第 52 回神奈川腎炎研究会 膜性増殖性糸球体腎炎様の多彩な光顕所見を呈したネフローゼ症候群の一例 1 高橋大栄 1 西垣啓介 1 青柳誠 2 津浦幸夫 1 坂本麻実 1 森崇寧 1 田中啓之 3 長濱清隆 1 吉田和香子 1 安藝昇太 1 田村禎一 はじめに今回われわれは, 膜性増殖性糸球体腎炎様

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72 20 Ope / class Alb g/ cm 47.9kg : /min 112/60m

59 20 : 50 : : : : : 2 / :20 / 25 GTP /28 5/3 5/4 5/8 6/1 1 7kg 6/9 :178.7cm :68.55kg BMI:21.47 :37.3 :78 / :156/78mmHg 1

/12/28 UP 3+, TP 4.2g/dl, Alb 1.9g/dl PSL 50mg/day 1/17 PSL 45mg/day PSL 2006/4/4 PSL 30mg/day mpsl mpsl1000mg 3 2 5/ :90 / :114/64 mmhg

1996 papilloma virus 2001 Bowen AIHA PSL1mg/kg BMA PRCA parvovirus B19 PVB19 DNA PCR PV IgM 4 PVB19 PRCA MAP PVB19 DNA DNA PR

WBC 5700 / l Gran 58.5% Lym 29.0% Eosin 0.3% RBC 499x10 6 / l Hb 14.8 g/dl Hct 44.40% PLT 15.3x10 3 / l PT 157% Fbg 616 mg/dl DD 0.99 g/ml GOT GPT LDH

1 8 ぜ 表2 入院時検査成績 2 諺齢 APTT ALP 1471U I Fib 274 LDH 2971U 1 AT3 FDP alb 4 2 BUN 16 Cr K4 O Cl g dl O DLST 許 皇磯 二 図1 入院時胸骨骨髄像 低形成で 異常細胞は認め

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腎炎症例研究 27 巻 2010 年 図 2 図 3 入院時検査所見 尿検査 PH 5.0 比重 蛋白 (3+) 潜血 (3+) 糖 (-) ケトン (-) 白血球 (1+) 白血球 /HF 赤血球 /HF 硝子円柱 2+ 顆粒円柱 1+ 細菌 1+ 尿中 β2m

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

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2 章 +αの 情 報 に 着 目 する! 1 血 球 算 定 検 査 結 果 2 生 化 学 検 査 結 果 手 がかりに 乏 しいのも+α 1 症 例 をみてみよう! 1 60 吉 見 祐 輔 percutaneous coronary intervention PCI

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表 1 入院時検査所見 11,500L 471 L 17.0 gdl.3 L ph 7.49 PaCO 37.8 mmhg PaO 67.4 mmhg HCO 3.6 meql B E 1. meql 141 meql K 3.9 meql Cl 108 meql Ca 8.4 mgdl P 4.5

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はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

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2009年8月17日

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(1) ) ) (2) (3) (4) (5) (1) (2) b (3)..

ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

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腎炎症例研究 29 巻 2013 年 した その約 1 週間後の外来でCr 1.32 mg/dl (egfr 43 ml/min/1.73 m 2 ) と腎機能の急激な低下を認めたため, 加療目的に7 月中旬に再入院とした メチルプレドニゾロン (mpsl) パルス500 mg 3 日間を2クール行

腎炎症例研究 26 巻 2010 年 着を一部に認める 糸球体病変はメサンギウ ム細胞 基質の軽度増加を認めた 毛細管係 蹄の変化を認めず 尿細管炎を認め 間質は 混合性の細胞浸潤があり 一部に線維化を伴 う 2 回目 最終発作から 6 ヶ月後 24 個中 14 個で糸球体硬化像を認めた 硬化 を伴

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

50 生化学検査 420 3J 総ビリルビン 数字 PQ 5 NNN.N mg/dl mg/dl 3J010 総ビリルビン 3J 生化学検査 430 3B GOT(AST)

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125 2 P 1st washout 2 PB P mg/dL nd washout 2 P 5.5mg/dL< mg/dL <2.5mg/dL P P 2 D D 3 Ca 10

腎炎症例研究 27 巻 2011 年 図 5 HE 染色 図 8 図 6 図 9 IgM 図 7 図 10 C4 52

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腎炎症例研究 32 巻 2016 年 肉眼的血尿が出現し急速に腎障害が進行した糖尿病性腎症の一例 1 阿部哲也 1 高橋遼 1 竹内和博 1 村野順也 1 竹内康雄 1 青山東五 1 島田芳隆 1 鎌田真理子 1 内藤正吉 1 関本恵子 1 正木貴教小川みゆき 1 佐野 1 隆 2 病理コメンテータ

遡及調査にて77日前の献血時のHBVウイルス血症が確認できた急性B型肝炎の一例

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亜急性 慢性の区別はあいまいであるが 疾患の期間がわかると鑑別疾患を狭めることができる 臨床経過に関するチェック ( 問診 ) 項目 過去の腎疾患 関連疾患の既往はないか 学校検尿での異常は 保健加入時の尿所見の異常は 職場検診での尿所見の異常は 妊娠 出産時の尿所見の異常は 扁桃炎の既往は ( 急

異常に起因する紫斑病 2) 小児に多く成人には比較的まれ 1) 本症の紫斑の特徴は手に触れる紫斑 palpable purpura で発熱 関節痛を伴いながら 主として四肢 顔面 躯幹に現れ 特に四肢では関節部に多く 丘疹状紅斑でその中心部から出血がみられることである 1) 本症に特徴的な紫斑は 1

