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九州支部卒後研修会症例

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当院の血液検査室の概要 血液検査 system 自動血球分析装置塗抹標本作製装置 La-vietal LS (Sysmex 社 ) XN-3000 (Sysmex 社 ) XN 台 ( RET WPC PLT-F の各チャンネル ) XN 台 SP-10 (Sysmex

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10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

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日臨技九州支部血液卒後セミナー 解説 3


95

入院時検査所見検査所見 WBC /µl RBC /µl Hb 13.4 g/dl Ht 38.4 % MCV 85.7 Fl MCH 29.2 pg MCHC 34.9 % PLT /µl PT-% 63.8 % PT-INR 1.23 APTT

dr

1 8 ぜ 表2 入院時検査成績 2 諺齢 APTT ALP 1471U I Fib 274 LDH 2971U 1 AT3 FDP alb 4 2 BUN 16 Cr K4 O Cl g dl O DLST 許 皇磯 二 図1 入院時胸骨骨髄像 低形成で 異常細胞は認め

生化学検査 臨床検査基準値一覧 近畿大学病院 (1) 検査項目 基準値 単位 検査項目 基準値 単位 CRP mg/dl WBC /μl Na mmol/l M RBC K mmol/l F 3.86-

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第 15 回学術部一泊合同研修会 症例検討 臨床化学 事例 1 28 歳 男性 項目 TP ALB CRE UN AST ALT ALP LDH CK 初検 ( 再測定前 ) 測定値 項目 測定値 7.6 CKMB TC Na K Cl 1

CD1 data

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第 34 回京阪血液研究会松下記念病院 確定診断が得られなかった MF から移行した血液疾患症例 高知医療センター SRL 検査室 根来利次 筒井敬太 筒井義和 福留由香里 山崎喜美高知医療センター 血液内科上村由樹 今井利 町田拓哉 駒越翔山根春那 橋本幸星

Sample2 g/dl Target1 : 6.01 g/dl TP Target2 : 8.39 g/dl

24 末梢血塗抹標本における低分葉好中球の分類および報告方法について 井本清美 1) 中川浩美 2) 山﨑法子 1) 山﨑哲 1) 聖マリアンナ医科大学病院 1) 広島大学病院 2) Web アンケートを用いた調査研究第 1 回調査報告 目的 先天性または後天性に出現する低分葉成熟好中球の形態学的特


基準値一覧 ( 平成 24 年 6 月 1 日 ) 独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床検査科

第28回血液部門卒後研修会 症例7

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腎性尿崩症の3例

遡及調査にて77日前の献血時のHBVウイルス血症が確認できた急性B型肝炎の一例

(1) ) ) (2) (3) (4) (5) (1) (2) b (3)..

125 2 P 1st washout 2 PB P mg/dL nd washout 2 P 5.5mg/dL< mg/dL <2.5mg/dL P P 2 D D 3 Ca 10


精度管理調査の目的

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

医学教育用基準範囲 JCCLS 共用基準範囲に基づく 医学部学生用基準範囲設定についてのパブリックコメント公募 JCCLS 基準範囲共用化委員会 JCCLS 共用基準範囲は一般的な臨床検査 40 項目の基準範囲であり 日本臨床検査医学会 日本臨床化学会 日本臨床衛生検査技師会 日本検査血液学会の共同

母子感染

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症例 1

パネルディスカッション 2 Q 専門領域について選択してください 1. 消化器内科 2. 消化器外科 3. 放射線科 1% 4% 3% 21% 4. その他の医師 5. その他 ( 医師以外 ) 71%

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精度管理調査の目的

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デスフルラン

小児の難治性白血病を引き起こす MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見 ポイント 小児がんのなかでも 最も頻度が高い急性リンパ性白血病を起こす新たな原因として MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見しました MEF2D-BCL9 融合遺伝子は 治療中に再発する難治性の白血病を引き起こしますが 新しい

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血管周囲に細胞浸潤と肉芽腫形成を認めた Figure した ステロイドを漸減し 9月29日プレドニゾロ 3 ン25 mg/dayで退院となった 退院時の下腿筋MRI 入院後経過 Figure 4 検査でも改善を認めた Figure 2b 以後ステロイド サルコイドーシスと診断 プレドニゾロン60 m

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第 7 6 回内科学研鑽会臨床病理検討会 日時 :2013 年 2 月 2 日 ( 土 ) 午後 2 時から場所 : 市立堺病院 ( 大阪府堺市堺区南安井町 1 丁 1 1) 3 階講堂症例 : 股関節痛と発熱を来たし 死の転帰をとった 47 歳男性 縮 ( 大腿周径 :R 46.

