申請時電子データ提出におけるレガシーデータ変換に関する考察

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Disclaimer 本発表内容は演者の個人的見解であり, 所属する組織の意見や立場を代表するものではありませんことご留意ください. 2

OUTLINE Background 電子データ提出に関する通知類 提出物 PMDAとFDAの通知類の比較と枠組みの違い 理想的なデータフロー Ph-I/CP 試験のデータフロー レガシーデータ変換に関する考察 レガシーデータ変換と一般的な問題 レガシーデータ変換のパターンと考察 まとめ 一般的なレガシー変換フロー 併合解析 (ISS/ISE) データの作成 Ph-I/CP 試験におけるレガシーデータ変換 3

OUTLINE Background 電子データ提出に関する通知類 提出物 PMDAとFDAの通知類の比較と枠組みの違い 理想的なデータフロー Ph-I/CP 試験のデータフロー レガシーデータ変換に関する考察 レガシーデータ変換と一般的な問題 レガシーデータ変換のパターンと考察 まとめ 一般的なレガシー変換フロー 併合解析 (ISS/ISE) データの作成 Ph-I/CP 試験におけるレガシーデータ変換 4

電子データ提出に関する通知類 承認申請時の電子データ提出に関する基本的考え方について ( 基本的通知 ) 基本的な要件が記載された通知 (Q&A も含む ) 2014 年 6 月に発出 承認申請時の電子データ提出に関する実務的事項について ( 実務的通知 ) 基本通知よりも具体的な要件が記載された通知 (Q&A も含む ) 2015 年 4 月に発出 承認申請時の電子データ提出等に関する技術的ガイド ( 技術的ガイド ) 上記よりもさらなる詳細事項, 注意事項等が記載された文書 2015 年 4 月に発出 (2016 年 6 月に改定 ) その他 新医薬品の申請電子データ提出確認相談 実施要綱等の通知がリリースされた. 申請電子データ提出に関する技術情報 (FAQ, データカタログ等 ) 申請電子データ提出に際して利用可能な規格一覧 バリデーションルール一覧 FAQ Web ページ (2016 年 7 月に改定 ) 5

提出物 ( 電子データ及び関連文書 ) 試験単位の提出物 SDTM datasets Define.xml (SDTM) Study Data Reviewer's Guide (SDRG) Annotated CRF (acrf) ADaM datasets Define.xml (ADaM) Analysis Data Reviewer's Guide (ADRG) ADaM Creation programs TLFs Creation programs 併合解析 (ISS/ISE) ADaM datasets Define.xml ADRG ADaM Creation programs TLFs Creation programs 臨床薬理試験に関する提出物についても通知類で定められている. SDTM ADaM Creation Define.xml acrf SDRG ADaM TLFs Creation Define.xml ADRG 6

PMDA と FDA の通知類の比較 申請時電子データ提出に関連する日米の主な通知類 Item PMDA FDA Guidance/Notification Basic Principles Notification on Practical Operations Includes Specific requirements for Ph- I/CP studies and data in Japanese character Technical Guide Technical Conformance Guide Includes specific requirements for Ph- I/CP studies, data in Japanese and Analysis Results Metadata Validation Rules SDTM, ADaM, Define.xml SDTM, SEND Providing Regulatory Submission In Electronic Format - Standardized Study Data Technical Conformance Guide Includes considerations on the Legacy Data Conversion Data Standard catalog Data Standard Catalog Data Standard Catalog Study Data Standardization Plan NA (IND system is different from that of US) FAQ web site Supportive information on PMDA web site None Consultation Meeting New consultation meeting specific to e- Data submission ectd and Gateway System e-data is separated from ectd 3.2.2 Gateway system For INDs, it should be located in the general investigational plan pre-nda meeting Type C Meeting e-data is included in ectd 3.2.2 Gateway System ectd Test Submission 7

