境の発癌物質や放射線が原因の可能性ありと示唆されている 病変部位 末梢血と骨髄は常に異常細胞があり その他に脾臓 肝臓 皮膚とリンパ節が髄外病変として頻度が高い 臨床像 ほとんどの患者で診断時に白血球は増加し 骨髄増殖性腫瘍に類似しているが 一部には様々な程度の好中球減少を伴って白血球数が 正常又はやや減少している例があり MDS に似た病態をとる 末梢血 骨髄の芽球割合によって CMML は 2 つに分けられる CMML-1: 芽球 ( 前単球を含む ) が末梢血で 5% 未満かつ骨髄で 10% 未満 CMML-2: 芽球 ( 前単球を含む ) が末梢血で 5~19% または骨髄で 10~19% 或いは芽球 + 前単球の数にかかわらず芽球にアウエル小体がみられる場合

CMML 異常単球 末梢血液像 MG 染色 (1000 倍 ) 異常単球の形態 一般に成熟し 形態的に著変ないものの 顆粒分布 核分葉や核クロマチンパターンの異常をとり得る 異常単球 芽球と前単球を併せて20% を超えるとCMMLではなく AMLの診断となるので正確なカウントが重要である

異常単球と前単球の鑑別 骨髄像 MG 染色 (1000 倍 ) 異常単球 異常単球 前単球 前単球 異常単球の形態 やや幼若な単球を指すが芽球や前単球と比べるとより成熟しており クロマチンの濃染 核の巻き込みとそれに伴うひだ形成 灰色がかった細胞質を持つ 前単球の形態 単芽球と比べると核に切れ込み等 核形不整がみられ 核網やや繊細緻密 核小体は名残がみられ 細胞質の好塩基性は薄れ 微細なアス ール顆粒を有する

CMML 好中球の異形成 骨髄像 MG 染色 (1000 倍 ) 低顆粒好中球 偽ヘ ルケ ル核異常 環状核好中球 好中球の異形成 白血球減少例や正常例と比べて今回の症例のような増加例では異形成は目立たない 一部の症例では顆粒の減少した好中球と異形成のある単球を区別しづらい

エステラーゼ染色 ( フ チレート法 ) 陽性好中球 骨髄像 EST 染色 1000 倍 組織球 フ チレート法 NaF 阻害 好中球の異形成 フ チレート法で異形を伴う成熟好中球が一部 弱陽性を示した 又 一部は NaF 阻害 (+) α-nb 陽性好中球の出現は異常クローン由来の可能性が示唆される

顆粒球 ( 顆粒減少 ) と異常単球の鑑別 骨髄像 MG 染色 (1000 倍 ) 好中球桿状核球 後骨髄球 異常単球 異常単球 後骨髄球 骨髄球 異常単球 異常単球 異常単球

CMML 巨核球 ( 血小板 ) の増加 JAK2V617F 変異は稀だが見られる事有り 骨髄像 MG 染色 (1000 倍 ) しばしば中等度の血小板減少がある 異形成のある巨大血小板が観察されることがある 今回の症例は血小板の著明な増加を伴っており 形態診断に迷った部分

免疫学的形質 CD13,CD33,CD14,CD68,CD64 を発現している ( 末梢血 骨髄の増加単球は 2 つ以上の異常な形質 ( 異常な免疫学的形質 ) を発現している ) CD2 の異所性発現,CD56 の過剰発現 CD14 発現低下 ( 単球の相対的な未成熟性 ( 幼若単球 ) を反映 ) HLA-DR,CD13,CD15,CD64,CD36 の発現低下 成熟過程の顆粒球系細胞にも形質異常がある CD34 陽性細胞の増加や異常な免疫形質を持つ芽球集団の出現は急性転化を早期に起こす可能性がある 免疫組織化学で最も信頼できるマーカーは CD68R,CD163

遺伝学 20~40% にクローン性の染色体異常が見られ +8,-7/del(7q),12p 異常の頻度が高いが特異的なものはない 40% で RAS の点突然変異が陽性である 単独 isochromosome17 q 異常を伴う血液腫瘍 の一部は CMML の定義に一致するが 多くは MDS/MPN,U とする方がより適切であろう CMML において 11q23 異常は稀で これは CMML より AML を示唆する 染色体転座 t(5;12)(q31-33;p12)/etv6-pdgfrb 融合遺伝子が陽性で 好酸球増加を伴う MDS/MPN 例は 以前は CMML とされていたが 現在は別のカテコ リーに分類されている CMML に類似しても p190bcr-abl1 を発現する例は CML とされるべきである

WHO 分類 2016 改定版 MDS/MPN CMML MDS/MPN CMML 遺伝子変異に関しては高率に検出されている CMMLにおいて最も共通して認められる遺伝子異常 SRSF2 TET2さらに ( あるいは )ASXLで80% 以上の症例で認められる その他 低頻度に認められるものにSETBP1 NRAS/KRAS RUNX1 CBL EZH2がある それらの遺伝子異常は 通常 正常核型を示すCMMLの診断の一助となるが 単独の異常では疾患を証明するものとは言えない なぜならそれらの遺伝子異常は健常な高齢者にも認められ clonal hematopoiesis of indeterminate potential(chip) とも呼ばれている ASKL1 変異はCMMLにおいてアグレッシブな病勢を示唆するため予後スコアリングシステムに取り入れられている 注目すべきは NPM1 変異がCMMLの3 ~5% の症例に見られ よりアグレッシブな臨床経過の前触れと言えそうだ RARS-T が暫定病型から正式な仲間となった MDS/MPN-RS-T

WHO 分類 2016 改定版 MDS/MPN CMML 分子学的異常と臨床経過の関係における新たな発見により CMML は白血球数 13,000/μl 以上の proliferation type と 13,000/μl 未満の dysplastic のサブタイプにわけることの意義が明確となった とりわけ RAS/MAPK 経路が両者で異なっていることが分かっている 又 それに加えて芽球比率が予後と重要な関連があることは 3 版で示唆され 4 版で明確になっている 最近のエビデンスでは芽球比率に基づいて 3 つのグループに分けることがより予後を決定する上で意味があることが示されている 従って以下の 3 つのサブタイプに分類する CMML0:PB 芽球 2% 未満 BM 芽球 5% 未満 CMML1:PB 芽球 2~4% BM 芽球 5~9% CMML2:PB 芽球 5~19% BM 芽球 10~19% 又は Auer rod が認められる 前単球 ( 芽球と同様に扱われる ) と成熟単球を鑑別することの重要性 すなわち形態学的評価が必須であることと同時に フローサイトメトリーによる適切な免疫表現型に関する情報や細胞遺伝学的検査 分子遺伝学的検査が必須である

まとめ 芽球と前単球を併せて 20% を超えると CMML ではなく AML の診断となるので 前単球と異常単球の鑑別が重要 異常単球と低顆粒好中球 ~ 幼若顆粒球等の鑑別が困難な場合 特殊染色と併せて判定していく (α-nb 陽性好中球に注意する ) CMML において JAK2V617F の変異は稀だが認められる事は有り 今回の症例では認められなかったが CALR 等他の遺伝子検査についても実施する必要がある WHO 分類 2016 改定版において CMML の遺伝子変異に関しては高率に検出されている しかし まず 形態学的評価が必須であり 同時に 従来同様フローサイトメトリーによる適切な免疫表現型に関する情報や細胞遺伝学的検査 分子遺伝学的検査で補完していく