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Transcription:

演算子の行列表現 > L いま 次元ベクトル空間の基底をケットと書くことにする この基底は完全系を成すとすると 空間内の任意のケットベクトルは > > > これより 一度基底を与えてしまえば 任意のベクトルはその基底についての成分で完全に記述することができる これらの成分を列行列の形に書くと M これをベクトル の基底 { >} による行列表現という ところで 行列 A の共役 dont 行列は A A であるから 列行列 の共役行列は L 73 74 75 76 ここで がその表現行列であるようなブラベクトル< を導入する そのときブラとケットの内籍は < > < > L M 77

任意のブラベクトル < は 基底系 { } また < < < < > > < > < の線形結合で表わされ 78 79 80 73 式の左から < をかけ 78 式の右から > をかけると 一方 < > < > < > < > < > < < > > 8 8 83 が成り立つから 73 式と 78 式は それぞれ > < > < >< > < >< これらより 基底の完全性関係を表わす が得られる >< 86 84 85

> > あるケット に作用してケット に変換する演算子 Ωを次のよ うに書く Ω > > 87 演算子 Ωは 基底系 { >} にどのように作用するかを決めることによって完全に定義できる Ω > Ω > Ω > 88 このとき行列 Ω を 基底系 { >} における演算子 Ω の表現行列とよぶ 88 式の左から <k をかけると Ω Ω Ω < k Ω > < k > k k 89 宿題. つの演算子の積の表現行列は それぞれの表現行列の積で与えられることを示せ. エルミート演算子の表現行列は以下の関係を満足することを示せ < Ω >< Ω >< Ω >

完全規格直交関数系と 線形代数の対応関係 ψ > ψ < 90 つの関数のスカラー積の定義 ψ ψ d < > 9 式 7 と 73 の対応関係 φ cψ cψ L cψ L cψ φ d 8 より c ψ 7 > > 73 < > 式 8 より 演算子 Ω の表現行列 Ωψ c ψ c ψ Ω ψ Ω > > Ω > Ω Ω < k Ω > k d 9 93 88 より 89 より

変分原理 最適な関数形を求める問題 t 点 AB を結ぶ最短経路重力場の中で粒子を上方に投げたとき 時間 t に対し高さ の描く軌跡 放物線 : この系のどのような性質 物理量 が極値をとるのか? 軌跡を規定する法則は何か? 周の長さが決まった曲線のうち面積最大のもの

点間を結ぶ最短経路 曲線 があるとき から までの間のこの曲線の長さは ds d d d d d dt を区間 [] で積分した結果が最小になるような を求める 最速降下線高い点 A に静止していた質点が 重力の作用で B まで滑り落ちるときに 要する時間が最小となるような軌跡 X だけ下がった点での質点の速さは ds d d だけすべるのに要する時間は d g A dt ds g g d B を区間 [AB] で積分した結果が最小になるような を求める 答えは後でプリントで配布

オイラーの方程式 d I d d I 0 m m I は の汎関数 I が停留値を持つような関数 を求めるには [ ] d I [ ] [ ] d d d I I I m ] [ d I 3 4 5 6 ところで 7 m は I に停留値を与える関数ここで

d d d d d d d 0 0 d d d I は任意であるが 両端 と で と m は一致する場合を考えているので は任意だから 0 d d d d d d m m ] [ 8 オイラーの方程式 9 0 解析力学へ発展

t q t q t U T L & dt t q q q q L I 0 L & & L ハミルトンの原理 0 q L q L dt d & ラグランジュの運動方程式宿題調和振動子 質量 m ばね定数 k の場合について ラグランジュの方程式がニュートン方程式に一致することを確かめよ

