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研究の中間報告

ふくしまからはじめよう 農業技術情報 ( 第 39 号 ) 平成 25 年 4 月 22 日 カリウム濃度の高い牧草の利用技術 1 牧草のカリウム含量の変化について 2 乳用牛の飼養管理について 3 肉用牛の飼養管理について 福島県農林水産部 牧草の放射性セシウムの吸収抑制対策として 早春および刈取

(2) 牛群として利活用 MUNを利用することで 牛群全体の飼料設計を検討することができます ( 図 2) 上述したようにMUN は 乳蛋白質率と大きな関係があるため 一般に乳蛋白質率とあわせて利用します ただし MUNは地域の粗飼料基盤によって大きく変化します 例えば グラスサイレージとトウモコシ

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(1) 乳脂肪と乳糖の生成反芻動物である乳牛にとって最も重要なのはしっかりしたルーメンマットを形成することです そのためには 粗飼料 ( 繊維 ) を充分に与えることが重要です また 充分なルーメンマットが形成され微生物が活発に活躍するには 充分な濃厚飼料 ( でんぷん 糖 ) によりエネルギーを微

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25 岡山農総セ畜研報 4: 25 ~ 29 (2014) イネ WCS を主体とした乾乳期飼料の給与が分娩前後の乳牛に与える影響 水上智秋 長尾伸一郎 Effects of feeding rice whole crop silage during the dry period which exp

徳島県畜試研報 No.14(2015) 乾乳後期における硫酸マグネシウム添加による飼料 DCAD 調整が血液性状と乳生産に及ぼす影響 田渕雅彦 竹縄徹也 西村公寿 北田寛治 森川繁樹 笠井裕明 要 約 乳牛の分娩前後の管理は産後の生産性に影響を及ぼすとされるが, 疾病が多発しやすい時期である この時

BUN(mg/dl) 分娩後日数 生産性の良い牛群の血液データを回収 ( 上図は血中尿素窒素の例 ) 各プロットが個々の牛のデータ BUN(mg/dl) BUN(mg/dl)

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生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

( 図 2-A-2-1) ( 図 2-A-2-2) 18

島根畜技セ研報 44:1~5(2016) 乳牛の低カルシウム血症予防のためのイネ発酵粗飼料における DCAD 調整手法の検討 1) 安田康明松浦真紀岩成文子 布野秀忠 要約飼料用イネのイオンバランスに着目し 無機成分および DCAD から陰イオン性について分析評価した 結果は 品種として リーフスタ

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乳牛用の飼料給与診断ソフトウエア「DAIRY ver4.1」は乳牛の飼料給与診断・設計に

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相模女子大学 2017( 平成 29) 年度第 3 年次編入学試験 学力試験問題 ( 食品学分野 栄養学分野 ) 栄養科学部健康栄養学科 2016 年 7 月 2 日 ( 土 )11 時 30 分 ~13 時 00 分 注意事項 1. 監督の指示があるまで 問題用紙を開いてはいけません 2. 開始の

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2017 年度茨城キリスト教大学入学試験問題 生物基礎 (A 日程 ) ( 解答は解答用紙に記入すること ) Ⅰ ヒトの肝臓とその働きに関する記述である 以下の設問に答えなさい 肝臓は ( ア ) という構造単位が集まってできている器官である 肝臓に入る血管には, 酸素を 運ぶ肝動脈と栄養素を運ぶ

毎回紙と電卓で計算するより パソコンの表計算ソフトを利用して計算されることをすすめます パソコンは計算と記録が同時にできますから 経営だけでなく飼養管理や繁殖の記録にも利用できます 2) 飼料設計項目ア.DMI TDN CP NFC a.dmi( 乾物摂取量 ) 水分を除いた飼料摂取量のことです 飼

The Journal of Farm Animal in Infectious Disease Vol.2 No NUTRITION AND METABOLISM IN CALF 総 説 子牛の栄養 代謝の特異性 久米新一 京都大学大学院農学研究科 ( 京都市左京区


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解 説 一方 乳成分にも違いが見られた 分娩後30日以内 産牛100頭規模の農場としている 損失額の計算は で乳脂肪率が5 を超える場合は栄養不足で体脂肪の ①雄子牛の出生頭数減少 雄子牛の売却減 ②雌子 過剰な動員が起こっていると判断できる この時期に 牛の出生頭数減少 更新牛購入コスト ③出荷乳

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第6回 糖新生とグリコーゲン分解

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2006 PKDFCJ

卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

参考1中酪(H23.11)