電子データ提出に関する日米の枠組みの違い 日本の 申請単位 と米国の 試験単位 8 PMDA FDA 2016 年 10 月より電子データの提出 受付開始 提出対象となるすべての試験の電子データの提出が必要. 経過措置期間は部分提出も許容されているが, その場合は従前の審査プロセス. 2020 年 4 月より電子データの提出を義務化 2016 年 12 月 17 日以降に開始 される試験 ( 非臨床試験を含む ) について CDISC 標準に準拠した電子データの収集 NDA 時の提出を義務化 the study start date for clinical studies is the earliest date of informed consent among any subject that enrolled in the study. 異なる対応が必要 PMDA 申請時は, 提出対象となる試験について, レガシーデータ変換も含めて対応が必要 FDA 申請時は, 上記日付より前に開始された試験についてはレガシーデータ変換が必須ではないが, それまでに CDISC 標準に準拠したデータを収集するプロトコルや CRF を用意する必要がある. FDAは, レガシーデータ変換時に留意すべき点を詳細に述べている» 例 :Legacy Data Conversion Plan (Technical Conformance Guide V3.0) 申請時の提出段階 または データの収集段階 の対応が異なっている.

理想的な CDISC 対応データフロー (Linear flow) CDISC 準拠データを作成するための理想的なフロー EDC/Raw data => SDTM => ADaM => TLFs 試験実施中に CDISC 準拠のデータセット及び関連文書の作成が比較的容易で, 申請前にデータの変換が不要 ( 申請前にバージョンの確認及びバリデーションチェックは必要 ) トレーサビリティが担保され, 審査官によるデータの理解が容易 EDC/RAW SDTM ADaM TLFs PMDA Define.xml acrf SDRG Define.xml ADRG 9

標準的な薬物動態解析を実施する試験のデータフロー データ作成フローの一例 SDTM PC ドメイン ( 濃度 採血時刻データから作成 ) PP ドメイン (PK パラメータ算出結果ファイルから作成 ) その他のドメイン ADaM ADPC(PC ドメインと ADSL から作成 ) ADPP(PP ドメインと ADSL から作成 ) その他のデータセット NCA NCA 用データセットと Output ファイルの作成 データセット定義書と解析仕様書の作成 NCA の解析結果から PP ドメインを作成するため, フローが複雑 RELREC/Documentation EDC/ RAW Concentration Data (Raw) PC Dataset for NCA NCA Output file PP DM, EX データ定義書 解析仕様書 ADSL ADPC ADPP 10

OUTLINE Background 電子データ提出に関する通知類 提出物 PMDAとFDAの通知類の比較と枠組みの違い 理想的なデータフロー Ph-I/CP 試験のデータフロー レガシーデータ変換に関する考察 レガシーデータ変換と一般的な問題 レガシーデータ変換のパターンと考察 まとめ 一般的なレガシー変換フロー 併合解析 (ISS/ISE) データの作成 Ph-I/CP 試験におけるレガシーデータ変換 11

レガシーデータ変換とは レガシーデータとは 過去試験等において CDISC 標準形式でデータが収集 作成されておらず,SDTM や ADaM 等の CDISC 標準に準拠していない電子データ なぜレガシーデータ変換が必要? 電子データ提出対象となる試験については, そのままの形式では PMDA に提出することはできない. データ作成部門の余分な工数となる. データセットのみならず, 他の CDISC 標準関連の文書等の作成も必要となる. データ定義書 (Define.xml) データガイド (Reviewer's Guide) レガシー臨床試験データ (Non-CDISC) レガシーデータ変換自体が大きな負担となるため, 変換が不要となるよう社内手順を整備することが望ましい Spec Spec レガシー解析データ (Non-CDISC) PMDA 12

レガシーデータ変換における一般的な問題点 データ作成の観点から CT のマッピング SDTM 等の Controlled Terminology (CT) への変換は容易ではなく, 実施中の試験との整合性も考慮する必要がある. 日本語データ ( 英語以外のデータ ) 通知 ガイダンス類に従った対応が必要となる. 併合解析用データセット (ISS/ISE) ソースデータの組み合わせは様々で, バージョン管理も必要 (e.g. CDISC, MedDRA) トレーサビリティ 解析結果からデータ収集までのトレーサビリティの確保が容易ではない. バリデーション 例えば,ADaM を用いた解析結果作成プログラムは存在しない. Pinnacle 21 による完全なバリデーションは困難な場合がある. コスト 期間 リソース タイミング等の観点から ( タイミングについては後述 ) 申請前の多忙な時期に実施される可能性もあり, スケジュールへの影響も大きい 過去試験担当者や CDISC 専門家の工数確保が必要 データ作成部門に大きな負担が掛かってしまう. 複雑な状況下でのレガシーデータ変換も想定される 導入品の開発, 共同開発, 日米同時申請等における想定外の状況 13