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第 39 回神奈川腎炎研究会 膜性増殖性糸球体腎炎に糸球体および細動脈 内皮細胞障害を伴った一例 牧 橋 守 小 野 本 屋 林 武 志1 ヒロコ 1 利 佳1 豊1 和 岸 坂 重 達 彦1 由美子 1 本 尚 登1 松 秀 一2 田 羽 長 鎌 村 場 田 素 貢 子1 泰1 壽1 血圧は 16

腎炎症例研究 25 巻 2009 年 自己免疫性膵炎に合併した IgG4 関連腎炎の 1 例 藤 井朋子 梅園朋也 呉 瓊 宮 内雅晃 山本直之 豊田雅夫 鈴 木大輔 谷亀光則 遠藤正之 症例症例 :59 歳女性主訴 : 下腿皮疹 1989 年より橋本病にて近医通院 2004 年黄疸, 肝障害を発見


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スイスイ検診ってなに?? 20 歳以上の方で ご自分の身体について ふと思う事はありませんか? たとえば 健康について気になるけど健康診断 人間ドックを受けていない! 病院で診察を受けるまでもないけど ちょっと気になる! 健康管理に気をつけているから大丈夫だと思うけど 検査の数値が気になる! 主人は

行対象症例の選択方針が内外で異なるためと考えられており ヨーロッパ諸国の中でも腎生検を比較的活 発に行っている地域では本症の発現頻度が高いこととともに 無症候性蛋白尿 血尿の比率が高くなってい る 5. 合併症 高血圧 ネフローゼ症候群を呈する場合は脂質異常症 慢性腎不全に進行した場合は 腎性貧血

参考 9 大量出血や急速出血に対する対処 2) 投与方法 (1) 使用血液 3) 使用上の注意 (1) 溶血の防止 参考 9 大量出血や急速出血に対する対処 参考 11 慢性貧血患者における代償反応 2) 投与方法 (1) 使用血液 3) 使用上の注意 (1) 溶血の防止 赤血球液 RBC 赤血球液

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第 52 回神奈川腎炎研究会 膜性増殖性糸球体腎炎様の多彩な光顕所見を呈したネフローゼ症候群の一例 高橋大栄 西垣啓介 青柳誠 2 津浦幸夫 坂本麻実 森崇寧 田中啓之 3 長濱清隆 吉田和香子 安藝昇太 田村禎一 はじめに今回われわれは, 膜性増殖性糸球体腎炎様の多彩な光顕所見を呈したネフローゼ症候群の一例を経験したのでここに報告する 症例症例 :82 歳女性主訴 : 全身性浮腫現病歴 :2008 年 2 月 6 日, 転倒後の右下腿挫創にて前医整形外科を受診し, 外来加療されていた 経過中, 創部に感染を合併し, 治療困難となったため,2009 年 月 20 日, 右下肢蜂窩織炎の診断にて入院した 血液, 局所培養は採取されず, 創処置と抗生物質点滴で加療された この間 PIPC,PAPM/BM,AMK,TEIC, GM,ABK,CAZが, この順にいずれも 週間程度使用された 2 月 23 日には抗生物質を中止し, その後は創傷管理とリハビリを継続していた 3 月上旬から浮腫が出現し, 緩徐に増悪,4 月には全身性となった このとき 22kg の体重増加, 尿蛋白 4+,Cr.4mg/dl( 入院前 0.7mg/ dl) を指摘された ネフローゼ症候群の疑いにて, 精査加療のため4 月 27 日に当院転院となった 既往歴 : 高血圧,2008/ 月腹部大動脈, 右腸骨動脈瘤人工血管置換術右外腸骨動脈 - 大腿動脈バイパス術 生活社会歴 : 喫煙歴 (-), 飲酒歴 (-) 家族歴 : 特記すべきことはない常用薬 : アゾセミド (60)Tx, フロセミド (20)2T2x, アムロジピン (5)2T2x, メシル酸ドキサゾシン (2)0.5Tx, カンデサルタン (8)0.5Tx, アスピリン (00)Tx, ファモチジン (20)2T2x, レバミピド (00) Tx, 酸化マグネシウム (250)3T3x, クエン酸第一鉄ナトリウム (50)Tx, カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム (30)3T3x, カリジノゲナーゼ (50)3T3x 転院時身体所見 : 身長 42cm, 体重 64.7kg(6 ヶ月前 43kg), 体温 37.0, 血圧 30/73mmHg, 脈拍 82/ 分整,SpO 2 Lカヌラで 96% 肩から体幹にかけ全身性浮腫を認めた 眼瞼結膜貧血なし 心音やや減弱 正常肺胞呼吸音 腹部は平坦, 軟, 圧痛なし, 腫瘤なし 四肢では, 右下肢脛骨前面に, 一部滲出液を伴う肉芽を認める 肉芽はピンク色で, 熱感, 発赤なし 圧痛なし 両下肢に圧痕性浮腫 (4+) を認める 皮膚所見では両下肢にうっ滞性皮膚炎を認めたが, その他皮疹なし 入院時検査所見 : 尿所見では, 尿蛋白 (2+), 尿潜血 (3+) であり,24 時間蓄尿で4.g であった 血算ではリンパ球減少と Hb8.4g/dl の貧血を認めた 生化学では,TP5.8g/dl,Alb3.g/dl, T-Chol 249mg/dl であった 免疫学的検査では, IgG 8mg/dlと低下を認め, 補体は C3 69mg/ dl,c4 7mg/dlといずれも低値であった RAは ( 横須賀共済病院腎臓内科 (2 同 病理部 (3 横浜市立大学病理部 Cq 沈着 05 Key Word: 膜性増殖性糸球体腎炎, ネフローゼ症候群,

