NAOSITE: Nagaak Unry' Ac Tl 自動制御の理論と応用 Auhr() 辻, 峰男 Can 自動制御の理論と応用 ; 5 Iu Da 5 URL h://hdl.handl.n/69/35886 Rgh Th dcumn dwnladd h://na.lb.nagaak-u.ac.j
第 9 章 PID 制御 これまで, どのような制御器を用いるかということはあまり触れなかったが, 代表的な制御器として PID 制御がある PID 制御は実用上極めて重要でその意味を理解することが大いに望まれる PID 制御に限ったことではないが, 定常状態での偏差に関して一般的な理論を述べる この結果,I 制御の必要性が明らかとなる 9. PID 制御とは? 図 9- のフィードバック制御系を考える 指令値 入力 出力 R() E () 制御器 U () 制御対象 Y () r () () u () y() C () G () 図 9- フィードバック制御系 PID 制御とは, 指令値 r () と出力 () 力 u () を次式のように求める制御法である y の偏差 () r () y () をとり, 制御対象への入 ( ) d( r y) u () KP( r y) KI r y KD (9-) ここで, KP, KI, KDは正でそれぞれ, 比例ゲイン, 積分ゲイン及び微分ゲインと言う そ れぞれの制御を比例制御 (rrnal cnrl), 積分制御 (ngral cnrl), 微分制御 (dra cnrl) と呼ぶ なお, 比例制御と積分制御だけを用いた PI 制御も多く用いられている 比例制御は現在の偏差が大きい程入力を大きくして偏差をなくそうとするもので, 最も自然な制御法と考えられる ここで, 制御対象は入力 u () を大きくすれば, 出力 y () も大きくなるであろうとの前提がある しかし, 比例制御だけでは, 指令値 r () と出力 y () が 一致する場合, 入力 u () となってしまう 一般に, 入力がであれば, 出力もとなることが多いから, 比例制御だけでは指令値 r () と出力 y () が一致することはあり得ない ことになる すなわち, 定常偏差 (ady-a rrr) が残り, 望ましくない
そこで, 積分制御を加えてステップ応答 ( 指令値 r () が一定 ) の定常偏差をにする 積分制御を加えるとステップ応答の定常偏差がとなる理由は以下のように考えるとよい もし, 指令値 r ( 一定 ) と出力 y () が一致しない場合, 積分制御の項はどんどん増加または減少し u () が一定になることはない ( 図 9- 参照 ) これは定常状態と言えない 従って, 指令値が一定であるならば, 定常状態では u () が一定になるので, そのとき指令値 r と出力 y () は一致する必要がある なお, 定常状態で r と y () が一致しても, 積分器の出力は ではなく, それまでの積分値が残ったままである この積分値は制御対象との関係で決る 積分制御は, 指令値のステップ変化に対する定常偏差をにするという利点があるが, 過去から現在までの情報を現在の入力に反映する結果, タイミング ( 位相 ) が遅れて不安定にする危険性をもっている 従って, 積分制御だけを用いることはまれである 微分制御は, 未来に起こるであろう現象を現在の入力に生かし, 現象の先取りをする結果, 過渡特性の改善に効果がある しかし, 出力信号に含まれるノイズの影響を受けやすいため ( 微分なのでわずかの脈動で正負に変化する ), 注意が必要である 実際に使う場合, 不完全微分 ( ローパスフィルタ併用 ) として高周波領域ではゲインを小さくすることが一般的である さて,PID 制御の伝達関数を求めてみよう (9-) をラプラス変換し, 初期値をとおいて, 次式が得られる KI U( ) K( R( ) Y( )) ( R( ) Y( )) KD( R( ) Y( )) KI ( KP KD)( R( ) Y( )) よって,PID 制御器の伝達関数は次式で与えられる KI C () KP KD (9-) r r y y 図 9- 積分制御がある場合のステップ応答
PID 制御器の伝達関数を C () KP( TD) (9-3) T I で表現するとき, T I は積分時間 (r m, ngral m), T D は微分時間 (ra m, dra m) と呼ばれる C R 3 r y R R 3 R 3 u 図 9-3 オペアンプを用いた PI 制御器 図 9-3 のオペアンプが理想的とすると, 次式が成立する () : オペアンプだけの増幅度が無限大で, 負帰還があるから () : 入力インピーダンスが無限大だから この結果, 3 である ryu,, を電圧とすると, r y,, u R, 3 3 3 R R C 整理して, R ( ) ( ) u r y r y R RC である これは,PI 制御器であることが判る 第 項の積分器の値はコンデンサ電圧であることがわかる r yで 3 の定常状態でもコンデンサ電圧は と限らない 9. 定常特性 図 9- の制御系で, 定常偏差 (ady-a rrr) を求めてみよう 図より, E RY R ECG であるから, 3
