腎炎症例研究 32 巻 2016 年 検査所見 初診時 生化学 血算 WBC Hb Ht Plt 9300 (/μl) 16.8 (g/dl) 47.5 (%) (/μl) TP Alb Na K Cl㻌 㻌㻌 BUN 㻌 㻌 Cr 㻌㻌 UA GOT 㻌 㻌 GPT 㻌 㻌 TG T

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1 2 2 ANCA pouci immune IgG C3 ANCA 68 '01 '02 7 UN 14mg/dl, Cr 0.7 mg/dl, -, - ' UN 45mg/dl, Cr 2.4 mg/dl, Ht 29.5%, 4+, cm 61

/12/28 UP 3+, TP 4.2g/dl, Alb 1.9g/dl PSL 50mg/day 1/17 PSL 45mg/day PSL 2006/4/4 PSL 30mg/day mpsl mpsl1000mg 3 2 5/ :90 / :114/64 mmhg

腎炎症例研究 33 巻 2017 年 Tac3mg (12時間トラフ3 7ng/ml) (mg/dl) mpsl PSL40mg (g/dl) 0.5g (g/gcr) HbA1c 8.0 蛍光顕微鏡所見 LDL-apheresis計12回施行 治療経過 PSL40mg PSL20mg PSL5mg

第 58 回神奈川腎炎研究会 血清 CRP 0.03 mg/dl IgG 488 mg/dl IgA 195 mg/dl IgM 164 mg/dl C3 121 mg/dl CH /ml ASO 51 入院時検査所見 2 RF 8.2 IU/mL 抗核抗体 陰性 HBsAg 0.1

第 64 回神奈川腎炎研究会 液検査所 症例49歳男性 算 現病歴 7年前から糖尿病 糖尿病性網膜症 圧を指摘され 近医 で内服加療を受けていた 3か 前から下肢の浮腫を 覚し 徐々に全 の浮腫が増悪し たため当院受診した 体重は浮腫発症前は95kgであったが 123kgに増加していた 1か 前は尿

59 20 : 50 : : : : : 2 / :20 / 25 GTP /28 5/3 5/4 5/8 6/1 1 7kg 6/9 :178.7cm :68.55kg BMI:21.47 :37.3 :78 / :156/78mmHg 1

腎炎症例研究 27 巻 2011 年 図 1 図 2 入院時検査所見 (2008 年 8 月 ) 尿所見 比重 ph 6.0 蛋白 3+ 潜血 3+ RBC >51 /HPF 顆粒円柱 1-3 /WF 蝋様円柱 1-3 /WF 赤血球円柱 1-3 /WF 尿蛋白 /Cr 比 4.5 g/

1996 papilloma virus 2001 Bowen AIHA PSL1mg/kg BMA PRCA parvovirus B19 PVB19 DNA PCR PV IgM 4 PVB19 PRCA MAP PVB19 DNA DNA PR

第 60 回神奈川腎炎研究会 低補体血症が持続する膜性増殖性糸球体腎炎 3 型の小児の 1 例 1 丸山真理 1 齋藤陽 1 小林久志 2 小池淳樹 1 村田俊輔 3 生駒雅昭 はじめに小児の膜性増殖性糸球体腎炎 ( 以下, MPGN) は一般に予後良好とされているがその多くは 1 型と考えられてい

腎炎症例研究 27 巻 2010 年 図 2 図 3 入院時検査所見 尿検査 PH 5.0 比重 蛋白 (3+) 潜血 (3+) 糖 (-) ケトン (-) 白血球 (1+) 白血球 /HF 赤血球 /HF 硝子円柱 2+ 顆粒円柱 1+ 細菌 1+ 尿中 β2m

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腎検体の標本作製と染色

第 66 回神奈川腎炎研究会 検査所見 < 尿定性 > 尿蛋白尿糖尿潜血 < 尿沈渣 > 赤血球白血球扁平上皮硝子円柱上皮円柱顆粒円柱卵円形脂肪体 (4+) (±) (3+) 多数 多数 (1+) /HPF /HPF /HPF /HPF /HPF /HPF

第 55 回神奈川腎炎研究会 アルポート症候群の一家系 1 石田典子 1 遠藤正之 1 田中寿絵 1 深川雅史 呉新村文男 1 瓊 2 症例症例 1 S.M.:8 歳, 男児 ( 腎生検時 6 歳 ) 現病歴 :5 歳時の検尿で尿潜血を指摘され, 半年後に蛋白尿も指摘されため精査目的に入院 家族歴

腎炎症例研究 32 巻 2016 年 肉眼的血尿が出現し急速に腎障害が進行した糖尿病性腎症の一例 1 阿部哲也 1 高橋遼 1 竹内和博 1 村野順也 1 竹内康雄 1 青山東五 1 島田芳隆 1 鎌田真理子 1 内藤正吉 1 関本恵子 1 正木貴教小川みゆき 1 佐野 1 隆 2 病理コメンテータ

第 59 回神奈川腎炎研究会 入院時身体所見 血算 WBC RBC Hb Ht Plt Cl Ca IP AST ALT LDH ALP CRP Glu TG Tchol LDL-C /μl /μl g/dl % /μl 血液ガス 静脈

ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

WBC 5700 / l Gran 58.5% Lym 29.0% Eosin 0.3% RBC 499x10 6 / l Hb 14.8 g/dl Hct 44.40% PLT 15.3x10 3 / l PT 157% Fbg 616 mg/dl DD 0.99 g/ml GOT GPT LDH

第 59 回神奈川腎炎研究会 ブシラミン内服開始後に発症した半月体形成を伴う膜性腎症の一例 眞部俊伴野麻悠子大島康子波多野道康 症 例 考 察 症例 :76 歳女性 主訴 : 浮腫 既往歴 :25 歳時 : 妊娠高血圧症候群 家族歴 : 兄 : 関節リウマチ 生活歴 : 喫煙歴なし, 飲酒歴ほぼなし

1 8 ぜ 表2 入院時検査成績 2 諺齢 APTT ALP 1471U I Fib 274 LDH 2971U 1 AT3 FDP alb 4 2 BUN 16 Cr K4 O Cl g dl O DLST 許 皇磯 二 図1 入院時胸骨骨髄像 低形成で 異常細胞は認め

腎炎症例研究 29 巻 2013 年 入院時血液, 尿検査所見 ( 生化学 ) BS 98 mg/dl T-Bil 0.5 mg/dl AST 23 IU/l ALT 7 IU/l LDH 251 IU/l ALP 115 IU/l TP 6.0 g/dl ALB 2.5 g/dl T-cho 33

腎炎症例研究 26 巻 2010 年 着を一部に認める 糸球体病変はメサンギウ ム細胞 基質の軽度増加を認めた 毛細管係 蹄の変化を認めず 尿細管炎を認め 間質は 混合性の細胞浸潤があり 一部に線維化を伴 う 2 回目 最終発作から 6 ヶ月後 24 個中 14 個で糸球体硬化像を認めた 硬化 を伴

腎炎症例研究 27 巻 2011 年 診断と治療に苦慮した C 型肝炎合併のネフローゼ症候群の一例 和 田幸寛 武重由依 竹島亜希子 吉 田典世 伊藤英利 緒方浩顕 衣 笠えり子 症例症例 :46 歳男性主訴 : 呼吸苦と全身浮腫現病歴 :1994 年に C 型肝炎ウイルス (HCV) による慢性肝

4氏 すずき 名鈴木理恵 り 学位の種類博士 ( 医学 ) 学位授与年月日平成 24 年 3 月 27 日学位授与の条件学位規則第 4 条第 1 項研究科専攻東北大学大学院医学系研究科 ( 博士課程 ) 医科学専攻 学位論文題目 esterase 染色および myxovirus A 免疫組織化学染色