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/12/28 UP 3+, TP 4.2g/dl, Alb 1.9g/dl PSL 50mg/day 1/17 PSL 45mg/day PSL 2006/4/4 PSL 30mg/day mpsl mpsl1000mg 3 2 5/ :90 / :114/64 mmhg

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第 6 回瀬戸内血液研修会のご案内 新年あけましておめでとうございます 皆様お忙しくお過ごしのこととご拝察いたします さて 瀬戸内血液研修会の第 6 回を下記の日程 要綱で行いますのでご案内致します 第 5 回において次回のご案内をしたとおり 骨髄増殖性腫瘍 多発性骨髄腫のテーマで行います 2016

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血液部門精度管理調査 責任者済生会高岡病院 高田哲郎

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静岡県臨床検査技師会精度管理調査

①免疫介在性血小板減少症(犬)

59 20 : 50 : : : : : 2 / :20 / 25 GTP /28 5/3 5/4 5/8 6/1 1 7kg 6/9 :178.7cm :68.55kg BMI:21.47 :37.3 :78 / :156/78mmHg 1

72 20 Ope / class Alb g/ cm 47.9kg : /min 112/60m

063 特発性血小板減少性紫斑病

白血病とは 異常な血液細胞がふえ 正常な血液細胞の産生を妨げる病気です 血液のがん 白血病は 血液細胞のもとになる細胞が異常をきたして白血病細胞となり 無秩 序にふえてしまう病気で 血液のがん ともいわれています 白血病細胞が血液をつくる場所である骨髄の中でふえて 正常な血液細胞の産 生を抑えてしま

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愛知県臨床検査標準化ガイドライン 血液特殊染色アトラス 愛知県臨床検査標準化協議会 AiCCLS : Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization

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2010 年 6 月 25 表 身体所見 134 cm 31 kg /60 mmhg 83/ ,

topics vol.15 光と ICG 修飾リポソームを用いた次世代がん治療 岡本芳晴鳥取大学農学部共同獣医学科獣医外科学教室教授 要約 今回新たに開発したICG 修飾リポソーム (ICG-lipo) と光源装置を用いたがん治療の原理を紹介します 本治療は ICG-lipoを血管内に投与し EPR

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48 表1 主な術前末梢 ll検査値 GPT 311U AFP ALP l8 l IU CA n9 nil 2n9 ml 2U m1 LDII 3361U CA125 Ou lni GOT 211U CEA RBC ALB 3 7g dl Ilb l2 09dl A G 1 42 Ht

日本呼吸器学会雑誌第47巻第6号

はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

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学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

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2 参考 検体投入部遠心機開栓機感染症検査装置 感染症検査装置 (CL4800)

(1) 化学免疫検査 (2/6) は緊急項目 は迅速加算項目 CK AMY 44~132 U/L P-AMY 15~50 U/L CKMB 25 未満 U/L CKMB mass 5.0 以下 TTT 1~8 KU ZTT 4~12 KU IgG 870~1700 IgA 110~410 IgM 男

抗血栓薬内服の必要な ITP 患者の管理 杉本健 1) 大幡真也 1) 髙橋利匡 2) 阿部智喜 3) 古賀明日香 3) 竹内健人 2) 髙吉倫史 2) 西山勝人 3) 原賢太 2) 安友佳朗 3) 北播磨総合医療センター 1) 血液腫瘍内科 2) 糖尿病 内分泌内科 3) 内科 老年内科 内容の一

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(1) 化学免疫検査 (2/6) は緊急項目 は迅速加算項目 CK 男性 :62~287 女性 :45~163 U/L AMY 44~132 U/L P-AMY 15~50 U/L CKMB 25 未満 U/L CKMB mass 5.0 以下 TTT 1~8 KU ZTT 4~12 KU IgG


50 生化学検査 420 3J 総ビリルビン 数字 PQ 5 NNN.N mg/dl mg/dl 3J010 総ビリルビン 3J 生化学検査 430 3B GOT(AST)

骨髄異形成症候群 by KI/NK 入院日年月日 症状 : 体重減少 [ ] 発熱 [ ] 倦怠感 [ ] 浮腫 [ ] めまい [ ] リンパ節腫脹 ( 鼻腔 扁桃 頸部 腋窩 鼠径 )[ ] 貧血 [ ] 赤芽球血症 [ ] 巨赤芽球 [ ] 環状鉄芽球 [ ] 多核赤芽球 [

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

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日本呼吸器学会雑誌第44巻第7号

indd

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日臨技九州支部卒後研修会第 28 回血液検査研修会症例 4 2017.2.18 宮崎県立宮崎病院野中真由美

症例 症例 80 歳代男性 主訴 発熱 下血 現病歴 2 日前より発熱 嘔気があり 腹痛を伴う下血も見られたため近医を受診 血液検査にて白血球増加と血小板減少を認めたため精査 加療目的で当院へ転院となった 既往歴 胆嚢摘出術 前立腺癌術後 身体所見 眼瞼結膜蒼白 眼球結膜黄染なし胸部 : 心音 呼吸音異常なし腹部 : 平坦 軟 圧痛なし歯肉腫脹なし 口腔内出血なし頸部リンパ節腫脹なし