腎炎症例研究 26 巻 200 年 検査所見 尿定性 尿比重.008 尿 ph 7.0 尿蛋白 (2+) 尿潜血 (3+) BJP (-) 尿沈渣赤血球 20-29 /HPF 白血球 0-9 /HPF 扁平上皮 0- /HPF 硝子円柱 多数 /HPF 上皮円柱 0-9 /WF 顆粒円柱 5-9 /WF 脂肪円柱 -4 /WF 赤血球円柱 -4 /WF 卵円形脂肪体 (+) 変形赤血球 (+) 尿生化学尿 Cr 39. mg/dl 尿 IgG 5 未満 mg/dl 尿蛋白定量 9 mg/dl 尿 β2mg 379 μg/l 尿 NAG 26.5 U/l 血算 WBC 6700 /μl Neutro 8.5 % Eo % Ba 0 % Mo 3 % Lympho 4.5 % RBC 286 万 /μl Hb 8.4 g/dl Hct 24.7 % MCV 86.4 fl Plt 20.3 万 /μl 網赤血球 8 生化学 LDH 292 U/L AST 24 U/L ALT U/L ALP 268 U/L γ-gtp 42 U/L 尿酸 7.9 mg/dl UN 2 mg/dl Cr.38 mg/dl egfr 28 ml/min T-Chol 249 mg/dl LDLC 63 mg/dl TG 23 mg/dl Ca 8.2 mg/dl P 4.9 mg/dl Na 42 mg/dl K 4.2 mg/dl Cl 00 mg/dl TP 5.8 g/dl Alb 3. g/dl 血糖 0 mg/dl CRP 0.78 mg/dl HbAc 4.7 % 免疫 その他 IgG 8 mg/dl IgA 20 mg/dl IgM 338 mg/dl C3 69 mg/dl C4 7 mg/dl CH50 3.8 免疫複合体 Cq.5 以下 mg/dl RA 因子 2466 IU/ml 抗核抗体 80 倍 パターンHomogenous MPO-ANCA 0 未満 EU PR3-ANCA 0 未満 EU ASO 7 IU/L ASK 320 倍 抗 DNA 抗体 (-) 抗 dsdna 抗体 (-) 抗 Sm 抗体 (-) IgG 型 RF (-) 抗 CCP 抗体. U/ml 抗カルジオリピン抗体 8 以下 U/ml 抗 CL-β2GP.2 以下 U/ml ループスアンチコアグラント (-) クリオグロブリン (-) 直接クームス (-) 間接クームス (-) ハプトグロビン 7.0 mg/dl 鉄 25 μg/dl TIBC 202 μg/dl フェリチン 264 ng/ml 感染症 HBs 抗原 HCV 抗体 (-) (-) 凝固 PT-INR.09 APTT 25.7 sec 血液ガス ( 静脈血 ) ph 7.438 pco 2 45.4 torr HCO 3 30. mmol/l 蛋白分画 Alb 57.7 % α-gl 5.9 % α2-gl 8.7 % β-gl 2.4 % γ-gl 5.3 % 免疫電気泳動 ( 血清 ) 抗ヒト全血清 IgM κ 型 抗 IgA 血清 (-) 抗 IgM 血清 Mバンド 抗 IgG 血清 (-) 抗 κ 血清 Mバンド 抗 λ 血清 (-) 免疫電気泳動 ( 尿 ) 抗ヒト全血清 (-) 抗 IgA 血清 (-) 抗 IgM 血清 (-) 抗 IgG 血清 (-) 抗 κ 血清 (-) 抗 λ 血清 (-) 06

第 52 回神奈川腎炎研究会 2466IU/ml と著明な上昇を示し 抗核抗体は 80 服を開始した 蛋白尿はステロイド開始後速 倍と陽性だったが その他の自己抗体はいずれ やかに減少し 0 日後には g/gcr となり 現 も陰性であった 免疫電気泳動では IgM κ型 在は 0.6g/gCr で持続している egfr は 途中 の M バンドがわずかにみられた 脱水となり一時的に低下したものの 現在は その他の検査所見 心エコーでは壁運動は正 egfr 55ml/min と病前の水準に回復した 体重 常だった 胸部 X 線及び CT 検査では 心拡大 は蛋白尿の減少とともに再び減りはじめ 3 週 と胸水を認めた 胸水は漏出性胸水であった 間後には 42kg となった 貧血も改善がみられ 下腿の浸出液の培養からは MRSA が検出され Hb3.3 まで回復した 補体は C3 80mg/dl C4 た 2mg/dl と低値が持続している 入院後経過 転院当初 原発性の MPGN や ループス腎炎 クリオグロブリン血症 MRSA を含む感染後腎炎を鑑別診断とした クリオグ ロブリンは陰性であり SLE の診断基準は ① 腎障害 ②リンパ球減少 ③抗核抗体陽性の 項目中 3 項目しか満たさなかった また 下 腿の創培養からは MRSA が検出されていたが 転院時には活動性感染はみられなかった 前医 によれば 明らかな敗血症をきたした経過はな かったとのことであった 利尿薬で体液量を調 整していたが 53kg で横ばいとなったため 5 月 2 日に腎生検を施行した 図 腎生検所見 腎生検では 個の糸球体が採 取され うち 個は硬化していた HE 染色で は糸球体はやや分葉状を呈していた PAS 染色 では 管内増殖 管外増殖の両方を認め 一部 の糸球体には細胞性半月体の形成を伴ってい た PAM 染色では 管内増殖がよりはっきり とみられ 基底膜の一部には二重化と思われる 所見も見られた 蛍光抗体法では Cq および C3 のみ陽性であった 免疫グロブリンはいず れも陰性であった 入院後経過 2 腎生検結果から 当初はルー プス腎炎を疑ったが 過去に膠原病の既往はな く 診断基準も満たさなかった 臨床的に診断 は確定しないものの 腎生検から活動性のある 図2 糸球体腎炎と判断した 高齢であることと 診 断が未確定でステロイドに対する反応性も予想 できないことから パルス療法は行わず プ レドニゾロンを少量 0.5mg/kg/day 投与する こととし 5/29 からプレドニゾロン 20mg の内 07

