熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター 臨床薬理分野平田純生
腎機能って何?
腎臓は何をやっている? 血清中で濾過できるものはすべて濾過し必要なものはすべて再吸収する 不要な物質は尿細管で分泌もされる 不要な老廃物 過剰なミネラルを濃縮して排泄することによって生体の恒常性を保っている 腎不全になれば不要な老廃物 ミネラルの血中濃度が 上昇する 尿素 尿酸 クレアチニン インドキシル硫酸 カリウム リン 何を測定すれば腎臓の機能を正確に評価できる?
心拍出量 5L/min 腎臓の機能 = 生体の恒常性維持 1 血液を無選択にすべて濾過 腎血流 1.0L/min ( 循環血の 20%) 3 不要なものをすべて排泄 尿量 1.5L/ 日 99% の水が尿細管で再吸収 2 必要なものをすべて再吸収 これが腎機能! 原尿産生速度 100mL/min (GFR)
血漿中の主な物質の排泄量 再吸収率 クリアランス 腎臓はグルコースなど必要なものはすべて再吸収し 不要なものはすべて排泄している
イヌリンクリアランス (Cin) は gold standard 体内で代謝されない :CLtotal= 腎 CL 蛋白と結合しない 糸球体で 100% 濾過 イヌリン 輸入細動脈 ボーマン嚢 個人内では産生速度が一定体内で代謝されない :CLtotal= 腎 CL 蛋白と結合しないため100% 糸球体濾過され生理活性がない生体内物質クレアチニン 輸出細動脈 糸球体 糸球体で 100% 濾過 尿細管で分泌されない ヘンレのループ 尿細管でわずかに分泌される 尿細管で再吸収されない Cin 正常値 100mL/min 集合管 尿細管で再吸収されない CCr 正常値 120~130 ml/min
GFR( 糸球体濾過量 ) とは? 静注投与されたイヌリンは全く蛋白結合せず 糸球体で 100% 濾過され 尿細管で再吸収も分泌もされずにそのまま尿中に排泄される そのため濾過されたイヌリン量 = 尿中に排泄されたイヌリン量になるため 血漿 inulin 濃度 GFR = 尿中 inulin 濃度 尿量 / 日 GFR = 尿中 inulin 尿量 / 日血漿 inulin 濃度 GFR は時間あたりに濾過される原尿の産生速度 ( 限外濾過された濾液量 ) であるため腎機能正常者の GFR は GFR = 150L/ 日 6L/ 時間 =100mL/min
腎機能とは? BUN 腎機能が低下すると上昇しますが ごちそうを食べても上がる 脱水になっても消化管出血でも上がるので正確に腎機能を評価できない 血清クレアチニン男性の正常値は0.6~1.2mg/dL 女性の正常値は 0.4~1.0mg/dL 筋肉量の影響を受けるが腎機能が低下すると確実に上昇する 糸球体濾過量 (GFR) 腎臓の最も重要な機能である単位時間当たりの血液を濾過する量で規定した腎機能評価の指標 腎臓は糸球体という場所でごみを濾過している 100mL/min が正常値のため 60mL/min 未満は CKD 成績で 60 点未満は不可と考えると覚えやすいし 評価しやすい BUN/Cr は 10 が正常 20 以上は脱水を疑う
血中濃度 腎機能と腎排泄型薬物の血中濃度の関係 5 4 3 2 尿中排泄率 80~88% の場合尿中排泄率 50~56% の場合 1 0 GFR 100 60-90 30-60 10-30 正常腎機能 軽度腎障害 中等度腎障害 重度腎障害 10> 末期腎障害 尿中排泄率 80~90% と高い薬物では軽度 ~ 中等度腎障害でも 1/2~1/3 に減量する必要があるが 尿中排泄率 50~60% の薬物では中等度 ~ 軽度腎障害でも厳密な減量は必要ない
腎機能低下症例です 処方介入しますか?