R () E () G ( ) ここで, G () () () C G : 一巡伝達関数 (9-4) のときの定常偏差 は (-) の最終値の定理より次式で計算できる E R () lm ( ) lm ( ) lm G ( ) (9-5) 基本的な目標値 ( 指令値 ) に対する, 定常偏差を考えよう () ステップ指令 r () の場合, R () / となり, のときの定常偏差 (ady-a n rrr) と呼ばれ,(9-5) より は定常位置偏差 G K lm ( ) (9-6) ここで, K は位置偏差定数 (n rrr cnan) と呼ばれ, 次式で求められる K lm G ( ) G () (9-7) () ランプ指令 (ram nu) r () の場合, R () / (ady-a lcy rrr) と呼ばれ,(9-5) より となり, のときの定常偏差 は定常速度偏差 G K lm ( ) (9-8) ここで, 次式の K は速度偏差定数 (lcy rrr cnan) と呼ばれる K lm G ( ) (9-9) 目標値 r () 出力 y() 図 9-4 ランプ指令に対する定常偏差 4
具体的に一巡伝達関数 G () の型を考えて, 表 9- を導こう 以外の零点と極をそれぞれ z, とし, G () を次式で表す () ( z )( z ) ( z ) ( )( ) ( ) m G K N n (9-) G( ) に/ が含まれない N 場合を 型,/ が含まれる N 場合を 型, / が含まれる N 場合を 型などと言う 例えば 型という場合, 一巡伝達関数に/ が含 まれていればよいので, 図 9- の場合には制御器または制御対象のどちらかに / が含まれ ていることになる 表 9- は (9-) から得られる次式を (9-6), (9-8) に代入して得られる 型の場合 : zz z m K K n, K 型の場合 : zz zm K, K K 型の場合 : K, K n 表 9- 一巡伝達関数 G () の型と定常偏差 の関係 G( ) の型ステップ指令 r () に対 する定常偏差 型 K r ランプ指令 () 定常偏差無限大 型 / の因子 型 / の因子 K ( 注 ) Aを定数として, r () Ar, () Aの場合, 偏差は A 倍になる に対する 定常偏差を にするなら, 型が望ましいが, 型の場合には位相が遅れるので不安定になり易くなる 積分制御を追加して PI 制御にすれば定常偏差は常にとなる と, 単純に考えてはいけない どのような指令値か, 型はどうなっているかが関係してくる また, 指令値が正弦波であれば,PI 制御器であっても, 定常偏差をにすることはできない これに関する理論として, 以下の内部モデル原理 (nrnal mdl rncl) がある 5
定常偏差を にするための条件は, 一巡伝達関数が指令値や外乱をラプラス変換したときの極 ( 実部 ) を含むことである ( 文献,3) 例えば, ステップ変化する指令値や外乱に対してはそれらをラプラス変換すると A/ ( 極は ) だから, 一巡伝達関数に積分器 / を含まないといけない ランプ指令の場合も同様に考えられる 指令値が r () An の場合, そのラプラス変換は A R () だから, 定常偏差をなくすには制御器に/( ) を含まないといけない 図 9-5 はこの場合の制御系構成の一例である C () は過渡特性 ( 安定性 ) を改善するための制御器で, 一巡伝達関数に/( ) を含むなら種々の構成が考えられる R () E () 制御器 制御対象 C () G () Y () 図 9-5 正弦波指令に対する定常偏差を にする制御器 指令 r () An に対する定常偏差が になる条件を求めてみよう 一巡伝達関数を N() G () おく ここで, N(), D() は の多項式である D() R () E () G( ) Y () A R () だから, R() G () E() E() より R () D () A E () G ( ) D( ) N( ) 分子 D () ( ) D'() であれば で約分でき, 特性方程式 D () N () の すべての根の実部が負 ( 閉ループシステムが安定 ) であれば, E() を部分分数展開して, 6
