時系列分析 変量時系列モデルとその性質 担当 : 長倉大輔 ( ながくらだいすけ
時系列モデル 時系列モデルとは時系列データを生み出すメカニズムとなるものである これは実際には未知である 私たちにできるのは観測された時系列データからその背後にある時系列モデルを推測 推定するだけである 以下ではいくつかの代表的な時系列モデルを考察する
自己回帰モデル (Auoregressive Model もっとも頻繁に使われる時系列モデルは自己回帰モデル (AR モデル である 次の AR モデル ( これを AR( モデルという は以下のように定義される ここで ~ c W.N.( である 3
AR( モデル まず = の場合を考えよう これは AR( モデルと呼ばれる このモデルは以後は常に c の時に定常となる を仮定する このモデルの平均 自己共分散 自己相関はどのような形をとるだろうか? 4
AR( モデルの期待値 定常性を仮定したので と の期待値は同じ これを μ とおこう 先ほどの両辺の期待をとって c よって AR( モデルの期待値は c c となる 5
AR( モデルの分散 定常性を仮定したので と の分散は同じ ( 分散は 次の共分散と等しいことに注意 これを γ とおこう 先ほどの両辺の分散をとって (, > と ε の共分散が になることは後ほど示す よって AR( モデルの分散は となる 6
AR( モデルの自己共分散 と の共分散は cov( cov( となる この漸化式を使えばできる,, より順に計算 7
AR( モデルの自己相関 と の自己相関は 先ほどの共分散の式の両辺を γ で割って を得るので この漸化式を使えばできる 3, 3,, より順に計算, AR( の.8 のコレログラムは次のようになる 8
.8 の時の AR( のコレログラム.8.6.4..8 3 4 5 6 7 8 9 3 4 5 6 7 8 9.8 の時の AR( のコレログラム.6.4. -. 3 4 5 6 7 8 9 3 4 5 6 7 8 9 -.4 -.6 -.8-9
AR( モデルの自己相関の特徴 ( 自己相関は指数関数的に減少 ( が負の時には振動しながら減少 (3 自己相関のパターンが非常に単純 AR( モデルの自己相関の形状は制約的でより複雑な自己相関を表すためにはより一般的なモデルが必要 AR( モデル
AR( モデルの期待値 定常性を仮定したので,,,, の期待値は同じ これを μ とおこう AR( モデルの式の両辺の期待をとって c c c よって AR( モデルの期待値は となる
AR( モデルの分散 AR( モデルの分散は で与えられる
宿題 ( 提出する必要はありません AR( モデルの分散は で与えられる事を示しなさい 3
AR( モデルの自己共分散と自己相関 AR( モデルの自己共分散と自己相関は次の関係を満たす 下の式は特にユール ウォーカー方程式と呼ばれる 4,,
AR( モデルの自己共分散の関係の確認 AR( モデル : はを用いるとと書き直す事ができる 5, c c, ( (
AR( モデルの自己共分散の関係の確認この両辺に μ をかけて期待をとるととなる 自己相関の場合は自己共分散の関係を γ で割ればよい 6 E E E E ] ( [ ] ( [( ] ( [( ] ( [(
例題 (AR ( モデル AR( モデル : において 例題 (AR( モデル AR( モデル :,, ~ W. N.( の時 が定常でない事を確認しなさい, ~ W.N.( の 次と 次の自己相関 と をユール ウォーカー方程式を使って求めなさい 7
AR( モデルの定常性の条件 AR( モデルの定常性の条件は であった AR( モデルの定常性の条件は以下のようになる z 多項式: z z 解の絶対値が より大きい のすべての z z / AR( の場合は の解 の絶対値が より大きい AR( の場合は次の図のようになる 8
9
移動平均モデル (Moving Average Model AR モデルと並んでよく使われる時系列モデルに移動平均モデル (MA モデル がある 次の MA モデル ( これを MA( モデルという は以下のように定義される ここで ~ c W.N.( である MA( モデルは θ の値にかかわらず常に定常である
MA( モデル まず = の場合を考えよう これは MA( モデルと呼ばれる このモデルの期待値 自己共分散 自己相関は以下のようになる
MA( モデルの期待値 E( E( E( E( E( MA( モデルは単純に切片が期待値である
MA( モデルの分散 自己共分散 3 for for for (, cov(, cov(, cov(, cov(, cov(, cov(
MA( モデルの自己相関 自己共分散より for for MA( モデルにおいて次数が より大きい自己相関は 4
.8 の時の MA( のコレログラム.6.5.4.3... -. 3 4 5 6 7 8 9 3 4 5 6 7 8 9.8 の時の MA( のコレログラム 3 4 5 6 7 8 9 3 4 5 6 7 8 9 -. -.3 -.4 -.5 -.6 5
