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報告書

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(2) 牛群として利活用 MUNを利用することで 牛群全体の飼料設計を検討することができます ( 図 2) 上述したようにMUN は 乳蛋白質率と大きな関係があるため 一般に乳蛋白質率とあわせて利用します ただし MUNは地域の粗飼料基盤によって大きく変化します 例えば グラスサイレージとトウモコシ

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負荷試験 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時 )

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

Transcription:

牧場実習 2012 ( 生体機構学 ) 京都大学大学院農学研究科 久米新一

牛の体温 牛では温度が変化しにくい深部温 ( 直腸温 ) を利用 ( 皮膚温は変わりやすい ) 体温は熱発生量と熱放散量の関係 体温は変動要因 ( 個体差 環境温度 飼料 日内変動など ) が多いが 健康状態を反映 簡易な分娩予知法 : 分娩前の体温の低下 (0.5 程度 ) を利用 ( 発情時には上昇 ) マイクロロボットで膣温が測定できないか

分娩前の牛の膣温の変動 ( 青木ら Anim.Sci.J.77:290-299, 2006)

体温 ( ) グルコース (mg/dl) 図 乳牛の直腸温の 分娩前後における日内変動 70 39 38 8:30 10:00 15:30 17:00-7 0 7 分娩前後 ( 日 ) 60 50-7 0 7 分娩前後 ( 日 )

高温時の生理機能 ( 体温の上昇 )

気温 ( ) 日本 (1970-2000 年 ) の 平均気温と最高気温 30 20 10 0 札幌東京京都熊本札幌 ( 高 ) 東京 ( 高 ) 京都 ( 高 ) 熊本 ( 高 ) -10 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 月

夏季の高温多湿と生理 繁殖機能 夏季の繁殖成績低下 ( 暑熱ストレスの影響 ) 衛生管理の不備 発情の見落とし 暑熱による繁殖機能 内分泌機能や免疫機能の減退 栄養管理の不備による繁殖機能の減退 高泌乳牛では飼料摂取量の増加に伴って 体内からの熱発生量が従来よりも増加したが 夏季には温度が高いために熱放散量が増えない : 体温の急上昇が繁殖成績に悪影響を及ぼす ( 受胎率低下 胚死滅など )

エネルギー (MJ/ 日 ) 維持量のサイレージ給与牛の エネルギーの分配 (HP: 熱発生量 ) 160 120 80 蓄積 HP メタン尿糞 40 0 オーチャート ク ラスアルファルファコーン TDN(%) 67.8 62.7 74.5 代謝率 (%) 52.8 51.7 59.6 HP(MJ/ 日 ) 85.2 71.6 76.0

体温 ( ) 呼吸数 ( 回 / 分 ) 図 乾乳牛と泌乳牛の直腸温 呼吸数 ( 栗原ら 1995) 40 乾乳牛泌乳牛 80 乾乳牛泌乳牛 60 39 40 38 18 26 30 20 18 26 30 温度 温度 乾乳牛は 32 に設定

表 妊娠牛の分娩前の直腸温 ( 分娩 4 週間前から分娩時まで給与 ) 夏季 秋季 M MP HMP M MP HMP 例数 4 8 4 4 8 4 妊娠期間 日 284 281 281 285 282 283 体重 kg 663 664 679 560 651 665 増体率,kg/ 日 0.21 0.17 1.35 0.17 0.79 0.80 DMI kg/ 日 6.09 8.50 10.4 6.04 8.63 10.3 体温 (8:30), 38.99 38.77 38.74 38.45 38.70 38.81 体温 (15:30), 39.62 39.33 39.23 39.00 39.20 39.43

Ì i j Ì i j 図 夏季及び冬季分娩牛の 直腸温 (15:30) の変動 40 39.5 M MP HMP 40 39.5 39 39 38.5-15 -10-5 0 Ä G ª Ø O i ú j 38.5-15 -10-5 0 ~ G ª Ø O i ú j

ÞÙº ½ i mg/dlj V b _ i meq/lj 図 乳牛の血漿中成分の変動 100 MP-hot HMP-hot MP-cool HMP-cool 0.8 0.6 75 0.4 0.2 50-21 -14-7 0 7 ª Ø O ã i ú j 0-21 -14-7 0 7 ª Ø O ã i ú j

夏季分娩牛の直腸温の変動

冬季分娩牛の直腸温の変動

初産牛と経産牛の直腸温

黒毛和種繁殖雌牛の体温 気温 須知東部観測局の農業気象観測システムで測定 サンプル採集日の午前 6 時の気温 相対湿度を示す air temperature ( ) humidity (%) 8.1 24.7 80 6:00 a.m. 9.12 20.7 80 10.31 6.6 94 11.28 12.0 90