ラプラス逆変換より求めた () 件は, 閉ループ系が安定で () 例である は のとき, () G の極に j となる 従って, 求める条 が含まれることである 内部モデル原理の一 これまで, 定常偏差に関して述べたが, 制御器や制御対象の変数は定常状態でどうなるかを知りたいことがある 最終値の定理を使うと定常解析は可能であるが, ここでは, 指令値や外乱が一定値 ( ステップ指令 ) の場合に限定して, 定常解析を行う簡単な方法を述べる これは, 以下の様にまとめられる 定常状態の解析は とおく 条件 : 指令値や外乱が一定値 ( ステップ指令 ) の場合のみ 直流回路の定常解析と同じことである は d/ に対応する ( 注 ) ランプ指令, 正弦波指令など指令や外乱が時間的に変化する場合は とは できない 積分器のゲインは になるので, その入力は, 出力は外部条件で決る一定値になる 積分器の入力が でない一定値の場合には, その値をずっと積分していく ( 集めていく ) ので積分器の出力が変化してこれは定常状態とは言えない 従って, 積分器の入力は定常状態では でないといけない ( 例題 9-) 図の制御系で, 制御器が () P 制御 C () KP C K KP C K KP KD () PI 制御 () I (3) PID 制御 () I 指令値 入力 出力 R 制御器 U() 制御対象 Y() r () u () y () () E () () C () G ( ) のとき, ステップ応答の定常偏差を求めよ ( 解 ) 一巡伝達関数は, G () C() G() である () のときの定常偏差 は 7
() (3) C() G() K / K C() G() C() G() P P このように, 制御対象に / が含まれない場合には, 積分制御があればステップ応答の定 常偏差は となる ( 例題 9-) 図の制御系で, 制御器が C () KP のとき, r () に対するステッ プ応答の定常偏差を求めよ また, r () ( ランプ指令 ) に対する 定常偏差を求めよ 指令値 入力 出力 R 制御器 U() 制御対象 Y() r () u () ( ) y () () E () () C () ( 解 ) 図より, 一巡伝達関数は, G () C() G() K ( ) 位置偏差定数 K G () だから, ステップ指令 r () に対する定常偏差 K 速度偏差定数 K は K lm G ( ) K / だからランプ指令 r () に対する定 常偏差 は K K ( 注 ) 制御対象に/ を含んでいたら, 比例制御でも 型となり, ステップ応答の定常偏差はとなる 8
( 例題 9-3) 図の制御系で, ステップ指令 r () およびランプ指令 r () に対する定常 偏差を求めよ G () R() E () U() Y() 3 3 3 ( 解 ) 一巡伝達関数は G () 3 である 位置偏差定数 K G () だから, ステップ指令 r () に対する定常偏差 K 速度偏差定数 K は差 は K lm G ( ) だからランプ指令 r () に対する定常偏 K ( 例題 9-4) 図の制御系で, ステップ指令 r () およびランプ指令 r () 定常偏差を求めよ R() E() U() Y() ( ) に対する ( 解 ) 一巡伝達関数 G () r () に対する定常偏差を とすると, G () r () のとき, K lm G ( ) 5 故に定常偏差は Y U より ) ( K 5 9
( 例題 9-5) 図の制御系で, ステップ指令 r () かつ外乱 () であるとき定常偏差 を求めよ r () R() () E() 3 () D () 5 y () Y() ( 解 ) ブロック図より 3( R Y ) D 3 R Y Y D 5 8 3 R, D だから y( ) lmy lm 8 定常偏差は r( ) y( ) ( 別解 ) 指令値及び外乱ともに一定なので, 定常値は と置いて求まる ブロック図より ( 変数の ( ) は省略した ) 3( r y ) d 3 r d y y ( r d だから ) 以下同様 5 8 外乱だけの場合は r である システムは線形だから重ね合わせの理が成り立つので, 指令値と外乱の片方を として求め, 後で加えてもよい ( 例題 9-6) 図は電流のPI 制御系である 電流の指令値 が一定値であるとき, 定常状態での, 電流, 偏差, 比例制御器の出力, 積分制御器の出力, 電源電圧 を求めよ ただし, 回路の直流電源 E ( 外乱とする ) は一定である また, 制御システム全体のブロック図を書け さらに,PI 制御器がP 制御のみの場合, 定常状態での, 電流, 偏差,P 制御器の出力, 電源電圧 を求めよ R K K I L E 3
