第 週ラプラス変換 教科書 p.34~ 目標ラプラス変換の定義と意味を理解する フーリエ変換や Z 変換と並ぶ 信号解析やシステム設計における重要なツール ラプラス変換は波動現象や電気回路など様々な分野で 微分方程式を解くために利用されてきた ラプラス変換を用いることで微分方程式は代数方程式に変換される また 工学上使われる主要な関数のラプラス変換は簡単な形の関数で表されるので これを ラプラス変換表 として用意しておけば 機械的な操作により微分方程式を解くことが可能になる 計測 制御システムにおいてもラプラス変換は 安定性の判定などに利用されている ラプラス変換の定義 教科書 p.35 時間信号 x( は, 次の式により, 複素数 の関数 X () に変換される { } + x X ( ) x( e ( d (-) この定義式のラプラス変換は 片側ラプラス変換 と呼ばれる. < で信号 x( として扱っている. 工学上のほとんどの応用では, この形で扱うことができる. そこで, これ以降, 特に断らない限り, 信号は < で となる片側信号とする 注意 : ラプラス変換の収束域ラプラス変換の値は, 複素平面内の全ての について有限の値に収束するわけではない. 収束域 : ラプラス変換の値が収束する複素数 の範囲 片側ラプラス変換の収束域は, 一般的には, { } > γ Re (-) という半平面になる.γ の値は, 信号 x( によって変わる. ラプラス変換の使い方 3 有用な信号の多くは複素数 の単純な関数で表わせる変換 逆変換は ラプラス変換表 を使う線形 時不変システムの入出力は比例関係になる 入力 ( x, 出力 y (, インパルス応答 h( のラプラス変換を () とすると, Y ( ) H ( ) X ( ) jω とすればフーリエ変換が求まる X, Y (), H () 4 線形システム入門講義資料 -
例 e 指数関数的に減衰する信号を h( a < + a a すると, それらのラプラス変換は, H ( ) { e } e インパルス応答が h( a < ( ただし a >, U( ) { } となるシステムにステップ信号 ( y( のラプラス変換 Y () は, Y ( ) H ( ) X ( ) + a a + a y( a + a a + a このシステムの周波数応答 a { Y ( ) } ( e ) H ( ) の を jω で置き換えると, + a Hjω) j ω + a a ), ステップ信号を で与えられる u を入力したときの出力 y ( と < 5 6 ラプラス変換では, 時間信号を e という 複素の周波数 を持つ信号に分解している, と解釈できる (Fig.- 参照 ). 指数関数やステップ関数のように過渡的に変化する信号を扱える点がフーリエ変換とは異なる. α <, ω α, ω Im{ } α + jω Re{ } α >, ω α <, ω α >, ω α, ω Fig.- 複素周波数と信号波形 フーリエ変換の拡張として理解できる X ( ω) x( e 角周波数 ω の成分 jω d 角周波数 ω ( 実数値, 数直線上の 点 ) 変数 ( 複素数, 複素平面上の 点 ) α jω ( j ) j e e α + ω e α e ω 増大または減少する角周波数 ωの正弦波信号 + とすると, ラプラス変換には逆変換がある ( 章末の解説を参照 ) - 線形システム入門講義資料
基本的な信号のラプラス変換 教科書 p.36~ 工学上重要な信号のラプラス変換を以下に示す これらのラプラス変換は複素角周波数 の簡単な関数で表される また その分母多項式がゼロになる の値が 信号の周波数や減衰率に対応している ラプラス変換の分母がゼロになる の値を極 (pole) と呼ぶ 単位ステップ関数 < 導出過程 : { } ( 収束域は, Re { } > ) (-3) Re { } > { u } e d ( e d e lim e のとき つまり α + jω, α > のとき (-4) 式の第 項は, lim α jω e lim e e α + jω のように, となる したがって,(-3) が導き出される (-4) (-5) 単位ステップ信号は 計測システムにおける被測定信号や 制御システムでの制御入力信号がステップ的な変化をする場合に現れる この信号の極は につだけ存在し 角周波数ゼロ 減衰率ゼロの信号であることがわかる δ 関数 { ( } ( e d e δ δ ( 全領域で収束 ) (-6) δ 関数のラプラス変換は 平面全体に渡って となる 3 指数関数 { } e α α ( 収束域は, { } > α α α 導出過程 : { e } e e d Re ) (-7) ( α ) ( α ) e d lim e α したがって Re { } > α なら,(-7) 式が導き出される α (-8) 指数関数的の極は α となり 減衰係数と一致する 信号の振幅は α > なら時間とともに増大 α < なら時間と共に減衰する 指数関数のラプラス変換から出発して, 幾つかの信号のラプラス変換を導き出せる. 演習問題問題 上記の導出過程を見ないで, 以下の関数のラプラス変換と収束域を示せ. ステップ関数 δ 関数 3 指数関数 線形システム入門講義資料 -3