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輸液製剤

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研究成果報告書

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Microsoft Word - 02肉牛研究室

負荷試験 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時 )

メディカルスタッフのための腎臓病学2版

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Ⅰ. ヒトの遺伝情報に関する次の記述を読み, ~ に答えなさい 個体の形成や生命活動を営むのに必要な ( a ) は, 真核生物の細胞では主に核 の中で染色体を形成している 通常, ₁ 個の体細胞には同じ大きさと形の染色体が 一対ずつあり, この対になっている染色体を ( b ) といい, 片方の染

カルシウムの吸収 ヘム鉄はタンニンなどの影響を受けない血液ではトランスフェリンと結合する 体液のイオン組成 上の円グラフの単位は % 下の円グラフの単位は meq/l が不足するとくる病 骨粗鬆症 筋肉の痙攣が起きるただし を摂取し過ぎると吸収量が下がる 小腸内腔 フィチン酸 分解できない シュウ酸

Microsoft Word 村田.doc

Microsoft PowerPoint - 100826上西説明PPT.ppt

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

研究の中間報告

核内受容体遺伝子の分子生物学

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甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

検査の重要性 分娩前後は 乳房炎リスクが高まる時期 乾乳軟膏の効果が低下する分娩前後は 乳房炎感染のリスクが高まる時期です この時期をどう乗り越えるかが 乳房炎になるかどうか重要なポイントです 乾乳期に分娩前乳房炎検査を実施して 乳房炎の有無を確認 治療を行い泌乳期に備えます 分娩前後いかに乗り切る

2. 馬の栄養 1) エネルギーエネルギーとは 生命を維持し運動する燃料である 炭水化物 脂肪 タンパク質の 3 つがエネルギー源となる ただし タンパク質がエネルギーとして利用されるのは 炭水化物の供給不足のときでありあまり好ましい状態ではない 1 炭水化物すぐにエネルギーとして利用できる 穀類に

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平成18年度「普及に移す技術」策定に当たって

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乳牛の繁殖技術と生産性向上

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児に対する母体の甲状腺機能低下症の影響を小さくするためにも 甲状腺機能低下症を甲状腺ホル モン薬の補充でしっかりとコントロールしておくのが無難と考えられます 3) 胎児 新生児の甲状腺機能低下症 胎児の甲状腺が生まれながらに ( 先天的に ) 欠損してしまう病気があります 通常 妊娠 8-10 週頃

血糖値 (mg/dl) 血中インスリン濃度 (μu/ml) パラチノースガイドブック Ver.4. また 2 型糖尿病のボランティア 1 名を対象として 健康なボランティアの場合と同様の試験が行われています その結果 図 5 に示すように 摂取後 6 分までの血糖値および摂取後 9 分までのインスリ

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分析にあたり 血統情報については 導入市場が 北海道 東北および九州と離れ 繁殖牛の母集団の血統情報に大きな差異が予測されるため 種雄牛のみを取り入れることとした ただし 遺伝的要因として取り上げた種雄牛に関して 後代産子牛が 2 頭以下の種雄牛については 本分析からは除外した すなわち 血液成分お

日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録

研究の中間報告

第三問 : 次の認知症に関する基礎知識について正しいものには を 間違っているものには を ( ) 内に記入してください 1( ) インスリン以外にも血糖値を下げるホルモンはいくつもある 2( ) ホルモンは ppm( 百万分の一 ) など微量で作用する 3( ) ホルモンによる作用を内分泌と呼ぶ

解糖系でへ 解糖系でへ - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 AT AT リン酸化で細胞外に AT 出られなくなる 異性化して炭素数 AT の分子に分解される AT 2 ホスホエノール AT 2 1

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ドリル No.6 Class No. Name 6.1 タンパク質と核酸を構成するおもな元素について述べ, 比較しなさい 6.2 糖質と脂質を構成するおもな元素について, 比較しなさい 6.3 リン (P) の生体内での役割について述べなさい 6.4 生物には, 表 1 に記した微量元素の他に, ど

解説 新しい牛群検定成績表について ( その 26) ボディコンディションスコアの判定 電子計算センター次長相原光夫 牛群検定におけるボディコンディションスコア (BCS) は 平成 23 年度から開始した最も新しい検定項目です その活用法は 牛群検定の 4 つの機能 (1 飼養 ( 健康 ) 管理

第12回 代謝統合の破綻 (糖尿病と肥満)