( 解 )PI 制御の場合 : PI 制御時のブロック線図は図のようになる 指令値や外乱が一定値 ( 直流 ) の場合, 伝達関数の と置いて定常値が求まるので, が有限であるためには積分器の入力 でなければならない また, L とおける E,, K, R E R I () I () K K I V () VI () D() E / V() E R L I () I 制御の出力 の値は, 全体的に決る P 制御の場合 : 同様に, 伝達関数の と置いて定常値が求まるので K E K ( ) E/ R R K R E R E,, RK RK K ( 補足 )PI 制御の場合 : K ( ) K ( ) で, 指令値 が一定値, P I 外乱 E も一定値なので, 定常状態では偏差が となり となる ( もし等しくないと は積分値なので変化が続いて, この結果電流も変化が続き, これは指令値が一定の場合の定常状態とは言えないから ) 従って, 定常時には となる 電流が一定のときコイルの電圧は なので ( L とおける ), 回路の式より R E がなりたつ だから, でなくてはならない 積分器には制御を始めたときからの積分値が残り, たとえ現時 点で でも出力 は とはならないので注意せよ 9.3 PI 制御器を含む制御系の状態方程式 制御対象が 状態方程式 dx() Ax() B u() (9-) と 出力方程式 y() Cx () (9-) 3
で記述されるとき y を検出し 入力 u () を PI 制御により次式で制御する場合を考える u ( ) K ( y y) K ( y y ) I (9-3) y PI u d x = + x Ax Bu C y 図 9-9 PI 制御器を含む制御系 いま ( y y ) z とおくと dz y y (9-4) (9-3) より u K ( y y) K z (9-5) (9-5) を (9-) に代入し, (9-) を用いると次式を得る I d x A BKPC BKIx BKP y z z C (9-6) 上式は 次式のように書け 制御系全体の状態方程式である dx ' Ax ' ' B ' y (9-7) 従って 系全体の安定性は A BKPC BKI A' (.8) C の固有値によって決まる 例えば K をパラメータとして変化させ QR 法などにより A' の固有値を数値計算しプロットすると, 根軌跡と同じものが得られる ( 例題 9-7) 次の微分方程式で記述される制御対象がある d x dx x u ( ) x() を検出し 目標値 x () との偏差をとり u () を次式のように PI 制御する KP u ( ) KP ( x x) ( x x ) T 3
このとき 系全体の状態方程式を求めよ 但し, T.[ ] とする ( 解 ) まず 制御対象の状態方程式を導く dx x x, x とおくと,より dx x x u よって, 制御対象の状態方程式は次式で与えられる d x x u x x PI 制御器については ( x x ) z とおくと dz x x 入力 u () は u KP( x x) KP z 従って 系全体の方程式は x x d x K P K P x K P x z z A ' の固有値を求める式は I A K K 3 ' ( P ) P となる ( 確認 ) ラプラス変換して, ブロック図を書き, 閉ループ伝達関数を求め, その分母を とおいた特性方程式を求めよ これが A' の固有値を求める式と一致することを確認せよ ( 例題 9-8) 図の RL 回路の電流を次式で PI 制御する ( ) K ( ) K ( ) このとき, 制御系全体の状態方程式を求めよ I PI () () R L 33
( 解 ) 制御系全体の状態方程式は, 次式で与えられる d z z K R K I K L L L ( 例題 9-9) 図の制御系の状態方程式と出力方程式を求めよ R() T K T U() G () 3 3 3 Y() ( 解 ) まず制御対象の状態方程式を求めよ Y() 3 U 3 () 3 3 V( ) 3 ( ) 3 V とおく 分子, 分母をそれぞれ等しいと考え, 分母より U V 3 () ( 3 ) () を逆ラプラス変換して, 3 d d d 3 () () () 3 () u () ここで, x () (), d() dx() x(), と定義すると dx d x() x() 3 x3() u() 3 3() () 3 以上により, 制御対象の状態方程式は x x d x x u x3 3 x3 これを, 次式で表す d 3() x () d x() 34
d x A xb u 出力は, 分子より Y() ( 3) V() V () 3 V () 両辺を逆ラプラス変換して次式の出力方程式を得る 3 y () x() 3 x() これを, 次式で表す y Cx 次に, 制御器を考える T K ( R ( ) Y ( )) U ( ) T x x x3 K( )( R( ) Y( )) U( ) T ただし, T 3 T いま, ( ( ) ( )) ( ) R Y T Z とおくと, ( T ) Z ( ) R ( ) Y ( ) 逆ラプラス変換して, dz () z () r () Cx () 4 T T T 3を逆ラプラス変換して, u () K r () KCx () K( ) z () 5 に5を代入し,,4より制御系全体の状態方程式は次式となる ABK C BK( ) BK d x x r z z C T T T 出力方程式は, 次式となる y C x z 35