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5.X 線回折. はじめに以下の条件条件を満たさないたさない場合場合 学生実験学生実験を始めない! 予習をしてこない 学生実験ノートを持ってこない ( テキストにデータを書く学生が多い ) レポート 実験実験ノートノートの作り方 実験ノート レポートは ボールペン ( 手書き ) で書くこと! ワープロで書かれたレポートは受け取らない 誰が読んでも分かりやすいレポートを書くこと 3 客観的な記述 考察が要求される レポートは感想文ではない!( 大学生になっても論理的なレポートを書けない学生が多い ) 4 誤差 単位に細心の注意を払うこと グラフには必ず単位を書くこと. 目的 X 線の性質 (X 線の吸収 ) を調べる 粉末 X 線回折実験を行い 未知試料の結晶構造を同定する また 標準試料の格子定数を求める EXCEL を用いたデータ解析 ( 誤差評価 ) も習得する ( フロッピー ディスクディスクを持参すること ) フロッピー ディスク X 線などの放射線被爆について学習し 放射線被爆予防の理解を深める さらに X 線発生装置の安全装置システムの動作確認と緊急事態の対処法について学ぶ 単結晶と多結晶の回折パターンの違いについて考察する 34

3. 放射線被爆 Check Poit. X 線発生装置の安全装置を理解し 危険管理の重要性を認識する. 自然放射線被爆について学ぶ X 線は人体に有害 ( 身体的な影響 遺伝的な影響 ) である 被爆量 ( 線量当量 ) は [ 線当量率 ] [ 作業時間 ] で与えられる 線量当量限度は 法律によって定められている ) 目の水晶体 : 50 msv / 年 ) 皮膚及び眼以外の組織 : 500 msv / 年 3) 妊娠可能な女子の腹部 : 3 msv / 3ヶ月 4) 妊娠中の女子の腹部 : 0 msv / ( 妊娠してから出産までの間 ) なお 我々は自然放射線 ( 約 msv / 年 ) を被爆しています 放射能 : 放射性物質の量は 秒間に原子核が崩壊する数 単位は ベクレル ( Bq ) 放射線 : 生物学的影響を考慮した線量当量 ( = 吸収線量 放射線の種類による係数 ) 単位は シーベルト ( Sv ) X 線の被爆をできるだけ少なくするには 遮蔽すること X 線源からの距離距離を大きくすること 3 被爆時間を短くすることが必要である 4. 基本原理 基本原理 ( 空白の式を求めなさい!) 4. X 線の吸収 Check Poit. X 線の透過距離に対する X 線の吸収を理解する. X 線の吸収と X 線の遮蔽について考察する X 線の吸収は X 線の波長が長く物質の原子番号が大きいほど吸収される ある一定の 波長の X 線が厚さ t ( cm ) の物質を透過して強度 I 0 から I に減衰したとき 線吸収係数 μ ( / cm ) を用いて次のような関係で表される I = I e µ t 0 () 35

但し X 線吸収は試料の密度 ρ ( g / cm 3 ) に依存するので 質量吸収係数 μ/ρ ( cm / g ) が用いられる ( 付録 ) 4. ブラッグの条件 Check Poit. X 線の回折条件を導く 図 から ブラッグの回折条件は X 線の 波長を λ 入射角を θ とすると となる 但し d は面間隔である () 図 θ θ X 線散乱角と面間隔 d 4.3 単位格子とミラーミラー指数 Check Poit. 結晶とアモルファスの違いを理解する. 単位格子と周期性の関係を学ぶ 結晶は図 のように原子がきれいに並んでいるので X 線回折線 ( 反射ピーク ) はシャ ープになる 一方 アモルファスは原子配置がランダムなので ブロードな散乱が観察さ れる 図 結晶とアモルファス 36

結晶は原子がきれいに並んでいるので 基本単位の周期的な配列で結晶構造を表すことがで c きる 結晶構造の基本単位を単位格子単位格子 ( uit cell ) と呼び 図 3 のように 3 つの軸の長さ a, b, c ( 格子定数, lattice costats ) と軸角 α, β, γ によって決まる a β α γ b 図 3 結晶の単位格子 ミラー指数 指数 ( Miller idices ) h k l は 格子面によって定義される 単位格子の a b c 軸をそれぞれ a / h b / k c / l の長さで切る面を (h k l ) 面とする 図 4 に具体的な格子面とミラー指数の関係を示す c b (0 0) c (00 00) (00 00) (00 00) b (00 00) (00 00) a a c c ( ) (0 0) b ( ) a a 図 4 格子面を表すミラー指数の例 立方晶系 ( cubic ) は a = b = c α = β = γ = 90 となる 簡単な また 立方晶系 計算で (hk l ) 面とその面間隔 d は次のような関係がある ( 付録 ) d= (3) 37