第 54 回神奈川腎炎研究会 図 1 図 4 図 2 図 5 図 3 図 6 101

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10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

第 52 回神奈川腎炎研究会 膜性増殖性糸球体腎炎様の多彩な光顕所見を呈したネフローゼ症候群の一例 1 高橋大栄 1 西垣啓介 1 青柳誠 2 津浦幸夫 1 坂本麻実 1 森崇寧 1 田中啓之 3 長濱清隆 1 吉田和香子 1 安藝昇太 1 田村禎一 はじめに今回われわれは, 膜性増殖性糸球体腎炎様

第 63 回神奈川腎炎研究会 Laboratory findings on admission㻌 1 Urinalysis Specific Gravity ph Occult blood Protein Glucose (2+) (3+) (1+) 各種検査 Protein C

腎炎症例研究 27 巻 20 年 図3 胸部 CT 図5 図4 図6 Masson Trichrome 入院時検査所見 血算 WBC RBC Hb Hct Plt 凝固系 APTT PT PT-INR 生化学 TP x x 04 /μl /μl g

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

腎炎症例研究 27 巻 2011 年 図 5 HE 染色 図 8 図 6 図 9 IgM 図 7 図 10 C4 52

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腎炎症例研究 32 巻 2016 年 症例 88 歳女性 主訴 食欲不振, 背部痛, 発熱 現病歴 入院 2カ月前は腎機能障害や尿異常の指摘なし. 2 週間前から食欲不振,1 週間前から背部痛が出現した. 当院受診し, 冠攣縮性狭心症の疑いで入院になった. 入院時にCr 1.8 mg/dl,crp

第 62 回神奈川腎炎研究会 尿定性 尿比重 尿 ph 5.5 尿蛋白 (3+) 尿潜血 (2+) 尿沈査赤血球 /HPF 白血球 5-9 /HPF 扁平上皮 1-4 /HPF 尿細管上皮 0-1 /HPF 硝子円柱 多数 /WF 上皮円柱 5-9 /WF 顆粒円柱 1-4

九州支部卒後研修会症例

腎炎症例研究 29 巻 2013 年 した その約 1 週間後の外来でCr 1.32 mg/dl (egfr 43 ml/min/1.73 m 2 ) と腎機能の急激な低下を認めたため, 加療目的に7 月中旬に再入院とした メチルプレドニゾロン (mpsl) パルス500 mg 3 日間を2クール行

行対象症例の選択方針が内外で異なるためと考えられており ヨーロッパ諸国の中でも腎生検を比較的活 発に行っている地域では本症の発現頻度が高いこととともに 無症候性蛋白尿 血尿の比率が高くなってい る 5. 合併症 高血圧 ネフローゼ症候群を呈する場合は脂質異常症 慢性腎不全に進行した場合は 腎性貧血

所見診断のすすめ 腎臓の正常構造と糸球体病変のとり方 所見診断から挙げるべき鑑別診断 所見診断 : 主に光顕所見のみで行う診断最終診断 : 光顕に加えて 蛍光および電顕所見 臨床経過を加味した診断 疾患名や疾患概念を知らなくても記載ができる 最終診断は臨床医に任せ 他の業務に時間を割くことができる

第 39 回神奈川腎炎研究会 膜性増殖性糸球体腎炎に糸球体および細動脈 内皮細胞障害を伴った一例 牧 橋 守 小 野 本 屋 林 武 志1 ヒロコ 1 利 佳1 豊1 和 岸 坂 重 達 彦1 由美子 1 本 尚 登1 松 秀 一2 田 羽 長 鎌 村 場 田 素 貢 子1 泰1 壽1 血圧は 16

2 章 +αの 情 報 に 着 目 する! 1 血 球 算 定 検 査 結 果 2 生 化 学 検 査 結 果 手 がかりに 乏 しいのも+α 1 症 例 をみてみよう! 1 60 吉 見 祐 輔 percutaneous coronary intervention PCI

人間ドック結果報告書 1/5 ページ 所属 : 株式会社 ケンコウタロウ健康太郎 様 性別 / 年齢 男性 / 49 歳 生年月日 昭和 40 年 3 月 17 日 受診日 平成 26 年 5 月 2 日 受診コース 人間ドック ( 胃カメラ ) 問診項目 今回前回前々回平成 26 年 5 月 2

情報提供の例

腎炎症例研究 27 巻 200 年 図 図 2 血液検査 < 血算 > WBC 3500 /μl Neu 62 % Eo 4 % Baso % Mono 7.5 % Lym 25 % RBC 296 /μl Hb 0. g/dl MCV 03.4 Fl MCHC 33 % Plt 5000 / μl

腎炎症例研究 32 巻 206 年 血算 WBC 9300 /μl RBC /μl (37 加温 ) Hb 9.2 g/dl MCV 00.4 fl Plt /μl 生化学 TP 7.4 g/dl Alb 4.3 g/dl GOT 302 U/L GPT 266 U/L L

2

第 54 回神奈川腎炎研究会 図 3 図 4 検査所見 Urinalysis Prot (+) O.B (-) Sugar (-) 尿中 β 2 MG 1440 μg/l NAG 6.4 U/L CBC WBC 4900 /mm 3 Neu 67 % Eo 17 % Baso 0 % Lymph 1

最初に事後指導項目規定をお示し致します これらは 陰性スメアに対して行っております まず 取り扱い項目は要医療 要治療の 2 項目あります 要医療扱いの細胞所見は 一つ目に 炎症を伴う強度細胞異型の見られるもの 二つ目として 萎縮像に炎症を伴った強度細胞異型の認められるもの 三つ目として 核異型の伴

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第 52 回神奈川腎炎研究会 特異な細動脈病変を呈したループス腎炎の 1 例 鎌田真理子 佐野 隆 酒井健史 古谷昌子 根本千香子 渡会梨紗子 青山雅則 中野素子 内田満美子 坂本尚登 鎌田貢壽 症例症例 :32 歳男性主訴 : 手足のむくみ現病歴 : 平成 21 年 4 月初旬に咽頭痛を自覚し近医

IgG4 関連疾患 IgG4 関連疾患診断基準 IgG4 関連疾患 厚生労働省 IgG4 関連疾患に関する調査研究 班 ポケットブック版にてご覧いただけます. お問い合わせフォーム IgG4 関連疾患の診断は基本的には,

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

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腎炎症例研究 30 巻 2014 年 生化学 TP 7.0 g/dl Alb 3.0 g/dl T-bil 0.7 mg/dl AST 12 IU/L ALT 5 IU/L LDH 648 IU/L ALP 278 IU/L γgtp 39 IU/L BUN 130 mg/dl Cre 21.5 m

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血糖高いのは朝食後のため検査項目 下限値上限値 単位名称 9 月 3 日 9 月 6 日 9 月 15 日 9 月 18 日 9 月 21 日 9 月 24 日 9 月 28 日 10 月 1 日 10 月 3 日 10 月 5 日 10 月 9 日 10 月 12 日 10 月 15 日 10 月

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The Devil Is in the Details

はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

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15 検査 尿検査 画像診断などの腎障害マーカーの異常が3ヶ月以上持続する状態を指すこととしている その病期分類方法は成人と小児では若干異なり 成人では糖尿病性腎障害が多い事からこれによる CKD 患者ではアルブミン尿を用い その他の疾患では蛋白尿を用いてそのリスク分類をしている これに対し小児では