腎機能別薬剤投与方法一覧 直近4号分 1,450薬 を1冊にした特別号を2016年1月に発刊 2018年1月には1,500以上の薬剤の情報を載せて発刊予定 370ページ 腎機能別至適投与量, 透析性, 腎障害で禁忌の有無, 薬剤性腎障害の有無, CL, Vd, fe, BA, PBR, t1/2β, 代謝 CYP トランスポータ, 特記事項を掲載
egfr20ml/min の症例の処方 処方介入しますか? 〇 セフカペン錠 100mg 3 錠 1 日 3 回毎食後 200mg/ 日にトラネキサム酸錠 500mg 3 錠 1 日 3 回毎食後 250~500mg/ 日に
egfr20ml/min の症例の処方 処方介入しますか? エナラプリル錠 10mg 1 錠 1 日 1 回朝食後低用量から開始ワルファリン錠 1mg 3 錠 1 日 1 回朝食後 新規処方 ST 合剤 4 錠 1 日 2 回朝夕毎食後 2~4 錠 / 日にロルノキシカム錠 4mg 3 錠 1 日 3 回毎食後スピロノラクトン錠 50mg 1 回 1 錠朝食後 高カリウム血症 ワルファリンの血中濃度上昇 腎機能の読み違え 腎機能悪化
egfr20ml/minの症例の処方処方介入しますか? アロプリノール錠 100mg 1 錠 1 日 1 回朝食後 50mg/ 日コルヒチン錠 0.5mg 1 回 1 錠発作予感時 1 日 8 回までシンバスタチン錠 20mg 1 錠 1 日 1 回朝食後ジゴキシン錠 0.125mg 1 錠 1 日 1 回朝食後ロキソプロフェン錠 60mg 1 回 1/2 錠痛い時 1 日 3 回まで 肝代謝薬物で減量したら効かない 新規処方クラリスロマイシン錠 200mg 2 錠 1 日 2 回朝夕毎食後 200~400mg/ 日 シンバスタチン コルヒチン ジゴキシンの血中濃度上昇
理想体重も体表面積も計算可能日本腎臓病薬物療法学会 http://jsnp.org/egfr/
血清 Cr による 腎機能の判断は もう終わりにしよう
腎機能に何が使われているか? 2012 年仙台市内の開業医向けアンケートでは 23 名の回答者のうち 腎機能の評価に何を使うかとの問いに対し 血清 Cr が 59% egfr36% が CCr は 5%( 腎専門医 ) 処方監査に利用している腎機能評価方法については, 血清 Cr,CG 式 CCr,eGFR の順に多い ( 和泉智, 他 : 日病薬誌第 46 巻 8 号 (989 1008)2010 年 ) ではこの患者の腎機能は正常ですか? 20 歳男性 180cm 70kg 血清 Cr 値 1.2mg/dL 80 歳女性 155cm 50kg 血清 Cr 値 1.2mg/dL
同じ血清 Cr 値 1.2mg/dL でも実際の腎機能は違う (Cockcroft & Gault 法による ) 140 クレ 120 アチ 100 ニン 80 クリ 60 アラ 40 ンス 20 (ml/min) 補正必要 20 歳男性 70kg では 97mL/min 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 血清 Cr 値 80 歳女性 50kg では 29mL/min
年齢別の CKD 頻度 (%) 50 40 高齢者を見たら腎機能低下を疑え! 腎機能が不明のまま腎排泄性ハイリスク薬を投与してはならない! 男性 (n=240.594) GFR(ml/ 分 /1.73 m2 ) 50~59 40~49 <40 頻度 30 20 10 女性 (n=333.430) GFR(ml/ 分 /1.73 m2 ) 50~59 40~49 <40 0 20 ~ 29 30 ~ 39 40 ~ 49 50 ~ 59 60 ~ 69 70 ~ 79 80 ~ ( 歳 ) 年齢 日本腎臓学会編 : CKD 診療ガイド 2012 を改変