() 式と (3) 式より cubic の場合の X 線入射角 θ は X 線の波長 λ 格子定数 a ミラ hk l を用いて次式のように表される ー指数 hk θ= (4) 4.4 結晶構造因子 Check Poit. 原子配列によって X 線回折パターンが変化することを理解する. 簡単な結晶構造の結晶構造因子を計算する 単位格子の各原子の振幅 求められる ( 付録 3) 振幅 ( 原子散乱因子 f ) と原点との位相 位相差で結晶構造因子 F が F = N = f e πi ( hx + ky + lz ) (5) 式から 結晶構造 ( 原子の種類と原子位置 ) を求めることができる (5) 振幅 原子の種類 位相 原子位置 体心立方 ( body-cetered cubic, bcc ) 格子単位格子に原子が 個あるので N = である ( 図 5) 原子位置はベクトル r r r r = x a+ y b z c で表す 原子座標の x= は単位格子の格子定数 a に対応する + 単位格子に (x, y, z ) = (0, 0, 0) (x, y, z ) = (/, /, /) と つの原子があるから (5) 式に代入すると F = f π { i( h+ k+l + e ) } となる 単位円 ( 付録 3) を考えると ( h + k + l )= 奇数のとき F = 0 ( h + k + l )= 偶数のとき F = f (6) が求まる 38

c b a (0,0,0) (/,/,/) 図 5 bcc 構造 面心立方 ( face-cetered cubic, fcc ) 格子 fcc は N = 4 である ( 図 6) 単位格子に (x, y, z ) = (0, 0, 0) (x, y, z ) = (/, /, 0) (x 3, y 3, z 3 ) = (/, 0, /) (x 4, y 4, z 4 ) = (0, /, /) と 4 つの原子があるから (5) 式に代入すると F = となる 単位円を考えて f { πi( h+ k ) πi( k+ l e e ) e πi( l+ h + + + ) } h, k, l が奇数と偶数が混合 (h, k, l : mixed) のとき F = 0 h, k, l が全部奇数 (all odd) か全部偶数 (all eve) のとき F = 4f (7) が求まる c (0,/,/) b a (/,0,/) (0,0,0) (/,/,0) 図 6 fcc 構造 39

3 ダイヤモンド構造 ( diamod structure ) シリコンは N = 8 である ( 図 7) 以下の 8 つの原子座標に原子がある (x, y, z ) = (0, 0, 0) (x, y, z ) = (/, /, 0) (x 3, y 3, z 3 ) = (/, 0, /) (x 4, y 4, z 4 ) = (0, /, /) (x 5, y 5, z 5 ) = (/4, /4, /4) (x 6, y 6, z 6 ) = (/4, 3/4, 3/4) (x 7, y 7, z 7 ) = (3/4, /4, 3/4) (x 8, y 8, z 8 ) = (3/4, 3/4, /4) これらを (5) 式に代入すると F { + πi( h+ k ) + πi( k+ l) + πi( l+ h) e e e } + e π i( + + ) = h k l f fcc 構造の結果を利用して F fcc = + e πi( h+ k ) + e πi( k+ l) + e πi( l+ h) とすると π i( + = + h k F f Ffcc e となる fcc 構造では + l) all odd か all eve のとき F fcc = 4 なので となる 4 f + e π i( + + ) = h k l F 図 7 ダイヤモンド構造 h + k + l = 4m のとき F = 8f h + k + l = 4m± のとき F = 4 (±i) f h + k + l = 4m± のとき F = 0 (8) このように F = 0 となって特定の指数の回折線が観測されないことを消滅則 ( extictio rule ) という 40