初診時検査所見 生化学検査 T-Bil 1.36 mg/dl AST 65 U/L ALT 25 U/L LD 698 U/L ALP 217 U/L Na 136 mmol/l K 4.51 mmol/l Cl 103 mmol/l BUN 30.0 mg/dl Cre 2.01 mg/dl UA 7.3 mg/dl TP 5.3 g/dl Alb 3.0 g/dl CRP 9.52 mg/dl Fe 89 μg/dl フェリチン 812 ng/dl 末梢血検査 WBC 32,970 /μl RBC 295 10 4 /μl Hb 9.1 g/dl HCT 27.2 % MCV 92.0 fl MCH 30.7 pg MCHC 33.4 % RDW 14.0 % PLT 5.0 10 4 /μl 凝固検査 PT(sec) 16.1 sec PT (%) 54.6 % PT -INR 1.32 APTT 42.6 sec Fbg 287 mg/dl FDP 40.9 μg/ml D-dimer 12.2 μg/ml 感染症検査 HBs 抗原 (-) HCV 抗体 (-) TP 抗体 (-) HTLV-1 抗体 (-)

末梢血血液像 白血球分類 Myelo 1.0 % Meta 0.0 % Stab 0.0 % Seg 1.5 % Lymph 3.0 % Mono 0.0 % Eosin 0.0 % Baso 0.0 % OTHER 94.5 % OTHER: 芽球様細胞 大型 (20μm 前後 ) で N/C 比小 核網繊細 大型の核小体 (+) 好塩基性の細胞質に微細顆粒や空胞を認める

検査データのまとめ 異常所見 生化学 LD, フェリチン, CRP 高値 悪性腫瘍 感染症 etc 末梢血 白血球増加, 貧血, 血小板減少 血液像 芽球様細胞の増加疑われる疾患 急性白血病 追加検査 骨髄検査 ( 特殊染色 フローサイトメトリー 染色体 遺伝子 ) リゾチーム

PROMY 0.0 % MYEL 1.0 % META 0.3 % STAB 0.5 % SEG 0.7 % EOSIN 0.9 % BASO 0.0 % MONO 0.0 % **MYE-SUB** 3.4 % PRO-ERY 0.0 % BASO-ERY 0.4 % POLY-ERY 6.0 % ORTH-ERY 0.0 % **ERY-SUB** 6.4 % LYMPH 1.7 % PLASMA 0.5 % OTHER 88.0 % 骨髄検査所見 NCC : 305,000/μL MGK : <15/μL M/E : 0.53

芽球様細胞の特徴 ( 骨髄 ) 大型で N/C 比小 核網繊細で核小体をもつ 細胞質は好塩基性で空胞や顆粒をもつ

MPO 染色 細胞化学染色 EST 二重染色 NaF 阻害 陰性 α-nb : 陽性 リゾチーム : 53.3μg/mL( 基準値 5.0-10.2) 阻害あり

フローサイトメトリー T 系 CD1 0.2 CD2 1.9 CD3 0.5 CD4 25.1 T 系 TCR-αβ 0.5 TCR-γδ 0.4 cy CD3 4.1 CD19 1.3 CD5 0.5 CD7 1.4 CD8 0.5 B 系 CD24 8.0 cy CD22 9.3 cy CD79a 1.8 B 系 M 系 CD10 1.9 CD19 0.4 CD20 0.3 CD13 1.6 CD14 0.5 CD33 90.8 CD41 1.7 その他 cy μ 2.0 CD15 22.2 CD64 69.0 CD65 60.0 CD117 46.9 MPO 44.4 TdT 1.5 GP-A 5.9 その他 CD34 0.3 CD56 97.9 HLA-DR 77.1

染色体 遺伝子検査 A:48, XY, add(8)(p11.2), -17, add(19)(q13.1), -20, [ 4] +der(?) t(?;17)(?;q21), +mar1, +mar2, +mar3 B:49, idem, del(11)(q?), +mar4 [ 11] C:46, XY [ 1] 白血病キメラマルチスクリーニング : 検出せず

最終診断 急性単芽球性白血病 (Acute monoblastic leukemia)

