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. 設計開発と実験計画手法 設計開発に役立つ実験計画手法 ~ 要因配置実験から応答曲面法まで ~ ( 株 ) 日本科学技術研修所 数理部犬伏秀生 設計開発においては, 対象とするシステムの設計パラメータを決定したり, 採用したアイデアやメカニズムを評価したりする作業が必要となる. このとき, 実験計画手法を利用することにより, 設計パラメータの決定やメカニズムの評価などを効率的かつ的確に実施できることが期待できる. 実験計画手法に基づく実験は, 大きく下図の流れで実行される. 実験の計画特性 要因の決定計画表作成 実験 効果の確認 解析最適条件探索 本資料では,JUSE-StatWorks/V4. を用いて実験計画法手法を適用する上で大切な 特性 要因の決定 および 解析 に関して, まずいくつかの実験計画手法の考え方を紹介し, 次に JUSE-StatWorks/V4. の実験計画法関連機能を説明する.. 実験計画法を成功するための特性 要因の決定 品質工学 ( タグチメソッド ) では, 品質を以下のように分類する.([3]p.7) 分類 内容 特徴 下流の品質 市場において消費者が評価する品質. 自動車のエンジンならば, 燃費, 騒音, 振動などである. 品質に関わる活動の目的 中流の品質 図面寸法やスペックなどで, 工程や製品のコントロールに用いる品質特性. 計測器で計測できる項目. 下流の品質を獲得するための手段 上流の品質 製品が市場のいろいろな条件で目的とする機能 ( 目的機能 ) をどの程度達成できるかを示す測度. 自動車のエンジンであれば, 目的機能は燃焼エネルギーから機械出力 ( トルクなど ) への変換である. 源流の品質 基本機能の機能性 ( 機能のばらつきの程度 ) で, 技術のロバストネスを示す測度. 技術開発段階で用いる品質. 自動車のエンジンであれば, 基本機能は化学反応 ( 特に, 酸素の化学反応 ) である. 実験を行うにあたっては, 何を ( どの品質を ) 評価するのかを決める必要がある. さらにそれは, どのような特性を計測し, 解析特性 ( 解析に使用する特性 ) としてどのような特性を用いるのかという問題につながる. ここでは, 実験計画手法で使用される解析特性のいくつかを紹介する. -. 計測特性をそのまま解析特性として使用計測したデータをそのまま解析特性として使用する. この場合は, 品質特性 ( 中流, 下流の品質の特性 ) やその代用特性が計測される場合が多く, その特性は望大特性, もしくは, 望小特性であることが多い. -. 計測特性から解析特性を計算これには等分散性を確保するために対数変換を行う場合なども含まれるが, ここでは特に, SN 比, 感度, 望ましさ という解析特性について紹介する. 株式会社日本科学技術研修所数理部 5-5 東京都渋谷区千駄ヶ谷 5--9 TEL 3-5379-465

--.SN 比, 感度 ( 基本機能, 目的機能の評価 ) SN 比, 感度 は品質工学( タグチメソッド ) で用いられる解析特性である. 品質工学 ( タグチメソッド ) では, 基本機能の機能性 ( 機能のばらつきの程度 ) を評価することが推奨されており, 基本機能を考えることにより, 全ての品質問題を一度に解決できるとしている.([]p.79) 基本機能, 目的機能は, 一般的に入出力の関係で捉えられ ( 動特性 と呼ばれる), その関係は次のような状態であると望ましいとされる ; 入出力の関係が, 設計者が理想的であるとする状態にある 誤差条件の影響を受けにくいこのような望ましい状態は, 適切に設計パラメータ ( 制御因子の水準 ) を決めることにより達成されることが期待できる ( 達成されない場合は新たなアイデアや新たなメカニズムが必要となるかもしれない ). 例えば, 基本機能 ( 目的特性 ) の理想的な入出力の関係式が原点を通る直線 ( 比例式 ) である場合, 望ましい状態と望ましくない状態は下図のようになる ( : 誤差条件 でのデータ, : 誤差条件 でのデータ ). 出力 7 6 5 4 3 3 4 5 入力 望ましい状態 ( 誤差条件の影響が少なく, 直線上に乗っている ) 出力 7 6 5 4 3 3 4 5 入力 望ましくない状態 ( 誤差条件の影響が大きく, 直線上に乗っていない ) 品質工学 ( タグチメソッド ) では, 基本機能 ( 目的機能 ) を望ましい状態とする設計パラメータ ( 制御因子の水準 ) の決定は, 次の つのステップで行う ; ステップ : ばらつき ( 理想的な関係からのずれや誤差条件による影響 ) が小さくなるように設計パラメータを決める. ステップ : ばらつきにはあまり影響がないが出力の大きさに影響がある制御因子を用いて, 目標への合わせ込みをおこなう. ステップ を実現するために使用される解析特性が SN 比 であり, ステップ を実現するためにしばしば用いられる解析特性が 感度 である. ただし,SN 比, 感度は機能性評価のための解析特性の総称であり, 具体的な定義は個別の問題毎に異なる. 例えば, 基本機能 ( 目的特性 ) の入出力の理想的な関係式が直線であれば, SN 比 = 出力の大きさ (Signal) とばらつき (Noise) との比感度 = 出力の大きさとして定義される. このとき, 入出力の状態と SN 比の大きさの関係は下図のとおりである. 出力 7 6 5 4 3 3 4 5 入力 () 傾き : 大, ばらつき : 少 SN 比が大きい 出力 7 6 5 4 3 3 4 5 入力 () 傾き : 小, ばらつき : 少 SN 比が小さい 出力 7 6 5 4 3 3 4 5 入力 (3) 傾き : 中, ばらつき : 大 SN 比が小さい

