第 55 回神奈川腎炎研究会 アルポート症候群の一家系 1 石田典子 1 遠藤正之 1 田中寿絵 1 深川雅史 呉新村文男 1 瓊 2 症例症例 1 S.M.:8 歳, 男児 ( 腎生検時 6 歳 ) 現病歴 :5 歳時の検尿で尿潜血を指摘され, 半年後に蛋白尿も指摘されため精査目的に入院 家族歴 : 母, 姉にも蛋白尿, 血尿が認められている 身体所見 : 身長 103cm, 体重 15kg, 血圧 103/54mmHg, 眼瞼結膜 : 貧血なし, 心音 : 純, 呼吸音 : 清, 腹部 : 平坦, 軟, 下腿 : 浮腫なし 聴覚異常なし, 眼球異常なし 検査成績 :WBC 7100/ μl,hb 11.3g/dl,Plt 29.9x104 / μ l,tp 7.7g/dl,Alb 4.1g/dl,BUN 13mg/dl,Cr 0.39mg/dl, 尿蛋白 (1+),UP/UCr 比 0.24, 尿糖 (-), 尿潜血 (3+), 尿沈渣 : 赤血球 30-300/ 毎視野, 赤血球形態 : 糸球体性症例 2 R.M.:16 歳, 女児 ( 腎生検時 8 歳 ), 症例 1の姉 現病歴 :4 歳時に蛋白尿および血尿を指摘され, その後も持続しているため腎生検目的に入院 家族歴 : 母, 弟にも蛋白尿, 血尿が認められている 身体所見 : 身長 120cm, 体重 20kg, 血圧 108/60mmHg, 眼瞼結膜 : 貧血なし, 心音 : 純, 呼吸音 : 清, 腹部 : 平坦, 軟, 下腿 : 浮腫なし, 聴覚異常なし, 眼球異常なし 検査成績 :WBC 7800/ μl,hb 14.0g/dl,Plt 26.1x104/ μ l,tp 7.7g/dl,Alb 4.3g/dl,BUN 11mg/dl,Cr 0.5mg/dl,IgG 1336mg/dl,IgA 189mg/dl,C3 111.0mg/dl,C4 20.8mg/dl 尿蛋白 (1+),UP/UCr 比 0.11, 尿糖 (-), 尿潜血 (3+), 尿沈渣 : 赤血球 30-300/ 毎視野, 赤血球形態 : 糸球体性症例 3 A.M.:38 歳, 女性 症例 1,2 の母親 現病歴 :6 歳の頃から蛋白尿, 血尿を指摘されており, 健診のたびに尿所見異常ありと言われていたが定期通院はしていなかった 36 歳時, 咽頭炎後に尿所見の悪化があり,ASO 髙値, 補体低下を認め溶連菌感染後急性糸球体腎炎と診断されたが, 無治療で回復した 今回, 尿所見が安定したため腎生検目的に入院 家族歴 : 子供 2 人 ( 息子, 娘 ) に蛋白尿, 血尿を認める 両親, 兄弟の腎疾患の有無は不明 身体所見 : 身長 153cm, 体重 43kg, 血圧 112/70mmHg, 眼瞼結膜 : 貧血なし, 心音 : 純, 呼吸音 : 清, 腹部 : 平坦, 軟, 下腿 : 浮腫なし, 聴覚異常なし, 眼球異常なし 検査成績 :WBC 4900/ μl,hb 14.5g/dl,Plt 26.5x104/ μ l,tp 8.4g/dl,Alb 4.4g/dl,BUN 9mg/dl,Cr 0.61mg/dl,IgG 1776mg/dl,IgA 283mg/dl,IgM 89mg/dl,C3 85.2mg/dl,C4 17.6mg/dl, 尿蛋白 (1+),UP/UCr 比 0.32, 尿糖 (-), 尿潜血 (3+), 尿沈渣 : 赤血球 30-300/ 毎視野, 赤血球形態 : 糸球体性 (1 東海大学医学部腎内分泌代謝内科, (2 同小児科 Key Word: アルポート症候群,Ⅳ 型コラーゲンα 5 鎖染色, X 染色体優性遺伝 79
腎炎症例研究 28 巻 2012 年 図 1 図 4 図 2 図 5 図 3 図 6 80
第 55 回神奈川腎炎研究会 アルポート症候群 図 7 難聴 視力障害などを伴う進行性遺伝性疾患 Ⅳ 型コラーゲンα5 鎖遺伝子の突然変異による,X 染色体連鎖優性遺伝が多い 蛍光抗体法においてα5 鎖欠損が診断に有用 電子顕微鏡においては, 糸球体基底膜 (GBM) に特徴的変化をおこす 男性患者は幼少期から血尿 蛋白尿が持続し, 30 歳頃までに末期腎不全に至る 一方, 女性では一般に軽症で経過する まとめ 1. アルポート症候群の一家系を報告した 2. 男性例はボウマン嚢および糸球体基底膜の Ⅳ 型コラーゲンα5 染色が陰性であった 3. 女性例のα5 染色は1 例はモザイク状染色, 1 例はほぼ正常であった 4. 女性例では詳細な病歴聴取が重要である 図 8 図 9 81