3 特集夏場の乳成分維持顧みて 広酪では二〇十四年三月に みわ 庄原両TMRセンター を統合し老朽化した施設を整備して新生 みわTMRセンター を操業しました この施設では 広酪において初めて飼料用稲WCSを原料に用い 良質で一円でも安いTMR飼料の供給を通じて 酪農家の利益向上への貢献を目的に 年

脂質の分解小腸 脂肪分解とカルニチン < 胆汁 > 脂肪の乳化 < 膵液 膵液リパーゼ ( ステアプシン )> 脂肪酸 グリセリン 小腸より吸収吸収された脂肪酸は エステル結合により中性脂肪として蓄積されます 脂肪酸は 体内で分解されエネルギーを産生したり 糖質や余剰のエネルギー産生物質から合成され

平成 30 年度アグリ技術シーズセミナー in 沖縄 沖縄産資源を活用したヤギ用飼料の開発と 沖縄肉用ヤギのブランド化へ向けた研究 取組 琉球大学農学部長嶺樹

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カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

通常 繁殖成績はなかなか乳量という生産性と結びつけて考えることが困難なのですが この平均搾乳日数という概念は このように素直に生産性 ( 儲け ) と結びつけて考えることができます 牛群検定だけでなく色々な場面で非常に良く使われている数値になりますので覚えておくと便利です 注 1: 平均搾乳日数平均

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ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

平成 30 年度 試験研究の概要 平成 30 年 4 月 地方独立行政法人北海道立総合研究機構農業研究本部根釧農業試験場 0

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周産期病とその予防 1 京都大学大学院農学研究科 久米新一

周産期病の発生要因は? 動物は分娩時にさまざまなリスクが発生するが 体内代謝などを適応させてリスクを回避するしくみがある 高泌乳牛では遺伝的能力が向上したため 分娩時のリスクが高まっている (NEFA 増加 低 Ca 血症など ) 不適切な栄養管理などが加わると代謝機能が阻害され 周産期病が多発する

周産期病の予防は? 周産期病の発生にはさまざまな要因が複雑に関与している 高泌乳牛の体内代謝を正常化する栄養管理を実践し 周産期病を予防する 周産期病の予防 ( 優先順位 ): エネルギー不足と低 Ca 血症を改善することが重要

分娩前後の DMI 減少 ビタミン 微量ミネラル 抗酸化物質の不足 高 DCAD 低 Mg 飼料 免疫能低下 低 Ca 血症筋収縮減退 負のエネルギー タンハ ク質バランス NEFA 増加 跛行 ケトーシス 脂肪肝 乳房炎 ルーメン胎盤停滞アシドーシス 子宮炎 周産期病の発生要因 飼料中有効繊維の不足 乳熱第四胃変位 Goff(2006)

乳牛の除籍理由 ( 牛群検定成績 : 平成 22 年 ) 25 20 % 15 10 北海道都府県 5 0 乳用売却低能力繁殖障害 疾病 乳器障害 死亡 北海道 都府県 肢蹄故障 12.7 4.7 消化器病 2.2 1.9 起立不能 5.0 2.7 乳房炎 16.4 6.2

乳量 (kg) 10000 9000 8000 7000 6000 図 乳量増加と乳牛の生体機能 ( 牛群検定 : 北海道 ( ) と都府県 ( )) 5000 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 年 乳牛 : 摂取した栄養素を乳生産に優先的に利用する 乳牛の乳量が急増したが 遺伝子 細胞 組織 器官の何が変わったか?( 体内代謝が活発になり 酸素消費量 血流量が増加 ) 動物の細胞 ( 約 60 兆 ) は 1 年で 90% % 以上入れ替わるが 生体機能に変化は生じるか? 後継牛の遺伝的能力は母牛より高い ( 栄養管理の改善が常に必要 )

図 分娩直後の乳牛の特徴 : 乳量の急増 乾物摂取量 (kg/ 日 ) 体重 (kg) と不十分な乾物摂取量による栄養不足 24 20 16 12 800 700 600 500 8-14 0 14 28 42 分娩前後 ( 日 ) -14 0 14 28 42 分娩前後 ( 日 ) 乳量 (kg/ 日 ) 血漿中遊離脂肪酸 (meq/l) 50 40 30 20 1.2 0.8 0.4 0 0 14 28 42 分娩後 ( 日 ) -14 0 14 28 42 56 分娩前後 ( 日 )

移行期 ( 周産期 ) の栄養管理の重要性 -- 乳牛の栄養管理のFinal Frontier 移行期 (Transition Period) とは分娩前 3 週間と分娩後 3 週間の期間 : 栄養管理の最も難しい時期 (1995 年の J.Animal Science の 3 編の論文を契機 ) 移行期の栄養管理が不十分だと -- 代謝障害の増加 乳生産 繁殖成績の低下

