ワースペクトルの離散フーリエ逆変換として以下の式で 与えられる XkY k rm IDFT Xk Y k 信号の位相スペクトルが 変量確率分布に従う場合 の POC 関数の統計的性質 3 3. 著者らのグループがこれまでに行ってきた POC 関数の XkY k W mk Xk Y k 統計的解析では

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第30回 信号処理シンポジウム 05年月4日 6日 いわき 変量確率分布に従う位相スペクトルをもつ 信号間の位相限定相関関数の統計的性質 Statistical Properties of Phase-Only Correlation Functions Between Two Signals With Phase Spectrum Following Bivariate Probability Distributions 鈴木亮 八巻俊輔 川又政征 吉澤誠 東北大学大学院工学研究科 東北大学サイバーサイエンスセンター Ryo Suzuki Shunsuke Yamaki Masayuki Kawamata Makoto Yoshizawa Graduate School of Engineering, Tohoku University Cyberscience Center, Tohoku University アブストラクト 位相限定相関関数 POC 関数: PhaseOnly Correlation Functions の性質に数学的根拠を与え ペクトル差を 変量確率変数と仮定して POC 関数の統 るため POC 関数の統計的解析を行う 本稿では 信 計的解析を行った 4 また 位相スペクトル差が直線上 号の位相スペクトルがともに確率的に変化する場合を考 で与えられる 変量確率分布に従うと仮定して POC 関数 え 信号の位相スペクトルが 変量確率変数であると仮 の期待値と分散を導出した 著者らのグループでは これまでに 信号間の位相ス 定する 信号の位相スペクトルが 変量確率分布に従う これらに対して本稿では 信号の位相スペクトルを とした時の POC 関数の期待値と分散を導出する このと 変量確率変数と仮定して POC 関数の統計的解析を行う き POC 関数の期待値と分散の一般式は 次元の特性関 具体的には 信号の位相スペクトルが平面上で与えられ 数を用いて導出できることを証明する る 変量確率分布に従うと仮定して POC 関数の期待値と 分散を導出する その結果 POC 関数の期待値と分散の はじめに つの信号の類似度を評価する方法の一つとして 信 一般式は 次元特性関数を用いて導出できることを証明 する 号のもつ位相情報を用いる位相限定相関関数 POC 関 POC 関数の統計的解析 数:Phase-only-Correlation Functions を用いる方法があ る POC 関数は振幅スペクトルを に正規化した信号 位. 相限定信号 に対して相関を計算することで求められる つの信号が類似しているときに POC 関数は鋭いピー クが観測される また POC 関数は 信号間の幾何学的 な関係を求めることができる 例えば POC 関数のピー クの出現する位置のずれを信号の位置ずれに変換して表 POC 関数の定義 まず最初に位相限定相関関数 POC 関数 を定義する 信号長が の つの複素信号を xn と yn とする. こ れらの信号 xn と yn の 次元離散フーリエ変換は以 下の式で表される 現することができる これらの特徴から POC 関数は指 紋認証技術 や画像マッチング技術 周期性のある DA 配列の探索 3 などに応用されてきた つの評価したい信号が等しいときは それぞれの信号 の持つ位相情報は等しく つの信号の位相スペクトル差 Xk DFT xn xnwnk Xk ejθk n0 Y k DFT xn ynwnk Y k ejϕk n0 はデルタ関数になる また つの信号の位相スペクトル ここで k 0,, は離散周波数インデックスであり W exp jπ/ は離散フーリエ変換の回転因子を 差が 0 ではない時 POC 関数はデルタ関数と異なる し 表す また Xk は信号 xn の振幅スペクトルであり かし これまでの研究では 信号間の位相スペクトル差 が 0 ではない時に POC 関数がどれだけデルタ関数と異 θk は xn の位相スペクトルである 同様に Y k は信 号 yn の振幅スペクトルであり ϕk は yn の位相スペ なるかについて数学的な根拠が与えられていなかった クトルである POC 関数は つの信号の正規化クロスパ は 0 である 位相スペクトル差が 0 となる時の POC 関数 - 350 -