腎炎症例研究 28 巻 2012 年 討論石田よろしくお願いします 東海大学腎内分泌代謝内科の石田です 今回, アルポート症候群の一家系 を発表させていただきます よろしくお願いします スライド まず症例 1 ですが, 症例 1 は8 歳の男児, 腎生検時は 6 歳でした 原病歴ですが, 検尿で尿潜血を指摘され, 蛋白尿もその後指摘されたため腎生検を行いました 家族歴ですが, 母, 姉にも蛋白尿, 血尿を認めています 身体所見ですが, 身長 103cm, 体重 15kg, 血圧は 103/54, 聴覚および眼球異常は認めませんでした 検査所見ですが,BUN が13mg/dL, クレアチニンが 0.39mg/dL, 尿蛋白は (1+) で, 尿潜血は (3+), 糸球体性の血尿を認めました スライド 光顕では, 糸球体は40 個, そのうちの 1 個に global sclerosis,1 個にボーマン嚢との癒着を認めました 個々の糸球体では, ごく軽度の mesangium 基質の増加を認めました スライド 電顕では, 基底膜に層状の変化を認めました スライド 次に免疫染色です Ⅳ 型コラーゲンα -2 とα -5の二重染色で,α-2 は赤,α-5 は緑色に染色されます こちらのほうが正常腎で, こちらのほうが患腎です 正常腎においては, 基底膜はα -5が結合して緑色に 一方 mesangium 基質はα -2により赤色に染色されます 一方ボーマン嚢は両抗体が染まるため, 中間色である黄色に染まります こちらは患腎ですが, 本症例では, 基底膜およびボーマン嚢のいずれもⅣ 型コラーゲンα-5 が染色されず,X 染色体, 優性遺伝のアルポート症候群と診断しました スライド 次に症例 2 です 症例 2 は16 歳の女児で, 腎生検時は 8 歳, 症例 1 の姉です 原病歴ですが,4 歳のときに蛋白尿と血尿を指摘され, その後も持続しているために腎生検を施行しました 身体所見ですが, 聴覚, 眼球 を含め異常所見は認めませんでした 検査所見では,BUN が11mg/dL, クレアチニンが0.5mg/dL, 尿蛋白が (1+) で, 尿潜血は (3+) で, 糸球体性の血尿を認めました スライド 光顕では, 糸球体は32 個, そのうちの2 個がglobal sclerosis となっており, 個々の糸球体では一部の糸球体にごく軽度の mesangium 基質の増加を認めました スライド 電顕では, 糸球体基底膜の網目状の変化を認めています スライド 免疫染色では, 基底膜のα-5 が部分的に消失しています そのためモザイク状に染色され,X 染色体性のアルポート症候群と診断しました スライド 症例 3 は,38 歳の女性 症例 1,2 の母親です 原病歴ですが,6 歳のころから蛋白尿と血尿を指摘されていましたが, 特に定期通院はされておりませんでした 36 歳のときには, 溶連菌感染後の急性糸球体腎炎と診断されていますが, この後に尿所見が安定したため, 今回腎生検を行いました 家族歴ですが, ご両親や兄弟の腎疾患の有無は不明です 身体所見では, 聴覚および眼球異常を含め, 特に異常所見は認めませんでした 検査所見ではBUN が9mg/dL, クレアチニンが 0.61mg/dL,IgA が 283mg/dL,C3 が 85.2mg/ dl,c4 は17.6mg/dL, 尿蛋白は (1+) で, 尿潜血が (3+) で, 糸球体性の血尿を認めました スライド 光顕では, 糸球体 8 個のうち, 分節状硬化を呈するものが1 個で, 糸球体は軽度のmesangium 基質の増加と,mesangium 細胞の増加を認めました スライド 次に免疫染色ですが, 糸球体の mesangium 領域にIgA が (2+) と沈着し,IgA 腎症の診断となりました しかし, 本症例では家族歴からアルポート症候群が強く疑われたため,α-2 とα-5 の二重染色を行いました 結果は, このようにほぼ正常に近い所見でしたが, ごく一部にα-5 の染色が薄い部分が観察され 82