高泌乳牛の代謝特性と周産期病 体内代謝の急激な変動 : リスク要因 栄養管理などの不備 : 周産期病の増加 周産期の免疫機能の低下

表, 分娩 1 週間前 (3 日間 ) と分娩 2 ー 4 日後 (3 日間 ) の乾物摂取量 (n=4) 分娩前ク ラスアルファルファ 分娩後ク ラスアルファルファ 体重, kg 754 733 711 643 増体, kg/ 日 0.15 0.65-4.79-6.50 DMI,kg/ 日 10.0 11.0 13.3 13.3 乳量, kg/ 日 29.5 31.9 乾物消化率, % 74.1 70.8 71.6 73.1 CP 消化率,% 71.8 70.8 70.5 72.5 N 蓄積量, g/ 日 49 64-93 -72 分娩直後 : 消化率は高いが DMI が極度に少ない

エネルギー摂取 ( 炭水化物 脂肪 蛋白質 ) 糞 (VFA) エネルギー基質 +O 2 肺 O 2 CO 2 CO 2 +H 2 O+N 化合物 尿 糞 乳成分 貯蔵 ( グリコーゲン 体脂肪 アミノ酸 ) 61 ATP :39 ( エネルギー源 ) 体内代謝 ( 乳生産 ) 図 分娩直後の乳牛のエネルギー代謝 熱

乳牛のエネルギー利用 ルーメン粘膜肝臓末梢血末梢組織 酢酸 酢酸 プロピオン酸糖新生ク ルコースク ルコース 酪酸 β- ヒト ロ β- ヒト ロ オキシ酪酸 オキシ酪酸 酢酸の 78% は骨格筋 心筋 乳腺などで消費 ( 末梢血 VFA の 95% は酢酸 : エネルギー源 ) 分娩前後には筋肉のアミノ酸などから 糖新生でグルコースを産生することが必要になる ( タンパク質をエネルギーとして使いたくない )

図 乳牛の乳量と乳糖の関係 ( グルコースの必要性 ) 乳量 (k g / 日 ) 45 40 35 30 25 乳成分 (%) 5 4.5 4 3.5 3 脂肪率蛋白質乳糖 20 0 2 4 6 8 10 泌乳期 ( 月 ) 2.5 0 2 4 6 8 10 泌乳期 ( 月 ) 乳量増加は乳糖 ( グルコース ) の増加が重要 : 浸透圧の関係 ( 乳糖が多いと乳腺に水の移行が増加する )

ケトーシス 脂肪肝の発生 ケトーシス : 分娩直後の体脂肪の大量動員により血中遊離脂肪酸が急増して脂肪酸代謝障害が生じると, 体内にアセト酢酸などのケトン体が増加し, 痙攣, 麻痺などの脳 神経障害を起こす ( 糖質不足 : 血漿ク ルコースの低下 ) 脂肪肝 : 肝臓に大量に動員された脂肪を処理できなくなると大量のケトン体の生成による重度の中毒症状と肝機能の減退を示す 分娩直後 ~10 日頃までのエネルギー代謝異常 ( 不足 ) によるケトーシス 脂肪肝が問題 (1980 年代 : 分娩 2~4 週後に多発 )

図 初乳中への免疫 栄養成分の分泌 -- 子牛の健康維持と乳房炎の予防 乳成成分 (%) 15 10 5 タンパク質脂肪乳糖 乳成分 (mg/dl mg/dl) 250 200 150 Ca P K 0 0 1 2 3 4 分娩後 ( 日 ) 100 0 1 2 3 4 分娩後 ( 日 ) 初乳量の急増による乳中への栄養素の多量分泌が周産期病の一因になる : カルシウムとリン

飼料 乳牛の分娩直後の Ca 出納 (g/ 日 ) 腸 細胞外液 Ca 貯蔵量 (8-10g) 血漿中 Ca 貯蔵量 (2.5-3.0g) 骨 (Ca の 99%) 糞 尿 (0.2-1.0g) 乳 (20-30g) 胎児 (0) 初乳中への急激な Ca 分泌量への対応が遅れる

