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Transcription:

基礎量子化学 年 4 月 ~8 月 6 月 3 日第 7 回 章分子構造 担当教員 : 福井大学大学院工学研究科生物応用化学専攻准教授前田史郎 -ail:saea@u-fukui.a.p URL:http://abio.abio.u-fukui.a.p/phyhe/aea/kougi 教科書 : アトキンス物理化学 ( 第 8 版 ) 東京化学同人 章原子構造と原子スペクトル 章分子構造 分子軌道法 5 異核二原子分子 5 月 日, 学生番号, 氏名 () 自習問題 4 F と F のどちらの方が解離エネルギーが大きいと予想されるか. [ ヒント ]F の基底状態の電子配置は次の通りで, 結合次数 b である. F : σ g σ u σ g π u4 π g 4 () 変分原理とは何か, 簡単に説明せよ. (3) 変分法の解法のうち, 直接法とはどんな方法か簡単に説明せよ. (4) 直接法のうち, リッツの方法について簡単に説明せよ. (5) 本日の授業内容についての質問, 意見, 感想, 苦情, 改善提案などを書いてください.

() 自習問題 4 F と F のどちらの方が解離エネルギーが大きいと予想されるか. [ ヒント ]F の基底状態の電子配置は次の通りで, 結合次数 b である. F : σ g σ u σ g π u4 π g4 F : σ g σ u σ g π u4 π g3 ( は反結合分子オービタル ) 結合次数は次のようになる. F :(8-6)/ F :(8-5)/.5 F の方が結合次数が大きいので大きな解離エネルギーを持つと予想される. 反結合性分子オービタルの電子数が少ないほど結合次数が大きく 解離エネルギーも大きい 3 等核二原子分子 F の分子オービタルエネルギー準位図 基底状態の電子配置は反結合性オービタルに を付けると F : σ g σ u σ g π u4 π g4 8,6 であるから, 結合次数 b(8-6)/ であり, 一重結合となる. 一方,F では F : σ g σ u σ g π u4 π g3 8,5 であるから, 結合次数 b(8-5)/.5 であり,.5 重結合となる. 4

() 変分原理とは何か, 簡単に説明せよ. 変分原理とは,LCO-MOから分子オービタルを作るときの係数を求める方法. 任意の関数を使ってエネルギー計算すると, その計算値は真のエネルギーより決して小さくはならない. (3) 変分法の解法のうち, 直接法とはどんな方法か簡単に説明せよ. 適当なパラメータ ( 変分パラメータという ) を含む試行関数を設定することにより変分問題を解く手法を直接法という. (4) 直接法のうち, リッツの方法について簡単に説明せよ. 試行関数を選ぶ際に, 何か適当な関数系 {φ ()} を使って y φ とおく方法をリッツの方法という. 5 前回のポイント () 変分原理 LCO-MOから分子オービタルを作るときの係数を求める方法. 任意の関数を使ってエネルギー計算すると, その計算値は真のエネルギーより決して小さくはならない. これを, 変分原理という. 多原子分子の場合には, シュレディンガー方程式を厳密に解いて真の波動関数を求めることができないので, パラメータ ( 変数 ) を含むもっともらしい試行関数 ψ () を用いてエネルギー () を計算する ( 直接法という ). 変分原理により, () は真のエネルギー () よりも必ず高いことになる. ψ () のパラメータを変化させて () を計算しても, 必ず () () である. そこで, () が最小になるようにパラメータを決めたときの () がもっとも真のエネルギー () に近い値となる. 6