解析結果からのトレーサビリティ Traceability (ADaM V2.1) The concept of traceability is a cornerstone of the Analysis Data Model. This property enables the understanding of the data s lineage or the relationship between an element and its predecessor(s). Traceability facilitates transparency, which is an essential component in building confidence in a result or conclusion. Ultimately, traceability in ADaM permits the understanding of the relationship among the analysis results, the analysis datasets, and the SDTM domains. EDC/RAW SDTM ADaM TLFs CRF Define.xml Define.xml Full path from Analysis results to Data collection 14

レガシーデータ変換のタイミング 早すぎても遅すぎてもダメ? 早すぎる場合の課題 申請前のバリデーションで再度変換 修正が必要になることもある? 技術的ガイド, データカタログ,FAQ, バリデーションルール等は不定期に改訂され, 提出確認相談の結果によってもデータ 関連文書の修正が必要な可能性がある. 当該化合物が実際に承認申請までたどり着く可能性は? コスト リソース 時間を掛けて準備しても徒労に終わる可能性がある? 実施中のより重要度の高い他の試験が優先される場合等, リソースの確保が難しい? 遅すぎる場合の課題 申請前に工数が増大する 申請パッケージが大きい場合, 申請スケジュールに影響を与える可能性がある. 当該化合物の最終試験, 通常の申請業務に加えて電子データの準備の工数が必要となる.» 過去試験担当者や CDISC 専門家の工数確保が必要 ISS/ISE 用のデータの準備も並行して必要となる. 適切なタイミングは?» ソースとなる併合対象試験データがレガシーデータとなる可能性がある. 開発状況, 申請パッケージの規模, 提出確認相談の実施時期, 社内のコスト リソース等々を考慮して無理のないスケジュールで実施できるタイミング データ作成部門のみならず, 関連部門の理解 協力が必要不可欠 15

レガシーデータ変換して良いことあるの? 規制当局側のメリット 古い試験であっても, 申請時にどの企業からも同様の構造を持つデータを収集でき, 解析の効率化や将来的な薬剤開発の促進に役立つ. 申請者側のメリット 古い試験のデータ構造をCDISC 形式に変換しておくことで, 将来的に導入開発, 併合解析, 共同開発, 合併時の対応等々, 特に企業間でのデータのやり取りが効率化される. 個人的な経験 導入開発品で, 照会事項対応のため, 約 20 年前に海外で実施された臨床試験データを受け取って確認作業を実施 ただし, 導入元の経緯が複雑 某ヨーロッパの企業 某メガファーマAが買収 某メガファーマBに事業譲渡» 某メガファーマBは, 当該化合物の過去試験データをすべてSDTMに変換していた (Define.xmlとaCRFも作成済) ため, データ送付の手続きを経て, 受領後, 結果の再現も含めて短期間で対応が完了. 医薬品産業における長期的な視点から考えると, 前向きな CDISC 対応のみならず, レガシーデータ変換にもメリットはある. 16

OUTLINE Background 電子データ提出に関する通知類 提出物 PMDAとFDAの通知類の比較と枠組みの違い 理想的なデータフロー Ph-I/CP 試験のデータフロー レガシーデータ変換に関する考察 レガシーデータ変換と一般的な問題 レガシーデータ変換のパターンと考察 まとめ 一般的なレガシー変換フロー 併合解析 (ISS/ISE) データの作成 Ph-I/CP 試験におけるレガシーデータ変換 17

一般的なレガシーデータ変換フロー SDTM,ADaM へのレガシーデータ変換フロー レガシーデータを SDTM に変換し,SDTM から ADaM を作成する. EDC/RAW Spec Legacy Tabulation Data Spec. Legacy Analysis Data TLFs Conversion Validation NDA SDTM ADaM PMDA Validation Define.xml acrf SDRG Define.xml ADRG 18

解析結果メタデータ (ARM) に関する考察 ARM 作成を伴うレガシーデータ変換 If TLFs in CSR/CTD の解析帳票がレガシーデータを用いて作成されている場合, ADaM を使用した解析プログラムは存在しない. ARM を作成するために, 製薬企業は ADaM を使用した解析プログラムを作成する必要がある. 製薬企業によっては, バリデーション目的のため, 過去の帳票との QC 作業を実施する場合もある. Legacy Tabulation Data Legacy Analysis Data TLFs (CSR) Validate? Conversion No programs SDTM ADaM Define.xml with ARM Create Analysis programs 19