--. 望ましさ ( 多特性の同時最適化 ) 設計パラメータ ( 制御因子の水準 ) が複数の特性と関係している場合, それらの特性が全てそれなりに望ましい状態となるように設計パラメータを決める必要がある. この目的のための有力な方法の一つが, 望ましさ (desirability) というスカラー量 ( 単一の量 ) を解析特性として使用する方法である. このスカラー量である 望ましさ は ~ の値をとり, その値が大きければ大きいほど, 考えた特性全てが望ましい状態であることを表す. 望ましさ は, 以下の手順で定義される ; 手順 : 特性毎に望ましさ関数を定義する. 望ましさ. 望ましさ... 目標値 特性の値 特性の値 許容される値の下限 十分な値の下限 許容される値の下限 許容される値の上限 () 望大特性に対する望ましさ関数 () 望目特性に対する望ましさ関数 手順 : 特性毎の望ましさ関数を総合した望ましさ関数を定義する. 特性 y,y,,y m の望ましさ関数を d,d,,d m とするとき, それらを総合した望ましさ関数 D(x) を d,d,,d m の幾何平均として定義する ( 算術平均とする場合もある ). D( x) = m d d L d m 例えば, 以下のような特性, 因子を取り上げたものとする ;([]p.) 特性 : 転換量 ( 望大特性 ), 活性度 ( 望目特性 ) 因子 : 反応時間, 温度, 触媒比率そして, 転換量, 活性度の望ましさ関数を以下のように定義するものとする. 望ましさ望ましさ... 8 97 転換量. 55. 57.5 6. 活性度 このとき, それぞれの因子の水準に応じて, 望ましさは以下のようになる ; 望ましさ因子の水準特性の推定値 ( 特性毎 ) 反応時間 :x 条件 温度 :x 触媒比率 :x 3 反応時間 :x 条件 温度 :x 触媒比率 :x 3 反応時間 :x 3 条件 3 温度 :x 3 触媒比率 :x 33 転換量 :8. 転換量 :.64 望ましさ推定式活性度 :59.85 活性度 :.6 関数 転換量 :97.53 転換量 :. 望ましさ推定式活性度 :55.6 活性度 :.64 関数 転換量 :93.86 転換量 :.853 望ましさ推定式活性度 :58.59 活性度 :.564 関数 幾何平均 幾何平均 幾何平均 望ましさ ( 総合 ).6.53.678