ワースペクトルの離散フーリエ逆変換として以下の式で 与えられる XkY k rm IDFT Xk Y k 信号の位相スペクトルが 変量確率分布に従う場合 の POC 関数の統計的性質 3 3. 著者らのグループがこれまでに行ってきた POC 関数の XkY k W mk Xk Y k 統計的解析では 信号 xn の位相スペクトル θk を確定 信号とし 一方 信号 yn の位相スペクトル ϕk を確率 k0 jαk mk e W 信号の位相スペクトルにおける仮定 3 k0 m 0,,..., ここで は複素共役を表し αk θk ϕk は つの信 信号であると仮定をおいていた しかし 実際の信号処 理においては 信号 xn と yn の位相スペクトル θk と ϕk がともに確率信号である場合も考えられる 本研究 では 信号の位相スペクトル θk と ϕk が確率的に変動 号の位相スペクトル差を表す つまり位相スペクトル差 すると仮定して POC 関数の統計的解析を行う この時 αk がわかると POC 関数を求めることができる 信号の位相スペクトル θk, ϕk は 変量の確率変数で. あると仮定している POC 関数の期待値と分散の一般式 著者らのグループでは 文献 4 で 位相スペクトル差 αk を確率変数と仮定して POC 関数の期待値と分散を導 出した POC 関数の期待値 Erm および分散 Varrm の一般式は以下の式で表される Erm Aδm Varrm A 5 αk θk ϕk の関係式を式 6 に代入すると 以下の ように位相因子 ejαk の期待値を表すことができる A E ejαk E ejθk ϕk 9 ここで 信号の位相スペクトル θk, ϕk は すべての周 波数インデックス k に関して独立かつ同一な確率分布に 従うと仮定している 式 9 と 4 5 より位相スペクト 6 とおいている ここで 位相スペクトル差 αk は すべて の周波数インデックス k に関して独立かつ同一な確率分 ル θk, ϕk の 変量確率密度関数を与えることで POC 関数の統計的性質を表すことができる 3.3 布に従うと仮定している 式 4 と 5 6 より位相ス ペクトル差 αk の確率密度関数を与えることで POC 関 数の統計的性質を表すことができる.3 POC 関数の期待値と分散の一般式 4 jαk ここで位相因子 e の期待値を jα AE e k 3. 特性関数を用いた POC 関数の期待値と分散の 次元の特性関数を用いた POC 関数統計的性質 の記述 信号の位相スペクトル θk, ϕk の確率密度関数が与え られたとき 次元の特性関数を用いて POC 関数の期待 値と分散を表すことができる 信号の位相スペクトルの 確率密度関数を pθk, ϕk としたとき その 次元特性関 導出 数 ψθ,ϕ t, t は以下の式で与えられる 5 jθk t +ϕk t ψ t, t E e θ,ϕ き 式 6 の計算にその特性関数を用いることができる 確率変数 αk の確率密度関数 pαk の特性関数 ψα t は以 pθk, ϕk ejθk t ejϕk t dθk dϕk 0 下で定義される jαk t ψα t Ee ejαk t pαk dαk 7 次に 式 0 において t, t を代入すること で 以下のように位相因子の期待値を導出することがで ここで t とすることで 位相因子の期待値を以下の きる ように求めることができる ψθ,ϕ, E ejθk ϕk ejαk pαk dαk ψα Eejαk pθk, ϕk ejθk e jϕk dθk dϕk A 8 A 従って 位相スペクトル差 αk の確率密度関数が与えられ 位相スペクトル差 αk の確率密度関数が与えられたと たとき 式 8 を用いることで POC 関数の期待値と分散 従って 確率密度関数 p θk, ϕk の 次元特性関数を導 を導出することができる 出できる場合には 式 を用いることで POC 関数の - 35 -

期待値と分散を以下の式で導出することができる 量正規分布 µ, Σ の確率密度関数は以下の式で与えら れる Erm Aδm Varrm A ここで位相因子 ejαk の期待値を A E ejαk E ejθk ϕk ψθ,ϕ, e Θ µσ Θ µt π Σ Θ θk ϕk µ µθ µϕ σθ ρσθ σϕ Σ ρσθ σϕ σϕ 4 とおいている 3.4 pθk, ϕk 3 8 σθ, σϕ はそれぞれ 信号の位相スペクトル θk, ϕk の分散 を表している このとき σθ, σϕ は σθ > 0 と σϕ > 0 を 満たす また ρ は相関係数と呼ばれ ρ を満 信号の位相スペクトルが独立な場合の POC 関 数の統計的性質 信号の位相スペクトル θk, ϕk の 変量確率密度関数 たす 相関係数 ρ の時は θk ϕk であり ρ を p θk, ϕk とし θk と ϕk の周辺確率密度関数をそれぞ の時は θk ϕk となる p θk, ϕk が式 8 で与えら れ p θk と p ϕk とおく このときに れる場合 その 次元特性関数は以下のように導出する ことができる p θk, ϕk p θk p ϕk 5 が成り立つ場合 信号の位相スペクトル θk, ϕk は互い に独立であるといえる 式 0 において p θk, ϕk に式 5 が成り立つとすると その 次元特性関数は以下の ように導出することができる ψθ,ϕ t, t E ejθk t +ϕk t pθk, ϕk ejθk t ejϕk t dθk dϕk p θk p ϕk ejθk t ejϕk t dθk dϕk p θk ejθt dθk p ϕk ejϕk t dϕk ψθ,ϕ t, t ejµθ t +µϕ t e σθ t +ρσθ σϕ t t +σϕ t 9 のように位相因子の期待値を導出することができる ψθ,ϕ, ejµ e pϕk と pθk の特性関数である 従って 式 6 に t, t を代入することで 以下のように位相因子の 期待値を導出することができる A E ejαk E ejθk ϕk ψθ ψϕ σ A σ σθ 0 ρσθ σϕ + σϕ µ µθ µϕ 式 0 を式 4 と式 5 に代入すると 以下のように POC 関数の期待値と分散を導出できる σ Erm ejµ e δm Varrm e σ 6 ここで ψθ t とψϕ t は それぞれ周辺確率密度関数 ここで 式 9 に t, t を代入することで以下 ψθ t ψϕ t 一例として 位相スペクトル θk, ϕk の分散 σθ, σϕ が それぞれ, であるとき 相関係数 ρ 及び平均差 µ の 変化に対する POC 関数 rm のピークの期待値 Er0 と分散 Varrm を図 と に示す 分散 σθ, σϕ がそ れぞれ, である場合は POC 関数のピークの期待値 7 Er0 と分散 Varrm は以下の式で表わされる σ ここで 式 7 を式 4 と式 5 に代入することで POC 関数の期待値と分散を導出することができる 式 3 と 4 より POC 関数のピークの期待値と分散 計算例 4 4. E r0 e eρ 3 4 e σ eρ Varrm は平均差 µ に依存しないことがわかる また相関係数 ρ 変量正規分布に従う場合の POC 関数の統計的 性質 が- から1に増加するに従い 位相スペクトル差のばら つきが小さくなるため POC 関数のピークの期待値は増 信号の位相スペクトル θk, ϕk が 変量正規分布に 従うと仮定する この時 平均 µ 共分散行列 Σ の 変 加し 分散は減少する 図 と にもその傾向が表れて いる - 35 -