一般的なレガシーデータ変換フロー SDTM,ADaM へのレガシーデータ変換フロー SDTM 変換時の CT 等の問題 日本語問題 ARM 作成のため, 解析プログラムの再作成が必要 解析帳票と CDISC の Terminology は完全には一致しない. Data Model Materials Status* Note SDTM Datasets SDTM 変換時の CT 等の問題 Define.xml SDTM 変換時の CT 等の問題 Annotated CRF SDTM 変換時の CT 等の問題 Study Data Reviewer's Guide SDTM 変換時の CT 等の問題 ADaM Datasets SDTM から作成 Define.xml SDTM から作成 ARMと解析プログラム ( 再作成 ) ADaMを用いた解析プログラムの作成 ( 解析 帳票からのトレーサビリティの確保 ) ADaM Creation SDTM から作成 Analysis Data Reviewer's Guide SDTM をソースデータとして作成 *Status: : 通常のフローと大きく変わらない, : 考慮すべき問題あり, : 負担が大きい作業 20

併合解析 (ISS/ISE) データの作成 併合解析 (ISS/ISE) のための電子データ作成時の問題 併合 ADaM データセットのソースデータは何か? CDISC 標準では,SDTM ADaM のフローが前提となるため, 併合 SDTM を作成することが望ましいが, 実務的にはどうか ( 後述 ). ソースデータの構造が統一されていない可能性がある. トレーサビリティの問題や, 導出ロジックが複雑になる可能性もある. Study 1 Study 2 Study 3 Study 4 Legacy Tabulation Data Legacy Analysis Data SDTM ADaM Integrated from different data structure Validation TLFs NDA ADaM for ISS/ISE PMDA Define.xml ADRG 21

併合解析 (ISS/ISE) データの作成 ソースデータは併合 SDTM? 各試験のADaM? 各試験のSDTMから併合 SDTMを作成するパターン SDTM ADaM 間のトレーサビリティは保持できるが, 作業量が増大する. Study 1 Study 2 Study 3 Legacy SDTM Legacy SDTM SDTM Integrated from SDTM for each study NDA SDTM Validation ADaM (ISS/ISE) TLFs PMDA Define.xml ADRG 各試験の ADaM から併合 ADaM を作成するパターン ADaM 間でトレーサビリティを保持できるが,SDTM から作成していない. 作業量は上記より少ない. Study 1 Study 2 Study 3 SDTM ADaM Legacy ADaM ADaM Integrated from ADaM for each study NDA ADaM (ISS/ISE) TLFs PMDA 22 Validation Define.xml ADRG

併合解析 (ISS/ISE) データの作成 併合解析 (ISS/ISE) への対応 ソースデータにレガシーデータや CDISC 準拠のデータが混在している可能性がある. 併合 ADaM 作成時のソースデータに何を用いるべきかに一定の見解は存在しない. CDISC 標準は,SDTM ADaM のフローを前提としている. ADaM 用 Define.xml や ADRG の記載方法は悩ましい. トレーサビリティの問題は常に存在する. ADaM 作成プログラムのロジックは複雑になる可能性がある. ADaM の Validation は完全には実施できない場合もある.(e.g. Pinnacle 21) CTD M2 の有害事象の解析帳票は原則日本語 ( CTD における標準的なフォーマットについて ) 一つのバージョンに変換する必要がある (e.g. SDTM, ADaM, CT, MedDRA) Data Model Materials Status* Note ADaM Datasets ソースデータの構造が試験ごとに異なる可能性がある. 23 Define.xml ソースデータの構造が試験ごとに異なる可能性があるため, 導出 方法の記述が難しい. ADaM Creation 試験ごとに抽出 変換ロジックが異なる可能性がある. TLFs Creation ISS/ISEが作成した併合 ADaMで実施される場合, 作業は無駄 にはならない. Analysis Data Reviewer's Guide ソースデータにSDTMを仮定した構成になっているため, レガ シー変換が混在すると説明が容易ではない. *Status: : 通常のフローと大きく変わらない, : 考慮すべき問題あり, : 負担が大きい作業