量子力学における変分原理 試行関数を Φ とすると ハミルトニアンの期待値は真のエネルギーよりも小さくはならない ただし 証明 < Φ H Φ > E < Φ Φ > 0 いま Φ 0 をハミルトニアンに対する固有関数とする すなわち 5 < Φ Φ > < Φ Φ < Φ < Φ H E 0 E E 0 H Φ > E E E E 0 Φ > Φ > < Φ < Φ < Φ > < Φ Φ Φ > Φ > Φ > < Φ 0 < Φ Φ E Φ L Φ > > >< Φ >< Φ Φ H 3 4 6 >< Φ < Φ Φ Φ 7 8 Φ > >< Φ >< Φ Φ > Φ >

線形変分法 いま試行関数 Φ が予め定められた 個の基底関数 χ で展開できるとする すなわち c Φ > χ > 9 ここで χ は有限個の関数の組であり ハミルトニアンの正確な固有関数というわけではない 以下では 基底関数は実で規格直交系を成しているとする < χ χ >< χ χ > 0 基底 χ > におけるハミルトニアンの表現表列 H は H H < χ H χ > と書くと これは 次元の行列である また ハミルトニアンがエルミート演算子であること及び基底が実関数であることから H は対称行列 すなわち H H である 一方 試行関数 Φ のハミルトニアンに対する期待値は < Φ H Φ > c < χ H χ > c c c であり 展開係数 c の関数になっている また 試行関数の規格化条件は Φ Φ > c c < χ χ > c 3 < 変分原理より 最良の試行関数は 3 式の条件の下で 式が極小となる関数 言い換えるとパラメータセット c を探すことにより得られる H

上の問題を解くには Lgrnge の未定乗数法を使う そこで 次の関数を考える L c c L c ε < Φ H Φ > ε < Φ Φ > cc H ε c 4 3 式のため 個の c はすべて独立ではないことに注意する そこで c は 3 式から決めることにし c c c - については 4 式が極小になるための条件から求めることにする すなわち L c k 0 k L 5 L の c に関する微分は必ずしもゼロになる必要はないが 未定定数 ε はまだ自由に選ぶことができるので この自由度を利用して L c 0 6 とすることができる 56 式の左辺を具体的に計算すると L c k c ここで H H だから H k c H H c ε c 0 8 k c 0 ε 7 c を列ベクトル c で表わすと 式 8 は行列方程式の形に書くことができて 行列 H に関する固有値問題に帰着する Hc εc 9 k

9 式を解くと 個の規格直交ベクトル c α と対応する固有値 ε α が得られる と書ける HC Cε 30 ここで あとで便利なようにα0 -とする 固有値 ε α をもった α 対角行列 εとc α c で定義される固有ベクトルの行列 Cを導入すると 組の固有ベクトルと固有値を含む固有値方程式は一まとめにして 個の固有ベクトルのそれぞれから異なった IΦ> が得られる Φ > α α Hc εαc c α χ > 3 C α χ > ここで あとで便利なように α0 - とする c α が規格直交しているので 個の IΦ α > も互いに規格直交している 宿題 : 固有値 ε α は IΦ α > のハミルトニアンに対する期待値であることを示せ ヒント :30 式を使う 3 ε 0 は 基底関数 χ >で張られる空間内での Hの基底状態のエネルギーに対する最良の近似値であり 変分原理から次式が成り立つ ε < χ H χ > E 33 0 0 まとめると 線形変分法は Shrödnger 方程式 0 H Φ > E Φ > 34 に対して 予め規格直交関数 χ > が与えられたときに 可能な限り最良な解を 9 式 あるいは 3 式 の 0

固有値問題を解くことにより見出す方法である これまで 9 式を導くのに未定乗数法を用いたが 9 式を 34 式に代入することにより 同一の式が導けることに注意しよう Eと εは同一とみなす 宿題 このことから次のことがわかる もし χ >の代わりに完全な規格直交関数系 ψ > でΦを展開したとすると Hが無限次元であること以外は 3 式 あるいは 9 式 と同一な固有値方程式が得られたはずである この場合 得られるΦ 及びεE はShrödnger 方程式の厳密解である したがって 線形変分法は Shrödnger 方程式 あるいはもっと一般的に言って固有値方程式 を有限次元の部分空間の中で解き近似解を見出す方法である と言うことができる