計測工学第 12 回以降 測定値の誤差と精度編 2014 年 7 月 2 日 ( 水 )~7 月 16 日 ( 水 ) 知能情報工学科 横田孝義 1
授業計画 4/9 4/16 4/23 5/7 5/14 5/21 5/28 6/4 6/11 6/18 6/25 7/2 7/9 7/16 7/23 2
誤差とその取扱い 3
誤差 = 測定値 真の値 相対誤差 = 誤差 / 真の値 4
誤差 (error) には三種類ある (1) 系統誤差 (systematic error) ゼロ調整の狂いなど 後から補正が効く計測器の固有誤差環境誤差 ( 温度 湿度 気圧など ) 個人誤差 ( 目盛の読み方の個人差など ) 例をいくつか考えて見よう 5
誤差 (error) には三種類ある (2) 偶然誤差 (random error) つきとめられない原因による誤差符号 大きさが変化する 系統誤差が測定の繰り返しに対して一定であるのに対して 測定ごとにばらつく誤差のことを偶然誤差という 測定手法に不確定性が生じていることによる 誤差を取り除くことはできないが 数多く測定することで誤差の影響を少なくすることが可能 例をいくつか考えて見よう 6
誤差の統計的扱い 7
ある部品の長さのデータ ヒストグラム 度数 測定値 ( mm ) 度数相対度数 50.0026 2 4% 50.0027 3 6% 50.0028 2 4% 50.0029 10 20% 50.003 4 8% 50.0031 13 26% 50.0032 9 18% 50.0033 4 8% 50.0034 1 2% 50.0035 2 4% 計 50 100 8
ある部品の長さのデータ ヒストグラム 相対度数 測定値 ( mm ) 度数相対度数 50.0026 2 4% 50.0027 3 6% 50.0028 2 4% 50.0029 10 20% 50.003 4 8% 50.0031 13 26% 50.0032 9 18% 50.0033 4 8% 50.0034 1 2% 50.0035 2 4% 計 50 100 9
正規分布 (Normal Distribution) 確率密度関数で自然界でよく表れる分布として正規分布がある f x = 1 e (x m)2 2σ 2 2πσ m: 平均値 σ: 標準偏差 10
正規分布 (Normal Distribution) とすると 標準正規分布 N(0,1) 11
正規分布 (Normal Distribution) 標準正規分布 N(0,1) 標準正規分布の累積分布関数 t 誤差関数 x 12
誤差関数 誤差関数 (Error Function) 13
正規分布の累積分布関数 テキストの (5-2) 式 14
正規分布の性質 互いに独立で正規分布する二つの確率変数 x,y の和 x+y は正規分布に従う これが で整理できるか? 15
正規分布の性質 16
正規分布の性質 ヤコ ビアンの絶対値 17
正規分布の性質 18
正規分布の性質 19
正規分布の性質 20
正規分布の性質 互いに独立で正規分布する二つの確率変数 x,y の和 x+y も正規分布に従う 21
正規分布の例 σ=0.25 σ=0.5 σ=0.75 σ=1 22
測定値がある値の範囲に入る確率 測定値がある値の範囲に入る確率を求める 確率密度関数を f(x) とすれば この確率は p x 1 < x < x 2 = x 2 f x dx x 1 で与えられる σ=0.75 P(m-σ<x<m+σ)=68.3% P(m-2σ<x<m+2σ)=95.5% P(m-3σ<x<m+3σ)=99.7% P(m-1.96σ<x<m+1.96σ)=95% 23
測定値がある値の範囲に入る確率 68.3% ±σ 95.5% 99.7% ±2σ ±3σ 24
平均値と標準偏差 n 個の測定値 x 1, x 2,, x n より 試料平均と試料標準偏差 試料不偏分散は n 試料平均 x = 1 n x i i=1 試料標準偏差 s n = 1 n 1 n i=1 (x i x) 2 試料不偏分散 s n 2 25
