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制定 改訂履歴 版数 制定日 施行日 制定理由 作成責任者 初版 日本組織適合性学会が開催する QCWS での HLA 検査を実施する際に用いる QCWS 参考プロトコルとして制定した WG 版数 改訂日 施行日 改訂理由 改訂内容 改訂責任者 2 2019 年 9 月 1 日 プロトコルの変更などに伴い 現状に合わせた記載変更 プロトコルの追加 変更 解析方法の説明を追加 WG

目 次 1. 検査の準備... 1 1.1 検査機器の準備検体処理... 1 1.2 検体の準備... 1 1.3 検査法の原理... 2 2. 検査手順... 3 2.1 準備... 3 2.2 操作手順 : クラスⅠ&Ⅱ(ICFA)... 3 2.3 操作手順 : クラスⅠ (ICFA)... 6 2.4 検査結果判定... 9 3. 検査時の注意点... 14 3.1 検体の準備... 14 3.2 検体レイアウト... 14 3.3 操作時の注意点... 15 参考文献... 15

1. 検査の準備 ICFA 法については市販キット (WAKFlow HLA 抗体クラス Ⅰ(ICFA) および WAKFlow HLA 抗体クラス Ⅰ&Ⅱ(ICFA): 湧永製薬 ) を用いた 検査法の原理 試薬 検体の準備について示す 1.1 検査機器の準備検体処理 1.1.1 測定機器 器具 資材 試薬の準備 測定機器 器具 資材 Luminex システム, パーソナルコンピュータ 96 穴 V 底プレート (*Thermo),96 穴 U 底プレート (*Corning), 1.5mL サンプルチューブ, マイクロピペット ( 可変式 ), ボルテックスミキサー, プレートミキサー, マイクロ遠心機, マイクロプレート遠心分離機 (2,000 g で使用可能なもの ),37 恒温水槽 * 参考商品を示す 試薬 ビーズミックス 10 倍濃度溶血試薬 10 倍濃度洗浄液 Ⅰ 10 倍濃度洗浄液 Ⅱ 10 倍濃度 Lysis 液 10 倍濃度 PBS 標識抗体陰性コントロール血清 1.2 検体の準備 1.2.1 検体準備 ( 血清 ( 血漿 )) 血清 ( 血漿 :EDTA 採血 ) を 10,000 g で 2 分間遠心する 1.2.2 検体準備 (ACD 加全血 ) 抗原として使用する検体が ACD 加全血の場合 以下のプロトコルに従って検体処理を行う 1) 2 ml の ACD 加全血を 15mL 遠沈管に分注する ( この時 液面の高さをマーカーでチェックしておく ) 2) PBS を 10 ml 加え 5~6 回 転倒混和する 3) 2,000 g, 2 分間遠心分離し 上清除去 ( 赤血球と白血球の層が沈殿するので その層を残す ) 4) PBS を加え 2 ml まで ( 操作 1. でチェックした位置まで ) メスアップし 5~6 回転倒混和する 調製した検体を使用する 1

1.3 検査法の原理 1.3.1 ICFA 法の概要および原理 immunocomplex capture fluorescence analysis (ICFA) 法は,Luminex システムに antigen capture 法を応用した方法であり,ICFA 法の開発により交差適合試験に Luminex システムの応用が可能となった ICFA 法による抗 HLA 抗体検査 ( 交差適合試験 ) は蛍光ビーズに HLA クラス Ⅰ 分子および HLA クラス Ⅱ 分子に対するモノクローナル抗体を結合して 可溶化した白血球から HLA クラス Ⅰ 分子および HLA クラス Ⅱ 分子をそれぞれ単離 ( 捕捉 精製 ) するものである 血清 ( 血漿 ) と反応させた白血球から HLA クラス Ⅰ 分子および HLA クラス Ⅱ 分子を単離すると 血清 ( 血漿 ) 中に抗 HLA クラス Ⅰ 抗体または抗 HLA クラス Ⅱ 抗体が存在している場合 抗体が抗原と結合した状態 ( 抗原抗体複合物 = 免疫複合体 ) でビーズに捕捉されることから R-phycoerythrin 標識抗ヒト IgG でそれぞれ HLA クラス Ⅰ 分子および HLA クラス Ⅱ 分子に特異的な抗体を検出することが可能である ( 図 1) 多種類の免疫複合体を特異的に同時に捕捉することによって抗体を検出する原理から 1) 非特異的な反応が少ない 2) 抗 HLA クラス Ⅰ 抗体と抗 HLA クラス Ⅱ 抗体が同時に存在している場合でも容易に抗体の特異性解析が可能である などの特徴がある また ICFA 法は 96 ウエルマイクロプレートによる処理が可能であることから多検体処理に適応し 処理速度も約 2~3 時間でハイスループットな方法である 2

