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免疫血清部門 尿一般部門病理部門細胞診部門一般部門生化学部門先天性代謝異常部門 細菌部門 肝細胞癌の早期発見と腫瘍マーカー ~ AFP と PIVKA-Ⅱ の同時測定による診断効率の向上 ~ 検査科免疫血清係 はじめにわが国では肝臓癌の死亡者数は年間約 ₃ 万人であり 2013 年の主要部位別の年齢調整死亡率において 肝臓癌は男性第 ₄ 位 女性第 ₇ 位と報告されています ( がん研究振興財団がんの統計 14) 今月号では肝臓癌 特に肝細胞癌の診断に利用され威力を発揮している腫瘍マーカーの AFP(α- フェトプロテイン ) 及び PIVKA-Ⅱを中心に解説させていただきます 1. 肝細胞癌発症の原因と近年の傾向 原発性肝癌の95% は肝細胞癌であり その80 ~90% はB 型肝炎ウイルスやC 型肝炎ウイルスにより発生することが明らかになっています 長期間の持続感染により肝の線維化が進行し 肝硬変を経て肝癌が発症する場合がほとんどでした しかし 近年はウイルス性肝炎 特にC 型肝炎を背景とした肝細胞癌の割合が減少し 代わってウイルスによる肝炎や肝硬変を伴わない肝癌 いわゆる非 B 非 C 型の肝細胞癌が増加 図 ₁ 大垣市民病院における肝細胞癌患者の成因の年代別推移 ( 参考資料 ₁ より ) 執筆者である大垣市民病院消化器内科部長豊田秀徳先生の許諾を得て転載 傾向にあることが分かってきました その一例として 図 ₁に大垣市民病院の消化器内科部長である豊田医師の調査報告を紹介いたします それによると大垣市民病院では2010 年以降になって急速に非 B 非 C 型肝癌が増加していることがわかります 非 B 非 C 型の肝細胞癌発症の危険因子等に関しては 現在盛んに研究が行われており 高齢 アルコール多飲 非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) 脂質異常症 肥満 糖尿病などが示唆されています 2. 主要な腫瘍マーカーである AFP AFP-L3% PIVKA-Ⅱの概要と臨床的意義 AFP(α-フェトプロテイン ) AFP は胎児の肝臓およびヨークサック ( 卵黄嚢 ) で産生される胎生期特有の血清蛋白です この AFP の血中濃度は出生直後には10000ng/mL 前後を呈します しかし その後 250 日 ~300 日で血中濃度は大幅に低下し 10ng/mL 以下の極めて微量となります ところが 肝細胞癌になると再び AFP の産生が活発化し濃度が上昇するため 肝細胞癌の 2

28 年 10 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 606 号付録 ) 平成28 年10 月平成 腫瘍マーカーとして活用されています AFP は腫瘍マーカーの分類では 癌胎児性蛋白 に該当します *AFP 測定の臨床的意義と留意点 1 慢性肝炎や肝硬変などの良性肝疾患においても AFP の濃度が上昇し悪性腫瘍との鑑別が困難となるケースが少なからず認められます ( 図 ₂ 参照 ) 慢性肝炎の治療ガイド2008( 日本肝臓学会編 ) によると 肝細胞癌患者お 図 ₂ 癌 非癌患者の AFP 値 ( 診断時の AFP 値 500ng/mL 以下の症例計 458 例 ) よびその対照に慢性肝炎 肝硬変の患者群をおき カットオフ値 20ng/mL で AFP を測定した場合 感度は60% 程度また特異度は70~80% 程度であったと報告されています すなわち 肝細胞癌の患者であっても40% 前後は陰性となり 慢性肝炎 肝硬変等の良性疾患であっても 20~30% は陽性であることになります ( The Medical & Test Journal 682(5):1, 1999 より ) 2 妊娠中は胎児の AFP が妊婦の中にも混入しますので 妊娠後期には妊婦の血中 AFP 値も上昇します 3AFP 値が比較的低値であっても単調増加傾向を示す場合は 肝細胞癌が存在する可能性が高いといわれています 4 画像診断で肝腫瘍が検出されなくても AFP が持続高値を示す症例は 肝癌発生の超高リスク群 として 慎重に経過観察を実施していくべきとされています 5 腫瘍切除 化学療法などの治療が有効に実施された場合 AFP 値は速やかに基準域まで低下しますが 再発すると再上昇が認められるといわれています AFP-L3%(AFP レクチン分画 ) AFP は優れた腫瘍マーカーですが 上述 1 のとおり良性 図 ₃ 癌 非癌患者の AFP-L3% ( 診断時の AFP 値 