標準的な薬物動態解析を実施する試験のレガシーデータ変換 解析データと臨床試験データの関係が複雑 ( 下図は一例 ) PC/PP ドメイン ADPC/ADPP データセット NCA 用データセット 関連文書類 Non-CDISC NCA 用データは変換不要 ( ここでの変換フローはあくまで一例 ) レガシー濃度データ 解析データ ( 濃度 ) Dataset for NCA NCA NCA 結果ファイル 解析データ (PK パラメータ ) レガシー Tabulation データ 2 データ定義書 解析仕様書 文書類が未作成の場合変換時に作成 2 1 1 PC Documentation/RELREC? PP CDISC ADSL ADPC ADPP 24

標準的な薬物動態解析を実施する試験のレガシーデータ変換 臨床薬理領域のレガシーデータ変換時の提出物 PC/PPドメインの作成 薬物動態に関する解析上の取扱いの説明も必要 臨床薬理領域試験特有の文書類の準備 Data Model Materials Status* Note SDTM (PC/PP 含む ) Datasets PC/PP 作成方法要検討 Define.xml PP の導出部分の記載方法要検討 Annotated CRF Study Data Reviewer's Guide PP の説明方法要検討 ADaM (ADPC/ADPP 含む ) Datasets SDTM から作成 Define.xml SDTM から作成 ADaM Creation SDTM から作成 ARMと解析プログラム ( 再作成 ) ADaMを用いた解析プログラムの作成 ( 解析帳票 からのトレーサビリティの確保 ) Analysis Data Reviewer's Guide SDTM をソースデータとして作成 PK/NCA Dataset for NCA 提出内容 形式は要相談 25 データセット定義書 ADaM 形式以外の場合は別途作成 解析仕様書 提出内容 形式は要相談 *Status: : 通常のフローと大きく変わらない, : 考慮すべき問題あり, : 負担が大きい作業

OUTLINE Background 電子データ提出に関する通知類 提出物 PMDAとFDAの通知類の比較と枠組みの違い 理想的なデータフロー Ph-I/CP 試験のデータフロー レガシーデータ変換に関する考察 レガシーデータ変換と一般的な問題 レガシーデータ変換のパターンと考察 まとめ 一般的なレガシー変換フロー 併合解析 (ISS/ISE) データの作成 Ph-I/CP 試験におけるレガシーデータ変換 26

まとめ 電子データ提出に関する PMDA と FDA の要件の違い 日本の申請では, 電子データのフル提出 * を目指す場合, レガシーデータ変換が必要となる. * 電子データ提出対象試験についてすべての電子データを提出する場合 レガシーデータ変換の考察 申請業務において, レガシーデータ変換は 大きな負担 データ作成部門に大きな負荷が掛かる. 通常の申請業務と並行して実施する必要がある. 多くの課題に直面する. CT のマッピング, 日本語データ, バージョン管理, トレーサビリティ, バリデーション コスト リソースの問題に加えて, 申請スケジュールにも影響する可能性がある. 様々なパターン 状況が存在する. 併合解析,Ph-I/CP 試験, 導入品開発, 共同開発, 日米同時申請等々 実施のタイミング 実施及び実施時期の判断については, データ作成部門以外の部門の理解 協力が不可欠 27

References PMDA 次世代審査 相談体制について ( 申請時電子データ提出 ) https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/p-drugs/0003.html FDA Study Data Standards Resources http://www.fda.gov/forindustry/datastandards/studydatastandards/default.htm CDISC http://www.cdisc.org/ Pinnacle 21 https://www.pinnacle21.net/ Yohei Takanami (2014). Considerations on Legacy Data Conversion to CDISC Standards for e-data Submission for NDA in Japan. PhUSE Single Day Event, Tokyo, Japan http://www.phuse.eu/2014japansde.aspx 高浪洋平, 坂上拓 (2015) ADaM 関連提出物の留意点 (2) 申請時電子データ提出にかかる実務担当者のためのワークショップ -CDISC 準拠データを中心に http://www.jpma.or.jp/medicine/shinyaku/tiken/symposium/pdf/20150918/20150918_13.pdf Yohei Takanami (2015). Overview and Creation of Analysis Results Metadata with SAS. CDISC International Interchange 2015 https://www.cdisc.org/2015-international-interchange 高浪洋平 (2016) もしも, 日米で申請電子データ提出するとしたら 第 1 回ナニワデータサイエンス研究会 https://drive.google.com/file/d/0b9jqfod_7cbod2xgzgwyn2k5rxc/view?usp=sharing 28

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