5. 実験 つのグループに分かれて実験を行う グループ グループ 第一週 X 線の吸収 結晶構造因子の計算 標準試料の格子定数 未知試料の同定 第二週 結晶構造因子の計算 X 線の吸収 未知試料の同定 標準試料の格子定数 5. X 線の吸収 Check Poit. X 線吸収係数を求める. 誤差評価をする 注意 : 40,000 cps 以上の X 線をカウンターに入れてはいけない! 指数関数とグラフこれまでの学生実験で活性化エネルギーを実験データから求めた その時 何グラフを用いたか? また エクセルを用いて水の粘性 η の活性化エネルギー E を計算せよ!R は モル気体定数 ( R = 8.344 [J /mol /K] ) で 次の関係式が成り立つ E η = A exp (9) RT 温度 ( ) η(kg/m/s) 0 0.00097 5 0.000906 30 0.000787 35 0.000733 40 0.000659 45 0.000598 50 0.00054 表 水の粘性 4

統計誤差 0. mm 厚のアルミニウム入れて 計測時間を 秒 5 秒 0 秒として それぞれ 0 回 X 線強度を計測する 平均と標準偏差を計算しなさい 3 アルミニウムの吸収係数 厚さが異なるアルミニウムを用いて X 線強度を測定する X 線強度が 6000 カウント以 上になるように計測時間を決める 横軸にアルミニウムの厚さ t ( cm ) 縦軸に 秒あたりの X 線強度のグラフを書け さらに () 式からアルミニウムの質量吸収係数 μ / ρ ( cm / g ) を最小二乗法 (EXCEL) で求めなさい 但し ρ は密度である 室温のアルミ ニウムの密度は.7 ( g / cm 3 ) とする 誤差評価も忘れずに ( 付録 4)!( 有効数字 が何桁になるかを考える ) 5. 標準試料 ( Si ) の格子定数 Check Poit. 格子定数の計算をする. 系統誤差の評価をする シリコンの回折パターンを測定して ピークサーチピークサーチ Kα 除去 の処理をする ピーク位置 (θ) と半価幅を記録する シリコンはダイヤモンド構造なので (8) 式を用いて それぞれのピークの指数 ( h, k, l ) 付けを行う (4) 式を変形して 求められた散乱角 θ から格子定数 a(a ) を計算し 横軸が θ で 縦軸が a のグラフを書きなさい 但し X 線の波長 λ を.5406 A とする また Δa / a のθ 依存性を求めなさい 5.3 未知試料の結晶構造結晶構造の同定 Check Poit. X 線回折実験から結晶構造が決められることを理解する 構造因子の計算 NaCl 型構造 ( sodium chloride structure 図 8 ) と CsCl 型構造 ( cesium chloride structure, 図 9 ) の構造因子を計算して 消滅則を導け 但し Na, Cs, Cl の原子散乱因子を f Na, f Cs, f Cl とする 4

図 8 NaCl 型構造図 9 CsCl 型構造 但し それぞれの原子座標は以下のように与えられる NaCl 型構造の原子座標 CsCl 型構造の原子座標 Na 0, 0, 0 /, /, 0 /, 0, / 0, /, / Cs 0, 0, 0 Cl /, 0, 0 0, /, 0 0, 0, / /, /, / Cl /, /, / 未知試料 ( NaCl 型構造 ) の格子定数 未知試料 ( CsCl 型構造 ) の格子定数 NaCl a = 5.640 A CsCl a = 4.3 A KCl a = 6.97 A CsBr a = 4.96 A CsI a = 4.5679 A (0) 指数 ( h, k, l ) 付け (4) 式から エクセルを用いて 5 つの試料の散乱角 θ を計算する Cubic なので 00 反射 00 反射 00 反射の散乱角 θ は同じになることに注意する h, k, l を表 のように順番に発生させて 440 反射くらいまで計算する λ =.5406 A h k l NaCl KCl CsCl CsBr CsI 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 表 h, k, l と θ 43

3 試料の同定 5 つの未知試料 A, B, C, D, E の中からひとつを測定し 回折パターンの ピークサーチピークサーチ Kα 除去 の処理をする ピーク位置 (θ) と半価幅を記録する 散乱角 θと消滅則から 試料名を同定せよ ( NaCl, KCl, CsCl, CsBr, CsI のいずれかである ) 6. 課題 系統誤差と偶然誤差偶然誤差を踏まえて格子定数 a の散乱角 θ 依存性について考察せよ 単結晶と多結晶 ( 粉末試料 ) の回折パターンの違いを図示せよ 3 X 線被爆の後遺症について簡単に書け 7. レポートの採点基準 水の活性化エネルギーの計算 X 線強度の統計変動 3 アルミニウムの X 線吸収係数 ( 有効数字何桁?) 4 シリコンの格子定数 ( Δa / a と系統誤差 ) 5 NaCl 構造と CsCl 構造の結晶構造因子の計算 6 試料の同定 7 課題 8 実験ノートのコピー 参考書. X 線回折技術 高良和武 菊田惺志著 東京大学出版会 (988). X 線回折分析 加藤誠軌著 内田老鶴圃 (994) 3. X 線回折要論 カリティ著 松村源太郎訳 アグネ (98) 44