146cm 43.5kg の女性を想像してみてください 血清 Cr 値が 0.8mg/dL だったら egfrcreat 39.1mL/min egfrcys 15mL/min CG 式 CCr 35.3mL/min 村上茉愛 19 歳体操五輪代表選手血清 Cr 値 0.8mg/dL 血清 cysc 0.9 mg/l egfrcys 105mL/min egfrcreat 60.2mL/min CG 式 CCr 77.67mL/min 85 歳毎日元気で農作業 血清 Cr 値 0.5mg/dL 血清 cysc 1.2 mg/l egfrcys 49.1mL/min egfrcreat 65.4mL/min CG 式 CCr 56.5mL/min 85 歳長期臥床 経管栄養で43.5kgを保っている血清 Cr 値 0.2mg/dL 血清 cysc 1.6mg/L egfrcys 26.5 ml/min egfrcreat 233.0 ml/min CG 式 CCr 141.2 ml/min
血清クレアチニン値が 4mg/dL だから 透析導入はたいてい血清クレアチニン値 が 8mg/dL 以上になってから 私の血清クレアチニン値は 4mg だから 透析になる患者さんの半分の腎機能が 残っている
推算 CCr(mL/min) 血清 Cr 値 (mg/dl) 血清 Cr 値が急に上昇した? 80 60 40 20 推算 CCr 40 ヶ月 20 ヶ月 血清 Cr 値 血清 Cr 値 8mg/dL 以上 ( 透析導入ライン ) 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0 10 ヶ月 0 10 20 30 40 50 60 70 時間推移 ( 月 ) 170cm 体重 63kg 発症当時 50 歳の男性を想定し CG 法によって推算 CCr を算出した
CKD の重症度分類 (CKD 診療ガイド 2012)
血清 Cr 値を基に した腎機能推算式 の問題点
ダビガトランによる中毒性副作用症例 80 歳代女性で ワルファリンカリウムから切り替えを行い 1 日 220mg/ 日を投与 投与開始から 12 日目で血痰 鼻出血を認め 15 日目 ( 投与中止日 ) に血痰 呼吸困難を認め 救急外来に搬送され 翌日に死亡している 発症した副作用は 肺胞出血 呼吸不全 鼻出血 喀血 貧血 血尿 タール便 臨床検査値は 血清 Cr が投与開始 50 日前に 2.21mg/dL 投与中止日は 4.2mg/dL BUN は投与中止日に 53.8mg/dL ダビガトランの尿中排泄率は 85% と高く 70 歳以上の患者では 1 回 110mg を 1 日 2 回を考慮する 本症例は 38.9kg の体重だが 85 歳と仮定すると 血清 Cr2.21mg/dL であれば CCr は 11.4mL/min なので明らかに投与禁忌の症例 Cockcroft & Gault 法推算 CCr(mL/min)= (140 年齢 ) 体重 (kg) 0.85( 女性 ) 72 血清 Cr(mg/dL) 安全性速報 : プラザキサによる重篤な出血について. 2011 年 8 月, 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社より引用
ダビガトランの添付文書からわかること 尿中排泄率 : 85% Cockcroft & Gault 法による推算 CCr を用いて腎機能を評価する 推算 CCr(mL/min)= (140 年齢 ) 体重 (kg) 0.85( 女性 ) 72 血清 Cr(mg/dL) 透析患者を含む高度の腎障害 (CCr<30) では腎排泄性であり 出血の危険性が増大するため禁忌 常用量は 1 回 150mg を 1 日 2 回 ただし中等度の腎障害患者 ( CCr30-50 ) 70 歳以上の患者では 1 回 110mg を 1 日 2 回を考慮する 過量投与により出血死を起こすハイリスク薬!
