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平成25年6月14日

小児整形外科

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299 P1NP 骨芽細胞 プロコラーゲン分解 Ⅰ 型コラーゲン TRACP-5b BAP OC ucoc OC 類骨 細胞活性化による分泌 1 増殖期 P1NP 2マトリックス形成 成熟期 3 石灰化期 OC 破骨細胞 肝臓 腎臓代謝 尿中 NTX CTX 血中 NTX コラーゲン断片 CTX α

骨粗しょう症連携手帳は骨粗鬆症財団が編纂し 骨粗しょう症患者さんに配布しています この手帳は骨粗しょう症の治療を受ける患者さんが携帯し 患者さんの検査結果や投薬状況などを記録して患者さん自身の治療意欲を高めるとともに 医療関係者が患者さんの情報を共有できるよう 公益財団法人骨粗鬆症財団が立案 制作し

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

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154 川崎医学会誌 表 2 海綿骨の比率 腰椎 60% 椎体 80 大腿骨頸部 25 Ward 三角 25 大転子 50 橈骨 遠位 1/3 部 5 1/ / 中手骨 2-3 全身骨 20 表 3 我々が所有した骨塩定量装置 測定部位 測定方法 機種 第 2 中手骨

免疫学的検査 >> 5C. 血漿蛋白 >> 5C146. 検体採取 患者の検査前準備検体採取のタイミング記号添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料採取量測定材料ネ丸底プレイン ( 白 ) 尿 9 ml 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60

骨粗鬆症とは!( どんな病気?) 骨粗しょう症は 鬆 ( す ) が入ったように骨の中がスカスカの状態になり 骨がもろくなる病気です 骨がスカスカになると わずかな衝撃でも骨折をしやすくなります 骨粗しょう症は がんや脳卒中 心筋梗塞のようにそれ自体が生命をおびやかす病気ではありませんが 骨粗しょう

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

第 66 回骨粗鬆財団教育ゼミナール講演 Ⅰ 糖尿病に合併する骨粗鬆症の特徴と対策について 島根大学医学部内科学講座内科学第一講師 金沢一平 はじめに糖尿病は加齢とともに増加する疾患であり 世界的に患者数は増加し続けている 超高齢化社会を迎えた我が国において 高齢者糖尿病患者へのアプローチの重要性は

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Ⅰ 目的わが国は世界一の超高齢社会を構成しており 筋骨格系の健康を保つことが要介護 要支援を予防するうえで重要となってきている 約 1200 万人といわれる骨粗鬆症は高齢者の疾患であり 1) 骨折は寝たきりにつながる原因疾患であり 骨折患者の介護費 医療費などは年々増加の一途であるばかりでなく 生命

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標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

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副甲状腺ホルモン製剤 A-VD: 活性型ビタミン D 2 骨粗鬆症治療薬のイタリアの学会による中立的な見解 Safety profile of drugs used in the treatment of osteoporosis: a systematical review of the lite

上原記念生命科学財団研究報告集, 28 (2014)

-49<< 図 3 椎体 L2-4 と大腿骨近位部における骨粗鬆症の有病率 ( 推定 05 年 ) 2 椎体 大腿骨近位部 SOURCE Reproduced from Orimo H. et al. Japanese 11 guidelines fo

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Microsoft Word 診断基準確定版

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

旗影会H29年度研究報告概要集.indb

2.5 臨床に関する概括評価 Page 2 略号一覧 略号 省略していない表現 ACE angiotensin converting enzyme( アンジオテンシン変換酵素 ) ADL activities of daily living( 日常生活動作 ) AE adverse event( 有


九州大学学術情報リポジトリ Kyushu University Institutional Repository カネミ油症検診者の骨密度と PCB, PCQ, PCDF 吉村, 俊朗長崎大学医歯薬学総合研究科保健学専攻 中野, 治郎長崎大学医歯薬学総合研究科保健学専攻 枡田, 智子長崎大学第一内科

SoftBank 301SI 取扱説明書

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2.7.1 生物薬剤学試験及び関連する分析法 Page 1 リクラスト点滴静注液 5mg ゾレドロン酸水和物 第 2 部 ( モジュール 2):CTD の概要 ( サマリー ) 2.7 臨床概要 生物薬剤学試験及び関連する分析法 旭化成ファーマ株式会社

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(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