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亜急性 慢性の区別はあいまいであるが 疾患の期間がわかると鑑別疾患を狭めることができる 臨床経過に関するチェック ( 問診 ) 項目 過去の腎疾患 関連疾患の既往はないか 学校検尿での異常は 保健加入時の尿所見の異常は 職場検診での尿所見の異常は 妊娠 出産時の尿所見の異常は 扁桃炎の既往は ( 急

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

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られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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ども これを用いて 患者さんが来たとき 例えば頭が痛いと言ったときに ではその頭痛の程度はどうかとか あるいは呼吸困難はどの程度かということから 5 段階で緊急度を判定するシステムになっています ポスター 3 ポスター -4 研究方法ですけれども 研究デザインは至ってシンプルです 導入した前後で比較

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イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

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第 63 回神奈川腎炎研究会 リツキシマブが著効を示した IgA 沈着を伴った FSGS の一例 1 中澤来馬 1 呉瓊 1 伊勢川拓也 1 遠藤正之 1 小泉賢洋 1 深川雅史 2 病理コメンテータ城謙輔 山口 3 裕 症例症例 :20 歳男性主訴 : 蛋白尿 血尿現症 : これまでの学校健診で異常指摘なく経過されていた 2010 年 5 月 (16 歳 ) の学校健診で尿潜血を指摘され, 近医受診 再検にて尿蛋白 4+ と高度尿蛋白を認め当院紹介となった 受診時, 体重増加や浮腫は認められないものの, 検査ではネフローゼ症候群を呈しており, 精査加療目的にて同年 8 月に入院となった 既往歴 : * アトピー性皮膚炎 ;3 歳 * 喘息 ;10 歳 * 広汎性発達障害 ;14 歳家族歴 : 特記事項なし身体所見 : 身長 172 cm, 体重 67.1 kg, 血圧 128/76mmHg, 脈拍 69/min, 眼瞼結膜貧血なし, 眼球結膜黄染なし, 扁桃腫大なし, 頸部リンパ節腫大なし, 呼吸音清, 心音純, 腹部平坦 軟, 圧痛なし, 鼓音なし, 腸蠕動音亢進 減弱なし, 下腿 腰部浮腫なし (1 東海大学医学部付属病院腎内分泌代謝内科 (2 東北大学大学院医学系研究科病理病態学講座 (3 山口病理組織研究所 135 Key Word: ネフローゼ症候群,IgA 腎症,FSGS, リツキシマブ

腎炎症例研究 32 巻 2016 年 検査所見 初診時 生化学 血算 WBC Hb Ht Plt 9300 (/μl) 16.8 (g/dl) 47.5 (%) 237000 (/μl) TP Alb Na K Cl㻌 㻌㻌 BUN 㻌 㻌 Cr 㻌㻌 UA GOT 㻌 㻌 GPT 㻌 㻌 TG T-Cho 凝固 APTT 38 (sec) PT PT-INR㻌 㻌㻌 0.97 D D-dimer 0.6 (μg/ml) フィブリノゲン 618 (mg/dl) 5.3 (g/dl) 1.8 (g/dl) 142 (meq/l) 4.2 (meq/l) 106 (meq/l) 12 (mg/dl) 0.73 (mg/dl) 8.2 (mg/dl) 16 (U/l) 10 (U/l) 277(mg/dl) 292(mg/dl) 図1 免疫 尿一般 沈渣 IgG IgA㻌 㻌 IgM C3c C4 CH50 抗核抗体㻌 㻌 㻌 㻌 比重 㻌 㻌 㻌 㻌 比重㻌 1.025 ph㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 6.0 蛋白㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 (3+) 潜血 (2+) 赤血球㻌 㻌 㻌 㻌 10-29(/hpf) 赤血球形態㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 糸球体性 硝子円柱㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 (2+) 上皮円柱㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 (1+) 脂肪円柱㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 (1+) 一日尿蛋白推定量㻌 7.31g/g Cr㻌 㻌 感染症 図4 458 (mg/dl) 257 (mg/dl) 114 (mg/dl) 124.1 (mg/dl) 44.5 (mg/dl) 38.0 㻌 (-) 蓄尿 尿蛋白量㻌 㻌 7.50g/day Selectivity Index㻌 0.26 HBsAg㻌 㻌 㻌 㻌 (-) HBsAg HCVAb (-) IgA 図2 図5 2010年8月9日 初回 腎生検施行 図3 図6 136

第 63 回神奈川腎炎研究会 腎生検病理所見 LM 㻌 㻌 観察糸球体14個 全節性硬化0個㻌 分節状硬化2個 癒着病変0個 半月体1個 細胞性1個㻌 線維細胞性0個㻌 線維性0個 メサンギウム 細胞増殖なし 基質増生軽度あり 係蹄壁の肥厚 二重化なし㻌 㻌 㻌 管内増殖なし IF IgG (-) IgA(3+,mes) IgM(+1,mes) C3(Tr) C5(Tr) κ(+) λ(+) EM メサンギウム 傍メサンギウムへ高密度沈着物を認めた 病理診断 㻌.IgA腎症 図7 図 10 経過 1 ステロイドパルス2クール施行 CyA150mg PSL30 12.5mg 5.0 9.0 7.96 4.0 7.31 4.0 3.0 1.17 1.6 2010年 8月 2011年 3月 尿蛋白/Cr(g/g Cr) 0.92 0.77 0.78 Cr mg/dl 2012年 8月 Alb(g/dl) IgM F C3 3.0 2.0 1.0 0.32 0.31 2011年 12月 IgA 5.0 4.0 1.8 1.7 0.46 0.0 4.76 4.33 4.25 2.4 1.79 2.04 1.0 Cr mg/dl Alb g/dl 6.0 3.2 4.07 腎生検 施行 1.8 3.4 3.0 3.1 7.0 3.6 3.5 3.5 2.0 8.0 4.1 3.9 2013年 8月 2013年 5月 0.0 尿蛋白 g/g Cr 再度腎生検へ 図8 図 11 2013年8月23日 2回目腎生検施行 図9 図 12 137

