抗菌薬使用量を標準化方法 AUD とその発展 2012/10/20 佐伯康弘
表 1. 抗菌薬使用量算出方法の比較 はじめに カウント方法利点欠点 1 バイアル数 又はアンプル数 2 グラム数 算出しやすい 時間的変動を表現しやすい 異なる系統の抗菌薬を比較しにくい ベッド数 総在院日数によって 使用量が変化する 地域 規模の異なる施設間の比較が出来ない 3 費用算出しやすい薬価の高い薬剤の比重が大きくなる 4AUD 設定された 1 日投与量で総使用を割り 1000 延べ入院患者日数で割る ) 標準化方法として普及している 4DOT/1000PD 総投与日数を (1000 人あたり ) 入院患者日数で割る 標準化されているため 施設間 薬剤間の比較が出来る 集計が比較的簡単にできる 1 日投与量に依存しないため 体重差 ( 小児 ) 疾患差 ( 腎障害など ) に影響されない DDD のような事前の設定値を必要としない 一部の医薬品で算出に必要な DDD が規定されていない 小児を含めた比較が出来ない 疾患による投与量の違いを標準化出来ない 投与日数を積算することが集計上煩雑である 日数を計算する場合の定義による違い ( 例 :0 時をどこにとるか 隔日投与などの取り扱いなど 1
ATC/DDD システムと AUD について ATC/DDD システム Anatomical Therapeutic Chemical/Defined Daily Dose WHO による医薬品適正使用のための有用性調査ツール目的 : 全世界が共通の分類法で容易に医薬品の調査や比較を出来るようにすること DDD:Defined Daily Dose 主な適応症に対する成人 70kg の仮想平均維持 1 日量 AUD:Antimicrobial Use Density 抗菌薬使用密度 ;1000 患者入院日数当たりの抗菌薬使用日数 AUD= 特定期間の抗菌薬の総使用量 (g) 特定期間の入院患者 DDD(g/ 人 日 ) 延べ入院日数 ( 人 日 ) 1000 1000 をかける場合と 100 をかける場合がある
5 AUD の定義 :Antimicrobial Use Density 抗菌薬使用密度 ;1000 患者入院日数当たりの推定抗菌薬使用日数 DDD:Defined Daily Dose: 主な適応症に対する成人 70kg の仮想平均維持 1 日量 AUD= 特定期間の抗菌薬の総使用量 (g) 特定期間の入院患者 DDD(g/ 人 日 ) 延べ入院日数 ( 人 日 ) 1000 DOTs/1000PD の定義 :Days of therapy/1000patient-days) 抗菌薬使用密度 ;1000 患者入院日数当たりの実抗菌薬使用日数 使用期間により抗菌薬使用量を標準化した標準化抗菌薬使用期間密度 paud= 特定期間の抗菌薬延べ投与日数 ( 人 日 ) 特定期間の入院患者延べ入院日数 ( 人 日 ) 1000
5 薬物群 ATC コード略号一般名先発品名 ペニシリン Penicillins J01CA01 ABPC アンピシリン注射用ビクシリン J01CA12 PIPC ピペラシリンペントシリン注射用 J01CE01 PCG ベンジルペニシリン 注射用ペニシリン G カリウム 規格 DDD (g) (g) 0.25 2 0.5 2 1 2 2 2 1 14 2 14 備考 0.6 3.6 0.6g=100 万単位です 0.75 2 アンピシリンとして集計しま J01CR01 ABPC/SBT アンピシリン / スルバクタムユナシンS 静注用 1.5 2 す 3 2 2.25 14 ピペラシリンとして集計しま J01CR05 PIPC/TAZ ピペラシリン / タゾバクタムゾシン静注用 4.5 14 す 0.1 2 アンピシリン / クロキサシリアンピシリン + クロキサシリ J01CR50 ABPC/MCIPC 注射用ビクシリンS 0.5 2 ンンとして集計します 1 2 第 1 世代セフェ 1 4 J01DB03 CET セファロチンコアキシン注射用ム 2 4 Firstgeneration 0.5 3 0.25 3 J01DB04 CEZ セファゾリンセファメジンα 注射用 cephalosporin 1 3 s 2 3 0.25 4 J01DC07 CTM セフォチアムパンスポリン静注用 0.5 4 1 4 第 2 世代セフェ 0.25 4 ム 0.5 4 Secondgeneration J01DC09 CMZ セフメタゾールセフメタゾン静注用 1 4 2 4 cephalosporin J01DC12 CMNX セフミノクスメイセリン静注用 1 4 s J01DC13 CBPZ セフブペラゾントミポラン / ケイペラゾン 1 2 0.5 2 J01DC18 FMOX フロモキセフフルマリン静注用 1 2 カルバペネム Carbapenems J01DH51 IPM/CS イミペネム / シラスタチンチエナム点滴用 0.5 2 イミペネムとして集計します
