8/5/ 誤差理論 測定の分類 性格による分類 独立 ( な ) 測定 : 測定値がある条件を満たさなければならないなどの拘束や制約を持たないで独立して行う測定 条件 ( 付き ) 測定 : 三角形の 3 つの内角の和のように, 個々の測定値間に満たすべき条件式が存在する場合の測定 方法による分類 直接測定 : 距離や角度などを機器を用いて直接行う測定 間接測定 : 求めるべき量を直接測定するのではなく, 他の測定値を計算式に代入することによって間接的に行う測定 方法 性格 直接測定 独立測定 測定の例 巻き尺で 点間の距離を直接測る 条件測定 3 三角形の 3 つの内角を測定する. が条件式 塔までの水平距離 d と先端の高度角 ( 仰 4 と同じ測定を別の地角 ) θ を直接測定して, 点からも行うと, 間接測定間接的にその高さという条件がつく. を求める. 58 59 等精度 : 精度による測定の分類 測定された値に含まれる誤差の生ずる確率が等しいと考えられる測定 異精度 : 測定に用いた機器の性能が異なっていたり, 測定回数が異なる測定値の平均値を用いたりして, 測定値に含まれる誤差の確率が異なると考えられる測定 誤差の分類 () 定誤差 (systematic error) 原因が明らかで, ある条件の下では常に一定の質と量で生ずる誤差 測定者のくせによるもの, 機器に固有なもの, 温度上昇による膨張などの物理的なものなどがある. 原因と特性を究明すれば理論的に除去が可能 過誤誤差 (mistake) 測定者の不注意によって生ずる誤り 目盛りの読み違い, 記帳や計算の誤りなどがある. 十分に注意するかデータチェックにより除去が可能 6 6 誤差の分類 () 誤差の法則 偶然誤差 (radom error) 原因が明らかでなく, 定誤差や過誤誤差を取り除いてもなお残る小さな誤差で, 符号や大きさがランダムなもの. 理論的に真値に接近させることが可能 誤差理論の対象となる誤差 測量でいう誤差とは, この偶然誤差のこと 偶然誤差についての3 法則 絶対値の小さな誤差の生ずる確率は, 絶対値の大きな誤差の生ずる確率より大きい. 絶対値の等しい正負の誤差は同じ回数だけ生ずる. 3 絶対値の非常に大きな誤差はほとんど生じない. 以上の 3 法則から正規分布 (Gauss 分布, 誤差分布ともいう ) の数式を導くことができる. 6 63
8/5/ 誤差と残差 つの値を 回測定したとする. 測定値 ( 観測値 ): x, x, x3, L, x i, L, x 真値 (true value): X 神のみぞ知る値 真値の推定値 : X 毎回の測定値に対し 誤差 : ε i x i X 残差 : vi xi X 最小自乗法 : vi mi となるように, 観測値を調整する技術. の推定値 X を求める. X 最確値 誤差の法則 より, ε i ( xi X ) xi X xi よって, X のときのみ正しい. 実際は, は有限なので, S v i mi とする. ds 結果は, ( xi X ) xi X となり, dx xi X 真値の推定値を平均値とする根拠 最確値 64 65 度数 ( ヒストグラム ) ある量を 回測定し, 測定値 x i のm 個の階級ごとに度数を調べてグラフを描いた. 階級 x i. 度数. ~.5.5 ~ 3. 6 3 3. ~ 3.5 7 4 3.5 ~ 4. 9 5 4. ~ 4.5 7 6 4.5 ~ 5. 8 7 5. ~ 5.5 8 8 5.5 ~ 6. 3 合計 () m 8 m f 度数f f f 階級 f m m 66 相対度数相をで割って, f / のように相対化する. m f 階級 x 相対 i. 度数.~.5. グラフのすべて.5 ~ 3..6 の棒の高さを 3 3. ~ 3.5.7 合計するとに 4 3.5 ~ 4..9 なる. 5 4. ~ 4.5.7 6 4.5 ~ 5..8 f / は, 測 7 5. ~ 5.5.8 定値 x i が階 8 5.5 ~ 6..3 級 に入る確合計. 率を与える. 対度数ヒストグラムのすべての度数 f f 階級 f f m m 67 測定値の連続分布 測定値の連続分布 測定回数を無限回, 各階級の幅を無限小測定値の範囲を無限大にした場合の相対度数を作成してみる. 誤差の連続分布 ( 誤差曲線 ) 誤差の連続分布 測定値 xiから最確値 X を引くと残差 v になるが, i 無限大なので, 誤差 ε i と一致する. m < x i < 法則 より, 左半分は左下がり 法則 3 より, に漸近 法則 より, 右半分は右下がり 法則 3 より, に漸近 X ( 平均値 ) x i ( 測定値 ) ( 最確値 ) 68 ε i ( 誤差 ) 法則 より, 左右対称 69
8/5/ 誤差曲線の性質 y f (x) 誤差曲線をとする ( 横軸をとする ) 関数の値 ( 山の高さ ) が確率を表すわけではない. y dx が相対度数, すなわち, 誤差 x の値が区間 [ x, x + dx] に入る確率を表している. 相対度数ゆえ, y f (x) y x dx x f (x) は確率の密度を表す. 確率密度関数 7 正規曲線 () 正規曲線 確率密度を表す曲線は, 正規曲線と呼ばれる. Gauss により式の形が判明された ( 誘導はやや難 ) h は精度指数と呼ばれ, 精度が高いほど大きい. 測定回数が無限大のときの誤差の自乗の平均を母分散 σ といい, その平方根 σ を母標準偏差という. 7 正規曲線 結局, 正規曲線は, 正規曲線 () と表すことができる. 