あるネジの長さを何度も測った例 n x = 1 n i=1 x i =50.00282 mm 2 s n =0.516 /(10-1) =0.516/9=0.573 (μm) 2 s n =0.240 μm 26
統計の考え方 母集団 非常に多くの要素真の平均母平均 m 真の分散母分散 s 2 計測有限個の標本標本 ( 試料 ) 平均標本 ( 試料 ) 分散 通常は母集団は 神のみぞ知る 場合が多い 母集団がわかる例とわからない例を挙げてみよう 27
正確さ 精密さ 精度 母平均 正確さ 精密さ 母平均 正確さ 精密さ 標本平均 標本平均 母平均 正確さ 精密さ 母平均 正確さ 精密さ 標本平均 標本平均 28
標本平均のばらつき 有限回の測定から算出される標本平均は母平均とは誤差を持ち を標準偏差として分布する ここで σ は母集団の標準偏差である 母平均 標本平均 例 : 1 回の測定で求めた標本平均 ( 測定値そのもの ) は母集団の標準偏差と同じばらつきが生じている 36 回の測定で求めた標本平均は母集団の標準偏差の 1/6 程度のばらつき範囲に収まっている 29
正規乱数をどうやって発生させるか 一様乱数の分布 一様乱数 2 つを加算した分布 一様乱数 4 つを加算した分布 一様乱数を複数足し合わせても正規乱数になる ( 中心極限定理 ) 30
正規乱数をどうやって発生させるか 一様乱数系列 一様乱数 12 系列の加算で生成した正規乱数 ( 母集団 ) 乱数系列の印象が変わったのがわかるだろうか? 分布 31
余談 : コンピューターの進歩 18 ヶ月に倍のペースで性能向上し続けているムーアの法則 1980 年代後半のスーパーコンピューターは今日の PC の 1/100 の性能 1,000 倍の価格である 主メモリ 64MB HDD ~2GB 0.63 GFLOPS 数億円 x 100 HITAC S-810/20K(1987) メモリ ~8GB HDD ~TB 51 GFLOPS 2014/7/1 32
例題 1 1 ある長さの測定で σ=1.2μm が知られている 5 回の測定値より x=24.985 mm が得られた 95% の信頼区間を求めよ 母標準偏差 σ =1.2μ m 母平均? 長さ 33
誤差とその取扱い (2) 34
例題 1 1 母集団 母平均? 母分散 1.2μm 標本数 5 母標準偏差 σ =1.2μ m 標本抽出標本平均 24.985mm 標本平均の標準偏差は σ/ 5=0.536 μm 母平均? 長さ 35
例題 1 1 こういう図をイメージしよう 母集団の分布の可能性 母集団の左の裾野よりに測定したのか 右の裾野よりに測定したのか曖昧さがある 曖昧さの範囲を規定するのが信頼区間の考え方である 母平均? 母平均? 確率 95% に相当する c 1 の値は 1.960 c 1 σ/ 5= 1.960x 1.2 /2.236= 1.05 μm c 1 σ/ 5 -c 1 σ/ 5 長さ 母平均は 24.985 ±0.001 mm の範囲内に 95% の確率で存在する 標本平均 (5 回測定 ) 24.985 mm 36
間接測定による誤差 直接測定測定量をそれと同種類の基準量と比較して測定すること例長さを巻尺で測る 間接測定測定量と一定の関係にあるいくつかの量について測定を行いそこから測定値を導き出すこと例 GPS での測位 地震のマグニチュード値 etc 37
間接測定における誤差系統誤差の影響 測定値 q を複数の独立な測定値 から 計算で求めるものとする 測定値に それぞれ系統誤差による偏りがあるとき 式 (1.7) で算出したqにもその影響が生じて qの偏りを引き起こす qは となる いわゆる全微分 38
間接測定における誤差系統誤差の影響 系統誤差の影響の最悪値は から すなわち すべてが同符号で影響した場合である 39
間接測定における誤差系統誤差の影響簡単な例 誤差の伝播のイメージ (1.8) 式から 40