材料と方法 動物 京大付属牧場で飼育した黒毛和種繁殖用雌牛 一頭につき毎日サイレージ 7kg ふすま 3kg を給与 水は自由摂取 8/1 に 6 頭 9/12 に 5 頭 10/31 に 6 頭 11/28 に 7 頭選んでサンプル採集を行った

体温 呼吸数 尿量 体重 8 月 1 日 9 月 12 日 1 0 月 3 1 11 月 28 日平均値 SEM 平均値 SEM 平均値 SEM 平均値 SEM 体温 ( ) 38.28 a 0.09 37.96 bc 0.10 37.88 c 0.09 38.16 ab 0.08 呼吸数 ( 回 / 分 ) 26.83 a 1.58 18.20 b 1.73 16.17 b 1.58 17.00 b 1.46 尿量 (L/day) 11.35 a 1.79 10.68 a 1.97 7.34 a 1.79 8.90 a 1.66 体重 (kg) 409.67 a 21.60 449.60 a 23.66 460.67 a 21.60 454.00 a 19.99 a, b, c Means within the same row followed by different superscript letters differ (P<0.05).

1 頭当たりの乳量 :1 万 kg 帯広の酪農家

冬の帯広 (-18 )

帯広の酪農家飼養頭数 :900 頭 出荷乳量 :6,000t ( ロータリーパーラー :3 回搾乳 ) 水槽 : 1 日 2 回洗浄 ( フリーバーン )

乳牛の搾乳 : ロータリーパーラー

根室

酪農家の牛舎 ( フリーストール )

分娩前の乳牛

泌乳牛 ( 飼料給与 )

水と塩

周産期病の発生要因は? 周産期 ( 移行期 ) の特徴 高泌乳牛と周産期病 周産期の体内代謝の変化

% 乳牛の除籍理由 ( 牛群検定成績 : 平成 21 年 ) 30 25 20 15 10 北海道 都府県 5 0 乳用売却低能力繁殖障害疾病乳器障害死亡 北海道都府県 肢蹄故障 10.3 1 消化器病 2.3 0.6 起立不能 4.1 0.8 乳房炎 15.8 1.7

分娩前後の DMI 減少 ビタミン 微量ミネラル 抗酸化物質の不足 高 DCAD 低 Mg 飼料 負のエネルギー タンハ ク質バランス NEFA 増加 免疫能低下 低 Ca 血症筋収縮減退 跛行 ルーメンアシドーシス ケトーシス 脂肪肝 周産期病の発症要因 飼料中有効繊維の不足 乳房炎 胎盤停滞 子宮炎 第 4 胃変位 乳熱 Goff(2006)

乳量 (kg) 図 乳量増加と乳牛の生体機能 ( 牛群検定 : 北海道 ( ) と都府県 ( )) 9000 8000 7000 6000 5000 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 年 乳牛 : 摂取した栄養素を乳生産に優先的に利用する 乳牛の乳量が急増したが 遺伝子 細胞 組織 器官の何が変わったか?( 体内代謝が活発になり 酸素消費量 血流量が増加 ) 動物の細胞 ( 約 60 兆 ) は 1 年で 90% 以上入れ替わるが 生体機能に変化は生じるか? 後継牛の遺伝的能力は今の牛より高い ( 栄養管理の改善が常に必要 )

乳牛の栄養管理の基本的考え方 -- 生理 生産機能の変化に対応する 現在の乳牛の特徴 ( 繁殖に関して :Lucy,2001) フ ロシ ェステロン濃度が低い -- 飼料摂取量が多く 体内代謝が活発 初回排卵が 10 日遅れる -- 負のエネルギーバランスが大きいため 発情微弱 発情持続時間が短い 発情発見時間 ( 従来 : 朝夕 30 分 ) をのばし 発情発見 6-8 時間後に人工授精 乳牛の遺伝的能力に適した栄養管理の重要性

Ì d i kgj V b _ i meq/lj Û æ Ê i kg/ú j û Ê i kg/ú j 図 分娩直後の乳牛の特徴 : 乳量の急増と不十分な乾物摂取量による栄養不足 24 50 20 16 12 40 30 800 8-14 0 14 28 42 ª Ø O ã i ú j 20 0 14 28 42 ª Ø ã i ú j 700 600 1.2 0.8 0.4 500-14 0 14 28 42 ª Ø O ã i ú j 0-14 0 14 28 42 56 ª Ø O ã i ú j

移行期 ( 周産期 ) の栄養管理の重要性 -- 乳牛の栄養管理の Final Frontier 移行期 (Transition Period) とは 分娩前 3 週間と分娩後 3 週間の期間 : 栄養管理の最も難しい時期 (1995 年の J.Animal Science の 3 編の論文を契機 ) 移行期の栄養管理が不十分だと -- 代謝障害の増加 乳生産 繁殖成 績の低下