第 55 回神奈川腎炎研究会 ました よって, この症例では,IgA 腎症のほかに,α -5の免疫染色だけでは診断には至りませんが, 明らかな家族歴から, この方もアルポート症候群と診断することができました スライド アルポート症候群は, 難聴や視力障害を伴う進行性の遺伝性疾患です 糸球体の基底膜に特有の変化を示すことが特徴です 頻度は 5 万人に 1 人といわれています 原因としては,Ⅳ 型コラーゲンα-3,4,5 のいずれかの遺伝子異常が明らかにされています 遺伝形式には,X 染色体連鎖の優性遺伝のほかに, 常染色体の劣性遺伝, 常染色体の優性遺伝があります このうちの約 80パーセントがⅣ 型コラーゲンα-5 の突然変異によるX 染色体の優性遺伝とされています EKSCA のコホート研究では,40 歳までに末期腎不全になる確率として, 男性では90パーセント, 女性では12パーセントと報告されております スライド この家系におけるまとめと考察ですが, まず症例 1 の息子さんでは, 明らかに糸球体, およびボーマン嚢のⅣ 型コラーゲンα 5が陰性であったことからX 染色体優性のアルポート症候群と診断できました 症例 2 の娘さんのほうでは, 同染色で, モザイク状に染色されたため, アルポート症候群と診断できました 当然のことながら, 息子さんのY 染色体はお父さんの Y 染色体から,X 染色体に関してはお母さんの X 染色体から来ており, 母親のX 染色体の片方にアルポート遺伝子が存在するということがいえます ここで, 母親と娘の遺伝型を比べてみますと, 片方の X 染色体が正常で, 片方がアルポート遺伝子を持った X 染色体となります このように二人とも同じ遺伝型であることが分かります しかし, 先ほどお示ししたとおり, 二人には α 5の発現に差がありました 一つ前のスライドでお話ししましたが, 女性では軽症から末期腎不全まで予後に差があるとされています その理由としていわれているのが,lyonizationと いう一方の染色体が不活化される現象です 女性の性染色体は2 本ありますが, 過剰な遺伝子の発現を避けるために, 片方のX 染色体を不活化しています どちらのX 染色体が不活化されるかは全く無作為に決められ, また, いったん不活化されると, その染色体は活性化されません 女性においては, この現象が胚発生時に各細胞で決定され, その子孫となる細胞もその情報が引き継がれます よって, 正常なX 染色体の活性が多ければ多いほど, 正常に近く軽症となり, アルポート遺伝子を多く持つX 染色体が多く活性化された場合は, 予後が不良となります 余談ではありますが, 三毛猫のまだら模様も同様の現象とされております スライド まとめですが, 今回, アルポート症候群の一家系を報告しました 男性例では糸球体, およびボーマン嚢のⅣ 型コラーゲンα5 の染色が陰性であり, アルポート症候群と診断されました 女性では,α5 の染色は1 例はモザイク状の染色,1 例はほぼ正常でありました 女性例では,3 年目のように詳細な病歴聴取により, アルポート症候群の診断となる場合もあり, 病歴聴取が重要であると考えられたため, ここに提示させていただきます ありがとうございました 乳原どうもありがとうございました 親子で三人をきちんと評価されたということで, 貴重な発表だと思います 何かございますでしょうか 安田聖マリアンナ医科大学の安田です 皮膚生検でもモザイクが基底膜のところで分かると言われているのですが, 腎臓と大体同じような比率でモザイクになったりするのかと思いました 腎臓だとどうしても重なりで, モザイクが分かりにくいときもあるので, 皮膚のほうがより分かりやすいかなと思います もしこの症例で皮膚生検もやっていて, 同じような比率でしたというようなのが分かったら教えていただきたいと思います 83