2. 検査手順 2.1 準備 (1) ビーズの処理 ビーズミックスをボルテックスにて 15 秒間攪拌する (2) 洗浄液の調製 1)10 倍濃度試薬に析出物がある場合は 37 以下で加温して溶解し 析出物がなくなったことを確認する 2)10 倍濃度試薬は精製水で 10 倍に希釈する 希釈調製した各試薬は 2~8 で保存し 1 週間以内に使用する 2.2 操作手順 : クラス Ⅰ&Ⅱ(ICFA) 2.2.1 患者血清 ( 血漿 ) と白血球の 1 次反応および可溶化 1)1.5mL サンプルチューブに溶血試薬を 500μL 分注し 37 恒温水槽で 5 分間加温した後 抗原として使用する EDTA 加全血を 500μL 添加する (ACD 加全血の場合 前述の 1.2 検体の準備 の方法に従って前処理を行う ) 陰性コントロール血清用と患者血清 ( 血漿 ) 用として 1 検体あたり 2 チューブずつ用意する 2) ボルテックスにて攪拌した後 37 恒温水槽で 10 分間反応し 溶血させる 3) 2,000 g で 2 分間遠心後 溶血していない赤血球が沈殿し 2 層に分離するため 上層のみを除去する 4) 37 に加温した溶血試薬を 1,000 µl 添加し ボルテックスにて撹拌後 37 恒温水槽で 10 分間反応し 再度溶血する 5)2,000 g で 2 分間遠心後 上清を除去する 6) 洗浄液 Ⅰ を 500μL 添加し ボルテックスにて白血球ペレットを再浮遊させる 7)2,000 g で 2 分間遠心後 上清を除去する 8)6)~7) の操作を再度繰り返す 9) ボルテックスにて白血球ペレットを再浮遊させた後 各チューブに PBS を 60μL 分注する 10) 該当する各チューブに陰性コントロール血清 20μL 患者血清 ( 血漿 )20μL をそれぞれ分注する 11) しっかりフタを閉めた後 ボルテックスにて懸濁し 37 恒温水槽で 30 分間反応させる 12) 各チューブに洗浄液 Ⅱ を 500μL 添加し 2,000 g で 2 分間遠心する 13) 上清を除去する 14)12) ~13) の操作をさらに 2 回繰り返す 15) 各チューブに Lysis 液を 50μL 添加し しっかりフタを閉めた後 室温で 10 分間ミキサーにて攪拌し続ける 16)10,000 g で 5 分間遠心する 3

2.2.2 蛍光ビーズによる免疫複合体の捕捉および標識抗体との 2 次反応 1)96 穴 V 底プレートのサンプル数に応じた各ウエルにビーズミックスを 5μL 分注する 2) 対応するウエルに 2.2.1 で得られた可溶化白血球の上清を 25μL 添加する 3) シールをした後 遮光しながら室温で 20 分間プレートミキサーを用いて攪拌して反応させる 4) シールに反応液が付着している場合は 隣のウエルに混入しないよう注意しながら 慎重にシールを剥がす 5) 各ウエルに洗浄液 Ⅱ を 200μL 添加し 2,000 g で 2 分間遠心する 6) スナッピングで上清を除去し ペーパータオルで水分を良く吸い取る 7) ボルテックスにて蛍光ビーズを再浮遊する 8)5)~6) の操作を再度行う 9) 各ウエルに洗浄液 Ⅱ で 100 倍に希釈した標識抗体を 50μL 添加する 10) シールをした後 遮光しながら室温で 10 分間プレートミキサーを用いて攪拌して反応させる 11) 反応液が隣のウエルに混入しないよう注意しながら 慎重にシールを剥がす 12) 各ウエルに洗浄液 Ⅱ を 200μL 添加し 2,000 g で 2 分間遠心する 13) スナッピングで上清を除去し ペーパータオルで水分を良く吸い取る 14) ボルテックスにて蛍光ビーズを再浮遊する 15) 各ウエルに洗浄液 Ⅱ を 75μL 添加する ( ビーズ塊が見える場合はシールをしてボルテックスにて分散させる ) 2.2.3 Luminex システムによる蛍光値の測定 1)Luminex システムを用いて ビーズミックスの Lot 番号に対応したテンプレートファイルを使用して測定する (LuminexXYP の温度設定が OFF になっていることを確認すること ) 4