表, 分娩 1 週間前 (3 日間 ) と分娩 2 ー 4 日後 (3 日間 ) の乾物摂取量 (n=4) 分娩前ク ラスアルファルファ 分娩後ク ラスアルファルファ 体重, kg 754 733 711 643 増体, kg/ 日 0.15 0.65-4.79-6.50 DMI,kg/ 日 10.0 11.0 13.3 13.3 乳量, kg/ 日 29.5 31.9 乾物消化率, % 74.1 70.8 71.6 73.1 CP 消化率,% 71.8 70.8 70.5 72.5 N 蓄積量, g/ 日 49 64-93 -72 分娩直後 : 消化率は高いが DMI が極度に少ない

乳成分 (%) 乳成分 (mg/dl) 図 初乳中への免疫 栄養成分の分泌 -- 子牛を健康に育てることを優先する 15 タンパク質脂肪乳糖 250 Ca P K 10 200 5 150 0 0 1 2 3 4 分娩後 ( 日 ) 分娩は乳牛にとって多大な生理的ストレスであるが 初乳量の急増が周産期病の一因になる 100 0 1 2 3 4 分娩後 ( 日 )

表 分娩直後の乳中へのミネラル分泌量 分娩直後分娩 3 日後泌乳牛 乳量 kg/ 日 -- 30.7 29.5 Ca g/ 日 21.4 42.1 37.3 P g/ 日 18.0 36.8 28.1 Mg g/ 日 3.5 3.5 3.1 牛乳 1kg 生産に血液は約 400L が必要 : 分娩前後の乳房への血流量の急増によって Ca を分泌する

飼料 乳牛の分娩直後の Ca 出納 (g/ 日 ) 腸 細胞外液 Ca 貯蔵量 (8-10g) 血漿中 Ca 貯蔵量 (2.5-3.0g) 骨 (Ca の 99%) 糞 尿 (0.2-1.0g) 乳 (20-30g) 胎児 (0) 初乳中への急激な Ca 分泌量への対応が遅れる

表, 分娩 1 週間前 (3 日間 ) と分娩 2 ー 4 日 後 (3 日間 ) のミネラル出納 (n=4) 分娩前 分娩後 ク ラスアルファルファク ラスアルファルファ DCAD, meq/kg 178 186 134 152 尿量, kg/ 日 11.3 12.6 15.5 22.9 尿中 ph 8.20 8.31 8.19 7.75 Ca 摂取量,g/ 日 46.6 81.3 69.5 111.0 蓄積量 11.7 18.9-20.3-1.4 K 摂取量,g/ 日 194.8 203.7 218.9 192.5 蓄積量 0.1 2.9-50.2-18.9 ミネラルの蓄積もマイナスになる

乳牛の妊娠期間の血漿 乳中エストロゲンの上昇 ( 生理的なもの ) (Pape-Zembitoら 2008) 分娩前のDMIの減少と免疫機能の低下 : 妊娠末期の血漿中エストロン (E1) とエストラジオール (E2) の上昇が影響する

骨粗鬆症とエストロゲン ( 閉経後 ) エストロゲン受容体 : 骨芽細胞と破骨細胞 卵巣機能低下によるエストロゲン不足 ( エストロゲンは骨のCaの保持に重要 ) 骨吸収が骨形成より優位となり 負のCa 代謝 ( 骨吸収サイトカインの産生過剰 )

周産期の乳牛の特徴 1. 分娩前後の体内代謝 内分泌機能の急激な変動 ( 乳生産の増加が影響 ) -- 代謝障害 繁殖障害の増加 2. 分娩前後の免疫機能の低下 -- 病原菌の体内侵入による乳房炎などの疾病増加 ( 乳房炎 : 分娩直後の初乳産生時や乾乳期に多発 ) 高泌乳牛は分娩に伴うリスクが高く 精密な栄養管理による周産期病の予防が必要

移行期の課題と飼料給与 栄養管理の改善が乳量増加に追いつかない 粗飼料 ( イネ科 ) の品質が改善されない 1) 分娩直後の乾物摂取量の早期増加を図る 2) 飼料から栄養素を過不足なく摂取する 3) ルーメン環境を適正に維持する ( 絨毛の発達 ) 良質粗飼料を活用して TMR で給与する 分娩前の濃厚飼料の給与比率を 3 割程度 移行期はほぼ同じ粗飼料構成にする

周産期病の発生とその予防 生理機能に基づいた栄養管理の改善 乾物摂取量の増加による栄養改善 飲水量の増加による生理機能の改善

動物の恒常性と適応 1) 動物の恒常性維持機能 : 動物は常に変動する体外からの情報を受け取り それに適切に対応しながら 体内の生理機能を常に一定の範囲内に維持して 健康を保っている 2) 適応の重要性 : 外部環境あるいは体内の変化に対して 神経系 内分泌系 免疫系などの機能を高めて 体内の変化を最小限にする