腎炎症例研究 28 巻 2012 年 石田ありがとうございます この症例では皮膚の生検はしておりませんので, ちょっと分からないのですけれども 乳原何かございますでしょうか モザイクパターンというのは, 女性によく見られる所見だということですが, 母親のほうが弱いということもあり得るのですか 今ので説明できるのでしょうか 石田そうですね それはできると思います 乳原よろしいでしょうか ではまた, 病理のお話を聞いた後, ディスカッションしたいと思います 重松じゃあ, 重松のスライドを出してください アルポート症候群ということで, 非常に貴重な症例を見せていただきました ありがとうございました デモンストレーションは, お母さんのほうから始めたいと思います スライド 01 これは, 母親のbiopsy で, この中で大きく見て, 九つの糸球体のうち, 二つが FGSという状態に入っている 後の糸球体は, 軽度の mesangiumに変化ある糸球体です スライド 02 まず,FGS 的な変化を示した二つの glomerulus こちらはちょっとはっきりしませんけれども, ここにあまり変化の強くない糸球体 この二つが基質の分節性硬化を伴っています スライド 03 同じ所をPAM で見ますと, これは FGSと言っていいだろうと この二つの分節性硬化性病変がある FGS というのは, アルポート症候群のときに取る一つの形でもあります スライド 04 しかし, この症例では, ここは FGS 的な硬化を示していますが スライド 05 これもそうですね スライド 06 ここでは, 癒着病変があって, ちょっと腎炎的な変化が強く出ております スライド 07 それで, コントロールに比べますと, 僕が見ると正常じゃないかというふうな印象だったのですけれども, やはり, 解析をすると, 一部,α 5コラゲンの表出の欠損がある という所見です スライド08 ところが, この症例では,IgA が, ご覧のようにかなり有意に糸球体に出ておりますので, これはIgA 腎症というものが, アルポート症候群に合併して起こっているというふうに解釈できるのではないかと それで,FGS 病変もそうですし, 癒着病変もIgA 腎症の一つの表出だというふうな見方もできると思います スライド09 お母さんのほうには電顕がなかったので, これ以上ディスカッションできませんが, 今度は息子さんのほうです 40 の glomerulus があって, ほとんどはっきりした変化がありません ほかに三つほどinmature な glomerulus がありました そのFGS 的所見を示す糸球体はここに書いていませんけれども, FGSを示唆するような所見が, 一部の糸球体に見られました それをちょっと出しましょう スライド10 それがこれです これは, inmature な糸球体がinvolution というか, 硬化していく過程だということも一方で考えられると思います スライド11 ところがこれをPAM 染色でやると, 係蹄上皮細胞が活発で, むしろ増殖している そして, 係蹄はcollapse になっています だから,FGSの亜型のcollapsing variant を思わせるような, この一つの糸球体だけを見るとそういうふうな印象を持てる つまり,FGSの形になる前の変化だといえると思います スライド12 それからもう一つは, このtip lesion です proximal tubule の上皮と, この係蹄がちょうどせめぎ合いをして, 癒着ないし衝突している こういう所見もFGSのときには, tip lesion として見つかりますので, このアルポート症候群の糸球体が荒廃していく一つのプロセスとしてFGSのタイプを採るものは, こういうふうなかたちで説明できるのではないかという気がいたしました スライド13 この症例は, 説明のとおり,α 5 の表出が全く見られない スライド14 そして, 電顕像を示していただ 84