腎炎症例研究 26 巻 200 年 図3 図6 図4 図7 図5 図8 08

第 52 回神奈川腎炎研究会 討 高橋 論 横須賀共済病院腎臓内科の高橋と申しま す よろしくお願いします 今回 われわれは 膜性増殖性糸球体腎炎様の多彩な光顕所見を呈 したネフローゼ症候群の一例を経験しましたの で ご紹介させていただきます スライド 症例ですが 82 歳の女性です 主訴は全身性浮腫で来院されました 現病歴で すが 昨年の 2 月 6 日 転倒後に右肩挫創を 受傷され その後 整形外科を受診し 外来加 図9 療をされてきましたが 経過中に創部に感染を 合併したため 月 20 日に右の下肢蜂窩織炎の 診断にて同病院に入院されていました その際 特に培養は採取されず 創傷措置および抗生剤 投与で治療されていました カ月ほどで挫創 が徐々に緩解してきたため 抗生物質は中止さ れ 創傷管理とリハビリのみが継続され 入院 を継続されていました 3 月上旬から浮腫が出現するようになり そ れが次第に増悪し 4 月にはそれが全身性とな りました このときに 22kg の体重増加と蛋白 4 クレアチニン.4 を指摘され そのために ネフローゼ症候群の疑いにて精査加療のため 4 月末に当院転院となりました 図 0 スライド 既往ですが 高血圧のほか 昨 年の 月に腹部大動脈瘤の人工血管置換術を 行っています 生活社会歴および家族歴は特記 まとめ すべきことはなく 投薬は以下のようになって います 臨床診断は膜性増殖性糸球体腎炎の疑いである まとめると 皮膚感染による入院中に発症したネ スライド 現時の身体所見ですが 体重が フローゼ症候群であるが 局所感染との関連は不 64.7kg と 約半年前に比べて約 22kg の増加が 明である 病理所見から診断的治療としてステロ あり 高血圧にありませんでした 身体所見で イド投与を開始したところ 速やかに反応し 不 は 全身性の浮腫を認めるほか あまり特記す 完全寛解 I 型に至った 現在まで診断確定はできて べきことはなく 右の下肢に関しましては 滲 いない 病理所見から 推定される診断はあるのか 出液を伴う 肉芽を伴う病変を認めておりまし また MRSA が起因菌と証明されておらず MRSA たが 明らかな感染所見は入院時点ではなく 腎炎とする根拠には乏しいが 関連はあるのか 両下肢に浮腫を認めていました これらの点について検討いただきたく 本症例を スライド 検査所見ですが 尿定性では蛋白 が 2 潜血が 3 あり 沈渣では赤血球円柱 提示することとした 09