図 環境の変化に対する動物の適応 環境ー動物 -- 分娩時の生理的適応は? 環境の変化 体内平衡の乱れ センサー 神経系など 体内の変化 体内平衡の回復 体内代謝の反応 中枢神経系 神経 内分泌 免疫系 適応栄養素

図 アルファルファ区 ( ) とク ラス区 ( ) の血漿中 Ca 濃度と副甲状腺ホルモン (PTH) PTH(pg/ml) Ca(mg/dl) 11 10 9 Alfalfa Grass 1000 800 600 400 200 Alfalfa Grass 8-14 0 14 28 42 56 ª Ø O ã i ú j 0-14 -7 0 7 ª Ø O ã i ú j 乳牛は分娩前後の生理的危機を常に正常化するように機能する ( 栄養管理はそれを助けることが必要 )

ケトーシス 脂肪肝の発生 ケトーシス : 糖質不足により脂肪酸代謝障害 ( 血中遊離脂肪酸の急増 ) が生じ 体内にケトン体 ( アセト酢酸など ) が急増し 痙攣 麻痺が起こる ( 脳 神経障害 ) 脂肪肝 : 肝機能の減退を起こし 体脂肪を処理することができず 大量のケトン体が生成されて 重度の中毒症状を示す 分娩直後 ~10 日頃までのエネルギー代謝異常 ( 不足 ) によるケトーシス 脂肪肝が問題 (1980 年代 : 分娩 2~4 週後に多発 )

乾物摂取量 (kg/day) 乳量 (kg/ 日 ) 図 アルファルファ給与区 ( ;n=4) とコーン + アルファルファ給与区 ( ;n=4) の乾物摂取量と乳量 20 40 15 30 10 5-14 -7 0 7 分娩前後 ( 日 ) 20 0 2 4 6 分娩前後 ( 日 ) 高泌乳牛 : 分娩直後の乳量の急増が特徴

血漿グルコース (mg/dl) 血漿 NEFA (meq/l) 図 アルファルファ給与区 ( :n=4) とコーン + アルファルファ給与区 ( :n=4) の血液成分 100 80 60 40-14 -7 0 7 14 分娩前後 ( 日 ) 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0-14 -7 0 7 14 分娩前後 ( 日 ) 分娩後の血漿中遊離脂肪酸の急増とその後の回復

乳量 (kg/ 日 ) 乳成分 (%) 図 乳牛の乳量と乳糖の関係 ( グルコースの必要性 ) 45 40 5 4.5 脂肪率蛋白質乳糖 35 4 30 3.5 25 3 20 0 2 4 6 8 10 泌乳期 ( 月 ) 2.5 0 2 4 6 8 10 泌乳期 ( 月 ) 乳量増加は乳糖 ( グルコース ) の増加が重要 : 浸透圧の関係 ( 乳糖が多いと乳腺に水の移行が増加する )

血漿中 Ca (mg/dl) 血漿 Pi (mg/dl) 図 アルファルファ給与区 ( ) とコーン + アルファルファ給与区 ( ) の血漿 Ca と Pi 濃度 11 10 6 9 8 4 7-14 -7 0 7 分娩前後 ( 日 ) 2-14 -7 0 7 分娩前後 ( 日 ) 血漿 Ca と Pi 濃度を正常に維持して 乳熱を予防する

水摂取 (kg/ 日 ) 水損失 (kg/ 日 ) 図 乾乳牛と泌乳牛 ( 乳量 :29.5kg) の水摂取量と水損失量 120 100 代謝水 飼料水 飲料水 120 100 乳尿 80 80 糞 60 60 蒸発 40 40 20 20 0 乾乳牛 泌乳牛 0 乾乳牛 泌乳牛 乳牛は分娩直後に大量の飲料水を必要とする

表 乾物摂取量 (DMI) 水摂取量(TWI) と飲水量 (DWI) の比較 (kg/ 日 ) 乾乳牛泌乳牛泌乳牛 / 乾乳牛 DMI 7.7 20.7 2.69 TWI 30.3 98.4 3.25 DWI 16.0 77.6 4.85 分娩前と比較して 泌乳牛では乾物摂取量の増加率よりも飲水量の増加率が高い : 水が飲めないと代謝異常になる

移行期の栄養管理のポイント 1. 分娩後の乾物摂取量を早期に高めて エネルギーや栄養素の充足を早めるための精密な栄養管理 ( 飼料設計 ) 2. 乳牛の健康を維持し 分娩前後の代謝障害 繁殖障害を減らすための適切な栄養管理 ( イオンバランスなど ) 高品質粗飼料を活用した乳量増加 疾病予防 繁殖成績改善