腎炎症例研究 32 巻 2016 年 考察 1 腎生検病理所見まとめ 初回+2回目 初回腎生検後の臨床像と一般的なIgA腎症の経過 とギャップがあった 2回目腎生検 初回腎生検 LM 㻌 㻌 観察糸球体14個 LM 㻌 㻌 観察糸球体20個 全節性硬化0個㻌 分節状硬化2個 14 癒着病変0個 半月体1個 細胞性1個㻌 線維細胞性0個㻌 線維性0個 全節性硬化0個㻌 分節状硬化3個 15 癒着病変3個 半月体0個 細胞性0個㻌 線維細胞性0個㻌 線維性0個 IF IgG (-) IgA(3+,mes) IF IgG (Tr-liner) IgA(1+,mes) IgM(+1,mes) Weberらは FGS病変を 伴うIgA腎症では高度尿 蛋白を伴うと報告してい る IgM(2+,seg) F(1+,mes) C3(3+,seg)㻌 κ(+) λ(tr) F(+) C3(Tr) κ(+) λ(+) EM EM メサンギウム 傍メサンギウムへ高密度沈着物を認めた メサンギウム 傍メサンギウムへ高密度沈着物を認めた 病理診断 本症例も高度蛋白を認 め 初回腎生検時のFSG 病変はIgA腎症にとも なったものと考えた 病理診断 㻌.IgA腎症 㻌.巣状分節性糸球体硬化症 FSGS 㻌 㻌 㻌.IgA沈着症 Weber et al,focal segmental glomerulosclerosis in mild IgA nephropathy :a clinical-pathologic study :NDT,2008 図 13 図 16 経過 2 考察 2 ステロイドパルス療法 CyA150mg 4.0 PSL30 12.5mg 3.9 9.85 3.8 LDL-アフェレーシス 1回/週 計4回施行 7.96 2.9 6.71 2.0 1.7 4.33 2.4 4.76 4.25 1.8 リツキシマブ導入 2.2 4.65 1.9 1.8 2.95 1.70 2013年 Cr mg/dl 5月 Alb g/dl 2013年 8月 2回目 回目 腎生検施行 2013年 11月 2回目の腎生検以降の経過ではFSGSが病態の全面にでて いた可能性が高いと思われた 3.0 0.10 0.11 0.14 2014年 3月 Cr mg/dl 以上から本症例はFSGSを基盤とし IgA腎症を合併してい たと考えた 潜在的にFSGSが存在し 2回目の腎生検以降 ではFSGSが顕在化したと思われた 2.0 1.21 尿蛋白/Cr(g/g Cr) 5.0 4.0 4.13 0.87 0.0 臨床経過も高度尿蛋白やネフローゼ症候群を呈し 治療 抵抗性であった 特に 2回目の腎生検以降の経過は 治 療抵抗性であった 7.0 6.0 5.10 1.6 1.0 2回目の腎生検では光顕上 FGS病変が目立ち IFでIgA沈 着の蛍光強度は減弱していた 8.0 3.0 2.4 10.0 9.0 3.5 3.3 2014年 7月 1.0 0.0 尿蛋白 g/g Cr Alb(g/dl) 図 14 図 17 経過 3 考察 3 㻌 リツキシマブ500mg/週㻌 合計4クール施行 㻌 発熱を認め 2クール目は延期 本症例ではリツキシマブ投与によりネフローゼ症候群の寛解が 得られている CyA150mg CyA100mg CyA75mg PSL10mg リツキシマブは抗CD20モノクローナル抗体であり 特異的にB細 胞に結合し 増殖や機能を阻害する PSL15mg PSL20mg PSL30mg 2.5 31.806 11.4 2 35 Rituximab Rituximab 25 20 15 1 0.5 0 尿蛋白 g/g Cr B細胞性非ホジキンリンパ腫 関節リウマチ 多発血管炎性肉 芽腫症 Wegener肉芽腫症 顕微的多発血管炎などの治療と して用いられることが知られている 30 1.5 1.206 0.1 2014年㻌 5月2日 9月8日 9月16日 10月6日 尿蛋白/Cr CD20 2014年8月より難治性ネフローゼ症候群 頻回再発型,ステロイ ド依存性 への保険収載された 10 0 0 12月5日 5 0 CD20 陽性細胞 /μl 図 15 図 18 138

第 63 回神奈川腎炎研究会 考察 (4) Kronbichler らのレビューでは リツキシマブが成人の頻回再発型やステロイド依存性ネフローゼ症候群に対して有効性を示している ネフローゼ症候群の再発率の減少や併用されている免疫抑制薬の減量が図れる 長期的な観察での検討はなされていない Clinical and laboratory values before and after treatment with RTX 図 19 Characteristics of the whole cohort encompassing 86 patients with frequently relapsing or steroid-dependent nephrotic syndrome and underlying MCD or FSGS Rituximab Treatment for Relapsing Minimal Change Disease and Focal Segmental Glomerulosclerosis: A Systematic Review. Andreas Kronbichler,et al:am J Nephrol 2014 結語 我々はIgA 腎症を合併した巣状分節性糸球体硬化症 (FSGS) を経験した 初回の腎生検結果と臨床所見は合致しない点があり, 病態を考える上で臨床経過が重要であった 本症例では治療抵抗性 難治性ネフローゼ症候群を呈しており, リツキシマブが著効を示した 今後のネフローゼ症候群の寛解維持ができるか観察中である 139

腎炎症例研究 32 巻 2016 年 討論中澤よろしくお願いします 症例は20 歳の男性です これまで, 学校検診で異常を指摘されたことはございませんでしたが,16 歳のころの健診で, 尿潜血を指摘されまして, 近医を受診し, 尿蛋白も認められたために, 当科を受診となりました 紹介受診時に体重増加や浮腫は認めませんでしたが, 検査でネフローゼ症候群を呈しておりまして, 当科に精査目的で入院となっております 既往歴, 家族歴は以下のとおりとなっております 受診時の初診の身体所見です 体重増加や高血圧や下腿浮腫等は認めておりませんでした 検査所見ですが, ヘモグロビン ヘマトクリットは軽度上昇しておりますが, 凝固系は特に問題はありませんでした また生化では, 低蛋白血症, 低アルブミン血症を認めております 中性脂肪やコレステロールの上昇も認めており, 腎機能障害は認めておりません 尿検査におきましては, 尿蛋白は3(+), 定量で約 7g/g Cr で認めておりまして, 蓄尿でも同様の高尿蛋白を認めております ネフローゼ症候群を呈しておりました 尿潜血は2(+) で, 沈渣では尿中赤血球を1 視野当たり30 未満, 糸球体性血尿を認めておりました ほか, 特殊検査では,IgG が軽度低下しておりますが, ほかの免疫 globulinで異常を示さず, 低補体血症等を認めておりません 抗核抗体は陰性でした 入院後に腎生検を施行しております 観察された糸球体は全部で14 個ありまして, それぞれの糸球体はmesangium 細胞の増殖, 基質の増生は乏しく, 係蹄壁の肥厚や二重化等は認めておりませんでした また, このような細胞性半月体を有する糸球 体を1 個, 分節状硬化を示すような糸球体を2 個ほど認めておりました 蛍光抗体法ではmesangium にIgA を3(+) と強い沈着を認めております 電顕像です お示しましたサンプルは分節状硬化の部分ですが,paramesan-gium 領域に高電子密度の沈着物を認めております 黄色い矢印でお示ししております 以上から, 分節状硬化を有する糸球体が見られ,mesangium の変化は乏しいものでしたが, 蛍光抗体法のIgA 沈着は強いことから,IgA 腎症の診断となりました 生検後の経過です 生検後にステロイド単剤での反応性に乏しいことから, 早期より免疫抑制剤を加えて治療を行い, ネフローゼ症候群を脱することはできました しかし, 尿蛋白は不完全寛解に至っておりますが,0.5g 以下で安定することがなく, 約 1g 前後で推移しており, ステロイドの減量がしにくいような経過となっております また, 初回腎生検より3 年後にネフローゼ症候群を再発しております 初回の腎生検では, IgA 腎症の診断となっておりますが, このような臨床経過と少しギャップがあるということもありまして, 再度腎生検をする運びになっております 2 回目の腎生検の所見です 糸球体は全部で 20 個ありまして,mesangium 細胞の増殖や, 基質の増生は以前と変わりませんでした もしくは, 軽度認めるのみでしたが, 分節状硬化を示す糸球体は3 個見られ, 以前の1 回目の生検で観察されたものよりも, 明確に観察されました 蛍光抗体報では,IgA の沈着をmesangium に認めておりますが, 初回よりも蛍光強度は弱くなっている印象が強かったです IgMとC3 はsegmental に沈着を認めておりました 電顕では, 矢印でお示ししていますとおり, mesangium,paramesangium に高電子密度沈着物を認めております 140