第 55 回神奈川腎炎研究会 くと, 典型的な所見で, アルポート症候群の基底膜像はこういうふうに一見厚いのですけれども, 緻密層の中がすかすかになっていて, 基質の間に丸い vesicleが見えるということです それから GBM がずっと細くなって, ここでは上皮細胞の一部が潜り込んできて, 恐らくここに基底膜の欠損があるんでしょうね そして, 内皮と接触しかかっているような場所があります こういうふうな, 基底膜の異常が, 息子さんのほうはよく出ているということです スライド 15 ここもlayeringがかなりよく出ています それでもまだ変化としてはdiffuse に出ているということは言えず, かなり部分的な現れ方をしております スライド 16 それから娘さんです 22の glomerulus があります ここでもちょっと FGS 的な糸球体の異常が見られます スライド 17 ここは完全な糸球体硬化が起こっています こちらの糸球体は特に強い変化はありません スライド 18 中に, こういう形でcollapse 気味の glomerulus の外側に活発な, いわゆる podocytic の cellular lesionみたいなものがあって,collapsing variant 的な所見を呈しています スライド 19 一部はpolar hyalinosisを思わせるような所見もちょっとある スライド 20 これはPAS 染色です この血管極のところに基質の増加が部分的に見られる スライド 21 この症例は, 一部欠損しているところ, 出ているところもあるということで, モザイクパターンであるということです スライド 22 この症例では, 弟さんに比べるとずいぶん軽いのですけれども, やはり基底膜 α 5の異常がある程度見られました スライド 22 ちょっと薄いGBM で,thin basement membraneと言ったほうがいいかもしれないような所見がありました スライド 23 ということで, 付け加えることはあまりありませんけれども, この症例では, アルポート症候群の進行がFGS 的な展開を取 る可能性があるのではないかということをお話ししました 以上です 山口私もあまり追加することはありません アルポート症候群でいいのだろうと思います ですからあまり問題はないです IgA 腎炎がアルポート症候群にどのぐらいacquired な腎炎が合併するのか なかなか少ないように思います スライド01 息子さんで, 糸球体は, いつもアルポート症候群のときにどういう, 今, 重松先生からFGS like につぶれていくとは言われてはいるのです そういうふうに考える人もいるし,clonic piel みたいにちょっとボーマン嚢が厚くなって, 糸球体がcollapse してくる こういう円柱に伴う間質炎なのかもしれないのですが, ご承知のようにα5 は,distalのTBMには α5 が通常はあるわけです そうすると, アルポート症候群で息子さんの場合は完全欠損していますから,α 5 がないのです そういうものが, 間質のfoamcell とか, いろいろなものに, 間質炎とつながってくるのかどうか その辺はよく分かりません なぜ,α5 がdistalにあるのかも, 長田先生に後で聞きたいと思っています 理由を教えてください スライド02 こういうように少し尿細管間質病変があるのです つぶれた糸球体が出ていますから当然それに随伴しているのですが, 何かちょっと変にfibrous なところがあったので, ついでに撮りました ちょっと変に, 近位尿細管が foamy になっています スライド 03 それから, こういうつぶれです peritubular fibrous と, 糸球体のcollapse でつぶれてきている スライド04 あと, 僕も, 光顕でアルポート症候群を示唆する所見は何なのかなと見ることはあるのですが, 一つは, この血管腔がちょっと硬い感じなのです それから細かい 非常に細かいのです 大小不同がある そんなことを言ってもちゃんとした所見がなければ誰も言わないわけですが, そういう collapse もあります 85