表, 分娩 1 週間前 (3 日間 ) と分娩 2 ー 4 日 後 (3 日間 ) のミネラル出納 (n=4) 分娩前分娩後ク ラスアルファルファク ラスアルファルファ DCAD, meq/kg 178 186 134 152 尿量, kg/ 日 11.3 12.6 15.5 22.9 尿中 ph 8.20 8.31 8.19 7.75 Ca 摂取量,g/ 日 46.6 81.3 69.5 111.0 蓄積量 11.7 18.9-20.3-1.4 K 摂取量,g/ 日 194.8 203.7 218.9 192.5 蓄積量 0.1 2.9-50.2-18.9 分娩直後はミネラルの蓄積もマイナスになる

NRC2001 の乳熱発生要因 1)K あるいは Na 過剰摂取による代謝性アルカローシス 副甲状腺ホルモン (PTH) 受容体の機能低下 活性型ヒ タミン D 低下による Ca 吸収量減少 骨吸収減少 2) 妊娠牛の低 Mg 血症 PTH 分泌量減少と PTH 受容体の機能低下

表 飼料のミネラル含量 ( 乾物当たり %) と イオンバランス (DCAD) Na K Cl S DCAD 配合飼料 0.10 0.81 0.20 0.22 59 大豆粕 0.02 2.33 0.02 0.40 350 イタリアンライク ラス 0.08 3.13 1.79 0.24 184 アルファルファ 0.05 3.23 1.02 0.29 379 オーチャート ク ラス 0.27 2.11 1.17 0.21 200 コーンサイレーシ 0.03 1.00 0.27 0.09 139 注 )DCAD=((Na/23.0+K/39.1)-(Cl/35.5+S/16.0)) 10,000( ミリ当量 /kg) わが国では牧草のカリウム含量が非常に高い

図 ク ラス区 ( ) アルファルファ - 正常 ( ) アルファファ - 乳熱 ( ) の血液成分 血漿中 Ca (mg/dl) 10 8 6 4-14 -7 0 7 分娩前後 ( 日 ) 血漿中 PT TH (pg/ml) 1500 1000 500 0-14 -7 0 7 分娩前後 ( 日 ) アルファルファ給与による乳熱発生 :K 含量の高いこと (3.4%) が一因である

図 DCAD((Na+K)-(Cl+0.6S)) 給与 による乾物摂取量の減少 ( 人為的 ) (Charbonneau ら 2006)

乳牛の妊娠期間の血漿 乳中エストロゲンの上昇 ( 乳腺の発達などに必須 )(Pape- Zembito ら 2008) 分娩前のDMI の減少と免疫機能の低下 : 妊娠末期の血漿中エストロン (E1) とエストラジオール (E2) の上昇が影響する

骨粗鬆症とエストロゲン ( 閉経後 ) エストロゲン受容体 : 骨芽細胞と破骨細胞 卵巣機能低下によるエストロゲン不足 ( エストロゲンは骨のCa の保持に重要 ) 骨吸収が増加して 骨から Ca が損失する ー乳牛の分娩前の高エストロゲンは骨 吸収を抑制する

乳腺と免疫機能 乳牛の分娩前後は免疫能が低下する 1) 乳腺には栄養素が豊富に含まれていること 2) 泌乳開始で乳頭口が開くことなどにより 有害病原菌が乳房に侵入しやすい 乳腺の分娩前後の免疫機能 1) 子牛の受動免疫を高めるために免疫成分 (IgG IgA など ) を乳腺で多量生成 2) 乳線の免疫成分の生成が高まることは 乳腺への細菌感染 ( 乳房炎 ) も予防する

表 牛とヒトの血清 乳の免疫ク ロフ リン濃度 初乳常乳血清 ウシ IgG 1 46.40 0.58 11.20 IgG 2 2.87 0.06 9.20 IgA 5.36 0.08 0.37 IgM 6.77 0.09 3.05 ヒト IgG 0.43 0.04 12.10 IgA 17.35 1.00 2.50 IgM 1.59 0.10 0.90 (mg/ml) (Weeler 2007) 牛は妊娠中に胎盤を介して IgG が子牛に移行しない

周産期病発生のリスク要因 1. 分娩前後の体内代謝 内分泌機能の急激な変動 ( 乳生産の増加が影響 ) -- 代謝障害 繁殖障害の増加 2. 分娩前後の免疫機能の低下 -- 病原菌の体内侵入による乳房炎などの疾病増加 ( 乳腺に IgG が多いことは細菌感染から乳腺を保護している ) 高泌乳牛は分娩に伴うリスクが高く 精密な栄養管理による周産期病の予防が必要