第 63 回神奈川腎炎研究会 初回と2 回目の生検をまとめたものですが, 光顕像で分節状硬化像は初回の生検で14% 程度,2 回目の生検では15% と, 割合は変わりませんでした しかし, 蛍光抗体法ではIgA の沈着の信号強度は減弱しておりました 光顕で, 分節状硬化像が明瞭になっておりまして,IgA 沈着が軽度になっていたことから, 2 回目の腎生検は, 巣状分節状糸球体硬化症, IgA 沈着症という診断になりました 2 回目の生検後の経過になります パルスを含むステロイド療法, それから免疫抑制剤を中心として治療を行いましたが, 反応性に乏しく, むしろ治療抵抗性の傾向が強く見られるというような結果になっております ネフローゼ状態も続いておりまして, 浮腫のコントロールもつかなくなり,LDL apheresis も施行しております その後は, 尿蛋白は一時的に減少をみておりますが, 徐々に尿蛋白が増加傾向となり, リツキシマブ導入を試みる運びとなっております リツキシマブは500mgを週 1 回投与しまして, 合計 4 回投与いたしております 2 クール目を施行する前に発熱を認めたため,2 クール目は延期となっておりますが4 回施行しております B 細胞は赤線でお示ししましたとおり, 有意に低下しておりまして, これに伴って, 尿蛋白も寛解に至っておりまして, 同時にステロイドや免疫抑制薬も順調に減量できている経過となっております 考察です 初回の腎生検では, 蛍光抗体法より強いIgA 沈着を認め,IgA 腎症と診断せざるを得ませんでした しかし, 初回の生検後の臨床像は一般的なIgA 腎症の経過とギャップがありました Weber らの報告では,FGS 病変を伴う IgA 腎症は,FGS 病変を伴わないものよりも, 高度尿蛋白を認めると報告しておりまして, 当時, 本症例は高度尿蛋白を認めていたため, 初回生検時点では,FGS 病変はIgA に伴ったもの ではないかと考えておりました しかし,2 回目の腎生検ではFGS 病変がはっきりしておりまして, 蛍光抗体法でIgA 沈着は信号強度が減弱しておりました 臨床経過では, 高度尿蛋白, ネフローゼ症候群を呈し, 著明に治療に抵抗性でもありました このことから, 本症例はFSGSをベースとしておりまして,IgA 腎症を合併したものではないかと思われます 潜在的にFGSが存在して, 初回では目立たなかったものが,2 回目の生検以降でFGSが顕在化したのではないかと考えております 治療に関してですが, 本例はリツキシマブ投与でネフローゼが寛解しております リツキシマブは抗 CD20monoclonal 抗体でありまして, リンパ腫, 関節リウマチ, 血管への治療に一般的に用いられております 欧米ではさまざまな腎炎, 腎症にも使われている報告もされておりますが, 本邦では, 昨年の8 月より難治性ネフローゼの保険適用が通っております Kronbichler らの2004 年の報告では,Medline とEMBASEを中心としたデータベースから文献を抽出して, ネフローゼ症候群に対して, リツキサンの治療を行ったものも調べておりました 微小変化型が少し傾向としては多いようですが,86 人 78 人は少なくとも不完全寛解を得られており, 再発の減少や, 免疫抑制薬の減量が期待できるという結果を報告しております しかし, 観察期間を中央値は1 年前後というところで, 長期の観察の検討はまだなされておりません 本症例もリツキサン使用によりまして, ネフローゼ症候群の寛解が得られており, なおかつステロイド, 免疫抑制薬の減量が図れております 寛解維持に関しては, 今後の経過観察が必要と思われます 結語です われわれはIgA 腎症を合併した, 巣状分節状糸球体硬化症を経験いたしました 初回の腎生検と臨床の所見は合致しない点があ 141

腎炎症例研究 32 巻 2016 年 りまして, 病態を考えるうえで臨床経過がかなり重要ではないかと考えております 本症例では治療抵抗性難治性ネフローゼ症候群を呈しておりまして, リツキシマブが著効を示しております 今後のネフローゼ症候群の寛解が維持できるかどうか, 現在経過観察中というかたちです 座長どうもありがとうございます では, まず臨床経過につきまして, フロアの方から, ご質問, ご意見等がありましたら, よろしくお願いします 山口先生 山口 supar は測りました? 中澤 supar? 山口 soluble urokinase receptorの 中澤測っていないです 山口本当にFSGS がメインなら, 今, 非特異的であるという言い方もありますけれども, 尿中は比較的, 特異性が高いようなことがペーパーになっていますので 中澤尿中のもの? 山口尿中の supar です 座長はい 城先生お願いします 城 2 回目のネフローゼ再発のときのアルブミン値をもう1 回教えていただけますか 中澤 1.7です 城やはり, ネフローゼ症候群の再発ですね 中澤再発しています 座長では, 病理のコメントに移らせていただきます 山口先生, まずお願いします 山口結局,IgA をどう考えるかということなんで, 病態は恐らく臨床的にFSGS の病態と考えるのが一番妥当という感じはします ですから,IF の所見をどうとるかということです スライド 01 ちょっと糸球体の数が少ないのですが, こういうのはちょっと虚脱が強いのです そうすると, 二次的に病変がはっきりしなくなってしまって, これも虚脱が強いです FSGS 様の病変なのか IgA による癒着なのかというのが問題にはなると思います 20 歳にしたら, ちょっ と糸球体の数も少ないのかもしれません スライド 02 銀で見ますと,collapse をして, 上皮が覆っていますので, 尿細管極なのか, 癒着があるので,FSGS 様の病変,podocyte の変性剥離像もありますから, 癒着病変ではあるのですが, FSGS 様の病変を示唆する所見です スライド 03 一部血管極に近いところで, ボーマン嚢上皮側の変化なのか, 少しpodocyte が空胞変性 あまり, これはとってはいけないという話もあります artifact もあるので, こういう空胞変性と artifact との区別が難しいので, 無理にとらないほうがいいという意見もあります 尿細管は非常に育っていると言いますか, 蛋白尿が多いので, ややhypertrophic な印象です スライド 04 segmental な, 少し泡沫状の内容があって, 癒着していますから, ここも癒着はあるのですが,FSGS 様の病変を示唆しています IgA の癒着で二次的にFSGS-like になる場合もあるので, そのへんの区別はなかなか難しいように思います スライド 05 通常虚脱に伴って, よく蛋白尿が多いときは, ボーマン嚢の上皮が反応してきて, 非常にcel- lular な印象を受けることがあるので, これを crescent ととってしまうとIgA のcrescent になってしまうのですが, そうではなくてcollapse に伴うボーマン嚢の反応ととれないこともないと思います スライド 06 このIgA をどうとるかなのです 2 回目にドット型で適状に出てきて, これは普段やっている施設でどう判断するかが重要なので,IgA の pattern としても非特異的かなという感じがします 先ほどの電顕は, われわれはもらっていなかったように思うのですが, 明らかに上皮が剥離した,segmental なhyalinosis の部分の電顕像 142