間接測定における誤差系統誤差の影響簡単な例 (1.8) 式からは 厳密には ただし は やに比べて十分小さいとして無視出来る すなわち この例からも (1.8) 式の意味が理解できる 41
間接測定における誤差偶然誤差の影響 各測定値に偶然誤差によるばらつきがあり その標準偏差をそれぞれであるとき qのばらつきの標準偏差は となる どうしてか? 42
間接測定における誤差偶然誤差の影響 偶然雑音はそれぞれ独立なので 43
例題 1 5 球の質量 m と直径 d を測定して m=35.0±0.1g, d=20.00±0.01mm の結果を得た 密度 ρ とその誤差 ρ を求めよ 球の体積 V は? 密度 ρ は? ここでの誤差は偶然誤差であるので (1.10 式 ) を適用する 44
以上 信頼区間の考え方 誤差の伝播の仕方が理解できただろうか? 45
誤差の影響をいかに軽減するか 最小自乗法 1795 年 Gauss(Karl Friedrich Gauss) が 18 歳の時に考案 惑星の起動がケプラーの法則に従っているので 数個の観測結果から惑星の軌道を厳密に求めることが出来る 現実には観測には必ず誤差を伴う すなわち 真実を近似しているに過ぎない Karl Friedrich Gauss 1777-1855 ブラウンシュヴァイク, 神聖ローマ帝国 46
最小自乗法 回帰分析 世の中には比例関係とみなせる現象が多い ( これを線形モデル式と呼ぼう ) この関係にあるとみなされる現象の n 組の測定値が得られたとする これらの測定値を用いて線形モデル式のパラメータ a,b を求めたい 47
最小自乗法 回帰分析 ある測定値とすると をモデル式に当てはめた時の誤差を この値の 2 乗和を S とすると (1.13) 2 乗誤差の和 S を最小化するパラメータ a,b を求める 48
最小自乗法 回帰分析 (1.13 ) S はパラメータ a,b の 2 次関数で下に凸の形 すなわちパラメータ a,b が S を最小にする時には a,b に対して S の傾きはゼロになる このあたり? このあたり? 具体的には a,b をどうやって求めるか? 49
最小自乗法 回帰分析 (1.13) 2 次元で見てみると S このあたりが S を最小にするパラメータ a,b の値 0.6 b b a 0.78 0.45 0.54 a 50
最小自乗法 回帰分析 傾きが 0 になるとは 偏微分をして その値が 0 であるということ まず S をパラメータ a で偏微分してそれを 0 とおく (1.14) すなわち (1.15) 51
最小自乗法 回帰分析 もうひとつのパラメータ b で偏微分してみると すなわち (1.16) 52
最小自乗法 回帰分析 (1.15) (1.16) の 2 つの条件式が得られた 欲しいのは を満たす,a,b の値である それらは (1.15)(1.16) 式を連立することで求められる 実際にこの時間内に導出してみよう 制限時間 20 分 53
最小自乗法 回帰分析 まず (1.16) 式 から これを (1.15) 式に代入すると a について整理すると (1.17) 54
最小自乗法 回帰分析 (1.17) を に代入すると (1.18) 55
最小自乗法 回帰分析 例題 1.6 56
最小自乗法 回帰分析 に求めた a,b の値を代入してグラフを描くとこのようになり データの間を縫うような直線となる 実際には毎回手計算をしていては大変なので Excel などで用意されている機能を利用する 57
参考 Excel での最小自乗法の使い方 青い範囲を選択して メニューの 挿入 グラフの種類の中から散布図を選ぶ グラフ上のデータを選択して 近似曲線の追加 58
最小自乗法 回帰分析 とおけば 59
参考 Excel での最小自乗法の使い方 青い範囲を選択して メニューの 挿入 グラフの種類の中から散布図を選ぶ グラフの Y 軸を選択して右クリック 対数目盛を表示するにチェック 閉じる グラフ上のデータを選択して 近似曲線の追加近似曲線のオプションは指数関数 60