前回のポイント () 試行関数は何でも良いのであるが, 実際には, () 真の波動関数に近い形であること. () ハミルトニアンの期待値 ˆ を求める積分計算が容易に行えること. が望ましい. 適当なパラメータ ( 変分パラメータという ) を含む試行関数を設定することにより変分問題を解く手法を直接法という. 試行関数の選び方は決まった方法があるわけではなく, いちいちの問題ごとに適切な形を考えてやる必要がある. 7 PR 年度授業内容. 水素型原子の構造とスペクトル. 原子オービタルとそのエネルギー 3. スペクトル遷移と選択律 4. 多電子原子の構造 5. 一重項状態と三重項状態 6. ボルン オッペンハイマー近似 7. 原子価結合法 8. 水素分子 9. 等核ニ原子分子. 異核二原子分子 多原子分子. 混成オービタル. 分子軌道法 3. 変分原理 4. ヒュッケル分子軌道法 () 5. ヒュッケル分子軌道法 () 8

レーリー リッツの変分法 試行関数を, パラメータ ( 変分パラメータという ) を含む適当な関数系 {φ } を使って展開し, その係数を変分法で最適化する. Φ φ φ φ φ L 3 3 4 4 φ () エネルギー の期待値を求めると, ˆ i i i Φ ˆ Φ i Φ Φ i i ( φ L) ˆ ( φ L) ( φ L) ( φ L) () ここで, i i φ φ φ φ i ˆ i 9 () を整理すると, i i i この を最小にするためには, 各変数 i について, i i または i i まず i で偏微分すると, i i i i i i i であるから, ( i i ) (3) i (3) (4)

( i i ) (,, L, ) (5) (5) を永年方程式という. 永年方程式を行列式の形で書くと, O L O (6) i, i の値が計算できればこの永年方程式 を解くことができる. i i φ φ φ φ i ˆ i 9 箱の中の粒子 図 9 のようなポテンシャルにしたがう自由粒子 すなわち 次元の箱の中の粒子の問題を量子力学的に取り扱う 87 復習 と L の間は V とする. 質量 の粒子は と L にある つの無限の高さを持つ壁の間に閉じ 込められている 簡単のために この 間のポテンシャルエネルギーはゼロと する 図 9 通り抜けることができない壁のある 次元領域にある粒子 と L の間でポテンシャルエネルギーはゼロとする

(a) 許される解 復習 壁の間の領域でポテンシャルエネルギーはゼロであるので シュレディンガー方程式は 自由粒子 のものと同じになり 一般解も同じである ハミルトニアン h シュレディンガー方程式 h 3 89 復習 h 8L / π si,,, L L L 図 9 箱の中の粒子に対して許されるエネルギー準位 エネルギー準位が の形で増加するから 準位間隔が量子数の増加とともに増加することに注意せよ 4

() 解の性質波動関数 ψ は () 定在波である 量子化 ()- 個の節 (oe) を持つ h (3) ゼロ点エネルギー を持つ 8L ( 粒子のとり得る最低エネルギーはゼロではない ) 復習 89 図 9 3 箱の中の粒子の最初の 5 つの規格化した波動関数の例 各波動関数は定在波である 5 [ 例題 ] 次元の箱の中に閉じ込められた粒子の問題において, シュレディンガー方程式を解いて得られる基底状態 ( 最もエネルギーが低い状態 ) の厳密解は, h 8L L である. 試行関数として 次関数 / π h L π si L ( L) を用いて 得られるエネルギーが厳密解のエネルギーとどのくらい差があるか求めよ. φ 6

7 /, si L L L true h π π 厳密解試行関数 L φ [ 手順 ] 試行関数を規格化する. 5 5 3 3 L L L L L φ 8 [ 手順 ] 永年方程式を解く. h であるから, 5 L L L L L L φ φ φ h h 永年方程式は以下のようになる. 5 L h 5 L h

誤差を求めると, true true 5h L true L π h π h L h L h π 5 L π π 5 5 π.3 π 真の解 si ではなく, L L 試行関数 φ ( L) / を用いることによって, エネルギーを.3% 過大評価したことになる. 真の波動関数が分からなくても, 真のエネルギー に非常に近い値 [ φ] [φ] を求めることができる. ここで, である. 9 変分原理 [ φ] 任意の関数 φを用いてエネルギー期待値 [φ] を計算すると, 必ず基底状態エネルギー よりも, 大きいか等しい. したがって, パラメータを含む関数 φを用いて, φ ˆ φ を計算し, 最小値をとる条件でパラメータを決めれば良い. 試行関数として, 積分の計算が解析的に行える関数 φを用いるのが望ましい.