理学療法科学 32(3): ,2017 原著 骨粗鬆症患者の非椎体骨折性腰背部痛に対する運動療法と薬物療法の効果 Effect of Therapeutic Exercise and Pharmacological Managements for Back Pain in Osteopo


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骨密度測定装置 (DXA 法 ) を導入しています 群馬県立心臓血管センターでは 骨密度検査において DXA 法を用いています 骨粗鬆症は骨の強度が低下し 骨折の危険性が高くなる病気で す 一般に骨の強度は骨量あるいは骨密度が 70% 骨質が 30% 影響すると言われています したがって 骨の強度の

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

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第 14 回日本骨粗鬆症学会骨ドック 検診分科会 2012 年 9 月新潟市朱鷺メッセ 骨粗鬆症リエゾンサービス Report

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規


10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

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日本は世界有数の長寿国 男性の平均寿命 女性の平均寿命 1 位 スイス 位 日本 位 アイスランド 位 スペイン 位 スウェーデン 位 フランス 位 イスラエル 位 スイス 位 シンガポー

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3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

本日の内容 1. 性差のもととなる内分泌環境の変化 2. 超高齢社会と筋骨格系の異常 3. 糖尿病関連骨粗鬆症と薬物治療 4. 糖尿病関連骨粗鬆症と生活指導

高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

症例 1 糖尿病 61 歳男性 現病歴 55 歳頃に糖尿病を指摘されたが未治療で放置していた 最近目が見えにくくなったため眼科受診したところ糖尿病性網膜症 ( 福田分類 B1 全増殖型網膜症 ) があり 内科受診を勧められ当院初診した 既往歴 緑内障 ( 現在眼圧正常 ) 家族 父親が糖尿病 80

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

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研究成果報告書

1 基本健康診査基本健康診査は 青年期 壮年期から受診者自身が自分の健康に関心を持ち 健康づくりに取り組むきっかけとなることを目的に実施しています 心臓病や脳卒中等の生活習慣病を予防するために糖尿病 高血圧 高脂血症 高尿酸血症 内臓脂肪症候群などの基礎疾患の早期発見 生活習慣改善指導 受診指導を実

甲谷 奥山 道繁 杉野 : 高齢者に対する骨粗鬆症の簡易指標についての文献検討山陽論叢第 21 巻 (2014) な外力のみならず 荷物を持ち上げたり くしゃみをしたりすることでも骨折する可能性がある 5) 骨折をすると ほとんどの場合入院を余儀なくされ骨折部位によっては手術が必要になる 高齢者の手

山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

6 原著論文村本 : 家庭婦人バレーボール選手における踵骨の音響的骨評価値 一方, 家庭婦人バレーボール選手に関して, 長年にわたって競技を継続した選手は過去のバレーボール経験年数が長く 10), 垂直跳で一般人よりも高値であった 53). また, 大学女子バレーボール選手の受傷は手指と足関節に多か

骨粗鬆症とは何か 骨粗鬆症とは骨密度が低下し骨質が劣化する疾患で 骨を脆弱化し骨折リスクを高める 特に骨折しやすいのは脊椎 手首 大腿骨近位部 骨盤 上腕である 骨粗鬆症とその関連骨折は さらなる合併症や死亡の重大な要因となる 世界的にみて 50 歳以上の女性のおおよそ 3 人に 1 人 男性では

第11号骨そしょう症

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

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ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

中高年のヘルスケア (HRT/骨粗鬆症/脂質異常症/排尿障害など)

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一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

-3- Ⅰ 市町村国保の状況 1 特定健康診査受診者の状況 平成 23 年度は 市町村国保 (41 保険者 )98,439 人の特定健康診査データの集計を行った 市町村国保の診者数は男性 女性ともに 歳の割合が多く 次いで 歳 歳の順となっている 男性 女性 総数

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

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宗像市国保医療課 御中

平成24年7月x日

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

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複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

ヒアルロン酸ナトリウム架橋体製剤 特定使用成績調査

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日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録

健康寿命の指標

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

ピルシカイニド塩酸塩カプセル 50mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにピルジカイニド塩酸塩水和物は Vaughan Williams らの分類のクラスⅠCに属し 心筋の Na チャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す また 消化管から速やかに

結果の概要

14栄養・食事アセスメント(2)

10075 口頭発表 身体活動 8 月 31 日 ( 金 ) 8:30~9:20 第 8 会場 朱鷺メッセ 3F 小会議室 口頭発表 診断 -その他 8 月 30 日 ( 木 ) 11:00~12:20 第 5 会場 朱鷺メッセ 3F 中会議室

第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

Transcription:

第 66 回日本産科婦人科学会学術講演会 2014 年 4 月 18 日 ( 東京 ) 専攻医教育プログラム 9 骨粗鬆症 山形大学高橋一広

第 66 回日本産科婦人科学会学術講演会利益相反状態の開示 筆頭演者氏名 : 高橋一広所属 : 山形大学医学部産婦人科 私の今回の演題に関連して, 開示すべき利益相反状態はありません.