腎炎症例研究 26 巻 200 年 などを含む円柱を伴っており, 尿生化では蛋白が9mg, グラムクレアチニンで 4.4g の蛋白尿を認めました 血算では白血球が6700 で, リンパ球は 000 未満とやや低下しており, またヘモグロビン 8.4と正球性正色素性貧血を伴っていました クレアチニンはおよそ.4 あり, TP, アルブミンはそれぞれ 5.8,3. です スライド その他の検査ですが,IgGがやや低下,IgMは軽度上昇しておりました C3, C4 はそれぞれいずれも低下しており, リウマトイド因子は著明高値を呈しておりました 抗核抗体は 80 倍でした それ以外の抗体に関しては陽性のものはありませんでした スライド 検査所見ですが, 蛋白分画などは特に問題はなく, 免疫電気泳動で IgMのκ 型のバンドが見られましたが, これは陽性と取るかどうか, 微妙という程度のもので, 尿には特に見られませんでした スライド 画像の検査では, 胸部レントゲン上, これは APの臥位ですが, 心拡大を認め, エコーと CT はいずれも胸水, 腹水や心嚢水を伴っていました 検体では下肢創部の浸出液からは MRSAが検出されました 胸水および尿には特に問題はありませんでした スライド 入院後の経過ですが, 転院時点ではTP5.8, アルブミン 3., 蓄尿 4.gの蛋白尿を認めました また血尿や低補体血症も伴っており, 当初は MPGNやループス腎炎, クリオグロブリン血症などを疑って精査を行っていました クリオグロブリンを 3 回再検しましたが, いずれも陰性でした SLEに関しましては, 腎障害とリンパ球減少, 抗核抗体陽性の 3 項目は満たしましたが, 項目中 3 項目のみで診断基準は満たしませんでした 転院時の創部からは MRSAが検出されていましたが, 前医の情報はあまりはっきりしたものはなく, 明らかな敗血症, 全身性の感染を疑うような所見, 印象はなかったという情報が得られたのみでした スライド 腎生検所見ですが,2 個の糸球体が採取されまして, そのうちの 個に全節性 の硬化が見られました スライド 糸球体は一部ですが, いわゆる分葉状の変化と, 一部, 細胞性半月体と思われる病変が伴っていました スライド これは PAS 染色ですが, やはりこちらも同じ糸球体ですが, 半月体などの病変がありました スライド こちらも同様です スライド こちらでは一部, 管内増殖のような所見を伴っていました スライド こちらの糸球体では一部に, 基底膜の二重化のような病変が伴っていましたが, PAMが少し厚めのため, どちらか判別がつきませんでした スライド 蛍光抗体法では Cq およびC3 が陽性と思われましたが, それ以外に明らかなものはありませんでした スライド 入院後の経過ですが, 当初, ループス腎炎を疑い, 精査を行いましたが, 明らかなものは認めませんでした 臨床的に診断は確定しませんでしたが, 腎生検の結果から, ある程度活動性のある腎炎であろうと考えまして, 治療を行おうということになりました その際, 高齢であることと, 診断がよく分からないということから, 治療の選択を苦慮して, 少量のプレドニンを投与してみようということになり, 0.5mg/kgを 5 月 29 日からプレドニゾロン内服を開始しました スライド 臨床経過のまとめですが, 入院後, 当初は 3g ~ 5g の蛋白尿が続いていましたが, ステロイドを開始後, 蛋白尿は速やかに減少し, だいたい 2 週間で g を割り, その後はだいたい 0.5g ~ 0.6g 程度, グラムクレアチニン蛋白尿になりました GFRについても次第に改善し, 今は病前の GFR55 が 60 程度に改善しております 体重も病前の40kg 程度まで減少し, 貧血も改善しました スライド 臨床診断ですが, 現在のところは診断があまりはっきりしていないのですが, 膜性増殖性糸球体腎炎の疑いということでわれわ 0

第 52 回神奈川腎炎研究会 れとしては治療をしています 皮膚感染により入院中に発症したネフローゼ症候群ですが, 臨床所見からは SLEのような診断をするには至らず, その他の間質性腎炎などの所見もあまりはっきりせず, 治療を開始したところ, 比較的速やかに改善し, 不完全寛解 I 型に至りましたが, 現在まで結局, 診断はつかずに難渋しているという段階です 問題点ですが, 何かしら病理所見から診断が推定可能であるかということと, 明らかな全身性の感染性の病歴はありませんが, 今回の創部感染とネフローゼの関連はあるかのという点につきまして, ご相談をさせていただく症例を呈示させていただきました よろしくお願いします 座長ありがとうございました ただいまのご発表につきまして, ご意見, ご質問はございますでしょうか 重松リウマチ因子が非常に高いということで, 関節症状とか, 血管炎とか, そういう関連の症状はどうだったのでしょうか 高橋それらについても, かなり調べましたが, 明らかな関節所見は一切なく, 関節炎のような症状もなく, 紫斑も一切伴っていませんでした 座長ほかにございますでしょうか 角田横浜南共済病院の角田ですが, パルボウイルス抗体価を, もし測ってあれば教えていただきたいのですが 高橋今回はパルボは測っていません 角田測っていないのですね, はい 座長ほかにいかがでしょうか どうぞ 平和横浜市大市民総合医療センターの平和です 最初のところだけを教えてもらいたいのですが, この方は最初に挫創をされて, そのあと 2カ月ぐらいたってから, ネフローゼを発症されているということですね ということですから, それの治療に関して, 何か薬剤を使ったのかどうか, そのあたりを教えていただけますでしょうか 高橋 2 月末に挫創を負われてから, しばら く外来で加療をされていましたが, その間から次第に挫創が増悪してきたので, 当初は抗生物質をパンスポリンとカルベニンが投与されていました それを外来で治療していましたが, あまりよくならなかったということで, 入院後は毎週, 変わっているようですが, アミカシン, タゴシッド, ゲンタシン, ハベカシン, モダシン をそれぞれ 剤ずつ, 単剤で 週間ずつ使用して,7 週間ぐらい抗生物質を投与 あれやこれと変えて治療をしていたようです 2 月末にはそこまでの時点で抗生物質を 回終了したという経過です 平和さまざまな抗菌薬を使っているということですが, そのほかにNSAIDs, その他の薬剤を使っていらっしゃらないのですか 高橋 NSAIDsは使用していたという病歴はなく, そのほかには先ほどお示ししたお薬が転院時には内服を継続されていたということですね 平和内服薬にネフローゼとか, あるいは蛋白尿を起こすような薬剤というのは, 特に含んでいませんでしたでしょうか 高橋薬剤性ループスを来すようなお薬については一通り調べたりとか, その他も見てみましたが, これといってどの薬がという感じもあまりありませんでした 平和必ずしもループスでもなくて良いと思うのですが, 薬剤性の腎障害やネフローゼを起しうる薬剤の使用はなかったということですね 高橋と思います 平和分かりました ありがとうございました 座長ほかに何かございますでしょうか 胸水や心嚢水, 腹水もたまっていたようですが, 例えばループス胸膜炎とかそういうものは否定されたのでしょうか 高橋胸水に関しては, 普通の漏水性胸水で除水のみですぐに軽快して, 心嚢水に関しては, 心電図上, 特に漿膜炎を示唆するような所見はなくて, これも利尿薬とその後, ステロイドを少量投与で改善し, 心嚢水に関しては穿刺を