第 63 回神奈川腎炎研究会 だったと思います それでparamesangiumの沈着とは言えないと思います 全体像を見ていないので, われわれには分かりません スライド 07 主体はFSGS で,mesangial IgA deposition, あるいは deposits かという印象であります スライド 09 1 回目でネフローゼを説明するだけのIgA としての所見はなかったと思います スライド 10 こちらは segmentalなhyalinosisの所見です スライド 11 massonで見て, 間質炎と尿細管の萎縮も出てきていると思います スライド 12 pseudotubulization, あるいは虚脱, 硬化ででてきているので,IgA でも見られる これは尿細管極に近いところのtip region なのか, 単なる癒着なのか なかなか区別は難しいように思います mesangium の反応はないです スライド 13 PAM で見ますと,hyalinosisを伴ってきて, globalに近いところも二次的にもちろん染み込み病変はできるので,fsgs がベースにあって硬化してきたとも考えられるし, 二次的な染み込みも否定はできない スライド 14 先ほどのところです tip 型の単なる癒着病変です スライド 15 同じような変化です スライド 16 単なる癒着もあるし,global につぶれています スライド 17 segmental に IgA 陽性です スライド 18 GBM は薄くて,podocyteの足突起の癒合もだいぶある mesangial matrix も少し増えて, endocapillaryに好中球の浸潤もあります スライド 19 deposit はそんなに際立たない IgA 腎症でも, 症例を見ていますと, どのmesangium の領域にもdense deposit がある場合もありますし, ほんの一部にしかない場合もあります 足突起の癒合と,microvilli transformation は目立っているように思います スライド 20 endocapillary 増殖の変化がある paramesangial deposit が一部に見られる mesangial matrix も増えている 血小板の集積も見られている ただ,FSGSでも, こういうsegmental に好中球の浸潤があって,FSGS 様の病変が, 移植で, early で出てくることがありますので, このen- docapillary な変化が, 即 IgA の炎症とは言えないと思います スライド 21 病態から考えると, やはりFSGSでmesangial IgA deposit と考えるのが一番いいと思います 以上です 座長どうもありがとうございました 城先生, よろしくお願いします 城問題点は,1 回目と2 回目の腎生検の時点での病態の相違について,1 回目のネフローゼがIgA 腎症で説明できるかどうか あるいは山口先生がおっしゃったような, 最初からFSGS があって, それが治療によって一旦良くなって, またFSGSが再燃してきたのか あるいは,2 回目でFSGSが発症したのか 1 回目のネフローゼがIgA 腎症で説明できるか そこらへんが問題点だろうと思います スライド 01 2010 年の1 回目のbiopsy ですけれども,IFで IgA の沈着があることを前提にしますと, 線維性半月体, そして, 糸球体毛細血管係蹄がcol- lapse を起こした周囲にFSGS 様にpodocyte が賦活してくる変化は,IgA 腎症でも見られると思います スライド 02 macrophages の浸潤がありますが,mesangium 143

腎炎症例研究 32 巻 2016 年 細胞のhypercellularity は, この糸球体にはあまりはっきりしません この糸球体は線維細胞性半月体と捉えていいと思います スライド 03 厚労省の後ろ向き研究からはじまり, 前向き研究まで,1000 例以上のIgA 腎症を見せていただきまして,IgA 腎症の大体の形態的スペクトラムは押さえているはずですけれども, これは恐らくIgA 腎症の炎症性の変化 ここにfoam cellが 1つあります 端切れですけれども, foam cellが出てきて,fsgs 様の病変です IgA 腎症でも癒着の部位にFSGS 様病変が見られることがあります スライド 04 糸球体毛細血管係蹄がcollapseを起こして, その周囲にpodocyteが賦活してくるわけです FSGS 様病変はIgA 腎症でも出てきうると思います スライド 05 ここもそうです こういうcollapseを起こした周囲にpodocyteが賦活してくる FSGS でも出ますし,IgA でもこういう変化は出てくると思います スライド 06 FSGSでも癒着を起こします IgA 腎症のときも, 癒着のところにFSGS 様の病変が出てくる スライド 07 IgA だけの染色しかありませんでしたけれども,mesangium に強い IgA の沈着があります スライド 08 1 回目のbiopsyでは,11 個の糸球体が採取され全節性硬化はなくて, メサンギウム細胞増多は 2 個 管内性細胞増多はなくて, 細胞性半月体が2 個 線維細胞性が1 個, 線維性半月体が 1 個 分節性硬化が4 個, 癒着が1 個, 虚脱が1 個というようなスコアだと思います 膜性腎症の合併はない 糸球体の腫大もありません 半球状沈着物もない スライド 09 総合しますと,1 回目の所見を見る限り, IgA 腎症においてネフローゼの合併する症態は 2 つあります 典型的なMPGNのかたちでくる IgA 腎症と, 半月体等々のactivity がネフローゼを誘導する場合の両方があると思います MPGNからくるIgA 腎症はここでは否定されると思います スライド 10 IgA 腎症の活動性病変と慢性病変, 特に分節性硬化が出てくる症例の中で,nephrotic になってくる症例はまれと思います MCNSなどの podocytopathy を合併する症例はアルブミン値がかなり低下してくる IgA 腎症からくるne- phrotic の場合は, あまりアルブミンが下がってこないということで, むしろ第 1 回の生検時のアルブミン値が1つの指標になる 形態的にはどっちに軍配を上げるというわけにはいかないと思います スライド 11 尿細管間質はそれほど強く障害されておりませんし, 動脈硬化もありません スライド 12 以上の所見から,IgA 腎症 H-grade ⅢA/Cの診断ということで,chronic とactive lesion があって, そのような病変にinvolve されている糸球体が50% 以上あります この時点でのネフローゼはIgA 腎症でも説明ができる しかし, アルブミン値が,2 回目の腎生検のときは幾つだったでしょうか 1 回目のアルブミン値は聞きませんでしたが, 私はこの情報を押さえて, 最終的な診断をしたいと思います ただ, このIgA 腎症にFSGS 病変が合併する症例に関して2011 年にKidney Int に論文があります 後で, ちょっと紹介をいたします スライド 13 1 回目の腎生検に関しては,IgA 腎症 H-grade Ⅲ A/Cでネフローゼを説明できるかどうか FSGSを主体に考えるのか,IgA 腎症を主体に考えるのかのディスカッションがあるところだと思います 144

第 63 回神奈川腎炎研究会 スライド 14 3 年後の2 回目腎生検です 活動性病変, ないしは慢性病変が強く出てきております 場所によっては,hyalinosisが強く出ている糸球体もあります スライド 15 尿細管の萎縮も強くなり, 拡大した間質には炎症細胞がかなり強く出ています IgA 腎症で, 糸球体硬化病変が強くなった周囲には, かなりの炎症が出てまいりますので, 硬化糸球体に関連した間質のリンパ球浸潤と捉えることができます この病変はIgA 腎症からくる癒着ではないかと思います スライド 16 活動性病変のあった半月体は線維性半月体に変化しておりますので,IgA 腎症が慢性化した病変がこの中にあることは確かだと思います スライド 17 尿細管の萎縮と好中球が出ているところが1 カ所ありますが, 好中球の浸潤も, 全体からすると範囲が広くありませんので, この所見は取り立てて鑑別診断に役立つfactorではないと思います 分節性硬化と硝子化病変があり, 要するに FSGS の NOS 亜型と診断してもいいと思います スライド 18 ここもそうです 2 回目では分節性のhyali- nosisが強く出てきております スライド 19 糸球体内部からはなれてperipheralなところに hyalinosisがある これもFSGS のNOS 亜型に特徴的な病変だと思います スライド 20 癒着があって, 分節性硬化があって, 炎症反応が出てくるとすれは, やはりIgA 腎症が背景にあって,IgA 腎症から来る炎症反応, すなわち管内性細胞増多も加わっているのではないかと思います スライド 21 ここなんかは, むしろFSGSというよりは, 癒着があって,hyalinosis がある, こういうのはIgA 腎症の慢性化した病変でよく見る変化だと思います スライド 22 先ほどの演者が言われたように,1 回目はぎらぎらにIgA の沈着がありましたが,2 回目は分節性,focal segmental に, あるいはdiffuse segmental にIgA が陽性である程度です C3 は, 主に血管極のvas afferent の内壁に出ております 実際には,IgA とcolocalize するようなC3 があまりはっきり見えないです スライド 23 それからC1q は陰性です fibrinogen も陰性です スライド 24 電顕ですけれども,foot process effacement は, FSGSのprimary と,secondary を見分けるときに役立つ 例えば動脈硬化が非常に強くて, benign nephrosclerosis のために,FSGS そっくりの病変が出てくるときの見分け方としては, このfoot process effacement がどの程度あるか, そして, それに伴いvillous transformation がどの程度あるかで判断します これを見ますと, FSGSのpodocytopathy の病変のように見えます ここにIgA 腎症特有のparamesangium deposit がありますが, こういう背景の下に, 電顕では,FSGSのように見えます スライド 25 これもそうです effacement がほぼ80% あります それから,podocytopathy の証拠として, このvillous transformation がかなり目立ってくるのが, もう一つの所見だと思います スライド 26 炎症反応がありますが,FSGSであっても当然 IgA 腎症が背景にあるわけですから, 管内性の炎症細胞をinduction しても一向におかしくない しかし,IgA 腎症だけでこのpodocytopa- thy の変化は説明できないと思います スライド 27 145