[ 変分法の証明 ] 系のハミルトニアンを とし, その固有値を, 固有関数を ψ とする. ハミルトニアン の固有関数 ψ は完全系 {ψ} を作るので, 任意の規格化された関数 φ は, この固有関数の線形結合で表すことができる. φ ψ,, δ ψ ψ ψ ψ φ φ 任意の規格化された関数 φ を, この関数系 {ψ} の線形結合で表す. for for δ クロネッカーのデルタ記号

完全系とは? 正確な定義は数学のテキストに譲るとして, 大雑把にいうと, 次のような規格直交関数系 φ() があるとき, { φ, φ, φ, K, φ }, φ φ δ 任意の関数 f() をこの関数系 φ() の無限級数で展開できるならば, この関数系 φ() を完全系という. f a φ a φ a φ L a φ a φ L 完全直交関数系の例としては, 任意の波形のフーリエ級数による展開などがある. この関数 φ に対して, そのエネルギー期待値を [φ] とする. φ [ φ ] φ φ φ φ φ 3 を 3 に代入する. [] φ ψ ψ 4 ψ は系のハミルトニアン の固有関数であるからシュレディンガー方程式を満足する. ψ ψ 5 4

5 5 を 4 に代入する. [],, δ ψ ψ ψ ψ ψ ψ φ 6 for for δ ψ ψ 6 6 の両辺から を引く. [ ] φ 7 式から, ここで, は基底状態のエネルギーである. そして, は励起状態のエネルギーであるから, > である. したがって, [] [] φ φ したがって,

変分原理 [ φ] 任意の関数 φを用いてエネルギー期待値 [φ] を計算すると, 必ず基底状態エネルギー よりも, 大きいか等しい. したがって, パラメータを含む関数 φを用いて, φ ˆ φ を計算し, 最小値をとる条件でパラメータを決めれば良い. 試行関数として, 積分の微分が解析的に行える関数 φを用いるのが望ましい. 7 根拠 3 変分原理を異核二原子分子に当てはめること 二原子分子 の分子オービタルとして LCO-MO を用いる. 4 ψ ここで,およびは, それぞれ原子 およびのOである. このLCO-MOを試行関数としてエネルギー が最小となるように係数 および を選べば良い. ここで,ψは規格化されているが,Oである とも規格化されているとする. この試行関数のエネルギーはハミルトニアンの期待値である. ˆ ˆ 8

9 分母ここで, は重なり積分である. ˆ ˆ 4 3 ˆ ˆ ˆ ˆ ˆ 分子 ˆ ˆ ˆ, ˆ, クーロン積分クーロン積分共鳴積分重なり積分ここで, 4

3 したがって, エネルギー期待値 は, ( 8) エネルギー の極小値は, 係数 および で微分した導関数 から求められる. (7) 式を書き直すと,, 4 3 式を で偏微分し, をゼロとする. 式を で偏微分し, をゼロとする. 4

33 したがって, 次の連立方程式 ( 永年方程式 ) を解けばよい. 行列の形に書くと, この方程式が意味のある解を持つためには, 係数である行列式 でなければならない ( は ψ となるので無意味である ). 展開すると, ( 5) ( 9) 4 34 数値例 変分原理の応用 () 式 ( 9) を解くことにより, 等核二原子分子の結合オービタルと反結合オービタルのエネルギー を求めることができる. 等核二原子分子であるので, と書くことができる. ふつう,< であるから, < - である. 4

35 数値例 変分原理の応用 () [ 別解 ] [ 別解 ] 各要素を - で割りとおく. 36 { } { } () () [ 別解 3]