誤差 x は, 測定値の単位をもっているので,x をσ で割って無次元化 ( 一般の変数にも適用 確率変数 ) この t は,σ を単位として測られた誤差 標準単位 7 標準正規分布 () 標準正規分布 誤差 x の生ずる確率 ( 正確には, 誤差の大きさが区間 [x, x+dx] に入る確率 ) は, 測定回数 のうち, この区間に入る回数は, Φ(x) x σ t,dxσ dt ゆえ, 誤差 x の生じる確率は, となり, 確率変数 t に対する確率密度関数は, 73 標準正規分布 () 確率積分 平均 μ, 分散 σ の正規分布を N (μ, σ ) と書く. p(t) は, 平均, 分散 の正規分布にしたがうので, N (, ) と書く 標準正規分布という. かつ 誤差が から任意の点 x の間に落ちる確率を累積正規分布関数という. 以下, F(x) と表す. 74 とおくと, I(t) は, 図の斜線部の面積となる. I(t) は, 確率積分と呼ばれ, 数表になっている. I(t) t t I(t) P(t).5.946.6946..3434.8434.5.4339.9339..4775.9775.5.49379.99379 3..49865.99865 3.5.49977.99977 4..49997.99997 75 3
8/5/ 重要な数値 数表より, 下記の数値が得られる. 標準正規分布の母標準偏差は なので, t < となる確率 N (, σ ) では, -σ σ x x < σ となる確率 76 母集団 母集団 母集団と標本 中等誤差 情報を得たいと考えている対象の全体 標本 データを標本の 個のデータを 個抽出 x, x, x 3,, x i,, x, また, X x i, vi xi X とするとき, i s vi, s v 標本 i i i で,s は標本分散,s を標本標準偏差とよび, 測量学では特に s を中等誤差と呼ぶ. 母集団から抽出された一部分 σˆ v i i は, 母集団の分散の推定値となり, 不偏分散という. 77 誤差伝播の法則 () 誤差伝播の法則 () m 個の変数 (x, x,, x,, x m ) があり, それぞれの変数の測定値の標準偏差 ( 精度 ) が (σ x, σ x,, σ x,, σ xm ) であるとする. y f ( x, x, L, x ) m という関係式によって変数 y の値を間接的に測定するとき,y の標準偏差はどうなるかを考える. σ y y y f (x) σ x x m で, 独立変数 x が つしかない場合のイメージ図 78 独立変数線形 線形 非線形 つ つ 3 つ以上 3 Y ax Y a X + a X Y a X + a X 4 5 Y f (X ) Y f X, X ) + a + L ( 3X 3 79 誤差伝播の法則 線形 変数 () 誤差伝播の法則 線形 変数 () 線形で 変数の場合 真値が X である量 x を直接測定し, 真値が Y である量 y を間接的に推定したい. 真値 X と真値 Y との間に,a を定数として, 常に Y ax なる関係式が成立するものとする. このとき, 変量 x の 回の観測値の精度 σ x に基づいて, 変量 y の推定値の精度 σ y を推定したい. 8 8 4
8/5/ 誤差伝播の法則 線形 変数 (3) 誤差伝播の法則 線形 変数 () 線形で 変数の場合 真値が X および X である量を直接測定し, 真値が Y である量を間接的に推定したい. 真値 X および X と真値 Y との間に,a およびa を定数として, 常に Y a X + a X なる関係式が成立するものとする. このとき, 真値 X および X の 回の観測値の精度 σ x およびσ x に基づいて, 真値 Y の推定値の精度 σ y を推定したい. 8 83 誤差伝播の法則 線形 変数 () 誤差伝播の法則 線形 変数 (3) 84 85 誤差伝播の法則 線形 3 変数以上 3 線形で3 変数以上の場合 真値が X, X,, X m であるm 個の量を直接測定し, 真値が Y である量を間接的に推定したい. 真値 X, X,, X m と真値 Y との間に,a, a,, a m を定数として, 常に Y a X + a X + L+ a X m m なる関係式が成立するものとする. このとき, 真値 X, X,, X m の 回の観測値の精度 σ x, σ x,, σ xm に基づいて, 真値 Y の推定値の精度 σ y を推定したい. 変数の時と同様に, 誤差伝播の法則 非線形 変数 () 4 非線形で 変数の場合 真値が X である量を直接測定し, 真値が Y である量を間接的に推定したい. 真値 X と真値 Y との間に, 常に理論的にY f (X ) なる関係式が成立するものとする. このとき, 真値 X の 回の観測値の精度 σ x に基づいて, 真値 Y の推定値の精度 σ y を推定したい. 86 87 5
8/5/ 誤差伝播の法則 非線形 変数 () 誤差伝播の法則 非線形 変数 (3) 88 89 近似式の図解 誤差伝播の法則 非線形 変数 (4) 9 9 誤差伝播の法則 非線形 変数 () 誤差伝播の法則 非線形 変数 () 5 非線形で 変数の場合 真値が X および X である量 x および x を直接測定し, 真値が Y である量 yを間接的に推定したい. 真値 X および X と真値 Y との間に, 常に Y f ( X, X ) なる関係式が成立するものとする. このとき, 変量 x および x の 回の観測値の精度 σ x およびσ x に基づいて, 変量 y の推定値の精度 σ y を推定したい. 9 93 6
8/5/ 誤差伝播の法則 非線形 変数 (3) 近似式の図解 94 95 誤差伝播の法則 非線形 変数 (4) 誤差伝播の法則 非線形 変数 (5) 96 97 非線形関数の誤差伝播則の例 () 非線形関数の誤差伝播則の例 () 縦 x, 横 x の長方形の面積 S S S( x, x) xx 縦の長さ x, 横の長さ x の分散をそれぞれ,, σ x および σ とするときの, 面積の分散 x S を知りたい. σ S x x S 98 99 7