日本人の平均寿命は世界一 86.3 79.5 女性 86.3 歳 男性 79.5 歳

健康寿命 健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間 平均寿命から制限のある期間を除いた期間

平均寿命と健康寿命の差厚生労働省 次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会報告 2012 男性 女性

健康寿命を阻害する三大因子 メタボリックシンドローム ロコモティブシンドローム 内臓肥満 脂質異常症 高血圧症 糖尿病 認知症 筋力低下 骨粗鬆症 骨折 変形性膝関節症 動脈硬化症心筋梗塞 移動困難

骨粗鬆症 WHO の定義 骨粗鬆症は 低骨量と骨組織の微細構造 の異常を特徴とし 骨の脆弱性が増大し 骨折の危険性が増大する疾患である A disease characterized by low bone mass and microarchitectural deterioration of bone tissue, leading to enhanced bone fragility and a consequent increase in fracture risk.

閉経後は骨吸収が亢進する 骨量 ( 骨密度 ) 減少 骨吸収期骨形成期休止期骨吸収期骨形成期 閉経前 閉経後 エストロゲンの欠乏は破骨細胞の活性化を誘導する 破骨細胞 骨芽細胞

骨強度に及ぼす骨密度と骨質の関係 = + 骨強度骨密度骨質 70% 30% BMD 微細構造 骨代謝回転 微小骨折 石灰化 (NIH コンセンサス会議のステートメントより )

加齢による骨量の推移 YAM (young adult mean) 最大骨量骨量YAM: 若年成人平均値 (20~44 歳 ) 年間約 3% 減少 初経 閉経 10 20 30 40 50 60 70 80 年齢 ( 歳 )

BMD変化率BMD両側卵巣摘出術は術後 1 年間で 骨密度を 7.0% 減少させる Yoshida T, Takahashi K, Yamatani H, Takata K, Kurachi H.Climacteric 2011;14:445-52 (g/cm 1.4 2 ) 1.2 1.0 卵巣温存群 n=38 BSO 群 n=54 *** *** p<0.001 術前と比較 (%) 8 4 0.8 0.6 0 0.43 0.4-4 0.2 0 術前 12 術前 12 ( 月 ) -8-7.02 BSO: 両側卵巣摘出群 BMD:bone mineral density

骨粗鬆症の年代別有病率 Yoshimura N, et al. J Bone Miner Metab 2009;27:620 (%) 80 60 40 腰椎 L2~L4 男性女性 (%) 80 60 40 大腿骨頸部 骨粗鬆症患者推定 1,280 万人 男性 300 万人女性 980 万人 20 20 0 40 50 60 70 80 0 40 50 60 70 80 ~ 39 ~ 49 ~ 59 ~ ~ 69 79 ~ ~ 39 ~ 49 ~ 59 ~ ~ 69 79 ~ 年齢 ( 歳 )

女性の大腿骨頸部骨折発生率は男性の 2 倍 折茂肇, 坂田清美. 第 4 回大腿骨頸部骨折全国頻度調査成績. 医事新報 2004;4180:25 400 大腿骨頸部骨折発生率(/10,000) 0 300 200 100 女性 男性 40 50 60 70 80 90+ 年齢 ( 歳 )

骨折により死亡リスクが上昇する 骨粗鬆症の予防とガイドライン 2011 年版から抜粋 大腿骨近位部骨折椎体骨折その他の骨折 脊柱変形 姿勢異常 寝たきり 合併症消化器疾患 ( 逆流性食道炎など ) 心肺機能低下など 疼痛 QOL ADL の低下死亡リスクの上昇

臨床的骨折発生後の死亡の相対リスク Cauley JA, et al. Osteoporos Int. 2000;11,:556 すべての骨折 椎体以外の骨折 大腿骨頸部骨折 椎体骨折 6.7 8.6 前腕遠位部骨折 その他の骨折 0.3 1.0 2.0 5.0 10.0 16. 0 相対リスク (95%CI)