500ng/mL 以下の症例計 458 例 ) 肝疾患であってもその血中濃度が軽度から中等度上昇し 肝細胞癌との鑑別が困難になるという課題がありました AFP ₁ 分子に₁つ存在する糖鎖にレンズマメ レクチン (LCA) を反応させると LCA 非結合性分画 (L1) 弱結合性分画 (L2) および強結合性分画(L3) の₃ 分画 ( バンド ) に分かれます 慢性肝炎や肝硬変では主として L1 分画が増加しますが 肝細胞癌では L3 分画が増加することが分かっています したがって AFP-L3% の測定は 肝細胞癌と良性肝疾患との鑑別診断に有用です ( 図 ₃ 参照 ) ( The Medical & Test Journal 682(5): 1, 1999 より ) 3

PIVKA-Ⅱ(protein induced by vitamin K absence or antagonist Ⅱ) 凝固因子の第 Ⅱ 因子であるプロトロンビンという蛋白は肝臓で合成されますが その際ビタミンKが必要となります この合成にビタミンKが不足すると凝固活性を持たない異常プロトロンビンである PIVKA-Ⅱになります PIVKA-ⅡはビタミンKの欠乏時だけでなく 肝細胞癌の際にも出現し高値を呈することが確認されたことから 現在では 肝臓癌の腫瘍マーカーとして広く利用されています *PIVKA-Ⅱ の臨床的意義と留意点 1 感度は AFP とほぼ同等であり 腫瘍径の小さいものは 図 ₄ 肝細胞癌患者と癌のない肝 硬変患者の PIVKA-Ⅱ 値 ( 従来法で 100mAU/mL 以下の症例計 148 件を高感度法で測定 ) 検出困難な場合が多い一方 肝硬変などの良性疾患に対しての特異度は AFP と比較して格段に高いことが分かっています 前述の慢性肝炎の治療ガイド2008( 日本肝臓学会編 ) によりますと カットオフ値を40mAU/mL とした場合 感度は約 60% と AFP と同程度ですが 特異度は非常に高く約 95% であったと報告されています つまり PIVKA-Ⅱは肝硬変等の良性疾患ではほとんど陽性を呈さないことが確認されています ( 図 ₄ 参照 ) 2ワルファリンはビタミンKの作用を阻害することで活性 をもたない PIVKA 型凝固因子を増加させ血栓症を防ぐ薬剤です したがって 本薬剤の服用患者では PIVKA-Ⅱ が異常高値を示します ( CANCER MAY 1, 1998/Volume 82/Number 9 より ) 3 上記 2 同様に一部のセフェム系抗生物質使用時 閉塞性黄疸時 極度の栄養状態不良時にもビタミンKの吸収阻害 産生低下を原因として PIVKA-Ⅱが上昇します 4アルコール性肝障害においても PIVKA-Ⅱが上昇することがあります そのため 肝硬変患者の肝細胞癌スクリーニングに使用する際には注意が必要です 5ビタミンK 製剤投与中は 肝細胞癌患者においても多くの症例で PIVKA-Ⅱは正常化するため 腫瘍マーカーとしての使用はできません 6 PIVKA-Ⅱが高値の例では治療効果をよく反映します 特に著効例では速やかに正常域に下降し 他の検査に先がけて再上昇することもあり再発の指標となっています 3.AFP と PIVKA-Ⅱの同時測定により診断効率が向上します肝細胞癌の場合 AFP は癌によって産生される胎児性蛋白を PIVKA-Ⅱは癌によって産生される異常プロトロンビンを検出しています つまり 両者間には相関関係はなく相補的に補完しあっている関係にあります したがって これらの腫瘍マーカーを組み合わせる 4

28 年 10 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 606 号付録 ) 平成28 年10 月平成 ことで 診断効率を向上させることができます 日本肝臓学会の 肝癌診療ガイドライン (2013 版 ) では 特に小肝細胞癌の診断においては ₂ 種以上の腫瘍マーカーを同時測定す ることが推奨される ( グレード A) * としています * ガイドラインにおいて推奨の確信度合を分類したものが 推奨グレード です 通常はA~Dに分類され グレード A: ある治療法を行うことを 強く勧める グレードB: 勧める グレードC: 勧めるかどうかあまりはっきりしない グレード D: 行わないように勧める となります ( ただし すべてのガイドラインがこの定義どおりだとは限りません ) 図 ₅ に腫瘍マーカーの組み合わせが有用であることの実証例として 前述の大垣市民病院 豊田医師により検討された 当院における初発肝細胞癌診断時の AFP PIVKA-Ⅱ 正常例の Stage 別割合 