ステップ関数 δ 関数 3 指数関数 4 複素三角関数 j e ω jω { e } ω ( 収束域は, { } - j Re > ) (-9) 一定振幅の複素三角関数の極は 平面の虚軸上に つだけ存在する 5 co ω in ω jω jω e + e jω + jω { coω} + +ω ( 収束域は, Re { } > ) (-) jω jω e e j j jω + jω { inω} ω + ω ( 収束域は, { } Re > ) (-) 実数の正弦波のラプラス変換では, 極は虚軸上に存在し, 実軸に関し対称に 個が対になる -4 線形システム入門講義資料
6 e α e α coω inω ( α + jω) ( α jω) + α e e { e coω} + α jω α + jω α (-) ( α) + ω ( α + jω) ( α jω) α e e { e inω} ω ( α) + ω j ( 収束域は, { } > α j α jω α + jω Re ) (-3) 振幅が時間とともに減衰または増大する正弦波のラプラス変換の極は 実軸に関し対称に 個が対になる 7 n 信号 x ( のラプラス変換を求めると, + { } e d e e d (-4) となり, > では第 項はゼロとなるので, n { } e d ( 収束域は, Re { } > x ( のラプラス変換は, n n n n n { } + ) (-5) e d e e d (-6) となり, 前と同様にして, n n n n n { } e d { } (-7) となる { } / n n! { } n であるから, 一般に ( 収束域は, Re { } > n+ 信号 のラプラス変換は 平面の原点に n + 重の多重極を持つ ) (-8) 8 n e α 7 と同様の過程により, n α n! { e } n+ ( 収束域は, { } α ( α) Re > ) (-9) 信号 n e α のラプラス変換は 平面の実軸上に n + 重の多重極を持つ 線形システム入門講義資料 -5
付録 A 逆ラプラス変換 教科書 p.47~ ラプラス変換には逆変換が存在し α + j e x( X ( ) d (-4) j α j π で与えられる 積分経路は Fig.- に示すように, ラプラス変換の収束領域内に存在しなければならない すなわち α > γ である α + j Im{ } Re { } α > γ Im{ } Re { } α > γ γ Re{ } Re{ } C Re { } γ α Re { } γ α j a)bromwich の経路 b) 周回積分路 Fig.- 逆ラプラス変換の積分路 逆ラプラス変換式の導出 ラプラス変換の式 (-) は 単位ステップ関数 < を使って (-5) と変形できる これに α + jω を代入すると X ( ) x( e d (-6) ( α + j ω) X ( α + jω) x( e d α jω ( e e (-7) x d α となる この式から X ( α + jω) は x( e のフーリエ変換と等しいことがわかる したがって 逆フーリエ変換の式 : j ω ω x( X ( j ) e dω ( X ( jω) は x( のフーリエ変換 ) π を利用すると π α jω ( e X ( α + jω) e dω (-8) x -6 線形システム入門講義資料
が得られる 両辺に e α を乗ずると x π ( α + j ω) ( X ( α + jω) e dω (-9) が得られる α + j ω, jd ω d とすると (-9) 式は線積分の形に表され が導かれた ( 導出終り ) α + j e x( x( X ( ) d (-3) j α j π 逆ラプラス変換の (-4) 式は Fig.- に示す Bromwich の経路に沿った積分で求められる さらに, この積分は, Jordan の補助定理 により閉路積分 x ( X ( ) e d jπ C (-3) の形に収束するので 留数定理により計算することが可能である 線形システム入門講義資料 -7
モーグ シンセサイザーアメリカの電子工学博士 ロバート モーグ (Rober Moog,934-5) が 964 年に開発したアナログ シンセサイザー 電圧制御発振器, 電圧制御フィルタ, 可変利得増幅器などのアナログ電子回路で構成されていた -8 線形システム入門講義資料 Yauaka Tamra 9