図 : 信号の位相スペクトルの相関係数及び平均差が変 図 4: 信号の位相スペクトルの分散が変化した時の POC 化した時の POC 関数のピークの期待値の挙動 関数の分散の挙動 次に 相関係数 ρ 0.5 であるとき 位相スペクトル θk, ϕk の分散 σθ, σϕ の変化に対する POC 関数 rm の期待値 Er0 と分散 Varrm を図 3 と 4 に示す 相関係数 ρ 0.5 である場合は POC 関数の期待値と分 散は以下の式で表される σ E r0 e e σθ σθ σϕ +σϕ Varrm e σ e σθ σθ σϕ +σϕ 5 6 式 5 と 6 より POC 関数の期待値と分散は平均差 図 : 信号の位相スペクトルの相関係数及び平均差が変 化した時の POC 関数の分散の挙動 µ に依存しないことがわかる また σ の値が大きくな るに従い POC 関数の期待値は減少し POC 関数の分 散は増加する 図 3 と 4 にもその傾向が表れている 4. 変量一様分布に従う場合の POC 関数の統計的 性質 信号の位相スペクトル θk, ϕk が 変量一様分布に従 うと仮定すると その確率密度関数は式 7 で定義する a < θk < a pθk, ϕk 7 a b b < ϕk < b 0 otherwise ここで θk と ϕk は独立であると仮定している 式 7 の 次元特性関数は以下のように導出することができる ψθ,ϕ t, t sinc at sinc bt 図 3: 信号の位相スペクトルの分散が変化した時の POC 関数のピークの期待値の挙動 ここで sinc 関数は以下の式で与えられる x 0 sincx sinπx x 0 πx - 353-8 9

は 信号の位相スペクトルが平面上で与えられる 変量 確率分布に従うと仮定して POC 関数の期待値と分散を導 出した その結果 POC 関数の期待値と分散の一般式は 次元特性関数を用いて導出できることを証明した 参考文献 H. akajima, K. Kobayashi, T. Aoki, and T. Higuchi, Pattern collation apparatus based on spatial frequency characteristics USP 595034, US patent, May 995. C. D. Kuglin and D. C. Hines, The Phase Correlation Image Alignment Method, Proc. IEEE, Int. Conf. on Cybernetics and Society, pp. 63-65, 975. 図 5: a と b が変化したときの POC 関数の期待値の挙動 3 A. K. Brodzik, Phase only filtering for the massesof DA data: A new approach to sequence alignment, IEEE Trans. Signal Processing, VOL. 54, O. 6, pp. 456-466, June 04. 4 S. Yamaki, J. Odagiri, M. Abe and M. Kawamata, Effects of Stochastic Phase Spectrum Differences on Phase-Only Correlation Functions Part I: Statistically Constant Phase Spectrum Differences for Frequency Indices, Proceedings of IEEE 3rd International Conference on etwork Infrastructure and Digital Content, pp. 360-364, September 0. 図 6: a と b が変化したときの POC 関数の分散の挙動 よって 位相因子の期待値は式 8 に t, t を 5 A. Papoulis, S. U. Pillai, Probability, Random Variables and Stochastic Processes, McGraw Hill, 00. 代入することで以下の式のように導出できる A ψθ,ϕ, sinc a sinc b sinc a sinc b 30 ここで式 30 を式 4 と式 5 に代入すると 以下のよ うに POC 関数の期待値と分散を導出できる Erm sinc a sinc b δm 3 Varrm sinc a sinc b 3 一例として a と b の変化に対する POC 関数 rm の ピークの期待値 Er0 および分散 Varrm を図 5 と 6 に示す 図 5 と 6 をみると a と b の値が 0 から π に増 加するに従い POC 関数のピークの期待値 Er0 は減 少し 分散 Varrm は増加していることがわかる 5 まとめ 本稿では 信号の位相スペクトルを 変量確率変数 と仮定して POC 関数の統計的解析を行った 具体的に - 354 -