体重と CCr GFR の関係 85 歳女性血清 Cr 値 1.0mg/dL 身長 150cm の場合 50 50 eccr (ml/min) 40 40 egfr (ml/min/1.73m 2 ) egfr (ml/min) 30 30 ダビガトラン禁忌領域 30 40 50 60 70 80 体重 (kg) 本症例の体重が 30~40kg であれば CG 式による CCr ではダビガトランは禁忌のはずだが 50kg 以上であれば投与可能になるが 出血のリスクも増大する
患者個々の腎機能を正確に予測するには 標準化eGFR推算式 Cr 年齢 性別 egfr ml/min/1.73m2 =194 Cr-1.094 Age-0.287 0.739 (女性) Cr 年齢 性別 体重 Cockcroft & Gault 法 推算CCr ml/min = 140 年齢 体重 kg 0.85 女性 72 血清Cr mg/dl ただし 体表面積 m2 = 体重 kg 0.425 身長 cm 0.725 0.007184 Du Bois D, Du Bois EF; Nutrition, 5(5), 303-313, 1989 未補正GFR推算式 ml/min Cr 年齢 性別 体重 身長 標準化eGFRはCKDの診断指標であり薬物投与設計には使えない 推算CCrは肥満患者で過大評価し 高齢者で過小評価する
血清クレアチニンの高い人 低い人 SCr7mg/dL SCr1.2mg/dL SCr0.7mg/dL 長期臥床高齢者 SCr0.2mg/dL 長期経管栄養患者は?
egfr の弱点は痩せ た高齢者の腎機能を 過大評価すること
小柄な高齢者には egfr は要注意 有料老人ホームに長期入居の男性 年齢 90 歳 体重 37.7kg 身長 150cm 血清 Cr 0.34mg/dL BUN 15.1mg/dL 血清アルブミン 1.7g/dL の MRSA 敗血症患者に対し バンコマイシンの投与設計を行った場合 1 日本人向け GFR 推算式によると egfr (ml/min/1.73m 2 )=194 Cr -1.094 Age -0.287 =173.6mL/min/1.73m 2 のような高値が算出されるが 上記 egfr の値の単位は ml/min/1.73m 2 であり 体表面積補正されているため Du Bois の式を用いて体表面積補正を外すと BSA(m 2 )= 体重 (kg) 0.425 身長 (cm) 0.725 0.007184=1.27m 2 となり 173.6mL/min/1.73m 2 を 1.27m 2 で割ると 127.4mL/min となり バンコマイシンの目標トラフ濃度を 15μg/mL に設定しても 実測血清バンコマイシンのトラフ濃度は 28μg/mL と高値になり バンコマイシンによる腎障害により 血清 Cr 値が 7.6mg/dL に上昇し透析導入が必要となった
バンコマイシン腎症の悪循環 高齢者 最低濃度を 10μg/mL 未満を目標に 長期臥床 フレイル血清 Cr 低下 免疫能低下 MRSA 低感受性株の増加 院内感染 最低濃度を 10~20μg/mL を目標に 腎機能の過大評価 ハ ンコマイシンの投与量増加 介入可能 腎障害が増加? 腎機能の低下 VCM 濃度がさらに上昇
小柄な高齢者は egfr が高く推算されることがある MRSA 感染症に罹患しやすい症例は長期臥床の筋肉量が少ない高齢者が多い バンコマイシンの投与設計ではこのような症例では過量投与になる危険性がある
egfr および CCr 推算式の問題点 血清クレアチニン値 0.6mg/dL 未満の高齢者では egfr または推算 CCr が大きな値になりがちである もともと egfr または推算 CCr ともに高齢者や小児には適応しにくい式であり 腎機能がよくて血清 Cr 値が低いのか? 栄養状態が悪くて血清 Cr 値が低いのか? 上記の見極めは数値のみでは困難であり 症例ごとに対応していくしかない 血清 Cr 値が 0.6mg/dL 未満であり 明らかに筋肉量の減少した症例では血清 Cr 値 0.6 を代入して補正するとほとんどの場合 予測精度が向上するが 可能な限り実測 CCr 値 0.715 またはシスタチン C により egfr を算出して投与設計する