2.2.4 操作概要 (ICFA(I&II) ワークフロー ) 5

2.3 操作手順 : クラス Ⅰ(ICFA) 2.3.1 患者血清 ( 血漿 ) と白血球の 1 次反応および可溶化 1)96 穴 U 底プレートに溶血試薬 :200μL を分注し EDTA 加全血 :20μL を添加する 陰性コントロール血清用と患者血清 ( 血漿 ) 用として 1 検体あたり 2 ウエルずつ用意する 2) ボルテックスにて攪拌した後,37 恒温水槽で 10 分間反応し 溶血させる 3) 2,000 g で 2 分間遠心後 上清を除去し 白血球ペレットを得る 4) ボルテックスにて白血球ペレットを再浮遊させ 洗浄液 Ⅰ:200μL を加える 5)2,000 g で 2 分間遠心後 上清を除去する 6)4)~5) の操作を再度繰り返す 7) ボルテックスにて白血球ペレットを再浮遊させ PBS:60μL を分注する 8) 該当するウエルに陰性コントロール血清 :20μL または患者血清 ( 血漿 ):20μL をそれぞれ分注する 9) しっかりシールをした後 ボルテックスにて懸濁し 37 恒温水槽で 30 分間反応させる 10) 各ウエルに洗浄液 Ⅱ を 200μL 添加し 2,000 g で 2 分間遠心する 11) 上清を除去する 12) ボルテックスにて白血球ペレットを再浮遊させる 13)10) ~12) の操作を再度繰り返す 14) 各ウエルに Lysis 液を 50μL 添加し しっかりシールした後 室温で 10 分間プレートミキサーにて攪拌し続ける 15)2,000 g で 5 分間遠心する 2.3.2 蛍光ビーズによる免疫複合体の捕捉および標識抗体との 2 次反応 1)96 穴 V 底プレートのサンプル数に応じた各ウエルにビーズミックスを 5μL 分注する 2) 対応するウエルに 2.3.1 で得られた可溶化白血球の上清を 25μL 添加する 3) シールをした後 遮光しながら室温で 20 分間プレートミキサーを用いて攪拌して反応させる 4) シールに反応液が付着している場合は 隣のウエルに混入しないよう注意しながら 慎重にシールを剥がす 5) 各ウエルに洗浄液 Ⅱ を 200μL 添加し 2,000 g で 2 分間遠心する 6) スナッピングで上清を除去し ペーパータオルで水分を良く吸い取る 7) ボルテックスにて蛍光ビーズを再浮遊する 6

8)5)~6) の操作を再度行う 9) 各ウエルに洗浄液 Ⅱ で 100 倍に希釈した標識抗体を 50μL 添加する 10) シールをした後 遮光しながら室温で 10 分間プレートミキサーを用いて攪拌して反応させる 11) 反応液が隣のウエルに混入しないよう注意しながら 慎重にシールを剥がす 12) 各ウエルに洗浄液 Ⅱ を 200μL 添加し 2,000 g で 2 分間遠心する 13) スナッピングで上清を除去し ペーパータオルで水分を良く吸い取る 14) ボルテックスにて傾向ビーズを再浮遊する 15) 12)~14) の操作を再度行う 16) 各ウエルに洗浄液 Ⅱ を 75μL 添加する ( ビーズ塊が見える場合はシールをしてボルテックスにて分散させる ) 2.3.3 Luminex システムによる蛍光値の測定 1)Luminex システムを用いて ビーズミックスの Lot 番号に対応したテンプレートファイルを使用して測定する (LuminexXYP の温度設定が OFF になっていることを確認すること ) 7

フローシート : WAKFlow HLA 抗体クラスⅠ(ICFA) - 原理および操作概要 2.3.4 操作概要クラスⅠ(ICFA) ワークフロー EDTA 加全血の溶血 (37 ) 所要時間 10 分 溶血用試薬 洗浄 (2 回 ) 4 分 洗浄液 Ⅰ 血清 ( 血漿 ) との反応 (37 ) 30 分 血清 ( 血漿 ) 白血球 抗 HLA 抗体 HLA 96 ウエル反応プレート 白血球 洗浄 (2 回 ) 4 分 洗浄液 Ⅱ 白血球の可溶化 ( 室温 ) 15 分 Lysis 液 抗原抗体複合体 蛍光ビーズとの反応 ( 室温 ) 20 分 ビーズミックス 蛍光ビーズ HLA クラス Ⅰ に対するモノクローナル抗体 洗浄 (1 回 ) 2 分 洗浄液 Ⅱ 標識抗体との反応 ( 室温 ) 10 分 標識抗体 PE-anti human IgG ビーズに結合した抗原抗体複合体と標識抗体との反応を行う 洗浄 (2 回 ) 4 分 洗浄液 Ⅱ 測定 & 判定 Luminex 装置を用いて測定 専用の判定用ソフトウェアにより解析する 8