腎炎症例研究 28 巻 2012 年 けれども, どうも何となく硬くて, 毛細血管腔が細かいという印象はあります スライド05 無理やりそういうふうに見れば, 小さな血管腔ができてきている できたのかどうか分かりませんけれども, 非常に細かい, 硬い感じがするという印象です スライド06 これは( 00:03:53 / 一語不明 ) lision かもしれませんけれども,FGS にはなっていないです スライド 07 同じような感じです 血管腔が大小あって, 非常に小さい血管腔が見えている ですから, 何となくのびのびした正常なものとはちょっと違うかなという印象です これは, お姉さんのほうですけれども, 似たような感じです スライド 08 先ほど重松先生が, これはどういう感じで,periglomerular fibrosis が強いのです ですから, どうしてこういう虚脱型でつぶれてくるのか分かりません スライド 09 お母さんは, 確かにperihilar hyalinosis のかたちでちょっと IgA がかぶってきましたので, また,mesangium のマトリックスが増えているように思います スライド 10 これはpara mesangial depositがどこかにあると思って見たのかもしれないですね ちょっとあまりはっきりしないです スライド11 それで,α5 とα2 のコンビネーションで, 女性はこれでいいと思う 母親がどうかという問題で, 一つはよく分かりません ただ, 一つの可能性としては, ボーマン嚢も欠損するのです それから,distalのTBMも欠損します ですから, これは, ボーマン嚢が一部ここら辺は赤いので, ボーマン嚢が一つ参考になるのかなと ちょっと係蹄のほうは, 撮った人でないと分からないみたいです よく見ていると, どこかで欠損している部分があるらしいというのは, 見ている人ではないと分からない場合もあるらしいです ですから, 非常に軽いことは事実ではないでしょうか スライド 12 息子さんの, われわれもよく thin membrane とアルポート症候群をどうやって区別つけるかで, 時々困る場合があります ベースはthin なんです 一つは上皮側の angulation, でこぼこがある それから,thin membrane でもこういう断裂を見ることがある 形成異常で断裂を見ることがあります それから,lamina densa のsplittingとか, 網状かというのが, 部分的に徐々に ですから, もうちょっと息子さんが若いと,thinだけで区別できない場合があります もちろん,α5 を見れば分かるわけですが スライド13 これがお姉さんです このようにきれいなんですが, 一部少し, 先ほどdensa granular で, 少し厚ぼったい感じのところに, thin のところもずいぶんあるのです ですから, 肥厚が不規則に見られる それから上皮側やや angulation がある angulation というかでこぼこがある フラットじゃない, でこぼこがある それから, 何となく顆粒,densa granular というか, 小さなvesicle が基底膜内に見られるというだけで, なかなか電顕だけで判断するのは難しい場合があります スライド14 お姉さんで, やはり薄いのがベースです そうすると, これだけ見せられるとthin membranes と区別がつかないのですが, ちょっとでこぼこがあるかな それから,fusion が部分的にある もちろん,thin membranes でも時々 fusion が出てくるのです そうすると, いよいよ成人の場合は,thin membranes なのか, アルポート症候群なのか区別がつかない場合があります 一つはこういうでこぼこで, 肥厚が部分的に見られる これは虚脱もあるので, 何とも言えません densa granular がある スライド 15 そういうようなことで, アルポート症候群で珍しいのですが, 母親はIgA が合併している X-linked dominant なアルポート症候群でいいのだろうと思います スライド16 Gubler 先生が, レビューでいろいろなものを出しています 最近は, 僕も知ら 86