イヌリンクリアランス測定プロトコール 1% イヌリン投与開始 投与前 300mL/hr 100mL/hr 30 分 45 分 60 分 75 分 90 分 105 分 120 分 飲水 500mL 飲水 180mL 採血 1 完全排尿 採血 2 採尿 1 1) 投与前に飲水 500mL 2) 希釈したイヌリンを静脈内注入する 輸液ポンプを用いて 開始 30 分は 300mL/hr その後は 100mL/hr で 90 分間投与する 3)60 分蓄尿を目安に尿意があった時点で採尿 採尿時に採血 4) 蓄尿時間を正確に記録
CG 式作成に用いられた 249 名の年齢 腎機能と血清 Cr 値 年齢の範囲平均年齢 n 平均血清 Cr 濃度 (mg/dl) 平均実測 CCr (ml/min) 平均 Cr 排泄量 (mg/kg/24hr±sd) 18-29 24.6 22 0.99 114.9 23.6±5.0 30-39 34.6 21 1.08 98.6 20.4±5.1 40-49 46.2 28 1.17 95.4 19.2±5.8 50-59 54.4 66 SCr 1.49 は上がらずCCr 77.9 は低下 16.9±4.6 60-69 64.6 53 1.39 57.6 15.2±4.0 70-79 74.4 42 1.78 38.6 12.6±3.5 80-92 85.1 17 1.39 37.4 12.1±4.1 推算 CCr(mL/min)= (140 年齢 ) 体重 (kg) 0.85( 女性 ) 72 血清 Cr(mg/dL) Cockcroft DW, Gault MH: Nephron 16: 31-41, 1976 より引用
虚弱 (Frailty) Fried らは, 身体的な特徴に基づいて, 簡便に特定できる虚弱の表現型を定義した. すなわち, 意図しない体重の減少, 疲労, 衰弱, 歩行速度の低下, および身体活動の減少などの特徴のうち 3 つ以上を有することで虚弱を定義した. Fried LP, et al: Frailty in olderadults: evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2001; 56: M146-156. サルコペニアの診断基準 1. 筋肉量の低下 最重要 2. 筋力の低下 その他の基準 3. 身体能力の低下 その他の基準 サルコペニアは身体的な障害と健康障害の状態につながる. つまり, 運動障害, 転倒 骨折の危険性の増大, 日常生活の活動能力 (ADL) の低下, 身体障害, 自立性の喪失, および死亡する危険性の増大である European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)
予備能力 フレイル (Frailty) は介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が含まれる ( 老年医学会のステートメント ) Aging ( 加齢 ) フレイル サルコペニア 疾患 ストレス No Frailty ( 健康 ) Frailty ( 虚弱 ) 健康寿命 要支援 要介護の危険が高い状態 生物学的寿命 Disability ( 身体機能障害 ) 要支援 要介護状態 看取り 出典 : 長寿医療研究センター病院レター第 49 号虚弱 ( フレイル ) の評価を診療の中に http://www.ncgg.go.jp/hospital/pdf/news/hospitalletter49.pdf
フレイルサイクル 加齢に伴う食欲不振 歯の喪失 食事量低下 慢性的な低栄養 サルコペニア 加齢に伴う筋肉量低下 疾患 エネルギー消費量低下 筋力低下 活動量低下 身体機能低下 Fried L.P et al: J Gerontology 56: M146-157, 2001 を改変
年齢とサルコペニアの割合 70 歳以下の高齢者の 13-24% 男性 女性 60 割 合 ( % ) 50 40 30 20 10 0 70 以下 70 ~ 74 75 ~ 80 80 以上 年齢 ( 歳 ) Baumgartner RN, et al. Am J Epidemiol 147 : 755-763, 1998
血清 Cr 値を基に した腎機能推算式 の問題点
体重と CCr GFR の関係 85 歳女性血清 Cr 値 1.0mg/dL 身長 150cm の場合 eccr (ml/min) 50 40 50 40 egfr (ml/min/1.73m 2 ) egfr (ml/min) 30 30 ダビガトラン禁忌領域 30 40 50 60 70 80 体重 (kg) 標準化 egfrはckdの診断指標であり薬物投与設計には使えない 推算 CCrは肥満患者で過大評価する