腎炎症例研究 26 巻 200 年 行っていません 治療に伴って自然消失したということで, 臨床所見から, 明らかな漿膜炎ではないのではないかなと思っています 座長ほかにはございませんでしょうか それでは病理のご説明をお願いいたします 重松なかなか難しい症例で, 何か感じとしてはimmune complex nephritis 的なものがありそうですが リウマチ因子とか, 抗核抗体, そういうのが出ているので, 自己免疫病も考えなければいけないと思います スライド 0 82 歳の女性ですが, ここに糸球体があって, 全節性の硬化はない 見るからに少し lobular な pattern で, 確かに腎炎がある すごい動脈硬化があります スライド 02 でも, この動脈硬化は fibroelasticなもので, これは加齢に伴って起こってくる動脈硬化ですので, 高血圧とか, そういうものによるものではどうもなさそうだ 血管炎もありません スライド 03 糸球体ですが, 何となく係蹄壁が少し厚くなっていて, ある程度の細胞増生が見られるというところです スライド 04 中にはかなりの deposition みたいなものが内皮下でしょうか,mesangiumでしょうか, そういうあたりにある あるいは何となく mesangium が膨化している matrixがよく染まっていないという印象を与えます スライド 05 segmental lesion があります それから白血球です こういう炎症細胞の集積も見られる スライド 06 中にはかなり立派な deposition と思われるものがある糸球体もありました スライド07 マッソントリクロームで見ると, 一部, 基底膜の二重化, 癒着病変, 管内細胞浸潤 一部の matrix の増加という, 新旧が混在したような糸球体の病変を示しております スライド08 ここなどはかなり嚢状に広がっている ここのところは interposition 的になっています どうも完全なMPGN 様のものまで, まだ出来上がってはいないという感じが いたします スライド 09 Masson でも一部では局所的ではありますが, かなりはっきりした deposition がある場所がございます スライド 0 PAMが過染気味で残念だったのですが, それでも二重化というか, 部分的な癒着に伴う細胞増生巣が管外性に見られるところがございます スライド ここでは少し ballooningというか mesangiolysis みたいものがあるし, ここでは眼鏡状になって, これは bridgingや interposition があるところだと思います スライド 2 IF は見るチャンスがありませんでしたが, 演者がお示しになったように, C3 と Cqが陽性で, ほかのimmunoglobulin はマイナスということですね そういうことを参考にして電顕を見ていきたいと思います これが内皮細胞ですね ここにうーんと狭くなってしまった血管腔があります ですから, ここは interposition が起こっていて, これは mesangium 細胞だと思いますね mesangium から係蹄壁のinterposition を起こしたところに deposition があるという所見です スライド 3 これもここに内皮細胞があって, 狭い血管腔, ほとんど見えませんが, ここにちょっと見えますね これは interpositionを起こした mesangium 細胞です 平滑筋に見られるアクチンフィラメントを,filamentous body と言いまして, これが mesangium 細胞である一つの証拠です このメサンギウム細胞の胞体が伸びてきています ですからここは新生された mesangiumであってそこに沈着物がある 一部は内皮下の沈着物と見てもいいと思います スライド 4 たくさんの遊走細胞が入ってきています これはマクロファージ系の細胞だと思います これもそうだと思います ここに血管腔があって, ここでは mesangium にも遊走細胞が入り込んでいるという所見があると思います スライド5 これは内皮細胞でありますが, 2

第 52 回神奈川腎炎研究会 上皮細胞は剥離を見せています 部分的な剥離が起こっている ここはずっときれいに足突起の扁平化が起こっています ということで, この症例はいくつかのものを鑑別しなければいけないと思います 一つはリウマトイド因子だけがものすごく高くなっている リウマチで見られる腎病変としては, 主に三つ rheumatoid glomerulonephritis がありますが, これはマイルドの増殖性の腎炎の形を取るわけです 今日, 蛍光を見せてもらうと,immunoglobulin は全然沈着していないわけです ですから rheumatoid factorが糸球体に沈着すると, 当然 IgMか IgG が沈着してくるはずですが, それが全くないというので, これは可能性がないだろう amyloidosisはもちろんありませんし, 関節リウマチのときに見られる血管炎的な変化もこの症例にはないというので, リウマチ因子というのはどうもよく意味の分からない自己抗体だということになります では今度は MPGN としていいかどうかということですね typical な MPGNの場合には, 低補体血症があって, そして糸球体には C3 dominant, そしてしばしば著明な内皮下の沈着物が出てくるということですね 今日の症例は時期が早いというお話もあるかもしれないけれども, まだ interpositionがほとんど完成していないし, それから内皮下の沈着物は本当に MPGN らしい優位性を持って証明されないことがあります けれども, 非常に MPGN like の腎病変であることは確かです こういう症例が今, 非常に多くて, 病理医もどういう診断をつけるかということで悩むわけですが, 一般的にはMPGN-like lesionとして正確な診断はつけられないということになるのではないかと思います 私自身は MPGN like lesion としてとどめるということです 以上です 座長ありがとうございました 山口先生, お願いします 山口なかなかこれはどこへはめ込んでいいのかというのは非常に難しいように思います 重松先生が悩まれたとおりで, 低補体血症はありますが, 通常の idiopathicなmpgnでいいのかどうか それ以外に何か続発性にしたら, その病因は何かという問題ですね それから多彩というのは, おそらく small crescent とか, exudative な変化が出ていたということだろうと思います スライド 0 尿細管間質は比較的よく保たれている症例だと思います スライド02 最初に目につくのは, やはり分葉化でしょうか こういう分葉化があるということで, こういう分葉化があると,lobular 腎炎というものも,MPGN よりも interposition がはっきりしない場合は lobular 腎炎と言った方がいいのではないかとか Crow-Fukase, そういった特殊なもので見られる変化です mesangium の endocapillary との関係が非常に不明瞭ですよね いわゆる small crescent 様のfibrous だったり, fibrous cellularだったりする 管外性の病変も非常に多いように思います 尿細管上皮は比較的保たれていますが, 一部がやや foamy になって,lipidがだいぶたまっているのかなという印象を受けます スライド 03 分葉核の細胞がだいぶ入っているのですが, あとは何となく泡沫状, あるいは単球様の細胞も混ざっているのかなという感じですね 両方, 管内にいろいろな外来性の細胞が随分入り込んで分葉状になっているということだろうと思います スライド 04 銀はやはりだいぶ二重化とか何か非常に分かりづらくて困るのですが, ところどころ, やはり分葉状になってくると, このへんが血管腔と考えれば, ある程度二重化に近い状態が少しずつ出てきていますが, このへんは mesangium とcapillary, ここに capillary がありますが, では mesangiumが少しルーズに拡大してしまったのかなという感じもします このへんは matrix が保たれているわけで, Masson で見ると, 逆に余計分からなくなってしまいますね このへんが mesangium でしょ 3