付録 X 線の吸収 I X 線が減衰する割合は 厚さの変化量 Δxに比例するので x と書ける 比例 I d I 係数 μを用いて = µd x となり 積分すると I I di I = µ dx l I = - μx + C µ = e x e x = 0 のとき I = I 0 とすると C I = I () x 0 e µ 付録 点と平面平面の距離 平面の法線ベクトルを r = ( p q r ) とする また 平面上を動くベクトルを r = ( x y z ) とすると r と平面上のベクトル ( r r ) は 0 直交するから ( 図 0) r r r ( ) 0 0 = p(x - x 0 ) + q(y - y 0 ) + r(z - z 0 ) = 0 px + qy + rz = px 0 + qy 0 + rz 0 = s 平面の方程式は px + qy + rz = s となる = ( p q r ) r-r 0 r 0 r t r = ( tp tq tr ) が平面上にあるとき 図 0 平面と法線ベクトル p(tp) + q(tq)+r(tr) = s t ( p + q + r )=s t = p s + q + r 原点と平面 ( px + qy + rz = s ) の距離 d は d = t r = p + q + r = () p s + q + r p s + q + r 45

付録 3 周期性 ( きれいに原子原子が並んでいる ) の数学 まず 次元にきれいに並んでいる 種類の原子を考える 周期関数をうまく使うと原子配列に関する情報を数学的に表せる 例えば 単位胞 (uit cell) に 個の原子がある場合 図 のような波で表される A 原子 ( 大 ) が x = 0 B 原子 ( 小 ) が x = / 単位胞の大きさ (x= ) で繰り返されている X 線 ( 電磁波 ) と電子 ( 荷電粒子 ) の相互作用なので原子番号が大きい ( 電子数が多い ) ほど X 線の散乱能が大きくなる つまり 原子番号に比 図 波と周期性 例して図 の波の振幅が大きくなる 次に波動方程式を考える 座標 x と時刻 t の関数を ψ(x, t) とする 速さ c で進む波の 座標は x x ct と変換されるので ψ(x, t) = f(x - ct) となる関数 f(x) が定義でき ϕ( x, t) る x で 回偏微分すると = f"( x ct ) t で同じく 回微分すると x ϕ( x, t) = c f"( x ct ) となる つまり 波動方程式は t c ϕ ϕ = t x (3) π と表せる 一方 波数 角振動数の関係で = ω G ω = πν c = λν となり c= λ G ω ϕ = t G ϕ x (4) r 階の微分方程式の解は A cos ( G x r - ωt) = A cos G(x ω/g t) = A cos G(x ct) と r B si (Gx - ωt) である 一般解は ψ= A cos ( G x r r r - ωt) + B si ( G x - ωt) となる ここで B = ia として使いやすい式に変形する オイラーの公式 ( e iθ = cosθ + i siθ) を使って ψ = Ae r i( G x r ωt) となる 46

指数関数 e z のテーラー展開 e e z iθ 3 4 z z z = + z+ + + +L! 3! 4! 3 4 θ θ θ = + iθ i + + i! 3! 4! 数学の復習 5 θ L 5! e iθ θ =! 4 θ + 4! 3 θ + L+ i θ 3! 5 θ + L 5! θ e i = cosθ+ isiθ ( オイラーの公式 ) (5) 複素平面 複素数 z = x + i y を xy 平面上の座標 (x, y) で表す 単位円 ( 半径 の円 ) を考える 図 から次の関係がわかる e i π = y e i π = i i - siθ θ cosθ x 図 単位円 -i iωt 通常の X 線は弾性散乱 (Δω = 0) なので ωが一定となる その結果 e = が導 かれるので 平面波 ψ = F = N = f i e G r x r r r r = x a+ y b+ z r c とすると Ae r i( G x r ωt ) の重ね合わせになる 次元では r r s * * r* となる 逆格子ベクトル G= ha + kb + lc 実格子ベクトル 47

r r r r a * a = b * b = a r r r * b = b * r c = r c * r c = π r c * r a = = 0 (6) の関係から 次元では r r * r r = ha x a G r = から G r = πhx となる A 原子 ( x = 0, f = 3 ) B 原子 ( x = /, f = ) N = の場合は F N = = f πihx πi πihx e = fe hx + f e = f + f e iπh * h = m のとき F = f + f = 4 I F F = 6 ± iπ * h = m± のとき F = f + f = f f I F F = 4 (7) e = 48