年齢と eccr egfr の関係体重 40kg の女性血清 Cr 値 1.0mg/dL 身長 150cm の場合 CG 式による eccr (ml/min) 50 40 50 40 egfr (ml/min/1.73m 2 ) egfr (ml/min) 30 30 20 ティーエスワンダビガトラン禁忌領域 30 40 50 60 70 80 年齢 egfrはやせた高齢者の腎機能を過大評価する
クレアチンとクレアチニンの関係 クレアチン 主に骨格筋に貯蔵平均約 100g/body だが筋肉量に比例する 筋肉 クレアチニン 1 日約 1g が尿中に排泄 約 1% 合成 Cr は骨格筋由来で尿中に排泄されなかった最終代謝産物 ( 老廃物 ) の血清 Cr 値として測定腎機能評価に用いている
血清シスタチン C と 血清クレアチニン値の反応性 (mg/dl mg/l) 15 血清シスタチン C 濃度 (mg/l) 血清クレアチニン値 (mg/dl) 血清濃度 10 血清シスタチン C はクレアチニンよりも早期に上昇する 5 血清 Cr 値のブラインド領域 血清シスタチン C 値のブラインド領域 0 0 30 60 90 120 GFR (ml/ 分 /1.73m2)
シスタチン C の利点 シスタチン C は分子量 13,000Da の低分子蛋白で全身の有核細胞から常に同じ速度で産生される 血中のシスタチン C は腎糸球体から 100% 濾過され 近位尿細管で 99% 以上が再吸収されてアミノ酸に異化され シスタチン C として血中には戻らないため血漿濃度は GFR と相関する クレアチニンのように筋肉量や性差はなく年齢 食事 運動による影響も小さい 血清濃度は 0.5-1.0mg/L で約 10 倍で血清 Cr 値に近似し GFR のマーカーになり 尿中濃度は尿細管再吸収障害のマーカーになる 男性で 1mg/L 女性で 0.85mg/L 以上では異常 クレアチニンに比し腎機能低下の初期から上昇するため早期腎機能障害が診断できる 24 時間蓄尿も不要で血清 0.3mL で測定可能
Tanaka A, et al: J Pharmacol Sci 2007; 105: 1-5 より引用 血清クレアチニン値およびシスタチン C 濃度の加齢に伴う変化 *:p<0.01(tukey s test) (mg/dl) 血清クレアチニン値 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 (mg/l) 血清シスタチン C 値 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 * * 0 <65 (n=50) 65~80 (n=55) 80< (n=50) 0 <65 (n=50) 65~80 (n=55) 80< (n=50) 年齢 年齢
血清クレアチニン値およびシスタチン C による実測バンコマイシン濃度と予測バンコマイシン濃度の相関性 Tanaka A, et al: J Pharmacol Sci 2007; 105: 1-5 より引用
血清 Cr 値を基に した腎機能推算式 と薬物投与設計
薬物投与設計時に使う腎機能検査は? 1イヌリン投与による実測 GFR(Cin) 21 日蓄尿による実測 CCr 3CG 式による推算 CCr 4eGFR(mL/min/1.73m 2 ) 5eGFR(mL/min) 6 血清 Cr 値 7 血清 Cr 値 +0.2から算出した推算 CCr 8 血清シスタチンC 値
薬物投与設計時に使う腎機能検査は? 1 イヌリン投与による実測 GFR(Cin) 21 日蓄尿による実測 CCr 3CG 式による推算 CCr 4eGFR(mL/min/1.73m 2 ) 5eGFR(mL/min) 6 血清 Cr 値 7 血清 Cr 値 +0.2 から算出した推算 CCr 8 血清シスタチン C 値 手技が煩雑なため実際的でない 正確な蓄尿ができていれば非常に有用 体重 年齢の影響を受けることに配慮痩せた患者や院内感染時には有用? CKD の診断指標に用いる薬物投与設計では用いない 痩せた患者では過大評価する弱点があるが推算式としては最も優れている egfr30~40 まで上昇しにくい CKD ステージ 4~5 では有用 欧米の添付文書の読み替えには適してる? CKD ステージ 2~3 の軽度から有用筋肉量の影響を受けないが ステージ 5 では血清 Cr 値で十分