これより, 特定の特性値のみが完全に望ましい状態よりは, 全ての特性値がそれなりに望ましい状態の方が 望 ましさ が大きくなる傾向があることが分かる. ここで, ある特性を重視したい, ある特性はそれほど重視する必要はない, など特性にウェイト付けしたい場合は, 望ましさ関数の形状を以下のように定義する ;([4]p.5) 望ましさ望ましさ... 目標値. 目標値 特性の値 特性の値 許容される値の下限 許容される値の上限 許容される値の下限 許容される値の上限 () 重視する特性の望ましさ関数 () それほど重視しない特性の望ましさ関数 ( 望目特性の場合 ) ( 望目特性の場合 ) 望ましさ関数を () のように定義した特性については, その特性の値をかなり目標値に近づけないと 望ま しさ は大きくならない. 逆に,() のように定義した特性については, その特性の値が目標値にあまり近づけ なくても 望ましさ はそれなりの大きさとなる. 3. 応答曲面法による解析 どのような解析特性を使用するにせよ, 解析特性の望ましい状態は設計パラメータ ( 制御因子の水準 ) を適切な値に設定することにより達成される. これには, 解析特性に対する設計パラメータの因果的効果を利用する. そして, 解析特性と設計パラメータとの因果関係は, 実験計画法に基づいて行われた実験で得られたデータ ( 実験データ ) から推定することができる. なぜならば, 実験計画法での 実験 は, 外的操作を加え観測する, いわゆる帰納的実験 ( 特定の結果から一般的理論を構成する ) であり ([3]p.53), また, 実験計画法に基づいて実験を行うと, 取り上げた要因同士の交絡 ( 効果が分離できないこと ) は実験の計画において避けられ, さらに, 実験順序がランダマイズされている ( 無作為化が行われている ) ことにより, 取り上げた要因と取り上げていない要因との交絡も避けられている. このことから, 実験データから得られたモデル式は,( 実験が行われた領域での ) 因果関係を表していると考えられる. 例えば, 一元配置実験 ( 特性 : 化学薬品の収率 ( 望大特性 ), 因子 : 反応温度 ) で下図のデータが得られたとする. 収率 9 9 9 89 8 9 反応温度このとき, 一元配置法 による分析では, 以下の手順で分析を行う. 手順 : 分散分析を行い, 収率に対する反応温度の効果の有無を確認する ( 分散分析で有意となれば効果あり ) 手順 : 効果があれば, 各反応温度での収率を推定し, 最適条件 ( 収率が最も高くなる反応温度 ) を求める.

回帰式 : Y = 48. 533 33+.88 333 X-.4 5X ^ ここで, 分散分析を行うということは, 実験で取り上げた反応温度において収率の平均値に違いがあるかどうかを見ること, すなわち, 帰無仮設 H:α=α=α3=α4= 帰無仮設 H:α=α=α3=α4= ではない ( 少なくとも一つの = が成立しない ) の検定を行うことである. 収率 9 9 9 α α α3 α4 89 8 9 反応温度もし分散分析で有意となれば, 各反応温度における収率の平均値は等しくないと判断され, その違いは 反応温度を変えると収率の平均が変わる という因果関係を示すものと判断される. 以下, 因子が量的因子である場合の方法論である 応答曲面法 を紹介する. 3-. 応答曲面法の利点と方法分散分析で効果を確認し, 実験で取り上げた水準の組合せから最適条件を探すという解析方法 ( 一元配置法, 二元配置法, 直交配列表など ) はよく知られているが, 取り上げた因子の水準の順序や間隔に意味があれば ( すなわち, 量的因子の場合 ), 直線 ( 次モデル ) や曲線 ( 次モデルなど ) を当てはめるという解析方法も考えられる. 例えば, 前述の一元配置実験 ( 特性 : 化学薬品の収率 ( 望大特性 ), 因子 : 反応温度 ) のデータには二次式がよく当てはまり, 下図のようになる ; 9 9 収率 9 89 8 9 反応温度 ( 95) 収率 = 88.6658 +.73 反応温度.45 反応温度 一般的に, 直線 ( 次モデル ) や曲線 ( 次モデルなど ) を当てはめることの利点は以下のとおり ; 因子と特性との関係が把握し易くなる 領域内の任意の水準が最適条件の候補となるため, より良い条件を得ることができる