37 一次結合の係数 i の値を求めるには, 永年方程式から求めた つのエネルギー を用いて永年方程式を解く. 低い方のエネルギー - 結合分子オービタルの係数 i 高い方のエネルギー 反結合オービタルの係数 i 永年方程式からは係数の比を求める式しか得られないので, 各々の値を決めるためにはもう つの式が必要である. この式を得るには, 最良の波動関数も規格化されていなければならないという条件を課す. この条件は, この計算の最終段階で, が成り立たなければならない, ということである. 38 ふつう,< であるから, < - である. 数値例 3 変分原理の応用 () 等核二原子分子ならば とすると,

39 結合性オービタル ( ) では, 永年方程式 4 反結合性オービタル ( - ) では, 永年方程式

4,, 規格化を行うと, 4,, したがって, - 図 6 水素分子イオンの分子ポテンシャルエネルギー曲線の計算結果と実験結果実験計算

() 二つの簡単な場合 () 等核二原子分子の場合, 数値例 3に示したとおりである. () 異核二原子分子の場合, 永年方程式 ( )( ) ( ) 重なり積分 とすると,( 等核二原子分子のときは とした ) ( )( ) ( ) 43 osζ siζ, siζ osζ, otζ otζ ( 34) ここで, ζ arta otζ ζ arta ta ( ζ ) otζ 大岩正芳, 初等量子化学 ( 第 版 ), 化学同人 (988) p73-75 44

- >>, すなわち つのオービタルのエネルギー差が非常に大きいとき, ta << ( ζ ) << のとき,ta であることを使うと, ζ ( ) と書ける. したがって (ta であるから ), taζ otζ taζ ( ) 45 根拠 4 結合性と反結合性の効果 ふつう<であるから, したがって, ( ) ( ) - ( ) ( ) このように, エネルギー差が大きいときには, 分子オービタルは原子オービタルと少ししか違わない. したがって, 結合効果や反結合効果はいずれも小さいと考えてよい. つまり, 結合と反結合の効果が最大になるのは, 寄与する つのオービ タルが非常に似たエネルギーを持つときである. 46

( 34) 式は次のようになる.,, エネルギー差が大きいとき, 分子オービタルはそれぞれの原子オービタルとほとんど同じである. Fの場合, 近似的に次のように表わせる. ( F ), ( F ) p ( ), ( ) s p s 図 36 F の分子オービタル 47 例題 3 F の分子オービタル -3.6eV, Fp -7.4eV とすると, -.ev のとき ta ( ζ) したがって, F. 53 ζ (34) 式に代入すると 7. 6eV, 3. 4eV, ta. 7. 4 3. 6. 53. 4χ. 97χ 7. 9 結合オービタルにある 個の電子はほとんど ψ(fp) に見い出される つまり,-F の結合は, ほぼイオン結合 ( :F ー ) と考えて良い. o. 97χ. 4χ ( 第 8 版では Fp の値が図 36 と違っている. 第 9 版は同じ ) F F 48

6 月 3 日, 番号, 氏名 () 自習問題 6 Clのイオン化エネルギーは3.eVである.Cl 分子におけるσオービタルのエネルギーを求めよ. [ 解答 ] - -.3 ev, ψ - -.6ψ.79ψ Cl -4.4 ev, ψ.79ψ.6ψ Cl [ ヒント ] とする. Cl -3.eV, -3.6eV,-.eVとすると,ta - 4. 76. であり ζ38., osζ.79, siζ.6,otζ.8 となる. ( 第 8 版の解答は誤りと思われる. 第 9 版では は求めていない.) () 質問, 感想, 意見など. 49

6 月 5 日自習問題 6 Cl のイオン化エネルギーは 3.eV である. Cl 分子におけるシグマオービタルのエネルギーを求めよ. Cl3p -3.eV.79.6 Cl,.6.79 Cl, イオン化極限 -.3eV -4.4eV -3.6eV 3..8 4.4eV 3.6.8.3eV Clの場合,sとCl3pのエネルギー準位がほぼ等しいので, 分子オービタルへの寄与がほぼ等しい. したがって,Clはほぼ共有 s 結合であるといえる. 55