付録 4 誤差の伝播伝播と誤差評価 データ解析によって 真の値 を推定する 誤差とは 誤差の推定値 である 偶然誤差 : ある値を中心にばらつく 過失誤差 必然的偶発誤差 精密 (precisio precisio) 系統誤差 : データーに一定のずれがある 理論誤差機械誤差個人誤差 精度 (accuracy accuracy) 有効数字 例えば 69.5 kg は有効数字 意味のない桁は書いてはいけない! 有効数字 3 桁である 有効数字の定義 最も左にある 0 でない数字を 最高位 の有効数字とする 小数点がないとき 最も右の 0 でない数字を 最低位 の有効数字とする 小数点があるとき 最も右の数字が 0 であっても 最低位 の有効数字である 最低位の有効数字と最高位の有効数字の間にある数字は すべて有効数字である その数を 有効数字の桁数 または 有効桁数 と呼ぶ 有効数字 4 桁 有効数字 5 桁 5670 5.60 最低位の 有効数字 最低位の 有効数字 最高位の 有効数字 最高位の 有効数字 49

掛け算の有効数字異なる有効数字の掛け算では 有効数字の短い桁数より多くならない 注意 : A B C と掛け算を何度もするときは 回の掛け算ごとに有効数字を丸めない 最後で 有効数字を丸めること! 3 和と差の有効数字 小数点をそろえて 一番左にある最低位の有効数字を基準として有効数字の桁を決める.583 最低位の有効数字 +) 39. 最低位の有効数字 30.783 30.8 桁の誤差 有効数字 4 桁 注意値の近いものどうしの引き算で有効数字の桁数が非常に小さくなることがある 5.976348 +) 5.976347 0.000000 有効数字 桁 対策 なるべく引き算を使わないようにする 計算の桁数を増やす 4 分散測定値 x の集合を母集団 母平均を εとする 母分散の定義は σ ( x ε) = ( x ε) f (x ) = x ε となる 但し f(x) は確率分布関数である m i= i i (9) 50

5 正規分布 正規分布の確率密度関数 f(x) は f (x) exp π σ となる ( 図 3) ( x ε) = σ (0) 正規分布の期待値 <x> は x = x f (x)dx ( x ε) = x exp π σ σ dx x =ε f(x) ().0 0.5 0.0 0 5 0 5 0 図 3 X σ = 0.5 σ = σ = 正規分布 正規分布の分散 <(x-ε) > は ( x ε) = σ ( x ε) = ( x ε) f (x) dx の計算から () となる 図 3 のように σ が大きくなると分布が広がる 6 母平均と母分散の推定 母平均 ε と母分散 σ の正規分布の母集団から取り出した 個の標本 x, x, x 3, x とする が小さいときは正規分布からずれる 個の標本から母平均を推定したとき もっともらしい推定値は相加平均である x= 標本分散は s x i i= = i= (x x) i となる s の期待値が s = σ (3) となり 期待値が σ にならないので s の定義を (4) 式に変更する s = s の期待値は i= (x x) i (4) 5

s となり 不偏推定量となる (4) 式を 不偏分散不偏分散 と呼ぶ εを母平均とした の期待値は ( x ε) = σ σ = = s (5) x (6) の分散 となる また 標本平均 s σ= x の標準偏差 σ は不偏分散 s を用いて (7) が求まる x 標本平均における誤差の目安は標準偏差と考えられる 7 誤差の伝播 直接観測される量を x, y として 間接的に求められる量を z とすると f (x, y) f (x, y) z= x+ y x y (8) となるが x の場合 z x y z= = となる 系統誤差 (Δx, Δy) が組み合わ y z x y さって Δz が 0 になる場合もある 絶対値をとって この問題を回避できるが理論的な裏 づけはない f(x, y) が x, y に関して線形線形ならば が小さいとき (9) 式が近似的に成り立つ z z zi z= ( xi x) + ( yi y) x y z の不偏分散を s z = の関係が求められる s z = (zi z) i= z s x x z + s y y z= f (x, y) とすると となる 非線形な場合でも Δx, Δy (9) (30) 5