腎炎症例研究 26 巻 200 年 うが,endocapillary な変化で, このへんはだいぶinterposition を思わせる二重化 総合的には MPGN としか言いようがないのだろうとは思います スライド05 先ほど重松先生が言われたように, あちこちに hyalin の沈着が基底膜下に massive なやつ,wire loop まではいかないですが, そういったものが見られています スライド 06 間質にもちょっと capillaritisといいますか, 間質炎が比較的強くて, 一部これには出ていませんが,eosino 何かが出ていたように思います スライド 07 蛍光のスライドがあって, 無理やりわれわれも撮ったのですが, あまり撮り方が上手ではないので, 陽性ですかね,C3が出ている ほかはあまり出ていなかったように思いました Cqはどのくらい出ているのかよく分かりません 全体にべったり出てきてしまうものですから, 撮り方もあまり上手ではないですが スライド 08 電子顕微鏡は, やはりマクロファージ系の細胞が capillary の中を占拠して血管腔が分かりづらくなっていますね 基底膜下に density のある deposit があるわけで, これだけを見たら通常の idiopathicなものでも, こういう像というのはよくあるわけで, かまわないように思います スライド09 一部は先ほど光顕で見られた wire loop ではありませんが,massive なものがあるわけで, ただ全体を占拠するのではなくて, 間がこういうように抜けているのですね こういう場合はときどきわれわれは insudative なものとの鑑別が二次的に, これは mesangial cellですから, 先ほどの重松先生のご解説がありましたとおり, こちらが capillary ですね そうするとinterposition で少し insudative なものも混ざっている可能性があると思います スライド0 少し気になったのは interposition があって, やや何か構造があるのかなと, ざらざらした感じがあったので,cryo は一応, 否定はされていますが, 回だけだと, 今, いろいろな感染に絡んだものでも, 血中のいろいろな因子が非常に反応が強くて, そういったものが出やすいように思いますので, はっきりした構造とは言えないと思います deposit にしては, このように間に介在しているわけですね そのへんが染み込み的な病変的なところもあるように思います もちろん washed out されてきているのかもしれないですが スライド そういうことで MPGN, あるいは exudative lobular 腎炎というような感じで, 一つは primary も否定はできないと思いますが, 簡単に治療でよくなってしまうというのは, どうなのかなというところから考えると, もう一回,cryo をチェックしていただくのと, 最近, 感染関連腎炎でももちろん secondaryの MPGN 様になると 補体系の沈着しかないので,immunoglobulin があまりないのですが, やはり何か広い意味での感染関連腎炎という secondary の MPGNも考えた方がいいのかなと思います 以上です 座長ありがとうございました 今のご発表に対しまして何かご質問はありますでしょうか どうぞ 鎌田わたしはこの組織を見て,MGPNでいいのかなと思ってきました かつてシャント腎炎を 例, きれいなものを見たことがありますが, 滲出病変があってMGPNにそっくりです 傷があって, 補体の様子も,staphylococus epidermidis(albus) のシャント腎炎とそっくりのように思いました この例は, 感染性糸球体腎炎の一つかなと 病理の先生に, お教えいただければありがたいです 重松シャント腎炎, 確かにその可能性は否定できないと思います やっぱりいちばん問題なのは,immunoglobulin, の存在の有無 IF ですね IF でimmunoglobulin が全然染まってこないということはおかしいですね 感染性のもの 4