腎炎症例研究 32 巻 2016 年 そういうことで,2 回目のbiopsy では, 全節性硬化が1 個,mesangial hypercellularityが約 20%, 線維性半月体が12%, 逆に活動性の半月体はありません cellular crescentもない 半月体が慢性化してしまったということで, 分節性の硬化と硝子化, そして, 癒着に移行しております スライド 28 1 回目に比べて, 糸球体がやや腫大してきております 尿細管の障害も増してきておりますし, 炎症反応も強く出てきております こういう変化はIgA 腎症の進行性の病変ではありますが, 先ほど言いましたように, 電顕で見ますと, やっぱりFSGSの病態,podocytopathy の病態を合併しているのではないかと思います スライド 29 軽症型 IgA 腎症に,FSGS の合併が疑われる 診断は,IgA 腎症 histological grade 2Cになります スライド 30 1 回目のbiopsyと比較して, 今回の2 回目は, 分節性の硬化硝子化の病変が目立っている 電顕においても, 足細胞突起の消失が目立つ スライド 31 一方,2 回目の腎生検においては, 管内性細胞増多ならびに活動性半月体が見られない やはりこのネフローゼの病態は,IgA 腎症からの説明は無理だと思います このKidney Intの文献どおり,IgA 腎症にFSGS の合併がある症例のように思います スライド 32 免疫染色では,IgA 腎症型です 免疫グロプリンA,M,C3の tripletで,c1qが陰性 軽症型のIgA 腎症が合併していることは確かで, このことが管内性病変をinductionしてもおかしくないと思います スライド 33 C3,IgM,C1qは, 動脈内膜の浸出性病変で出てくる変化だと思います スライド 34 電顕的には,villous transformation ならびに, 足細胞脚突起の消失が広範ということで, 軽症型 IgA 腎症にFSGSの合併が疑われるという診断です Kidney Int の論文というのは,IgA 腎症研究の仲間では比較的有名な論文です フランス一派 (Gary Hill) が出している,FSGS 病変が IgA のprogression に関係するという論文です その病態は,FSGSの病変というよりは,IgA 腎症の活動性病変に見えますけれども, 足細胞の形態がFSGS 型であるという 最初にこの論文を読んだときに,IgA 腎症の活動性病変によりnephrotic になる症例とどうやって見分けるのかが, 疑問視される論文のように, みておりました FSGS 様病変がIgA 腎症に出現する症例は非常にたくさんあるわけで,primary なFSGSが合併してくることが本当にあるのかどうか疑問視していました しかし, この論文はprimary なFSGSがIgA 腎症に合併する症例は, 極端に予後が悪いというような論文でした すなわちFSGSから見た IgA 腎症の合併の有無を,outcome を見て比較した論文です そういうことで,IgA 腎症が発症して, どこかでprimary なFSGSに移行してくるという見方とは, ちょっと違います それで, この論文のプロットエリアを見てみますと, 全部 IgA 腎症の症例なのですけれども, FSGSのvaliant によってタイプ分けをして, 臨床的な把握をしています スライド 35 本症例は完全なnephrotic range にありましたが, この論文の症例ではcollapsing なvaliant のみ,1 日蛋白量が3.99, ほかはnephrotic range ではないのです したがってIgA 腎症の高度蛋白尿症例にむしろ近い病態を表しているのではないかと思います だから, 論文ではprimary なFSGSと,IgA 腎症の合併するFSGSというふうに分けていますけれども, アルブミン値やその他のプロットエ 146

第 63 回神奈川腎炎研究会 リアのデータを見ると, 純粋なFSGS とIgA の合併症例を集めている症例ではないのではないかと思います 今回の症例を見せていただく限りは,2 回目の腎主栓の時点では,FSGS がIgA 腎症に合併したことはほぼ間違いないと思います 1 回目については, これはどちらか私もよく分かりませんが,IgA 腎症からの説明でもネフローゼを説明できますが, アルブミン値がどの程度だったかで1 回目がどちらかに落ち着くのだろうと思います Kidney Intから FSGS とlgA 腎症の合併についての論文が出ましたけれども, 今回の症例のように, 純粋なFSGS がIgA 腎症に合併した症例は少ないのではないかと思っています 以上です 座長城先生, どうもありがとうございました 座長では, 第 2 部のほうを終わらせていただきます 147

腎炎症例研究 32 巻 2016 年 II-3:リツキシマブが著効を示したIgA沈着を伴っ たFSGSの一例 東海大学医学部付属病院 症例:20歳 男 16歳時尿潜血 近位で高度蛋 白尿 ネフローゼ症候群を呈し 第1回生検分 節状硬化のあるIgA腎炎 ステロイド依存 抵抗 性で19歳児ネフローゼ再燃で2回目生検FSGSと 診断 リツキシマブで寛解 浮腫改善 臨床病理学的問題点 1 FSGSで良いか 2 IgA腎炎は? 山口先生 _01 山口先生 _04 山口先生 _02 山口先生 _05 山口先生 _03 山口先生 _06 第1回生検 148

第 63 回神奈川腎炎研究会 IgA 山口先生 _07 㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌 山口先生 _10 病㻌 理㻌 診㻌 断(II-3-1) 1. Focal segmental glomerulosclerosis 2. Mesangial IgA deposits, possible cortex/medulla = 7/3, global sclerosis/collapse/glomeruli = 0/7/14 㻌 糸球体にはperiglomerular fibrosisと癒着を伴う虚脱を7ヶに認め 分節状硬化が2ヶに見ら れ その周囲に尿細管萎縮と間質線維化及び単核球浸潤を軽度認めます 㻌 尿細管系には近位上皮に硝子滴変性が散在し 硝子円柱が散見されます 㻌 動脈系には小葉間動脈内膜の線維性肥厚と細動脈硝子化には乏しいです 㻌 蛍光抗体法では IgA(+: mesangial)で その他は陰性です 㻌 以上 上記の診断と思われ IgAの蛍光所見はかなり強いですが 非特異的と考えます 山口先生 _08 山口先生 _11 山口先生 _09 山口先生 _12 149