方法 ( 対象抗菌薬 ) 表対象とした抗菌薬一覧 ( 注射剤 ) 分類 一般名称 分類 一般名称 ペニシリン系 ベンジルペニシリン アミノグリコド系 トブラマイシン ペニシリン系 アンピシリン アミノグリコド系 アミカシン ペニシリン系ピペラシリンアミノグリコド系イセパマイシン ペニシリン系スルバクタム アンピシリン * アミノグリコド系ジベカシン ペニシリン系 タゾバクタム ピペラシリン * アミノグリコド系 ゲンタマイシン ペニシリン系 アンピシリン クロキサシリン * 抗 MRSA 薬 バンコマイシン セフェム系 1 セファゾリンアルベカシンセセフェム系 2 セフォチアムテイコプラニンフセフェム系ェセフメタゾール ** リネゾリドセフェム系ムフロモキセフ ** 抗真菌薬アムホテリシンB 系セフェム系 3 セフォタキシムアムホテリシンBリポソーム製剤 セフェム系セフタジジムボリコナゾール セフェム系セフトリアキソンミカファンギン セフェム系スルバクタム セフォペラゾン ** ミコナゾール セフェム系 4 セフピロムホスフルコナゾール セフェム系 セフェピム イトラコナゾール カルバペネム系 メロペネム リンコマイシン系 クリンダマイシン リンコマイシン系ビアペネムそマクロライド系エリスロマイシンマクロライド系ドリペネムのテトラサイクリン系ミノサイクリンテトラサイクリン系イミペネム シラスタチン他抗結核薬ストレプトマイシン パニペネム ベタミプロン エンビオマイシン ニューキノロン系 シプロフロキサシン カナマイシン ニューキノロン系 パズフロキサシンイソニアジドレボフロキサシンホスホマイシン系ホスホマイシンナトリウム モノバクタム系 アズトレオナム * ペニシリン系にはβラクタマーゼ阻害薬配合剤を含む ** セフェム系にはセファマイシン系 オキサセフェム系 βラクタマー ST 合剤 トリメトプリム スルファメトキサゾール ゼ阻害薬配合剤を含む 4
AUD の問題点 1 指標値としての名前の整理 ( 表示方法 単位 ) AUD の場合 AUD 1000 :1000 入院患者日数あたりの場合 ( 単位 : ) AUD 100 :100 入院患者日数あたりの場合 ( 単位 :%) paud 1000 =DOTs/1000PDs paud 1000 :1000 入院患者日数あたりの場合 ( 単位 : ) paud 100 :100 入院患者日数あたりの場合 ( 単位 :%) 2 AUD の欠点 ( 表 1) 小児などの特殊領域への対応を改善する 小児領域や腎疾患などの領域については標準化方法として paud を推進
成人病棟 : 平均 :58.4kg(±21.5) 小児病棟 : 平均 :17.5kg(±1.40)
薬剤名 スルバクタム / アンピシリン (SBT/ABPC) セフトリアキソン (CTRX) メロペネム (MEPM) クリンダマイシン (CLDM) 相関度を表わす決定係数 ( r² ) 小児 成人 0.777 0.020 0.437 0.034 0.639 0.014 0.669 0.009
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結果 1.pAUD AUD Dav( 平均 1 日投与量 ) DDD の関係 Pt: 一定期間での抗菌薬の延べ投与日数 Ht: 一定期間での全患者の延べ入院日数 At: 一定期間での対象薬剤の総使用量 Dav: 一定期間での 1 日平均投与量 DDD:WHO の ACTindex version2010 にて定義される成人 1 日投与量 AUD paud Dav At 1000 DDD Ht Pt 1000 Ht At Pt 式 1 式 2 式 3 式 1,2,3 より paud は AUD を DDD と Dav との比で補正した値として表される DDD paud AUD 式 4 Dav 6