第 55 回神奈川腎炎研究会 なかったのですが,lamininの欠損で,Pierson syndromeというのが最近見つかったらしいです だから,Ⅳ 型コラーゲンだけではなくて, lamininのほうの異常です スライド 17 これは皆さんご承知のように, Autosomalの場合は,3と4 が具合が悪くて, X リンクの場合は,5ですよね そうすると, Xq22,2 番目の染色体のq のこちらはAutosomal で, もう一つは HANAC syndromeというのがあるそうです スライド 18 これは,α1 と,α3 と,α5 を染めています ですから,Autosomalなかたちですと, ボーマン嚢とdistal のα5 が残っているということで,α3,4の異常であるということが分かるのですが,α1,α2 ですと, いずれも陽性に出てきてしまうということです ただ, 今, いろいろなacquiredの腎障害で, 実際に GBM を糖尿病とかいろいろなもので染めてみると, 相当変化があるのではないかというふうに考えているのですが, 誰もまだやってくれませんので, ぜひ誰が, 興味のある方はやっていただければなと思いました 以上です 乳原どうもありがとうございました ただ今, 病理からの発表が終わりまして, 何かございましたら 長浜横浜市大病院の長浜と申します 突飛な質問で申し訳ないのですが, 乳原先生も最後に質問していたのですけれども, 母親があれだけ染まっていて, 子どもがあれだけ染まっていないというのは, もちろんライオナイゼーションでいいのかもしれないのですけれども, 僕が思っているのは, 父親から何か来ているのではないかと思うのです ライオナイゼーションは, 確かエピジェネティックな変化だと思うのです 腎炎ではなくても, がん家系であるとか, そういうエピジェネティックな変化を示唆するような家族歴がないかどうか, 教えてください 石田ありがとうございます 一応, 聞いた限りでは, 家系の中で何かあるような疾患は全く ありませんでした 長浜ありがとうございました 乳原おばあちゃんは大丈夫なんですかね 出てこなかった 石田はい, 特に 出ていないです 乳原どうぞ 上杉筑波大学病院の上杉です 福岡大学にいたときに, アルポート症候群ありの光顕を一緒に見ているときに, アルポート症候群を疑う所見とは, 山口先生が言われたように係蹄が張っていない, 小さい, きれいに輪郭を追えないか, くちゃくちゃっとしているような感じがするといわれました 確かに, この症例も, 息子さんのほうはかなり係蹄がくちゃっとしていて, お姉さんのほうは部分欠損なので, 割と係蹄が開いているような感じがしました 山口先生の言われているとおりと思いました それと, 先生方に質問なのですけれども, アルポート症候群のときにはfoamcell が出現が多いのですけれども, この症例はfoamcell が出現していなかったでしょうか 山口私が見た感じでは, まだ出ていなかったです 場所にもよる 脾膵境界の辺りにすごく foamcell が出やすいですよね だから, ちょっと見かけなかったです 重松先生はどうだった 重松特に見なかった 山口じゃあ, まだ出ていないのかもしれないです 乳原蛋白尿がどうも三人とも少なそうですけれども, 蛋白尿との関係とかは あと, そのほか, 小児科の先生いらっしゃいますか いないですか きれいな症例を見せていただきまして, とてもいい勉強になったのですが, 何か一言言っておきたいという方はございますでしょうか よろしいでしょうか じゃあ, どうもありがとうございました 87
腎炎症例研究 28 巻 2012 年 重松先生 _01 重松先生 _06 重松先生 _11 重松先生 _02 重松先生 _07 重松先生 _12 重松先生 _03 重松先生 _08 重松先生 _13 重松先生 _04 重松先生 _09 重松先生 _14 重松先生 _05 重松先生 _10 重松先生 _15 88
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