腎炎症例研究 32 巻 2016 年 山口先生 _13 山口先生 _16 IgA 山口先生 _14 山口先生 _17 山口先生 _15 山口先生 _18 150

第 63 回神奈川腎炎研究会 リツキシマブが著効を示したIgA沈着を伴った FSGSの一例 東海大学医学部付属病院 腎内分泌代謝内科 中澤来馬 先生 伊勢川拓也 先生 小泉賢洋 先生 呉瓊 先生 遠藤正之 先生 深川雅史 先生 東北大学大学院 医科学専攻 病理病態学講座 城 謙輔 第63回 神奈川腎炎研究会2015年2月21日 土 15:30 19:45 横浜シンポジア 山口先生 _19 城先生 _01 第1回目腎生検 10-11541 山口先生 _20 㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌 城先生 _02 病㻌 理㻌 診㻌 断(63-II-3-2) 1. Focal segmental glomerulosclerosis 2. Mesangial IgA deposits cortex/medulla = 9/1, global sclerosis/collapse/glomeruli = 1/0/20 㻌 糸球体にはボウマン嚢との癒着を伴う分節状硬化が8ヶに見られ その周囲に尿細管萎縮と 間質線維化及び単核球浸潤を軽度認めます 㻌 尿細管系には近位上皮に硝子滴変性や扁平化が散在し 硝子円柱や萎縮が散見され そ の周囲間質に単核球浸潤と軽度の線維化を伴っています 㻌 動脈系には小葉間動脈硬化と細動脈硝子化には乏しいです 㻌 蛍光抗体法では IgA(+: mesangial)で その他は陰性です 㻌 電顕では 観察糸球体にはメサンギウム域にメサンギウム基質増加が軽度見られ 一部傍 メサンギウムに沈着物を認めます GBMに内皮腫大と内皮下浮腫が疎らに見られ 単球など の浸潤を認めます 脚突起癒合が所々に見られ 微絨毛の発達を認めます 㻌 以上 上記の診断と思われ mesangial IgA depositsと考えます 山口先生 _21 城先生 _03 151

腎炎症例研究 32 巻 2016 年 城先生 _04 城先生 _07 城先生 _05 城先生 _08 城先生 _06 城先生 _09 152

第 63 回神奈川腎炎研究会 < 光顕 > 標本は 2 切片採取 糸球体 : 全ての糸球体 (11 個 ) に全節性硬化はありません 全ての糸球体において メサンギウム細胞増多を 2/11 個 (18%) 認めますが 管内性細胞増多はありません 細胞性半月体を 2/11 個 (18%) 線維細胞性を 1/11 個 (9%) 線維性細胞性を 1/11 個 (9%) 分節性硬化を 4/11 個 (36%) 癒着を 1/11 個 (9%) 虚脱を 1/11 個 (9%) 認めます 分節性硬化には泡沫細胞が見られます 糸球体基底膜の肥厚はなく PAM 染色にて二重化ならびに spike bubbling も見られません 糸球体の腫大はありません (200μm) 半球状沈着物は目立ちません 尿細管 間質尿細管の萎縮ならびに間質の線維性拡大を軽度に認め (10%) 同域にリンパ球浸潤を 10% 認めます 血管系小葉間動脈ならびに輸入細動脈に動脈硬化の所見はありません 免疫染色にて IgA がメサンギウム領域に顆粒状に陽性です その他の免疫グロブリン 補体の情報はありません IgA 腎症が疑われます 城先生 _10 城先生 _13 以上の所見から 巣状メサンギウム増殖性腎炎 IgA 腎症 H-Grade ⅢA/C (8/11 個 73%) と診断します 本症例はネフローゼ症候群を呈していますが 組織診断は慢性病変ならびに活動性病変が混在した IgA 腎症です しかし IgA 腎症の MPGN 亜型ではありません 上記の IgA 腎症でネフローゼ症候群の説明が付くと思いますが IgA 腎症に FSGS 様病変が合併した症例が報告されています (kidney int 79:643,2011) 城先生 _11 城先生 _14 第 1 回目腎生検 10-11541 16 歳男性 臨床診断ネフローゼ症候群病因分類 IgA 腎症病型分類巣状メサンギウム増殖性腎炎 IgA 腎症 H-Grade ⅢA/C IF 診断 IgA 腎症の疑い 皮質 : 髄質 =8:2 糸球体数 :11 個 全節性硬化 :0 個 メサンギウム細胞増殖 :2 個 管内性細胞増多 :0 個 半月体形成 :4 個 ( 細胞性半月体 :2 個 線維細胞性半月体 :1 個 線維性半月体 :1 個 ) 分節性硬化 :4 個 癒着 :1 個 虚脱 : 1 個 未熟糸球体 :0 個 城先生 _12 城先生 _15 153

腎炎症例研究 32 巻 2016 年 第 2 回目腎生検 13-12587 城先生 _16 城先生 _19 城先生 _17 城先生 _20 城先生 _18 城先生 _21 154

第 63 回神奈川腎炎研究会 城先生 _22 城先生 _25 城先生 _23 城先生 _26 M A A C3 C3 C3 C1q F 城先生 _24 城先生 _27 155

腎炎症例研究 32 巻 2016 年 第 1 回目腎生検 (10-11541) と比較して 今回 第 2 回目の症例では 巣状分節性糸球体硬化 硝子化の病変が目立っています 電顕においても足細胞脚突起消失が目立ちます 一方 第 2 回目の腎生検において 管内性細胞増多ならびに活動性半月体は見られず 上記の電顕における広範な脚突起消失を炎症活動性病変から説明できません やはり 2011 年の文献 (kidney int 79:643,2011) どおり IgA 腎症に FSGS 病変の合併があるものと思われます < 免疫染色 > IgA IgM C3 がメサンギウム領域に顆粒状に陽性です C1q は陰性です IgA が優勢ではありませんが IgA 腎症に compatible です C3 IgM C1q が輸入細動脈内膜の浸出性病変に陽性です < 電顕診断 > 傍メサンギウム沈着が見られ IgA 腎症に compatible です また 同域にマクロファージ 好中球浸潤を伴っています さらに 本症は足細胞脚突起消失が広範で 微絨毛形成を伴っています 本症例を IgA 腎症の活動性病変に伴う脚突起消失と診断するか IgA 腎症に巣状分節性糸球体硬化症の合併と診断するか 二つの可能性があります 城先生 _28 城先生 _31 第 2 回目腎生検 13-12587 19 歳男性 臨床診断難治性ネフローゼ症候群病因分類 IgA 腎症病型分類巣状分節性糸球体硬化症 IgA 腎症 H-grade ⅡC IF 診断 IgA 腎症電顕診断 IgA 腎症にFSGS 合併の可能性 皮質 : 髄質 =10:0 糸球体数 :20 個 全節性硬化 :1 個 メサンギウム細胞増殖 :4 個 管内性細胞増多 :0 個 半月体形成 :2 個 ( 細胞性半月体 :0 個 線維細胞性半月体 :0 個 線維性半月体 :2 個 ) 分節性硬化 硝子化 :6 個 癒着 :4 個 虚脱 : 0 個 未熟糸球体 :0 個 城先生 _29 城先生 _32 < 光顕 > 標本は 1 切片採取 糸球体 :1/20 個 (5%) に全節性硬化 残存糸球体において メサンギウム細胞増多を 4/19 個 (21%) 認めますが 管内性細胞増多ならびに虚脱はありません 線維性半月体を 2/19 個 (12%) 分節性硬化 硝子化を 6/19 個 (32%) 癒着を 4/19 個 (21%) 認めます 糸球体基底膜の肥厚はなく PAM 染色にて二重化ならびに spike bubbling も見られません 残存糸球体はやや腫大傾向にあります (220μm) 半球状沈着物は目立ちません 尿細管 間質尿細管の萎縮ならびに間質の線維性 浮腫性拡大を中等度に認め (30%) 同域にリンパ球を主体とした炎症細胞浸潤を 30% 認めます 一部に遠位尿細管の拡張と同域に好中球浸潤ならびに硝子円柱を認めます 血管系小葉間動脈に軽度の内膜の線維性肥厚を認めますが 輸入細動脈に異常ありません 免疫染色にて軽症型 IgA 腎症の合併と診断します 電顕診断において 軽症型 IgA 腎症に FSGS の合併が疑われています 以上の所見から 巣状分節性糸球体硬化症と IgA 腎症 H-grade ⅡC (9/20 個 45%) の合併と診断します 城先生 _30 城先生 _33 156

第 63 回神奈川腎炎研究会 城先生 _34 城先生 _37 城先生 _35 城先生 _38 城先生 _36 城先生 _39 157