をお示します それによると カットオフ値を通常用いられる AFP20ng/mL PIVKA-Ⅱ40mAU/mL とした場合 診断時に ₂ つの腫瘍マーカーが共に上昇しなかった肝癌 図 ₅ 初発肝細胞癌診断時における AFP PIVKA-Ⅱ 正常例のステージ別割合 ( 参考資料 ₁ より ) 執筆者である大垣市民病院消化器内科部長豊田秀徳先生の許諾を得て転載 表 ₁ 超高危険群と高危険群のサーベイランス方法と間隔 症例も存在するものの症例数は多くはなく 特に Stage2 以上の症例では その₄ 分の₃ 以上の症例で少なくとも AFP PIVKA-Ⅱのいずれか一方に上昇が認められたそうです さらに サーベイランス の観点からカットオフ値を低く設定し 例えば AFP10ng/mL PIVKA- Ⅱ20mAU/mL とすると Stage2 以上の症例で AFP PIVKA-Ⅱが共にカットオフ値以下の症例は10% 以下であったと報告しています これらの検討結果から豊田医師は サーベイランスで肝癌の見落としを防ぐには AFP PIVKA-Ⅱの両者を測定し 画像検査と連携させることの重要性を強調されています 4. 肝細胞癌サーベイランス ( スクリーニング ) 肝細胞癌におけるサーベイランス ( スクリーニング ) の基本として 慢性肝疾患 肝硬変患者に対しての超音波検査と腫瘍マーカー検査が中心的な役割を果たしています 現在 幅広く利用されている日本肝臓学会の 肝癌診療ガイドライン (2013 版 ) では 超高危険群と高危険群が設定されており サーベイランスの方法 間隔が示されています ( 表 ₁ 参照 ) ( 日本肝臓学会編 科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン 2013 年版 金原出版発行 p13 記載内容を参考に作成 ) 日本肝臓学会の許諾を得て掲載 5

5. 検査のご案内 * 項目コード検査項目検査方法基準範囲検体量容器所要日数 保険点数 5667-02 AFP 定量 (α- フェトプロテイン定量 ) CLEIA 10.0 以下 ng/ml ₁~₂ 日 110 点 1070-02 PIVKA-Ⅱ CLIA 40 未満 mau/ml ₁~₂ 日 147 点 6000-02 α-フェトプロテ LBA インレクチン (LBA-EATA) 分画 (AFP-L3%) 総 AFP 10.0 以下 ng/ml AFP-L3% 10.0% 未満 ₃~₆ 日 190 点 *: 至急検査をご依頼の場合は 当日中に FA で結果報告することもできます < 診療報酬の取り扱い> 2008 年から肝硬変 HBs 抗原または HCV 抗体陽性の慢性肝炎で月に₁ 回 AFP と PIVKA-Ⅱを同時に測定することが保険適用されています ( 腫瘍マーカー ₂ 項目包括による 230 点 ) おわりに近年の文献や報告によれば 肝癌患者の背景は大きく変化しており ウイルス性肝炎 肝硬変 のみを肝癌発症の高危険群としてサーベイランスすればよいという時代ではなくなってきているようです ₂ 種の腫瘍マーカーを同時測定することで測定感度が上昇し 肝細胞癌の発生や進行肝癌への進展を防ぐことができることを 私たちも念頭におき業務にあたる必要があると思いました 今後とも先生方に有用な検査データや情報をお届けしていく所存です よろしくご指導ください 参考資料 : ₁. 豊田秀徳 ( 大垣市民病院消化器内科部長 ), 肝細胞癌サーベイランスにおける腫瘍マーカー測定の有用性 ~ 変わる肝癌患者の臨床背景と増す腫瘍マーカーの重要性 ~,ABBOT NEWS CANCER,2015. ₂. 泉並木他, 肝細胞癌のスクリーニングと診断, 慢性肝炎の治療ガイド2008, 日本肝臓学会編, 文光堂,p45-47,2008. ₃. 國土典宏他, 第 2 章診断およびサーベイランス ( 腫瘍マーカー ), 肝癌診療ガイドライン2013 年版, 日本肝臓学会ホームページ :13/42-15/42,2013. ₄.2013 年部位別がん死亡数 ( 図表編 ), がんの統計 14, 公益財団法人がん研究振興財団ホームページ :15,2014. ₅. 金井正光監修, 肝癌関連マーカー (AFP AFP-L3 分画 PIVKAⅡ), 臨床検査法提要第 33 版, 金原出版,p554-556,2010. ₆. 科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013 年版日本肝臓学会編, 金原出版,p13,2013. 担当 : 熊川良則 ( 免疫血清係 ) 文責 : 亀石猛 ( 検査科技師長 ) 石田啓 ( 臨床部長 ) 6