このように, 取り上げた因子が量的因子の場合に, 直線 ( 次モデル ) や曲線 ( 次モデルなど ) を当てはめる方法論を 応答曲面法 (RSM:Response Surface Methodology) と呼ぶ. ここで, 次モデルは 次項のみを含むモデル, 次モデルは 次項 + 次項 + 交互作用項を含むモデルのことを指し, 応答曲面法では通常 次モデルか 次モデルを当てはめる. 例えば, 因子が つの場合の 次モデル, 次モデルは以下のとおり ; 次モデル : y = b + b x + b x, 次モデル : y = b + b x + bx + bx + bx + bxx 応答曲面法では, 一元配置法や直交配列表などの方法論と解析方法が異なるだけではなく, 使用される計画も 異なり, 次モデルや 次モデルを当てはめることを念頭に置いた計画が使用される. 応答曲面法と従来の実験計画法との比較 方法論 主な計画 大まかな解析手順 一元配置法二元配置法直交配列表など 要因配置計画, 直交配列表. 分散分析で効果がある要因を確認. 取り上げた水準の組み合わせの中から最適条件を探索 応答曲面法 < 次モデルの当てはめ> k 要因配置計画, k 一部実施要因配置計画, プラケット バーマン計画 < 二次モデルの当てはめ> ボックス-ベーンケン計画, 中心複合計画. 次モデル, 次モデルを当てはめる. 当てはまりの悪さ (Lack of Fit) に関する検定で, モデルの当てはまりを確認 3. 当てはめたモデルで最適条件を探索 ( より詳細な解析手順は下図を参照 ) First-order model Yes Fit Well You are still pretty far away from the optimal point No Add/Drop new variables No You are probably close to the optimal setting Yes Find the direction for improvement Second-order model Set up a new center point Fit Well No Yes Optimization Higher order model? 応答曲面法の解析手順 ([5]p.65) ここで, 次モデル, 次モデルを当てはめる方法は, いわゆる回帰分析と同様である ( 通常, 最小二乗法によりパラメータを推定する ). しかし, 前述のとおり, 得られた 次モデル, 次モデルは因果モデルを表すと考えられ, 制御などに用いることができる.

そして, 当てはめられた 次モデル, 次モデルから, 因子と特性 ( 応答 とも呼ばれる) との関係は通常, 等高線図で表現される. この図は,つの因子を横軸, 縦軸にとり ( ただし, ここでは他の因子の水準は固定される ), それらの因子の水準の組合せに対する特性の様子を示す. 等高線を概観することにより, 曲面の形状や最適条件の位置が分かる ( ただし, 曲面の形状は, 横軸, 縦軸にとられていない因子 ( 水準が固定されている因子 ) の水準に依存することに注意が必要である ).. x. x. x....4.4.4 -.4 -.4 -.4 -. -. -. -. -. -. -.4.4.. x -. -. -. -.4.4.. x -. -. -. -.4.4.. x 43 95 6 4 39 37 35 33 3 9 7 5.6..8.4 -.4 -.8 -. -.6 - -. -.4.4. - - -.5.5 -.5 - -.5 9 85 8 75-7 - -.5.5 -.5 - -.5 5 4 3 - () 次モデル () 次モデル ( 最大値 ) (3) 次モデル ( 停留点 )

4.JUSE-StatWorks/V4. の実験計画法関連機能 最後に,JUSE-StatWorks/V4. の実験計画法関連機能について紹介する. 4-.JUSE-StatWorks/V4. の実験計画法関連機能 解析手法 主な出力, 機能の特徴 要因配置実験 要因配置実験のための計画 実験計画表 6 因子 ( 水準数 :~4) まで対応 実験順序のランダマイズ可能( 分割実験にも対応 ) 一元配置分散分析 データプロット, 分散分析表, 推定値プロット, 推定値, 差の推定, 残差 64 水準まで解析 二元配置分散分析 データプロット, 分散分析表, 推定値プロット, 推定値, 差の推定, 残差 64 水準まで解析可能 交互作用項を誤差へプーリング 多元配置分散分析 分散分析表, 推定値, 推定値プロット, 差の推定, 残差 解析可能な実験種類: 母数模型, 混合模型, 多段分割実験, 枝分かれ実験, 多方分割実験 母数因子, 変量因子, 繰り返し, ブロック因子を解析可能 6 因子まで解析可能 ( 繰り返し, ブロック含む. また各因子 64 水準まで ) 分散分析表で指定した要因を誤差へプーリング 推定式に取り込む要因を分散分析上で任意に指定可能 測定の繰り返しがある場合の解析が可能 直交表実験 直交表実験のための計画 実験計画表 使用可能な直交表:L8,L6,L3,L64,L9,L7,L8 最大 6 因子までわりつけ可能 線点図に基づくわりつけ支援機能を利用 実験順序のランダマイズ可能( 分割実験にも対応 ) 直交配列表 効果表, 分散分析表, 推定値, 推定値プロット 解析可能な直交表:L8,L6,L3,L64,L9,L7,L8 分割実験の解析が可能 多水準作成法( 水準系直交表に 4 水準因子のわりつけ ) に対応 測定の繰り返しがある場合の解析が可能 分散分析表で指定した要因を誤差へプーリング 分散分析表で寄与率を表示可能 推定式に取り込む要因を分散分析上で任意に指定可能 応答曲面法 応答曲面法のための計画 実験計画表 使用可能な計画は以下のとおり; 分類 含まれる計画 水準系 ^k 要因実験,^(k-p) 一部実施要因実験, プラケッ ト バーマン計画,L8,L6,L3,L64 3 水準系 3^k 要因実験,3^(k-p) 一部実施要因実験, ボックス -ベーンケン計画,L9,L7,L8 中心複合計画 中心複合計画 D- 最適計画 D- 最適計画 特性の最適化 変数選択, 応答曲面, 停留点, 残差の検討, 選択履歴, 回帰係数, カテゴリ スコア, 分散分析表, 予測 指定可能な説明変数は ~53( 量質混在可 ). 変数の指定 ダイアログで, 量的因子の交互作用項, 次項を作成可能 中心化( 交互作用項, 次項を偏差で作成 ) 可能