薬物投与設計時に使う腎機能検査は? 1 イヌリン投与による実測 GFR(Cin) 21 日蓄尿による実測 CCr 3CG 式による推算 CCr 4eGFR(mL/min/1.73m 2 ) 手技が煩雑なため実際的でない 正確な蓄尿ができていれば非常に有用 体重 年齢の影響を受けることに配慮痩せた患者や院内感染時には有用? 薬物投与設計時の腎機能の見方の鉄則 : CKDの診断指標に用いる薬物投与設計では用いない 薬物投与設計時にeGFRは体表面積未補正値 (ml/min) 5eGFR(mL/min) を用いる ただし抗菌薬 抗がん薬のように腎機能別投与 6 量が血清 mg/kg Cr 値 mg/m 2 に設定されている場合には体表面積未補正 egfr(ml/min/1.73m 2 ) を用いる 欧米の添付文書の 7 痩せた患者 腎機能の変動しやすい症例では血清 Cr 値 +0.2から算出した推算 CCr Cr 値を用いた推算式では正確に予測できないので実測 CCr 8 0.715 血清シスタチンかシスタチンC C値によるeGFR 算出が有効 痩せた患者では過大評価する弱点があるが推算式としては最も優れている egfr30~40まで上昇しにくい CKDステージ4~5では有用 読み替えには適してる? CKDステージ2~3の軽度から有用筋肉量の影響を受けないが ステージ5では血清 Cr 値で十分
熊本 PK-PD 研究会 と CKD シール
透析導入患者数 ( 人口 100 万対 ) 平均 SD 最大最小 266.7 42.7 366.8 192.1 低 - 高 ;1-9 位 ;10-19 位 ;20-29 位 ;30-39 位 ;40-47 位 57 Year, Legal owner JSDT, 2001
熊本日々新聞 7 月 3 日, 2009 熊本市は透析導入率が最も高い 2007 年でも 2,963 人 /10 万人全国では 2,279 人 /10 万人 (2010 年 )
2010 都道府県別で熊本の割合が全国 1 位 熊本市は 09 年度から CKD 対策を開始 市内の医療 保健 福祉関係団体や市民グループ 企業など約 80 団体で CKD 対策推進会議 を発足させた 2008 年に富合町 2010 年に城南町 植木町が編入されたがこれらの地域には透析施設はない 熊本市の年間新規透析導入患者数の推移 全国の導入患者数熊本市の新規導入患者数熊本 ( 人 ) 全国 ( 人 ) 310 39,020 300 37,760 290 36,500 280 35,240 270 33,980 260 32,720 250 31,460 240 30,200 230 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 CKD 対策推進会議の発足 28,940
2010 都道府県別で熊本の割合が全国 1 位 熊本市は 09 年度から CKD 対策を開始 市内の医療 保健 福祉関係団体や市民グループ 企業など約 80 団体で CKD 対策推進会議 を発足させた 2008 年に富合町 2010 年に城南町 植木町が編入されたがこれらの地域には透析施設はない 熊本市の年間新規透析導入患者数の推移 全国の導入患者数熊本市の新規導入患者数熊本 ( 人 ) 全国 ( 人 ) 310 39,020 300 37,760 290 36,500 280 35,240 270 33,980 260 32,720 250 31,460 240 30,200 230 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 CKD 対策推進会議の発足 28,940