臨床経過 WBC, Blast 35000 30000 25000 20000 15000 10000 5000 CZOP ST 合剤 morphine Blast WBC PLT CRP 0 day1 day2 day4 day7 WBC Blast PLT CRP PLT, CRP 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 本人と家族の意向で積極的な治療は望まず 骨痛と発熱に対してステロイドと NSAIDs を投与し改善がみられた 一時でも自宅への退院を希望されたが 感染による発熱もあるとして第 4 世代セフェム (CZOP) を投与開始 CRP の上昇と発熱が持続し入院 8 日目には胸部 X 線にてスリガラス影を認め 肺炎の発症を確認した 酸素化の低下による呼吸困難もあり 緩和の意味も含めてモルヒネの持続投与を開始した 入院 11 日目には急激に悪化し死亡された

急性単球性白血病 (AMoL) 白血病細胞の 80% 以上を単球系細胞 ( 単芽球 前単球 単球 ) が占め 顆粒球系細胞は 20% 以下である (WHO 分類 ) *FAB 分類 :NEC の 80% 以上を単球系細胞を占め 顆粒球系細胞は 20% 以下である 急性単芽球性白血病 (M5a) 80% 以上を単芽球が占める 急性単球性白血病 (M5b) 前単球が大半を占める ( 単芽球が 80% 未満 ) 出血傾向を呈することが多く 髄外腫瘤や皮膚 歯肉浸潤 中枢神経浸潤などもよく認められる

単球性白血病の診断ポイント 1 形態学的所見 ( 単芽球と前単球の区別 ) 2 細胞化学的所見 (MPO, EST 染色 ) 3 免疫形質学的所見 ( 細胞表面マーカー ) 4 染色体 遺伝子検査所見

1 単球系細胞の形態 単芽球 大型で 中等度から高度に塩基性を呈する 核は円形で核網は繊細 明瞭な核小体を認める 豊富な細胞質を有し 微細なアズール顆粒や空胞を有することもある 前単球 核形不整がみられる 細胞質は単芽球より塩基性が弱く アズール顆粒や空胞を有する

1 単球系細胞の形態 急性単球性白血病 (M5b) の前単球 骨髄疾患診断アトラス P158 より 不規則なくびれや脳回状の陥入を伴った形状不整な核を有し 細胞質の青みは単芽球よりもやや弱く多数のアズール顆粒や空胞を有する

単球系細胞の同定基準 (Goasguen J ら ) ( 核形 ) ( クロマチン ) ( 細胞質 ) ( コメント ) ( 単芽球 ) ( 前単球 ) ( 幼若単球 ) ( 成熟単球 ) Jean E. Goasguen, John M. Bennett, Barbara J. Bain, Teresa Vallespi, Richard Brunning, Ghulam J. Mufti Haematologica July 2009 94: 994-997;

2 単球の細胞化学的特徴 MPO 染色 単芽球は陰性 前単球は弱陽性 NSE 染色 単芽球 前単球ともに通常強陽性 (10~20% の症例は陰性 ~ 弱陽性 )

3 単球系細胞のマーカー 骨髄系 CD13, CD33, CD15, CD65 単球系 CD14, CD4(dim), CD11b, CD11c, CD64, CD68, CD36, リゾチーム M5aでは CD34(-), CD14(-) のことが多い (CD34は約 30% の症例に陽性 ) CD7, CD56 のアベラントマーカーは 25~40% の症例で発現 本症例は CD4(dim), CD33(+), CD56(+), CD64(+), CD65(+) CD117(+), MPO(+), HLA-DR(+) CD13( ー ), CD14( ー ), CD34( ー )

3 単球系細胞のマーカー Stage-1 Stage-2 Stage-3 CD11b 抗原発現強度 CD33 (+) CD13 ( ー ) HLA-DR (+) CD34 ( ー ) CD15 (+) CD14 ( ー ) 単球分化成熟方向 CD14 は単球系に特異性が高いが AML M5 における陽性率は高くない CD14*CD11b の組み合わせは成熟単球の比率を知るのに役立つ CD36 は単球 血小板 赤芽球に発現する CD11c は顆粒球 単球に発現し 単球での発現量が多い CD36*CD11c の組み合わせは幼若な単芽球の検索にも有効

4 染色体 遺伝子異常 t(9;11)(q22;q23):mllt3-mll 小児に多く見られる染色体異常で WHO 分類第 4 版では特定の遺伝子異常を有する急性白血病に分類 t(8;16)(p11.2;p13.3) 赤血球貪食像と凝固異常を呈することが多い

芽球の比較 M5a M0 M2 M7 ALL 大型 N/C 比小塩基性が強い微細顆粒 N/C 比大 核網繊細 ~ やや粗顆粒なし N/C 比大核網繊細顆粒を認める N/C 比大核網粗剛 bleb N/C 比大 核網繊細 ~ やや粗核の切れ込み

結語 単球性白血病では単芽球と前単球の鑑別が重要であり 細胞の特徴をしっかり理解する必要がある 単芽球と前単球の鑑別は 症例によって細胞形態や染色性も異なるため 同一標本内で典型的細胞との対比を行うことが重要なポイントである