2.4 検査結果判定 測定結果の CSV ファイルを ICFA 解析ソフトウエアで判定する ソフトウエアでは各ビーズの蛍光シグナルからインデックス値を算出し判定する 判定方法は WAKFlow HLA 抗体 (ICFA) 判定ソフトウエア使用方法に従う 2.4.1 解析方法の紹介 Main Page の画面設定 1 2 4 3 1 2 3 4 詳細 Main Page に移動します 過去の解析データを一覧で表示します ソフトウエアのセッティングを行う画面に移動します ロットファイルの登録 データベース コンバーターの登録を行うことが可能です 解析するデータを登録する画面に移動します 9

CSV ファイルの登録方法 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 詳細解析データの名前を設定します 測定データを登録します オペレーターの名前を登録します 解析の方法を選択します 自動もしくは手動で Negative Control を設定するか選択します 次の画面に移動します * ここでは手動で Negative Control を設定する場合の方法を説明する New Project の Analysis Mode で Manual を選択する 10

Analysis Set の画面に移り Assay のグループの Negative Control を選択する Negative Control を選択した後 Assay のグループの検体を選択する 11

Execute OK の順で選択し 解析画面に移動する 12

CSV データの解析画面構成 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 詳細 Project Name 試薬の種類 ロット Assay の日付を表示します Sample ID (Sample 名 ) を表示します 陽性コントロールビーズ (PB) 陰性コントロールビーズ (BB) の Median 値を表示します PB の Median 値が低い場合 または BB の Median 値が高い場合は再検査を行ってください PB の Median 値は 10,000 未満 BB の Median 値は 200 程度を再検査の目安としてください ClassⅠの Median 値を表示します ClassⅡ の Median 値を表示します ClassⅠの Index 値と判定結果を表示します ClassⅡの Index 値と判定結果を表示します 検体に対するコメント オペレーター名を表示します Project Name ロット Assay の日付などを表示します Serum の基本情報を表示します Serum ID HLA Specificity Comment およびオペレーター名を表示します 直接編集を行うことも可能です サンプル名とHLAタイピング結果を表示します HLAタイピング結果を入力していた場合に表示されます 解析画面で直接入力し編集を行うことが可能です ClassⅠ ClassⅡの Median 値を表示します ClassⅠ ClassⅡの Index 値と判定結果を表示します 13

3. 検査時の注意点 3.1 検体の準備 溶血が不十分な場合 測定される蛍光値のバックグラウンドが高くなることがあるため, 溶血させる時間や温度を厳守する ACD またはヘパリン加血を用いた場合 1 回の溶血反応では十分溶血できないため 1.2.2 検体準備 (ACD 加全血 ) の項に従った前処理を実施するか または 2 回以上の溶血操作を実施する クラス Ⅰ(ICFA) の場合 96 穴 U 底プレートを上から見て 赤血球で白血球ペレットが隠れてしまう場合 再度溶血操作を行う ( 写真 1, 2) 写真 1 十分な溶血 写真 2 不十分な溶血 ( 再溶血が必要 ) 3.2 検体レイアウト ICFA 法は 血液細胞と血清 ( 血漿 ) 中の抗 HLA 抗体の反応強度を陰性コントロール血清と比較して判定するため 検体毎に陰性コントロール血清を使用する必要がある 図 2 の検体レイアウトに従い検査を行う 図 2 検体レイアウト 14

3.3 操作時の注意点 3.3.1 使用する検体 抗原として使用する検体の白血球数が少ない場合 偽陰性を呈することがある 3.3.2 可溶化上清採取 1 次反応後 可溶化した上清を採取する場合 沈殿を巻き込まないように注意する ( 沈殿を一緒に取ってしまうと Luminex 機器の流路が詰まる恐れがある ) 参考文献 Fujiwara K et al.: Application of bead array technology to simultaneous detection of human leucocyte antigen and human platelet antigen antibodies. Vox Sang 2009; 96: 244-251. 15