MA( モデルの期待値 MA( モデルの自己共分散 6 ( ( E E σ θ θ θ θ θ θ θ σ θ θ θ γ for for ( for (
MA( モデルの自己相関 MA( モデルにおいて次数が より大きい自己相関は MA( モデル : = ε + θ ε + θ ε のコレログラムは以下のようになる 7 for for
.6.5.4.3...8,..8,. 3 4 5 6 7 8 9.. -. -. -.3 -.4 -.5 -.6 -.7 3 4 5 6 7 8 9.5.8,..8,...4.3.. -. -. 3 4 5 6 7 8 9. -. -. -.3 -.4 -.5 3 4 5 6 7 8 9 8
MA( モデルの問題点 次の自己相関をモデル化するために + 個のパラメーターが必要となる したがって 長期間の依存関係を表すためには多くのパラメーターが必要となる 9
自己回帰移動平均 (Auoregressive Moving Average モデル AR モデルの特徴と MA モデルの特徴の両方を持つモデルである ARMA モデルと呼ばれる ARMA(, モデルは以下のように定義されるここで ε ~ W.N. (σ である 3 c
ARMA モデルの特徴 ARMA モデルは以下の特徴を持つ ( ( + 次以降の自己共分散と自己相関は以下の方程式 ( ユールウォーカー方程式 に従う ( 次までの自己共分散 自己相関は一般的に表現するのが難しい 3 c,,
ARMA モデルの特徴 (3 ARMA モデルの定常性の条件は AR モデルと同じである すなわち 次の多項式 : z z z のすべての解の絶対値が より大きい 以下は ARMA(, モデルのコレログラムである 3
.,.5.5,. 8.4.4.. -. 3 4 5 6 7 8 9 -. 3 4 5 6 7 8 9 -.4 -.4 -.6 -.6 -.8 -.8.7.6.5.9,.5.7.6.5.9,.8.4.4.3.3.... 3 4 5 6 7 8 9 3 4 5 6 7 8 9 33
演習問題 問題 AR( モデル : を MA( モデル : i i i で表した時の θ i はどのようになるか? 34
演習問題 問題 次のモデルの中で定常なモデルを全て選べ (a (b (c (d (e, ~ W.N.(, ~ W.N.(.3, ~ W.N.(.5.3, ~ W.N.(.4, ~ W.N.( 35
宿題 ( 提出する必要はありません ある時系列データの 次の自己相関は.9 次以上の自己相関は であった この時系列データを MA( モデルで表すことは可能か? もし可能であるならばその時の θ の値はいくつか? また別の時系列データの 次の自己相関は.4 次以上の自己相関は であった この時系列データを MA( モデルで表すことは可能か? もし可能であるならばその時の θ の値はいくつか? 36
宿題 3 ( 提出する必要はありません MA( モデル : について ( E( を求めよ ( γ, γ, γ を求めよ (3 > に対して γ = となる事を確認せよ 37
宿題 4 ( 提出する必要はありません ARMA(, 過程 c, ~ W. N.( について以下の問いに答えよ ( 定常性の条件を求めよ ( の期待値 μ を求めよ (3 γ を求めよ ( ヒント :cov(, ε =, cov(, ε = σ (4 γ を求めよ (5 ρ を求めよ (6 ユールウォーカー方程式を用いて > において ρ を求めよ (7.9,.5 として 次までのコレログラムを描け 38
ラグ オペレーターを用いた表現と応用 これまで示してきた AR, MA, ARMA モデルはラグ オペレーターと呼ばれるものを使うと簡単に表現できる ラグ オペレーター ( これを L と書く とは次のように時点を つ前の時点に戻す操作を行う L = これを 回行う すなわち L を 回 掛ける と L = のように時点が 個前にもどる また L = とする 39
AR( モデルのラグ オペレーターを用いた表現 AR( モデル : はラグ オペレータを用いるとと表す事ができる ここでという L の 次の多項式を表す 4 ~ W.N.(, c c L c L L c L L L L c ( ( L L L (
MA( モデルのラグ オペレーターを用いた表現同様に MA( モデル : はラグ オペレータを用いるとと表す事ができる ここで θ (L = + θ L + + θ L という L の 次の多項式を表す 4 W.N.( ~, L L L L L ( (
ARMA(, モデルのラグ オペレーターを用いた表現同様に ARMA(, モデル : はラグ オペレータを用いるとと表す事ができる ここで, および θ (L = + θ L + + θ L である 4 W.N.( ~, c L c L ( ( L L L (