30 新規椎体骨折率骨折が骨折をよぶ骨粗鬆症 Lindsay R. et al. JAMA 2001;285:320 初回の椎体骨折を予防することが大事 (%) 25 20 15 10 5 (n=1076) P=0.002 (n=495) P<0.001 (n=999) 0 0 1 2 既存椎体骨折数

骨量測定からみた骨粗鬆症診断 YAM80% 未満は低骨量 70% 80% 骨粗鬆症 骨量減少 正常 YAM70% 未満 脆弱性骨折ある場合は骨粗鬆症 YAM80% 以上 脊椎 X 線像でも診断できます

骨折の危険因子 低骨密度 危険因子 既存骨折 Marshall D, et al. BMJ 1996 Johnell O, et al. J Bone Miner Res 2005 Klotzbuecher CM, et al. J Bone Miner Res 2000 Kanis JA, et al. Bone 2004 骨密度と独立した危険因子 喫煙 Kanis JA, et al. Osteoporos Int 2005 Vestergaard P. J Intern Med 2003 飲酒 Kanis JA, et al. Osteoporos Int 2005 ステロイド薬使用 Kanis JA, et al. J Bone Miner Res 2004 van Staa TP, et al. Osteoporos Int 2002 骨折家族歴 Kanis JA. Bone 2004 運動不足 Gregg EW, et al. J Am Geriatr Soc 2000 Joakimsen RM, et al. Osteoporos Int 1997 骨密度を介した危険因子 体重,BMI De Laet C, et al. Osteoporos Int 2005 カルシウム摂取 Wells G, et al. Endocr Rev 2002

存骨折危険因子別の 10 年間骨折確率 (%) 15 骨粗鬆症性骨折 10 年以内の骨折確率10 5 大腿骨近位部骨折 骨粗鬆症の予防とガイドライン 2011 年版 0 危険因子なし喫煙飲酒二次粗性骨鬆症ステ折ロ家イ族ド薬骨歴既

FRAX (fracture risk assessment tool) 今後 10 年間の骨折リスクを知る目安となる WHO の骨折リスク評価ツール WHO が開発した今後 10 年以内に発生する骨折のリスクを算出する評価ツール 骨折の危険度を評価する 11 項目の質問 大腿骨頸部の骨密度と併せて 大腿骨近位部の骨折リスクと 骨粗鬆性骨折リスクを算出

FRAX 入力画面

CQ DXA をいつ 誰に行うか? 骨粗鬆症の予防とガイドライン 2011 年版から抜粋 65 歳以上の女性 危険因子を有する 65 歳未満の閉経後から閉経周辺期の女性においては 骨折リスク評価のための骨密度検査は有効である 危険因子とは 過度のアルコール摂取 (1 日 3 単位以上 ) 現在の喫煙 大腿骨近位部骨折の家族歴である アルコール 1 単位に相当する各種酒量ビール 500 ml 日本酒 1 合 (180ml) 焼酎 100 ml ワイン 200 ml

CQ どの部位の測定が診断に有効か? 骨粗鬆症の予防とガイドライン 2011 年版から抜粋 骨粗鬆症診断には dual-energy X-ray absorptiometry: DXA を用いて 腰椎と大腿骨近位部の両者を測定することが望ましく 診断には YAM に対するパーセンテージの低い方を用いる 骨密度の測定部位は我が国では原則的には腰椎骨密度だが 国際的には大腿骨近位部骨密度が汎用される 腰椎 DXA では前後方向を測定し 側方向測定は診断に使用しない

骨代謝マーカー測定 骨代謝マーカーの測定は以下の場合に役立つ 1 治療の必要性に対する患者の理解を更に高めたい場合 2 薬物治療を予定している場合 3 治療薬の選択に役立てたい場合 4 骨粗鬆症の病態などを評価する場合骨粗鬆症の予防とガイドライン 2011 年版 骨代謝回転が亢進しているほど骨密度に関係なく 骨折の危険性が高まることから 骨代謝マーカーは骨折危険性の優れた代用指標となる ガイドライン婦人科外来編 2011