移行期の課題と飼料給与 栄養管理の改善が乳量増加に追いつかない 粗飼料( イネ科 ) の品質が改善されない 1) 分娩直後の乾物摂取量の早期増加を図る 2) 飼料から栄養素を過不足なく摂取する 3) ルーメン環境の適正維持と絨毛の発達促進 良質粗飼料を活用して TMRで給与する 分娩前の濃厚飼料の給与比率を3 割程度 移行期はほぼ同じ粗飼料構成にする

栄養管理による周産期病の予防 周産期病が予防できると 酪農家の収益が増加する : 周産期病が発生すると 治療の経費 乳量減少 淘汰などによる減収が大きい 生理機能に基づいた栄養管理の改善 乾物摂取量と飲水量の増加による栄養生理機能の改善

動物の恒常性と適応 1) 動物の恒常性維持機能 : 動物は常に変動する体外からの情報を受け取り それに適切に対応しながら 体内の生理機能を常に一定の範囲内に維持して 健康を保っている 2) 適応の重要性 : 外部環境あるいは体内の変化に対して 神経系 内分泌系 免疫系などの機能を高めて 体内の変化を最小限にする

図 環境の変化に対する動物の適応 環境ー動物 -- 分娩時の生理的適応は? 環境の変化 体内平衡の乱れ センサー 神経系など 体内の変化 体内平衡の回復 体内代謝の反応 中枢神経系神経 内分泌 免疫系 適応栄養素

図 アルファルファ区 ( ) とク ラス区 ( ) の血漿中 Ca 濃度と副甲状腺ホルモン (PTH) 血漿中 Ca(mg/dl) 11 10 9 Alfalfa Grass H(pg/ml) 血漿中 PT 1000 800 600 400 200 Alfalfa Grass 8-14 0 14 28 42 56 分娩前後 ( 日 ) 0-14 -7 0 7 分娩前後 ( 日 ) 乳牛は分娩前後の生理的危機を常に正常化するように機能する ( 栄養管理はそれを助けることが重要 )

良質粗飼料を活用した エネルギー代謝の改善 良質粗飼料は消化率が高く 乾物摂取量が増加する 高泌乳牛は飼料の利用効率 ( 吸収率 代謝率 ) が向上 -- 乳量増加につながる

給与飼料 ( サイレージ ) の成分含量 (DM%) : トウモロコシサイレーシ は大豆粕を添加 イネ科牧草アルファルファトウモロコシ CP 11.9 18.3 11.1 NDF 61.9 44.9 37.8 ADF 37.2 35.3 23.3 NDICP 2.6 2.4 0.7 ADICP 0.6 1.1 0.5 ADL 4.6 7.0 3.2 EE 4.2 4.3 3.2 Ash 6.9 10.5 5.3

図 サイレージの TDN と飼料中 ADF ADL 含量の関係 TD (% %) 80 75 70 65 60 y = -0.76x + 92.13 R² = 0.57 TD (% %) 80 75 70 65 60 y = -2.61x + 80.93 R² = 0.85 55 55 50 50 20 25 30 35 40 45 2 4 6 8 10 ADL(%) ADF(%) 良質粗飼料は TDN が高い (70% 以上 )

図 乾乳牛と泌乳牛 ( 粗濃比 :60:40 乳量 : 30.1kg) のエネルギー代謝 (HP; 熱発生量 ) エネルギー (M MJ/ 日 ) 160 120 80 40 400 蓄積 HP メタン 300 尿糞 (MJ/ 日 ) エネルギー ( 200 100 蓄積乳 HP メタン尿糞 0 0 オーチャート ク ラスアルファルファコーン泌乳牛 TDN(%) 67.8 62.7 74.5 69.7 代謝率 (%) 52.8 51.7 59.6 59.8 HP(MJ/ 日 ) 85.2 71.6 76.0 113.0

図 アルファルファ給与区 ( ;n=4) とコーン + アルファルファ給与区 ( ;n=4) の乾物摂取量と乳量 25 50 乾物摂摂取量 (kg/ 日 ) 20 15 10 乳量 (kg/ 日 ) 40 30 5-14 -7 0 7 14 分娩前後 ( 日 ) 20 0 7 14 分娩前後 ( 日 ) 高泌乳牛 : 分娩直後の乳量の急増が特徴

図 アルファルファ給与区 ( :n=4) とコーン + アルファルファ給与区 ( :n=4) の血液成分 血漿グルココース (mg/dl) 100 80 60 40-14 -7 0 7 14 分娩前後 ( 日 ) 血漿 NEFA (meq/l) 1 0.8 0.6 0.4 0.2 分娩後の血漿中遊離脂肪酸の急増とその後の回復 0-14 -7 0 7 14 分娩前後 ( 日 )