第 52 回神奈川腎炎研究会 だと必ず IgAか IgGか,immunoglobulin 絡みの deposition が糸球体にあるのが普通です そういう点で考えにくいかなと, わたしは思っています 座長ほかに何かございますでしょうか どうぞ 長濱横浜市大の長濱と申します これは僕が診断したのですが, 最初は山口先生や重松先生がおっしゃったとおり,MGPN で endocapillary な変化が非常に目立ったので, クリオグロブリン腎症の初期か あとは半月体の形成が目立ったので, 一元的に説明するのはlupusしかないと思ったのです ただ, どっちも違うということで, よく分からない症例でした 典型的なMGPNにしては半月体の形成が目立つので, きれいな MGPNにそういうのが出るのは atypical だから違うのではないか どこかに発表したらいいのではないかということで発表させていただきました 逆に臨床の先生にお聞きしたいのですが, 剖検例で MRSA 腎症をたまに経験しますが, この方はステロイドしかやっていなくて, よくなってくるというのは, 感染性の腎炎としてはどうだろうというところを, 臨床の先生とディスカッションをしたのですが, 経験のある方にご意見をいただければと思います 座長今のご意見に対しまして, どなたかご意見をいただけないでしょうか 遠藤東海大学の遠藤です MRSA 腎炎だとステロイドだけでよくなってしまうのが そういう意味ですか われわれの経験している MRSA 腎炎, 例えば他科に入院して, かなりひどいことが起きて, MRSA 感染があって, しばらくそれがコントロールできて, それからネフローゼになったとか, そういうのを紹介を受けて腎生検をすると IgAが染まって, そうするとこれは IgA 腎症というよりもMRSA 腎炎にした方がいいのではないか 現在,MRSAはコントロールされている そこで中には, ひどいのは MGPN like のも のがあって, ステロイドを強力にいって, 感染に注意しながら徐々によくなる 結局, そのときには MRSA はコントロールがついていることが多かったです post infectiousと似た, それで IgA dominant に来る, そういう理解です ほかの先生はどうか分かりません 鎌田もし,MRSA 腎炎だったらステロイドを使うとほとんど亡くなると思います 私共には MRSA 腎炎の論文が発表される前の症例がありまして, ステロイドを使って亡くなっています 以後は全てステロイドを使わないで, 抗菌薬だけで治療していますが, みんなよくなります ただ,MRSA 腎炎はなかなか診断が難しいですよね HSP と間違いやすく, 非常に注意深く調べないといけません 過去の病歴が大切です MRSA 腎炎では CRP がわずかに動いているぐらいですから 高熱は出ません HSP のように足に小さな点状出血斑が出て,HSP じゃないかと思います ところが過去に MRSAに感染しているという症候があります 小さな microabscess が抗原提供部位になっているので,MRSA 腎炎では, どこに感染巣があるかを見つけるのが困難です ですから HSP 類似の病変を見たら, 必ず MRSA 腎炎を鑑別する必要があります また, 必ず抗生剤で行かないと, 非常に悲惨な結果になります そこだけは非常に注意深くやっています ただ, この症例は,IgAが沈着がりません 感染性腎炎には, いろいろなタイプがあります 本例ではステロイドを使って, 比較的よい経過を取っているのですが, それについてわたしは何ともコメントはできません 座長どうぞ 大橋虎の門病院病理の大橋といいますが, 感染性腎炎は診断が難しくて, 典型的に IgAがよく染まったりとか, 臨床で MRSAが出ていたりすればいいのですが, 本例のようななかなか条件がそろわないと難しいことが多いと思います 本例では非常に endocapillaryな変化が強いですが, わたしの経験した例でも, 細胞増殖 5

腎炎症例研究 26 巻 200 年 が非常に強いと IgAの染まりが弱い例があります 本例は写真ではよく分からなかったのですが, 非常に少ない沈着の場合は見直してみると陽性ととれる例もありますので, 注意が必要と考えます 本症例は大きな deposit 様に見えるというのは, 滲出との区別が非常に難しくて, あれが全部 immune complex に由来とするには, 違和感を感じます 山口先生がおっしゃったように, おそらく滲出と混ざり合っていて, 本当の immune deposit は少ないと思います endocapillaryの増殖とか, 炎症細胞が非常に強く, 感染症との関連を非常に示唆している印象を受けました 山口先生, どうでしょうか 座長山口先生, お願いします 山口大橋先生が言われるとおりで, この症例でIgAが出ていたら, みんな MRSA 腎炎に行ってしまうと思うので, 確かに蛍光で見るときに,exudative な変化が非常に強いとなかなか immunoglobulin がそこに残ってない なかなかうまく保持されていないという可能性はあるのではないでしょうか 先生の蛍光のスライドがありましたよね あれをもう一回見せていただけますか ぜひ, 長濱先生,PAP でもう一回やり直してみてくれるますか そうしたら 高橋結局, この症例は最初は cryoなのではないかと思っていて,cryoglobulin に関しては,3 回検査したのですが, すべて陰性ですね 蛍光も2 回染め直したのですが, 最初は Cq しか染まらなくて, こんなのがあるのかなと思いまして 山口やはり積極的には陽性とは言えないですね どうもありがとうございました すみません 座長ほかには特にございませんでしょうか 時間も超過しておりますので ありがとうございました 6

第 52 回神奈川腎炎研究会 重松先生 _0 重松先生 _06 重松先生 _ 重松先生 _02 重松先生 _07 重松先生 _2 重松先生 _03 重松先生 _08 重松先生 _3 重松先生 _04 重松先生 _09 重松先生 _4 重松先生 _05 重松先生 _0 重松先生 _5 7

腎炎症例研究 26 巻 200 年 山口先生 _0 山口先生 _06 山口先生 _02 山口先生 _07 山口先生 _03 山口先生 _08 山口先生 _04 山口先生 _09 山口先生 _05 山口先生 _0 8