品質設計 ( タク チメソット ) 効果プロット マルチバリチャート 多特性の最適化 パラメータ設計のための計画 パラメータ設計 許容差解析 応答曲面を出力可能 ( 横軸, 縦軸にとっていない因子の水準を動的に変更することも可能 ) 分散分析表に当てはまりの悪さ(Lack of Fit) を出力 手動, もしくは, 逐次変数選択法 ( 変数増減法等 ) による変数選択可能 係数一覧, 変数選択, 選択履歴, 最適化グラフ, 回帰係数, 分散分析表, 予測, 残差の検討 変数の指定 ダイアログで, 量的因子の交互作用項, 次項を作成可能 指定可能な特性は ~6, 因子は ~8( 量的因子のみ ) 最適化グラフで対話的に最適条件を探索 分散分析表に当てはまりの悪さ(Lack of Fit) を出力 特性毎に変数選択, 残差の検討が可能 実験計画表 使用可能な直交表:L8,L6,L3,L64,L9,L7,L8,L,L8, L36(3^3),L36(^ 3^) 最大 6 因子までわりつけ 外側因子の設定( 信号因子, 誤差因子, 繰り返しの水準数等 ) が可能 要因効果図 (SN 比, 感度 ), 分散分析表 (SN 比, 感度 ), 推定値プロット (SN 比, 感度 ), 推定値 (SN 比, 感度 ) 解析可能な直交表:L8,L6,L3,L64,L9,L7,L8,L,L8, L36(3^3),L36(^ 3^) 多水準作成法, ダミー法に対応 解析可能な特性の種類は以下のとおり; 動特性 : 比例式, 一次式, 基準点比例式静特性 : 望目特性, 望大特性, 望小特性, ゼロ望目特性 既に SN 比, 感度が計算済みの場合も解析可能 SN 比, 感度の要因効果図を一画面に表示比較 SN 比, 感度の利得を出力可能 分散分析表 解析可能な直交表:L,L8,L36(3^3) 目標値の入力が可能 ダミー法に対応 変動の分解が可能 交互作用図 ( 因子の全ての組合せ ), 特性値グラフ ( 因子の主効果 ) 指定可能な因子は ~55( 量質混在可 ) 一覧から注目するグラフを拡大表示することが可能 マルチバリチャート 指定可能な因子は ~4( 質的因子のみ ) 因子の順序の入れ替えなどが可能 4-. 今後の機能強化について弊社では, 引き続き JUSE-StatWorks の機能強化を行うが, 特に実験計画法関連機能については今後以下の機能強化を検討している ; 解析手法機能強化内容直交配列表 ダミー法への対応 特性の最適化 最適条件の探索機能強化 ( 多特性の最適化も同様 ) 多特性の最適化 質的変数への対応 解析可能な因子数の拡張 複数の応答曲面の重ね合わせパラメータ設計 標準 SN 比への対応

5. 参考文献 [] 田口玄一,(5), ハード製品の研究開発における戦略目的機能と基本機能, 標準化と品質管理, 58,7-83 [] 山田秀,(4), 実験計画法 - 方法編 -, 日科技連 [3] 宮川雅巳,(), 品質を獲得する技術, 日科技連 [4] Myers, R. H. and Montgomery, D. C.,(995),Response Surface Methodology,John Wiley & Sons. [5] DENNIS K. J. LIN,(999),Discussion,Journal of Quality Technology,3,6-66 [6] 日本科学技術研修所,(4),JUSE-StatWork/V4. ユーザーズマニュアル

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