周産期の乳牛の飼養管理 : グラス区は遺伝的能力を満たしていない飼い方 30 50 DMI (kg/ 日 ) 25 20 15 10 5-4 -2 0 2 4 6 8 10 分娩後 ( 週 ) 乳量 (kg/ 日 ) 40 30 0 2 4 6 8 10 分娩後 ( 週 ) 図 アルファルファ給与区 ( ;n=7) グラス給与区 ( ;n=6) コーン + アルファルファ給与区 ( ;n=4) の乾物摂取量と乳量分娩後の粗濃比 : 50:50( グラス アルファルファ ) 60:40( コーン ). 分娩前の粗濃比 :70:30( 各給与区とも )

泌乳牛の体重と DMI/ 体重 : 目標 : 泌乳前期の DMI/ 体重を 4% 以上 800 4 体重 (kg kg) 750 700 650 DMI/ 体重 (%) 3 2 600-4 -2 0 2 4 6 8 10 1-4 -2 0 2 4 6 8 10 分娩前後 ( 週 ) 分娩前後 ( 週 ) 図 グラス給与区 ( ) アルファルファ給与区 ( ) コーン + アルファルファ給与区 ( )

アルファルファとグラスサイレージ給与牛の乾物摂取量と反芻胃内滞留時間の関係 ( 上田ら 2004) 50 45 OG AL 反芻胃内滞留留時間 (h) 40 35 30 25 20 サイレージ大飼料片小飼料片 15 16 18 20 22 24 26 28 乾物摂取量 (kg/day) アルファルファは消化管通過速度が速い :DMI が多いサイレージ ( 約 2cm), 大飼料片 (5mm), 小飼料片 (1mm)

T D N 充足率 ( % ) 泌乳牛のエネルギーとタンパク質 100 80 60 の充足率 ( 日本飼養標準 ) 0 2 4 6 8 10 分娩後 ( 週 ) C P 充足率 ( % ) 図 アルファルファ給与区 ( ;n=7) グラス給与区 ( ;n=6) コーン + アルファルファ給与区 ( ;n=4) の TDN と CP 充足率 120 100 80 60 0 2 4 6 8 10 分娩後 ( 週 ) グラス給与区では乳量が少なく TDN の充足率も低い : 周産期の栄養管理でもっとも問題の多い飼養法

泌乳牛の Ca と P の充足率 ( 日本飼養標準 ) C a 充足率 (% ) 140 120 100 80 60 40 0 2 4 6 8 10 分娩後 ( 週 ) P 充足率 (% ) 100 80 60 0 2 4 6 8 10 分娩後 ( 週 ) 図 アルファルファ区 ( ;n=7) グラス区 ( ;n=6) コーン + アルファルファ区 ( ;n=4) の TDN と CP 充足率 ミネラルでは P の充足率が低い

表, アルファルファ給与牛の 繁殖成績 ( 山田ら ) ク ラス区アルファルファ区 例数 14 13 初回排卵 日 35±18 37±19 受胎までの日数 94±33 102±30 受精回数 回 1.4±0.7 2.0±0.9 受胎頭数 13/14 12/13

図 乾乳牛と泌乳牛 ( 乳量 :29.5kg) の水摂取量と水損失量 80 80 80 80 100 100 100 100 120 120 120 120 日 ) 乳尿糞 80 80 80 80 100 100 100 100 120 120 120 120 日 ) 代謝水代謝水代謝水代謝水飼料水飼料水飼料水飼料水飲料水飲料水飲料水飲料水 0 20 20 20 20 40 40 40 40 60 60 60 60 80 80 乾乳牛乾乳牛乾乳牛乾乳牛泌乳牛泌乳牛泌乳牛泌乳牛水損失水損失水損失水損失 (kg/ (kg/ (kg/ (kg/ 日糞蒸発蒸発蒸発蒸発 0 20 20 20 20 40 40 40 40 60 60 60 60 80 80 乾乳牛乾乳牛乾乳牛乾乳牛泌乳牛泌乳牛泌乳牛泌乳牛水摂取水摂取水摂取水摂取 (kg/ (kg/ (kg/ (kg/ 日乳牛は分娩直後に大量の飲料水を必要とする

表 乾物摂取量 (DMI) 水摂取量 (TWI) と 飲水量 (DWI) の比較 (kg/ 日 ) 乾乳牛泌乳牛泌乳牛 / 乾乳牛 DMI 7.7 20.7 2.69 TWI 30.3 98.4 3.25 DWI 16.0 77.6 4.85 分娩前と比較して 泌乳牛では乾物摂取 量の増加率よりも飲水量の増加率が高 い : 水が飲めないと代謝異常になる