骨粗鬆症で測定される骨代謝マーカー カテゴリー検体マーカー名略語点数 血清 Ⅰ 型コラーゲン架橋 N- テロペプチド NTX 160 血清 血漿 Ⅰ 型コラーゲン架橋 C- テロペプチド CTX 170 骨吸収マーカー 血清 血漿尿 酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼデオキシピリジノリン TRACP-5b DPD 160 200 尿 Ⅰ 型コラーゲン架橋 N- テロペプチド NTX 160 尿 Ⅰ 型コラーゲン架橋 C- テロペプチド CTX 170 骨形成マーカー 血清血清 血漿 骨型アルカリホスファターゼ Ⅰ 型プロコラーゲン-N-プロペプチド BAP P1NP 170 170 骨マトリックス関連マーカー 血清 血漿低カルボキシル化オステオカルシン ucoc 170 骨粗鬆症の予防とガイドライン 2011 年版

骨吸収マーカー 尿中マーカーは日内変動がある 血清マーカーは日内変動がほとんど見られない ( ただし 血清 CTX は食事の影響を受ける ) ( スライド提供 : 横浜労災病院茶木修先生 )

骨形成マーカー 骨吸収抑制薬投与後は 骨吸収マーカーの変化に 3 ヵ月遅れて骨形成マーカーの低下が起こる ( スライド提供 : 横浜労災病院茶木修先生 )

骨粗鬆症における薬物治療 ( 骨吸収抑制薬 ) 治療開始前に骨吸収マーカーと骨形成マーカーを同時に測定 投与開始 3-6 ヵ月後に骨吸収マーカーを再測定 最小有意変化を超えて変化する 現在の治療を継続 TRACP-5b 12.4% 尿中 NTx 27.3% 最小有意変化を超えて変化しない 原因がなければ薬物変更も検討 6 ヵ月 ~1 年程度の間隔で骨形成マーカーを再測定 骨粗鬆症の予防とガイドライン 2011 年版から抜粋

原発性骨粗鬆症の薬物開始基準 ( 脆弱性骨折なしの場合 ) 脆弱性骨折なし BMD が YAM の 70% 以上 80% 未満 BMD が YAM の 70% 未満 FRAX の 10 年間の骨折確率 15% 以上 大腿骨近位部骨折の家族歴 薬物治療開始 骨粗鬆症の予防とガイドライン 2011 年版から抜粋

骨粗鬆症治療薬の推奨レベル 骨粗鬆症の予防とガイドライン 2011 年版 骨密度増加 椎体骨折予防 非椎体骨折予防 大腿骨近位部骨折予防 エチドロネート A B B C アレンドロネート A A A A リセドロネート A A A A ミノドロン酸 A A C C ラロキシフェン A A B C バゼドキシフェン A A B C 結合型エストロゲン A A A A エストラジオール A C C C 活性型ビタミンD3 A A B C カルシウム製剤 C C C C

CQ416 閉経後骨粗鬆症の予防と早期診断 治療は? 1. 骨粗鬆症予防のために運動の励行, カルシウム摂取を勧める.(B) 2. 骨粗鬆症の早期発見のためには,65 歳以上の女性, および骨折危険因子を有する 65 歳未満の女性に骨密度測定または椎体 X 線撮影を行う.(B) 3. 骨密度の測定は, 基本的に躯幹骨二重エックス線吸収法 (DXA) で行うが, 末梢骨 DXA ないしは踵骨の定量的超音波測定法 (QUS) も用いることができる.(C) 4. 骨代謝マーカーは, 薬剤の選択あるいは治療効果の評価の目的で測定する.(C) ガイドライン婦人科外来編 2011

CQ416 閉経後骨粗鬆症の予防と早期診断 治療は? 5. 治療の目的は骨折の予防であるので, 薬剤治療は骨粗鬆症の診断基準を満たさなくとも骨折危険因子を考慮して開始する.(B) 6. 薬剤治療はビスフォスフォネート製剤, 選択的エストロゲン受容体モジュレーター (SERM) を第一選択とする. (A) 7. エストロゲン ( 結合型エストロゲン,17β エストラジオール ) は, 骨代謝以外への作用に留意して使用する.(B) ガイドライン婦人科外来編 2011

まとめ 女性は男性に比較し 骨粗鬆症の有病率および骨折の発生率が高い エストロゲンの欠乏により骨吸収が亢進する 65 歳以上の女性および骨折危険因子を有する 65 歳未満の女性に骨密度測定を行う 骨密度測定は躯幹骨 DXA が望ましい 骨量減少の場合はリスク因子を考慮して治療を開始する