処方せん熊本 PK-PD 研究会 ( この処方せんは どの保険薬局でも有効です ) 公費負担者番号保険者番号 1 2 3 4 5 6 7 8 公費負担医療の受給者番号 被保険者証 被保険者手帳の記号 番号 0123-456 患 氏 名 肥後花子 保険医療機関の所在地及び名称 熊本市大江本町 5-1 熊薬内科 生年月日昭和 29 年 7 月 8 日女 電話番号 096-371-4856 者区分交付年月日 被保険者被扶養者 * 平成 21 年 10 月 9 日 保険医氏名 処方せんの使用期限 熊薬太郎 平成年月日 ( 熊薬 特に記載のある場合を除き 交付の日を含めて 4 日以内に保険薬局に提出すること ) 1) ジゴシン 0.25mg 1 錠 処 1 日 1 回朝食後 30 日分 2) ワソラン錠 40mg 6 錠 1 日 3 回毎食後 30 日分 3) サンリズムカプセル 50mg 3 カプセル 方 1 日 3 回毎食後 30 日分 以下余白 備 考 egfr 30mL/min/1.73m 2 後発医薬品 ( ジェネリック医薬品 ) への変更が全て不可の場合 以下に署名又は記名 押印保険医署名 調剤済年月日平成 21 年 10 月 9 日公費負担者番号 保険薬局の所在地及び名称保険薬剤師氏名 862-09273 熊本市大江本町 5-1 熊大薬局大江花子 公費負担医療の受給者番号
平田の腎機能 2015:eGFR 67.6mL/min/1.73m 2 2016:eGFR 59.6 ml/min/1.73m 2
1eGFR CCr で ml/min/1.73m 2 は CKD 重症度分類のために使う 薬物投与設計には ml/min を使う ただし抗菌薬 抗がん薬などで投与量が mg/kg や mg/m 2 となっている場合には ml/min/1.73m 2 を使う egfr(ml/min/1.73m 2 ) は CKD の重症度分類の指標
2 添付文書記載の腎機能として記載 されている CCr は GFR と判断すべき ハイリスク薬では CCr を使わない 添付文書記載の腎機能として記載されている CCr はほとんど Jaffe 法による血清 Cr 値測定による CCr Jaffe は GFR と近似するため 薬物投与設計時の患者の腎機能は酵素法による CCr は用いず egfr(ml/min) を使うか CG 式の血清 Cr に患者の ( 血清 Cr+0.2) を代入して求めた CG 式 CCr を使う Jaffe 法では血清 Cr 値が 20~30% 高値に測定される CCr は GFR よりも 20~30% 高値 添付文書の CCr GFR
③肥満患者のCG式CCr算出のための 体重は補正体重または理想体重を用いる 私ってCG式CCr が300mL/min アミカシンは3g/日 使ってね egfrcysでもよい 理想体重 男性 =50+ 2.3 身長 152.4 /2.54 理想体重 女性 =45.5+ 2.3 身長 152.4 /2.54 補正体重 kg 理想体重 0.4 実測体重 理想体重
5 血清 Cr 値による CG 式 CCr, egfr は やせた患者では過大評価してしまう 特に egfr で顕著である そのため後期高齢者や院内感染 がん末期などのフレイル症例には egfr よりも CG 式 CCr が適していることがある この症例の egfr は 180mL/min?
6 血清 Cr 値が0.6mg/dL 未満の高齢フレイル症例の腎機能推算式には血清 Cr 値として 0.6mg/dLを代入すると予測性が高くなることが多い ただし 医療者自身の目で症例の体格と活動性を確認すること 85 歳毎日元気で農作業 85 歳長期臥床 経管栄養で 43.5kg を保っている
各地の 腎と薬剤研究会 の分布 ( 山口のみ腎臓病薬物療法研究会 ) 医原病である腎排泄性薬物による中毒性副作用 薬剤性腎障害をなくすために CKD 患者の心血管病変を防ぐために透析患者を減らすために 21 13 10 22 2 7 15 20 23 4 17 11 8 9 1 18 5 14 19 6 16 12 3 日本腎と薬剤研究会 日本腎臓病薬物療法学会 11999 関西 22002 北部九州 32005 北海道 42006 広島 52006 中部 62006 東京 72006 熊本 82006 香川 92007 徳島 102009 長崎 112010 愛媛 122011 宮城 132011 福岡 142012 群馬 152013 山口 162013 神奈川 172013 広島備北 182013 三泗鈴 192014 静岡 202015 大分 21 2015 佐賀 22 2016 鹿児島 23 2017 宮崎
腎機能の見誤りによって ダビガトランによる出血 TS-1による骨髄抑制カルボプラチンによる血小板減少 ピルシカイニドによる心停止 グリメピリド グリベンクラミドによる重症低血糖 バンコマイシンによる腎障害から透析導入