ミネラル栄養の改善による 乳熱の予防 カリウム摂取量の低減による乳熱予防 イオンバランスによる乳熱予防

NRC2001 の乳熱予防法 1) 飼料中のKあるいはNaの低減 飼料配合 コーンサイレーシ 利用によるK 低減 2) 陰イオン塩の給与 (Na+K)-(Cl+S) の式で0ミリ当量 /kg 程度 3)Mg 剤の給与 分娩前の飼料中 Mg 含量 :0.35-0.40% 4)CaとPの給与 適正なCa 給与量は未定 P 給与量は40-50g ( 分娩前のDMIが増加したため Caの低減はほとんど不可能 )

図 アルファルファ給与区 ( ) とコーン + アルファルファ給与区 ( ) の血漿 Ca と Pi 濃度 11 (mg/dl) 血漿中 Ca 10 9 8 血漿 Pi (mg/dl) 6 4 7-14 -7 0 7 分娩前後 ( 日 ) 2-14 -7 0 7 分娩前後 ( 日 ) 血漿 Ca と Pi 濃度を正常に維持して 乳熱を予防する

図 アルファルファ給与区 ( ) とコーン + アルファルファ給与区 ( ) の血漿 PTH と活性型ビタミン D 濃度 1000 500 150 100 50 血漿中 PTH (pg/ml) 血漿 1,25( (OH)2D (pg/ml) 0-14 -7 0 7 分娩前後 ( 日 ) 0-14 -7 0 7 分娩前後 ( 日 ) 血漿中副甲状腺ホルモンと活性型ビタミン D は分娩直後に急増して 乳熱を予防する

乳牛の分娩前後の Ca 代謝 ( 乳熱予防に対する適応反応 ) 副甲状腺ホルモン分泌 腎臓 :Ca 再吸収 (PTH) 活性型 VD 分泌 骨吸収の増加小腸のCa 吸収増加 (PTH 受容体 ) ( ビタミンD 受容体 ) 分娩時における Ca 代謝の正常化

表 乳牛のCa K 摂取量と乳熱発生 低 Ca 血症 (7.5mg/dl 以下 ) の関係 (Goff,1997) 飼料中 K 1.1% 2.1% 3.1% Caの影響 Ca, 0.5%( 発生頭数 / 供試頭数 ) 乳熱発生 0/10 4/11 8/10 12/31 低 Ca 血症 9/10 11/11 10/10 30/31 Ca, 1.5% 乳熱発生 2/10 6/9 3/13 11/32 低 Ca 血症 9/10 9/9 12/13 30/32 Kの影響 (K 含量が2.1% 以上で乳熱増加 ) 乳熱発生 2/20 10/20 11/23 低 Ca 血症 18/20 20/20 22/23

図 乳牛のカリウム摂取量と尿量の関係 400 乳尿糞 30 y = 0.0688x + 2.4733 R² = 0.943 K 出納 (g/ 日 ) 300 200 100 蓄積 尿量 (k kg/ 日 ) 20 10 0 乾乳牛 泌乳牛 0 0 100 200 300 400 500 尿中 K 排泄量 (g/ 日 ) カリウム排泄のために大量の飲料水が必要になる : 水が不足するとカリウムを排泄できない

表. 乾乳牛の K 出納 牧草牧草 + トウモロコシ トウモロコシ (n=24) (n=4) (n=6) DMI kg/ 日 7.9a 7.2 6.8b 水摂取量 kg/ 日 34.0a 24.8b 18.1b 尿量 kg/ 日 13.7a 9.4 7.5b 飼料中 K % 2.7a 1.8b 1.3b K 摂取量 g/ 日 210a 132b 86b K 尿中排泄量 165a 113 65b K 蓄積量 14-7 2 a,b P<0.05

(Charbonneau ら 2006) 図 DCAD(5 種類の式 ) 給与と乳熱の関係

移行期の栄養管理のポイント 1. 分娩後の乾物摂取量を早期に高め て エネルギーや栄養素の充足を早め るための精密な栄養管理 ( 飼料設計 ) 2. 乳牛の健康を維持し 分娩前後の代 謝障害 繁殖障害を減らすための適切 な栄養管理 ( イオンバランスなど ) 高品質粗飼料を活用した乳量増加 疾 病予防 繁殖成績改善